ケ ル ト 学 - 日本ケルト学会

「ケルト」
に学 ぶ
地域文化 振興
平成 22 年度鹿児島大学特別経費プロジェクト
「学生一人一人の『人文系共通技能』を伸ばす学士課程の構築」関連事業
れ、地域の〈文化力〉が問わ
かもその結びつきによって、欧州に
れています。けれども長く中央の目
おいては〈辺境〉にすぎないこれら
新しい文物を「文化」と呼び習わし
の地域は、近代国家における「中央
てきた日本では、
地方はしばしば「文
-地方」という単一で従属的な関係
化果つる地」として扱われ、文化に
とは異なる新しい関係性のなかに置
よる地域の活性化はもちろん、自ら
かれることになります。これらの地
の土地の歴史や文化に誇るべき価値
域がしばしば「ケルト文化圏」と呼
を見出すことすら難しい状況にあり
ばれるのもおそらくそのためです。
ました。海外旅行ひとつを見ても、
ヨークやロサンゼルス、ロンドンや
ちろんそれが悪いわけではありませ
いても「地方」に注目し、そこを通
して自分の住む地域について考えて
みるという姿勢もまた同じように大
切ではないでしょうか?
「地方だからこそ可能な国際交流と
は何か?」
─それを考えて、鹿児
島大学法文学部人文学科ヨーロッ
パ・アメリカ文化コースでは「ケル
ト」に注目しました。
「 ケ
ルト」とはアイルランド、フ
ランスのブルターニュ、イ
ギリスのウェールズ、コーンウォー
ル、スコットランドなどの地域の総
称です。なぜ「ケルト」なのか? │
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│ ンポ ジウム│
ん。しかしそれとは別に、海外にお
─ 〈辺境〉の〈文化力〉を考える 。
パリという大都市を目指します。も
「ケルト」
に学 ぶ
地域文化 振興
人々は何の疑問もなくまずニュー
こ
のケルト文化圏では、独自の
〈文化〉は地域活性化におけ
る重要なファクターです。本シンポ
ジウムの第1部では、ケルト文化圏
を構成する 5 つの地域の代表的な文
化関係者から、各地域における〈文
化〉による地域活性化の実例を紹介
してもらいます。自らがケルト語の
話者でもある彼らの話は、日本では
十分に知られていると思われている
西洋が、実際には意外なほど多様で
複雑な事情を抱えていることに気づ
かせてくれるでしょう。
第 2 部では、第 1 部の話を受けて、
「
〈文化力〉で地域を活性化する!」
をテーマに、今度は日本で、あるい
は鹿児島で、ではどのような地域活
性化の試みが可能かということにつ
いて、観光学、方言学、ケルト学の
各専門家、そしていま実際に「地域
それはこれらの地域では紀元前の昔
おこし」に携わっていらっしゃる建
から「ケルト語」に分類される独特
築家と美術家にディスカッションを
なことばが話されてきたからです。
してもらいます。
日時
国と日本のそれぞれの視点か
2011 年 1 月 29 日[ 土 ]
10 : 00 ~ 18 : 00[ 9 : 30開場]
つまり国民の大半が英語やフランス
語を話す国のなかで、この地域では
─ 〈辺境〉の〈文化力〉を考える 。
はまた別の独特な結びつきです。し
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年、地方分権の必要性が叫ば
近
会場
鹿児島大学 稲盛会館
まったく別のことばが話されてきた
外
のです。したがってこれら諸地域
の〈文化力〉を考えるこのシンポジ
鹿児島大学郡元キャンパス内
は、各々の国のなかでも際立って強
ウム─
〈文化〉とはそもそも人間の
J
R鹿児島中央駅から市電「工学部前」下車(徒歩 3 分)/
いアイデンティティーの自覚と独自
日々の営みそのものの謂いである以
駐車場有り(9 : 00-10 : 30、12 : 30-14 : 00、18 : 00-19 : 00 の間「図書館側ゲート」を開けます)
の文化意識をもつことで知られてい
上、
〈文化力〉による地域の活性化
ます。加えてこの地域は、
「ケルト」
とは文字通り地域の人々すべてに関
というその起源の共通性によって、
わる問題です。皆様の積極的なご参
相互に強い連帯感で結ばれてもいる
加を期待しています。
ら、8 時間にわたって〈辺境〉
市内路線バス11・20 番系統ほか「法文学部前」下車(徒歩 5 分)
参加費無料
第 1 部 [10 : 30~]
「ケルト諸地域の試み」
〈講演 1〉タンギ・ルアルン
〈講演 2〉メイリオン・プリス・ジョーンズ
〈講演 3〉ダヴィス・ヒックス
〈講演 4〉ロバート・ダンバー
〈講演 5〉ネーサ・ニヒネーデ
第 2 部 [15 : 20~]
パネル・ディスカッション
「
〈文化力〉で地域を活性化する!」
〈パネリスト〉
吉田春生+木部暢子+原聖+安藤剛+平嶺林太郎
〈コーディネーター〉
梁川英俊
主催 鹿児島大学法文学部人文学科ヨーロッパ・アメリカ文化コース
後援 南日本新聞社
のです。それは国家という枠組みと
写真協力:辺見葉子、袴田博人、××××、××××
[連絡先]鹿児島大学法文学部人文学科 梁川英俊(e-mail: yanagawa@leh.kagoshima-u.ac.jp)
〒890-0065 鹿児島市郡元 1-21-30 tel/fax 099-285-8891
文 化 庁 文 化 力
プ ロ ジ ェ ク ト
参
加
事
業
[メイリオン・プリス・ジョーンズ]
[ネーサ・ニヒネーデ]
1947 年、パリ
アイルランド
南ウェールズ、
で 生 ま れ る。
南西部ケリー
ブリジェンドに
家庭ではブル
州ディングル
生まれる。ウ
ターニュ語が
半島のアイル
ェールズ大学
使われていた
ランド語使用
(バンゴール)
ので、幼少時
地 域 で 育 つ。
でウェールズ
よりブルター
アイルランド
語・ウェール
ニュ語とフラ
国立大学ゴー
ズ文学を専攻
ンス語のバイ
ルウェイ校で
したのち、ウ
リンガルとい
歴史学、地理
ェールズ大学
う環境で育つ。小学校はブルターニュ北
学、考古学を学んだのち、新設のアイル
(アバリストウィス)大学院で「教職専
部プルエゼックにあった当時としては珍
ランド語ラジオ放送局でニュースアナウ
修コース」を修了する。その後、中・高
しいバイリンガル学校に通う。いわゆる
ンサーを務める。アメリカ合衆国ウィス
等学校のウェールズ語主任を経て、ウェ
「68 年世代」で、学生時代はさまざまな
コンシン州立ウィスコンシン大学マディ
ストグラモルガン州行政府でウェールズ
運動に関わる。大学で経済学を専攻後、
ソン校に留学。1986 年に帰国し、国営
語教育委員、および指導部門の主任を務
労働省の外郭団体で労働監査、労働条件
テ レ ビ 放 送 RTE に 時 事 問 題 ブ ロ ー ド
める。1993 年より視学官、また 1994 年
視察など多くの分野で活動。その一方で、
キャスターとして、まずアイルランド語
からは「ウェールズ語委員会」Bwrdd Yr
「 ス コ ー ル・ ア ン・ エ ム ザ オ 」Skol an
時事問題担当者に、その後 1995 年まで
Iaith Gymraeg の役職を歴任し、2004 年
Emsav の設立など、少数言語の復興を目
(英語による)時事問題の制作部長及び
に代表委員長に就任、
現在に至る。ウェー
指す運動に参加。1977 年にはバイリン
役員を務める。1995 年から半年間、家
ルズ語委員会は、1993 年のウェールズ
ガルの私立学校「ディワン」Diwan の設
族と東京に滞在。帰国後、アイルランド
語言語法に基づいて、ウェールズ語の使
立にも関わる。1979 年設立のブルター
語テレビ番組のスタートに際し、アイル
用を促進することを目的に創設された政
ニュ革新派文化戦線書記長、1996 年か
ランド語番組局長に任命され、アイルラ
府組織で、委員数は 75 名、年間予算は
ら 2010 年まで、
カンペール文化センター
ンド語番組編集局長を務める。また「欧
1300 万ポンド。現在はウェールズ議会
長。2005 年から現在まで、欧州少数言
州少数言語事務局」のアイルランド支部
政府のもとで運営されている。他にも
「ブ
語事務局フランス支部長を務める。ブル
委員としても活動し、2005 年に同代表。
リテン・アイルランド協議会」言語部門
ターニュ文化審議会人権委員会および対
2009 年まで同事務局における活動を続
長、
「言語多様性推進機構」長を務めて
外関係委員会委員長。著書に、
『ディワ
ける。他にも国立民族劇「シアムサ・チー
いる。
ン―ブルターニュの公立学校』
、
『フラ
レ」Siamsa Tíre、毎年ダブリンで開催さ
ンスにおける地域語と少数言語』
、
『フラ
れるアイルランド語文化祭「イムラム」
ンスと文化的人権の否定』などがある。
Imram の委員を務めている。
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Meirion Prys Jones
「ケルト」
に学 ぶ
地域文化 振興
[タンギ・ルアルン]
Neasa Ni Chinneide
─ 〈辺境〉の〈文化力〉を考える 。
Tangi Louarn
吉田春生[よしだ・はるお]
Davyth Hicks
Robert Dunbar
[ダヴィス・ヒックス]
[ロバート・ダンバー]
コーンウォールに
スコットラン
生まれる。理学博
ド・ハイラン
士。ヨーロッパの
ド島嶼大学ス
民族的少数派・少
カイ島校研究
数言語を代表する
教授。少数言
「ユーロラング」の
語の言語政策
局長、および伝統
の法律分野に
的少数派による
おける世界的
「民族共同体およ
先駆者の一人
び言語に関する欧
で、同校等が
州議会連携機構」の事務局長を務め、欧州言
関係するスコットランド語文化の保存・
語の EU および地域レベルでの言語政策の展
再活性化に向けた研究プロジェクトの責
開に尽力している。欧州評議会の「欧州少数
任者を務めている。カナダのノヴァスコ
言語事務局」において言語問題の専門家として
シア州で話されているスコットランド語
活躍。政府機関、国際機関、NGO に助言を与
の話者であり、研究領域は、社会言語学、
えている。「連携機構」では、
民族的少数派のた
スコットランド語(およびその他のケル
めの「欧州安全保障協力機構」の高等弁務官、
ト語)の言語政策のほか、18、19 世紀
基本権利機構、欧州委員会、欧州評議会の「少
のスコットランド語による詩歌、口承物
数民族保護のための枠組み条約諮問委員会」、
語、カナダにおけるスコットランド語文
欧州少数言語事務局長、欧州評議会の議員連
学・文化など多岐にわたる。
合会議とも緊密に協力している。現在、EU の
欧州評議会の委嘱研究者で、地域語少数
将来の言語政策を検討するために設立された、
言語欧州憲章事務局とも定期的に連携し
欧州委員会の NGO「多言語使用政治機構」の
ており、これまで少数言語政策に関する
言語政策・計画に関するサブグループの議長、
国際的諸機関、各国政府、NGO の顧問
また EU に文化政策関係の情報を提供する「文
を歴任。2005 年のスコットランド語法
化プラットフォーム」の委員、
「コーンウォール
に基づいて設立されたスコットランド語
語パートナーシップ」の政策委員も務める。
評議会の委員、BBC スコットランドと
その一方で、プロのロック・ミュージシャン
共同してスコットランド語デジタル番組
としても活躍。コーンウォール、ウェールズ、
を制作する機関の委員、スコットランド
スコットランドの言語機関に勤務したのち、
語文献協会会長、電子媒体雑誌「北部ス
エディンバラ大学ケルト学科で教鞭を執った。
コットランド」の編集委員などを務める。
安藤剛[あんどう・かたし]
1947 年生まれ。(株)日本交通公社(現 JTB)に約 20 年間勤務、主として営業現場を経験。専門学校講師を経て、2000 年より鹿児
1948 年、大分県豊後高田市生まれ。九州共立大学工学部建築学科卒業後、東京、福岡にて設計事務所勤務。30 歳にて豊後高田
島国際大学福祉社会学部現代社会学科助教授、2005 年から教授。専門は観光論で、主として旅行形態論や「ツーリズムの様態」
市に帰る。
(株)安藤剛設計室設立。町づくりグループ「テンプランド」を立ち上げる。1980 年から「大分方言丸出し弁論大会」
などから観光地を分析・考察し、近年は地域社会と観光の関係について特に研究を進めている。現在は同大学の生涯学習センタ
(1995 年、
(財)日本ファッション協会「日本生活文化賞」受賞)、1980 年から 1995 年まで九州一円の建築家のための建築塾「国
ー長と同大学附置地域総合研究所の専任所員も兼任している。専任所員としては温泉観光地における共同湯のあり方を「観光と地
東セミナー」
(1985 年、日本建築家協会「地域文化振興賞」受賞)等を仕掛け、現在「昭和の町」推進活動(2005 年、内閣府「地
域社会」という視点から研究し、2010 年 4 月に『新しい観光の時代』を上梓した。主要著書:
『エコツーリズムとマス・ツーリズム』
域再生、地域自慢大会」最優秀賞受賞、2009 年「サントリー地域文化賞」受賞)に建築家の立場で建築、町並み集計等でかかわっ
(2003)
、
『観光と地域社会』
(2006 年 日本観光研究学会「第 1 回学会賞観光著作賞」受賞)
、『新しい観光の時代』
(2010 年)など。
木部暢子[きべ・のぶこ]
ている。日本文理大学工学部建築学科客員教授。
平嶺林太郎[ひらみね・りんたろう]
1955 年生まれ。九州大学大学院修了。博士(文学)。純真女子短期大学講師、福岡女学院短期大学講師を経て、1988 年 4 月に
1983 年鹿児島県薩摩郡里村(現・薩摩川内市)に生まれる。東京造形大学大学院修了。2004 年より続く「『甑島で、つくる。』
鹿児島大学法文学部に助教授として赴任。1999 年より教授。2006 年4月から 2010 年 3 月まで、鹿児島大学法文学部長を勤める。
KOSHIKI ART EXHIBITION」を主催する KOSHIKI ART PROJECT 代表。2006 年、Mrs.Yuki 結成。2008 年、「Mix Up!!」「全員
2010 年 3 月に鹿児島大学を辞職し、4 月から大学共同利用機関法人・人間文化研究機構・国立国語研究所教授(副所長)となる。
展 !!!!!!!!」
「食と現代美術 part4」に参加。2009 年 4 月には「101 TOKYO Contemporary Art Fair2009」に参加。同年、
『甑島で、つ
専門分野は、日本方言学、音声学、音韻論、アクセント論。特に、方言アクセントがどのようにして形成されたかに興味があり、
くる。
』KOSIKI ARTEXHIBITION2009 がアサヒ・アート・フェスティバル 2009 に参加。同年自治体総合フェア 2009「第 1 回
各地の方言の調査を行っている。鹿児島大学在職中は、鹿児島県各地をまわり、その成果を『鹿児島県のことば』(明治書院、
活力協働まちづくり推進団体表彰」にて『甑島で、つくる。』KOSHIKI ART EXHIBITION がグランプリ受賞。
1997)、
『西南部九州二型アクセントの研究』
(勉誠出版、2000 年 2 月)
、
「内的変化による方言の誕生」
(
『方言の形成』岩波書店、
2008)、
『これが九州方言の底力』(大修館書店、編著、2009)として刊行した。現在は国立国語研究所で「消滅危機方言の調査・
保存のための総合的研究」のプロジェクトの企画・運営にあたっている。
原聖[はら・きよし]
梁川英俊[やながわ・ひでとし]
1959 年生まれ。東京都立大学大学院修了。パリ第 12 大学、社会科学高等研究所(EHESS)で学ぶ。鹿児島大学法文学部教授。
フランス文学・思想の研究者として出発するも徐々に歴史学・人類学へと関心を移す。
「国民国家における地方」という視点か
1953 年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位修得。現在、女子美術大学芸術学部教授。多言語社会、多文化
ら、ブルターニュをはじめとするケルト諸地域を研究対象とする一方、鹿児島大学国際島嶼教育研究センター兼務教員として
社会、西欧諸国の地域分権がおもな研究テーマ。1990 年代から多言語社会研究会を主宰し、雑誌「ことばと社会」を発行する。
国内外の島嶼地域に関心を寄せ、最近はとくに奄美民謡のヨーロッパへの紹介に力を入れている。共著書に Identité et société de
2009 年より日本ケルト学会代表幹事。主要著書に『周縁的文化の変貌』(三元社、1990)、『〈民族起源〉の精神史』(岩波書店、
Plougastel à Okinawa, (PUR, 2007), Formes spectaculaires traditionnelles et processus de patrimonialisation(PUR, 近刊)。主要論文
に La « psychologie formelle » de Valéry (Bulletin des Etudes Valéryennes Nos 48/49, 1988), Merlin dans l’imaginaire breton depuis le
XIXe siècle (IRIS, Centre de recherche sur l’imaginaire – Université Grenoble 3, 2001) などがある。
2003)、
『ケルトの水脈』
(講談社「興亡の世界史」07、2007)
、共著に『現代ヨーロッパ社会論』
(人文書院、1998)
、翻訳に『虐
げられた言語の復権』
(批評社、1987)
、
『天国への道』
(日本エディタースクール出版部、1996)などがある。