資源循環型社会における地域経済活性化の効果 1.

資源循環型社会における地域経済活性化の効果
岡山県真庭市におけるバイオマス事業
Contributions to Regional Economies by Biomass Resource Usage
○ 中 村 良 平 * ・ 柴 田 浩 喜 * * ・ 渡 里 司 **
構成
1.はじめに
2.地域経済構造の循環分析
3.真庭市の概況
4.調査方法と結果の概要
4.1
調査方法
4.2
調査結果の概要
5.バイオマス利用による地域経済活性化の効果
5.1
効果の識別
5.2
分析のフレームワーク
5.3
実証分析の結果
6.おわりに
1.はじめに
今日、地球環境への負荷を低減させるべく資源循環の施策を実施している市町村は
多 い が 、そ れ が 地 域 経 済 に ど の よ う な 効 果 を も た ら す か は 十 分 に は 把 握 さ れ て い な い 。
これは、行政施策が縦割り型なシステムになっていることも一因であるが、環境政策
では環境改善効果に対してだけ目が向けられており、その行政投資による地域経済効
果の把握が後手に回っていることが挙げられる。それは、経済効果の定量的把握がデ
ータ的にも困難なことにも依存している。環境政策が持続的であるには、その経済効
果とトレードオフ関係にあってはならない。中長期的には両者が連立できることが持
続可能な地域経済の姿であるといえよう。
具 体 例 と し て バ イ オ マ ス 事 業 を 挙 げ る と 、そ れ に よ る CO 2 削 減 効 果 は よ く 知 ら れ て
いるが、産業振興への貢献ということになると、定量的には曖昧な部分が多い。すな
わち、バイオマス利用によるコスト削減、バイオマス製品の販売額といった個別事業
体での経済効果はある程度は事後的にわかるものの、それが地域全体にどのように産
業連関効果(所得効果や雇用効果)をもたらすかに関してはほとんど明らかにされて
*
岡 山 大 学 大 学 院 社 会 文 化 科 学 研 究 科 (経 済 学 系 ) Department of Economics, Okayama University
〒700-8530 岡 山 市 津 島 中 3-1-1, E-mail: ubbz0252@cc.okayama-u.ac.jp
* * (社 )中 国 地 方 総 合 研 究 セ ン タ ー Chugoku Regional Research Center
〒730-0041 広 島 市 中 区 小 町 4-33,E-mail: crrc@crrc.or.jp
1
いない。地域経済は、非常に開放性が高く原材料や販売における域際の移動が大きい
のが特徴である。それ故に経済循環構造の実態を把握し、それに基づいて経済波及効
果 な ど の 定 量 分 析 を 行 っ て お く こ と は 、有 効 な 地 域 政 策 を 実 施 す る の に 不 可 欠 で あ る 。
本 研 究 は 、2007 年 度 に 岡 山 県 真 庭 市 で 実 施 し た 地 域 経 済 構 造 分 析 に お い て 、そ の 視
点の 1 つである循環構造分析に主に焦点を当てたものである。そこでは、財貨の地域
内 外 の 循 環 の み な ら ず 、 バ イ オ マ ス 利 用 と い う (木 材 )資 源 の 域 内 外 の 循 環 も 考 慮 に 入
れた小地域の産業連関表を実際の調査で収集したデータに基づいて構築している。こ
のような事例は、筆者の知る限りでは全国的にも非常に少ないと思われる。そして、
この小地域の産業連関表を活用することによって、本研究では木質バイオマス資源に
関する循環施策を実施した場合における地域経済活性化効果を実証している。
2.地域経済構造の循環分析
地域経済の構造的問題点を抽出し、地域経済の処方箋を講じる分析を「地域経済構
造分析」と呼んでいる。 1
地域経済構造分析は、いくつかのステップからなる。大
きく分けると、地域経済の基本的構造を見る部分と循環構造を見る部分からなるが、
まず、①どこに焦点を当てて分析をするかという対象地域の設定。②人口や雇用、所
得など基本的な地域経済指標の推移・動向の把握。併せて地域の労働市場の状況も調
べておく。また、少し踏み込んで経済の構造、所得や雇用の状況を類似地域との比較
な ど で 位 置 づ け る 。 ③ 所 得 ( マ ネ ー ) を 獲 得 し て い る 産 業 (基 盤 産 業 )、 雇 用 を 吸 収 し
ている産業、付加価値を生み出している産業などの識別を行い、それらが地域経済の
成長とどのような関係になっているかを分析する。④地域経済における財貨・サービ
スの流れ(移出入)を把握する。生産における中間投入の域内調達率は高いか、地域
に財・サービスの需要先が確保されているか、地域所得は域内で使われているか、消
費はどの程度流出しているか、貯蓄は地域に再投資されているか、などを分析する。
⑤地域産業の収益に関する安定性と成長度の診断。そして、この②から⑤までを併せ
て、⑥地域の処方箋を考えるということになる。
3.真庭市の概況
真 庭 市 ( 人 口 約 5 万 人 ) は 、 2005 年 3 月 31 日 に 市 町 村 合 併 で 誕 生 し た 新 し い 市 で
ある(旧真庭郡の勝山町、落合町、湯原町、久世町、美甘村、中和村、八束村、川上
村 、 上 房 郡 の 北 房 町 ) 。 鳥 取 県 に 接 し 、 東 西 約 30km、 南 北 約 50km に 広 が る 。 総 面 積
2
2
は 約 828km で 岡 山 県 の 約 11.6% を 占 め て い る 。 し か し 、 可 住 地 面 積 は 164km と 総 面
積 の 2 割 に 満 た な い (図 - 1 を 参 照 )。
1
「地 域 経 済 構 造 分 析 」とは、筆 者 の一 人 が参 加 した経 済 産 業 省 の 地 域 経 済 研 究 会 に お い て 作 成 し た
地 域 分 析 の 手 法 で あ り 、平 成 17 年 1 月 に 経 済 産 業 省 地 域 経 済 産 業 グ ル ー プ か ら「 地 域 経 済 構 造 分
析 の 手 引 き 」 と し て 公 表 さ れ た 。 現 在 、 そ の 第 2 版 が C D -R O M で 配 布 さ れ て い る 。 こ の 地 域 経
済 構 造 分 析 を 本 格 的 に 実 施 し た 例 と し て は 島 根 県 が 挙 げ ら れ る 。 そ の 詳 細 は 次 の URLに 紹 介 さ れ
て い る 。 http://www.pref.shimane.lg.jp/admin/seisaku/keikaku/keizai_bunseki/
2
ま た 、真 庭 市 は 、木 材 ・木 製 品 製 造 業 に 属 す る 事 業 所 が 39( 平 成 18 年 10 月 の 事 業
所・企 業 統 計 調 査 )集 積 す る 西 日 本 有 数 の 木 材 産 地 で あ る 。そ の 従 業 者 数 は 655 人 で 、
真 庭 市 の 製 造 業 従 業 者 数 の 15.2%を 占 め て い る 。こ の 特 化 係 数 は 全 国 基 準 で 11.0 を 上
回 る 。従 業 者 数 で は 衣 服 製 造 業 が 700 人 と 雇 用 は 若 干 多 い も の の 特 化 係 数 は 5.68 と 木
材 ・ 木 製 品 製 造 業 よ り は 低 い 。ま た 、従 業 者 は 多 く な い も の の 、林 業( 43 人 )や 鉱 業
( 95 人 )の 特 化 度 も 7.75 や 4.50 と 高 く 、真 庭 市 に と っ て は 域 外 マ ネ ー 獲 得 の 基 盤 産
業 と な っ て い る 。 建 設 業 従 業 者 (2,473 人 )の 構 成 比 も 11.5%で 特 化 係 数 も 1.63 と な っ
ており、中山間地の建設業に依存する経済構造を反映していると言えよう。
図-1
岡山県における真庭市の位置
バイオマスタウン構想
2006年 、 真 庭 地 域 で は 地 域 内 で 廃 棄 さ れ て い る バ イ オ マ ス ( 木 質 系 廃 材 、 家 畜 排 出
物、食品廃棄物等)や未利用のバイオマス(林地残材等)を活用することにより、地
域 を あ げ て C O 2 排 出 量 の 削 減 に 取 り 組 む 構 想 を 策 定 し 、国 か ら バ イ オ マ ス タ ウ ン の 指
定を受けた。
真庭地域におけるバイオマス利活用の先駆けとなったのは「木質バイオマス発電」
で 、 地 元 の 集 成 材 メ ー カ ー の 銘 建 工 業 で あ る 。 銘 建 工 業 は 1998年 に 既 存 の 木 質 バ イ オ
マ ス 発 電 設 備( 175kw/h)を 規 模 拡 大 し 、自 社 電 力 を 賄 う 程 度 の 本 格 的 な 大 型 ボ イ ラ と
発 電 設 備 ( 1950kw/h) を 導 入 し た の で あ る 。 現 在 は 自 社 電 力 消 費 量 が 少 な く な る 夜 間
の 電 気 は 販 売 も 行 っ て い る 。 そ し て 2004年 度 に は 自 社 で 発 生 す る プ レ ー ナ ー 屑 を 発 電
利用だけでなく、ボイラやストーブの燃料として販売していくため木質ペレットの製
造設備を導入した。
3
真 庭 市 は 豊 富 な 木 質 バ イ オ マ ス 資 源 の 利 活 用 施 設 と し て 、 2005年 度 に は 、 温 水 プ ー
ル( 健 康 増 進 施 設「 水 夢 」)を 建 設 し 、ペ レ ッ ト ボ イ ラ を 導 入 し て 水 の 加 温 や 暖 房 を 行
っ て い る 。 2007年 度 に 建 設 さ れ た 蒜 山 振 興 局 ( 市 の 分 庁 舎 ) で は 、 木 質 チ ッ プ を 燃 料
とする冷暖房対応の温水ボイラシステムを導入している。
ま た 、 普 及 啓 発 を 目 的 と し て 2005年 度 か ら 市 内 で の ペ レ ッ ト ス ト ー ブ の 導 入 を 促 進
し 市 民 が 触 れ る 機 会 を 増 や し て き た 。 そ し て 、 行 政 や 組 合 を 中 心 に 約 60台 の ペ レ ッ ト
ストーブの導入がなされており、市民の購入も増加しつつある。
課題としては、間伐材や風倒木などの林地残材、製材所等から発生する樹皮が未活
用であることや、製材所や一部の事業所等では重油等の化石燃料を大量に使用してい
る こ と な ど が あ る 。2005 年 度 に お け る N E D O の 実 験 事 業 で は こ れ ら の 問 題 を 解 決 す
るために、樹皮・林地残材・間伐材をエネルギー源として地域内で有効活用すること
や、限定的に利用されている木質ペレットを低コストで供給するシステムの実験を行
い、収集からエネルギー利用までの総合システムを構築しようとしている。
表-1
真庭市のバイオマス賦存量・仕向量・利用率
賦存量
仕向量
バイオマス
変換・処理方法
(t/年)
(t/年)
廃棄物系バイオマス
281,659
①木質系廃材
122,844 ペレット化、チップ化、燃焼
95,357
②家畜排泄物
123,346
堆肥
99,910
③食品廃棄物
8,949
BDF 化、原料化
850
④紙くず・古紙
3,811
原材料化
1,784
⑤浄化槽等汚泥
22,498
堆肥
22,498
⑥下水汚泥
211
堆肥
211
未利用バイオマス
75,896
⑦未利用木材
57,098
なし
0
⑧稲わら
15,689
堆肥
12,504
⑨もみ殻
2,461
堆肥
1,746
⑩剪定枝
649
なし
0
資源作物(なし)
(2006 年 3 月 時 点 )
利用率
利用・販売
(%)
77.0
販売、自家利用
77.6
販売、自家利用
81.0
販売、自家利用
9.5
販売、譲渡
46.8
販売
100.0
販売
100.0
28.4
なし
0.0
自家利用、譲渡
79.7
自家利用、譲渡
71.0
なし
0.0
注) 廃棄物系バイオマスと未利用バイオマスの各合計の利用率は炭素換算ベース。
端数処理に伴い、合計値と合算の結果が一致しない場合がある。
出 典 ) 真 庭 市 「 真 庭 市 バ イ オ マ ス タ ウ ン 構 想 書 」 2006 年 4 月
4.調査方法と結果の概要
4.1
調査方法 2
調査については、真庭市地域におけるバイオマス資源利用にも着目した産業連関表
を作成するのがその目的であるが、域内外の財貨・サービスの中で特にバイオマス関
係 の 流 動 を と ら え る た め に 、ア ン ケ ー ト 調 査 と 併 せ て ヒ ア リ ン グ 調 査 も 実 施 し て い る 。
ア ン ケ ー ト 調 査 の 対 象 地 域 は 、 真 庭 市 で あ る 。 調 査 期 間 は 、 2007 年 12 月 7 日 ~ 2008
2
本研究の対象である真庭市では、製造業や農林業等基幹産業における生産の減少と公共部門の縮
小が続き、地域経済の自立性向上を図る産業振興策が求められていた。こうした状況を踏まえ、
中 小 企 業 基 盤 整 備 機 構 は 平 成 19 年 度 に 「 真 庭 市 の 産 業 振 興 政 策 立 案 に 係 る 調 査 」 を 実 施 し た が 、
本 研 究 は 、そ の 中 で 収 集 し た デ ー タ に 追 加 の 情 報 収 集 や 加 工 を 施 し 、新 た に 分 析 し た も の で あ る 。
4
年 1 月 、バ イ オ マ ス 関 係 に つ い て は 2008 年 1 月 で あ る 。ア ン ケ ー ト 調 査 の 実 施 内 容 で 、
主な調査項目は
①売上高、仕入額、外部委託費用、人件費など
②サービス購入の内容と金額、サービスの購入・提供地域など
③他圏域への送金額といった圏域を越えて移動する資金額
④バイオマス利用に関する廃棄物の量、価格、域内外への出荷額など
と な っ て い る 。 調 査 対 象 事 業 所 は 、 鉱 工 業 43( 98) 件 、 林 業 14( 41) 件 、 農 畜 産 16
( 22)件 、バ イ オ マ ス 関 係 は 家 畜 3( 3)件 、屎 尿 下 水 1( 4)件 、籾 藁( 農 協 )1( 2)
件 、 木 質 廃 材 を エ ネ ル ギ ー 利 用 し て い る 事 業 所 へ は 1( 3) 件 、 廃 材 の 製 造 品 利 用 が 4
( 4)件 と な っ て い る 。( )内 は 配 布 数 。製 造 業 の 回 収 率 は 、出 荷 額 ベ ー ス で 66% で あ
る。
また、主要データのために実施したヒアリング調査としては、木質燃料の市内循環
量及び移出量に関する調査が挙げられる。これは、真庭市における木質燃料の市内循
環量及び移出量の現状を把握するため、
「 バ イ オ マ ス 利 用 に 関 わ る 取 引 調 査 」及 び「 バ
イオマス関連事業所に対するヒアリング調査」を意味している。これらの調査から把
握された現状データに加え、本研究において、真庭市で実施されたバイオマス利用に
関わる各種調査・計画や真庭市産業観光部への聞き取りをもとに、木質燃料の市内循
環及び移出に関する将来想定量の把握を行っている。
4.2
調査結果の概要
真 庭 市 に お け る 主 な バ イ オ マ ス 資 源 と し て は 、家 畜 排 泄 物 、食 品 廃 棄 物 、し 尿 汚 泥 ・
下水汚泥、稲藁(わら)・もみ殻、木質系廃材及び未利用木材が挙げられる。これら
の う ち 再 資 源 化 さ れ て い る の は 、 自 家 発 電 ( 2006 年 の 発 電 量 が 1400 万 kW、 う ち 社 内
利 用 が 900 万 kW 1 億 5 千 万 円 、 売 電 が 500 万 kW
製 造 コ ス ト を 10 円 / kg と し て 5
千 万 円 )、ボ イ ラ や ス ト ー ブ の 燃 料( 木 質 チ ッ プ 及 び 木 質 ペ レ ッ ト 燃 料 )、BDF( 軽 油
燃料、天ぷら油の廃油でエコディーゼル燃料を製造)、マテリアル利用(ひのきの猫
砂、木材チップとセメントを混合した木片コンクリート)などである。
これら様々なバイオマス資源の循環について、以下では現在実績が最もあがってお
り、また将来推計の信頼性に耐える意味から「木質系バイオマスの燃料利用」に焦点
を当てた分析を行う。
①木質燃料の市内循環量と移出量
2007年 度 の 実 績 に よ る と 木 質 燃 料 の 市 内 循 環 量 は 木 質 チ ッ プ と 木 質 ペ レ ッ ト
の 合 計 で 年 間 約 40,000ト ン で あ り 、 市 外 移 出 量 は 年 間 15,700ト ン と 推 計 さ れ る 。
現 在 、チ ッ プ や ペ レ ッ ト の 製 造 に 利 用 さ れ て い る 原 料 は 、主 に 製 材 所 か ら 排 出 さ
れる端材、プレーナー屑である。
一方、真庭市では、間伐材等の未利用木材を収集し、チップ化する原材料集積
基 地 の 整 備 が 進 ん で い る 。こ の 原 材 料 集 積 基 地 を 経 由 す る 木 質 チ ッ プ は 市 内 製 材
5
所 に 対 す る 販 売 を 予 定 し て お り 、 そ の 市 内 循 環 量 は 年 間 約 5,500ト ン と 計 画 さ れ
ている。
ま た 、 真 庭 市 で 2 007年 に 実 施 さ れ た N E D O 実 験 事 業 で は 、 木 質 燃 料 の 市 外 移
出 の 対 象 と な る 周 辺 地 域 や 真 庭 市 内 に お い て 、重 油 ボ イ ラ を 利 用 し て い て 置 き 換
え可能性のある製造業、商業、農業ハウスのボイラ数、新設・改築等の可能性が
あ る 公 共 施 設 の ボ イ ラ 数 を も と に 木 質 燃 料 の 想 定 需 要 量 を 算 出 し て い る 。こ の 実
験 事 業 を も と に し た 本 研 究 で の 想 定 量 は 、 市 内 循 環 量 が 年 間 2,200ト ン 、 市 外 移
出 量 が 年 間 19, 900 ト ン で あ る 。
表-2
真庭市における木質燃料の市内循環量と移出量
(トン)
区分
木質チップ
木質ペレット
合計
製材所
製材所(自家消費)
その他の市内民営事業
市内
公共施設
需要
その他(農業等)
市内家庭消費
小計
市外移出
合計
製材所
製材所(自家消費)
その他の市内民営事業
市内
公共施設
需要
その他(農業等)
市内家庭消費
小計
市外移出
合計
製材所
製材所(自家消費)
その他の市内民営事業
市内
公共施設
需要
その他(農業等)
市内家庭消費
小計
市外移出
合計
現状
8,827
24,188
1,500
34,515
6,173
40,688
5,000
60
420
20
5,500
9,500
15,000
8,827
29,188
1,560
420
20
40,015
15,673
55,688
将来想定
集積基地 NEDO
計画
調査
5,343
1,858
165
5,508
1,858
13,932
5,508
15,789
365
365
5,971
6,336
5,343
1,858
165
365
5,508
2,223
19,903
5,508
22,125
合計
14,170
24,188
3,358
165
41,881
20,105
61,985
5,000
60
785
20
5,865
15,471
21,336
14,170
29,188
3,418
165
785
20
47,746
35,576
83,321
こ れ ら 3 つ を 合 計 し て 、本 研 究 で 分 析 対 象 と す る 真 庭 市 に お け る 木 質 燃 料 の 市
内 循 環 量 を 年 間 47 , 700ト ン 、 移 出 量 を 年 間 3 5,6 0 0ト ン に 設 定 し た 。
② 木質燃料の市内循環額と移出額
上記で想定した真庭市における木質燃料の市内循環量と移出量を金額に変換
す る に は 、木 質 チ ッ プ 及 び 木 質 ペ レ ッ ト の 価 格 を 設 定 す る 必 要 が あ る 。こ れ に 関
しては、表-3に示すように、木質チップと木質ペレットの両方に対して、販売
用 価 格 と 自 家 消 費 価 格 の 2 通 り を 設 定 し た 。表 - 2 の 市 内 循 環 量 と 移 出 量 に 対 し
6
て設定価格を乗じ、木質燃料の市内循環額と移出額を算出した(表-4)。
表-3
木質燃料
価格
材業の自
用木質チ
木質ペレ
材業の自
用木質ペ
想定根拠
8 , 1 0 0 円 / t ・ 原 材 料 価 格 及 び 製 造 コ ス ト( 約 7 0 0 0 円 / t )に 1 5 %
のマージンを上乗せした。
・上記は、農林水産省統計情報部「木材需給報告書」、
(財)日本 産 業 技 術 振 興 協 会 産 総 研 イ ノ ベ ー シ ョ ン
ズ「 バ イ オ マ ス 等 未 活 用 エ ネ ル ギ ー 事 業 調 査 報 告 書 」
(平成16年9月)等の取引価格に依拠した。
販売用木質チッ
プ( ボ イ ラ ー 向 け
の針葉樹)
市内製
家消費
ップ
販売用
ット
市内製
家消費
レット
木質燃料の単価設定
4 , 0 0 0 円 / t ・経 済 産 業 省「 新 エ ネ ル ギ ー 産業 ビ ジ ョ ン 」(2 0 0 4 )に
基づき、チ ッ プ の 製 造 コ ス ト を 採 用 し た 。
・ 市 内 企 業 の ヒ ア リ ン グ か ら 2007年 度 の 実 績 を 採 用 し
た。
・ 市 内 企 業 の ヒ ア リ ン グ か ら 2007年 度 の 実 績 を 採 用 し
10,000円/t
た。
12,000円/t
表-4
真庭市における木質燃料の市内循環額と移出額
(百 万 円 )
区分
木質チップ
市内
需要
現状
製材所
製材所(自家消費)
その他の市内民営事業所
公共施設
その他(農業等)
市内家庭消費
小計
市外移出
木質ペレット
市内
需要
合計
製材所
製材所(自家消費)
その他の市内民営事業所
公共施設
その他(農業等)
市内家庭消費
小計
市外移出
合計
市内
需要
合計
製材所
製材所(自家消費)
その他の市内民営事業所
公共施設
その他(農業等)
市内家庭消費
小計
市外移出
合計
72
97
180
50
230
50
1
5
0
56
114
170
72
147
13
5
0
236
164
400
将来想定
集積基地 NEDO
計画
調査
43
15
1
45
15
113
45
128
4
4
72
76
43
15
1
4
45
19
185
45
204
合計
115
97
27
1
240
163
403
50
1
9
0
60
186
246
115
147
28
1
9
0
300
349
649
結 果 、本 研 究 に お い て 分 析 対 象 と す る 真 庭 市 に お け る 木 質 燃 料 の 市 内 循 環 額 は 年
間 3億 円 、 移 出 額 は 3 億 490 0万 円 と な っ た 。
7
5.バイオマス利用による地域経済活性化の効果
5.1
効果の識別
木 質 燃 料 (木 質 バ イ オ マ ス 燃 料 )の 生 産 ・ 販 売 に 伴 う 主 た る 地 域 経 済 効 果 を 次 の よ う
に識別する。
①循環効果:需要側
例えば、木材チップを暖房用燃料として使う場合を考える。ガソリンスタンドで灯
油を購入すると、これはそもそも輸移入品であることから、購入金額のうちガソリン
スタンドでの付加価値部分以外は所得の域外流出となるが、バイオマス燃料の場合は
市内循環型のエネルギーであるためその購入額が市内所得として循環する。これはバ
イオ・ディーゼル燃料の場合も同様である。また、バイオマス利用のために必要とな
った原材料・サービス等の購入は、それが市内で調達されたものであれば調達先産業
の売上高増加や雇用増をもたらす。
②移出効果:需要側
バイオマスを利用した製品を市外に販売することで域外マネーを獲得する。これは
真庭市にとって新たな移出産業の創出を意味し、当該製品の移出需要は市内所得や雇
用を増加させることにつながる。
③生産性効果:供給側
農家が温室燃料を重油から木材チップの利用へ転換したとき、市外から購入する重
油よりも経済効率が優れていればバイオマス利用者のコスト削減となる。これは費用
関数の下方シフトを意味する。生産物の低価格での供給が可能となり、市場での需要
が増加し、市内総生産額が増加するであろう。これはバイオマス燃料利用による光熱
費削減も同様である。
5.2
分析のフレームワーク
実際の分析に当たっては、木質燃料部門分析用産業連関表の作成が必要になってく
る。木質燃料の市内循環や市外への移出は、真庭市産業の投入構造及び需要構造の変
化をもたらすことになる。本研究では、これらの市経済の構造変化がもたらす市内生
産額への影響を分析するとともに、他の産業部門への生産波及を含む経済効果の把握
を 行 う 。 こ の た め 、 調 査 で 作 成 し た 真 庭 市 2004 年 簡 易 推 計 産 業 連 関 表 に 対 し て 、「 木
質燃料部門」を新たに追加して、真庭市木質燃料部門分析用産業連関表の作成を行っ
た。
このような効果を産業連関表によって定量的にとらえる場合、図-2のように表す
ことができよう。上段からいくと、まず、林業部門と製材業部門から木質燃料部門に
木質原料が投入されることによる生産誘発効果。次に、石油製品部門からの投入が木
質部門からの投入に変化することによる投入構造の変化、石油製品の移入(輸入)が
減少することによる移入代替効果。そして、木質燃料の生産から生じる移出効果、と
なる。
8
図-2
バイオマス効果の産業連関表での考え方
需要
供給
農業
製材業
窯業
林業
木質原料
製材業
木質原料
石油製品
×
×
×
化石燃料
化石燃料
化石燃料
移出
木質燃料
移入
生産
誘発
生産
生産増加
生産増加
移入減少
投入構造の
変化
木質燃料
内生部門
バイオ燃料
バイオ燃料
バイオ燃料
バイオ燃料
移出の増加
中間投入の節減
付加価値部門
100%自給
生産増加
移入代替
付加価値
① 循環効果
木質燃料の市内循環では、図-2に示しているように、木質燃料部門が加わること
で真庭市産業の投入産出の技術構造が変化することになる。調査で作成した真庭市産
業 連 関 表 の 投 入 係 数 表 に は 、 2004 年 時 点 に お け る 真 庭 市 の 技 術 構 造 が 記 述 さ れ て い
る。本研究の分析のため作成した木質燃料部門分析用産業連関表は、木質燃料部門を
新しい産業部門として連関表に追加していることから、市内で木質燃料を購入する産
業部門(農業、製材・木製品、化学、窯業・土石等)において投入係数の変化が生じ
ている。その投入係数の変化は、木質燃料と化石燃料の1円当たりの熱量発生効率に
基づく代替率と木質燃料の購入額に従い、石油製品への投入係数の低下と木質燃料へ
の新たな投入の発生という形で現れる。我が国のように大きく経済発展を遂げた国で
は技術構造の変化が緩やかであることが知られているが、木質燃料の市内循環は、木
質燃料を購入する産業部門において化石燃料に対する木質燃料の代替という極めてド
ラステックな技術構造の変化をもたらす。
重要な点は、木質燃料の市内循環は、木質燃料を購入する産業部門における中間投
入パターンの変更をもたらすが、移入率の全く異なる産業間で代替が生じるため市経
済の移入構造の変化を伴い、たとえ真庭市経済に対してこれまでと同一の最終需要表
を与えた場合も、市内の産出量に変化が生じることである。より具体的に言えば、移
入 率 100% の 化 石 燃 料 を 自 給 率 100% の 木 質 燃 料 が 代 替 す る た め 、そ の 代 替 率 に し た が
って市内の木質燃料部門に対して生産が発生することになる(移入代替)。もし、木
質燃料が化石燃料と同様、市外からの移入に依存しているならば、技術構造の変化に
より木質燃料を購入する部門に生産性の変化は生じても、木質燃料の産出そのものは
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市内に発生しない。このように技術構造の変化が地域経済の移入構造の変化を伴い、
逆 行 列 係 数 表 [I - (I - M)A ] - 1 の 変 化 を 通 じ て 木 質 燃 料 部 門 の 新 た な 産 出 と 他 産 業
への生産誘発をもたらすことが、木質燃料の市内循環の重要性と考えられる。ここで
は、この経済効果を「循環効果」と呼び、効果の定量的把握を行っている。
②移出効果
真庭市の木質燃料部門は市内循環のための生産だけでなく市外への移出も行う。つ
まり、木質燃料部門の追加により、市経済の最終需要構造にも変化が生じる。この木
質燃料の移出増加に伴う市内産業の産出額の変化は、移出効果として逆行列係数表を
用いた産業連関分析により把握を行った。
なお、最終需要については、木質燃料部門の産出のいくらかは市内家計部門におい
て消費される。しかし、金額が他の経済効果と比較して無視できる程度であり、今回
の分析では省略した。
③生産性効果
①は、木質燃料の市内循環に伴ってパラメータである投入係数表が変化し、市の産
出額がどう変化するかをみる比較静学分析である。
一方、木質燃料の市内循環によって投入構造が変化するときは、木質燃料を投入す
る産業のアクティビティを支えている資本ストックの構成が、木質ボイラや木質ボイ
ラ用発電装置等、新しく追加された設備投資によって変化している。この意味で、木
質燃料の市内循環の分析は、投入係数の変化を体現している設備投資と関連した動学
分析の視点を持つ。
つまり、木質燃料の市内循環は、木質燃料を購入する市内産業にとって、資本設備
などの基本的生産要素の構成を変化させ、中間投入額を節約する技術革新をもたらす
と考えることができる。調査で資本蓄積の変化を把握するデータ収集を実施していな
いため、本研究では設備投資と関連付けた成長分析を行うことはできないが、設備投
資に伴う中間投入の節減額を生産性効果として算出した。
なお、木質ボイラ等の新しい設備投資が従来の生産技術に比べて資本集約的なもの
か、あるいは労働集約的なものかで中間投入係数の変化が生じるが、木質燃料を利用
するための設備投資は労働に対して中立的であると仮定した。
5.3
実証分析の結果
木質燃料部門分析用産業連関表を用い、表-2及び表-4で設定した真庭市におけ
る木質燃料の需要が、市の産出額及び粗付加価値額に与える効果を推計する。
①循環効果
木 質 燃 料 部 門 分 析 用 産 業 連 関 表 は 、2004 年 真 庭 市 産 業 連 関 表 の 最 終 需 要 表 を 与 え る
と、木質燃料の中間需要額がほぼ表-4の市内需要額である 3 億円となるよう逆行列
係 数 表 が 調 整 さ れ て い る 。つ ま り 、木 質 燃 料 の 市 内 循 環 が も た ら す 技 術 構 造 の 変 化 は 、
最終需要構造の変化がなくても木質燃料部門に対して 3 億円の中間需要を発生させ
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る。木質燃料は全量が市内で自給されるため、市内で新たに発生する木質燃料の産出
額も 3 億円である。この金額が循環効果における直接効果である。この際、産業連関
表上では、木質燃料により化石燃料が代替されて、石油製品の移入減が生じている。
木質燃料部門を追加したことによる逆行列係数表の変化は、木質燃料部門の中間投
入を経由して他の産業部門にも及ぶ。3 億円の木質燃料の産出増加がもたらす波及的
な 生 産 増 加 は 1 億 5700 万 円( 雇 用 者 所 得 の 増 加 に 伴 う 消 費 財 生 産 へ の 誘 発 効 果 を 含 む )
で あ り 、こ れ を 間 接 効 果 と し て 把 握 し た 。直 接 効 果 と 合 わ せ た 合 計 額 は 4 億 5700 万 円
に達する(表-5)。
な お 、木 質 燃 料 部 門 の 中 間 投 入 係 数 の う ち 最 大 は 林 業 の 0.40 で あ り 、間 接 的 な 生 産
誘 発 効 果 は 主 に 林 業 で 発 生 す る 。こ の こ と は 、真 庭 市 の バ イ オ マ ス 利 用 の 取 り 組 み が 、
も と も と 林 業・製 材 業 と い っ た 地 場 産 業 の 活 性 化 を 狙 い と し た こ と に 適 う 結 果 で あ る 。
ただし、現状では、木質燃料の市内循環は製材業で排出される端材、樹皮等の自家消
費が半分弱を占める。廃棄物の自家消費からは林業に対して生産波及が発生しないた
め、次の移出効果と異なり、生産誘発倍率が低くなっている。
循 環 効 果 に よ る 粗 付 加 価 値 の 増 加 額 は 、 直 接 効 果 が 4500 万 円 、 間 接 効 果 が 9000 万
円 で 、 合 計 1 億 3500 万 円 で あ る 。 直 接 効 果 に よ る 粗 付 加 価 値 額 の 増 加 が 小 さ い の は 、
製材業の自家消費額を木質燃料の生産コスト(林業からの原材料調達額は含まない)
により算出しているためである。
②移出効果
木質燃料部門分析用産業連関表の逆行列係数表を用いて、木質燃料の市外移出 3 億
4900 万 円 の 効 果 を 分 析 し た 。 結 果 、 直 接 効 果 3 億 4900 万 円 に 加 え て 、 間 接 効 果 が 2
億 5700 万 円 生 じ 、産 出 額 の 増 加 効 果 は 6 億 500 万 円 と 推 計 さ れ る 。ま た 、粗 付 加 価 値
額 の 増 加 効 果 は 、 直 接 効 果 と 間 接 効 果 を 合 わ せ て 2 億 2900 万 円 と な っ た 。
③ 生産性効果
熱効率に優れる木質燃料が化石燃料を代替することにより、木質燃料を購入する産
業(製材業における自家消費を含む)は中間投入の節約が可能となる。その節減額を
生産性効果として算出する。生産性効果の推計は以下の算式に従った。(木質燃料と
化石燃料の代替比は表-6の通り)
木質燃料の購入による化石燃料の中間投入減少額-木質燃料の購入額
= ( 木 質 チ ッ プ の 市 内 購 入 額 ×1.18+ 木 質 ペ レ ッ ト の 市 内 購 入 額 ×2.03)
-(木質チップの購入額+木質ペレットの購入額)
= ( 2 億 4000 万 円 ×1.18+ 6000 万 円 ×2.03) - ( 2 億 4000 万 円 + 6000 万 円 )
= 1 億 500 万 円
こ の 結 果 、木 質 燃 料 の 市 内 循 環 に よ り 技 術 構 造 が 変 化 し 、製 材 業 や 窯 業 、化 学 等 の
産 業 部 門 で 3 億 円 の 木 質 燃 料 が 購 入 さ れ る と 、 当 該 産 業 部 門 に お い て 1 億 500 万 円 の
中間投入額の節減が発生すると予想される。
以上をまとめると、①木質燃料の市内販売による効果(循環効果)は市内総生産ベ
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ー ス で 約 1億 3500万 円 ( 他 の 産 業 部 門 へ の 波 及 効 果 を 含 む 、 以 下 同 様 )、 ② 木 質 バ イ オ
マ ス 燃 料 の 移 出 効 果 は 約 2億 2900万 円 と な る 。図 - 3 は 3 つ の 効 果 を 棒 グ ラ フ で そ の 内
訳を示したものである。
図-3
粗付加価値ベースの循環効果と移出効果、及び生産性効果
直接効果
間接効果
45
90
循環効果
移出効果
135
直接効果
間接効果
102
127
生産性効果
229
105
0
50
100
150
200
250
(百万円)
表-5
循環効果及び移出効果による生産誘発効果
市内生産誘発額
粗付加価値誘発額
区分
直接効果
間接効果
総効果
直接効果 間接効果
総効果
① 循環効果
300
157(0.52) 4 57(1.52)
45
90
135
② 移出効果
349
257(0.74) 605(1.74)
102
127
229
注 )単 位 は 百 万 円 。括 弧 内 の 数 値 は 直 接 効 果 に 対 す る 倍 率 。間 接 効 果 に は 雇 用 者 所
得の増加に伴う消費財生産への誘発効果を含む。
表-6
木質燃料と化石燃料の代替比
木質燃料1
t に 相 当 す 平 成 16 年 化
木 質 燃 料 1t 石 油 燃 料 1L る 化 石 燃 料 石 燃 料 価 格
量
発生熱量
区分
①
②
③ = ① /②
④
木質燃料
価格
木質燃料 1 円
に相当する
石油の金額
⑤
⑥=
③ ×④ / ⑤
チップ→A重油
9000MJ/ t
39 .1MJ / L
230L
41 .71 円 /L
810 0 円 / t
1.18 円
ペレット→灯油
18 000MJ/ t
36.7MJ/ L
490L
49.72 円 /L 1 2000 円 / t
2.03 円
注)各原単位の算定根拠は以下の文献等を参考にした。
①:真 庭 市 資 料( 岡 山 県 真 庭 市 環 境 モ デ ル 都 市 提 案 書 )、N P O 法 人 循 環 型 社 会 研 究 会「 木
質バイオマスの利用技術の状況」
②:資源エネルギー庁「エネルギー源別発熱量一覧表」(平成13年3月)
④:石油情報センター資料より平成16年価格を算出した。
6.おわりに
市 内 の 木 質 バ イ オ マ ス 燃 料 の 移 出 は 3億 4900万 円 の 市 外 マ ネ ー の 獲 得 と な り 、そ れ は
2億 2900万 円 の 付 加 価 値( 所 得 )増 加 を 真 庭 市 に も た ら す こ と に な る 。こ れ は 、真 庭 市
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の GRP の 0.13%に 相 当 す る 。ま た 、石 油 製 品 か ら 木 質 バ イ オ マ ス 燃 料 へ の 代 替 に よ っ て
CO 2 の 削 減 効 果 は も と よ り 、 化 石 燃 料 の 移 入 が 減 少 し 域 内 資 源 の 利 用 で 域 内 循 環 が 生
ま れ る こ と で 、 地 域 経 済 の 自 立 性 が 高 ま る 。 移 出 効 果 の 70% に 相 当 す る 経 済 効 果 が 市
内で発生することがわかった。地域におけるバイオマス燃料の循環は環境対策に高い
効果を持つだけでなく、所得創出を通じた地域経済の活性化に大きく寄与する可能性
を持っているが、真庭市においては、今後、木質燃料の市内循環により付加価値の増
加を図るには、製材業の自家消費以外で需要開拓をすることが課題と考えられよう。
参考文献
地域経済構造分析を実施し、その結果に基づいて産業振興政策を立案したものとし
て、
中 小 機 構 基 盤 整 備 機 構『 安 来 市 の 産 業 振 興 政 策 立 案 に 係 わ る 調 査 報 告 書 』平 成 18 年 3
月 、( 調 査 主 体 は (財 )中 国 地 方 総 合 研 究 セ ン タ ー )。
中 小 機 構 基 盤 整 備 機 構『 出 雲 市 の 産 業 振 興 政 策 立 案 に 係 わ る 調 査 報 告 書 』平 成 19 年 3
月 、( 調 査 主 体 は (財 )中 国 地 方 総 合 研 究 セ ン タ ー )。
中 小 基 盤 整 備 機 構「 真 庭 市 の 産 業 振 興 政 策 立 案 に 係 る 調 査 報 告 書 」平 成 20 年 3 月 、
(調
査 主 体 は (財 )中 国 地 方 総 合 研 究 セ ン タ ー )。
地域経済循環に関する論文としては、
安 藤 浩 一・中 村 良 平「 地 域 経 済 循 環 と 地 域 間 取 引 の 関 係 に つ い て 」、地 域 政 策 調 査 、日
本 政 策 投 資 銀 行 地 域 政 策 研 究 セ ン タ ー 、 2006年 9 月 。
柴 田 浩 喜「 東 広 島 市 に お け る 都 市 経 済 の 成 長 分 析 」、広 島 大 学 経 済 学 部 附 属 地 域 経 済 シ ス
テ ム 研 究 セ ン タ ー 紀 要 『 地 域 経 済 研 究 』 、 第 16 号 、 2005
中 村 良 平「 地 域 経 済 の 循 環 構 造:序 説 」、岡 山 大 学 経 済 学 会 雑 誌 、第 3 6 巻 4 号 、39-67、
2005 年 3 月 。
中 村 良 平 「 新 産 業 創 出 に は 地 域 経 済 循 環 の 考 え を 」 、 経 済 産 業 ジ ャ ー ナ ル 、 16-18、
3 月 号 、 第 419 号 、 2006 年 3 月 。
中 村 良 平「 北 九 州 市 に み る 地 域 経 済 構 造 分 析 」、東 ア ジ ア へ の 視 点 、27-38、2008 年 3
月。
真庭市のバイオマス事業に関しては、
真 庭 市 「 真 庭 市 総 合 計 画 」 平 成 18 年 3 月
真 庭 市 「 真 庭 市 バ イ オ マ ス 利 活 用 計 画 書 」 平 成 18 年 3 月 。
真 庭 市 「 真 庭 市 バ イ オ マ ス タ ウ ン 構 想 書 」 平 成 18 年 4 月 。
岡 山 県 「 お か や ま 農 林 水 産 バ イ オ マ ス 利 活 用 マ ス タ ー プ ラ ン 」 平 成 17 年 3 月 。
真 庭 市 産 業 部 「『 バ イ オ マ ス タ ウ ン 真 庭 』 の 実 現 に 向 け て 」、 中 国 地 方 総 合 研 究 セ ン タ
ー 「 季 刊 中 国 総 研 」、 Vol.12-1,No.42、 2008 年
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