グローバル・クリーンテック・ イノベーション・インデックス 2014 日本語要約 どの国が最もクリーン技術を生み出す可能性があるか? 1.グローバル・クリーンテック・イノベーション・インデックスとは? The Global Cleantech Innovation Index 2014 は、民間のクリーン技術調査・コンサルタント会社で ある Cleantech Group 1と WWF インターナショナルが共同で作成した報告書です。この「日本語要 約」は、同報告書の内容を、日本に関係する部分に注目して WWF ジャパンが独自に要約したもの です。 気候変動対策においては、クリーンテック(クリーン技術) 2の役割が欠かせません。世界全体 で、クリーンテックに関するイノベーション(技術革新)を促し、そして、それをビジネスに結び つけて普及させることができるかどうかは、気候変動問題のみならず、多くの環境問題にとっての 共通課題です。 本報告書は、調査対象とした 40 カ国における「クリーンテックの促進要因」 (イノベーションへ のインプット)と「実際にどれくらいのクリーンテックが生み出され、商業化に至っているか」 (イ ノベーションのアウトプット)に関する 15 の統計を指数化(インデックス化)し、統合して、ラ ンキングにしています。中心となっているのは、 どの国が、今後 10 年間に渡り、クリーン技術に関するイノベーションを商業化させるような新興 クリーンテック企業を輩出するポテンシャルがあるか? という問いです。本報告書でのインデックス作成の方法論の概要については、「3.インデックス 作成の仕組み」をご覧下さい。報告書のオリジナルは、下記 WWF インターナショナルのウェブサ イトからダウンロード可能です。 1 Cleantech Group 社ウェブサイト:http://www.cleantech.com 2 本報告書でいうクリーンテックには、再生可能エネルギーやエネルギー効率改善の技術を中心としつつも、運輸、ス マートグリッド、リサイクル、新素材等を含む広い分野を含む一連の技術をさしており、気候変動問題の解決に直接的に 役に立つ(温室効果ガス排出量の削減につながる)技術分野だけではなく、より広い範囲が含まれています。ただし、化 石燃料および原子力分野は除かれています。 1 Ø The Global Cleantech Innovation Index 2014 http://awsassets.panda.org/downloads/cleantechrepsm.pdf 2.インデックスおよびランキング結果 表 1 は、本報告書におけるインデックスの結果を示したものです。2014 年の順位とともに、各国 の総合的なインデックス・スコア(「2014 スコア」の列)が掲載されています。各項目の詳細につ いては、「3.インデックスの仕組み」を参照して下さい。 総合スコアでは、イスラエルが 1 位で、それにフィンランド、アメリカ合衆国、スウェーデン、 デンマークが続きます。 イスラエルが第 1 位であることの背景には、インデックス集計にあたり、新興企業数を国の経済 規模に合わせて換算して 3いるため、特に点数が高くなっている面もありますが、同国が、天然資 源が少ない環境の中で技術革新を国の政策として特に重視し、文化・教育面で極めて積極的である ことを反映しています。 第 2 位のフィンランドは、同国の方針として、持続可能な技術の革新に取り組んでいることが反 映されています。 第 3 位のアメリカ合衆国は、クリーンテック関連企業に関するベンチャー投資を最も集めている 国ではありますが、近年はライバルである中国が存在感を高めてきています。 日本は、第 12 位です。日本は、環境関連の特許についてはトップであり、また、研究開発面での 支援でも、他国と比較して秀でています。しかし、(クリーンテックに限らない)イノベーション 全般を支える起業家文化が弱いということや、イノベーションの商業化(例:新技術をもって成功 した企業が上場される、投資・買収されることなど)が弱いことが響き、評価対象となった 40 カ 国の中では、中の上程度の位置づけとなっています。 総合スコアの元になっている各要素をみると、全てにおいて秀でている国というのは稀です(5 位のデンマークはほぼ全ての分野で平均以上ですが、他を圧倒するほどではありません)。これは 裏を返せば、どの国についても、クリーンテックに関するイノベーションの環境を整えていく上で、 改善の余地があるということです。 分野別に見て注目すべきは、 「商業化」の分野において、新興国である中国やブラジルが高いスコ アを見せていることです。 こうした中で、日本は、どのような位置づけを目指し、よりクリーンテック産業にとって魅力的 な国としていくのかが問われています。 3 経済規模を考慮するため。換算無しで計算すると、経済規模が大きい国が、起業する企業の数も多いので自動的に有 利になってしまうことを避けるためです。 2 表 1: : グ ロ ー バ ル ・ ク リ ー ン テ ッ ク ・ イ ノ ベ ー シ ョ ン ・ イ ン デ ッ ク ス 2014 イノベー ションへ のインプ ット イノベー ションの アウトプ ット 国名 2014 スコ ア 1 イスラエル 4.34 2.87 5.81 2 フィンランド 4.04 2.90 3 アメリカ合衆国 3.67 4 スウェーデン 5 クリーンテックに 関するイノベーシ ョン促進要因 クリーンテック・イノ ベーションが起きて いるという根拠 クリーンテック・イ ノベーションの商 業化の根拠 2.86 2.88 8.92 2.70 5.18 2.83 2.97 7.59 2.77 3.13 4.21 3.29 2.98 6.41 2.01 3.55 2.98 4.12 3.59 2.37 5.56 2.68 デンマーク 3.45 3.13 3.76 3.15 3.12 3.23 4.29 6 イギリス 2.84 2.77 2.91 2.82 2.71 3.87 1.95 7 カナダ 2.83 2.84 2.83 3.34 2.34 3.34 2.32 8 スイス 2.80 2.90 2.69 3.38 2.42 3.33 2.06 9 ドイツ 2.78 2.56 3.00 2.26 2.87 3.39 2.61 10 アイルランド 2.73 2.34 3.12 2.50 2.18 3.92 2.32 11 オランダ 2.64 2.57 2.71 2.84 2.31 3.84 1.58 12 日本 2.46 1.92 3.00 1.37 2.47 4.51 1.49 13 韓国 2.45 2.40 2.49 3.00 1.81 3.12 1.86 14 ノルウェー 2.41 2.52 2.30 3.11 1.93 1.78 2.82 15 フランス 2.38 2.39 2.36 1.83 2.94 3.06 1.67 16 オーストリア 2.34 2.31 2.36 2.35 2.26 2.35 2.38 17 ベルギー 2.23 2.34 2.11 2.04 2.65 2.13 2.09 18 ニュージーランド 2.22 2.30 2.13 2.64 1.97 1.26 3.00 19 中国 2.19 2.50 1.89 2.26 2.74 0.92 2.85 20 シンガポール 2.14 2.47 1.82 2.52 2.41 1.21 2.42 21 インド 1.95 1.92 1.98 1.39 2.44 2.10 1.87 22 オーストラリア 1.94 2.52 1.36 2.54 2.49 1.12 1.60 23 ハンガリー 1.88 2.13 1.62 1.55 2.71 1.49 1.75 24 ポルトガル 1.80 2.00 1.61 1.40 2.60 0.85 2.37 25 ブラジル 1.79 1.90 1.67 1.95 1.85 0.31 3.03 26 スペイン 1.70 1.60 1.80 1.45 1.74 0.80 2.80 27 イタリア 1.54 1.78 1.31 1.31 2.26 0.95 1.66 28 スロベニア 1.50 1.52 1.49 1.37 1.67 1.00 1.98 29 南アフリカ 1.37 1.62 1.11 1.43 1.82 0.26 1.96 30 チェコ 1.35 1.57 1.13 1.65 1.48 0.30 1.96 31 トルコ 1.32 1.93 0.72 1.69 2.16 0.10 1.33 32 アルゼンチン 1.30 1.44 1.16 1.73 1.14 0.05 2.27 順位 一般的なイノ ベーション 促進要因 3 33 サウジアラビア 1.26 1.51 1.02 1.93 1.09 0.12 1.91 34 インドネシア 1.19 1.65 0.74 1.90 1.40 0.01 1.47 35 ルーマニア 1.19 1.36 1.01 1.37 1.35 0.07 1.96 36 メキシコ 1.15 1.57 0.74 1.95 1.19 0.04 1.44 37 ポーランド 1.03 1.27 0.79 1.25 1.29 0.15 1.43 38 ブルガリア 1.01 1.22 0.81 1.17 1.27 0.20 1.42 39 ギリシャ 0.97 0.78 1.17 0.61 0.94 0.55 1.79 40 ロシア 0.81 1.12 0.50 0.71 1.52 0.16 0.84 3.インデックス作成の仕組み 本報告書のインデックスは、「イノベーションへのインプット」と「イノベーションのアウトプ ット」という 2 つの側面から作成されています。それぞれに関する合計 15 の統計(IEA や民間調 査会社が提供している統計など)を指数化し、統合して作成しています(図 1)。 「インプット」は、主に当該国におけるイノベーションの促進要因を評価しています。この「イ ンプット」はさらに 2 つに分けられ、 (A) (クリーンテックに限らない)一般的な促進要因と、 (B) (特に)クリーンテックに関する促進要因の統計を取り入れています。ここに含まれているのは、 たとえば、各国の「起業家文化」を調査した民間調査の結果や、政府による公的な研究開発費の統 計などです。 「アウトプット」は、主に当該国において、実際にクリーンテックが開発されているかどうか、 そして、それがビジネスに結びついているかを評価しています。こちらもさらに 2 つに分けられ、 (C)クリーンテック・イノベーションが起きているという根拠と、 (D)クリーンテック・イノベ ーションの商業化の根拠(ビジネスに結びついているか)に関する統計を取り入れています。ここ に含まれているのは、たとえば、環境関連特許の数、新興起業の上場・M&A などが起きているか、 再生可能エネルギーがその国でどれくらい使われているのか(=どれくらい市場からの需要がある のか)といった統計です。 詳細については、オリジナルの報告書(英語のみ)をご参照下さい。 4 図 1: :インデックスの仕組み 4.日本に関する結果について 日本は世界全体では第 12 位、アジアの中ではトップです。 環境関連特許の数では、実際の数でも、GDP 当たりに直した相対的な数字でも、共に世界 1 位で、 これが、「クリーンテック・イノベーションが起きている根拠」分野での好スコアにつながってい ます(図 2)。他方、クリーンテックが商業化されていく点で重要なベンチャーキャピタル(ベンチ ャー企業を対象とした投資会社等)による投資・買収や、インパクトのある新興企業の数等ではス コアが非常に低くなっています。 この点は、「一般的なイノベーション促進要因」をさらに分解してみたとき、研究・政府支援・ 教育などを測った「一般的なイノベーション・インプット」についてはスコアがよい反面、「起業 家文化」の面ではスコアが悪いという点にも呼応しています。 また、日本はクリーンテックに焦点を当てた投資家や組織の数が少ないことを、公的な研究開発 費の多さで補っています。また、固定価格買取制度が導入されたことで、再生可能エネルギー関連 の投資にとっての市場としての魅力が向上しています。 5 クリーンテック関連企業の売上面では決して悪いわけではありませんが、民間資金へのアクセス の不十分さが、「商業化」の分野に影を落としています。 図 2: :日本に関するスコアの詳細 問い合わせ先 Ø 日本語要約版について WWF ジャパン 気候変動・エネルギーグループ (担当:山岸) Tel: 03-3769-3509 Fax: 03-3769-1717 Email: climatechange@wwf.or.jp Ø 報告書本体について Stefan Henningsson, WWF senior advisor on climate innovation Tel: +46 70 57 99 291 Email: Stefan.henningsson@wwf.panda.org 6
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