講演資料(PDF)

患者サポートにおけるメディエーターの関わり
患者サポ
トにおけるメディエ タ の関わり
~専任メディエーターの活動の実際~
九州厚生局主催
平成24年度医療安全に関するワークショップ
2012年11月22日
社会医療法人雪の聖母会
聖 マ リ ア 病 院
医療メディエーター
吉 本 譲 爾
joji-yoshimoto@st-mary-med.or.jp
本日の内容
1、自己紹介・聖マリア病院の紹介
1
自己紹介・聖マリア病院の紹介
2、医療メディエーションとは
3、医療メディエーションの流れ
4、医療メディエーションの効果と問題点
5 まとめ
5、まとめ
1、自己紹介・聖マリア病院の紹介
2、医療メディエーションとは
対立している患者・家族と医療者間双方の意見を聞き、対話
を促進させ、両者の橋渡し的な存在と言える。
を促進さ
、両者 橋渡 的な存在 言 る。
患者側
対話促進
家族側
橋渡し
医療者側
援助
援助
信頼
信頼
メディエーター
中立的介入
メディエーターの精神
「紛争当事者の主体性を尊重する『ケアの理念』
(一種のカウンセリング的アプローチ)」
メディエーターの特徴
中立的ケアの提供を通じて、対話を促進するも
のの、介入は控え、あくまで当事者の 自助能
のの、介入は控え、あくまで当事者の「自助能
力の回復援助」と「合意形成の援助」に徹する。
「医療コンフリクト・マネジメント~メディエーションの理論と技法」
和田仁孝・中西淑美著抜粋
なぜメディエーションが注目されるのか
~訴訟の代替としての調停~
訴訟の代替としての調停
• アメリカにて紛争解決の
アメリカにて紛争解決の一形態として発展
形態として発展
→当事者同士では解決できない問題の場合
(基本的には弁護士がメディエーター)
• 裁判によらない紛争解決の一手段
裁判
な 紛争解決
手段
規範根拠
メディエーター
(弁護士)
訴訟
仲裁
調停
合意根拠
当事者
当事者
交渉
自立性
権力性
法律上のメディエーションから
医療メディエーションへ
法律上のメディエーション
弁護士
(調停人)
医療メディエーション
医療メディエ タ
医療メディエーター
(医療対話仲介者)
対話
病院側
患者側
病院側
患者側
医療メディエーションのメディエーターは医療機関
職員である必要があり 厳密な意味での
職員である必要があり、厳密な意味での
中立的第三者ではない
なぜ裁判に満足していないのか
• 裁判制度の問題
(事実確認、争点整理、証拠調べ、鑑定等)
※患者側が明らかにしたい真実は出ない
患者側 明
真実
な
• 裁判では、基本的に白黒を決めるだけ
(過失責任主義の限界)敵対的二項関係
• 金銭賠償に限定
• 審理時間・費用が莫大
なぜ医療機関職員だけなのか
・弁護士法72条
紛争解決を含む法律業務の弁護士独占の規定
院外メディエーターの関与はこれに抵触のリスク
(唯一、ADR法の認証を受けた機関では可能)
※ADRとは、Alternative Dispute Resolutionの訳で
裁判外紛争解決と訳する
・ 裁判準拠型(医療ADR)
・ 対話自律型(医療メディエーション等)
IPI分析
I :ISSUE(問題)
当事者の問題なっている事案そのもの
P:POSITION(表面の主張・要求)
対立や意見の相違の原因となっているもの
I :INTEREST(本当に求めている欲求)
対立時のPOSITIONの元となっている根本的
な理由や動機 感情
な理由や動機・感情
3、医療メディエーションの流れ
一 次対 応
トラブル発生
現場対応
問題解決
メディエーターへ連絡
デ
絡
ニ次対応
患者側と1対1対応
病院側と打合せ
メデ
メディエーション・セッションの実施
シ ン セ シ ンの実施
問題解決
患者側との1対1対応
ーメディエーターの場合ー
①自己紹介(役割説明※中立性)
②傾聴と共感と共にIPI分析
③面談内容の確認(相違点)
④次回面談時の先方の希望の確認
(何を知りたいのか、誰と話したいか、など)
⑤次回面談の設定の上、迅速にご連絡すること
を約束
⑥お礼を述べて、面談終了
医療者側との打合せ
①トラブルになった内容の状況確認
②患者側の言い分を伝える
③双方の主張の相違点の確認
相手方への回答の確認
④
④次回面談の回答の確認と日程調整
面談の準備
・出席者
出席者
・部 屋
患者側
メディエーター
医療者側が多すぎないよう注意
静かな明るい部屋で机と
同じ形の椅子
椅
座る位置 右下図
・座る位置
・準備するもの
医療者側
ドア
録音機器・カルテ等
ホワイトボードなど
ホワイトボ
ドなど
メディエーションセッションの開始
①出迎えと準備
・約束時間前に入り口で患者さん側を迎える
約束時間前に入り口で患者さん側を迎える
・挨拶・自己紹介及び来院のお礼を述べる
・面談室へ案内
面談室 案内
・参加予定者の紹介、着席(患者側・医療者・
メテ ィエ タ )
メディエーター)
②メディエーターの挨拶と面談の開始
・メディエーターは再度自己紹介し
メテ ィエ タ は再度自己紹介し、役割を説明し、
役割を説明し
参加者の紹介を行い、面談の出席のお礼を
述べる
③今回の事案を患者側から話を始める
面談終了後の対応
1、来院と面談の御礼を改めて述べる
1
来院と面談の御礼を改めて述べる
2、患者側に時間があれば、今日の感想や
もっと知りたかった点など、今度の希望等
を聞く
患者さん側は思った事をなかなか言えない
3、帰宅後に聞きたいことや、今後の面談の
希望等はいつでも連絡して下さいと伝え、
希望等はいつでも連絡して下さいと伝え
電話番号(内線も)伝えておく
4、患者側を玄関まで送る
病院側と患者さん側の比較
病院側
患者側
診療は業務
診療は非日常
同じスタッフの中
患者 自
患者は自分だけ
治療は日常
自分の体に不安や心配をか
かえて来ている
診療の流れが見え
る
治療計画がある程
度見える
今後の治療方針が見えない
治療費や期間的なものも見え
ない
見えるもの全てが初めてのこと
るも 全 が初
4、メディエーションの効果と問題点
医療メディエ ション領域のシフト
医療メディエーション領域のシフト
時間軸
最近の活動領域
従来のメディエーター
の活動領域
事故発生
本来は紛争・事故の発生後の患者側・病院側の橋渡し、
また信頼関係の再構築が ディ
また信頼関係の再構築がメディエーターの活動領域で
タ の活動領域で
あった。最近は初期対応への応用など発生の抑制にも
活動 広 り、看護部門 管理者教育や外来担当者
活動が広がり、看護部門の管理者教育や外来担当者
教育などにも広がってきている。
【メディエーションにおける有効性】
① 患者側に真摯に向き合い、対話を繋げる手法として、
患者側に真摯に向き合
対話を繋げる手法とし
医療メディエーションを理解し、患者さんの気持ちにし
っかり寄り添い、じっくり聴く(聞くではない)という視点
かり寄り添い じ くり聴く(聞くではない)という視点
が不可欠。
②専従の医療メディエーターがいればいいというのでは
なく リ ダ となるメディエ タ を配置し 院内教
なく、リーダーとなるメディエーターを配置し、院内教
育などを行い、役割分担をし、病院全体にこうした発
想やマインドが浸透することで 日常診療やインフォ
想やマインドが浸透することで、日常診療やインフォ
ームド・コンセントなどの場面、クレームの初期現場で
構
の患者・家族との関係構築・修復が早期に可能となる。
③患者側だけのケアに焦点があてられるが、実際は現
場職員の相談を通して職員のケアも重要な領域。
医療メディエーターの配置の
医療メディエ
タ の配置の
形態と比較
態
較
大きく二種類に分類
①医療安全管理者が兼任で配置
主に看護師長 医師が少数
主に看護師長、医師が少数
②患者サービス部門のような部署
主に事務職が担当
病院側紛争対応者とメディエーター
病院側紛争対応者
紛
メディエーター
苦情処理
苦情対応(面談)
患者
患者への説明・説得
説
説
説
説明・説得は不要
説
面談に病院側担当
者としての参加
面談に中立的立場として
橋渡し役で参加
病院側見解の説明
対話の場の提供※対話促進
(病院見解の代弁はしない)
対話するのは医療者
争点の直接対話
中
立
※しかし紛争対応の中で中立性の問題はとても難しい
医療メディエーター配置の比較と問題点
医療従事者(RM等)
事務等
ICの補助としての説明
(中立性の問題)
性
医療に関する話は面談で
(中立性へ配慮)
性
慮
組織上の立場(管理職)
話を聞き、繋ぐことに専念
兼
任
専
任
他の業務との兼ね合い
(時間的な問題)
メディエーター業務に専念
メディエ
タ 業務に専念
(時間的な余裕)
他職種の理解
理解が得られにくい(誤解)
紛争解決へのリーダーシップ
紛争解決へ権限不足
トップの正しい理解と医療メディエーターの在り方への方針が
トップの正しい理解と医療メディエ
タ の在り方への方針が
その病院の医療メディエーションの方向性を決定する。
5、まとめ
5
まとめ
現状の問題点
患者への中立性への説明の問題点
紛争・トラブルとなればメディエーターという
院内の考え方との軋轢
紛争介入時のリーダーシップの問題点
患者側・病院側の過度の期待
患者と誰が向き合い 対話するのか
患者と誰が向き合い、対話するのか、
という誤解
メディエ タ の日々の活動内容
メディエーターの日々の活動内容
・現場や患者さん側からの依頼による面談
現場や患者さん側からの依頼による面談
・紛争案件のチェック
・受持ち案件の面談
・紛争状況の担当者との進捗確認
・事故後の検討会の参加
・解決案件のフィードバックと改善活動
解決案件
ドバ クと改善活動
・メディエーターの勉強会の開催
メディエ タ の勉強会の開催
コンフリクトマネジメントと
リスクマネジメントの協働
リスク
ク
マネジメント
コンフリクト
マネジメント
ご静聴ありがとうございました。
ご静聴ありがとうございました