の 実用編 小型競技用ロボット (弊社 三宅製作) 歯車図面 全日本学生フォーミュラ大会ユニーク デザイン賞受賞の明星大学フォーミュラカープロジェクト車体 (ステアリング系に KHK KBX ベベルボックス使用) 弊社キャラクタ「はぐるまくん」と一緒に勉強しよう。 Contents 1. 歯車の使い方と選び方 P 2 1-1 平行軸での使い方 P 4 1-2 交差軸での使い方 P 6 1-3 食い違い軸での使い方 P 8 1-4 標準歯車の便利な選び方 P10 2. 歯車仕様の決め方 P12 こんにちは、はぐるま君です。歯 2-1 歯車使用条件の設定 P12 車 ABC は、 「入門編」 「基礎編」 「実 2-2 歯車仕様の設定方法 P13 用編」の 3 冊があります。 「入門編」と「基礎編」は、いか がでしたか。歯車の歴史や役目、 そして歯車の基礎がご理解いただ けたでしょうか? この「実用編」では KHK 標準歯 車を例にとり、適切な歯車を選ん で仕様を決め、図面を書いて作る まで、また完成した歯車の取り付 けや確認方法などを紹介していま す。お客様が歯車を設計するとき も、KHK 製品の仕様をベースに すると設計の効率化に役立ちます ので是非ご覧ください。 2-3 歯車仕様の計算 P16 3. 歯車図面の作り方 P18 3-1 歯車の図面 P18 3-2 歯車図面の作図支援 P22 4. 歯車の組付けと潤滑 P24 4-1 歯車の組付けと確認方法 P24 4-2 歯車の潤滑方法 P30 4-3 潤滑油の選定方法 P32 4-4 安全上の注意と起動時の注意 P35 歯車ABC 実用編 1. 歯車の使い方と選び方 歯車は動力を伝達するために使用します。 伝達方向によって歯車の種類が異なるため、歯車の使い方を理解し てから適切な歯車を選んでください。 歯車の分類 平行軸 ■平歯車 ■ラック&ピニオン P4 交差軸 P5 ■マイタ ■かさ歯車 P6 P7 食い違い軸 ■ウォームギヤ P9 ■ねじ歯車 P8 -- 1. 歯車の使い方と選び方 あの機械には 何の歯車が使 われているの かなぁ 歯車の種類 平歯車 KHK標準歯車紹介 MSGA SSG SS SUS PS KHG SH KRG (F) (D) SRFD SUR (F) (D) PR (F) KRHG (F) SI SIR MMSG SMSG MM SUM PM SB・SBY SB・SB SB SUB PB DB MBSG SBSG MBSA (B) SBS SN SUN AN PN KWGDL (S) & AGDL KWG & AGF SWG & AG (スパーギヤ) はすば歯車 (ヘリカルギヤ) ラック ヘリカルラック 内歯車 (インターナルギヤ) マイタ すぐばかさ歯車 (ストレートベベルギヤ) まがりばかさ歯車 (スパイラルベベルギヤ) ねじ歯車 (スパイラルギヤ) ウォーム SW & BG・CG SUW & PG BG・CG ウォームホイール -- 歯車ABC 実用編 1 ー 1 平行軸での使い方 ■平歯車の使い方 平行軸 ●線材送り装置 高島産業社製 高島式高速自動線材矯正切断機 TCH-9L 機械の説明 線材のねじれや曲がりを防止しながら自動的に矯正と切断を行う機械です。 線材を送る装置に弊社 SS 及び SSA 平歯車を使って頂いております。 ●食材送り装置 ンには平歯車や 自動車のミッショ よ。 さん使われている はすば歯車がたく PKDesign 提供 ジェイマシン社製 全自動成形機 JG-180A 機械の説明 餃子や小籠包など 1 台で 10 品目以上の食品の生 産が可能な全自動成形機です。食材の具を送る装置 に弊社 PS 及び PSA プラスチック平歯車を使って 頂いております。 -- 1. 歯車の使い方と選び方 ■ラック&ピニオンの使い方 平行軸 ●テーブル送り装置 ドリマックス社製 自動送りハイスピードツマカッター F-T200 機械の説明 強制送り装置付高性能ツマカッターです。両端を切り落とした大根をセットするだけで、同時に2 本処理できます。テーブルの強制送り装置に弊社 PR プラスチックラック及び PS プラスチック平 歯車を使って頂いております。 ●充填弁の開閉装置 ク リングにはラッ 自動車のステア 。 よ われているんだ &ピニオンが使 PKDesign 提供 マスダック社製 小型ワッフル・どら焼き機 SDR-SGA-Z 機械の説明 ワッフルやどら焼き機の皮の焼成から焼きあがった皮を コンベアに出すまでの工程を自動化した機械です。生地 を充填する弁の開閉装置に弊社 SR ラックと SS 平歯車 を使って頂いております。 -- 歯車ABC 実用編 1 ー 2 交差軸での使い方 ■かさ歯車の使い方 ●生地の反転装置 マスダック社製 どら焼き機 SDR-KAM-24GA 機械の説明 生地充填、焼成、反転、中身充填、合わせなどの各工程が全自動のどら焼き機です。 焼きあがった生地の中間返しの装置に、弊社 SM マイタを使って頂いております。 ギヤ はす ごい んだ 。 自動 車の デフ ァレ ンシ ャル スム ーズ にコ ーナ ー この 機構 で安 全に 、そ して を曲 がれ るん だぁ 。 PKDesign 提供 -- 1. 歯車の使い方と選び方 交差軸 ●プロペラの駆動装置 東京工業大学 Meister チーム製作 人力飛行機 機体の説明 鳥人間コンテストでおなじみの人力プロペラ機です。東工大 Meister チームは、日大や東北大チーム と同様に高い技術と、完成度の高い機体を製作し、いつも上位入賞しています。そのペダルからプ ロペラを回す駆動装置に弊社 MBSA(B) まがりばかさ歯車を使って頂いております。 ●前後輪駆動装置 SHESCO 社製 フルタイム2WD BIKE 自転車の説明 ペダルを踏むと後輪だけでなく、ギヤとシャフトで接続された前輪にも駆動力が掛かり、雪上や氷 上でも走れる2WD の自転車です。シャフトドライブ方式による前輪駆動装置に、弊社 SB かさ歯車 を使って頂いております。 -- 歯車ABC 実用編 1 ー 3 食い違い軸での使い方 ■ねじ歯車の使い方 ●銅板(焼き型)の送り装置 マスダック社製 中型ワッフル・どら焼き機 SDR-SGA-500 機械の説明 1台でワッフル、どら焼き、トラ焼き、鮎焼き、あん巻き…いろいろな直焼き商 品が作れるコンパクトマシンです。焼成部の銅板(焼き型に変換可)を送る装置に、 弊社 SN ねじ歯車を使って頂いております。 ●ローラによる送り装置 ワーク ワーク ローラ ローラ ローラ ローラ 装置の説明 装置の説明 1つの入力軸にねじれ方向が同じ複数のねじ歯車 を取り付けて、同じ方向に回転するローラの上に 乗せたワークを左右に移動させる装置です。 ローラ 1つの入力軸にねじれ方向が違う2つのねじ歯車 を取り付けてローラを逆転させ、はさみ込んだ ワークを上下に移動させる装置です。 -- 1. 歯車の使い方と選び方 ■ウォーム&ホイールの使い方 食い違い軸 ●容器の反転装置 ヤエス社製 スチームケトル SK- 6 機械の説明 食品加工機です。容水量 360ℓ、煮炊量 216kg の容器を反転する装置に 弊社 SW ウォームと CG ウォームホイールを使って頂いております。 ●生地の充填装置 も大き モータで な さ 小 わせて えば、 構と組合 ギヤを使 機 ム ク ー ン ォ リ ウ 。 ね。 してるよ するんだ ーを動か な仕事を パ イ ワ 自動車の PKDesign 提供 マスダック社製 食材充填装置 SAD-SD 装置の説明 容器に入れた食材を正確に一定量充填する装置で す。その装置の駆動と割り出し用ギヤとして、弊 社 KWGDL 複リードウォームと AGDL ホイール を使って頂いております。 -- 歯車ABC 実用編 1 ー 4 標準歯車の便利な選び方 使いたい歯車のイメージはつかめたでしょうか?それでは具体的に歯車の種類を決めましょう。 目的の歯車を選定する場合、当社の Web カタログをご利用頂くと大変便利です。 140 品目に分類された 7000 種の KHK 標準歯車の写真と特長を見ることができるため、きっ と目的の歯車が素早く見つかると思います。是非ご利用ください。 1.写真を見て検索 ●歯車の種類別に製品写真を見ながら KHK 標準歯車が選択できます。 KW GD 1-20 SS LS KHK 3.5 -R1 MM2-25 SSG ●カタログ記号を入力してダイレクト に KHK 標準歯車が選択できます。 2.カタログ記号で検索 - 10 - 1. 歯車の使い方と選び方 3.歯車強度で検索 ●ご使用する負荷に耐える強度の KHK 標準歯車が選択できます。 検索 4.歯車仕様で検索 ●ご希望の歯車仕様や価格の KHK 標準歯車が選択できます。 - 11 - 歯車ABC 実用編 2. 歯車仕様の決め方 歯車は材料、熱処理、精度、表面処理の違いによって性能が変わり ます。第 1 章で機構が決まりましたら次に歯車の仕様を検討してく ださい。 2 ー 1 歯車使用条件の設定 まず機械の使用条件、すなわち歯車の使用条件を設定します。 決めなければならない使用条件は設計者の意図によって異なりますが、ここでは第 1 章の伸線 機の平行軸に使用する平歯車の使用条件を設定します。 ■歯車の使用条件設定表 設定項目 設定値 モータ出力 0.5 kW 入力回転数 60rpm 速度伝達比 1.4 程度 回転方向 片側一方向回転 歯車の支持方法 片持ち支持 中心距離 80mm 程度 潤滑方法 グリース潤滑 出力軸の負荷トルク 6.5kgf・m 期待寿命 1 日 5 時間、 週 5 日稼動で 3 年間 解説 入力回転数や最大負荷トルクを考慮して適切 なモータを選定します。 60rpm は低速ですが、高速で使用する場合 は振動や騒音に影響します。 入力軸と出力軸の速度伝達比です。大歯車の 歯数 ÷小歯車の歯数で計算してください。 荷重方向が一定なので両方向回転より負荷条 件が良くなります。 軸がたわむため両側支持より使用条件が悪く なります。 歯車の取付けスペースを考慮して決めてくだ さい。 潤滑条件は悪い部類です。歯車は油浴式(オ イルバス)や強制潤滑方式が基本となります。 歯車を強度から選定するときの基本値です。 できるだけ正確な負荷トルクを設定してくだ さい。 歯車の寿命計算はできませんが、歯車を強度 から選択するときの目安となります。 ※設定値は当社で考えた想定値であり実際の機械スペックではありません。 - 12 - 2. 歯車仕様の決め方 2 ー 2 歯車仕様の設定方法 次に使用条件を満たす歯車の仕様を設定します。 歯車仕様を決める場合、大きさ、強さ、精度、コスト ・・・ など、多くの条件を検討しなければな りませんが、当社のカタログをご利用頂き、使用条件を満たす KHK 標準歯車を目安にすると適 切な歯車仕様をスピーディーに決めることができます。 それでは、前記の使用条件設定表に基づいて平歯車の仕様を設定してみましょう。 ■強度についての検討 強度を検討する場合、負荷トルクより許容曲げ強さと許容歯面強さが大きい歯車仕様にしますが、 低速回転で短期間使用する場合、曲げ強さのみで仕様を決めることがあります。また、通常、負 荷トルクから選定することが基本ですが、負荷トルクが不明な場合は、使用するモータの出力ト ルクから仕様を決めることがあります。ただし、オーバースペックになりがちなのでご注意くだ さい。下表は許容曲げ強さと歯面強さが負荷トルク 6.5kgf・m を満たす KHK 標準歯車の選定 結果です。 Web カタログ「負荷トルク検索」により検索される平歯車製品一覧表(抜粋) トルク(kgf・m) 精度 製品 材質 熱処理 (級) 曲げ強さ 歯面強さ MSGA4 -15 SCM415 SSG4 - 15 価格(円) 全面浸炭焼入れ N5 59.7 30.8 8,950 S45C 歯面高周波焼入れ N7 20.1 7.55 6,470 SS4 - 32 S45C なし N8 72.1 6.87 6,840 SSA4 - 32 S45C なし N8 72.1 6.87 5,430 SUSA4 - 40 SUS303 なし N8 53.2 7.86 34,930 ※ Web カタログの検索結果はシリーズの同一モジュールごとに負荷トルクを満たす最小歯数の製品が選択されます。 選定された歯数以上の製品も負荷トルクを許容いたします。価格は 2010 年 3 月現在 <ワンポイントアドバイス> 歯車の強度アップには、歯車を大きくする、歯幅を広くする、強い(= 許容 応力値の高い)材料を使用する等の方法があります。また、焼入れしていない S45C 製品に歯面焼入れを施すと、歯面強さが 4 ~ 5 倍程度アップします。 ただし、熱の影響で歯車精度が悪化するためご注意ください。 Web カタログの寸法表「強度計算」にて SSA4 - 24 を計算 製品 SSA4 - 24 材質 S45C トルク(kgf・m) 曲げ強さ 歯面強さ 歯面高周波焼入れ 精度 (級) なし N8 48.8 あり N9 44.3 3.41 15.2 *上記強度計算は、KHK で設定した任意の使用条件(初期値)で焼入れ有無を比較した計算結果です。 - 13 - 歯車ABC 実用編 ■歯車の大きさについての検討 歯車の大きさを検討する場合、歯車の取付けスペース、中心距離、速度伝達比を考慮したモジュー ルと歯数を設定します。下表は中心距離が 80 mm程度、歯車伝達比 1.4 程度を満たす KHK 標準歯車の選定結果です。 中心距離 速度伝達比 モジュール 小歯車歯数 大歯車歯数 80 1.46 2.5 26 38 81 1.45 3 22 32 82 1.41 4 17 24 KHK 標準歯車シリーズ SSG、SS、PS SSG、SS、SSA、SUS、 SUSA、NSU、PS、PSA MSGA、MSGB、SSG、 SS、SSA ■歯車仕様の設定 機械の特性や使用する環境に応じて、その他にも検討しなければならない歯車仕様があります。 前記の歯車使用条件及び歯車仕様の検討結果をふまえて歯車仕様を設定してみましょう。 ここでは、使用条件を満たす KHK 標準歯車が選定できたため、その歯車仕様に基づいて設定理 由を解説します。KHK 標準歯車を使用すれば製造コストの低減や製作期間短縮などのメリットが あります。是非ご利用ください。 標準歯車の追加工は「歯車工房」にお任せください。 穴径 キーみぞ タップ 下記加工も「歯車工房」にお任せください。 (2)熱処理 (1)表面処理 1. メッキ ①亜鉛メッキ ・・・ クロメート黒、白 (3 価対応) ②クロームメッキ ・・・ 黒、光沢 ③ニッケルメッキ ・・・ 電解ニッケル、無電解ニッケル ④レイデント ・・・ レイデント処理、フッ化レイデント処理 1. 高周波焼入 2. パーカー処理 ①パルホス M・・・ リン酸マンガン皮膜処理 ②デフリックコート ・・・ 固体皮膜潤滑剤 (3)その他 2. 窒化 ①ガス窒化 ②ガス軟窒化 ③塩浴軟窒化 1. ワイヤーカット 2. フライス加工 3. 黒染め処理 - 14 - 2. 歯車仕様の決め方 ●選定した KHK 標準歯車 小歯車:SS4 - 17、歯面高周波焼入れ 大歯車:SSA4 - 24、歯面高周波焼入れ 歯車仕様 歯車の種類 歯車精度等級 SS4 - 17 SSA4 - 24 平歯車 平歯車 JIS N9 級程度 JIS N9 級程度 モジュール 4 圧力角 20° 歯数 17 24 歯幅 40mm 40mm 基準円直径 68mm 96mm 0 0 18.67(2 枚またぎ) 30.87(3 枚またぎ) S45C S45C 歯面高周波焼入れ HRC45 ~ 55 歯面高周波焼入れ HRC45 ~ 55 切削仕上げ 切削仕上げ 許容トルク ( 曲げ強さ ) 41.2 kgf・m 64.7 kgf・m 許容トルク ( 歯面強さ ) 4.79 kgf・m 6.77 kgf・m 2,810 円+追加工費 3,920 円+追加工費 転位係数 またぎ歯厚 材料 熱処理 歯面仕上げ 価格 ※ 2010 年 3 月現在 速度伝達比 1.41 中心距離 82mm <解説> ●強度について 使用条件の期待寿命(1 日 5 時間、週 5 日稼動で 3 年間)から歯車のかみ合い回数 X を小歯 車の回転数n(60rpm)から計算すると 7 X = 60rpm × 60 分× 5 時間× 260 日× 3 年= 1.4 × 10 となり、耐久性が必要なた め曲げ強さだけでなく、大歯車の歯面強さが負荷トルク 6.5kgf・m を満たす仕様としました。 また、小歯車に加わる負荷トルク 4.61kgf・m(大歯車の負荷トルク 6.5 ÷速度伝達比 1.41) も満たす仕様としました。 ●大きさについて 使用条件の速度伝達比(1.4 程度)と中心距離(80mm 程度)が極力近くなる大きさとしました。 ●その他 機械の特性や使用条件の回転数(60rpm)から、騒音対策、サビ対策、軽量化などを考慮しな くても良いので、コストを抑えるため歯車精度が「JIS N9 程度」、材料は「S45C」 である KHK 標準歯車から選定しました。 ■歯車形状の設定 歯車仕様が決まったら、歯車の取付け方法を考慮した形状寸法を設定します。 取付ける軸径に従って、適切な穴径、キー溝、取付ねじなどの寸法を決めてください。KHK 標準 歯車をご利用頂ければ、Web カタログから追加工の設定が簡単にできます。(P16 参照 ) また製 作は、メーカー保証の「歯車工房」(当社で行う追加工)にお任せください。 - 15 - 歯車ABC 実用編 2ー 3 歯車仕様の計算 歯車仕様の計算は、歯車 ABC の「B 基礎編」で紹介しているため、ここでは当社のホームペー ジで公開している受注歯車の仕様が簡単に計算できるサービスを紹介します。 受注歯車の 歯車仕様計算は GCSW for Web をご利用ください。 URL w / o.jp s.c ear hkg .k ww 「寸法計算」、「強度計算」、「歯車に働 く力の計算」をはじめ、「歯形計算」、 「拘束かみ合い歯車列の計算」、「バッ クラッシ計算」など設計に必要な機能 を Web で無償で公開しています。是 非ご利用ください。 受注歯車の 寸法計算と作図は受注歯車の自動作図をご利用ください。 お客様の仕様で寸法計算と作図 が出来ます。詳しくは P23 を ご覧ください。 - 16 - 2. 歯車仕様の決め方 KHK 標準歯車の 追加工図作成は Web カタログをご利用ください。(下図の①より) 穴径、キー溝、タップ寸法などを入力するだけでスピーディーに追加工図を作成することが できます。作図の手間を省いてコストダウンに役立ててください。詳しくは P22 をご覧くだ さい。 強度計算 も Web カタログをご利用ください。(下図の②より) ② ① ■歯面強さの定義 JGMA 402-01(1975)より抜粋 歯車の歯面の強さとは、 進行性ピッ チングに対して必要かつ十分な安 全度を歯車に与えるために規定す る負荷容量をいう。従って、歯車 の歯面許容荷重とは、互いにかみ 合って動力を伝達する歯車におい て、それぞれの歯車の歯面の強さ に基づいて決められる基準ピッチ 円上の許容円周力をいう。 歯面強さ不足による摩耗例 ■曲げ強さの定義 JGMA 401-01(1974)より抜粋 歯車の曲げ許容荷重とは、互い にかみ合って動力を伝達する 歯車において、それぞれの歯車 の許容歯元曲げ応力に基づい て決められるかみ合いピッチ 円上の許容円周力をいう。 曲げ強さ不足による破損例 計算結果 - 17 - 歯車ABC 実用編 3. 歯車図面の作り方 歯車を製作する場合、図面が必要です。基本的な歯車の仕様を記載 した図面を作成し、製作は KHK にお任せください。 3 ー 1 歯車の図面 歯車の多くは円筒形をしており中心線に対して対称形状のため、正面図、又は正面図と側面図で 製品寸法を表すことができます。歯車独特の用語や寸法記載方法もありますが、歯車の基礎と機 械製図の基本さえ理解していれば決して難しいものではありません。 この章では、当社の図面により各種歯車の図面の作り方を紹介いたします。図面はお客様と製造 者の大事な契約内容となりますので、お客様の意図をしっかり図面に盛り込みましょう。 ■平歯車の図面 形状と寸法を記載します。円筒歯車は中 心線の軸断面を基準に正面図と側面図を 描きます。そして基本形状の寸法と必要 な公差を記載してください。 製品全体の表面粗さを表します。部分的 に粗さが違うときは、形状図の該当箇所 に直接仕上記号を記載してください。 9 第 2 章で決めた歯車仕様を記載するところです。 「歯車種類」 「精度等級」 「モジュール」 「圧力角」 「歯数」 「材 料」「熱処理」・・・ 歯車の基本仕様(諸元)は必ず記載 してください。 歯面高周波焼入れ HRC45∼55 ABC001 品名や図番は任意です。部品番号を記載しておけば、 どの機械にこの歯車を使うのか一目でわかり、お客 様の図面管理に便利です。 - 18 - 3. 歯車図面の作り方 ■内歯車の図面 不等配の場合には、側面図が必 要です。側面図に座グリ穴の位 置を明記してください。 ( ) 使用上、必要な公差は必 ず記載してください。 キー溝などがなく、側面図に寸法記載がいらない製 品は正面図(断面図)だけで製品形状が表せます。 ABC002 ■ラックの図面 特定箇所の仕上記号はこのように表します。 7 取付穴付ヘリカルラックなど、非対称形状の製品は正面 図、側面図、上面図の三面図を描画して製品形状を表し ます。 ABC003 - 19 - 歯車ABC 実用編 ■かさ歯車の図面 かさ歯車はセットする相手 が決まっているため、基準 となる組立距離を記載して ください。 歯車仕様欄にバック ラッシと相手歯数を 記載してください。 円すい形状の製品は 角度寸法が必要です。 ABC004 歯車の図面は形状を作るための 全ての寸法が必要です。使用上、 意図する C 面やコーナーの R 寸法も記載してください。 材料や熱処理も明確 に記載してください。 1989 年 ABC005 - 20 - 3. 歯車図面の作り方 ■ウォームギヤの図面 特記事項は言葉で記載して ください。 振れ精度が必要な部分に幾 何公差を記載します。 C1、C2・・・ の面取り記号は 45°の 角度で決まっています。角度指定が あるときは角度と寸法で表します。 焼入箇所(歯面)は 明確に記載します。 歯面高周波焼入れ HRC45∼55 ABC006 のど円直径です。はすば歯車 の歯先円直径にあたります。 歯先円直径は任意ですが、当社 ではのど円直径 + モジュールに 設定しております。 2009 年 相手ウォームとセットしたときの組立距離 を記載してください。製作時に基準となる 寸法です。 ABC007 - 21 - 歯車ABC 実用編 3 ー 2 歯車図面の作図支援 KHK では、お客様の仕様による歯車の図面を数値入力だけで簡単に作図できるシステムをご用 意しております。初めての方にも簡単に歯車の図面作成ができますので是非お試しください。 ■ KHK 標準歯車追加工の作図支援 KHK Web カタログ www.khkgears.co.jp/web_catalog/index.html KHK 標準歯車の多くは下穴製品であり、お客様の仕様に合わせて追加工が可能です。 長年の実績を誇る KHK Web カタログと CD カタログの追加工図作成システムをご利用ください。 ●製品を選択し「図面表示 / 追加工図作成」をクリックします。 3次元データを出力できます。 ●「追加工指示」をクリックします。 ●「図面作成」をクリックします。 DXF データ 印刷 ●印刷や CAD データとして保存してください。 - 22 - 3. 歯車図面の作り方 ■受注歯車の作図支援 受注歯車自動作図システム www.khkgears.co.jp/khkweb/order/main.do お客様の仕様で簡単に歯車の図面作成ができます。また、歯車の寸法計算書や DXF データを出 力することもできます。 強度計算や歯車に働く力の計算は「歯車計算ソフト GCSW for Web」(登録ユーザー制)を合 わせてご利用ください。 歯車計算ソフト GCSW for Web www.khkgears.co.jp/gear_technology/gcswforweb.html ※各種歯車の作図は基本形状のみとさせていただきます。 平・はすば歯車 内歯車 マイタ・かさ歯車 ラック ねじ歯車 ウォームギヤ ※この機能で作図された形状は製作不可の場合もありますので予めご了承ください。 - 23 - 歯車ABC 実用編 4. 歯車の組付けと潤滑 歯車の組付けや潤滑が悪いと思わぬトラブルの原因となります。 ここでは正しい組付けや潤滑油の選定方法をご紹介いたします。 4 ー 1 歯車の組付けと確認方法 歯車は回転部品のため、安全を考慮して確実に軸に取付けてください。 また、歯車の形状や歯のねじれによって軸方向力(スラスト)が生じるため、歯車が軸方向に移 動しないように注意が必要です。ここでは安全な歯車の取付け方法と取付け後の確認方法をご紹 介いたします。 ■平歯車 平歯車はスラストが発生しませんが、回転中に歯車の側面が軸受のフレームなどに接しないよ う、確実に軸へ取付けてください。また、相手歯車とのかみ合い箇所がずれていると強度面に影 響するため、設定した位置に正しく取付けてください。 下図の番号①~⑦はフレームに平歯車を取付ける順番です。 ①玉軸受 ⑦六角穴付止めねじ ⑤カラー ④平歯車 (KHK SS4-17) ⑥ナット ②シャフト ③平行キー ④平歯車 (KHK SSA4-24) きは ると ね。 れ に入 して を軸 に注意 車 歯 」 じり 「か ※歯車を組付ける前に「4ー4安全上の注意と起動時の注意(P35)を必ずご覧ください。」 - 24 - 4. 歯車の組付けと潤滑 ■ラック&ピニオン ラック&ピニオンは直動機構に使用されるため、ラックとピニオンの組立 距離(a)がどの位置でも一定に精度よく組み立てることがポイントです。 また、ピニオンは片持ち支持で軸受に取付けるケースが多いため、歯当た りが片当たりにならないように注意してください。 下図の番号①~④は、フレームにラックを取付ける順番です。 ピニオン ラック ③ラック全ストロークでピニオンを移動し、バックラッ シや歯当たりを確認しながら調整してください。特に繋 ぎ部の精度が重要です。 ストローク モータブラケット テーブル モータ リニアガイド モータ テーブル ラック フレーム ピニオン ②ラックを繋いで使う場合、繋ぎ部 のピッチは正確にセットしてくださ い。合わせラックを使うと便利です。 ピニオン ラック ラック フレーム フレーム ベース面 ①フレームのベース面にラックを密着さ せて、六角穴付ボルトで仮止めします。 ノックピン ラック KHK で て全 は、 長が 合わ せ 1 用意 00 m ラッ して mの クと いる ラッ し よ。 クも フレーム ④正確な位置が決ったら、ラックの位置がずれ ないようにノックピンを打ち込んで、六角穴付 ボルトを本締めしてください。 - 25 - 歯車ABC 実用編 ■かさ歯車 かさ歯車は入力軸と出力軸がある一点で交わる交差軸に使用するため、多く の場合、歯車を片持ち支持で使います。 その場合、軸がたわまないように軸径をできるだけ太くして剛性を高め、軸 受を歯車になるべく近い所にセットしてください。 また、かさ歯車は円すい形状をしているため、軸方向力(スラスト)が生じます。 特にまがりばかさ歯車は、回転方向とねじれ方向によってスラストが変化す るため、スラストの計算を行なって適切な軸受を選定してください。 マイタの回転方向とスラスト方向 スラスト 駆動 かさ歯車の回転方向とスラスト方向 スラスト L R スラスト 駆動 スラスト スラスト スラスト L スラスト 駆動 L スラスト R スラスト スラスト L R R スラスト 駆動 スラスト スラスト スラスト スラスト スラスト 注 . 歯数比 1.57 以下のスラスト方向はマイタと同じになります。 ●アンギュラ玉軸受を使用したかさ歯車の取付け例です。 ベア 力に リン 応じ グは ス を使 て適切 ラス って なも ト ね。 の ※歯車を組付ける前に「4ー4安全上の注意と起動時の注意(P35)を必ずご覧ください。」 - 26 - 4. 歯車の組付けと潤滑 かさ歯車の組立時には必ず歯当たり を確認してください。歯当たりの状 態によってセット誤差がわかりま す。セット誤差には、組立距離誤差、 オフセット誤差、軸角度誤差があり、 組立が悪いと異常な騒音や摩耗の原 因となります。歯車取付け位置を調 整しながらセットしてください。 正しい歯当たり ●正しい組立をした場合の歯当たりは、ピニオン 及びギヤ共に中央小端寄りの当たりとなります。 中央小端当たり 異常な歯当たり 組立距離誤差 ●ピニオンの組立距離誤差による 歯当たりは、図のような歯たけ方 向に高低差がある当たりとなり ます。 オフセット誤差 軸角度誤差 ●オフセット誤差による歯当たり は、図のようなクロス当たりとな ります。 ●軸角度誤差により歯当たりは、 ピニオン及びギヤ共に小端当た り、または大端当たりとなります。 低い当たり 誤差 高い当たり 大端当たり 誤差 誤差 高い当たり 低い当たり 誤差 小端当たり 小端当たり 誤差 小端当たり 大端当たり 誤差 大端当たり バックラッシの測定方法 バックラッシの測定は、下の写真のように歯面 にダイヤルゲージを垂直に当て、片方の歯車を 固定して測定します。歯車が密閉されている場 合は、入出力軸のどちらか片方を押さえて軸の 角度バックラッシを測定する方法もあります。 KHK KBX ベベルボックス 軸の ラッ 角度で シが もバ わか ック るよ 。 - 27 - 歯車ABC 実用編 ■ウォームギヤ 回転方向とスラスト方向 ウォームギヤは回転方向とねじれ方向 によって軸方向力(スラスト)が変化 するため、スラストの計算を行なって 適切な軸受をご使用ください。 特にウォームには大きなスラストが掛 かるため、スラスト軸受や円すいころ 軸受を使用して、ウォームや軸がスラ スト方向に移動しないように確実に セットすることが重要です。 スラスト スラスト スラスト スラスト 軸受の選定ミスや取付けミスによって 異常摩耗や思わぬトラブルが発生する ため、十分ご注意ください。 下の図は、円すいころ軸受を使用した ウォームギヤの取付け例です。 ウォ ー ない ムは よう 、軸 にセ 方向 ット に移 して 動し ね。 ※歯車を組付ける前に「4ー4安全上の注意と起動時の注意(P35)を必ずご覧ください。」 - 28 - 4. 歯車の組付けと潤滑 ウォームギヤの組立時には必ず歯当たりとバックラッシを確認してく ださい。組立の良否によって摩耗度合いが大きく左右されます。 組立時には下記の項目について歯当たりとバックラッシを十分確認し た上、ご使用ください。 ウォームギヤの歯当たり ●ウォーム軸とウォームホイール軸が、直角である か確認して、正しくセットしてください。 良 否 誤差 否 誤差 誤差 否 正側誤差 (+) 右ねじれ 否 良 ●ウォームギヤの組立距離(組立距離許容差 H7 ~ H8)を確認してください。 良 ●ウォーム軸の中心が、ウォームホイール歯幅の 中心であるか確認してください。 否 誤差 ●ウォームホイール軸の中心が、ウォーム歯幅の 中央にあるか確認してください。 良 否 否 負側誤差 (-) 左ねじれ 右ねじれ 左ねじれ 極 端 に ウ ォ ー ム が 一 方 に よ り ま す と、 ウォームが正確に回転いたしません。 バックラッシの測定方法 バックラッシの測定は、下の写真のようにテ コ式のダイヤルゲージをウォームホイールの かみ合い歯面に当て、回転方向のガタを測定 します。ウォームギヤが密封されている場合 は、入出力軸の角度バックラッシを測定する 方法もあります。 ࠙ࠜࡓ ࠙ࠜࡓ ࡎࠗ࡞ ࡎࠗ࡞ ߩࡃ࠶ࠢ ߩࡃ࠶ࠢ ࠶ࠪߩ ࠶ࠪߩ ᷹ቯޕ ᷹ቯޕ ߎࠇ߆ࠄ߽⧰ߒߎߣߪᴛጊࠆޕ ߎࠇ߆ࠄ߽⧰ߒߎߣߪᴛጊࠆޕ ╉ߞߡ೨ߦㅴߒ߆ߥޕ ╉ߞߡ೨ߦㅴߒ߆ߥޕ ߐߐ߿߆ߦᐘߖࠍ߈ߔ߁ޕ㨪 ߐߐ߿߆ߦᐘߖࠍ߈ߔ߁ޕ㨪 ㄆߣ߈ߪⓨࠍࠃ߁ޕࠆߡߞ߇ߥߟޕ ㄆߣ߈ߪⓨࠍࠃ߁ޕࠆߡߞ߇ߥߟޕ - 29 - KHK りと では専 バ 用 まー ック の検 す。 ラッ 査機 安心 シを で歯 して 測定 当た 使え して るよ い 。 歯車ABC 実用編 4 ー 2 歯車の潤滑方法 歯車の潤滑の良し悪しは耐久性や騒音に影響します。 樹脂歯車を特定条件で使用する以外は適切な潤滑を行なってください。 歯車の潤滑方法を大別すると次の3つに分類できます。 (1)グリース潤滑法 ぁ~ な 。 油だ るよ い す い き 長生 (2)はねかけ潤滑法(油浴式) (3)強制潤滑法(循環給油方式) 潤滑方法の選定基準は、主に歯車の周速度 (m/s)や回転数(rpm)が目安となります。 3つの潤滑法をこの周速度の高低で分類す ると、低速ではグリース潤滑法、中速では はねかけ潤滑法、高速では強制潤滑法を使 用するのが一般的です。 しかし、これはあくまでも目安であって、 たとえばかなりの周速度の範囲まで、メン テナンスなどの理由により、グリース潤滑 法を使用することもあります。 ● 平歯車及びかさ歯車の周速度範囲(m/s) No. 潤 滑 法 1 グリース潤滑法 2 はねかけ潤滑法 3 強 制 潤 滑 法 ● ウォームギヤのすべり速度範囲(m/s) 周 速 度 v(m/s) 0 5 10 15 20 25 │ │ │ │ │ ←──→ │ ←───────→ ←─────────── No. 潤 滑 法 1 グリース潤滑法 2 はねかけ潤滑法 3 強 制 潤 滑 法 周 速 度 vs(m/s) 0 5 10 15 20 25 │ │ │ │ │ ←─→ │ ←───→ ←───────────── ■グリース潤滑法 グリース潤滑法は、低速、軽荷重で使用する歯車の潤滑方法であり、開放型と密閉歯車箱に使わ れます。グリース潤滑の場合、下記の点に注意してください。 ◎適切なちょう度のグリースを選定してください。 密閉歯車箱においては、グリースが有効に働くように、流動性のよいものが適してます。 開放型で使う場合は、流れ落ちない適切なちょう度のグリースをご使用ください。 ◎高負荷、連続運転には不向きです。 グリースは、油ほどの冷却効果はありません。 高負荷、連続運転に使用した場合、温度上昇が問題になることがあります。 ◎適量のグリースをご使用ください。 グリースが少なすぎれば潤滑効果は期待できません。 反対に密閉歯車箱において、封入するグリースが多過ぎると、かくはん損失が大きくなります。 - 30 - 4. 歯車の組付けと潤滑 ■はねかけ潤滑法(油浴式) はねかけ潤滑法は、歯車箱に溜めた潤滑油を歯車の回転によってはね飛ばして歯車や軸受 を潤滑する方法です。はねかけ潤滑法の場合、下記の点に注意してください。 ◎適切な油面の高さにしてください。 使用する油の量は、多すぎればかくはん損失が大きくなり、少なすぎれば潤滑効果や冷却 効果が期待できません。下表を目安に油量を調整してください。 ◎歯車箱の限界温度にご注意ください。 歯車箱の温度は、歯車や軸受の摩擦損失や潤滑油のかくはん損失によって上昇します。 温度が上昇すると、潤滑油の粘度が低下して歯車や軸受に様々な影響をおよぼすため、限 界温度は 80℃~ 90℃程度を目安としてください。 ● 適切な油面高さ 歯車の種類 歯車の配置 平歯車及びはすば歯車 水 平 軸 かさ歯車 垂 直 軸 ウォームギヤ (水平軸) ウォーム 上 ウォーム 下 油面高さ レベル0 3h ↑↓ 1h 1 3 1h ↑↓ h 1 3 1b ↑ ↓ 1 3 d2 b 1 2 1 4 d1 ↑ ↓ d1 ここに h = 歯たけ、b = 歯幅、d2 = ウォームホイールの基準円直径、d1 = ウォームの基準円直径 ■強制潤滑法(循環給油方式) 強制潤滑法は、ポンプにより歯車のかみ合い部へ潤滑油を強制的に供給する方法で、給油 の方法によって下記の3つの方式に分類されます。 滴下式:パイプにより潤滑油をかみ合い部へそそぐ方式です。 噴射式:ノズルにより潤滑油をかみ合い部へ噴射する方式です。 噴霧式:圧縮空気により霧状にした潤滑油をかみ合い部へ噴霧する方式です。 これらの強制潤滑法は、油タンク、ポンプ、フィルタ、配管、その他一連のいろいろな装 置が必要なため、特殊な高速で大型歯車装置に使われます。 装置が大掛かりになるためコストが掛かりますが、潤滑油をフィルタでろ過し、クーラー で冷やした適正粘度の潤滑油を適量だけ送ることができるため、歯車の潤滑方法としては 最良の方法です。 - 31 - 0 歯車ABC 実用編 4 - 3 潤滑油の選定方法 金属歯車が動力を効率よく伝達し続けるには、常に安定した潤滑油膜によってかみ合い歯面の 金属接触を避けることが重要です。下表の潤滑油に要求される特性を検討し、使用条件にあっ た適切な潤滑油をご使用ください。 ● 潤滑油に要求される特性 特性 内容説明 適正な粘度 極圧性(抗溶着性) 酸化、熱安定性 潤滑油は、歯車が運転される速度及び温度において適正な粘度を保ち、油膜を形成 することが必要です。 潤滑油は、高い荷重を受けて滑る歯面において、焼付融着、スコーリングなど損傷 を防ぐ性質が必要です。 潤滑油は、長期間使用していると、高温や湿気などにより酸化しますから、これに 対しては高い安定性が必要です。 潤滑油には、運転・休止などによる温度変化によって水蒸気が凝結して水が混入しますから、 水分離性 これを沈澱分離する性質が必要です。 潤滑油は、歯車の回転によりかくはんされて泡立つと油膜の形成が悪くなりますか 消泡性 ら、優れた消泡性が必要です。 防食、防錆性 潤滑油の中に、錆などが混入すると、これにより歯面が摩耗したり、潤滑油の酸化を 早めますから、この性質が必要です。 ■潤滑油の種類と用途 潤滑油の選定において最も重要なことは、適正粘度の潤滑油を選ぶことです。 JIS K 2219:1993「ギヤー油」では、工業用のギヤ油を粘度グレードによって2種類に分 類して用途を規定しています。 使用する潤滑油の動粘度範囲の目安としてください。 ● ギヤ油の種類と用途 種類 1種 2種 粘度グレード 中心値の動粘度 10 - 6m2/s(cSt) (40℃) ISO VG 1532 ISO VG 1546 ISO VG 1568 ISO VG 1100 ISO VG 1150 ISO VG 1220 ISO VG 1320 ISO VG 1460 ISO VG 1 68 ISO VG 1100 ISO VG 1150 ISO VG 1220 ISO VG 1320 ISO VG 1460 ISO VG 1680 1532.2 1546.2 1568.2 1100.2 1150.2 1220.2 1320.2 1460.2 1568 .2 1002 1502 1220.2 1320.2 1460.2 1680.2 ISO 用途 主として一般機械の 比較的軽荷重の密閉 ギヤーに用いる。 主として一般機械・ 圧延機などの中・重 荷重密閉ギヤーに用 いる。 - 32 - ほど さい 。 小 だね 字が て数 油なん 。 っ よ た 度 動粘 サラし G100 だ V ラ サ は 基本 4. 歯車の組付けと潤滑 ■潤滑油の適正粘度 歯車装置に使用する適正粘度の潤滑油(適油)の選定については JIS、JGMA、AGMA などの 規格や潤滑メーカーの資料が参考になります。下表は潤滑油メーカーが推奨する密閉式歯車の適 正粘度です。 ● 歯車装置の適正粘度推奨値 減速比 10 以下 cSt ISO 粘度グレード (40℃ ) ピニオン回 馬力(PS) 転数(rpm) 300 以下 ~ 300 1,000 ~ 1,000 2,000 ~ 2,000 5,000 5000 以上 30 以下 30 ~ 100 100 以上 20 以下 20 ~ 75 75 以上 10 以下 10 ~ 50 50 以上 5 以下 5 ~ 20 20 以上 1 以下 1 ~ 10 10 以上 5 ~ 234 180 ~ 279 279 ~ 378 81 ~ 153 117 ~ 198 180 ~ 279 54 ~ 117 59 ~ 153 135 ~ 198 27 ~ 36 41 ~ 63 59 ~ 144 9 ~ 31 18 ~ 32 29 ~ 63 150, 220 220 320 100,150 150 220 68,100 68,100,150 150 32 46 68,100 10,15,22 22,32 32,46 減速比 10 を超え cSt ISO 粘度グレード (40℃ ) 180 ~ 279 216 ~ 360 360 ~ 522 117 ~ 198 180 ~ 279 279 ~ 378 59 ~ 153 135 ~ 198 189 ~ 342 41 ~ 63 59 ~ 144 95 ~ 153 18 ~ 32 29 ~ 63 41 ~ 63 220 220,320 460 150 220 320 68,100,150 150 220,320 46 68,100 100,150 22,32 32,46 46 注 1.歯車の種類は平歯車、はすば歯車、かさ歯車、及びまがりばかさ歯車が対象です。 注 2.運転温度(油温)は 10 ~ 50℃の場合で、給油方式は循環又ははねかけ式とします。 ■ウォームギヤ油の選定 平歯車やかさ歯車のかみ合いと違い、ウォームギヤのかみ合いは滑りが生じるため、各潤 滑油メーカーはウォームギヤに適した「ウォームギヤ油」を用意してあります。 ● ウォームギヤ潤滑油の適正粘度参考値 右 の 表 は、JGMA405-01 (1978)「 円 筒 ウ ォ ー ム ギヤの強さ計算式」にて推 奨するウォームギヤ潤滑油 の適正粘度の参考値です。 運転油温と滑り速度から適 正な潤滑油の粘度を選定し、 各潤滑油メーカーの資料等 で該当する銘柄を確定して ください。 運 転 油 温 単位:cSt(37.8℃) 滑 り 速 度 m/s 運転最高油温 始動時油温 2.5 未満 2.5 以上 5 未満 5 以上 - 10℃以上 110 ~ 130 0℃未満 110 ~ 130 110 ~ 130 0℃以上 110 ~ 150 110 ~ 150 110 ~ 150 10℃以上 30℃未満 0℃以上 200 ~ 245 150 ~ 200 150 ~ 200 30℃以上 55℃未満 0℃以上 350 ~ 510 245 ~ 350 200 ~ 245 55℃以上 80℃未満 0℃以上 510 ~ 780 350 ~ 510 245 ~ 350 80℃以上 100℃未満 0℃以上 900 ~ 1100 510 ~ 780 350 ~ 510 0℃以上 10℃未満 - 33 - 歯車ABC 実用編 ■グリースのちょう度番号 ちょう度とは、潤滑油の動粘度にあたるもの で、ペースト状物質の硬さ、軟らかさ、流動 性を意味する専門用語です。 ※ グリースのちょう度番号(NLGI No.)は、ちょ う度範囲によって 000 号~6号に規定され ています。 右表は、各ちょう度番号のちょう度範囲と状 態です。使用するグリースをイメージしてく ださい。 ● グリースの種類と用途 NLGI 混和ちょう度 No. 範囲(1/10 mm) 000 号 445 ~ 475 半流動状 00 号 400 ~ 430 半流動状 0号 355 ~ 385 極めて軟 1号 310 ~ 340 軟 2号 265 ~ 295 中間 3号 220 ~ 250 やや硬 4号 175 ~ 205 硬 5号 130 ~ 160 極めて硬 6号 85 ~ 115 極めて硬 ※ NLGI No. とは、国際グリース協会(NLGI)で定 めたちょう度番号で、日本では NLGI No. で通用して います。 状態 ■グリースの選定 グリースは、用途によって7種類に分類され、更に種別(成分及び性能)及びちょう度番号によっ て細分されています。 下表は、JIS K 2220:2003「グリース」から抜粋した、4種類の用途別グリースです。 グリースの選定においてもちょう度が重要です。下表の適用例を参考にして適正なグリースを 選定してください。 ● グリースの種類と適用例 参考 種類 用途別 一般用グリース 種 別 2 種 3 種 4 種 ギヤコンパウンド 水との接触 適用例 衝撃 -10 ~ 60 適 否 否 適 一般低荷重用 2号、3号 -10 ~ 100 適 否 否 否 一般中荷重用 00 号、0 号、1 号 -10 ~ 60 適 否 否 適 0 号、1 号、2 号 -10 ~ 100 適 否 否 適 0 号、1 号、2 号 -10 ~ 60 適 適 適 適 0 号、1 号、2 号 -10 ~ 100 適 適 適 適 -10 ~ 100 適 適 適 適 衝撃高荷重用 -10 ~ 100 適 適 適 適 オープンギヤ及び ワイヤロープ用 4号 種 荷重 ℃ 高 種 2 使用条件に対する適否 低 1号、2号、3号、 1 高荷重用グリース ちょう度番号 1 種 集中給油用グリース 使用温度範囲 集中給油式中荷重用 1 0 号、1 号、2 号、3 種 号 1 1号注 1、2号注 1、 種 3号注 1 注 1.この番号は動粘度によって分類したものです。 GJS-0801 GJS0901 GJS1001 ~ KHK 純正グリースのご案内~ KHK では極圧添加剤にモリブデンを配合したスプレータイ プの歯車潤滑用スプレーを3タイプご用意しました。 是非お試しください。※一般グリース1号相当 - 34 - 4. 歯車の組付けと潤滑 4 - 4 安全上の注意と起動時の注意 歯車の多くは金属製で重い製品が多いため、取り扱いや組立時に十分な注意が必要です。 また、歯車は動力を伝達させるために歯がかみ合いながら回転運動や直線運動するため、起動 するときは「安全」を最優先させてください。 ■安全上の注意 歯車の取り扱いや組立は、安全に関する法規(労働安全衛生規則等)に従っ てください。 ●取り扱い上の注意 ・歯車のエッジ部は危険ですので注意してください。 ・重量が重い歯車の運搬はリフトやグレーンなどをご使用ください。 ・歯車を落としたりぶつけたりしないでください。 ・歯車を長期保管する場合は、サビなどの劣化に注意してください。 ●組立時の注意 ・歯車が露出している場合は、必ず安全カバーを取り付けてください。 ・電源スイッチはお切りください。 ・歯車の下に体を入れないでください。 ・作業に適した服装や保護具を着けてください。 ■起動時の注意 歯車装置を起動するときは、起動前、起動中、起動後の確認が重要です。 起動前のチェックを十分に行い、起動中や起動後に異常があったら適切な 処置が必要です。 ●起動前のチェック □歯車は確実に取付けてありますか? □適切なバックラッシがついていますか? □適切な潤滑を行なっていますか? ●起動中のチェック □異音が発生していませんか? □異常な振動はありませんか? □油漏れ、グリース飛散はありませんか? ●起動後のチェック □歯車の緩みはないですか? □潤滑油の劣化はありませんか? □装置が異常に発熱していませんか? - 35 - ら ニオンだか ラック&ピ ーを レ プ 車潤滑ス KHK GJS 歯 。 う 使ってみよ ■安全上の注意 ■安全上の注意 歯車の取り扱いや組立は、安全に関する法規(労働安全衛生規則等)に従ってください。 歯車の取り扱いや組立は、安全に関する法規(労働安全衛生規則等)に従ってください。 ●取り扱い上の注意 ●取り扱い上の注意 ・歯車のエッジ部は危険ですので注意してください。 ・歯車のエッジ部は危険ですので注意してください。 ・重量がある歯車の運搬はリフトやグレーンなどをご使用ください。 ・重量がある歯車の運搬はリフトやグレーンなどをご使用ください。 ・歯車を落としたりぶつけたりしないでください。 ・歯車を落としたりぶつけたりしないでください。 ・歯車を長期保管する場合は、サビなどの劣化に注意してください。 ・歯車を長期保管する場合は、サビなどの劣化に注意してください。 ●組立時の注意 ●組立時の注意 ・歯車が露出している場合は、必ず安全カバーを取り付けてください。 ・歯車が露出している場合は、必ず安全カバーを取り付けてください。 ・電源スイッチはお切りください。 ・電源スイッチはお切りください。 ・歯車の下に体を入れないでください。 ・歯車の下に体を入れないでください。 ・作業に適した服装や保護具を着けてください。 ・作業に適した服装や保護具を着けてください。 ■起動時の注意 ■起動時の注意 歯車装置を起動するときは、起動前、起動中、起動後の確認が重要です。 歯車装置を起動するときは、起動前、起動中、起動後の確認が重要です。 起動前のチェックを十分に行い、起動中や起動後に異常があったら適切な処置が必要です。 起動前のチェックを十分に行い、起動中や起動後に異常があったら適切な処置が必要です。 ●起動前のチェック ●起動前のチェック □歯車は確実に取付けてありますか? □歯車は確実に取付けてありますか? □適切なバックラッシがついていますか? □適切なバックラッシがついていますか? □適切な潤滑を行なっていますか? □適切な潤滑を行なっていますか? ●起動中のチェック ●起動中のチェック □異音が発生していませんか? □異音が発生していませんか? □異常な振動はありませんか? □異常な振動はありませんか? □油漏れ、グリース飛散はありませんか? □油漏れ、グリース飛散はありませんか? ●起動後のチェック ●起動後のチェック □歯車の緩みはないですか? □歯車の緩みはないですか? □潤滑油の劣化はありませんか? □潤滑油の劣化はありませんか? □装置が高温に発熱してませんか? □装置が高温に発熱してませんか? ●本小冊子は著作権法上の保護を受けています。本小冊子の一部あるいは全部について、い かなる方法においても無断で複写、複製することを禁じます。 ●本小冊子は、KHKグループの社員教育用、及び一般のお客様に歯車の事を知って頂くた めの弊社宣伝用ツールです。 ●本小冊子に起因してご使用者に直接または間接的損害が生じても、小原歯車工業株式会社 はいかなる責任も負わないものとし、一切の賠償等は行わないものとします。 ●本小冊子に記載された内容などは、予告なく変更する場合があります。 歯車ABC 実用編 平成 22 年 3 月 15 日 第 1 版第 1 刷発行 著作/制作:小原歯車工業株式会社 発 行 人 小原敏治 発 行 所 小原歯車工業株式会社 〒 332-0022 埼玉県川口市仲町13-17 編集制作 歯車 ABC 作成チーム 本 社 〒 332-0022 埼玉県川口市仲町 13-17 TEL:048-255-4871 (代)FAX:048-256-2269 大 阪 営 業 所 〒 540-0012 大阪市中央区谷町 5-6-32 谷町優越館ビル 4F TEL:06-6763-0641 FAX:06-6764-7445 名古屋営業所 〒 465-0093 名古屋市名東区一社 3-96 ルーブルビル 6F 603 TEL:052-704-1681 FAX:052-704-1803 URL http://www.khkgears.co.jp/ E-mail kohara@khkgears.co.jp
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