和算講座第 35 回 米光 丁 はじめに 今回も「精要 - 和算への旅

和算講座第 35 回
米光
丁
はじめに
今回も「精要算法」巻之下(藤田定資著)より問題を選んで解答してみます。皆様のご
指導、ご教示をお願いします。
問題 35.原文
- 1 -
問題.35
今図の如く、三角形内に全円及び大中小
円がが内接している。
小
大円径が 9 寸、中円径 4 寸、小円径 1 寸、
円
のとき全円の直径はいくらか。
答曰く 全円 11 寸
全
術曰 中径を置き小径を掛けて、之を開
円
平し寄位とする。中径と小径を併せ
大
て寄位 2 倍して加え、之に大径
中
円
を掛けて開平したものに寄位を加え
円
ると全円径に合問。
術
寄位= 中径×小径= 4×1=2
全径= (2×2+中径+小径)大径+寄位= (2×2+4+1)9+2=11
全径=11 寸
(和算家の解)
A
小
小
全-大
2
較
O
大
小
大円の直径=大,全円の直径=全とすると
較
周知のとおり子= 大・全 である。
全
大
較
較
大
B
子
大較
中
中較
全円
大円
子
C
B
- 2 -
C
全径=全,
大径=大,
中径=中, 小径=小、各辺と全円の接する距離を
図のようにそれぞれ大較、中較、小較とする
右図より子= 全・大
また比例により
全-大 全
:
=子 : 大較
2
2
全 全・大
大較=
全-大
同様にして
全 全・中
中較=
全-中
,
全 全・小
小較=
全-小
△ABC の面積 S は
全
S= {(大較+中較)+(大較+小較)+(小較+中較)}
4
全
S= (大較+中較+小較)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
2
全 全 全・大 全 全・中 全 全・小
+
+
)
S= (
全-大
全-中
全-小
2
またヘロンの公式より
S= (大較+中較+小較)・大較・中較・小較・・・・・・・・・・・・・(2)
(1)=(2)とすると
全
(大較+中較+小較)= (大較+中較+小較)・大較・中較・小較
2
両辺を平方して整理すると
全2
(大較+中較+小較)=大較・中較・小較
4
全 3(
全・大
全・中
全・小
全・大
全・中
全・小
+
+
)=4 全 3(
・
・
)
全-大
全-中
全-小
全-大
全-中
全-小
大
中
小
全 大・中・小
+
+
=4
全-大 全-中 全-小 (全-大)( 全-中)( 全-小)
分母を払って
大(全-中)(全-小)+ 中(全-大)(全-小)+ 小(全-大)(全-中)
=4 全 大・中・小
全についてまとめると
全 2( 大+ 中+ 小)-全(4 大・中・小+ 大小+ 大中+ 中大+ 中小)+ 小
大中+ 大中小+ 中大小=0・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
ここで
- 3 -
大・ 中+ 大・ 小+ 中・ 小=甲 , 大+ 中+ 小=乙 ,
大・中・小=丙
と置くと
甲・乙=( 大+ 中+ 小)( 大・ 中+ 大・ 小+ 中・ 小)
=大 中+大 小+ 大・中・小+中 大+ 大・中・小+中 小
+ 大・中・小+小 大+小 中
甲・丙= 大・中・小( 大・ 中+ 大・ 小+ 中・ 小)
= 小大中+ 中大小+ 大中小
となるから
(3)の式は
全 2 乙-(甲乙+丙)全+甲丙=0
となり因数分解すると
(全乙-丙)(全-甲)=0
全=甲
乙
, 全=
丙
ここで問題の数値を代入すると
大径=9 寸 ,
中径=4 寸,
小径=1 寸だから
乙= 大+ 中+ 小=3+2+1=6 寸
丙= 大・中・小=3×2×1=6 寸
乙
全= =1 寸(不適)となる。
丙
全=甲= 大・ 中+ 大・ 小+ 中・ 小=6+3+2=11 寸となる。
となり公式としても使用されていたようである。
答え全円の直径は 11 寸となる。
(参考)
『算法新書』千葉胤秀著 1830 年 26
『算法天生法指南の問題の解説』藤井康生著 1997 年 p.157
『滋賀の算額』桑原秀夫・山口正・吉田柳二著昭和 52 年 p.19
などに同じ問題がある。
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