青森県獣医師会報 №152 2012 目 次 〔資料〕 食鳥検査事業に思うこと ����������工藤 洋一…1 アニマルシェルターセミナー第4弾 被災地に学ぶシェルターメディスン 参加報告 ����������桜庭 恵…6 第5回 世界狂犬病デー シンポジウム 出席レポート ���������荻野 心太郎…9 〔臨床ノート〕 184号 右心不全徴候を呈した 左前大静脈遺残の犬の1例 ����������堀 泰智…12 185号 VPシャント術を おこなった水頭症の1例 ����������渡部 勇太…14 〔会員だより〕 県獣医師会ゴルフ愛好会コンペ2012 ����������沼宮内春雄…16 〔事務局だより〕 平成24年度東北地区獣医師大会及び 獣医学術東北地区大会の概要�������17 日本産業動物獣医学会(東北地区)の概要 獣医学術東北地区学会実行委員会 �������幹事 武邉 千秋…18 日本小動物獣医学会(東北地区)の概要 日本小動物獣医学会(東北) �������幹事 伊藤 直之…25 日本獣医公衆衛生学会(東北地区)の概要 獣医公衆衛生学会 ������幹事 新井山潤一郎…33 〔支部だより〕���������������42 〔編集後記〕����������������44 平成24年11月1日 第152号 社団法人 青 森 県 獣 医 師 会 〔資 料〕 食鳥検査事業に思うこと 制約された生活はしたくないということがあった。 何よりも、年金により何とか生活できるということ 青森支部獣医師会 工藤 洋一 が大きな理由であったようである。それに比べて、 最近の退職者達は年金の支給年齢の遅れや退職金の 長い間、お世話になった食鳥検査員の仕事も無事 締め付けなどがあり厳しい状態にあるようではある に終わることが出来た。その間、9年間非常勤では が、それに比べれば恵まれていたといっていいのか あったが有意義な時を過ごさせてもらったと思って も知れない。 いる。 青森県獣医師会が食鳥検査事業を開始した当初か 「検査員としての研修」 らの勤めであり、最初はたいへんなこともあったが 最初は検査員といってもどんなことをするのか不 慣れてくるに従って獣医師冥利につきる仕事であっ 安だった。同じ畜産といっても鶏関係はあまり経験 た。 がなかった。病気のことやワクチン、解剖学的なこ 私は運がよかったと思っている。勤務獣医師とし とは、ある程度のことは分かっているとしても、食 て定年60歳、さて退職後は何をしようか、昔ならい 用としての検査はどんなものなのか、牛や豚などの ざ知らず、60歳といってもまだまだ仕事ができる。 と畜検査は見たことがあるし予想はつくとしても、 体にも自信がある。開業でもしてやろうか、と真剣 鶏の場合は検査を必要とするのか、とさえ思ってい になって考えたこともある。ペットの診療は無理と た状態であった。何しろ、庭で飼っていたものを絞 しても、家畜関係なら拙い経験ではあるが、なんと め殺して食べていた時代に生きて来た者として当然 かできそうである。しかし家畜相手の開業は畜産事 のようなものであった。そして研修が始まり、わず 情がかわり、中々たいへんだと言われている。友達 か一週間ではあったが食鳥検査のいろはがなんとか のところでペットの修業でもしてやろうかと考えた 分かり、検査員としてのスタートが出来たのである。 こともある。それとて飽和状態にあり競争の激しい 状態ではなまじっかの施設ではできることではな 「勤務時間」 い。何よりも生きものを扱うとなると、いろんな意 時を告げる鳥が鶏というように、最初は朝早くか 味で苦労することになる。もう人に使われることは らの勤務がたいへんであった。 たくさんだし、ましてや慣れない開業などというこ 七時から検査が始まるとなると(ホワイトファー とをやるより年金生活の出来る状態であればのんび ムの例)、生体検査の時間を考慮 すると6時半には りとしたほうがと思ったりもしたのである。 検査場所に着いていなければならない。そうなると そんな時に食鳥検査事業が始まり、非常勤であれ 通勤時間を考えると家を出るのが5時前、食事時間 ばなんとか仕事ができるのではないかということに を考えると遅くても4時起きということになる。時 なった。 季によっては、まだ真っ暗のうちに家を出ることに 非常勤になった理由であるが、これまでお世話に なる。これまでには経験したことのないことであり なった人々とのつながりを切りたくなかったし、で 厳しかった。 きるならこれまでの経験を生かして話し相手になる 特に冬期間、雪の降る日など、自動車もあまり走っ くらいの時間は持ちたい。もう毎日のように時間に ていない(荷物を運ぶ大型トラックが猛スピードで ― 1 ― 走っている)そんな時間帯に走ることになる。 しかし、慣れるということはたいへんなものであ 早寝早起きとばかりに早く床につくのであるが、 る。あんなに早く眼の回るくらいに感じていたス 習慣で中々寝付かれない。うとうとしているうちに ピードにも慣れ、検体をはずすタイミングも上手に 目覚まし時計が鳴り出す。遅刻は絶対に許されない。 なる。足腰にも余裕が出てくる。一日に何万羽とい 検査員のOKのサインがないかぎり処理場での仕 う検査羽数も気にならなくなる。そして余裕が出て 事は始まらない。遅刻は多くの人達に迷惑をかける くると、どれ一つ取っても同じものがない検体を見 ことになる。「時は金なり」民間の企業は時間には る楽しみみたいなものが出てくる。むしろラインス 厳しいものがある。遅刻しないように目覚まし時計 ピードが遅くなると検査のタイミングがずれてきて を二個セットしたことも思い出す。気を使ったこと 疲れるようになる。 といえば、寝る前の自家用車の点検があった。若し、 朝、エンジンがかからなかったらどうしよう、タイ 「民間企業というもの」 ヤの空気が抜けていたらどうしよう、そして通勤途 とにかく機械に使われているといっても過言では 中、自動車事故やパンクなど気になったものである。 ないという気がした。時間が来れば機械が動き、そ 今では携帯電話があり、途中でも連絡がとれるの れに添った形で人間が働き出す。とにかく時間どう で心配はないのだが、遅刻して迷惑をかけてはなら りに始まり、休憩時間はとるものの、一日のノルマ ないということだけは、常に気になったものである。 はしっかりと守る。 常に連絡を取り合い、時間には鶏が搬入され、生 「検査業務」 体検査でOKが出ると、モジューム(かご)から吐 仕事に慣れるまでたいへんであった。なにしろ目 き出されたあとは、ベルトコンベァに吊るされて処 の前をアッという間に吊るされた検体が通り過ぎて 理されていく。職員達は常に機械の調子に気を使い、 行く。ラインスピード7000というと一秒間に2検体 トラブルがあると直ぐに対応する。機械が止まると が目の前を通り過ぎて行くことになる。それが連続 いうことは処理羽数の遅れになる。作業中のトラブ して流れていくがたいへんであった。そのわずかな ルは、羽抜きのため高温に浸漬されているために煮 時間に異常のあるものをチエックし、見つかれば取 肉状態になり多量の廃棄につながってしまう。 り除かなければならない。動いているものを目で 朝早くから自家用車で出勤する人、通勤バスで集 追っていると最初のうちは「船酔い」みたいなもの 団で乗りつける人達、朝礼があり、ラジオ体操、そ を感じたものである。そして異常のあるものはフッ して仕事が始まるのである。コンベァ式で廻ってく クから検体を取り外すことになる、これがまたたい るため一瞬たりとも手を休めることはできない。機 へんであった。動いているのである。そして隣には、 械のまわる音、話し声さえ聞き取れることが出来な 次の作業をする人が並んでいる。手際よくはずさな い状態である。手元をしっかりと見つめ確実に与え いと迷惑になる。それどころか事故につながること られた仕事をする。仕事は単純ではあるが機械相手 さえ考えられる。目が疲れる、気をつけなくてはな である。気のゆるみはトラブルの原因になる。とに らない、立ちっぱなしで足腰が疲れる。最初の内は かく機械と人間が一つの歯車のようになって動いて なんでこんなことまでしなければと思ったものであ いる。そんな感じであった。 る。毎日、机に座り、どこに出かけるのも自動車と それにしても従業員達はよく働くと思った。駐車 いう生活を続けてきた者にとっては辛い仕事であっ 場には何百台の乗用車が並び、女性たちが多い。そ た。 ろいの作業服に身を固め生き生きとしている。第一 ― 2 ― 次産業地帯であったこの地に、このような企業の進 ろうが、女性の持つ手先の器用さは美しいものがあ 出はいろんな意味で恩恵をもたらしてくれている。 る。 情報、ファッション、生きる力、飛び出す力、自信 機械が相手、それに刃物を使う分野もあり、ちょっ を与えたようである。「金は力なり」そのことをま との油断も怪我のもとになるということを考える ざまざと見せ付けられる。民間企業のシビァな点、 と、彼女達の「目さばき、手さばき」は相当の神経 今までにない貴重な経験であった。 を使っていることになるのだろう。いつも思ったこ とであるが、休憩時間になるとわずかの時間にも喫 「女性達の目さばき、手さばき」 煙や缶コーヒーなどの飲用があり、このようなこと どんなに機械の能力が進んだとしても、やはり人 からも多くのストレスを生んでいるのだろうと感じ 間の力に頼らなければならないところがある。分類 たものである。 と異常のチエックである。変化のないものであれば 機械でもよほどのところまで出来ると思うのである 「楽しみ」 が、生きているもの、そして我々と同じ血が流れて 非常勤であったため、週に一度か二度の仕事、そ いるもの、一つとして同じものがないもの、それが れも朝早くから立ちっぱなしである。正直いって最 我々の口に入るということになると、単純な仕分け 初の内はたいへんだと思った。しかし、それも慣れ だが難しくなる。 てくると楽しくなった。一人の検査員が何万羽の鶏 異常をチエックする衛生管理員の「目さばき」は を検査する。周りには多くの人達が働いている。黙々 すばらしいものがある。流れてくると体を一瞬にし と一生懸命である。人間が機械を動かしている。し てチエックし、全廃棄になるもの、部分廃棄をする かし、毎日機械の前に向っていると、機械に人間が ものを見極め、廃棄するものを取り除き排除する。 振り回されているように感ずるようになる。だから 同じような鶏が同じような状態になって回ってく 気を抜けなくなる。黙々と、ただひたすらに流れて る。しかし、それぞれが違う。何万羽であっても、 くる物を検査し、一日が終わる。機械に使われてな どれ一つとして同じものはないはずである。その中 んの楽しみがあろう、と思われるかも知れない。し から異常と思われるものをチエックし、取り外して かし、機械の音の中にも変化を感ずるようになる。 ゆく。正常なものに比べて異常なものは少なく、共 今日の機械は調子が良いようだ、なんの乱れもなく、 通した変化はあるものの、その変化の度合いも中々 仕事ができる喜びがある。音に乱れがあるときには 判断つきにくいものもあるはずである。それを見事 不安になる。 にチエックする眼力というものは、慣れからくるも 今日の鶏はきれいだ、健康体が多い、廃棄が少な のだとは思うのだがすばらしいものがある。 い、どんな飼い方をしているのだろう。そんなこと それから、と体から内臓を分離する中抜き作業が を考えていると単純な仕事の中にも楽しみが出てく ある。可食部分と不可食部分のより分けであるが、 る。技術を生かせること、俺でなければ出来ない仕 これとて一日に換算したらものすごい数になる。そ 事、多くの人達が口にする重要な責務を負っている。 れを次から次にまわってくるものを処理してゆくの 人様の役に立てるということは楽しいことである。 である。その「手さばき」は見ていてすばらしいも のを感ずる。熟練した技のすごさ、強く握れば内臓 「生きている内臓をみる」 は破れてしまう、弱く引っ張ると中々外れない、そ これほどまでに生きた内臓を目の前で見ることで の兼ね合いが経験年数の差によって違ってくるのだ きる仕事ってあるのだろうか。生きた内臓といって ― 3 ― も、と殺されたものである。しかし、数分前まで生 ぎる。もっとゆっくり見ることができたらと思うの きていてと殺されたばかりの内臓は生きている内臓 だが、それでも想像と疑問が次から次へと浮かんで に等しいものである。それが何千、何万という数が くる。こんな経験なんて二度とできるものではない。 目の前を通り過ぎる。こんな経験なんてそんなにで もっと若いときにこのような経験ができたら、もっ きるものではない。わずか3㎏程度の鶏ながら内臓 と健康についても考えていただろうし、家畜に対す はりっぱなものである。個体により心臓、肺、肝臓、 る見方、飼い方も変わってきていただろうにと思っ 消化器系統の臓器などの色、形、大きさ、硬軟、感 たりもする。こんなことを経験できただけでも大い 触など、きれいなもの、変色しているもの、形が変 に意義があった。 形しているもの、腫れているの、硬くなり萎縮して いるものさまざまである。太っているもの、痩せて 「働くことの魅力・金」 いるものの肉の色、そのつき具合、脂肪の色や量な そして正直な話、貰う金が魅力的であった。退職 ど目で見て、指で触れてみる。そしてその鶏の生前 後は「年金+食鳥検査従事手当」が収入源となった。 の来歴を想像する。異常のあるものは廃棄し、健康 食鳥検査で頂いた金は全て趣味に使われたようなも なものは食用にまわされる。たいへんだが満足感が のである。とりわけ、ささやかな楽しみとして旅行 ある。そしていろんなことを考える。 に行くことができた。勤務獣医師にとって財産も蓄 こんなに短期間に内臓の病変が広がるものなのだ えだってあるわけじゃない。退職後は技術を生かす ろうか。こんな内臓でよくも栄養状態を保てたもの ことのできる仕事がある。それだけでも生きがいに だ。そんなに簡単に死ぬものじゃないなぁ、生きて なるのに、いくらかでも収入源になる、私にとって いるものの強さを感ずる事が出来る。こんなに異常 は食鳥検査員としての仕事は最高であった。 があって、生前にはどんな状態だったのだろうか。 しっかりと餌を食べることができたんだろうか。こ 「そしてちょっぴり考えたこと・その1」 んな状態になっても生きていることができるという どうしてこんなに廃棄があるのだろう。もし、こ ことは、生命力の強さを感じてしまう。 の廃棄の数が少なくなったらもっと儲けにつながる 俺の内臓の状態も、この鶏の内臓のようになって のだろうに、いとも簡単に捨てられる数に不思議な いるのではないのか、と思うと人事ではないように 思いをしたものである。どんな飼い方をしているの 思ったりもする。どうして同じ環境で飼われている だろう。どんな環境下にあるのだろう。生産農場の のに、病気に対する抵抗力に違いがあるのか、鶏に 状況が分からないだけに、なんとかならないのだろ も心筋梗塞みたいなものがあるのではないか。心臓、 うかと思ってしまう。農場には獣医師もいる、指導 肝臓の状態から、自分の肥満度が気になる。内臓脂 者だっているはずである。企業の方が儲けに対して 肪の付着状態、心臓に張りつくように脂肪が被って はシビァなはず、お前なんか心配することではない、 いる。運動不足なのか、太り過ぎの弊害が気になる。 と思うのだが、そこはなまじっか、これまでの指導 今日は心臓を中心にみてやろう。ぶかぶかに肥大し 者としての意識があるためなのか、気になることが ている、萎縮して硬くなっている、冠動脈が太く怒 多かった。廃棄の数が多くなると、「これじぁ、給 張している。 料もカットだなぁ」冗談とも思えないほどの声が聞 飲みすぎた日には、肝臓や腎臓のことが気にな こえてくる場合がある。「検査員が心配することで る。毎日ように見たいテーマがかわる。ほんの一瞬 はないよ」と言われそうだが、割り切れないものが の間のことなのだがいろんなことが脳の中を通り過 あった。 ― 4 ― 「その2」 達には宿泊を認めてもらい、週に2、3日でも続け 食鳥検査事業は獣医師にとってすばらしい仕事で て検査業務に当たるようにすれば対応できるのでは あると思う。そして皆がもっと関心を持ってもらい ないのか、またフレックスタイムみたいに、午前中 たいと思った。特に退職後の仕事として、余暇の時 とか午後の時間帯に勤務できる体制にすれば子育て 間に携わる仕事として考えても良いのではないの の人達にも勤務のチャンスを与えることができる。 か。いろいろと思いつくまま食鳥検査について書い そして何よりも獣医師の免許を生かせる形での仕事 てみたのだが、もっと獣医師会の仕事として開かれ 場として考えてみる必要があるのではないか。 たものにする必要があるのではないのか。例えば食 昔と違って、獣医師の仕事事情も厳しくなってき 鳥処理場の通勤がたいへんで勤務できないという人 ている。そんなときに獣医師会として食鳥検査事業 達もある。南部地方に居を構えている人であれば対 をいろんな意味で利用できるように広めていくこと 応できるのであるが、津軽地方(弘前など)に住ん ができたらなぁ、と感謝しつつも思っているところ でいる人達は制約されることになる。このような人 である。 街で見た風景 ペット仲間 不思議と男性と女性の場合は犬同士も仲が悪いようで、素っ気のないようにしている。そしてあまり長話 をしないで早々に別れてしまう。 男同士の場合は、そんなに長話もなく挨拶程度、犬同士も知らん顔しているような状態である。 しゃがみこんで話し合っている女性同士、犬たちは厭きれてしまっているのか、離れたところで遊んでい る。何を話しているのかと時々、主人の方に近づいて早く帰ろうよ、というような仕草をしている。 犬を抱っこしている高齢者 本人だって、もう大分歳をとっているのに、小さいとは言え犬を抱っこして歩いている。一時的なものか と思ってみていたが、最初から最後まで抱きっぱなしである。 何もそこまでしなくても歩かせて、その姿を見ている方がほほえましいと思うのだが不思議な感じがする。 どうしてそんなに多く飼えるの? 一人で三匹のワンちゃんを抱っこしながら歩いている女性がいる。いずれも愛玩系の小さいワンちゃんで ある。何故、こんなに飼う必要があるのだろう。家族構成は分からぬものの、こんなにも飼う必要があるの だろうか。 子供と同じだもの、何匹いたって良いでしょう、言われるかも知れないのだが、金も手間もかかるだろう に、そんなこと、お前が心配する必要がないよ、と言われそうである。 ― 5 ― アニマルシェルターセミナー第4弾 被災地に学ぶシェルターメディスン 参加報告 青森県動物愛護センタ- 桜庭 恵 平成24年7月14日(土)、郡山駅前の郡山市民プラザ(ビッグアイ)で開催された「アニマルシェルターセミナー 第4弾 被災地に学ぶシェルターメディスン」に参加しました。会場へ移動のエレベーターでは、なんと水越美 奈先生と一緒に!(声をかけなきゃ…アワアワ…結局、天気の話をふったところで7階到着。残念~)受付で名 札を受け取ると、なぜかA~Gの符号が付いており「嫌な予感」を抱きつつ会場内へ。階段状ではなかったので、 最前列の中央部を確保。(聴く熱意をアピールします。) まず、主催者である公益社団法人 日本動物福祉協会 山口千津子氏から、「昨年3月11日の未曾有の震災か ら1年4ヶ月が経ちましたが、未だ先が読めない状況で復興したとは言い難く、真の復興までは時間がかかると 痛感しております。動物も被害を受け保護されています。そこに係わるスタッフ・ボランティアの確保や保護個 体の健康管理などが必要不可欠です。今回のセミナーが、災害時における動物救護を行う上で活用されることを 願っています。」との挨拶がありました。震災前の日常に戻るにはまだまだ…という現状を感じ、もう落ち着い ただろう・大丈夫だろうと思っていた、そんな自分が恥ずかしくなりました。震災は、いつどこに起こるか分か りません。「備えよ常に」(子供が参加していた、ボーイスカウトの言葉です。)の精神でいなければならないと、 気持ちが引き締まりました。 講演及び感想 1、シェルターメディシン 地域の動物を守る 田中 亜紀 氏(シェルターメディシン・カリフォルニア大学デイビス校) シェルターワークにおいて、ボランティアの力は必須で大きいものだ、との話しが印象に残りました。当 センターにおいても、行事の円滑な遂行に欠かせないものになっています。その力を十分に発揮してもらう ための、ボランティアトレーニングの内容をもっと工夫しなくては、と感じました。講演にあったように、 ベテランボランティアであってもオリエンテーションは、全ての人に毎回受講してもらうという点は、目か らうろこ!でした。このことにより、常に一定のレベルと初心を保持してもらえると思います。さらに、活 動してもらう内容を、こちらで必要とする種目に分けて示す点も実施できれば、技量・時間に合わせて各ボ ランティアが参加しやすくなると感じました。 野猫の頭数管理という見出しに、当センターでの猫処分頭数削減へのヒントが見出せるかと期待しました が、従来通りの、やる気と忍耐力で長期的に取り組むしかない、結局のところ不妊去勢手術と教育、とのこ とであり、新たな方策というものは示されませんでした。しかし、 「人間が野猫を生み出した」とのコメントに、 現状が集約されているようで考えさせられました。 ― 6 ― 講 師 紹 介 日本獣医生命科学大学卒業後、渡米。 Univercity of California,Davis,Department of Environmental ToxicologyのMaster's course 修了。その後、同大学でMaster of Preventive Veterinary Medicineをシェルターメディシ ンで修了。同大学のシェルターメディシンプログラムで米国のアニマルシェルターでの感染 症に関する研究に従事。 現在、同大学Department of EpidemiologyでPhD過程。研究テーマは、日本の動物愛護セン ターにおける動物群動態と感染症の発生状況や疫学的分析。獣医師。 2.シェルターにおける行動学入門 犬・猫 水越 美奈 氏(行動学・日本獣医生命科学大学) パワフルで、引き込まれる話しぶりでした。一般的行動学の他、ハグや抱っこは人間(サル)の行動であり、 人間の行動を犬や猫に押し付けていけないという話しがありました。(確かに…すぐ撫でたくなります。サ ルです~。)また、収容された猫を人に馴れさせるための活動をする。猫ボランティア=Cat socializer(キャッ ト・ソーシャライザー)の紹介がありました。これは、犬の散歩ほど体力を必要としないため高齢者に人気 とのことで、今後青森でも募集したら、かなりの応募があるのではないだろうか?そんなことを感じました。 講 師 紹 介 日本獣医生命科学大学獣医保健看護学科講師、同大学付属動物医療センター行動治療科担当 日本獣医畜産大学獣医学科卒業。 大学卒業後、動物病院勤務(7年)を経て米国へ。米国では大学と個人の行動治療クリニッ ク、動物保護施設(San Francisco SPCA, Denver Dumb Friends League)で研修。帰国後、 PETS行動コンサルテーションズ開業、国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部特別研究員を経て現職。獣医師、博士(獣医学)、(公社)日本動物病院福祉 協会(JAHA)認定家庭犬インストラクター 3、ワークショップ「今後の災害時における動物救護」 受付時の「嫌な予感」は、ここで発動。7班(A~G)に班分けされました。各班6名ほどで、まずは班 内で討論し意見をまとめた後、班毎に発表。題は「あなたの地域で緊急災害時のシェルターを計画するに当 たって、何が必要か、どんなことを考えておけば良いか?」でした。私が入ったA班の構成は、男性1・女 性5、職業は開業獣医師・動物看護士・動物愛護センター勤務、年齢層は20 ~ 50歳代であった。福島県動 物救護本部三春シェルターに在籍する人もおり、厳しい現状を話してくださいました。A班は、平常時から マイクロチップ/ワクチンや同行避難できるようなしつけが必要で、飼養者への啓発が欠かせない。という 点から、展開していきました。他の班からは、ボランティア確保や「お金」の問題、机上のマニュアルより も実践(ペットと一緒に避難訓練する)、シェルターは緊急と長期のふたつを考慮しなければならない、な どの意見が出されました。<あら!あの発表者、白いおひげのロマンスグレー、あの紳士は、福島県の森澤 会長では!会長自ら発表者の役をなさるなんて!!このワークショップにかける、熱い想いを感じました。> それぞれの発表に対する質問や補足等,活発な討論が続き、時間超過になってしまいました。 講師からは、平常時からのシェルターボランティア教育が重要/保護した動物のエンリッチメントへの配 ― 7 ― 慮を、とのコメントがありました。 講師は、お2人とも早口でしたが予定時間をオーバーするほどで、話し足りない部分もあったように感じ ました。次回の第5弾は、猫のケースを中心にした内容で、12月に東京にて開催されるとのことです。シェ ルターにおいて、猫は犬よりも扱いが難しいと言われています。どのようにするのがベストなのか興味を引 かれます。ぜひ、どなたか参加されてレポートをお願いします。 最後に… 「出口はどこか、いつになったら終わるのか。」「当たり前の生活が全て消えた。」「すみやかな回復を予測して いたが、泥縄の日々。」「ここで生じた失敗・課題が、今後の災害対策への提案となれば。」などの生の声を聞き、 自分は何ができるのか何をすべきか、もう一度考えさせられました。何らかのかたちで協力していきたいと思い ます。 みなさん、もう一度福島に目を向けてください! 野生動物だって、怖い 犬猫のニャーワン談義 原発事故、警戒区域内の福島県南相馬市の水田に白鳥の群れ、確認出来ただけで一か所100羽ほど無人の 農地で一心に餌をついばんでいるコガモ、水鳥も数多く見られる。野生の鳥などは放射線には大丈夫なのか なぁ。 愛犬も健康検査を 愛犬も高齢化時代になったらしい。その理由としてワクチンの接種で感染病が減ったこと、医療やペット フードの質が上がったことがあげられる。 日本愛玩動物協会の調査 平均寿命 1990 ~ 1991年 8.6歳 2011年 13.6歳 それでも高齢化による過肥や認知症なども出てきているらしい。8歳を超えたら健康検査をして欲しい。 目的のためには 鳴き声が煩いからといって、TVの人気犬の声帯手術が問題となっている。 プロダクションの声、避妊手術がよくて声帯手術が悪いのか。殺処分より手術したほうがずっといい。 農林省の意見、声帯切除は特に規制はなし、人間の自由診療と一緒である。 日本動物愛護教会のコメント、殺処分よりは声帯切除という選択肢はあるのかも知れない。しかし、吠え るという犬本来の生態に手を入れるべきではない。まずは躾に手をつくす、引越しするなどで手術回避でき る方法に努力して欲しい。 ― 8 ― 第5回 世界狂犬病デー シンポジウム 出席レポート 青森県動物愛護センター 荻野 心太郎 去る平成24年9月28日(金)、東京都で開催された「第 5回 世界狂犬病デー シンポジウム」に出席しました ので、その概要と、出席後の感想を報告します。 世界狂犬病デーは、世界各国の研究者により、狂犬病 ワクチンの開発に成功した仏人科学者ルイ・パスツール の命日にちなんで2006年に定められ、2007年以降、世界 狂犬病デーに合わせて、各国で狂犬病の教育活動や狂犬 病予防注射などの取組みが行われているとのことです。 国内では、毎年、同日に合わせて東京都獣医師会及び狂犬病臨床研究会の主催によりシンポジウムが開催されて います。 シンポジウムには開業獣医師、行政、マスコミ、製薬メーカー、動物関係の学校の学生など、多方面から160 名の出席者が集い、会場は熱気に包まれていました。シンポジウムは開会の挨拶及び来賓の挨拶から始まり、参 加者によるワークショップ、狂犬病に関する講演の流れで進められました。 東京都獣医師会 村中志朗会長による開会の挨拶では、東京都獣医師会は4月から公益社団法人となりこれま で以上に社会に貢献することを目指しており、人獣共通感染症対策には特に力を入れて取り組んでいく旨の発言 がありました。組織は違えども、私も青森県獣医師会の会員として、また狂犬病予防対策行政に携わる者の一人 として、狂犬病を含む人獣共通感染症対策には力を入れていかねばならないと気を引き締めました。 来賓には厚生労働省健康局結核感染症課 中嶋健介室長が招かれており、あいさつの中で、国内で狂犬病が発 生した場合のガイドラインを現在厚生労働省内で取りまとめており、今秋中には公表できる旨の発言がありまし た。公表に当たっては、各自治体はもちろん、一般の方にも広く周知する予定とのことであり、昨今国民の中で 危機意識が薄れつつある狂犬病対策について、再啓発できるものとなることを望んでいます。 ワークショップは3名一組となって行われ、これからの狂犬病予防対策に必要だと思うことについて、各々意 見を出し合いました。私の組の構成人員は、研究機関(畜産生物科学安全研究所)の獣医師及び国際動物専門学 校の学生であり、これから必要な対策として、狂犬病について広く知識を啓発する、犬の登録・狂犬病予防接種 に関する費用を無料化する、狂犬病予防接種の効果を見るために血中の抗体価を測定する、不法上陸犬対策に力 を入れるなどの意見が出されました。なお、国際動物専門学校の学生は、狂犬病対策について基礎的な知識が不 足していた様子で、積極的な発言は見られませんでした。おそらく一般的な感覚に近い感覚の持ち主であろうこ とが推察されましたが、これらの学生に狂犬病対策について啓発するといった意味で、今回のシンポジウムは非 ― 9 ― 常に有効なものであると感じました。 ワークショップ終了後、農林水産省動物検疫所から、不法上陸犬対策について紹介がありました。私も以前、 動物検疫所で動物検疫業務に携わった経験があり、当時の記憶として、不法上陸犬対策が印象に残っています。 不法上陸犬とは、海外、特にロシアでは漁船の「守り神」として、犬を一緒に乗せて漁に出る習慣があり、こ れらの犬のうち、動物検疫の手続きを経ることなく日本の港に上陸したものを指します。 海外から日本に輸入される犬などについては、狂犬病予防法に基づき、狂犬病ワクチンの接種や血中抗体価の 測定が行われていますが、不法上陸犬については、これらの正規の手続きを経ることがない、いわゆる「外国生 まれの素性のしれない犬」が国内をうろつくわけで、これらの犬への対策が重要なのだと、当時感じたことを思 い出しました。 次に、講演についてです。講演は2題あり、まず始めに「旅行医学と狂犬病」と題して、東京都立駒込病院感 染症課 菅沼明彦先生から講演がありました。講演では、海外で狂犬病に感染した犬に咬まれた、帰国後に狂犬 病を発症した方の例や、人の狂犬病に対する暴露前・暴露後免疫に関する説明がありました。自分も動物検疫所 に勤務していた際に狂犬病ワクチン接種を受けていましたが、当時はかなりあやふやな知識であったため、今回 の講演は今更ながら勉強になりました。 <暴露前免疫の模式図> ・日本方式とWHO方式がある。 ・日本方式は初回、30日後、210日後のワクチン接種 ・WHO方式は初回接種、7日後、21日後(又は28日後) 接種、暴露当日接種、3日後のワクチン接種 <暴露後免疫の模式図①> ・国内で狂犬病を疑う犬に咬まれた場合の例 ・暴露後に狂犬病免疫グロブリン及び狂犬病ワクチンを 接種 ・3日後、7日後、14日後、30日後、90日後に接種 ― 10 ― <暴露後免疫の模式図②> ・外国で狂犬病を疑う犬に咬まれた場合の例 ・外国で初回、3日後、7日後のワクチン接種 ・帰国後14日後、30日後、90日後のワクチン接種 ・途中で外国産のワクチンが国内産のものに切り替わっ ても問題はない なお、暴露前免疫を行った場合のワクチンの有効期間はどのくらいか?との質問が会場からありましたが、暴 露前免疫は、暴露があった際の免疫応答を速やかに行うことが目的であり、暴露前免疫により抗体価を維持する といった考え方ではないため、明確な回答はできないとのことでした。 次に、 「狂犬病研究を通して感じていること」と題し、国立感染症研究所 井上 智先生から講演がありました。 講演の中では狂犬病の基礎知識が紹介されましたが、印象に残った点は、現在の国内の人用の狂犬病ワクチンの 生産量では、万が一狂犬病が侵入した場合、すぐにワクチンが枯渇してしまう危険性があるという事実でした。 また、一部の狂犬病発生国で研究が進められている「ミルウォーキー・プロトコル」という、狂犬病発症者の 治療法について説明がありました。同プロトコルは、これまで「発症したら100%死亡」と言われていた狂犬病 の治療法として注目を浴びているものですが、この治療法の確立には国を挙げて取り組むほどの莫大な費用がか かること、また、救命率も高くないことなどから、大勢の人の命を救うために最も確実なのは、現状では暴露前 免疫しかないとのことでした。 最後に、今回のシンポジウムに出席して、改めてパスツールの業績について調べてみました。パスツールの業 績は狂犬病ワクチンの開発だけではなく、食品の殺菌法の開発、生物の自然発生説との対峙など、多方面にわた ることを知り、彼が存在しなければ、我々現代人の生活は、何十年か遅れたものになっていたであろうと感じま した。 こうした先人の偉業に報いるために、狂犬病予防対策に携わる者の一員として、今後もより一層、狂犬病に関 する知識の普及・啓発に取り組まなければならないと痛感しました。 ― 11 ― 184 ― 12 ― ― 13 ― 第185号 ― 14 ― ― 15 ― 〔会員だより〕 県獣医師会ゴルフ 愛好会コンペ2012 青森支部 沼宮内 春 雄 去る9月23日、八甲田ビューカントリークラブで 恒例の県獣医師会ゴルフ愛好会コンペが会員等22名 の参加により開催しました。当日は数日前までの過 酷な残暑とは様変わりの高原らしい清涼のもと、日 頃の成果と懇親をかねて各々張り切って9時30分過 ぎ6組が順次スタートした。今年のコースはフェア ウェー・グリーンとも好条件で昨年の大雨による悪 条件とは異なり珍プレーもなくゴルフを終日楽しん でいました。また、クラブ周辺の木々は今年の猛暑 の所為か緑濃く、七竈もまだ色づかず初秋とはいえ 紅葉には今一でしたが遠方の山々の景観に見とれな ニャーワン(猫犬)談義 がらも皆さん優勝を目指しプレーに専念していたよ ペットにもメタボ健診 うです。 犬や猫にも過度の肥満や糖尿病などの生活習慣 昼食はノンアルコール類とステーキ、バラ焼肉な 病が増えてきているらしい。 ど美食を堪能し16時過ぎには無事ホールアウトする 「太っているほうが可愛い」という意識を持つ ことができました。 飼い主が多いからだろうか? 表彰式は軽食・談笑しながら各自プレーの反省す そこでペット版メタボリック症候群診断基準な るなか成績が発表され、大平信男さんが確実なパー るものがあるらしい。 グルコース 120mg以上 プレーとバーディでGROSS78・HDCP15・NET63 トリグリセライド(中性脂肪)160mg以上(い と断トツのスコアで優勝され大カップと沢山の副賞 ずれも血液100ml中)だとか、たいへんな時代 を獲得しました。入賞者とドラコン・ニアピン・X になったものである。 ニアピン賞には高級ぶどう・菓子等、全参加者には りんごジュース、シニアの方には高級卵1ダースが 人気のパンダもたいへん 授与されそれぞれ笑顔で受け取り入浴し来年の再会 自然繁殖で誕生したパンダ、大事に扱われてい を期してコンペを終えました。 たのであるが、生まれてから七日目に肺炎で亡 なお、2013年秋分の日も同クラブで開催を予定し くなってしまった。母乳が気管支に入り肺炎に ておりますので多くの会員・ご家族の参加をお待ち なったらしい。パンダは初産の場合は誕生から 一週間で6~7割りが死ぬと言われている。未 しております。 熟で生まれてくるかららしいのだが、大事にさ れるものは弱いのかなぁ。 ― 16 ― 〔事務局だより〕 平成24年度東北地区獣医師大会 及び獣医学術東北地区大会の概要 平成23年度の大会・三学会が、東日本大震災のため延期となっておりましたので、2年ぶりの開催となりまし たが、山形県獣医師会の担当により、表記大会が山形市の山形国際ホテルで10月10日(水)11日(木)の2日間 にわたり、盛大に開催されました。 大会は、恒例によりまして佐藤ひさし山形県獣医師会長の挨拶に始まり、その後山根日本獣医師会長の挨拶の 後、22年度の秋田県での発表者への褒章授与があり、本県関係では田口大介さんが日本小動物獣医学会長(東北) 賞、北里大学学生でありました佐藤健太郎(現在鹿児島農業共済連)さんと、國分英輝(発表時:動愛センター 所属)さんが東北獣医師会連合会長賞を受賞されました。 続いて、農林水産省消費・安全局長(代理:消費・安全局畜水産安全管理課荻窪恭明課長補佐)他の祝辞があ りました。その後、議事に入り日本獣医師会への要望として次の2つが提案されました。 1 勤務獣医師の確保と処遇改善について (秋田県獣医師会) 2 大規模災害発生時の被災動物救護体制の構築について (福島県獣医師会) それぞれ提案県より説明がなされ、全会一致で承認されました。 続いて、市民公開特別講演として、福島県高畠町公立高畠病院の副院長大木宏先生の「風呂と未病とCO」と、 市民公開教育講演として鶴岡市立加茂水族館村上龍男館長の「クラゲ奮戦記」の講演がありました。 今回の大会への本県出席者は20名、全体で251名と前回よりも少ない参加者でした。また、学会への本県参加 者は、産業動物13名、小動物8名、公衆衛生8名でした。 日本獣医師会長の挨拶 公衆衛生奨励賞(木村政明氏) ― 17 ― 平成24年度日本産業動物獣医学会(東北地区)の概要 獣医学術東北地区学会実行委員会 産業動物幹事 武 邉 千 秋 平成23年度獣医学術東北地区学会が昨年3月11日の未曾有の東日本大震災で延期され、今回、2年ぶりで山形 市国際ホテルにて開催されました。 10月11日、多数の会員が臨席する中、小形芳美地区学会長の挨拶、平成22年度の奨励賞与授与式に引き続き講 演発表が行われました。今年度は事前に各県・市からの発表演題数を取り決めた結果、牛関係22題、豚関係2題、 鶏関係3題の計27題の発表となり、発表者による貴重な講演と会員による熱心な質疑応答等で、これまでになく 充実した時間を過ごすことができました。また、山形県獣医師会のご尽力で産業動物獣医学会では珍しく、昼食 時にランチョンセミナー(「BRDC(牛呼吸器病症候群)ワクチンコントロールについて」講師:ファイザー(株) 林 忠嗣氏)の講演も行うことができ、会員の好評を得ることができました。 なお、講演後の厳選な審査の結果、下記の各賞が決定しました。 (1)獣医学術東北地区学会賞 ・移植前ウシ胚の複数項目遺伝子診断及びバイオプシー胚の受胎性改善 秋田県畜産試験場 西宮 弘氏ほか ・白筋症診断における臓器中ビタミンEおよびセレン測定の有用性 宮城県仙台家畜保健衛生所 高野 泰司氏ほか (2)東北獣医師会連合会長賞 ・肩部に滑膜肉腫が見られた黒毛和種繁殖雌牛の1例 北里大学大動物外科学研究室 横澤 彰憲氏ほか (3)獣医学術東北地区学会奨励賞 ・未経産乳牛における分娩前乳汁検査成績と分娩後乳房炎との関係 山形県農業共済連合置賜家畜診療所 平間 拓栄氏ほか ― 18 ― 平成24年度 日本産業動物獣医学会(東北地区)プログラム 座長:佐 藤 繁 (9:10 ~9:20) 1.異物刺入痕を認めなかった心膜炎の一症例について ○横山 哲郎 (福島県農共連いわせ石川家畜診療センター) (9:20 ~9:30) 2.先天的な球節の沈下を呈した黒毛和種子牛に対するギプス固定による治療の試み ○福田 達也、内海 博文 (宮城県農共連県北家畜診) (9:30 ~9:40) 3.肩部に滑膜肉腫がみられた黒毛和種繁殖雌牛の1例 富岡美千子1)、横澤 彰憲1)、畑井 仁2)、岩田 竜治2)、渡辺 大作1) (1)北里大・大動物外科学研究室、2)同・獣医病理学研究室) (9:40 ~9:50) 4.乳牛におけるヘモプラズマ感染の実態および垂直感染の可能性 ○栗谷川俊之1)、清水 宏彰1)、鈴木 尋2)、佐藤 繁2) (1)盛岡地域農済葛巻家畜診、2)岩大) 座長:渡 辺 大 作 (9:50 ~ 10:00) 5.雌雄外部生殖器が認められない牛生殖器奇形の1例 ○菊池 元宏1)、末舛ななみ1)、山﨑 春菜1)、阿部 竜大1)、佐藤 将伍1)、三浦 弘1)、畑井 仁2) (1)北里大・獣医臨床繁殖学研究室、2)同・獣医病理学研究室) (10:00 ~ 10:10) 6.黒毛和種発育不良子牛に見られた常染色体トリソミー ○辻 暁美、髙橋 雅博、太田 和広、鈴木 要一 (秋田県農共連県南家畜診) (10:10 ~ 10:20) 7.牛の単眼症の一例 ○森 大輝1)、関 美津子2)、細沼 愛美3) (1)山形県置賜家保、2)山形県内陸食検、3)山形県農共連置賜家畜診) 座長:小 形 芳 美 (10:20 ~ 10:30) 8.畜産現場におけるマイコトキシンの汚染状況について ○原田 俊之、熊田 昇二、蔵田 真弓、大橋 秀一、宗像 保久 (日本全薬工業㈱) (10:30 ~ 10:40) 9.白筋症診断における臓器中ビタミンEおよびセレン測定の有用性 ○髙野 泰司1)、日野 正浩2)、竹田百合子1)、髙橋 幸治3) (1)宮城県仙台家保、2)宮城県北部家保、3)宮城県環境生活部食と暮らしの安全推進課) ― 19 ― (10:40 ~ 10:50) 10.黒毛和種とホルスタイン種子牛におけるワクチン接種による免疫応答性の比較 ○杉田 良介、大塚 浩通、及川 正明 (北里大) (10:50 ~ 11:00) 11.病変程度の異なるヨーネ病患畜牛における病理組織学的ヨーネ菌体及び遺伝子検出の検討 ○曽地雄一郎1)、髙橋 幸治2)、矢島 りさ1)、日野 正浩3) (1)宮城県仙台家保、2)宮城県食と暮らしの安全推進課、3)宮城県北部家保) 座長:千 葉 伸 (11:00 ~ 11:10) 12.若齢牛に発生した下顎腫脹を呈した牛白血病の一症例 ○高野 儀之 (山形県中央家保) (11:10 ~ 11:20) 13.死亡牛における牛ウイルス性下痢ウイルスの感染状況 ○福成 和博、八重樫岳司、千葉 伸 (岩手県中央家保) (11:20 ~ 11:30) 14.牛ウイルス性下痢ウイルス持続感染牛摘発における課題と対応 ○児玉 能法1)、角田 裕美2)、佐々木 誠3)、佐々木英知1)、小笠原和弘1) (1)青森県八戸家保、2)青森県つがる家保、3)青森県営農大) (11:30 ~ 11:40) 15.ヒストフィルス・ソムニ感染症にて死亡したと考えられた黒毛和種子牛の3症例 ○海老名千尋1)、加藤 洋1)、須藤 庸子2)、本田 光平2) (1)山形県農共連最上家畜診、2)山形県最上家保) 昼食(11:40 ~ 13:00) ランチョンセミナー 11:50 ~ 12:40 座 長 加藤 敏英(NOSAI山形中央家畜診療所) 演 題 「BRDC(牛呼吸器病症候群)ワクチンコントロールについて」 講 師 ファイザー㈱キャトルビジネス統括部 マーケティング部 林 忠嗣 氏 座長:横 山 亮 一 (13:00 ~ 13:10) 16.黒毛和種牛におけるModified Fast BackSM Programの有用性と外陰部所見からの血中ホルモン濃度の推測 ○内海 博文、加納 茂太 (宮城県農共連県北家畜診) (13:10 ~ 13:20) 17.移植前ウシ胚の複数項目遺伝子診断及びバイオプシー胚の受胎性改善 ○西宮 弘1)、高橋 利清1)、伊藤 隆2)、平野 貴3)(1)秋田県畜試、2)秋田県北部家保、3)東京農業大) (13:20 ~ 13:30) 18.2010年に岩手県で流行した牛のアカバネ病 ○中原 秀之1)、八重樫岳司2)、大山 貴行2)、後藤満喜子1)、本川 正人1) (1)岩手県県南家保、2)岩手県中央家保) ― 20 ― 座長:伊 藤 隆 (13:30 ~ 13:40) 19.ビタミンA欠乏による黒毛和種繁殖牛の流産・異常産子の発生 ○阿部 憲章1)、後藤満喜子2)、佐藤 千尋3)、熊谷 芳浩1) (1)岩手県県南家保、2)岩手県県北家保、3)岩手県中央家保) (13:40 ~ 13:50) 20.生菌剤の飼料添加による乳房炎予防効果の検討 ○加藤真姫子1)、五十嵐靖美2) (1)秋田県畜試、2)東亜薬品工業㈱・東京都) (13:50 ~ 14:00) 21.未経産乳牛における分娩前乳汁検査成績と分娩後乳房炎との関係 ○平間 拓栄、小松 智、遠藤 洋、漆山 芳郎 (山形県農共連置賜家畜診) 座長:大 橋 秀 一 (14:00 ~ 14:10) 22.肉用牛における筋肉中放射性セシウム濃度の血液からの推定 ○内田 守譜1)、石川 雄治1)、古閑 文哉1)、高瀬つぎ子2)、大槻 勤3)、村松 康行4) (1)福島県農業総合センター畜産研究所、2)福島大、3)東北大、4)学習院大) (14:10 ~ 14:20) 23.豚由来大腸菌の薬剤体制状況からみた抗菌剤慎重使用誘導の効果 ○真鍋 智1)、佐沢 公子1)、大久 範幸2)、横山 亮一3) (1)宮城県北部家保、2)宮城県大河原家保、3)宮城県仙台家保) (14:20 ~ 14:30) 24.豚皮膚炎腎症症候群の発生要因に関する検討 ○佐藤 遼太1)、平野かおり2)、高野 儀之2)、大河原博貴2)、馬渡 隆寛2)、坪井 尚子3)、菅原 良次4)、 細川 みえ1) (1)山形県庄内家保、2)山形県中央家保、3)山形県農共連庄内家畜診、4)山形県農共連) 座長:武 邉 千 秋 (14:30 ~ 14:40) 25.伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス免疫抑制下における混合感染による出血性症候群の再現 ○平島 一輝、佐々木 淳、御領 政信 (岩大・獣医病理学研究室) (14:40 ~ 14:50) 26.頚曲り発症成鶏の脊髄病変 ○江藩 麻代、佐々木 淳、御領 政信 (岩大・獣医病理学研究室) (14:50 ~ 15:00) 27.比内地鶏に発生したニワトリオオハジラミに対する薬浴の一例 ○山口 恭代1)、菅野 宏1)、小沼 成尚2)、佐藤 伸行1) ― 21 ― (1)秋田県中央家保、2)秋田県畜産振興課) 〔青森県、発表者の抄録〕 演題番号:3 演題名:肩部に滑膜肉腫がみられた黒毛和種繁殖雌牛の1例 発表者氏名:富岡美千子1)、○横澤 彰憲1)、畑井 仁2)、岩田 竜治2)、渡辺 大作1) 発表者所属:1)北里大・大動物外科学研究室、2)同・獣医病理学研究室 1.はじめに:滑膜肉種は腱・滑液嚢・腱鞘の腱滑膜組織に由来する悪性腫瘍で四肢に好発するが、牛での発生 報告はほとんどない。今回、右肩関節付近に腫瘍を認めた黒毛和種繁殖雌牛について、腫瘍を滑膜肉腫と診断し たので報告する。 2.症例および治療経過:11歳の黒毛和種繁殖雌牛で、2011年7月に放牧場で右肩関節付近に拳大の腫脹が認め られ穿刺したところ血様物であった。11月に腫脹はさらに大きくなり、再び穿刺したが、12月末に患部は自壊し、 2012年2月に本学大動物診療センターに来院した。その際の臨床所見は、患部に直径約30㎝の自壊部があり、そ の周囲皮下には充実性のある湿潤な肉様組織と線維組織が混在するように広がっていた。自壊部から白色の膿や 透明な滲出液、血液の漏出がみられた。また右肩甲骨前縁付近に拳大の硬い皮下腫瘤が2ヶ所認められた。心拍 数・呼吸数・体温は正常で、体表リンパ節の腫脹は認められなかった。可視粘膜はやや白く、右前肢を動かす際 につまづくような歩様であった。超音波検査により右肩関節とその関節包に異常がないことが確認できた。自壊 部辺縁組織の生体組織学的検査および皮下腫瘤の細針吸引生検において、核の腫大などの悪性所見がみられたが、 限局的な浸潤性はあるが脈管浸潤のない腫瘍であると判断し摘出手術を試みた。しかし腫瘍は広範で右鎖骨下動 脈を巻き込み摘出不可能のため病理解剖を実施した。 3.病理学的検索:病理解剖所見;腫瘍深部は右肩甲骨に付着する筋群に浸潤し、右上腕骨の大結節から三角筋 粗面に付着していた。右肩関節包内側に腫瘍が近接していた。リンパ節など多臓器への転移は認められなかった。 組織学的所見;腫瘍細胞は紡錘形や多角形で大型化した核と好酸性の細胞質をもつ間葉系細胞であった。腫瘍細 胞間には間隙があり、嚢胞状構造や腫瘍細胞で内張りされた裂隙がみられた。それらの内部や細胞間隙には酸性 粘液物質が沈着していた。免疫組織化学的所見;腫瘍細胞はvimentin,calretinin陽性であった。 4.考察:症例は腫瘍が右肩関節包内側に近接していたこと、右肩関節周囲の組織に腫瘍細胞が確認できたこと、 組織学的所見および免疫組織化学的所見から滑膜肉腫と診断した。牛の滑膜肉腫の報告は演者が知る限り、国内 1例(環椎後頭骨関節)、海外2例(上腕骨遠位端と飛節)であり、貴重な症例であった。 演題番号:5 演題名:雌雄外部生殖器が認められない牛生殖器奇形の1例 発表者氏名:○菊池 元宏1)・末舛みなみ1)・山﨑 春菜1)・阿部 竜大1)・佐藤 将伍1)・三浦 弘1)・畑井 仁2) 発表者所属:1)北里大学・獣医臨床繁殖学研究室、2)北里大学・獣医病理学研究室 1.はじめに:牛の先天性生殖器異常による繁殖障害にはフリーマーチン、半陰陽、中腎傍管の部分的形成不全、 中腎傍管の隔壁遺残、雄の尿道下裂、潜在精巣などがあるが、何れの疾患でも外部生殖器は確認できる。今回、 雄雌および雄性外部生殖器が認められない症例を観察する機会を得たので、その概要を報告する。 2.症例および検査:症例牛は3歳8ヶ月齢、体重765㎏のホルスタイン種の個体で、外陰部、包皮、陰茎、陰 嚢などの外部生殖器は認められず、尿道の開口は乳房後方に形成された皮膚襞の間に尿道下裂のような状態で観 ― 22 ― 察されるものであった。この牛について雌雄鑑別を行う目的で、染色体検査、内分泌学的検査、および形態学的 検査を実施した。 3.成績:①リンパ球培養による染色体検査では60XYの細胞だけが観察され、染色体の性は雄であることが明 らかとなった。②性腺機能評価のため、hCG負荷後の血漿中テストステロン(T)濃度と、PMSG投与後5日目 にhCG投与したときの血漿中プロジェステロン(P4)濃度の推移を観察した。しかし、T濃度は0.1ng/ml以下、 P4濃度は1ng/ml以下で推移し、性腺は機能的な状態にはないと推察された。③エストロジェンのLH分泌に対 するフィードバック機能を評価するためエストラジオール(E2)を用いた負荷試験を行った。E2投与後経時的 に血漿中LH濃度を測定したが、雌でみられるようなサージ状の分泌は示さなかったため、E2のLH分泌に対する フィードバック機能は雄タイプであると推定された。④症例牛の生殖器は基本的に雄の構造であり、膀胱頸部に は一対の精嚢腺と前立腺体部が存在し、尿道筋の断面には前立腺伝播部が認められた。また、膀胱頚背部には3 本の管が侵入しており、両端の2本は蛇行した管が膜に包まれた精巣上体の様な構造をとり、膀胱頸部では並走 するが膀胱背部で左右に分かれ、その終末部に性腺様の構造物が観察された。この2本の管の間に3本目の管が 存在し、これらは馬に見られる雄の子宮に類似していた。これらの管は精嚢腺の導管と共に膀胱頚背部に精丘の 様な構造を作って開口していた。性腺自体は組織学的にみても精巣か卵巣どちらかへの分化を明瞭には示してお らず、単純に中間型とも言い難い状態であった。 4.結語:表現型の性を決定できなかった本症例の遺伝的な生はXYであり、内部生殖器は雄型に近いことが明 らかとなった。しかし、性腺は組織学的に分化の方向が明瞭でなく、性腺の性を決定することはできなかった。 演題番号:10 演題名:黒毛和種とホルスタイン種子牛によるワクチン接種による免疫応答性の比較 発表者氏名:○杉田 良介、大塚 浩通、及川 正明 発表者所属:北里大 1.はじめに:子牛は免疫機能が成牛に比べて未熟なため、肺炎や下痢症などの感染症を発症しやすい。特に黒 毛和種の子牛は他の品種の子牛に比べて抗病性が低く、感染症の発生が多いとされている。このような感染症を 予防する目的で生産現場ではワクチネーションプログラムが実施されている。従来のワクチン効果の判定には抗 体価の上昇が重視されているものの、ワクチン接種後の免疫細胞の機能変化に関しては殆ど明らかにされていな い。そこで本研究では、ワクチン抗原の一つである牛伝染性鼻気管炎(以下、IBR)に注目し、黒毛和種とホ ルスタイン種子牛におけるIBR生ワクチン接種後の免疫応答を観察し、免疫細胞の応答性を比較した。 2.材料及び方法:供試牛には青森県内の3戸の牧場で出生した臨床的に健康な黒毛和種子牛(N=5)とホル スタイン種子牛(N=7)を用いた。すべての供試牛に対し、6週齢に1回目のワクチン接種を実施し、10週齢 に2回目ワクチン接種を実施した。ワクチン接種による免疫応答を評価するため、1回目ワクチン接種前、1回 目ワクチン接種3日後、2回目ワクチン接種前、2回目ワクチン接種3日後、2回目ワクチン接種6日後の計5 回採血し、末梢血白血球ポピュレーション、単核球のPHA刺激によるサイトカイン遺伝子発現量、抗体価の解 析を行った。 3.成績:両群ともにCD3+TCR-N12+細胞が、2回目ワクチン接種前に比べ接種3日後では増加する傾 向が見られたが、ホルスタイン種群では有意な上昇がみられた。ホルスタイン種群のCD8β+45R-T細胞は 2回目ワクチン接種後に上昇し、3日後において接種前に比べ有意な差がみられたが、黒毛和種群ではこのよう ― 23 ― な変化は見られなかった。またホルスタイン種群のCD21+IgM+B細胞およびMHC class-II+CD14-B 細胞は、2回目ワクチン接種前に比べ接種3日後に上昇する傾向を示し、特にCD21+IgM+B細胞では有意 な上昇がみられた。しかし黒毛和種群では2回目ワクチン接種前に比べ各B細胞の上昇は緩慢であった。 4.考察:以上のことから、黒毛和種群はホルスタイン種群に比べてワクチン接種による免疫細胞の応答性が低 いことが示唆された。品種差はウイルスに対するワクチンの効果に影響を与える可能性がある。 演題番号:14 演題名:牛ウイルス性下痢ウイルス持続感染牛摘発における課題と対応 発表者氏名:○児玉 能法1)、角田 裕美2)、佐々木 誠3)、佐々木英知1)、小笠原和弘1) 発表者所属:1)青森県八戸家保、2)青森県つがる家保、3)青森県営農大 1.はじめに:牛ウイルス性下痢・粘膜病は牛ウイルス性下痢ウイルス(以下、BVDV)の感染により肺炎、下痢、 流死産等の様々な病態を示す。特に妊娠牛への感染により持続感染(PI)牛が出生する場合があり、PI牛は 終生ウイルスを排出し続け、同居牛への感染源となるため問題となっている。今回BVDVの関与を疑う流産が 発生した一酪農家で、清浄化のためのPI牛摘発を行った結果、検査上の課題があり対応を検討したので報告す る。 2.発生状況:平成22年8月ホルスタイン種36頭を飼養する農場で、経産牛1頭が胎齢7か月で流産した。過去 の流死産の発生は平成20年に7頭、21年に2頭、22年に1頭であった。発生時の胎齢は3~7か月であった。 3.成績:平成22年発生流産胎児のPCR検査では腎臓からBVDVⅡ型特異遺伝子を検出、ウイルス分離成績 は陰性であった。浸潤状況を確認するため、平成22年11月及び平成23年5月の2回、全頭検査を実施することと し、牛血清44頭(延べ87頭)分を用いたBVDVⅠ型(Nose株)及びBVDVⅡ型(KZ-91株)の中和試験、 牛白血球18頭(延べ25頭)分を用いたPCR検査を実施した。平城22年11月のBVDV抗体価はGM値でⅠ型が9.1 倍、Ⅱ型が32.7倍であり、抗体保有牛は約半数にとどまっていた。平城23年5月はGM値でⅠ型が174.2倍、Ⅱ型 が844.7倍と1回目と比較して著しく上昇し、成牛全頭が抗体を保有していた。検査結果から3頭のPI牛を摘 発し、分離株の分子系統樹解析の結果、同一由来のウイルス株であることが示唆された。 4.考察:今回PI牛かの判断に苦慮する事例2件は、一方は、移行抗体保有期間中に摘発した事例であり、他 方はPCR陽性であるにもかかわらず低い抗体価を保持した例であった。対応策としては移行抗体の消失後に検 査を実施することであるが、判定に長期間を要する難点がある。抗体陽性であっても、BVDV抗原が検出され た牛については、継続して追跡検査を実施し、PI牛か否かを確定する必要があると考えられた。 ― 24 ― 平成24年度日本小動物獣医学会(東北地区)の概要 日本小動物獣医学会(東北) 幹事 伊 藤 直 之 平成24年10月11日に山形県獣医師会の担当で、山形市の山形国際ホテルを会場に平成24年度の日本小動物獣医 学会(東北地区)が開催されました。当日の朝には、例年と同様に合同審査委員会が開催され、学会の運営およ び各賞の選出に関して討議されました。 今年の学会は、昨年が東日本大震災の影響で中止となったため、2年ぶりの開催となりました。地区会長であ る岩手大学の安田先生から開会の挨拶があった後、日本小動物獣医学会の会長である岩手大学の佐藤先生より演 者の先生方に対して、地区学会で発表した内容を日本獣医師会雑誌に投稿して頂くよう強い要請がありました。 今年度の学会発表演題数は、例年に比べて多い30題であり、青森県からは4演題が発表されました。なお、各 獣医師会別の発表演題数は下記の通りでした。 青森県 4題 岩手県 7題 秋田県 4題 山形県 3題 宮城県 5題 仙台市 5題 福島県 2題 青森県から発表の4演題は、次の通りです。 ・犬の細菌性心内膜炎の6例 田口大介(グリーン動物病院) ・犬の網膜電位図検査における暗順応、明順応時間と各反応間隔時間、それに基づく基準値の検討 橋田達男ほか(北里大学) ・犬末梢血単核球の組織因子発現に与えるHMGB-1の影響 小関清人ほか(北里大学) ・再発した線維肉腫にレーザー治療を行ったイヌの一例 竹原律郎(ふれあい動物病院) 講演終了後、審査会が開催され、受賞演題が次のように決定しました。 東北地区学会長賞(2題) 日本小動物獣医学会(東北) ・ゴニオインプラント挿入術を実施したイヌ5症例の治療成績 藤井祐介ほか(アセンズ動物病院・仙台市) ・コルチゾール-ACTH比およびアルドステロン-レニン活性比の測定により原発性副腎皮質機能低下症と 診断した犬の1例 布川寧ほか(北の杜動物病院・仙台市) 東北獣医師会連合会長賞 日本小動物獣医学会(東北) ・腎臓腺癌による多血症を呈した猫の一例 山下彩友子ほか(岩手大学) 奨 励 賞 日本小動物獣医学会(東北) ・門脈圧亢進症を呈した猫の一例 奥山尚明ほか(天童動物病院・山形県) 2年ぶりの開催ということもあって例年になく朝から参加者が多く、また、討論も活発で盛会でした。さらに、 参加者に若い先生方が多く世代交代を感じた一方で、今後、益々本学会が発展するであろうことを確信しました。 来年は、福島県郡山市で開催されることになっています。青森県から一題でも多くの発表があることを期待して おります。 ― 25 ― 平成24年度 日本小動物獣医学会(東北地区)プログラム 座長:大 草 潔 (9:10 ~9:20) 1.神経症状を伴う非滲出型猫伝染性腹膜炎が疑われた1例 ○川村 祐介1)、御領 政信2) (1)加賀野どうぶつ病院・岩手県、2)岩大) (9:20 ~9:30) 2.犬の細菌性心内膜炎の6例 ○田口 大介 (グリーン動物病院・青森県) (9:30 ~9:40) 3.犬の網膜電位図検査における暗順応、明順応時間と各反応間隔時間、それに基づく基準値の検討 ○橋田 達勇、清水 麻由、金井 一享、近澤征史朗、堀 泰智、星 史雄、伊藤 直之、樋口 誠一 (北里大) 座長:伊 藤 直 之 (9:40 ~9:50) 4.ウェルシュコーギー・ペンブロークに見られた両側性異所性尿管の一症例 ○安藤 太 (那智が丘アン・ペットクリニック・宮城県) (9:50 ~ 10:00) 5.短期間に進行がみられた両眼性後部円錐水晶体の一例 ○山下 洋平 (エビス動物病院・仙台市) (10:00 ~ 10:10) 6.ゴニオインプラント挿入術を実施したイヌ5症例の治療成績 ○藤井 裕介1)、戸谷亜希子2)、山口 五月2)、牛尾 祥彦2)、丹野 貴備2)、中尾 淳2) (1)アセンズ動物病院 眼科・仙台市、2)アセンズ動物病院・仙台市) 座長:栗 田 徹 (10:10 ~ 10:20) 7.環椎-軸堆不安定症の犬に頚部コルセットを用いた犬の一例 ○船橋 薫、木下 晴雄、武隈 勝朗 (たけくま動物病院・秋田県) (10:20 ~ 10:30) 8.背側脊髄圧迫が認められた癒合脊椎を伴う環軸不安定症の犬の一例 ○牛尾 拓1)、片山 泰章1)、栗谷川優子1)、宮崎あゆみ1)、武藤 伸吾2)、岡村 泰彦1)、宇塚 雄次1) (1)岩大小動物外科、2)むとう動物クリニック・岩手県) (10:30 ~ 10:40) 9.変性性脊髄症が疑われたウェルシュ・コーギー・ペンブロークの一例 ○伊藤 博康、伊藤 博 (いとう動物病院・宮城県) ― 26 ― 座長:安 住 明 彦 (10:40 ~ 10:50) 10.犬末梢血単核球の組織因子発現に与えるHMGB-1の影響 ○小関 清人、小笠原聖悟、前田 賢一、垰田 高広、岡野 昇三 (北里大・小動物第2外科学) (10:50 ~ 11:00) 11.腸閉塞を呈した先天性メトヘモグロビン血症と思われる犬の1例 ○佐藤 龍也 (エスティー動物病院・福島県) (11:00 ~ 11:10) 12.IBDと診断された犬25例に関する疫学的および臨床的検討 ○鈴木 一哉1)、松野 実1)、志賀 亮平1)、松野 裕史1)、松野香須美1)、岡部 公子1)、町田 登2) (1)松野動物病院・秋田県、2)農工大・獣医臨床腫瘍学研究室) 座長:松 野 実 (11:10 ~ 11:20) 13.硬化性リンパ球性胆管肝炎と診断された雑種猫の1例 ○岩根 英明、岩根 浄子 (いわね動物病院・岩手県) (11:20 ~ 11:30) 14.門脈圧亢進症を呈した猫の一例 ○奥山 尚明1)、山口 和彦1)、首藤 聖子1)、羽生 尚史1)、本間 啓太1)、寺村 太一2)、栗田 徹1) (1)天童動物病院・山形県、2)てらむら動物病院・山形県) (11:30 ~ 11:40) 15.犬の原発性上皮小体機能亢進症の1例 ○寺村 太一1)、寺村 真紀1)、栗田 徹2) (1)てらむら動物病院・山形県、2)天童動物病院・山形県) 昼食(11:40 ~ 13:00) ランチョンセミナー 11:50 ~ 12:40 司 会 岡崎 健(おかざき動物病院) 演 題 「今すぐ読めるMIR画像」 講 師 株式会社キャミック 練馬センター長 土岐 美苗氏 座長:安 田 準 (13:00 ~ 13:10) 16.巨大食道症を併発したクッシング症候群の犬の一例 ○籏野 剛 (ハタノ犬猫病院・福島県) (13:10 ~ 13:20) 17.コルチゾール-ACTH比およびアルドステロン-レニン活性比の測定により原発性副腎皮質機能低下症と診 断した犬の1例 ○布川 寧、氏家 千春、内田 裕子 (北の杜動物病院・仙台市) ― 27 ― (13:20 ~ 13:30) 18.コルチゾールが低値を示した犬の検討~非定型アジソン病について ○小島 信子、小野寺秀之、川畑 唯生、伊藤 雄 (オノデラ動物病院・宮城県) 座長:岡 野 昇 三 (13:30 ~ 13:40) 19.フィブラストスプレーを猫の皮膚創傷治癒に使用した3症例 ○梶 太郎 (ウィル動物病院・宮城県) (13:40 ~ 13:50) 20.ポリプロピレンメッシュを用いて整復した犬の会陰ヘルニアの3例 ○小松 亮、小松奈津貴、佐藤 泰紀 (あきたこまつ動物病院・秋田県) (13:50 ~ 14:00) 21.再発した線維肉腫にレーザー治療を行ったイヌの一例 ○竹原 律郎、片瀬 生子 (ふれあい動物病院・青森県) 22.後大静脈結紮にて副腎皮質腺癌を完全切除したフェレットの1例 ○小松 亮、小松奈津貴、佐藤 泰紀 (あきたこまつ動物病院・秋田県) 座長:河 又 淳 (14:10 ~ 14:20) 23.セキセイインコにみられた胃腺癌の2例 ○松田 祐二 (原町動物病院・仙台市) (14:20 ~ 14:30) 24.精巣腫瘍が認められた6ヵ月齢の猫の1例 ○蘆立 太宏 (あしだて動物病院・仙台市) (14:30 ~ 14:40) 25.多血症を伴う犬の腎臓腫瘍の一例 ○川村 理沙1)、小林 紗織1)、島村 俊介1)、平島 一輝2)、佐々木 淳2)、御領 政信2)、安田 準1)、 佐藤 れえ子1) (1)岩大・小動物内科学研究室、2)岩大・病理学研究室) (14:40 ~ 14:50) 26.腎臓腺癌による多血症を呈した猫の一例 ○山下彩友子1)、岡村 泰彦1)、栗谷川優子1)、宮崎あゆみ1)、島村 俊介2)、片山 泰章1)、宇塚 雄次1) (1)岩大・小動物外科学研究室、2)岩大・小動物内科学研究室) 座長:佐 藤 れえ子 (14:50 ~ 15:00) 27.犬の低悪性度リンパ腫(Low Grade Lymphoma)の1例 ○大志田淳一 (大志田動物病院・岩手県) (15:00 ~ 15:10) 28.リンパ管肉腫が疑われた犬の一例 ○山口 和彦、奥山 尚明、首藤 聖子、羽生 尚史、本間 啓太、栗田 徹 (天童動物病院・山形県) ― 28 ― (15:10 ~ 15:20) 29.腹腔内悪性中皮腫の犬の一例 ○土赤 忍、茂木 朋貴、栗谷川優子、宮崎あゆみ、岡村 泰彦 (岩大・小動物外科学研究室) (15:20 ~ 15:30) 30.老齢猫の下顎骨扁平上皮癌(T 3bNOMO)の1例 ○髙平 篤志1)、小野寺秀之2)、小島 信子2)、川畑 唯夫2) (1)たかひら動物病院・宮城県、2)オノデラ動物病院・宮城県) 〔青森県、発表者の抄録〕 演題番号:2 演題名:犬の細菌性心内膜炎の6例 発表者氏名:〇田口 大介 発表者所属:グリーン動物病院・青森県 1.はじめに:犬の細菌性心内膜炎は稀な疾患であり、死亡率の非常に高い疾患として認識されている。今回、 6例の犬に本疾患を認めたが、早期診断し、積極的治療を実施し得た4例が治癒し長期生存したので、その概要 を報告する。 2.症例:2005年4月から2012年8月の間に、当院において細菌性心内膜炎と診断した6例(平均年齢8.8歳、 平均体重18.3㎏)。全例とも数日前からの元気・食欲の廃絶を主訴に来院し、そのうち1例は他院にてステロイ ド投与を受けていた。 3.検査所見:診断は心エコー検査と血液細菌培養検査にて確定診断した。6例中4例は僧帽弁に疣腫を形成 していた。他の2例は三尖弁に疣腫を形成していたが、共にフィラリアの三尖弁てん絡を有していた。5例で Streptococcus sp、1例でEscherichiacoliが分離された。感染経路は、3例においてはそれぞれ鞭虫による慢性 下痢、子宮蓄膿症、膀胱炎と予想されたが、3例では不明であった。その他、発熱、白血球数およびCRPの高 値が認められた。 4.治療と経過:全例とも初診時から抗生剤多剤併用治療を開始した。僧帽弁の2例では、疣腫が小さく、内科 的治療のみで、経日的に全身状態が改善した。ただし、疣腫の増大傾向は数日間続いた。ステロイド投与を受け た1例においても、当院初診時においては僧帽弁の疣腫が小さかったが、内科治療によって全身状態およびCR Pの改善がみられず、疣腫も増大したため、第21病日に疣腫の外科的切除と僧帽弁形成術を実施した結果、改善 した。三尖弁に大きな疣腫がみられた子宮蓄膿症の1例では、子宮卵巣摘出術により、徐々に改善した。改善し た4例は長期生存した。死亡した2例中1例は、診断時に非常に大きな疣腫が僧帽弁に存在し、既に心不全を起 こしており第2病日に死亡した。他の1例では三尖弁に多剤耐性菌による疣腫があり第4病日に死亡した。 5.考察:今回、6例中4例(67%)で治療が奏功し長期生存した。犬の細菌性内膜炎は高い死亡率(約80%) が報告されているが、早期発見と、積極的治療により治癒率が向上すると考えられた。何らかの細菌感染が疑わ れる場合には、心エコー検査も実施するべきであると思われた。また治療経過中の心エコー検査とCRP測定は、 ― 29 ― 治療選択の上で重要であった。三尖弁の心内膜炎の発生は稀であると報告されているが、今回6例中2例も遭遇 した。両例とも三尖弁てん絡が既に存在したため、三尖弁への細菌感染が成立し易かったと考えられた。さらに 三尖弁ではうっ血性心不全への時間的余裕があるため、予後は良い可能性があると思われた。 演題番号:3 演題名:犬の網膜電位図検査における暗順応、明順応時間と各反応間隔時間、それに基づく 基準値の検討 発表者氏名:〇橋田 達勇、清水 麻由、金井 一享、近澤征史朗、堀 泰智、星 史雄、伊藤 直之、 樋口 誠一 発表者所属:北里大 1.はじめに:網膜電位図(ERG)検査は、網膜疾患の診断に非常に有用性がある。ERGには杆体機能を評 価するrodresponse(杆体反応)、杆体機能と錐体機能の両者の最大刺激反応を示すstandard combined response (錐体・杆体反応)、錐体機能を評価するsingle-flash cone response(錐体反応)および30Hz flicker response(30Hz 反応)がある。人のERG検査には、国際臨床視覚電気生理学会(ISCEV)推奨プロトコールが提唱されて いる。犬のERGの刺激光は、ISCEVに準拠して行われている。しかし、犬の暗順応と明順応時間と各ER G検査(杆体反応、錐体・杆体反応、錐体反応、30Hz反応)の反復記録間隔時間による刺激光の干渉について 詳細に検討した報告はない。今回、再現性のあるERG検査を行うための各条件を検討し、北里大学におけるE RG検査の基準値を設定した。 2.材料および方法:ERGは、6~ 10歳の健常ビーグル犬9頭(雄4頭、雌5頭)を用い、光源一体型コン タクトレンズ電極を両眼に装着し記録した。犬の不動化には、メデトミジン、ミタゾラムとプトルファノールの 混合鎮静薬を用いた。ERG検査には、実験前に毎回同じ輝度の照明下に20分間犬を静置した。また各検討は、 それぞれ個別に、暗順応時間、杆体反応と錐体・杆体反応刺激光間隔時間、明順応時間、錐体反応と30Hz反応 刺激光間隔時間についておこなった。各条件の検討には、b波の最大振幅(μV)と潜時(msec)を用い、実 験間隔は、1週間とした。 3.結果および考察:暗順応時間:30分、杆体反応記録間隔時間:30秒、錐体・杆体反応記録間隔時間:1分、 明順応時間:5分、錐体反応間隔・30Hz反応間隔15秒という結果になった。明順応は、ISCEVでは10分以 上を推奨しているが、本実験では、5分と10分間で有意差は見られなかった。各刺激光の最大振幅、潜時の平均 値±標準偏差は杆体反応(133.64±13.98、72.74±9.82)、錐体・杆体反応(192.6±50.49、33.36±2.21)、錐体反応 (46.33±9.28、26.32±3.29)、30Hz反応(41.84±7.24、28.10±1.61)であった。本実験は6~ 10歳の健常ビーグ ル犬の基準値を検討したが、今後、他の犬種や年齢・性差別に本学の基準値を検討していく必要がある。 演題番号:10 演題名:犬末梢血単核球の組織因子発現に与えるHMGB-1の影響 発表者氏名:○小関 清人1)、小笠原聖悟1)、前田 賢一1)、峠田 高広1)、岡野 昇三1) 発表者所属:1)北里大・小動物第2外科学 1.はじめに:近年、重度の炎症性疾患と血液凝固異常の関連性が注目されている。これは、炎症性サイトカイ ンが炎症の惹起のみならず血液凝固系をも活性化させるためである。一方、High Mobility Group Box-1(HMGB― 30 ― 1)は遅発性の炎症性サイトカインの一種であり、炎症が発現すると、遅発性にマクロファージ/単球あるい は壊死細胞から放出され敗血症との関連が報告されている。また、ヒトやマウスにおける実験では、HMGB-1 が末梢血単核球の組織因子(Tissue factor:TF)発現量を増加させ、生体における凝固活性を亢進させること が示されている。しかし、犬において類似の現象を検討した報告はない。そこで、検討1では、HMGB-1が犬 の末梢血単核球の組織因子発現量に与える影響を検討し、検討2では、感染性炎症モデルとして、HMGB-1と Lipopolysaccharide(LPS)の共存下における変化を合わせて検討した。 2.材料および方法:検討1では、健常犬の血液から末梢血単核球(Peripheral Blood Mononuclear Cells: PBMCs)を比重遠心法により分離し、1×106PBMCs/mLに調整した。この細胞浮遊液にヒト組み換え型 HMGB-1(hr-HMGB-1)をそれぞれ0、100、1000ng/mL添加し、37℃、5% CO2インキュベーター内で24時間 刺激培養した。培養後、PBMCsを凍結融解処置し、TF発現量をヒトプール血漿に対する凝固時間より求めた。 検討2では、同様のPBMCsにhr-HMGB-1を100または1000ng/mL添加し、さらにLPSを0、1、10pg/mL添加した。 その後、検討1と同様の条件下で培養および凍結融解処置後、凝固時間を測定することでTF発現量を測定した。 3.成績:検討1において、犬PBMCsのTF発現量は、hr-HMGB-1濃度依存的に増加し、1000ng/mLの添加で無 添加群と比較して有意な増加が認められた。検討2において、hr-HMGB-1 1000ng/mL添加にさらにLPSを添加 した群では、LPS濃度依存的にTF発現が増加し、LPS10pg/mL添加群で他の添加群に比べ有意に増加した。また、 LPS濃度一定下において、hr-HMGB-1は濃度依存的にTF発現量を増加させた。 4.考察:hr-HMGB-1による犬PBMCsのTF発現は、hr-HMGB-1の濃度依存的に増加することが示された。また、 TF発現量はhr-HMGB-1とLPSの共存下において、濃度依存的なTF発現をより増幅させることが示された。この ことは、炎症や組織損傷に伴い放出されるHMGB-1が体内での凝固活性を増加させる可能性があるのみならず、 一次性もしくは二次性感染によるエンドトキシンが共存した場合、体内で血栓形成やDIC等の凝固異常が促進す る可能性が示唆された。 演題番号:21 再発した線維肉腫にレーザー治療を行なったイヌの一例 ○竹原 律郎1、片瀬 生子1 1)ふれあい動物病院・青森県 1.はじめに:線維肉腫は中年から高齢の犬猫の表皮、皮下組織、口腔内などに発生し、一般的に孤立性で増殖 が早い傾向にある悪性腫瘍である。再発することも多く、この場合の治療では更なる拡大切除、放射線治療、化 学療法などが推奨されている。今回再発例に、色素を用いたレーザー局所凝固処置により、治療し寛解を得られ たので経過報告する。 2.症例:シバイヌ、メス(未避妊)、14歳、体重10.15㎏、BCS3/5。右側、後肢内側、足根関節部に単独の腫 瘤を認め一部自壊し出血していた。 3.治療経過:腫瘍は固く固着して、足根部の約2倍大あり、継続的に出血していた。FNAでは細胞診を実施 し多形性に富んだ非上皮性細胞を認めた。血液検査では貧血があり、レントゲンでは、該当部、胸部では著変は なかった。完全切除できない可能性も含め検討し、止血、減容積を目的とする緩和治療として外科切除を実施した。 病理診断で線維肉腫、境界不明瞭であった。手術後15日目に再発し、術後21日目には隆起が2か所となり自壊した。 インドシアニングリーン(ICG)を用いた半導体レーザー(808nm)凝固処置を治療として選択した。腫瘍全体 ― 31 ― にICGを穿刺注入、プローブを穿刺照射して、腫瘍表面にも塗布し照射した。5mg/mlに調整したICGを1か所に、 約2ml注入、腫瘍内照射で出力4W、On/Off0.5秒のサイクルを18回実施した。腫瘍の表面では約1ml塗布して、 4W出力で、表面全体が凝固されるまで目視で照射した。これを9-17日毎に3回実施し、施術後36日で腫瘍は 消失した。 4.考察:線維肉腫では、マージンを十分とった切除が難しいことも多く、再発の報告が多く20-60%に及ぶ。 この症例も再発したケースで、再切除をせずにICG併用凝固処置により、線維肉腫に対して1か月余りで寛解を 得ることができた。蛋白質の変性、凝固、炭化、ICGの発熱作用、光化学反応により生成した一重項酸素(活性 酸素)が細胞死を起こしたことなどが、腫瘍消退のメカニズムと考えられた。今後、同様に十分マージンが取れ ないケースでは、切除後術中にICG凝固処置の実施を検討したいと考えている。 ― 32 ― 平成24年度日本獣医公衆衛生学会(東北地区)の概要 獣医公衆衛生学会 幹事 新井山 潤一郎 本学会は、平成24年10月11日に山形市(山形国際ホテル)において開催されました。 また、前日に開催された獣医師大会は滞りなく終了し、特別講演と教育講演は一般市民にも開放されました。 講師の経験に基づいたお話しは、笑いと感動で会場を沸かせ時間の経つのが短く感じられました。 さらに夜の懇親会は、3人の舞妓さんを交えて一緒に写真を撮るなど大いに盛り上がりました。 担当県である山形県さんは、東日本大震災の影響で2年連続の担当となり大変御苦労されたものと思います。 誌上を借りてお礼を申し上げます。 さて、本題に戻り学会開会に先立って学会実行委員会が開催され、進行上の注意や審査要領等について説明が ありました。その後、各学会に分かれ、諏佐地区学会長と丸山全国副会長の挨拶、奨励賞授与式の後発表会が開 催されました。今年度の発表演題数は22題あり、発表内容は食品衛生や食肉衛生検査関連の内容に加えて、動物 愛護関連の発表が8題と大幅に増えました。そのうち青森県からは4題で、各県別の発表演題数は、次のとおり でした。 青森県 4題 岩手県 3題 宮城県 4題 福島県 2題 山形県 3題 秋田県 2題 仙台市 2題 盛岡市 1題 秋田市 1題 発表に対する会場からの質問も多くあり、中でも本県の木村氏発表に対する質問が多く制限時間を大幅に超え ました。他県では珍しい馬を対象とした調査研究が会場の興味を惹いたものと思います。 発表終了後、幹事による審査会が開催され、いずれの演題も優秀で甲乙付けがたいものばかりでしたが、次の とおり決定されました。 1 東北地区学会長賞 ⑴「Multilocus variable-number tandem-repeats analysis(MLVA)による腸管出血性大腸菌O26遺伝子型別 法とその応用」 高橋雅輝 他(岩手県環保センター) ⑵「牛の心内膜炎から分離されたStreptococcus suis Type33」 佐藤友美 他(山形県内陸食肉衛生検査所) 2 東北獣医師会連合会長賞 ⑴「散発性に認められた豚の両後肢の筋変性」 依藤大輔 他(宮城県食肉衛生検査所) 3 東北地区獣医学会奨励賞 ⑴「青森県A食肉センターに搬入された馬の内臓に見られた寄生虫と内臓病変について」 木村政明 他(青森県田舎館食肉衛生検査所) ⑵「市に寄せられた猫に関する苦情の傾向分析と追跡調査」 佐藤美樹子 他(盛岡市保健所) 今回、賞から漏れましたが、宮城県から東日本大震災被災動物の救護活動状況等について4題発表され、それ ぞれ感銘を受けました。発表の中で再検討が必要な対策や取組上の問題点等が報告されており、これらの経緯等 を統括的な報告書としてまとめ上げれば、今後に大変有意義な資料となるものと思われました。 最後に、日常業務が多忙な中、御協力いただいた皆様に感謝するとともに、今後ますます活発な学会活動とな るよう積極的な発表や参加をお願いいたします。 ― 33 ― 平成24年度 日本獣医公衆衛生学会(東北地区)プログラム 座長:新井山 潤一郎 (9:20 ~9:30) 1.地鶏にみられたマレック病の一症例 ○布留川せい子、長谷川 剛 (福島県食肉衛検) (9:30 ~9:40) 2.比内地鶏における胸骨滑液包炎の発生要因について ○須田 朋洋、宮野 佳子、井上 克也、堀内 和之 (秋田県食肉衛検) (9:40 ~9:50) 3.散発的に認められた豚の両後肢の筋変性 ○依藤 大輔1)、平塚 雅之2)、佐藤 俊郎3) (1)宮城県食肉衛検、2)宮城県食と暮らしの安全推進課、3)宮城県保健環境センター) 座長:大 谷 勝 実 (9:50 ~ 10:00) 4.全身性に腫瘤を認めた馬の症例について ○平戸 祐司1)、村田 伸1)、仲佐 友身2)、東海林 彰3)、小山田博也1)、木村 将人1) (1)青森県十和田食肉衛検、2)青森県八戸家保、3)青森県環保センター) (10:00 ~ 10:10) 5.青森県A食肉センターに搬入された馬の内臓に見られた寄生虫と内臓病変について ○木村 政明、桜庭 秀人、中沢 和佳、原 透、佐々木正人、山口 了三、佐々木 肇 (青森県田舎館食肉衛検) (10:10 ~ 10:20) 6.豚腎臓および肝臓のテトラサイクリン系抗生物質残留検査法の検討 ○小原 暁子、小川 裕子、佐野 功一、末次 宏一 (秋田市食肉衛検) (10:20 ~ 10:30) 7.ポリマー系逆相カートリッジを用いた食肉中抗生物質の簡易分別法 ○佐藤 直人1)、梶田 弘子2) (1)岩手県環保研センター、2)岩手県食肉衛検) ( 10分間休憩 ) 座長:齊 藤 志保子 (10:40 ~ 10:50) 8.牛肉臓肉から検出された腸管出血性大腸菌の分子疫学的解析 ○齊藤 伸明1)、梶田 弘子1)、久松 暢子1)、高橋 秀彰1)、中村千佳子1)、稲森 久展1)、岩渕 香織2) (1)岩手県食肉衛検、2)岩手県環保研センター) ― 34 ― (10:50 ~ 11:00) 9.Multilocus variable-number tandem-repeats analysis(MLVA)による腸管出血性大腸菌026遺伝子型別法と その応用 ○髙橋 雅輝、岩渕 香織、佐藤 直人、森田 晴美、齋藤 幸一 (岩手県環保研センター) (11:00 ~ 11:10) 10.牛の心内膜炎から分離されたStreptococcus suis type 33 ○佐藤 友美1)、須藤亜寿佳2)、大貫 典子1)、大倉 正稔3)、高松 大輔3) (1)山形県内陸食肉衛検、2)山形県庄内食肉衛検、3)動衛研) 座長:齋 藤 幸 一 (11:10 ~ 11:20) 11:線毛関連遺伝子プロファイリングによるStreptococcus suisの強毒株調査 ○遠藤 貴之1)、的場 洋平2)、佐藤 靖子1)、宇都 若菜3) (1)山形県庄内食肉衛検、2)山形県内陸食肉衛検、3)山形県置賜家保) (11:20 ~ 11:30) 12.仙台市ミートプラントにおける豚丹毒菌の遺伝子型別と薬剤感受性 ○遠藤 徹、新木 茂、佐藤 通子、大森 明 (仙台市食肉衛検) (11:30 ~ 11:40) 13.牛白血病ウイルス(BLV)の感染状況および遺伝子型別調査 ○佐藤 郷子1)、仲佐 友身2)、東海林 彰3)、村田 伸1)、小山田博也1)、木村 将人1) (1)青森県十和田食肉衛検、2)青森県八戸家保、3)青森県環保センター) 昼食(12:00 ~ 13:00) ランチョンセミナー 12:00 ~ 12:40 司 会 山川 裕右(山形県内陸食肉衛生検査所) 演 題 「プロバイオティクスの有用性」 講 師 ミヤリサン製薬株式会社 学術部 獣医師 関 千佳氏 座長:谷 津 壽 郎 (13:00 ~ 13:10) 14.山形県における犬のBabesia gibsoni抗体保有状況 ○瀬戸 順次、安孫子千恵子 (山形県衛研) (13:10 ~ 13:20) 15.消費者を対象とした食肉の安全に関する知識の普及啓発事業 ○高橋 完奈、尾形 正文、長谷川 剛 (福島県食肉衛検) (13:20 ~ 13:30) 16.ATPふき取り検査を用いた傷病鳥類診察時の手指汚染 ○進藤 順治 (北里大) ― 35 ― 座長:千 葉 茂 (13:30 ~ 13:40) 17.犬の学習(条件付け・順化) ○菅沼 久高 (秋田県動物管理センター) (13:40 ~ 13:50) 18.市に寄せられた猫に関する苦情の傾向分析と追跡調査 ○佐藤美樹子、岩崎ささ子、松舘 恵子 (盛岡市保) (13:50 ~ 14:00) 19.東日本大震災被災動物の保護および返還について ○岡野 純1)、野地 和髙2)、遠藤 誠3)、佐藤 明彦3) (1)宮城県食肉衛検、2)宮城県動物愛護センター、3)宮城県塩釜保岩沼支所) 座長:若 林 伸 一 (14:00 ~ 14:10) 20.宮城県被災動物保護センターの概要 ○中川 正裕1)、小島 佳岳1)、小野寺秀之1)、渡辺 清博1)、高橋 祥子2)、畠山 洋之3)、的場 裕明4)、 大江 義之5)、鈴木 寿郎6) (1)(社)宮城県獣医師会中央支部、2)同栗原支部、3)同仙北支部、4)同仙南支部、 5) (社)宮城県獣医師会、6)宮城県動物愛護センター) (14:10 ~ 14:20) 21.東日本大震災に対応した石巻地区動物救護センターの概略 ○谷津 壽郎1)、早坂 敬2)、首藤 正2)、阿部 俊範2)、近藤 哲也2)、佐藤 秀麿2)、渡邉 文2)、 吉田 宏一2)、羽根田 亮2)、畠山 秀明2)、遠藤 晃2)、遠藤 眞幸3)、安住 明彦3)、大川 哲司3)、 青柳 恒夫3)、末永 朗1)、大江 義之1) (1)(社)宮城県獣医師会、2)同石巻支部、3)同大崎支部) (14:20 ~ 14:30) 22.被災地における剥製パンダ活用ふれあい活動と野生動物保護活動 ○菅原 康雄 (菅原動物病院・仙台市) 〔青森県、発表者の抄録〕 演題番号:4 演題名:全身性に腫瘤を認めた馬の症例について 発表者氏名:○平戸 祐司1)、村田 伸1)、仲佐 友身2)、東海林 彰3)、小山田博也1)、木村 将人1) 発表者所属:1)青森県十和田食肉衛検 2)青森県八戸家保 3)青森県環保センター 1.はじめに:悪性黒色腫はメラニン色素を産生するメラノサイト由来の腫瘍である。犬で最も高頻度に発生し、 馬、牛及び豚にも比較的よく見られる腫瘍で、馬では芦毛の老齢馬の会陰部、生殖器部、四肢遠位の皮膚に好発 ― 36 ― する。馬の顆粒細胞腫は肺原発性腫瘍であり、片側の肺気管支に沿って乳白色腫瘤を形成するが、他の臓器には 転移を認めない特徴を持つ。今回、と畜検査で悪性黒色腫と顆粒細胞腫を併発した馬の症例を認めたので報告す る。 2.材料および方法:当所管内と畜場に一般畜として搬入された馬(平成22年12月24日搬入、軽種、雌、144 ヶ月齢、 病歴及び投薬歴なし)の黒色腫瘤(頚部、腎門部、骨盤腔)及び左肺乳白色腫瘤を切り出し部位として10%中性 緩衝ホルマリンで固定後、パラフィン包埋、薄切し、HE染色を施し鏡検した。一部の切片についてはフォンタ ナ・マッソン染色、過マンガン酸カリウム・シュウ酸漂白法、PAS、LFB(Luxol Fast Blu e)染色を実施した。また、一次抗体として抗S100・ウサギポリクローナル抗体(DAKO)を用いて免役組 織化学染色を行った。 3.結果および考察:解体後検査で頚部、腎門部及び骨盤腔に大豆大~鶏卵大の黒色腫瘤を多数認め、左肺後葉 には周囲との境界明瞭なピンポン玉大の乳白色腫瘤を1個認めた。黒色腫瘤を形成する腫瘍細胞は円形~紡錘形 と変化に富み、び慢性や渦状等に配列していた。フォンタナ・マッソン染色で細胞質内顆粒は黒色を呈し、漂白 法で漂白されたことから悪性黒色腫と診断した。一方、左肺後葉の乳白色腫瘤では細胞質内に好酸性顆粒を有す る円形~多形の腫瘍細胞が充実性に増殖しており、異型性は低く核分裂像は認めなかった。細胞質内顆粒はPA S及びLFB染色で陽性を示し、免役組織化学染色でも抗S100・ウサギポリクローナル抗体に陽性を示したこ とから顆粒細胞腫と診断した。行政処分は全身性の腫瘍で全部廃棄措置とした。本症例は悪性黒色腫と顆粒細胞 腫を併発した非常に稀な症例である。悪性黒色腫の原発部位は不明であるが、主要臓器に転移を認めず本来リン パ節がある箇所に腫瘍を認めたことから、主にリンパ行性に転移が進んだと推定された。 演題番号:5 演題名:青森県A食肉センターに搬入された馬の内臓に見られた寄生虫と内臓病変について 発表者氏名:○木村 政明、桜庭 秀人、中沢 和佳、原 透、佐々木正人、山口 了三、佐々木 肇 発表者所属:田舎館食肉衛生検査所 1.はじめに:当検査所管轄のA食肉センターでは、馬のと畜検査時に消化管等内臓に寄生する寄生虫がよく見 られる。また、当該センターは馬の処理頭数が県全体の約6割を占めると畜場であるため、今回馬の内臓に見ら れる寄生虫調査を実施し、その寄生状況及び内臓病変との関連性等について考察したところ若干の知見を得たの で紹介する。 2.材料及び方法:平成24年1月16日~同6月15日の期間中にA食肉センターに搬入及びと殺解体された馬273 頭を対象とし、内臓における寄生虫分布状況を調査した。このうち採材した寄生虫については形態学的鑑別を実 施した。また、寄生虫と内臓病変との関連性についても調査した。 3.成績: (1)1種類以上の寄生虫を保有していた馬は全体で134頭(49.1%)で、品種別ではポニー、軽種、道産子、 重種の順に寄生虫保有率が高かった。(2)馬内臓で見られた寄生虫は296検体で、内訳は大円虫174検体(58.8%)、 葉状条虫61検体(20.6%)、ウマバエ幼虫24検体(8.1%)、馬回虫19検体(6.4%)、大条虫2検体(0.7%)、乳頭 条虫2検体(0.7%)、肝蛭1検体(0.3%)等であった。このうち大円虫(成虫)については、形態学的鑑別の結果、 普通円虫63検体(36.2%)、無歯円虫50検体(28.7%)、馬円虫1検体(0.6%)であった。(3)馬の品種と保有 寄生虫を比較したところ、ポニーで普通円虫、無歯円虫、ウマバエ幼虫、葉状条虫、軽種で葉状条虫、普通円虫、 無歯円虫、重種で馬回虫、ウマバエ幼虫の順に多かった。(4)寄生虫と内臓病変との関連性を調べた結果、葉 ― 37 ― 状条虫では盲腸に寄生する個体数が多いほど盲腸の粘膜病変(出血、?爛、潰瘍等)が重症化する傾向が見られた。 また普通及び無歯円虫では盲腸及び結腸の粘膜に発赤、出血等のほか結節形成も見られた。 4.考察:今回の調査の結果、特にポニーでほとんどの馬が寄生虫を保有し、その種類も多様であることが分かっ た。また、品種により保有する寄生虫の種類に相違があることも分かった。この寄生虫の中には主に消化管の粘 膜面に病変を形成するもの(葉状条虫、ウマバエ幼虫、大円虫)がいるので、馬のと畜検査においては消化管の 粘膜病変にも注意が必要である。また、軽種の肝臓で肝蛭が1検体見られたことから、適宜胆菅を切開する等の 注意も必要である。 演題番号:13 演題名:牛白血病ウイルス(BLV)の感染状況および遺伝子型別調査 発表者氏名:○佐藤 郷子1)、仲佐 友身2)、東海林 彰3)、村田 伸1)、小山田博也1)、木村 将人1) 発表者所属:1)青森県十和田食肉衛検、2)青森県八戸家保、3)青森県環保センター 1.はじめに:と畜場搬入牛を対象に、PCRによりBLV感染状況を調査するとともに、PCR陽性牛及び当 所で過去に地方病性牛白血病(EBL)と診断された牛の遺伝子型を調査し、若干の知見を得たので報告する。 2.材料および方法:(1)BLV感染状況調査;平成22年5~6月搬入牛416頭について血液採取し、DNA抽 出を行いNested PCRによりBLV遺伝子を検出した。(2)BLV遺伝子型別調査;(1)でPCR陽性を未 発症牛検体とした。さらに平成21年4月~ 23年6月に搬入、EBLと診断されPCR陽性であった牛血液及び 腫瘍組織60頭分を発症牛検体とした。これらについてRFLP解析を行い遺伝子型1型から6型に分類した。 3.成績: (1)BLV感染状況調査;416頭中、BLV感染牛は52頭(12.5%)で18 ヶ月齢から感染が確認された。 品種別ではホルスタイン種(H)9.0%、黒毛和種(B)27.1%、交雑種(F1)8.6%、その他19.0%であった。(2) BLV遺伝子型別調査;112検体中42検体(37.5%)が1型、1検体(0.9%)が2型、67検体(59.8%)が3型、 2検体(1.8%)が5型であった。未発症牛検体は1型25/52(48.1%)、3型26/52(50.0%)、5型1/52(1.92%) であったが、発症牛検体では1型17/60(28.3%)、2型1/60(1.67%)、3型41/60(68.3%)、5型1/60(1.67%) であった。品種別では未発症牛検体はH46.2%、B36.5%、F17.7%、その他9.6%、発症牛検体はH28.3%、B 65.0%、F15.0%、その他1.7%であった。 4.考察:感染状況調査の結果、若齢からの感染拡大がうかがわれた。遺伝子型別調査の結果、新たに県内で2 型と5型が確認された。また、112頭85農場のうち、同一農家で異なる遺伝子型が確認されたのは3農場であった。 このことから、由来の異なるBLV遺伝子が浸潤しており、県内において様々な遺伝子によるBLV感染が年々 多岐にわたっている可能性が示唆された。今回の調査において、遺伝子型3型では6割程が発症しており遺伝子 型1型に比べて発症割合が高い傾向が見られた。遺伝子型3型に感染していたものは黒毛和種が多く、EBLは ホルスタイン種に比べ黒毛和種で発症しやすいことが推察される。 演題番号:16 演題名:ATPふき取り検査を用いた傷病鳥類診察時の手指汚染 発表者氏名:進藤 順治 発表者所属:北里大 1.はじめに:傷病野生動物救護は、自然保護思想を基に行政、獣医師、市民ボランティアが中心となり行われ、 ― 38 ― 特に、獣医師が行う救護活動は公益的意義の認識とともに、人と動物の共通感染症における防疫対策の側面から の貢献が重要視されている。しかし、近年、人と野生動物の共通感染症の脅威が拡大し、傷病救護に携わる関係 者の感染症への危険性はより高いものとなる。そこで今回は、傷病野生動物の中で救護の割合が高い鳥類を対象 に、診察時の感染の危険性を把握する目的で、手指の汚染状況をATPふき取り検査を用い調査した。 2.材料および方法:2010年2月から2012年4月まで青森県鳥獣保護センターに搬入された救護鳥類17種46羽に 対し、触診による診察と採血を行い、その前後の手指についてATPふき取り検査を行った。ATPふき取り検 査にはルミテスターPD20(キッコーマン)とふき取り専用のルシパックPenを用いた。 3.成績:鳥獣保護センター搬入された46羽の診察による手指のATPふき取り検査を実施したところ、診察前 ATP値は160.7±100.6RLU、診察後は20672.5±20204.7RLUと診察による手指の汚染が見られた。またAT P値は小型の鳥類で低く、中型種やオオハクチョウなどの大型種では著しく高くなっていた。大きさ以外では水 鳥の値が高く、森林性のフクロウは低い傾向が見られた。傷病鳥類の状態によっても診療前後の手指の値は異な り、出血を伴った外傷や起立困難な状態で救護された鳥類のATP値は、外傷がみられない鳥類より優位に高い 値であった。 4.考察:今回、傷病鳥類診察時の手指の汚染状況についてATPふき取り検査を行った結果、手指の汚染は、 すべての傷病鳥類の診察時に増加しており、特に、出血を伴う外傷や起立困難の鳥類では、汚染度が高くなって いた。手指の清浄度の管理基準は1500RLUを合格、3000RLU以上を不合格としており、傷病鳥類を扱った手 指は衛生的に好ましい状態でないことが明らかになった。また、手指の汚染は、大型鳥類や水鳥などから多く受 ける傾向が見られた。傷病鳥の病態、大きさ、生態的特徴などが診察時の手指汚染に影響しており、種類によっ て取扱に注意をする必要が示された。 ― 39 ― ◎会員の動向 2.食鳥事業関係 1.会員数 ⑴特定事業運営委員会 平成24年 4月1日~9月末日 期日:平成24年10月2日(火) 平成24年 当 初 入 会 退 会 9月30日 453 12 7 458 場所:県獣医師会館 内容:「公益社団法人認定申請について」他 ⑵食鳥検査員研修会並びに食鳥検査センター創 立10周年記念祝賀会 2.訃報 期日:平成24年7月7日(土) 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。 場所:グランドサンピア八戸 ・北 澤 則 雄 氏 享年89歳 内容:「県内の養鶏事情と衛生実態につい 平成24年9月9日逝去されました。 て」 葬儀は、平成24年9月11日北澤錬平氏によ 八戸家畜保健衛生所課長 り執り行われました。 佐藤 公伸 「食鳥検査センター設立時の思い出」 ◎事務日誌 (社)青森県獣医師会 1.事務関係 ⑴理事会 「功労者への表彰」 期日:平成24年9月24日(月) ⑶食鳥検査事業に係わる県保健衛生課等との打 場所:県獣医師会館 前事務局長 相馬 寛生 合せ会議 内容:「公益社団法人移行認定申請につい 期日:平成24年7月3日(火) て」他 場所:十和田食肉衛生検査所 ⑵公益法人検討委員会 内容:「食鳥検査の進め方について」他 ①期日:平成24年7月24日(火) 場所:県獣医師会館 ◎事業関係 内容:「公益社団法人移行認定申請書につ 1.狂犬病予防注射関係 いて」他 ⑴狂犬病予防対策に係る担当者会議 ②期日:平成24年9月28日(金) 期日:平成24年7月2日(月) 場所:県獣医師会館 場所:県動物愛護センター 内容:「公益社団法人移行認定申請に係わ 内容:「狂犬病予防注射事業推進について」 る諸規程について」他 他 ⑶支部獣医師会事務担当者会議 ⑵狂犬病予防注射事業に係る支部担当者会議 期日:平成24年8月28日(火) 期日:平成24年7月2日(月) 場所:県獣医師会館 場所:県動物愛護センター 内容:「県獣医師会から支部獣医師会への事 内容:「狂犬病予防注射事業実施状況につい 務推進費等の対応について」他 て」他 ⑶慰霊祭 期日:平成24年7月2日(月) ― 40 ― 場所:県動物愛護センター ⑹青森県食の安全・安心対策本部会議 期日:平成24年9月6日(木) 場所:青森市「ウェディングプラザ アラス 2.部会等 ⑴会報部会開催状況 カ」 期日:平成24年10月5日(金) ⑺岩手大学農学部 東京農工大学農学部 場所:県獣医師会館 共同獣医学科発足記念シンポジウム 内容:No152号の編集 期日:平成24年9月14日(金) 場所:盛岡市「ホテルメトロポリタン盛岡」 3.日本獣医師会関係 内容:「今後の獣医学教育に期待する」 ⑴第69回通常総会 期日:平成24年6月28日(木) ⑻平成24年度動物愛護ポスター表彰式 場所:東京都「明治記念館」 期日:平成24年9月22日(土) 内容:「平成23年度事業報告の件」他 場所:県動物愛護センター ⑵全国獣医師会事務局会議 ⑼山内正孝氏「全畜連会長」就任祝賀会 期日:平成24年7月13日(金) 期日:平成24年9月25日(火) 場所:東京都「ホテルフロラシオン青山」 場所:八戸市「きざん八戸」 内容:「日本獣医師会事業推進について」他 ⑽動物衛生研究所東北支所閉所式典 日本獣医師会会長 山根 義久他 期日:平成24年10月5日(金) 場所:七戸町「柏葉館」 4.その他 ⑴(社)青森県畜産協会総会 期日:平成24年6月19日(火) 場所:ラ・プラス青い森 ⑵青森県装削蹄師会総会 期日:平成24年7月27日(金) 場所:十和田市「サンロイヤル十和田」 ⑶第24回東北地区牛削蹄競技大会・セミナー 期日:平成24年8月20日(月)~21日(火) 場所:むつ市 ⑷第9回青森県乳用牛・肉用牛・農用馬共進会 期日:平成24年8月25日(土) 場所:青森県家畜市場 ⑸平成24年度北日本養鶏研究大会並びに鶏病研 究会 北海道・東北地区技術研修会 期日:平成24年8月30日(木)~31日(金) 場所:青森市「ウェディングプラザ アラス カ」 ― 41 ― 〔支部だより〕 〔青森支部獣医師会〕 〔西北支部獣医師会〕 ○動物愛護活動(青森市牧場まつり獣医 ○犬猫慰霊祭 師会コーナー) 期 日:平成24年9月9日(日) 期 日:平成24年7月29日(日) 場 所:つがる市木造斎場 場 所:青森市八甲田憩いの牧場 〔下北支部獣医師会〕 内 容:乳搾り体験・ペットの健康相談・クイズ ○研修会 他 期 日:平成24年8月29日(水) 〔弘前支部獣医師会〕 場 所:むつ市むつグランドホテル ○小動物講習会 内 容:「アミノ酸利用で虚弱体質子牛の生産低 期日:平成24年8月26日(日) 減を!」 場所:弘前プリンスホテル あすか製薬㈱アニマルヘルス事業本部 内容:皮膚科診療におけるポイント 東日本営業部マネージャー (皮膚科診断アップデート)- 「留置型黄体ホルモン剤使用による 「皮膚科診療マニュアル」 西 村 省 治 DVMsどうぶつ医療センター横浜 二次診療センター皮膚科 あすか製薬㈱アニマルヘルス事業本部 柴 田 久美子 〔三八支部獣医師会〕 空胎期間短縮の方策とその受胎成績」 白 戸 洋 昭 ○犬猫供養祭 ○動物慰霊祭 期 日:平成24年9月21日(金) 期 日:平成24年9月14日(金) 場 所:むつ市円道寺 場 所:八戸市大慈寺 青森支部獣医師会 できました。 青森市農林水産部 あおもり産品販売促進課の発 動物愛護活動「八甲田牧場まつり」 表によると、7月28日(土) ・29日(日)の入場者数は、 3,740人(前年度 3,446人)という報告を受けてい まき ば 去る7月29日 青森市合子沢「八甲田憩の牧場」 ます。 において、「2012 八甲田牧場まつり」が行われた。 前年度と同じように動物愛護クイズの問題用紙を 毎年晴天に恵まれ、暑い日差しの中青森家畜保健衛 用意しましたところ(300枚)、用紙が足りなくなる 生所・青森県動物愛護センター・開業獣医師・県獣 という、びっくりな事態に“八甲田牧場まつり”の 事務局・一般会員・動物薬品会社総勢31名のご協力 盛況ぶりを見た感じがいたします。 の元無事今年も動物愛護事業の1つを終えることが コーナーの紹介をさせていただければ、①動物無 ― 42 ― 料相談コーナー(開業獣医師4名の協力)②青森県 ということで、動物愛護センターにおいて、場所を 動物愛護センター小動物ふれあいコーナー(所長は 提供させていただき、掲示させていただくこととな じめ職員、ボランティア含め5名の協力)③牛の乳 り、チラシを配り告知させていただいたが、見に来 搾り・仔牛の心音を聞かせるコーナー(青森家畜保 たり、返却希望の方は、残念ながらお見えにならな 健衛生所長をはじめ5名の協力)④動物愛護クイズ かったようで、来年の課題となりました。 (一般会員2名の協力)⑤青森県動物愛護センター また、9月22日(土) ・23日(日)に行われる「動 キャラクター「ふれんど君」ぬりえコーナー(県獣 物フェスティバル」においても、掲示していただけ 事務局はじめ女性一般会員4名の協力) ることになりました。 以上 ぬりえコーナーについては、夏休みに入っている 牧場まつり 始まる前準備中 鰺ヶ沢 アビタジャージーファーム(牛の乳搾り) 青森県動物愛護センターから小動物ふれあいコーナー 動物をさわった手は、キチンと手洗いをさせている。 ― 43 ― 〔編 集 後 記〕 オリンピックも終わった。期待どうりの成績であった人、残念ながら思い通りにならなかった人、悲喜こもご もであるが、あの大観衆の中で能力を発揮できることは、精神力は勿論のこと、鍛えられた体力、そして運も味 方にしなければ出来ることではない。本当に、あの場でメダルを獲得するということはたいへんなことである。 しかし見る人にとっては四年に一度、人間のすばらしさを再認識できることとして最高のイベントである。それ にしてもTV観戦で寝不足の人達も多かったことだろう。 そして感じたことは中国や韓国の勝負に拘る執念はみごとなものであったということである。しかし、あまり にも国の威信をかけた戦い、勝ちに拘る姿勢はすばらしさを通り越して恐ろしいと思った。 オリンピックの熱気を引きずったかのように、いつになったら秋がやってくるのか、と思うくらいに気温の高 い日が続いた。雨が少ないため、畑の作物は伸び悩み、せっかくの自家菜園も種を蒔いても芽がでず、水撒きに 一苦労であった。家畜たちも暑さのために事故が多いという報道も見られた。 世界の主要穀倉地帯では旱魃のため食糧事情が心配されている。そうかと思えば台風や大雨による災害で大き な被害が出ているところもある。地球はどうなっているのだろう。 全国和牛能力共進会が長崎県で開催(10月25日~10月29日)される。本県からも選ばれた牛が出場されること になるが、第一花国の再来というようなムードをつくることが出来るかどうか、期待されるところである。これ までの実績が認められて出場枠も多くなったようではあるが、代表牛を通して、本県の飼養技術が評価されるか どうか、見守りたいものである。 最近の畜産雑誌にこんな記事が載っていた。 デンマークで脂肪税なるものを制定したということである。全重量の2.3%以上の飽和脂肪酸を含む食品を対 象に課税するということである。バター、牛乳、チーズ、及び肉類などが対象となるようだが、健康に悪影響を 及ぼす食品の消費を減らす目的であるということである。分からないでもないが、そうなると和牛の特色である サシなどはどうなるのか、美味しいものは食べるなということなのか、売り出そうとしている日本の肉牛産業に も関わってくることとして、ちょっと気になったものである。だとしたらメタボの太り過ぎの人間に対しての脂 肪税などは考えなくてもいいのか、ひねくってみたくなるのである。 ペット税なども問題になっているところもあり、何でもかんでも税金を取っていいもんじゃないと思うのだが ……。 (苦 道) ― 44 ― 原 稿 募 集 平成25年1月1日発行予定の会報第153号の原稿を募集いたします。 会員各位の投稿のほか、各支部獣医師会だよりの原稿もお願いいたします。 原稿は、投稿規程を参照して作成し、次の方法で青森県獣医師会にお送りください。 締切り日は11月30日です。期日までにお願いいたします。 〔原稿の提出方法〕 原稿は原則としてワードプロセッサーで作成し、ファイルは電子メールに添付して本会事 務局に送信してください。なお、原稿ファイルがMS-word以外で作成された場合は、使用し たソフトをお知らせください。 手書きの原稿や、大容量(10MB以上)の原稿ファイルはCD-R等に記録し、本会事務局に 郵送してください。 本 会 事 務 局 住 所:〒030-0813 青森市松原二丁目8の2 電子メールアドレス:ao-vet@smile.ocn.ne.jp ― 45 ― ― 46 ― ― 47 ― 青森県十和田市東4番町3-25 ― 48 ― 平成24年11月1日 発行所 青森市松原二丁目8の2 社団法人 青森県獣医師会 TEL 017(722)5989 FAX 017(722)6010 Email ao-vet@smile. ocn. ne. jp 印刷所 青森市幸畑松元62-3 青森コロニー印刷 TEL 017(738)2021 FAX 017(738)6753
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