都薬雑誌 Vol 33 No.12

■旦^
我が国の医薬品産業の現状と将来
我が国の医薬品産業の
現状と将来
いとうかつひこ
(株式会社ジェネティックラボ取締役)
ここ20年問で製薬業界は入きく変化した
20年前の社名とは違う企業も多くある問違
俳強力な候補品に辿り着くことができた
と'えよう
製できる」とすべて"論見通りとはいかな
日経BP社日経バイオテク契約記者伊藤勝彦
冒連載にあたって
か0たが,ローヌプーランネ1:の化合物の1,000
るとの結論となれぱ,投資を行い,様々な支
援をし,企業を育成することにある取締役
に時には社kにも就任する。より尖務に近い
化合物の構造変換をすれぱ,新規な物質も創
は.大疑の新入礼員を受け入れたのである
、^
の研究は幸いにも米国炎症学会最優秀ポス
この時期は,経済産業省が平沼プランと
ター賞に選ぱれた現在、絲11剤の関飾りウ
われる大学発べンチャー1,000社'伎立の引
マチ薬としてフェーズⅡの段階にある退職
画を掲げた時期で、バイオベンチャーの
後に海外企業への導出も決まったようだ
起業プームとなった私も欧米企業を含み
200人以 1二のネ1長と会い,これだと思う
好調な企業は,海外に打って出た11寺捌だっ
C5a受容体扶抗薬の研究は順訓であった
た経済など不学であった利、は.このような
が.1999年に本キ1:への異動の内水が出た]'
企業に25億口の資金を投資したそのうち
いのないことは,これからも科学の新歩と典
絲済状況1だったから入礼できたと知るの
皮,その時,外資証券会社から誘いがあった
株式公開しナ,、イオヘンチャーを挙げると.
に医薬品産業が変化していくことである我
は.人礼してかなりの時問が経ってからのこ
のてある業務内容を聞けぱ,製薬企業を分
ドラッグデリハリーシステムのLTTバイオ
が1工1の医薬靜,産業はどこにいくのであろう
とだた今も続く就職難をみると,本凹
析する,止券アナリスト業務と Hう
ファーマ.抗体迭薬品の免疫生物研窕所.抗
か突際に忠者さんと1"に接し.お薬を調剤
に4述だったとつくづく思う
がん剤のナノキャリアとキャンバス,μFk1矢
療のセルシードの5社であるうち.免疫生
する重要な業疹を遂hしている薬剤師の先生
研究所での12年岡,多くのプロジェクトの
方に,この連叔が役に立つ惰桜になるかどう
起案,研究を行った。しかし.前臨床試験を
研究を続けられないのであれぱ回じと
か,正直不安である少しの期問.拙文にお
終 rしたプロジェクトはたったの3つ,臨床
新長地で什弓工をすることにした証券アナリ
物研究所では同社の株式公開業務の立任名と
して取締役絲営企画宰長を拐めた株式公
判き合いいただけれぱ市いである
'式験に移行できたのは.そのうちの 1つだけ
スト業務は性に合った製集企業の評価であ
開という貴重な経験をさせてもらったただ
である幣床試験に入った研究は、免疫機能
るから,各会社の製品とハイプラインの将来
の重蟇な役割を村勺ている補体成分C5aの受
容体抽抗薬であった。補体は100年以 U河の
性を予測する。医療制度の影糾,作川機序,
市場規模,競合耐,の状況など多面から評価し
し,欧米と異なり,太だバイオベンチャーと
1"内製薬企業との関係はチグハグであるよう
究老,企業藷lt価者.投資IH'11Xとして関わっ
1895年に発見されたと言われ.歴史は1{iい
て,将来,承認を取得できるかどうか,承認
、、なレ、こと
てきた氏繋Ⅲリ董業の20年余を振り返ってみた
逆に,100年もの問.補作系に関ラ・する薬剤
を取得すると判断したハイプラインについて
その'.反,外資企業のバイオベンチャーへの騨
い私が大学院を卒業したのは昭和の終わり
は世に川ていないのだから,柴としては適し
の63年(19朋のことである'11時は、薬学
ていない標的であるとも iえる研究所の k
は.売上げを年度ごとに算出していった相
予が.「薬」あるいは薬の卵だから製築
解度は数段上にあるそれだから.国内の
シーズを海外に持っていかれることも多い
部の修 1癌果稗を修fすれぱ,製薬企業の研究
"1たちはその研究起案に収対したが.味力し
企業での知識が大いに活かされた『時,米
これでは,国内の製薬企業の候補靜,が将来、
所に就職するというのが一般的であった澀、
てくれる 1'司もいた兀来,捻くれものの拘
匪1のジェネンティック社が開発したハーセ
枯渇してしまうと危恨する¥いうちに千を
も,'f富製薬の研究所に人社が決まり,意気
分は.灰対されれぱされるほど、研究を進め
プチン(トラスツズマプなどの抗体住
打たなけれぱならない
揚々であったしかし.何のことはないそ
たただし,見込みが決してなかったわけで
染品に将来竹を感じ.闘査レポートを株式1"
の時は.1986作に始まったバプル禁気に加
はない製薬芥社は1990年ごろからロポット
場に発表,この予洲は的小した現在では
え.大剛新薬の発光も側まうて各製薬企業
を使い.'."速て候補化合物を"十価する什矧
抗体医薬品の大きな市場が形成されているの
みを榊築していた時期であったフランス
はこ存じの通りである
目はじめに この20年を振り返り
まず.訂d紹介を脈ねて,医薬",産業に研
冒医薬品産業を外から見る
だ原因はお1ιいの二ーズを正しく理解して
人勝ちではうまくいかない
の口ーヌプーラン社がC5a受容体抽抗薬を発
次に就いた業務は.ベンチャーキャビタリ
冒医薬品産業は高利益産業
氏築品産業の特徴を見つけ出すために重宝
な資料・があるそれは、総務省統,+10」が公表
した「科学技術研究訓査」である業種剛.
見したとの机告があったイタリアのポロー
ストで.20吃年のことであったミ正券アナリ
企業規模問における牛産性を比較できる平
ニャまで発衣を聞きにも行ったその結果
ストは株式をヒ場している企業の評価が主で
成22作(2010 の金融業.保険業を除く令産
ローヌプーラン社が発兄した化介物とΠ社ラ
あるが,ペンチャーキャピタリストの対象は
業の光ヒ高は860兆2.674億円,うち製造業は
て,取諦役経営企画室長を務めた。現在,国際医薬品情報編
イプラリーの倩造類似性に確イ.{を持ったので
株貳未公開企業であるべンチャーキャピタ
35別E66Ⅱ億円で,医薬品製造業は12兆1376
集委員、日経BP社日経バイオテク契約記者。バイオベンチャー
の支援をしながら、製薬企業とバイオベンチャーとがWin、vvin
の関係を構築できるか梗索してぃる
ある自礼ライプラリーをロポットでアッ
リストも企業許価をするしかし.それがキ
億円であった企業の本業における収益力で
セイすれぱ,短時岡で結米が出る,そこから
の仕屯ではない評価した企業に将来牲があ
ある営業利益については.全産業は19兆9,詑7
伊簾勝彦
案学博士(東京理科大学),栗剤師
1986年束京秦科大学卒,東京理科大薬学部修士課程修7後
吉密製薬(現田辺三妥製秦)入牡。 2001年からソシエテジエ
ネラル証券、ドイツ証券で証券アナリスト業務に就く日興ア
ントファクトリーで,バイオベンチャー企業への投資業務を行
う。投資先の免疫生物研究所では.株式公開業務の責任者とし
4 都^筋 Vd飴 NO.12 (2011)
^ V0133 卜10.12 【2011) 5
我が国の医薬品産業の現状と将来
位円.製造業は6兆7290億円,阪薬品製造業
14.0%
12.0%
は 1兆6.909億円とある
まずは,製造業と傑薬品製造業の売ヒ高をそ
10年から15年(数十億円から数百億円)
10.0%
8.0%
6.0%
一一一
ここで,これらの数字を加工してみよう。
1
圃
研究
40%
れぞれ令産業の允ヒ高で除すこれで,全産
一「
割介がn出できる次いで.営業利益につい
ても師1様にhなうその結果であるが.Ⅱ
本の産業全体の允上高における製造業の占
図2
フエーズN
新薬゜1"
6,000検体
める割介は41.70。,医薬品製造業は1.400であ
申請・承認
・許可上市
廊床試験
フエーズ1 (健常人)
フエーズ亜 (患者・小規模)
フエーズⅢ (患者・大規模)
合成研究
薬理研究
安全性研究
ADME研究
製剤化研究
工業化研究
20%
業における製造業と咲薬侃.製造業の売上高の
開発
医薬品ができるまで
る次は営業利益だ製造業の占める割介は
図1 各業種における売上研究開発費費
者の忠いがある
?・
3380。.医薬",製造業は8500となったΠ本
研究開発志向型の製柴企業68社が加盟する
における恬薬品産業は,光 1二高こそ令体の
150。に満たないが,利益lmでは令体の85%
データーもある製造業を見ると,多くの業
"1体のⅡ本製薬_1二業協会(製薬協)は興味あ
を稼いでいることが分かるさらに俳業利益
種で100億円以Lの資本金の会社は.研究開
るデーターを発表している製薬恊の会員会
を売 1'.高で除したπl b営業利益率を見ると,
発じ投資しているが,驚くことに 1億円太満
礼17礼の統計によると,'F成 4年(1四2)か
傘産業で230。、製造業では1900.阪薬品製
では数00の企業しか研究を行なっていない
ら'F成8年(1的田の5午問に,薬の候補と
造業は139%と桁問い利益率であるどう
しかし,張柴品.産業は. H迄剖木満の会社で
して合成または向然界から杣川された化合物
やら.阪柴品製迭業は,高利益な業種,薬は高
あても如00の企業が研究に投資している
は総,+32/j832件にのぼる承i認を取得した
厄瓢産剰
ここで,将来への投資と捉えることができ
ものは、わずか53化合物成功率は6.000分
さらに,'F成16年(2004)に遡って, 1"1研
る研究開発喪を兄てみよう医薬品産業の売
の1だった 1つの柴剤を世に出すまでに必
風函璽^
究剖査から売 1・営業利益率を算出してみる
上研究開発費比率はⅡ.600と全産業の中でも
要な研究開発贅は.同内で数H意円,グロー
図3 医薬品産業の将来は
と.全産業で3.60。.製造業で4200,恢薬品
トップの比率である平成22年には 1兆1,891
バル開発であれぱ数1与億円と角われる。研究
製造業は13900 令産業と製造業の利益率が
億円を投資している絶対類としては,自動
開発捌間は10から15年が必要だ(図2)。私
6兆8.196億円(前年比30%地)で,最入額
、1ι成22年よりも高い価となっていた製造
市・1"j1肘属品製造業の2兆74億円,・情報通信
の12年の研究貝生活で, 1化合物しか臨床轤
となった方で、製薬企業の数は減少を
業の売 k営業利益宇1.900は,Π本の製造業
機械器典製造業の 1兆8,143億円に次ぐ。こ
験人りできなかったそれもまだ,フェーズ
辿っている厚生労働竹の咲薬".産業火態嗣
の苦戦をそのまま表している平成20年9月
れらト.位の産業は、ライフ,サイエンス,環
Ⅱの段階順闘に行ったとしても承認取得ま
査報告占では.1997年度には1.400社あった
に起きたりーマン・ショックによる世界的な
境,情轍通偏という今後も成長が期待される
で後5午の時朋が必要である 20年前に.'f京
製繋企業は、 2007年度には訟0社となった
金融危機から条気が脱せず、さらに円高が加
産業であることが分かる図 1)。
製薬の研究所長が集クスリは.逆から
「1i場口体は拡大しているものの.外資系企業
価値製品であるようだ。
.
わった厳しい環境だその万で.医薬品,製
造業の利益率は2桁を確保した医薬品製造
邑医薬品産業はハイリスク・ハイリターン
業は.高利益に加え.経済の状況に影糾を受
医薬品産業は.錫収益業神であることが分
けにくい業種であると科学技術研究調査の数
かったそうであれぱ.他業種を含め,多く
字は物語っているのである
の企業が参人してもよいが,現状そのような
,売めはりスクと Hつていたことを懲い川
も含め競1'・の激化で.より袖八、効卓が要ボさ
すぼ桑品産業を,;で;えばハイリスク
れたことから企業合併や吸収,'Ⅱ業讓渡など
・ハイリターンの業神となる図3
が進んだ結果であると兒ている厳しい財政
難から.国は両捌的新薬以外の薬剤費をFげ
■大きく変化する医薬品産業
ざるを得ない効牛化を求め.企業の集約笹i
折は1卦1かないなぜであろうかその答え
,J生労働名の9 河29Πの発表によると、国
向は.今後も続くと兄ているハイリスク・
は.多櫛の研究開発投資が必蟇だから」な
民1欠療t批よ2009午度に前年度比3.400増の36
ハイリターンの業和プ'3ナに小き残れる企業は
のであろう企業努力でようやく積み重ねた
兆67億円,過去11●商となったそうだ薬1'゛,捌
少数になる
開発に関するデーターが豊富であることだ
利益を.川収できる保誠はない医薬品の研究
剤住療狩は.5兆8228億円,前年から790。
例えぱ.会社の資木金別にした研先開発些の
開発投資に多くの金額は同せないという経営
の伸ひとなた医柴'ν,生産櫛についても.
■多額な研究開発投資額
科学技術研究剖査の優れたところは.価究
6 都薬雑誌 Vd33 NO.12 (2011)
汰凧は.Π本の製集企業の実力についてお
話したい
都^誌 Vd33 NO.1? 2011)フ