安全科学研究部門 2015年9月10日 北九州国際会議場 第5回ナノカーボン実用化推進研究会 最新ナノ規制動向 技術研究組合 単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC) 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 五十嵐卓也 安全科学研究部門 本日のメニュー ●日本の動向 ・厚生労働省労働基準局 労働安全衛生法 ●北米の動向 ・米国EPA TSCAナノ届出規則案 ・米国EPA TSCAグラフェンSNUR ・カナダ環境省 既存ナノ物質の報告徴収 ●欧州連合の動向 ・欧州委員会 ナノマテリアル定義勧告の見直し ・ナノ登録制度 ●国際機関の動向 ・OECD代表的工業ナノ材料の安全性試験データのドシエ公表 ・国際化学物質管理会議第4回会合(ICCM4) ・ISO/TC229第18回総会 2 安全科学研究部門 日本の動向1 ●厚生労働省労働基準局 ・化学物質のリスク評価検討会 ・化学物質のリスク評価に係る企画検討会 IARC発がん性評価 二酸化チタ ンは非ナノも含め2B、CNTは MWCNT-7だけが2B、他は3。 2B: ヒトへの発がん性があるかも ・ナノ材料である二酸化チタンの詳細評価を受けて →非ナノの二酸化チタンと併せて詳細評価を継続 ・多層CNTの発がん性試験(2年間吸入暴露試験)結果を受けて →がん原性指針(法第28条第3項)の対象? →「複層カーボンナ ノチューブ(MWNT-7)ただし製造事業者により当該製品の名称がNT-7、 NT-7Kに変更されたため、これら変更後の名称の製品も含む」を追加 →リスク評価の対象にする? →「セブン」製造中止ゆえ否定 私見:CNTに発がん性報道への対処の考え方 ●ナノ材料はCNTという物質名で単純にはくくれない(セブンは特殊だ) ●短くする・毛玉にする等の工夫で、CNTでも繊維毒性仮説から逃れられる可能性 ●セブンという確かな陽性対照→それとの生体反応の違いを示せばよい ●IARC2B物質や安衛法特化物でも適正管理下で使用継続しているものは多い 3 安全科学研究部門 日本の動向2 ※SDS: Safety Data Sheet ●厚生労働省労働基準局 ・改正労働安全衛生法のリスクアセスメント(2016年6月1日施行) →(従来どおり)化学物質取扱い作業現場で実施努力義務 →SDS交付義務640物質取扱い作業現場で実施義務化 ★二酸化チタン等の金属/金属酸化物のナノ材料も含まれる →うち特別則116物質は規定の措置実施でOK(従来どおり) 中央労働災害 防止協会 website掲載の 厚生労働省 森戸和美化学 物質対策課長 「化学物質の リスクアセス メントの義務 化」から転載 4 安全科学研究部門 北米の動向1 ●米国EPA TSCAナノ届出規則案 米国EPAは、2015年3月25日、ナノスケール材料として製造(輸入 を含む)又は加工される化学物質についてTSCA第8条(a)項に基づ く報告及び記録保管規則提案文を発表。提案文は,2015年4月6日 付けの連邦官報に掲載され、同日から4か月間、パブリックコメント が募集された ・報告対象:固体であり、一次粒子又は凝集体が1~100ナノメート ルのサイズ範囲にあり、かつ、そのサイズゆえに固有かつ新規の 特性を示す、という状態に製造又は加工される化学物質 ・同じ報告対象化学物質について複数の異なる状態のものを製造 又は加工している場合、「識別可能な状態」ごとに報告。この「識別 可能な状態」の定義は、ナノ材料の同等性判断基準ともいえる ・1回限りの電子報告 5 安全科学研究部門 北米の動向2 ●米国EPA TSCAグラフェン重要新規利用規則(SNUR) 米国EPAは、2015年6月5日付けの官報で、製造前届出(PMNs、TSCA第 5(a)(1)(A)項)が提出された22物質に対して20件の重要新規利用規則(TSCA第 5(a)(2)項)の直接最終規則を提示。規則は、反対表明がなければ、2015年8月4 日に発効する。 PMN番号P-14-763グラフェンナノプレートレット(ナノ小片)について は、以下①~⑥の保護措置がとられない場合を「重要新規利用」 に指定。 ①個人保護具の使用。不透過性手袋と保護衣(経皮暴露の可能性があるとき)、 NIOSH認証の呼吸器具(吸入暴露の可能性があるとき) ②ハザードコミュニケーション対策の確立と利用 ③同意指令に規定の製造・加工・使用に限定 ④蒸気、ミスト又はエアロゾルを発生させる使用方法で使用しないこと ⑤同意指令に規定の秘密の製造量限度を超える前に特定の毒性データ(CNT と同様、90日間吸入暴露+3か月観察)を提出すること ⑥製造・加工・使用から米国水系への予見できる又は意図的な放出がないこと 6 安全科学研究部門 北米の動向3 ●カナダ環境省 既存ナノマテリアルの報告徴収 2015年7月25日、カナダ環境保護法71(1)(b)項に基づき、 206種類の既存化学物質であるナノマテリアル(年間100kg以上)の 製造・輸入業者に、名称・数量・毒性に関する未公表データ等を 2016年2月23日までに報告することを義務付けた通知を発表 http://gazette.gc.ca/rp-pr/p1/2015/2015-07-25/html/notice-avis-eng.php ナノカーボン類は、カーボンブラックを含め、対象になっていないと 思われる ナノセルロースは、かなり捕捉されるか? ちなみに、カナダ環境省は、2015年8月1日、「製造時のサイズが 0.1μm超5mm以下の合成高分子粒子」(いわゆるマイクロビーズ) をカナダ環境保護法の表1(毒性物質)に追加する提案を発表、 今後、禁止を含む厳しい法規制をかけることになる (2015年6月8日国連環境計画(UNEP)の報告書「化粧品中のプラスチック」は、 マイクロ(及びナノ)プラスチックの化粧品への使用禁止を求めている) 7 安全科学研究部門 欧州連合の動向1 ●欧州委員会の定義勧告の見直し 定義勧告本文第6項:「第1項から第5項で提示された定義は、得 られた経験並びに科学的及び技術的発展を踏まえて2014年12月 までに見直す。この見直しは、主に個数サイズ分布の敷居値であ る50%を上げるべきか下げるべきかが焦点になるだろう。」 欧州委員会JRC-IHCPが報告書「用語ナノマテリアルの欧州委 員会定義勧告の見直しに向けて」3部作を公表 ・2014年3月 第1部 定義の経験の情報集 ・2014年8月 第2部 収集した定義の経験の情報の評価 ・2015年7月 第3部 定義の明確化と実施促進のための選択肢 の科学技術的評価 → 敷居値には触れず、長く複雑な定義へ? 最後の報告書の記者発表文によれば 「勧告の改定は2016年」 8 安全科学研究部門 欧州連合の動向2 ●ナノ登録制度 独自のナノ登録制度の制定又は制定準備の動きが広がる フランス 2012年8月制定、2013年から運用 デンマーク 2014年6月制定、2015年から運用 ベルギー 2014年9月制定、2015年から運用 スウェーデン 2015年中に法案を作成 イタリア 準備中 9 安全科学研究部門 国際機関の動向1 ●OECD代表的工業ナノ材料の安全性試験データのドシエ公表 工業ナノ材料作業部会(WPMN)は、13種の代表的工業ナノ材料 を対象に安全性試験スポンサーシッププログラムを実施し、その成 果として、11種の工業ナノ材料についてドシエを公表 ・2015年6月9日公表: 金ナノ粒子、酸化セリウム、 デンドリマー、ナノクレイ、 フラーレン、多層CNT、 単層CNT、二酸化ケイ素 ・2015年6月15日公表:銀ナノ粒子 ・未公表:酸化亜鉛、二酸化チタン 各ドシエの合計ファイルサイズ(MB) http://www.oecd.org/chemicalsafety/nanosafety/dossiers-and-endpointstesting-programme-manufactured-nanomaterials.htm 10 安全科学研究部門 国際機関の動向2 ●国際化学物質管理会議第4回会合(ICCM4) 9月28日-10月2日 ジュネーブで開催 議題5 適正な化学物質管理の2020年目標の達成に向けた実施 (b) 新規政策課題及びその他の懸念課題 (iii) 既存の新規政策課題 d ナノテクノロジー及びナノ材料 2014年12月15-17日にジュネーブで開催の第2回公開WG会合で 合意された「ナノテクノロジー及びナノ材料に関する決議の要素」 に基づいて決議案を合意、採択する見込み ◎三大要素:①情報交換の促進、②国際的な技術・規制ガイダン スと研修資料の開発、③国連GHS小委員会の活動を歓迎 ○付加的要素:啓発・能力向上継続、情報アクセス増強、国連訓 練調査研究所の国家ナノ政策・事業ガイダンスの活用、ICCM決議 実施への取組継続、資金提供、事務局による進捗報告 11 安全科学研究部門 国際機関の動向3 ●ISO/TC229第18回総会 (赤ナノカーボン 緑日本主導) 9月28日-10月2日 カナダ・エドモントンで開催 JWG1:用語解説TR、ナノ薄膜用語TS、グラフェン用語TS、セルロー スナノ材料用語TS JWG2:計測方法マトリクスTR、単粒子ICP-MSTS、セルロースナノク リスタル評価TS、グラフェン評価計測マトリクスTS、水中金属ナノ粒 子の分離分級TR、気中ナノ粒子顕微鏡法のための捕集調製TS 粒子径計測SEM法p、グラフェン構造評価p、平均粒子径計測SMLS 法p、産業粉塵気中ナノ定量p、FFF評価p、粒子径計測TEM法p WG3:試料調製ドジメトリTR、ナノOEL・OEBTR、金属ナノ粒子ROS産 生ESR法TS、修正MTSアッセイIS、DCFH-DAアッセイTS、バイオデュ ラビイリティ評価TR、インビトロ試験懸濁液評価TS、エアロゾル生成 TR、水生毒性アルテミア法TS、懸濁液中光触媒活性IS、体内動態p WG4:磁性ナノ粒子懸濁液IS、抗菌性銀ナノ粒子TS、CNT分散液p、 ナノクレイp、エアフィルタメディアp 12 安全科学研究部門 この講演は、 国立研究開発法人新エネルギー・産業 技術総合開発機構(NEDO)や 経済産業省の委託業務等 で得られた成果を反映したものです 13 安全科学研究部門 ◎TASC 技術研究組合 単層CNT融合新材料 研究開発機構 が運営する Nanosafety website (で検索)に 関連資料を蓄積・公開しています ○講演内容への御質問・資料請求は t-igarashi@aist.go.jpまで △自動車技術会の会報誌「自動車技術」11月号 ナノマテリアル特集に「ナノマテリアルの安全性 に関する規制の国際動向」を寄稿、私見を披露 14
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