二酸化炭素によるクルマエビヘモシアニンの PO 様活性の抑制

二酸化炭素によるクルマエビヘモシアニンの PO 様活性の抑制
○坂本
健、宮本晋吾、佐藤まりえ、菅原達也、平田
孝(京大院農)
キーワード:二酸化炭素、クルマエビ、フェノールオキシダーゼ(PO)
、ヘモシアニン、メラニン
著者連絡先:電話番号
075-753-6211
e-mail hiratan@kais.kyoto-u.ac.jp
【目的】
暴露し、PO 様活性の経時変化を調べた。また、二
我が国で消費されるエビの多くは、冷凍状態で輸
酸化炭素処理による pH 変化の影響を調べるため
入されるが、解凍後メラニン生成に伴う黒変が急
に pH6.5-7.8 の範囲で PO 様活性の変化を調べた。
速に進行するため問題となっている。エビのメラ
尚、PO 様活性は、基質に DOPA を用いた時のド
ニン生成は、フェノールオキシダーゼ(PO)によ
ーパクロム(475nm)の生成量で評価した。
りエビ体内のチロシン及びジヒドロキシフェニル
②
アラニン(DOPA) が酸化されることで進行すると
窒素及び二酸化炭素で①と同様に処理し、未処理
言われている(図 1)。しかし、我々は、解凍クルマ
(オキシ)Hc、窒素処理(デオキシ)Hc、二酸化
エビでは、呼吸色素であるヘモシアニン(Hc)が
炭素処理 Hc を調製した。吸収スペクトル及び蛍光
何らかの要因により PO 様活性を持ち、メラニン
スペクトルの変化から構造変化を解析した。
生成過程で重要な働きを担うことを明らかにして
【結果・考察】
きた。したがって、ヘモシアニンの PO 様活性を
①二酸化炭素処理した Hc において、PO 様活性が
制御できれば、効果的に黒変を防止することがで
抑制された(図 2)。また、pH6.5-7.8 の範囲で PO
きる。本報告では、二酸化炭素処理による Hc PO
様活性に大きな変化は認められなかった。このこ
様活性の抑制効果、さらにその抑制メカニズムに
とから、二酸化炭素処理による PO 様活性の抑制
ついて検討した。
は、pH の低下によるものではないことが示唆され
Hc の構造変化解析
た。
チロシン
O
PO 、 PO 様活性 Hc
O
0.3
COOH
NH2
DOPA
HO
HO
COOH
NH2
ドーパクロム
O
HO
COOH
N
ユーメラニン
図 1. メラニン生成経路
0.25
吸光度(475nm)
HO
ドーパキノン
COOH
NH2
0.2
0.15
0.1
0.05
0
0
2
4
6
8
10
処理時間 (分)
12
14
図 2. 二酸化炭素処理による Hc の PO 様活性の抑制
【方法】
②二酸化炭素処理 Hc では、蛍光スペクトルに窒素
①二酸化炭素処理による Hc の PO 様活性の変化
処理とは異なる変化がみられた。二酸化炭素処理
クルマエビ血漿から超遠心分離を経てゲル濾過に
Hc は、デオキシ(窒素処理)Hc とは異なる構造
より Hc を精製した。Hc は、100%二酸化炭素に
をとっていることが示唆された。