構造制御されたリチウムイオン 電池用高容量合金系負極

公立大学法人首都大学東京 新技術説明会
2009年 07月10日 JSTホール
TOKYO METROPOLITAN UNIVERSITY
首都大学東京
構造制御されたリチウムイオン
電池用高容量合金系負極
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科
都市環境科学環 分子応用化学域
教授 金村 聖志
1
研究背景 / リチウムイオン二次電池
負極 (黒鉛)
リチウムイオン二次電池
e-
C6 + xLi+ + xe→ LixC6
正極 (LiCoO2)
Li1-xCoO2 + xLi+ + xe→ LiCoO2
(where, x=1)
(where, x=0.5)
○ 理論容量: 372 mA h
g-1
○ 理論容量: 137 mA h g-1
Lithium Ion
NAKA
NO
マイクロデバイス
(m-TAS)
携帯電話
ノート型パソコン
Plug-in・Hybrid 電気自動車
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しました
Micro-fabrication
Technology
マイクロ型
Improvement of
Energy Density
小型
(100~150 Wh kg-1)
中・大型
2 -1
( > 500 Wh kg
)
研究背景 /なぜ新規電極材料の開発が必要なのか
○ リチウム二次電池の電極材料の充放電容量と作動電位
正極材料
Potential vs. Li/Li+ (V)
4
Li1-xMn2-yMyO4
Li1-xCo1-yMyO2
Li1-xNi1-y-zCoyMzO2
Polyanionic compounds [Li1-xVOPO4, LixFePO4]
Li1-xMn1-yMyO2
3
MnO2
Vanadium oxides
[V2O5, LiV3O8]
負極材料
2
3d-Metal oxides
1
Intermetallic alloys
[Sn(O)-based]
Si
Nitrides LiMyN2
Carbons
Graphite
Li metal
0
200
400
600
800
1000
3800
4000
Capacity (A h kg-1)
○ 現在、商品化されているリチウム二次電池の電極材料は大型電池の材料として、エネ
ルギー密度は不十分。
○ 電池の更なる高エネルギー密度化には充放電容量の大きな材料の開発が望まれるが、
3
Liと合金を形成する金属系材料が
特に負極材料にはSnやSiなど
Si
する金属系材料 次世代負極として有望。
次世代負極
研究背景 / 新規合金系負極の問題点 (例: Sn系負極)
○ Sn系負極の電極反応
xLi+ + Sn-M + xe- → LixSn-M (x<4.4)
理論容量: 993y mA h g-1 (0<y<1)
○ LiとSnの合金化反応に伴う体積変化による電極の性能低下メカニズム
Li+
e-
Volume Expansion (300 %)
Sn
Shrinkage
Cracks
Li4.4Sn
SnはLiと合金化することにより
体積が4倍に膨張。
Sn
Li4.4Sn合金からLiが脱合金化す
ることにより収縮が起こりSn電
極にクラックなどが形成される。
合金化・脱合金化
の繰り返し
電極性能の低下
さらに充放電を繰り返すと微粉化が
起こり電極から脱落などが起こる。
4
技術戦略 / リチウム二次電池用多孔性合金負極の開発
3次元規則配列多孔構造(3DOM)を有する Sn系合金電極
Sn-Ni + xLi+ + xe- ⇄ LixSn-Ni
充電
放電
可逆的な構造変化
○ 3DOM多孔構造がリチウムとの合金化に伴う電極の体積変化
を緩和する。
○ 電極が多孔構造となっているため電解質との接触界面が増大し、
電極反応の抵抗を低減。
5
技術戦略 / 3DOM 構造を有する機能材料のエネルギー変換デバイスへの応用
燃料電池
DMFC用
Proton伝導性膜
電気化学
3DOM構造体 キャパシタ
機能性シリカ膜
メソポーラスカーボン
カーボン-ポリマー
コンポジット
Ni-YSZ系セラミックス
SOFC用
多孔性電極
EDLC用
多孔性電極
三次元的にマイクロ又は
ナノメートルオーダーで
規則化された構造体
Redox Capcitor用
多孔性電極
リチウム二次電池
3D リチウム電池用
固体電解質
Li0.35La0.55TiO3
セラミックス
構造制限型
多孔性負極
Sn系合金
高機能性セパレータ
高分子膜
6
技術戦略 / 3DOM 構造を有する構造体の作製方法
Assembly of colloidal
particles
コロイド結晶鋳型
単分散球状粒子
Infiltration of precursor into
void space of colloidal template
Elimination of template and
conversion of precursor to
porous solids
3DOM構造体
7 )
コンポジット (鋳型/ 前駆体
コロイド結晶鋳型法による3DOMSn-Ni合金の
作製とリチウム二次電池の負極特性
○発明の名称: 金属製の多孔質負極及びそれを用いたリチウム二次電池
○出願番号: 特願2005-074936
○出願人: 独立行政法人科学技術振興機構
○発明者:金村 聖志外2人
8
3DOM Sn-Ni合金の作製
電気泳動法
1 cm
1 cm
銅基板
直流電圧
5~30 V
電気泳動法による
ポリマー粒子の堆積
単分散ポリマー粒子
(直径: 1mm)
銅基板上に堆積されたポリマー
粒子の電子顕微鏡写真
表面
+
+
+
+
++
ポリマー粒子
断面
銅基板上にポリ
マー粒子を堆積
銅基板
ニッケル板
9
3DOM Sn-Ni合金の作製
電解Sn-Ni
合金めっき
[対極] スズ板
[作用極] ポリマー粒子を
堆積した銅板
Sn-Niめっき浴
電解Sn-Ni合金めっき
ポリマー粒子
銅基板上にポリ
マー粒子を堆積
約26 vol%の隙間
ポリマー鋳型の
隙間にSn-Ni
合金めっきした
銅基板
10
3DOM Sn-Ni合金の作製
銅基板上に作製された3次元規則配列多孔
構造を有するSn-Ni合金の電子顕微鏡写真
表面
3DOM構造を有するSn-Ni多孔体
ポリマー鋳型の除去
1 mm
めっきを施した後に有機溶
剤を用いてポリマー粒子を
除去する。
断面
10 mm
ポリマー鋳型の
隙間にSn-Ni
合金めっきした
銅基板
11
3DOM Sn-Ni合金負極の充放電曲線
2032型コイン電池
[電解質] 1 M LiClO4 in EC+DEC (1:1)
[対極] Li金属
セパレータ
SUS スペーサ
[作用極] 3DOM Sn-Ni
SUS ワッシャー
[電流密度]
0.05 mA cm-2 (8.1 mA g-1)
○ 初期サイクルにおける充電容量と放電容量は
それぞれ523 mA h g-1と522 mA h g-1を示した、
充放電効率は99%であった。
○ 30サイクル目において500 mA h g-1以上の可
逆放電容量を示した。
○ 3DOM Sn-Ni負極は従来のカーボン系負極よ
り、重量当たり容量は1.5倍であり、体積当たりの
容量は4倍以上である。
種類
*MCMB
活物質の量
電極の厚さ
約 6 mg cm-2 55~57 µm
3DOM Sn-Ni 6~6.5 mg cm-2 16~18 µm
Porosity 重量当たり容量
0.347
面積当たり容量
備考
330~340 mA h g-1 1.9~2.1 mA h cm-2 塗布電極
0.5以上 500 mA h g-1以上 3 mA h cm-2以上 多孔性薄膜電極
12
*MCMB:メソカーボンマイクロビーズ(mesocarbon microbeads)
3DOM Sn-Ni及び平板Sn-Ni電極のレート特性及びサイクル特性
[電流密度] 0.05 mA cm-2 (60サイクルまで)
3DOM Sn-Ni
平板 Sn-Ni
○ サイクル特性においても、3DOM Sn-Ni電極は多孔構造により体積変化の緩和効
果を有し、60サイクル目まで60 %程度の容量 を維持した。
○ 3DOM電極は平板電極と同様に急激な容量低下を示した。この原因は膨張・収縮
により、 20~50 µm程度の大きさで電極が断片化したためであると考えられる。
→本問題点の解決方法として、3DOM Sn-Ni電極を20~100 µmの大きさで予め断片
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化し、マイクロメートルオーダーのスケールで機械的な応力を緩和することが可能。
ドメイン構造を有する3DOM Sn-Ni合金の作製
とリチウム二次電池の負極特性
○発明の名称: マイクロドメイン構造を有する多孔性負極
○出願番号: 特許出願中
○出願人: 公立大学法人 首都大学東京
○発明者:金村 聖志外4人
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ドメイン構造を有する3DOM Sn-Ni負極
○ Design in Nano-order scale
Li との合金化
充電
Te
mp
lat
ing
○Relaxation of mechanical
3-Dimensioanally Ordered
Macroporous (3DOM)
structure
stress by volume expansion
g
n
i
rn
e
t
t
Pa
○ Design in Micro-order scale
Li との合金化
充電
Highly-Patterned
Domain structure
マイクルメートルオーダー
のドメイン構造を有する
3DOM Sn-Ni合金電極
○Distribution of mechanical
stress by volume expansion
10
m
10 µ
µm
15
フォトレジスト基板の説明
○ フォトレジスト基板とは?
20 µm
Cu
22 µm
表面
2 cm
シリカ基板
45°
1 cm
20 µm
銅皮膜コーティング
2 cm
断面
フォトレジスト塗布
フォトレジスト
銅層
フォトマスク
露光
30 µm
現象
16
ドメイン構造を有する3DOM Sn-Ni合金の作製
フォトレジスト基板
ポリマー粒子をの穴の中に堆積
単分散
ポリマー粒子
(直径: 1 mm)
ポリマー
約26 vol%の隙間
粒子
っき
め
合金
i
N
nS
電解
ドメイン構造を
有する3DOM
Sn-Ni合金
Sn-Ni合金
ポリマー粒子
電解Sn-Ni
合金めっき
[対極] スズ板
ポリマー鋳型の除去
Sn-Ni
合金
定電流
[作用極] ポリマー
が堆積させたフォト
レジスト基板
直径が約1mm
の空孔
17
ドメイン構造を有する3DOM Sn-Ni合金の電子顕微鏡写真と元素分析
レジスト膜なし
○マイクロメートルオーダー
の円柱形3DOM Sn-Ni合金
(構造制限されたドメイン
構造)の作製に成功した。
レジスト膜あり
断面
10 µm
高分子薄膜により、多孔性円
柱がパッキングされている。
レジスト膜
3DOM Sn-Ni
元素分析
total
Sn
Ni
Cu
C
18
30 µm
30 µm
Sn L
30 µm
Ni K
30 µm
CK
30 µm
Cu K
ドメイン構造を有する3DOM Sn-Ni合金負極の充放電曲線
[作用極] ドメイン構造を有する3DOM Sn-Ni合金
(活物質の量: 1.5~3.1 mg cm-2)
[対極] Li 金属
[電解質] 1 mol dm-3 LiClO4 in EC+DEC (1:1 vol%)
[測定電位範囲] 0 ~ 2.5 V vs. Li/Li+
[電流密度] 0.5 mA cm-2 (約 0.5 C)
ビーカー型
セル
銅箔
PP板
PP板
Li箔
セパレータ
ドメイン構造を有す
るSn-Ni合金電極
○ ドメイン構造を有する3DOM SnNi合金負極は約650 mA h g-1の放
電容量 を示し、充放電クーロン効率
は98%以上であった。
○ ドメイン構造を有する3DOM負極
は従来の黒鉛系負極と比べ、約1.7
倍以上の重量当たりの容量を有した。
19
ドメイン構造を有する3DOM Sn-Ni電極のサイクル特性
充電深度77%
[電流密度] 0.5 mA cm-2
(200 サイクル目まで)
10 µm
充電深度100 %
10 µm
充電深度93 %
10 µm
○ ドメイン構造の3DOM Sn-Ni合金電極は充電深度100 %の場合、リチウムと合金・脱合金化
に伴う膨張・収縮により、マクロ孔が閉じる。→ 充放電容量が次第に劣化。
○ 充電深度93%(約605 mA h g-1)の条件では115サイクル目まで590 mA h g-1以上の可逆放
電容量を示し、164サイクル目において容量維持率が約60%であった。
○ 充電深度77%(約505 mA h g-1)が条件の場合には200サイクル目まで、容量劣化はほとんど
容量劣化
20
観察されず、優秀な容量維持率を示した。
まとめ
◇ 現在、商品化されているリチウム二次電池の電極材料は大型電池
の材料として、エネルギー密度は不十分。
◇ 電池の更なる高エネルギー密度化には充放電容量の大きな材料の
開発が望まれるが、特に負極材料にはSnやSiなどLiと合金を形成
する金属材料が次世代負極として有望。
◇ 本研究は、構造制御の観点から、Sn合金のサイクル特性の向上を
検討した。具体的には、Sn-Ni合金を3DOM化し、電極表面積の増
大による高容量化とLiとの合金化・脱合金化に伴う体積変化の緩和
(サイクル特性の向上)を目指した。
21
◇ 構造制限されたSn-Ni合金負極は従来のカーボン系負極より、高い
エネルギー密度を有し、3DOM構造及びドメイン構造がLiとの合金
化に伴う体積膨張の緩和に有効であることが明らかになった。
◇ 現在、容量劣化の原因が集電体基板からの電極の剥離であること
を見出し、集電体との密着性の改善を通して、更なる容量及びサイ
クル特性の向上に取り組んでいる。
◇ 重量エネルギー密度500 W h kg-1を有する実電池の開発を目指し、
コインセルやラミネートセルとしてフルセルで試験を行う。
◇ 実用化や事業化には安価な電極作製プロセスが求められるため、
この点に関しては必要なタイミングで企業との共同研究を行う。
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本技術に関する知的財産権
発明の名称
出願番号
出願人
発明者
:非水電解液系二次電池用負極および
それを用いたリチウムイオン二次電池
:特願2008-319136 2008.12.16.出願
:公立大学法人 首都大学東京
:金村聖志
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お問い合わせ先
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科
都市環境科学環 分子応用化学域 金村 聖志
TEL
042-677-2828
FAX
042-677-2828
e-mail
kanamura@tmu.ac.jp
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国府勝郎
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