アドベンチャーゲーム アドベンチャーゲーム作成で学ぶアプリケーション開発

アドベンチャーゲーム作成
アドベンチャーゲーム作成で
作成で学ぶアプリケーション開発
アプリケーション開発
ベック
[発表者] 別宮 玲 (戸板女子短期大学)
[住所] 〒105-0014 東京都港区芝 2-21-17
[電話番号] 03-3452-4161
[Eメールアドレス] beck@mt.toita.ac.jp
1. はじめに
参考に「鍵を探すために別の場所に移動する」、
「鍵
携帯電話やゲーム機の普及で家庭の情報化が進み、
を持っているので使用する」などの次のアクション
誰でも情報技術(IT)を活用できるようになった。
を考える。
このような時代の流れから IT を活用する層(利用者)
このようにアドベンチャーゲームとはプレイヤーが
は増加したのだが、IT 業界で開発をする層(開発者)
起こすアクションとコンピューターの返すリアクシ
は依然として、元々IT への興味が高い理系志向の人
ョンの積み重ねで作るストーリーであるといえる。
間が多いように思われる。
このストーリーをあらかじめ作成するのが、アドベ
ンチャーゲーム開発のスタート地点であり、核とな
本研究ではアドベンチャーゲーム作成を通じて、IT
る作業である。
への興味の乏しい学生も IT 業界での活動に興味を持
アドベンチャーゲーム開発はその性質上、内部的な
ち、自分自身の将来の選択肢を増やすことを目的と
処理…プログラミング技術…以上に、その物語を重
する。
視することとなる。
またこれにより IT 業界へ進み開発に従事する人材が
特に「テキストアドベンチャー」と呼ばれるジャン
増えることも期待する。
ルはプレイヤーが入力する文字(テキスト)に対し
本発表では、その方法論と期待される効果について
コンピューターも文字を返すというだけのシンプル
述べる。
なものである。そのためグラフィック制御などの高
度な技術は不要であり、開発者はテキスト=ストー
2. 方法
リーの作成に集中することが出来る。
本研究ではその手段としてアドベンチャーゲーム開
このような点から、テキストアドベンチャーはプロ
発を用いる。
グラミング技術を持たない文系の学生が短期間で楽
アドベンチャーゲームとは、プレイヤーが主人公と
しみながら学習することに適しているといえる。
なり、
「隠された財宝を探し出す」
、
「閉じ込められた
部屋から脱出する」といった目的を達成するために、
今回の研究では、このテキストアドベンチャーゲー
目の前の状況に対する行動を選択するゲームである。
ムを素材とすることで、プログラミングへの苦手意
たとえばプレイヤーの目の前に扉がある。プレイヤ
識をもつ、あるいは一切やったことがない学生でも
ーはその扉に対して「扉を押す」
、
「ノブを回す」
、
「鍵
気軽に学習できる方法を用意した。
穴を調べる」などのアクションを行う。
設計には NotePad と MS-Excel を使用し、プログラミ
それらのアクションに対してコンピューターはあら
ングには Visual Basic 2005 を使用した。
かじめ用意されている「扉を押しても何も起きなか
また設計/プログラミング共にサンプルとテンプレ
った」、
「ノブは固定されている。別の手段が必要な
ートを講師側で用意しており、学生はこれらの流用
ようだ」
、
「鍵穴があった。なにか特殊な鍵が必要だ」
により容易な開発演習が行えるようになっている。
などのリアクションを返す。
プレイヤーはこのコンピューターのリアクションを
開発演習の手順は次のとおりである。
7)完成したゲームを他の学生に遊んでもらう
プログラムを他の学生と交換し、感想を聞か
せてもらう
サンプルプレイ
3. 期待される
期待される効果
される効果
ストーリーの作成
学生が自分自身で考えたストーリーがコンピュータ
ー上に再現されることで、ものづくりの楽しさを知
フローチャート作成
ることができる。
従来の IT に対する無機的な印象から、楽しいもので
あるとの印象へ、学生の意識が変わると思われる。
場面ごとの情報設定
特に文章を書くのは好きだが、コンピューターには
特に興味のない学生への影響は大きなものになると
プログラミング
予想される。
このように「IT 業界はものづくりの現場」であると
の認識を持つことができれば、学生たち自身の進路
デバッグ
への新しい可能性が開け、また新しいタイプの人材
供給による IT 業界の活性化も期待できる。
完成
図 1 開発演習フローチャート
4.
今後の
今後の課題
今回は文系の学生がプログラミングという作業をと
おしてモノを作る楽しさを体験し、その成果を友人
1)サンプルプレイ
に楽しんでもらうことで充実感を味わうことを着地
アドベンチャーゲームがどういうものかを知
点とした。
るために、講師側で用意したアドベンチャー
今後は、これらの作業が実際のシステム開発の現場
ゲームをプレイする
ではどのような意味を持つかをあらかじめ学習し、
2)ストーリーの作成
楽しみながら IT の現場の作業を体験できるようなカ
自分の考えるストーリーを文章化し、テキス
リキュラムを提供したい。
トファイルにする
また作成されたゲームを公開するためのサーバーを
3)フローチャート作成
自分の作成したストーリーをフローチャート
化し、全体の流れを明確にする
4)場面ごとの情報設定をする
フローチャート作成で切り分けられた各場面
で何が起こるのかを、設計テンプレートを用
いて明確にする
5)プログラミング
テンプレートを使用し、フローチャートと画
面ごとの情報設計を VisualBasic2005 でコー
ディングする
6)デバッグ
自分でゲームを実行しエラーが発生しないか
確かめる。発生するなら修正する
用意するなど、成果を楽しむ工夫も考えられる。