米国石油・ガスビジネスの概況 - W Energy Advisory

米国石油・ガスビジネスの概況
清水 陽一郎 yoshimizu@w-advisory.com
2014年6月11日 埼玉大学教養学部講義
- 目次 •
•
•
•
2035年の世界の1次エネルギー
石油ガス事業の概略
アメリカの石油ガス事業
シェールオイル、シェールガス
• 補足資料
1
代表的3統計による2035年の1次エネルギー・シェア予測
Bioenergy
11%
Hydro
3%
Other
renewable
4%
Hydro
7%
Nuclear
5%
Coal
25%
Bioenergy
1%
Other
renewable
6%
Coal
27%
Nuclear
6%
Gas
26%
Gas
24%
Oil
27%
International Energy Agency:
World Energy Out Look 2013
いずれの統計も2035年時
点においても石油+ガス+
石炭で世界需要の75%以
上を占めると推定。
Renewable
14%
Nuclear
7%
BP:
Energy Outlook 2035
Oil
28%
Coal
28%
Gas
23%
US Energy Information Administration:
International Energy Outlook 2013
Oil +
bioenergy
28%
2
2035年の1次エネルギー消費地域
日韓を除くアジアで世界需要増加分の65%を消費
Source: IEA World Energy Outlook 2013
3
エネルギーの流れ
化
石
燃
料
Source: 資源エネルギー庁
4
石油ガス事業の流れ
LNGの液化、パイ
プラインや船での
輸送等
油田・ガス田の
発見から生産まで
Exploration
(探鉱)
Development
(開発)
Production
(生産)
DOWNSTREAM
MIDSTREAM
UPSTREAM
権益取得
地震探鉱
開発計画立
案
生産井掘削
精製、発電、ガソリ
ンスタンド等
試掘井掘削
評価
生産操業、メ
ンテナンス
5
油田・ガス田に関わる権益
Mineral Rights
油・ガスに対する所有権そのもの
通常は政府が保有
Royalty Interest
生産量の一定割合(例:20%)を得る権利
Mineral Rightsの保有者が設定
通常は開発費・操業費等一切の費用を負担することなく、生産高から最初
に支払われる
Working Interest
Royalty支払後の生産量を得る権利
開発・操業等の全費用を負担し、事業運営に責任を持つ
「油田権益」「事業権益」「採掘権」と言った場合、通常この権益を指す
6
Working Interestへの参画方法
Mineral Rights保有者から直接取得
通常は鉱区リースの形態(例:15年リース)
政府との個別交渉、または公開入札を得てawardされる
既にWorking Interestを保有している会社から購入
権益を放出する行為を “Farm-out”、これを獲得する行為を “Farm-in”と呼ぶ
2社以上がWorking Interestを保有する場合、1社を「オペレーター」に選出し、
日々の事業運営はオペレーターが行う
オペレーター以外の会社は「パートナー」となり、開発委員会や技術委員会、
財務委員会等の各種機関を通じて事業に参加
既にWorking Interestを保有している会社に資本参入
株式売買、M&A等
7
米国における石油・ガス事業について
8
米国の石油・ガス事業環境(Upstream)の特徴….1/2
陸上のMineral Rights、Royalty Interestを個人(民間)が所有
主要資源国の中で権益の個人所有は米国とカナダの一部のみ
権益の設定や取引は私人間の交渉マターとなり、政府承認が不要
Mineral Rights, Royalty Interest保有者にとっては、石油会社を呼び込み開発をさせ
るインセンティブ大
膨大な井戸データの存在
1950年以降250万本以上の井戸が掘られ、現在100万本以上が生産中
広大なパイプライン網、輸送ネットワーク網が存在
掘削後、早期の生産が可能
掘削や生産に関わる無数の下請業者(コントラクター)が存在
特に陸上では安価な掘削が可能
9
米国の石油・ガス事業環境(Upstream)の特徴….2/2
1本あたりの生産量は小さい
米国の油井は平均10bbl/day程度、一方中東では10,000bbl/dayの井戸も。
Mineral Rights, Royalty Interest保有者特定の手間
長い歴史を通じて数%単位で多数の個人に分散していることも
各州、自治体(郡、タウンシップ)のルールと要協調
環境規制や地方税をめぐり州と自治体が対立することも
政府方針リスク
Keystone XLパイプライン
Non-FTA Permit
10
米国原油生産スナップショット
洋上
陸上
 シェールオイル掘削を反映し、
2000年代後半より掘削数、生産
量共に増加
 井戸あたりの生産性も改善傾向
 洋上油田の生産は概ね横ばい
Source: EIA Annual Energy Review 2011, figure 5.2
2011年末
約540,000井か
ら生産中
2011年末
10.6bbl/day
11
米国ガス生産スナップショット
洋上
2011年末
約500,000井か
ら生産中
陸上
 シェールガス、タイトガス掘削を反
映し、2000年代中盤より掘削数、
生産量共に大幅に増加
 井戸あたりの生産性は若干の改
善傾向にあるものの、依然として
低い水準
 洋上油田の生産は低下傾向
Source: EIA Annual Energy Review 2011, figure 6.4
2011年末
122mcf/day
12
毎年40,000本前後の井戸を掘削
掘削井戸数
Source: EIA presentation Oct 29, 2013
13
2013年掘削井マップ
主に非在来型を狙った
水平井(薄緑色)だけ
でなく、主に在来型を
狙た垂直井(濃緑色)
の井戸も多数掘られて
いる
Source: IHS 2013 wells completion map
14
過去最高水準に迫るアメリカの原油生産
EIA 2014年予測
EIA 2004年予測
Source: EIA presentation May 19, 2014
15
原油増産背景は非在来型オイル(主にシェールオイル)
Source: EIA presentation Mar 27, 2014
16
過去最高水準を超えたアメリカのガス生産
EIA 2014年予測
EIA 2004年予測
Source: EIA presentation May 19, 2014
17
ガス増産背景は非在来型ガス(シェールガス)
Source: EIA presentation Mar 27, 2014
18
サウジアラビア、ロシアに迫るアメリカの原油生産
2007 生産量
(百万 b/d)
2012 生産量
(百万 b/d)
1
サウジアラビア
10.2
1
サウジアラビア
11.5 (+1.3)
2
ロシア
10.0
2
ロシア
10.6 (+0.6)
3
アメリカ
6.9
3
アメリカ
8.9 (+2.0)
4
イラン
4.3
4
中国
4.1 (+0.4)
5
中国
3.7
5
カナダ
3.7 (+0.5)
全世界
82.2
全世界
86.1 (+3.9)
 2007年以降、主要国中最大の増産幅
Source: BP Statistics 2013
19
アメリカはロシアを抜き世界1位の産ガス国に
2012 生産量
(Bcfd)
2007 生産量
(Bcfd)
1
ロシア
57.3
1
アメリカ
65.7 (+12.9)
2
アメリカ
52.8
2
ロシア
57.1 (-0.2)
3
カナダ
17.7
3
イラン
15.5 (+4.7)
4
イラン
10.8
4
カタール
15.2 (+9.1)
5
ノルウェー
8.7
5
カナダ
15.1 (-2.6)
全世界
324.6 (+40)
全世界
284.7
 2007年以降、主要国中最大の増産幅
Source: BP Statistics 2013
20
シェールオイル、シェールガス事業の特徴
シェール(頁岩:けつがん)層から生産される油・ガスの総称
埋蔵量は世界に賦存するが、現在の生産は北米陸上に集中
シェール層に油・ガスが蓄積されていることは従来から分かってい
たが、浸透率の低さから商業生産は困難であった
米国人企業家George Mitchell氏が1980年代から実験を重ね、水平
掘削 (Horizontal Drilling)と水圧破砕法 (Hydraulic Fracturing,
“Fracking”)の組み合わせにより商業生産に成功、2007年頃より全米
各所に広がる
在来型と比べ、低い回収率、高い掘削費、顕著な減退率
在来型の掘削費1坑$0.2MM~$1.5MMに対し、シェールは$7~10MM
21
在来型 (Conventional)、非在来型(Unconventional)資源と資源量イメージ
 非在来型資源は在来型
資源よりも量が多いが、
開発が困難
 昨日の「非在来型」は明
日の「在来型」、厳密な線
引きは困難
Source: Wood Mackenzie
22
生成過程から見た天然ガスの種類
Source: 日本ガス協会: http://www.gas.or.jp/user/market/type/
23
天然ガスの賦存状況イメージ
24
シェール構造分布図
25
シェール層掘削イメージ
効率的な多抗掘削の例
(水平井6抗 x 掘削位置4)
Source: Total
26
世界のシェールオイル、シェールガス埋蔵量
Source: EIA presentation Mar 27, 2014
27
おわりに
米国におけるシェールブーム自体は、技術革新と生産増を伴い、米
国経済を好転せしめたリアルなトレンドである
現在の油価レベルが続く限り、シェール開発のトレンドは続くと思わ
れる
北米ほどの良好な資源投資環境にない海外において、北米モデル
のシェール開発を移植するのは容易ではないが、いずれは世界各
地へ波及していくであろう
しかしながら、井戸ごとの経済性は在来型資源が優っていることに
変わりはなく、在来型の巨大油田を有する中東産油国の重要性は
今後も続くであろう
日本の課題:ノンオペレーター型投資、総合商社の一部門としての
石油開発、国策事業の限界
28
補足資料
29
主要な6シェールプレイ
MT
ND
WY
NY
NE
CO
OH
KS
WV
PA
MD
AR
NM
TX
LA
Source: EIA, Drilling Productivity Report
30
2000-2012 米国シェール・プレイ別生産量推移
U.S. shale and tight oil production
million barrels per day
U.S. dry shale gas production
billion cubic feet per day
Note: Dry shale gas production data are based on LCI Energy Insight gross withdrawal estimates as of June 2013,
converted to dry production estimates with EIA-calculated average gross-to-dry shrinkage factors by state and/or shale play.
Source: EIA presentation “Transformation of US Energy Land Scape” at George Town Energy and Cleantech Conference, 15 Nov 2013
31
Bakkenシェール(ノースダコタ州)開発前・後の夜間衛星写真
32
2013年9月米国州別原油生産量 (000bd)
33
2012年米国州別ガス生産量 (mmcfd)
34
石油・ガス会社の存在感
世界100大企業セクター別類型
(2013年3月末株価時価総額評価)
Forbes世界500企業当期純利益ランキング
(2013年3月期)
セクター
企業数
時価総額
($Trillion)
順位
会社名
利益
($Billion)
金融
24
3.0
1
Exxon Mobile
45
石油・ガス
16
2.3
2
Apple
42
消費財
15
2.1
3
Gazprom
38
技術・IT
10
1.8
4
38
医療
10
1.5
Industrial & Commercial
Bank of China
サービス
9
1.0
5
China Construction Bank
31
5
0.8
6
Volkwagen
28
資源・素材
6
0.6
7
Royal Dutch Shell
27
機械・建設
5
0.5
8
Chevron
26
計
100
13.6
9
Agricultural Bank of China
23
10
Bank of China
22
通信
Pwc Global Top 100 Companies by Market Cap, 2013 July
Forbes Global 500, 2013 June
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日本の上流事業会社の特徴
政府系
INPEX (国際石油開発)、JAPEX(石油資源開発)
商社系
三井物産、三菱商事、住友商事、双日、伊藤忠、丸紅の各事
業子会社
元売り系
JX日鉱日石油開発(新日石)、出光オイルアンドガス、コスモ
エネルギー開発
日本企業による上流事業は、政府系、商社系、元売り系の
3系統のみ
なぜ日本にはベンチャー系石油会社が育っていないの
か?
 国策事業、安全保障政策としての歴史的経緯とマインドセット
 中小油田に関する情報の欠如
 ファンド・レイズの難しさ
36
• Sample Movies
• Horizontal Drilling & Hydraulic Fracking
• http://total.com/en/energies-expertise/oil-gas/exploration-production/strategicsectors/unconventional-gas
• http://www.youtube.com/watch?v=YemKzEPugpk
• PAD drilling rig move
• http://www.rangeresources.com/getdoc/52dd1ec3-83d9-425c-ac867a5b0c81aee4/Walking-Rig-Time-Lapse.aspx
37