IEA HP 実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター 国内版第 11 号(平成 18 年 10 月発行) NEWS 1.ナショナルチームミーテイングの報告 IEA ヒートポンプ実施協定の参加各国の実務担当代表(ナショナルチームリーダー)とヒ ートポンプセンター事務局による作業部会としてのナショナルチームミーテイングが、9 月 にスウエーデンのイエテボリで開催されました。今回は、各国のヒートポンプ市場と研究開 発の状況についてのプレゼンテーションをもとにして、新アネックスなど今後の研究活動に ついてデイスカッションし、多くの候補テーマが抽出され今後さらに詳細の検討が進められ ることになりました。 ヒートポンプの市場は、長らく低迷していた欧州各国でも 2000 年前後からようやく本格 的な普及拡大が広がりをみせており、北米、アジアを含めて世界的なヒートポンプの広がり が進展しています。ヒートポンプのタイプも外気熱源、換気熱源、地中熱源といった熱源の 多様化、利用サイドも暖房専用、給湯専用、暖房・給湯兼用、冷・暖房兼用、温(冷)水シ ステム、空気システムとが使い分けられるなどかなり複雑な様相を呈しています。 こうした中で、外気熱、地中熱を利用する“ヒートポンプは再生可能エネルギー”と位置 づける議論が取り上げられ、今後、詳細の検討が進められることになりました(この議論の 今後の進展については別途報告いたします)。各国でヒートポンプを再認識する機運が高ま ってきたことが背景にあるように思われます。 写真 1 ナショナルチームミーテイングの様子 1 NEW PUBLICATIONS 1.IEA HPC NEWSLETTER 2006/3(September)号の発行 本号では、“The Latest Developments in the Use of CO2 as Refrigerant”(CO2を冷媒として使用する最新の技術開 発)特集として、下記のように日本からの3件を含む合計9件 の特集記事と、1件の関連記事が掲載されています。 (IEA HPC NEWSLETTER の全文ファイルをこのニューズレター と一緒に添付いたします) (トピック記事) (1) 日本における CO2 ヒートポンプ給湯機(エコキュート)の技術と市場の進展(橋本克己/日 本) 世界に先駆けて日本で開発された CO2 冷媒による給湯ヒートポンプ(エコキュート)の開発 の経緯と市場の進展、さらに最近の技術開発の動向についての全般的な状況を紹介。 (2) CO2 冷媒を使用した飲料自動販売機の開発(土屋敏章他/日本) CO2 冷媒を採用した飲料用自動販売機の開発にあたって高効率化のために実施した各種技術 的な挑戦の内容について紹介。 (3) CO2 冷媒を採用した給湯・床暖房兼用ヒートポンプの性能試験(飛原英治他/日本) Annex 28 の中で実施した給湯と床暖房兼用の CO2 冷媒多機能ヒートポンプについての期間性 能の試験方法とその試験結果について報告。 (4) 非住宅建築の冷暖房用 CO2 ブライン/水ヒートポンプシステム(J.Stene/ノルウエー) CO2 冷媒を使用した非住宅建築(業務)用水(ブライン)熱源ヒートポンプの性能について、 コンピューターシミュレーションを実施し、従来の R134a を使用したヒートポンプと比べて、 ほとんどの運転条件下で高い性能(SPF)が得られたことを報告。 (5) CO2 を作動媒体とした住宅用可逆ヒートポンプの開発(Jakobsen 他/ノルウエー) CO2 冷媒を使用したスプリットヒートポンプの開発試作し、従来の R410A を使用したヒート ポンプと冷暖房期間性能を比較した結果について報告。 (6) ヒートポンプへのCO2 の適用-遷移臨界サイクルでの実際の経験(C.S.Poulsen/デンマー ク) F ガス規制に対応して、CO2 冷媒を使用した住宅用ヒートポンプ給湯機、業務用衣類乾燥ヒ ートポンプ、業務用冷暖房システム、大型(地域暖房)ヒートポンプなどの開発の状況につ いて報告。 (7) 病院用のCO2 およびアンモニア冷媒を使用した空気/水ヒートポンプ給湯機の性能測定 2 (P.Austett/スイス) 病院の給湯加熱用に CO2 とアンモニア冷媒を採用したヒートポンプ(60kW)を試作し実際 に使用した結果について報告。 (8) CO2 の冷媒として使用における最新の開発(T.Sienel/米国) 最近の CO2 冷媒を使用したヒートポンプ給湯機の開発の進展について、CO2 冷媒の歴史的な 背景を含めて世界(日・欧・米)の全貌についてレビューして紹介。 (9) 責任ある冷媒の使用(D.F.Lewis 他/米国) 米国における冷媒の使用に関する国や協会などの規制、基準、ガイドライン、などの状況 について紹介。 (非トピック記事) (10) Fガス規制が今発刊される(F.Nordell/スウエーデン) 欧州連合(EU)の F ガス規制が 2006 年 7 月に EU 公報に発刊され実効段階にはいった。冷 媒の大気への放出防止を規定したこの規制の内容について、運転管理者の責任など詳しく紹 介。 ON GOING ANNEXES 1.ANNEX 29「土壌(地中)熱源ヒートポンプ-市場と技術の障壁の克服」(Ground Source Heat Pumps / Overcoming Market and Technical Barriers) (OA:オーストリア、分科会主査:北 大、長野教授) 地中熱源ヒートポンプシステムの普及の阻害の要因となっている市場と技術の各種問題点 と解決策について検討を加えるものです。 当財団の「地下熱利用とヒートポンプシステム研究会」の中に「IEA ANNEX 29 分科会」を設 置して活動しています。Task-1 に関するカントリーレポートを取りまとめました。第2回専門 家会議及びワークショップは 2006 年の 5 月 11~12 日に、オーストリア(リンツ)にて開催さ れました。次回の専門家会議及びワークショップは 2007 年 1 月に日本(札幌)にて開催の予 定です。 2. ANNEX 30「建築物へのヒートポンプのレトロフィット」(Retrofit Heat Pumps for Buildings)(OA:ドイツ、日本は参加していません) 今年 4 月に正式にスタートしました。欧州の市場で注目されている既築住宅へのヒートポン プのレトロフィットを中心テーマとしたものです。 3. ANNEX 31「スーパーマーケットシステムにおけるエネルギー消費のモデリングと解析ツール」 (Advanced Modeling and Tools for Analysis of Energy Use in Supermarket Systems) (OA:スウェーデン、日本は参加していません) スーパーマーケット全体の冷凍・空調システムのシミュレーションによるエネルギー性能解 析ツールと最適運転制御方式の開発及びエネルギー効率指標の開発について検討するもので す。 4. ANNEX 32「ローエネルギー住宅の経済的な冷暖房システム」(Economical Heating and Cooling 3 Systems for Low Energy Houses)(OA:スイス、分科会主査:北大、長野教授) ローエネルギー住宅に適した、冷・暖房、給湯、換気、除湿などの可能な多機能・複合ヒー トポンプシステム形態の調査及びエネルギー消費やコストなどのシステム評価を実施して、ユ ーザーにとって最適なシステム構成の検討と設計手法(ガイドライン)の確立を行うものです。 第1回専門家会議(キックオフミーティグ)は 2006 年の 4 月 27~28 日に、スイス(ムーテ ンツ)にて開催されました。次回の専門家会議は 2006 年 11 月 15~17 日にオランダにて開催 の予定です。 5. ANNEX 33「ヒートポンプ用コンパクト熱交換器」( Compact Heat Exchangers in Heat Pumping Equipment)(正 OA:イギリス、副 OA:スウェーデン、分科会主査:九州大学、小山教授) ヒートポンプで使用される各種の熱交換器(蒸発器、凝縮器など)について、マイクロチャ ンネル熱交換器などの高性能化・コンパクト化の可能性(各種オプション)の検討を行うもの です。 2006 年の 7 月にイギリスで立ち上げのための準備会合が開催され、イギリスの Brunel 大学 が OA(幹事国)、スウエーデンの王立工科大学が副 OA に決まりました。執行委員会の承認手 続きを終了し、3 年間の活動として 2006 年 10 月にスタートしました。第 1 回の専門家会議・ ワークショップは 2007 年 5 月に開催の予定です。 NEW ANNEXES 1.提案・検討中のアネックステーマ 現在下記の 16 件のアネックステーマ(アイデア)が各国から提案され検討されています。参 加したいテーマなどのご意見をお待ちしています。詳細については事務局までお問い合わせ下さ い。その他、新しいテーマのご提案など事務局までご連絡下さい。 (1) Ejectors(エジェクター) (2) Easier and more efficient use of heat pumps in buildings/ AC systems in large commercial buildings (建築物におけるヒートポンプの簡単かつ効率的な使用/大規模商業ビルにおける 空調システム) (3) Standardization development, seasonal EE of heat pumps(ヒートポンプの期間エネルギ ー効率規格の開発) (4) Heat pumping technologies and the industrial sector(ヒートポンプ技術と産業分野) (5) Commissioning tools (コミッショニングツール) (6) The role for air conditioning in demand-side management (possibly in cooperation with DSM)(DSM のための空調の役割) (7) Environmental impact of refrigerants(冷媒の環境インパクト) (8) Gas-driven heat pumps(ガス駆動ヒートポンプ) (9) Heat pipes and heat pumps(ヒートパイプとヒートポンプ) (10) Process improvements in transcritical CO2 heat pumping systems(遷移臨界CO2 ヒート ポンプシステムのプロセス改善) (11) Seasonal performance(期間性能) 4 (12) Heat pumps and IT(ヒートポンプと IT) (13) Hot water domestic heat pumps (住宅用給湯ヒートポンプ) (14) Heat activated heat pumps(熱駆動ヒートポンプ) (15) Policy paper:“Refrigeration” (proposal)(政策提言:冷媒) (16) The role of heat pumping energy systems for a sustainable society /The competitive strength of heat pump in the building sector(持続型社会のためのヒートポンプエネ ルギーシステムの役割/建築分野におけるヒートポンプの競争力) IEA HPC NEWSLETTER 1. 原稿募集 2006 年中に発行予定の IEA HPC ニューズレターの記事(Article)およびニュース(News)(随 時)の寄稿を下記の通り募集していますので、投稿のお問い合わせは事務局までお願いします。 (1) March/2006: Thermally Powered Heat Pump Systems (熱駆動ヒートポンプシステム)(済) 〈トピックス〉:各種熱駆動ヒートポンプの技術開発と応用に関するもの。特に最近欧米で も関心の高まっているガスエンジンヒートポンプ、吸収ヒートポンプなど。 (2) June/2006: New Regulations and Directives – How Will They Affect Heat Pumping Technologies(新しい規制及び指令 ― ヒートポンプ技術に対してどのように影響す る?)(済) 〈トピックス〉:最近導入されている新しい規制及び指令と、これのヒートポンプ技術に対 する影響に関するもの。 (3) September/2006: The Latest Developments on the Use of CO2 as Refrigerant (CO2 の冷媒使用に関する最新の進展) (済) 〈トピックス〉:CO2 を冷媒としての使用した最新の各種技術開発の紹介、または全体の動 向に関するもの。 (4) December/2006: Retrofit Heat Pumps for Buildings(建物へのヒートポンプレトロフィ ット)(投稿募集中) 〈トピックス〉:既築の住宅の熱源設備をヒートポンプシステムにレトロフィットすること に関するもの。 5 SPECIAL REPORT:米国における地中(土壌)熱源ヒートポンプシステムの現 状と動向 米国における地中熱源ヒートポンプの状況については、市場の詳しい情報が比較的に得られに くい状況ですが、今回は、その歴史的な背景と現状について、IEA アネックス 29 の活動などを通 じて得られた最近の情報とあわせて整理してみました。 (概要) 米国においては、石油危機後の 1970 年代の後半から 1980 年代にかけて、地中熱源ヒートポン プシステム技術の開発が積極的に進められ、当初は地方の電力会社を中心にして小規模に導入が 進められたが、その後、全国の電力会社がデマンドサイドマネジメントの手段として注目し本格 的に普及に乗り出した経緯がある。 1990 年代に入って、エネルギー省(DOE)と環境省(EPA)がこの技術の地球温暖化対策としての 有望性に注目し、両者の協力で 1994 年に国家プログラム”National Earth Comfort Program” が立ち上げられ、国主導のもとで本格的な普及活動が推進された。計画では、2000 年までの 7 年間に地中熱源ヒートポンプの市場規模を当時の約 3 万台/年から 40 万台/年に拡大し、150 万ト ン/年の地球温暖化ガス排出削減を実現することを目標に、総額 1 億ドル(内 1/3 を国が、残り を民間-主に電力会社が負担)を投入する計画になっていた。 上記プログラムのもとで、1994 年に電力会社や関連企業が参画した地熱ヒートポンプコンソー シアム(GHPC: Geothermal Heat Pump Consortium)が設置され、ここで各種の普及啓蒙活動を 推進してきたが、結果的には目論んだ大幅な市場拡大は達成されていないものの、累積設置台数 で 75 万台(推定)とこの分野で世界をリードしている。 以下に、歴史的な背景、市場動向、技術開発動向、普及活動など全般的な状況について紹介す る。 なお、米国で地中(土壌)熱源 ヒートポンプ(Ground Source Heat Pump)は、地熱ヒートポン プ(Geothermal Heat Pump)、土 壌結合ヒートポンプ(Ground Coupled Heat Pump)などとも呼 ばれている。また、一般に地中熱 源ヒートポンプといった場合に は、地中熱交換方式の他に、図 1 のように、地下水、地表水(湖水、 河川水)を含んだシステムを対象 としている。 図1 各種地中(土壌)熱源ヒートポンプシステム 6 (歴史的背景) 米国における地中熱源ヒートポンプシステム技術の最大の特徴は、1950 年代の終わり頃から商 業的に生産されてきた小容量の水熱源(水―空気)ヒートポンプ技術をベースにして発展してき たことである。 このシステムは、1950 年代に南フロリダを中心に海水(または井水)熱源のヒートポンプとし て導入された。その後、ヒートポンプを各ゾーンに設置して共通の水ループに連結した水ループ ヒートポンプシステム(WLHP: Water Loop HP System)が出現した。これは、水の閉ループシス テムに放熱用の密閉式冷却塔と加熱用のボイラーを結合してヒートポンプの入り口水温度を設 計温度内に維持するように制御されたシステムとして全米に広まり、業務・商業ビル、学校、集 合住宅などに採用されてきた。 石油危機後の 1970 年代の後半から 1980 年代にかけて、上記の水熱源ヒートポンプシステムと 地中熱交換器ループとを結合した地中熱源ヒートポンプシステムが開発された。 最初のうちは、この技術は極めて小規模の地方の起業家によってローカルに実施された。その 後、1980 年代半ば以降のピーク電力問題を背景にこの技術が注目され、とくに地方の電力共同組 合(REC: Rural Electric Cooperative)がデマンドサイドマネッジメント(DSM)の手段として 普及に力をいれるようになった。さらに、本格的に一般の電力会社の“地熱ヒートポンプ DSM プ ログラム”が始まるのは 1990 年前後以降になる。 また、1990 年代に入ってエネルギー省(DOE)と環境省(EPA)がこの技術の地球温暖化対策とし ての有望性に注目し、両者の協力で 1994 年に国家プログラム”ナショナルアースコンフォート プログラム(National Earth Comfort Program)”が立ち上げられ、国、電力会社、関連企業の 協力による“地熱ヒートポンプコンソーシアム(Geothermal Heat Pump Comfort Program”のも とで本格的な普及活動が進められてきた。 (市場動向) 現在の市場規模は、表 1、表 2 のようにヒートポンプ台数で 4~8 万台/年程度と推定される(信 頼できる最近の出荷統計データが見当たらない)。対象は住宅、業務・商業ビル、官公庁ビル、 学校など多様である。全米で 600 の学校で採用しているという報告もある。 Capacity % Number installed Installed Calendar Unit shipments shipments year (no.) (tons) 1994 28,094 109,231 1995 32,334 130,980 1996 31,385 1997 Annually Vertical Closed Loops 46 36 800 Horizontal Closed Loops 38 30 400 112,970 37,434 141,556 Open Loops 15 12 000 1998 38,266 141,446 Others 1 800 1999 49,162 188,536 表1 TOTAL 表 2 地中熱源ヒートポンプ出荷台数 の推移(文献 1) 100 タイプ別シェアーと台数(対象年度 など不明)(文献 2) 7 80 000 システムタイプ別のシェアーは、表 2 のようになっていて、垂直熱交換方式が 46%と半数近い が、意外にも水平地中熱交換器方式が 38%を占めている。地下水(オープン)方式も 15%とな っている。この表からは読めないが、直膨式(地中熱交換)ヒートポンプシステムも一部で導入さ れている。 地域的な普及状況は全米でかなり地域的なバラツキが大きく、カリフォルニアでは最近の電力 供給上の問題などを契機に普及が始まった段階である(図 2 参照)。 図2 米国の地中熱源ヒートポンプ市場の 分布状況(少し古いデータ) (文献 3) (システム技術) 一般的な住宅における地中熱源ヒートポンプシステムの構成例を図 3 に示す。この場合は地下 機 械 室 に ヒ ー ト ポ ン プ が 設 置 さ れ て い る 一 般 的 な タ イ プ で あ る が 、 図 4 (b) の よ う な 空 気熱源ヒートポンプと同様にスプリット型のタイプもある。 (夏季) 図3 (冬季) 地中熱源(住宅用)ヒートポンプシステム構成例 ヒートポンプの代表的なメーカーとしては、Climate Master、Water Furnace、FHP Manufacturing、 Trane など 10 数社がある。 一方、地中熱交換器については、垂直、水平各種のタイプが採用されている(図 1 参照) 。垂 直タイプでは高密度ポリエチレン管を使用した U 字管熱交換器が開発され、これを掘削したボア 8 ーホールの中に埋設する方式が一般的である。地中熱交換器チューブの代表的なメーカーとして は、Chevron Phillips Chemical(商品名 Driscoplex)がある。 (a) 機械室設置タイプ(一体型) 図4 (b) 屋外設置タイプ(スプリット型) 地中熱源ヒートポンプ(水―空気)の外観 米国では、冷暖房システムとして採用されるケースが多く、とくに商業ビルでは夏季の冷房負 荷が大きいことから、地中温度の経年変化(上昇)が問題となり、地中での吸・放熱をバランス させるために水ループに冷却塔を組み込んだ、いわゆる“ハイブリッドシステム”が米南部地方 を中心に採用されている。 (技術開発動向) 地中熱源システムで必要な固有の技術として、熱交換器施工技術(ボアーホール掘削、熱交換 器形状、グラウト(充填材))、システム設計ツール(必要な熱交換器チューブ長さの決定、シス テム評価などのプログラム)など、従来の空調システムでは必要のなかった地中熱交換技術を中 心にした開発に大学、国立研究所などで注力されてきた。 最近の研究開発テーマとしては、米エネルギー省のもとでオークリッジ国立研究所が進めてい る研究として、固体吸着材(solid water sorbents)熱交換システムがあり、これは水平地中熱 交換パイプの周りに固体吸着剤を筒状に構成することで地中の水分を吸着させて熱交換(伝熱) を促進する新しいアイデアである。 (普及活動) 全国的な普及活動では、前述の地中熱源ヒートポンプコンソーシアム(GHPC)がその中心的な 役割を担っている。以前は、地域の電力会社が普及活動の中心となって、設置者へのリベート(キ ャッシュバック)制度を導入していた時期もあったが現在はほとんど実施されていないようであ る。しかし、現在も州や電力会社による直接・間接の各種のインセンテイブが導入されている(詳 細は、コンソーシアムのホームページ www.geoexchange.org 参照)。 9 また、ブッシュ大統領が昨年サインした新国家エネルギー法案(2005 Energy Policy Act)に よれば、一定のエネルギー効率以上の住宅用地中熱源ヒートポンプに対して最大 300 ドルの税額 控除がうたわれている。 (協会・学会活動) 米国では、地中熱源ヒートポンプについて研究している国立の研究機関としてオークリッジ国 立研究所があるが、その他、オクラホマ州立大学、オレゴン州立大学、アラバマ大学などで活動 が活発である。とくに、オクラホマ州立大学では各種研究活動に加えて、J.Bose 教授のもとで国 際地熱ヒートポンプ協会(International Geothermal Heat Pump Association)の事務局として 活動し、技術者のトレーニング、技術者認定などの活動を行っている。この認定を受けた登録業 者は全米で 3,000 社に及んでいる。 (まとめ) 米国では 30 年近くにおよぶ地中熱源ヒートポンプの歴史があり、省エネルギー・地球温暖化 防止技術として政策的にも明確に位置づけられて、活発な研究・普及活動が展開されてきた。 今後、更なる普及を図っていく上での課題はシステムコストの低減であり、とりわけ地中熱交 換器の設置コストを現在の 10~40 ドル/m(平均で 3,500 円/m程度)のレベルから、さらに低減し て、空気熱源ヒートポンプとのイニシアルコスト差を縮小することが求められている(文献 4)。 (参考文献) (1)“Technical and Market Results of Major US Geothermal Heat Pump Programs”, P.Hhghes et al, May 2002, 7th IEA Heat Pump Conference, Beijing/China (2)“Geothermal (Ground Source) Heat Pumps - A World Overview”, GHC Bulletin, September 2004 (3) Climate Master 社資料 (4) IEA Annex 29 Expert Meeting/Workshop, May 11-12, 2006, Linz/Austria OTHERS このニューズレターの効果的な活用のために、今後、改善を図っていきたいと考えていますの で、忌憚のないご意見、ご要望など下記事務局までお寄せ下さい。 (事務局連絡先)(財)ヒートポンプ・蓄熱センター 技術研究部 IEA ヒートポンプ実施協定(IEA HPP Net Japan)事務局 (TEL: 03-5643-2404/ FAX: 03-5641-4501/ e-mail: li@hptcj.or.jp) 10
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