【OP3】 全地連「技術e-フォーラム2007」札幌 慣れた作業に見えない危険 トキワ地研㈱ 1. はじめに ○嶋岡 博 ⑤ クラッチ操作:ヒヤリ・ハット体験は45%。被災体 ボーリング調査を主体とする現地調査では、運搬・機 は5%である。被災体験は経験年数10年未満では0%。要 材の搬入・仮設・掘削作業・撤収の繰り返しを2~3人 因は、 経験年数5~10年を除き不安全な行動によるが状 で行う小規模な現場が多く、現場に要する日数も比較的 態を上回る。 短期間であり、マンネリ化に陥ることもある。昨今の厳 ⑥ チャック操作::ヒヤリ・ハット体験は55%。被災 しい経済状況のもと作業効率を追求するあまり、思わぬ 体は5%である。被災体験は、経験年数5年以上で多い。 落とし穴に気づかないこともある。さいわい、ボーリン 要因は、経験年数を問わず「不安全な行動による」が グ作業現場での死亡事故は多くはないようですが、大事 「状態」を上回り、経験年数10年未満では「不安全な行 故に至らずともいわゆる「ヒヤリ・ハット:」はかなり 動による」が100%である。 あると思われる。 ⑦ ウォータスイベル:ヒヤリ・ハット体験は55%であ ボーリング調査に従事しているオペレーター・助手を るが、経験年数10年未満で30%以下、経験年数10年以上 対象としたアンケート調査をする機会があり、その結果 で60%以上とやや差がある。被災体験は唯一0%である。 を紹介する。 要因は、経験年数5年未満を除き「不安定な状態」が「行 動」を上回る。 2. アンケート ⑧ (1) アンケート内容 12%である。経験年数にかかわらず被災体験があり、経 ① 実施年月:平成16年4月 ② 実施対象:オペレーター、助手 合図など:ヒヤリ・ハット体験は45%。被災体験は 験年数を問わず「不安全な行動による」が状態を上回 88名(道内) ③ 対象項目:労働安全衛生法に関係するボーリング作 り、経験年数10年未満では「不安全な行動による」が 100%である。 業項目(移設作業・仮設・乱巻・ロッド落下・クラ :気象条件 ⑨状態・行動以外の要因(気象条件・体調) ッチ操作・チャック操作・ウォータースイベル及び によるヒヤリ・ハット体験は54%。 被災体験は8%である。 合図 体調不安定によるヒヤリ・ハット体験は42%。被災体験 ④ 設問内容:上記の作業中および状況における被災体 験の有無、ヒヤリ・ハット体験の有無、経験年数、 要因(不安全な行動(人間) ・不安全な状態(機器) )、 (2)アンケート結果 アンケート結果は図-1に示した。図-2は、特殊な要因 によるヒヤリ・ハット、被災体験を示した。 は5%である。 (3)アンケート結果のまとめ アンケート結果に見られる特徴 ① ヒヤリ・ハット体験:すべての作業項目でもおおむ ね50%以上であるが、 特に掘進時ではなく移設作業時で 高い。これは、急傾斜地などでの調査が多い北海道特 以下にアンケート結果を要約する。 有の傾向なのかもしれない。経験年数10年以上でやや ① 移設作業:ヒヤリ・ハット体験が75%で最も多く、 高い傾向が認められるが、経験が多いほど遭遇機会が 被災体験は5%。経験年数10年以上でやや多く、要因は 多くなることによるものと推定される。 「不安全な状態による」が多い。 ② 被災体験:ウォータスイベルに係わる項目以外で ② 仮設など:ヒヤリ・ハット体験は50%。被災体験は 4~15%である。チャック操作、ロッド落下および合図 4%であるが、経験年数10年以上で目立つ。要因は「不 で10%以上とやや高い傾向をしめす。これは、繰り返し 安全な行動による」が多いが、経験年数20年以上では、 行われる作業であり遭遇機会が多くなることによるも 「不安全な状態による」が行動を上回る。 のと推定される。 ③ 乱巻など:ヒヤリ・ハット体験は45%。被災体験は ③ ヒヤリ・ハット及び被災の要因:ウォータスイベル 5%。経験年数10年未満では20%以下であるが、経験年数 と乱巻で「不安全な状態による」 、それら以外の項目で 20年以上では60%である。被災は、経験年数10~15年 は「不安全な行動による」が高い割合を示す。その他 のみである。要因は経験年数10年未満で「不安全な行 (「状態」と「行動」の両方)とする作業項目もある。 動による」が100%、経験年数15年以上では「不安全な ④状態・行動以外の要因:気象条件では凍結による 状態による」が50%以上となる。 場合が多い。 北海道特有の傾向を示すものと思われる。 ④ ロッド落下など:ヒヤリ・ハット体験は60%。被災 体調不安定は過労や睡眠不足による場合が多い。工程 体験は15%で最も高い値を示す。要因は経験年数を問わ の厳しさを反映しているものと推定される。 ず不安全な行動によるが状態を上回る。 全地連「技術e-フォーラム2007」札幌 移設作業 気象条件 なし 20% 行動 状態 被災 5% H.H 75% 0~ 5~ 10~ 15~ 体調不安定 なし 38% 20~ 25~ H.H経験 54% なし 53% 被災 8% H.H経験 42% 被災 5% 図-2 その他の要因によるヒヤリ・ハット、被災体験 仮 設 状態 行動 なし 46% H.H 50% 0~ 5~ 10~ 20~ 15~ 3.まとめ アンケート結果でボーリング調査における普通の作業 25~ 被災 4% 工程(慣れた作業)でも、50%を越えるヒヤリ・ハット 体験、5~15%の被災体験があることが判明し、被災体験 乱 巻 はおよそヒヤリ・ハット体験5回に対し1回程度の割合とな その他 行動 る。この結果は裏返せば、慣れた作業であってもそこに 状態 は、見えない危険が常にあることを示していると考えら H.H 45% なし 50% 0~ 5~ 10~ 15~ 20~ 25~ れる。また、被災を伴う事故は不安全な行動(人間)と不 被災 5% 安全な状態(機械・器具)で発生するが、避けようとすれ ば避けられる。だが、繰り返されているのが現状ではない ロッド落下など その 他 でしょうか。また、被災を伴う事故の場合には、労働安 状態 なし 25% 全規則(第172条~第194条の3)に照らしあわせた検証や 行動 H.H 60% 被災 15% 0~ 5~ 10~ 20~ 15~ 安全管理が問われることになるが、それ以上に被災や経済 25~ 的な損害が大きい。 地質調査の現場作業における安全性の確保は、ボーリ ング作業従事者を守ることはもとより、地質調査業に課 クラッチ操作 状態 せられた重要な課題である。また、発注者に対する責務 行動 なし 50% H.H 45% 0~ 5~ 10~ 15~ 20~ である。 ボーリング作業における安全性の確保のためには、 「ヒ 25~ ヤリ、ハット」の段階に止まった経験とその要因を安全 被災 5% 対策の貴重な情報源とし、 「ヒヤリ、ハット」を生み出す チャック操作 不安全な状態や不安全な行動をなくす、いわば災害の芽 状態 を摘む活動が必要である。 行動 なし 35% H.H 55% 0~ 5~ 10~ 15~ 20~ 《参考文献》 25~ 被災 10% 1)全国地質調査業協会連合会編:ボーリングポケットブ ック,2003.8. ウォータスイベル なし, 45% その 他 2) 全国地質調査業協会連合会編:ボーリング作業のため 行動 状態 H.H, 55% 0~ 5~ 10~ 15~ 20~ 3)建設業労働災害防止協会偏:ボーリングマシン運転者 25~ 必携,1994.7. 被災, 0% 合図など なし 43% その他 状態 H.H 45% 行動 0~ 被災 12% 5~ 10~ 15~ 図-1 ヒヤリ・ハット、被災体験 20~ の安全手帳,1992.3. 25~
© Copyright 2024 Paperzz