インド知的財産制度と国家戦略 - 外国産業財産権侵害対策等支援事業

外国産業財産権制度セミナー
インド知的財産制度と国家戦略
大阪工業大学大学院知的財産研究科
山名美加
本日のお話し
1.インドの国情
2.インド特許法(1970年法)とは
3.インド特許法の改正
4.インドの課題(知的財産関連)
5.インド、知的財産立国に向けて
1.インドの国情
インドの国情
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„
面積:3,287,263km2(インド政府資料:パキスタン、中国
との係争地を含む)
人口:10億2,874万人(2001年国勢調査)
人口増加率1.95%(年平均:インド政府資料)
人種:インド・アーリヤ族、ドラビダ族、モンゴロイド族等
言語:連邦公用語はヒンディー語、他に憲法で公認されて
いる州の言語は17
宗教:ヒンドゥー教徒80.5%、イスラム教徒13.4%、キリ
スト教徒2.3%、シク教徒1.9%、仏教徒0.8%、ジャイナ
教徒0.4%(2001年国勢調査)
インドの国情
„
„
識字率:64.8%(2001年国勢調査)
略史:1947年 英国領より独立
1950年 インド憲法の制定
1952年 日印国交樹立、第1回総選挙
1950年代~コングレス党が長期間政権を担当
(但し、1977~1980、1989~1991年を除く)
1990年代 経済自由化政策の推進
1998年 インド人民党(BJP)を中心とする連立
政権が成立
2004年 コングレス党を第一党とする連立政
権が成立
インドの国情
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政治体制:共和制
元首:A.P.J.アブドゥル・カラーム大統領
議会:二院制(上院245議席、下院545議席)
政府:首相 マンモハン・シン
外相 マンモハン・シン首相が兼任
内政:第14回下院議員総選挙は2004年4月から5
月にかけて行われ、結果は大方の予想に反し、コン
グレス党が第一党に返り咲き、与野党が逆転。コン
グレス党を中心とする十数政党の連立政権、統一
進歩連合(UPA)政権(マンモハン・シン首相)が発
足。マンモハン・シン首相は左派政党の閣外協力を
得ながらも安定的に政権を運営。
インドの国情
外交基本方針:伝統的には非同盟、多極主義を志
向するが、近年、米国はじめ先進主要国との関係
強化。東アジア、ASEANとの関係を強化する「ルッ
ク・イースト」政策を推進。ロシアとの伝統的な友好
関係を維持し、中国との関係強化を促進。
„ 軍事力:
(1)予算 220億ドル(2005年度)
(2)兵役 志願制
(3)兵力 陸軍110万人、海軍5.5万人、空軍17万
人 (Military Balance 2005-2006)
信頼できる最小限の核抑止力の保持、先制不使用、
非核保有国への核兵器不使用、核実験の自発的な
停止等を内容とする核政策を採用。ミサイル開発は
継続。
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インドの国情
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主要産業:農業、工業、鉱業、IT産業
GDP:6,859億ドル(2004年:IMF資料)
一人当たりGDP:728ドル(2006年:
Economist資料)
GDP成長率:8.1%(2005年:インド政府資料)
物価上昇率:6.4%(2004年:インド政府資料)
外貨準備高:1,422億ドル(2005年11月:
インド政府資料)
インドの国情
„
主要貿易相手国(地域)
(1)輸出 米国、UAE、中国、シンガポール、
香港、英国、独(日本は第10位)
(2)輸入 中国、米国、スイス、UAE、ベルギー、
独、豪州(日本は第10位)
インドの国情(経済政策)
インドは独立以来、重工業を重視し、輸入代替工業化
政策を進めてきたが、1991年、外貨危機を契機とし
て経済自由化路線に転換し、産業ライセンス規制緩和、
外資積極活用、貿易制度改革、為替切り下げと変動
相場制移行等を柱とした経済改革政策を断行した。
↓
インドの国情
その結果、1990年代半ばには3年連続で7%を超え
る高い実質成長率を達成。2000年から2002年にか
けて国際原油価格高や世界経済の減速等の対外的
な要因の影響もあって、経済成長率は4~5%台に落
ち込んだが、2003年から再び高成長に転じ、2005年
度は8.1%の成長。
インドの国情
2004年に発足したマンモハン・シン政権は規
制緩和や社会的弱者救済等の基本政策に基
づき、農村開発や雇用対策に優先的に取り組
むとともに、外資規制緩和や国営企業民営化
等の経済自由化政策を継続している。
主要援助国
(1)日本 (2)英国 (3)ドイツ (4)米国
(インド政府資料)
日本からの経済協力(単位 億円)
(1)有償資金協力(E/Nベース)
1,554.58 億円(2005年度)
(2)無償資金協力(E/Nベース)
21.09億円(2005年度)
(3)技術協力実績(JICAベース)
9.97億円(2004年度)
インドへの対外直接投資の現状
インドへの対外直接投資は、2年連続で過去最
高に。2004年度には前年比25%増の53億ド
ルと2年連続で過去最高に。
日本の対インド投資の特徴
„
„
„
輸送機を中心とした国内販売向け投資。
日本からの対外投資全体の0.4%(対中国は4.
6%)進出企業数も380社(中国約5000社)
輸送機が全体の38%。進出企業の輸出比率が
8.4%と他のアジア諸国比で低水準。進出目的が
現地市場での販売にある。機械、製薬におけるイン
ドでの事業化も強化傾向。
インド経済自由化政策による規制緩和
ネガティブ・リストにより外国直接投資が禁
止・規制されている業種・形態、上限出資比
率がある業種、外国投資促進委員会(FIPB)
の個別認可が必要な業種などが規定。ネガテ
イブ・リストに該当しなければ外資出資比
100%までが自動認可される。
ネガティブリスト
I.国有企業に留保されている2業種
原子力、鉄道
II.1951年産業法により、ライセンス取得が義務付けられている産業
(1)アルコール飲料の蒸留および醸造
(2)葉巻および紙巻き煙草、および煙草の代用品
(3)航空用、宇宙用、および防衛用のあらゆる電子機器
(4)起爆装置、ヒューズ、火薬、ニトロセルロース、マッチなどを含む
産業用起爆物
(5)危険性のある化学製品
a.シアン化水素酸およびその誘導体
b.ホスゲンおよびその誘導体
c .イソシアン酸およびジイソシアン酸を含む化合物(イソシアン酸メチ
ルなど)
(6)1999年薬品法でライセンス取得が義務付けられている一部の薬品・
医薬品
小規模企業
(SSI:Small Scale Industries)の保護
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„
„
政府は土地および建物を除いた設備投資総額が 1,000 万ル
ピー以下の企業を小規模企業(SSI)と指定し、優遇税制
の適用や、低金利での資金貸付等をはじめとする各種優遇
措置により、その活動を奨励している。
SSIに対する外資24%超の出資は認められず、同上限を超
える場合には、たとえ投資総額が 1,000 万ルピー以下で
あってもSSIのステイタスは得られない。
また現在、繊維製品をはじめ、皮革、食品、化学品、機械、
製紙・印刷、金属、非鉄鉱物、電子機器などの特定品目
(現在506品目)が、SSIへ留保されている。SSI指定外の
企業がそれらの品目を製造することは実質認められておら
ず、製造する場合には産業ライセンスの取得と50%以上の
輸出義務が課される。
政府認可不要の通達
„
„
2005年1月12日付商工省通達では、既にインド企
業と合弁などの資本提携、技術提携契約などを結
んでいる(通達日時点)外資系企業が、同一業種で
新たな会社を設立する場合、他社と資本・技術提携
契約を締結する場合には、政府の事前承認を得る
ことが義務付けられている。
ただし、(1)投資者がベンチャーキャピタルファンド
である場合、(2)既存の合弁相手のシェアが3%未
満の場合、(3)既存の合弁もしくは提携による事業
が休止状態の場合については政府認可不要。
インドのIT産業輸出額の推移(年度、単位:億ドル)
2001
02
03
04
05
2010
(予想)
ソフトウェ
ア
62
71
92
122
132
ー
BPO
15
(IT関
連)
研究開 ー
発
総額
77
25
36
51
63
-
ー
ー
ー
39
ー
96
128
173
234
(出所)Nasscom&Industry report, Nasscom2006
600
インドIT・ソフトウェア産業の戦略転換
ソフトウェア→BPO(ビジネス・プロセス・アウト
ソーシング)等のバックオフィスサービス(IT関
連サービス)へ
業務文書の作成、財務、総務、人事、情報シ
ステム、コールセンター等、企業を支える事
務系業務を専門に受注する事業への転換
日本のIT企業の対インドアウトソーシング
„
インドのソフト輸出額に占める日本のシェア
低下(1996年全体の4%
→2006年全体の2%へ)
ただし、2005年度あたりから、東芝、日立
NEC、富士通等の大手ITベンダーが合弁事業
を立ち上げたり、現地開発センターを設立し始
めている。
ITに続く産業
・製薬産業
2005年度の特許法改正(物質特許制度の
導入)
・バイオテクノロジー
・医療
医療目的でのインド渡航者数は欧米・中東
諸国を中心に15万人(04年、前年比1
5%)。デリー病院は、米国医療施設の品
質基準認定機関JCIからゴールドシールを
受ける。
2.インド特許法(1970年法)とは
1970年法と1911年法の比較
発明に関する定義の明確化(第2条(j) )
・特許対象から外されるある種の発明を明確に規定(第3条)
・ある種類の化学物質を含む医薬に対する物質特許の廃止
(第5条)
・発明の明細書への記載に関してより厳格な要件を課した。
(第11条)
・新規性をサーチする範囲を、世界のどこかで刊行された出版物
の中にまで拡張(第13条(2))
・特許付与に対する異議申し立て理由を拡げた。(第25条)
・インド人の外国出願に関する情報取得のための条項をおいた。
(第39条)
・ある種のカテゴリーに属する先立った公開、通信及び使用を、
先使用と認めない(第29条―32条)
・国防を目的とする発明に関する秘密保持規定(第35条―42
条)
・
1970年法と1911年法の比較
・政府目的又は研究、研修生の教育を目的とする発明の使用に関
する規定(第47条)
・特許の共有に関する規定の詳細化(第50条-51条)
・特許の保護期間の短縮化(第53条(1))
・追加の特許権に関する規定の詳細化(第54条―56条)
・特許権の取消し理由の拡大化(第64条-66条)
・特許権の譲渡及び移転に関する要件の厳格化(第68条-70条)
・特許局長の権限の強化(第77条―81条)
・強制実施、実施許諾用意(licences of right)、不実施に基づく特
許権の取消しの要件の緩和(第82条―98条)
・政府収用を含む、政府目的のためにする発明の使用に関する
中央政府の権限の強化(第99-103条)
インド特許法(1970年法)とは
„
先進国に対峙する途上国の「モデル法」?
英国1949年法をモデルとしてN.R.Ayyangar判事を
委員長とする特許法改正委員会の報告書に基づいて草
案。
→特許制度の目的とその存在理由については英国貿易
委員会が1919年改正法案に関して提出した報告書
をそのまま引用。 (Shri Justice N. Rajagopala Ayyangar,
Report on the Revision of the Patent Law, Government of
India, New Delhi, 1959, p.11.)
インド特許法(1970年法)とは
インドの「特殊性」?(英国法との比較)
・不特許事由(第3条)
・製造方法のみが特許を受けることができる発
明(第5条)
・特許権の存続期間(53条(1))
・公益による特許の取消し(66条)
インド特許法(1970年法)とは
公益による特許の取消し(第66条)
「特許権又は特許権を行使する態様が国に有
害であるか若しくは一般に公益を害するもので
あると中央政府において認めるときは、中央政
府は特許権者に審問を受ける機会を与えた後、
官報にてその旨の公示を行い」当該特許を取り
消すことができると規定。
„
インド特許法(1970年法)とは
„
英国1883年法から1949年法まで、このよ
うな規定は存していない。「インド的」?
1624年専売条例は、原則違法とする独占が認められる条
件として、第6条において、「国内において商品の価格を釣り
上げたり、取引きを妨害したり、あるいはその他様々な不都
合を生ぜしめる等して、法に反したり、国家に害を与えないこ
と」を挙げ、それに反する特許は取消されると定めている。
インド的と称されるこの第66条について、インド特許法の権
威P.Narayanan曰く「英国専売条例の理念を踏襲したもの
に過ぎない。」
インド特許法と英国特許法
英国特許法の歴史自体、主にドイツをはじめとするヨーロッパ
諸国、さらには、米国の技術的脅威、それらの企業による特許
独占による弊害をいかに抑えて、自国の「公益」を考慮し、自国
産業の発展と競争力を図るのかという問題を常に内包して発展
してきたものであった。一方で、インド特許法の発展も、いかに
英国、ドイツ、米国系企業の技術の独占状態を打破し、「公益」
を考慮し、自国産業の育成を図るのかという課題の検討から始
まっていた。
→数多くの植民地を抱え、また、産業革命による技術力の裏付
けまで持つ英国と、その植民地として、主たる産業もなく、近
代化にようやく足を踏み入れたばかりの貧国インドの特許法
の目指す方向が、その時期、その理念において、意外な共
通項を内包していた。
Ayyanger報告書と1970年法
„
„
同報告書をもって、Ayyanger判事が試みたことは、決して
先進国、途上国故の問題の探求ではなかった。同報告書は、
先進国、途上国というよりも、むしろ、英国法を中心とする
ヨーロッパ諸国が中世から受け継いできた特許制度の有用
性を再度問い直し、経済発展の段階に応じた適用可能性の
探索こそを、何よりも、その主題に置いていた。
同報告書に基づいて、特許法改正法案が1965年に作成さ
れた。しかし、インド国内及び外資系企業の本国からの圧力
もあり、新法成立にはさらなる時間が必要であった。1967
年法案は、1970年8月19日議会でようやく可決され、9月
19日大統領の承認を得て、1970年特許法(1972年4月2
0日施行)として成立した。
Ayyanger報告書と1970年法
„
„
本報告書は、1960年代以降、G77として、
国際交渉の場で「発展する権利」を主張する
途上国の代弁者たる役割をインドが担う中で、
「先進資本主義国一般の特許法に対する見
直しを表明した途上国の権威的なリステイトメ
ント」とまで呼ばれるようになってしまった。
1970年法=途上国の「モデル法」へ
3.インド特許法の改正
(1999、2002,2004、2005年)
„
„
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„
„
„
絶対新規性の導入
進歩性の定義の追加
審査請求制度、公開制度の導入
不特許事由に関する定義の一部変更
特許付与前と付与後における異議申立制度の導入
権利存続期間の変更
ボーラー条項の導入
抗告部(Appellate Board)の設置
特許取消理由の追加
排他的販売権(EMR)制度の廃止
物質特許制度の導入
物質特許制度の導入
„
第5条「食品、医薬品、薬品又は化学物質を
クレームする発明については、かかる物質を
製造するための方法又は工程にのみ特許が
付与される」が削除。
→物質特許制度がインドにおいても遂に導入さ
れた。
物質特許制度の導入
„
„
インド特許法第5条=「模倣の上の繁栄」と揶揄され
ながらも、インドを世界中に安価な医薬品を供給す
る製薬大国に押し上げた条文。
第5条によって、独自の製造方法を開発さえすれば、
あらゆる製品と同じ成分の製品を製造することがで
きるため、インドでは研究開発費にさしたる投資を
行わずにあらゆる医薬品が製造され、その輸出の7
0パーセント近くを途上国市場に出してきた。
後発医薬品産業の保護
メールボックス出願に対する後発医薬品の保護
2005年改正においては、後発医薬品業者が、「かなりの投
資」を既にしており、2005年1月よりも前に、製造及び販売を
行っている場合に限定して、後発薬品製造業者が、引き続き、
メールボックスにある新薬の後発薬品を生産し続けることを認
める規定を設けた。(11条A)しかし、後発製造業者は、「合理
的な実施料」を特許権者に払わなければならない。ここでいう
「かなりの投資」、「相当な実施料」は、紛争の争点となりうる懸
念があるが、製造を引き続き行えるという意味では、既存の後
発製造業者に配慮した規定であると考えられる。
„
後発医薬品産業の保護
„
„
2005年改正では、11条A(7)で、特許権者は出願
公開日にまでさかのぼって、損害賠償を請求するこ
とを認めている。
しかしながら、但し書きで、メールボックス出願に関
しては、そのような損害賠償請求が認められないこ
とが規定されている。メールボックス出願に対して与
えられる特許権の効力は弱いものであるとの批判
がある。メールボックス出願を不利なものとして扱う
条項であるとされれば、技術分野による差別的取扱
いを禁じるTRIPs協定27条との整合性が問題?
並行輸入
„
„
並行輸入については、「特許権者の正当な許諾の下
で、特許製品を販売又は頒布する者からの特許製品
の輸入は侵害行為に当らない」(第107条A(b))と定
めていたが、2005年改正法においては「特許権者の
正当な許諾の下」という文言が削除され、「合法的」に
製造・販売されたものであることのみを、並行輸入を
認める要件とすることにした。
他国における強制実施権の許諾により、合法的に製
造を認められた者や、対応特許の存在しない国の製
造業者からの輸入も認められることとなった。
並行輸入
„
„
特許の国際消尽を認めるかどうかという問題は、
TRIP協定においても、各国に委ねられた問題と
なっているが、それを条文にて明確にしている国は
非常に少ない。インドは、本改正において、消尽の
原則を明文化。
この改正により、インドの製薬企業が、物質特許制
度導入を2015年まで猶予される後発途上国へと
拠点を移し、あるいは、強制実施権が許諾された他
国から、製品をインドへ輸入してくることも可能であ
ろう。
強制実施権制度
„
実施許諾用意制度(License of Right)の廃止
「公衆の合理的な需要の充足」、「特許発明の合理的な価格で
の入手可能性」が満たされない場合、中央政府は、特許証捺
印の日から3年の期間満了後に、局長に対して当該特許権に
「実施許諾用意」の文言を標記するべき旨の請求を行うことが
でき、そして、局長が、標記にあたっての要件が満たされている
と判断した場合には、特許権に「実施許諾用意」の文言を標示
すべき旨の命令を行うことができる「実施許諾用意」(強制実施
権の一形態)という制度の廃止。 TRIPs協定第27条1項に定
めのある技術分野における差別の禁止と、強制実施権設定に
あたっての条件を定める第31条からみて、インドにおける強制
的な「実施許諾用意」は問題があると見ての削除。
強制実施権制度
„
„
強制実施権の申請に関わる手続きを早めるための改
正、2001年11月のドーハ宣言(TRIPs協定と公衆
衛生に関する宣言)を受けての改正。
TRIPs協定31条(f)では、強制実施権は、主として強
制実施を許諾する加盟国の国内市場への供給のた
めに許諾されるとなっていた。→そうなると、輸出が認
められないため、医薬品の製造能力のない諸国は、
当該医薬にいつまでたってもアクセスできないという
問題が生じていた。
強制実施権制度
„
„
これに対しては、WTO一般理事会も、2003年8月、一定条
件を満たせば31条(f)の協定義務を免除できるとの決定を
行い、医薬品製造能力のない国においても医薬品アクセス
への道を開いた。世界各地に後発医薬品を輸出し続けてき
たインドも迅速にこれに対応。まず2004年改正令において、
製造能力のない国に医薬品を輸出する目的においても、強
制実施権許諾請求を行うことができるという第92A条特許法
に導入。
しかし、その場合、輸出者は、輸入国においても強制実施権
許諾を得なければならないとするものであった。だが、輸入
国において、対応特許が存在しない場合、つまり、強制実施
許諾を得る必要がない場合の対応については、定めがなく、
問題とされていた。これに対応して、2005年度改正では、
輸入国が「通知、その他の形でインドからの特許医薬の輸入
を許可している場合」も、第92条Aの適用を可能とした。
4.インドの課題(知的財産関連)
(1)模倣品問題
„
模倣品被害は年額100億ルピー
(Anti-Counterfeiting Group of India 2002)
・ニセ薬
・ソフトウェアの海賊版
→模倣品に対しては、著作権法および商標法に
おいて、刑事上の救済が認められる他、医薬品、
化粧品、食料については医薬・化粧品法(Drug
and Cosmetic Act 1940)、食品粗悪化法(Food
Adulteration Act 1954)による罰則が有る。
ソフトウェアのパイラシー率及び損害額
Business Software Alliance, Piracy Study 2005
国名
インド
パイラシー率(%)
1997
2004
69
74
損害額(百万米ドル)
1997
2004
185
519
中国
96
90
1,449
3,565
米国
27
21
2,780
6,645
世界平均
40
35
11,440 32,695
インドにおけるコンピュータ・プログラムの保護
„
1957年著作権法がTRIPs協定の基準を満たすよ
うに1994年改正。コンピュータ・プログラムの定義
規定が導入。
・言語の著作物にはコンピュータ・プログラム、コピュータにて
作成された表やコンピュータデータベースを包含した編集物
を含むと定義。(第2条)
・コンピュータ・プログラムが不正コピーであることを知って使
用した場合には、3年以下の禁固及び20万ルピー以下の罰
金、又はその双方を課すことが可能となる(第63条)
インド特許法にコンピュータ・プログラムの保護
インド特許法3条(k)により、「コンピュータ・プログラ
ム」は特許の対象から除外。
2004年の改正令では、産業への「技術的応用」
が可能なソフトウェア又は「ハードウェアと組み合わ
された」ソフトウェアは特許可能であるとなった。
↓
しかし、その後、市民団体やフリーソフトウェア運動
家の反発により、2005年改正法においては、同規
定は削除されるに至った経緯。
侵害に対する対策
特許・意匠
民事上の救済のみ。侵害訴訟について管轄を有
する裁判所とは、被告の居住地、又は訴訟原因
の発生した土地、例えば侵害品が販売された場
所を管轄する地方裁判所以上の裁判所。州に
よっては、訴額によって高等裁判所に提訴可能。
(デリーでは200万ルピー以上)
„
→差止め、損害賠償、不当利得の返還請求(1970年
特許法108条)
→差止め、損害賠償請求(2000年意匠法22条)
侵害に対する対策
„
商標
民事、刑事上の救済可能。管轄裁判所は、原
告の居住地もしくは商業活動地を管轄する裁
判所。
→差止め、損害賠償、不当利得の返還請求、
侵害ラベルの引渡し、資料提出、証拠・資産
の保全措置(1999年商標法135条)
侵害に対する対策
商標
・刑事上の救済
刑事手続き法156条(3)に基づき、警察が捜査を行
うよう命じる捜査令状の発行を権利者が管轄権を有
する下級裁判官に直接提出するか、管轄の警察署
に訴え出る。商標法115条(4)に基づき、副警視以
上の警察官は、商標登記官から商標権侵害である
との見解が得られた場合には、裁判所からの捜査
令状なしで、捜査を行い、侵害品、侵害品製造に使
用した設備の差し押さえ、下級裁判官に事件を提出
する権限が付与されている。
„
侵害に対する対策
„
詐称通用に対する救済
被告の商品がそれによって表示され、構成され、記
載されているがために、一般的な購入者を誤認させ、
被告の商品を原告の商品と取り違えさせることが予
想されるということ。
=誤認または混同を生じさせるおそれがあるという
こと。
(Ellora Industries Vs. Banarsi Das Gupta
AIR 1980 DEL 254)
侵害に対する対策
„
„
„
著作権
民事と刑事上の救済可能。侵害訴訟につい
ての管轄権を有する裁判所としては、権利者
の住所地、事業地もしくは利益のために従事
している場所を管轄する裁判所(著作権法6
2条(2)。
著作権侵害については、侵害の差止め、損
害賠償、不当利得返還、侵害物品の引渡し
(1957年著作権法55条)。
侵害に対する対策
„
„
警察は著作権侵害については令状を取得す
ることなく、調査と差押さえを行う権限を有す
る(著作権法64条)。
著作権侵害品の所有権は、著作権者にある
(著作権法66条)。裁判官は被告が起訴され
ているか否かに拘わらず、差し押さえた物品
が侵害品であると判断する場合は、権利者
へ引き渡しを命ずることができる。
侵害に対する対策
„
水際対策(1962年税関法11条の下、政府は一定
目的で、製品の輸出入に制限を加え、あるいは禁
止する権限を有する。)
・商標権侵害物品については商標権者が税関に対し
て侵害物品の輸入差し止めを請求できる。
・著作権についても、著作権局に対して輸入差し止
命令を発する権限が規定。
*水際での取り締まりは、ほとんどに行われず。
The Anti-Counterfeiting Group(ACG)
„
„
2002年に英国に本部を置く、国際的な反模倣品ロビー団
体The Anti-Counterfeiting Group(ACG)のインド支部
(インド最高裁判所元判事をインド支部長、元弁護士会会長、
元警視庁長官等を役員とする)が組織されて以降は、同支
部中心に、模倣品撲滅に向けての各種のフォーラムが積極
的に開催され、インド政府にもより効果的かつ迅速な取り締
まりを行うように働きかけを行う等の活動が活発化 。
1980年に模倣品問題に悩む18の企業によって組織された
団体で、現在世界30カ国200以上の企業の利益を代表し
て、模倣品撲滅に向けての国際的なネットワークに基づく
データベースの作成や、各国政府、国際組織における政策
立案に対してロビー活動を行っている。
<http://www.a-cg.com/about_guest.html>
ジェトロ・インド知的財産ワーキング・グループ
進出日系企業を対象とした模倣被害アンケート(06年9月実
施)の結果、有効回答数38社のうち「模倣被害がある」と回答
企業は合計20社以上。
↓
知的財産権問題をテーマとする双方向性の会合。参加企業間
で情報や問題点を共有するとともに、共同で模倣被害への対
策を検討、将来的には、インド関係機関(政府・取締り機関)と
の関係構築・改善申し入れ等において、一企業では実現できな
い成果を得ることを目的とする。
<ジェトロニューデリー>
(2) 知財重視政策の推進
インドの大学による出願件数
(TIFAC資料)
1995年
1996
35 件
29
1997
1998
38
50
合計
152
インドにおける出願の推移
(1970-1999年) (インド特許庁資料)
9000
8000
Number of Applications
7000
6000
5000
Domestic
Foreign
4000
3000
2000
1000
0
19
7071
19
7576
19
8081
19
8485
19
8586
19
8687
19
8788
19
9889
19
8990
19
9091
Year
19
9192
19
9293
19
9394
19
9495
19
9596
19
9697
19
9798
19
9899
インド主要企業の特許出願件数の推移
Fig u r e 4 : P a t e n t A p p lic a t io n s b y S e le c t e d Do m e s t ic Fir m s , 1 9 9 5 - 2 0 0 1
1995
700
666
1996
1997
600
1998
1999
500
2000
2001
400
To ta l
300
200
113
105
95
100
61
54
41
41
0
Hin d u s ta n L
Ra n b a x y
Cip la
Da b u r
Ta ta
L u p in L a b
Pa n a c e a
B io
L a ks h mi W
TIFAC (1998 updated 2002), Database on Patent Applications Filed in India
主要な外資系企業の出願件数の推移
(TIFAC資料)
Figure 5: Pate nt Application by Se le cte d M ultinational Firm s , 1995-2001
1000
1995
903
1996
900
1997
800
1998
1999
700
2000
2001
600
Tot al
500
448
400
300
200
100
342
„
Source:
Calculated
from261
TIFAC 139
(1998 updated 2002),
Database
on
Patent
Applications Filed in India
222
0
Nest le
Siemens
Du Pont
Dow
B ayer
Pf izer
CSIR (Council of Scientific and Industrial Research)
における特許出願件数 (1992-99年)
600
(CSIR資料)
Number of Applications
500
400
300
200
100
0
1992-93
1993-94
1994-95
1995-96
Year
1996-97
1997-98
1998-99
(3)「財産的情報」の保護と知的財産制度
これまで「情報」は有体物中心の近代法・現代法
おいては「公共財」的な扱いをうけ、法概念としては
認知されてこなかった。
↓
しかし、「財産的価値」を高めた情報の「囲い込み」
が始まる。 「財産的価値」を高めた情報が、知的財
産と法的にはかなり共通した性質を持ち始める。
「財産的情報」の保護と知的財産制度
„
「営業秘密」
この法律において「営業秘密」とは、秘密とし
て管理されている生産方法、販売方法その
他の事業活動に有用な技術上又は営業上の
情報であって、公然と知られていないものを
いう。(不正競争防止法 第2条4項)
「財産的情報」の保護と知的財産制度
営業秘密
情報
財産的情報
生物資源・伝統的知識
知的財産
「財産的情報」の保護に関わる制度の構築
„
„
知的財産権を生み出すにあたって先住民の知識や、
各国の遺伝資源といった「情報」が利用されている場
合、その情報を利用した成果物に対しては、現在の知
的財産法制により、利益回収のメカニズムが認められ
ている。しかし、「情報」を提供した側には、何ら利益配
分の途がない。
それまで価値が問われることのなかった「情報」までも
が、財貨を高め、知的財産権として囲い込まれうる対
象となった現代、製造業における発明の保護を中核
に発展してきた知的財産法制では、カバーしきれない
財産的価値を高めた対象をどう保護するのか、その
「財産的情報」から生じる利益配分をどう考えるのか。
生物資源・伝統的知識(TK)をめぐる紛争
„
„
„
„
„
ターメリック(うこん)
ニーム(インドセンダン)
アヤワスカ
ジーバニ
スモークブッシュ 等々
→ 古くから利用されてきた薬草に関する米国特許の
有効性、利益配分のあり方を問うケースが多発。
TKは知的財産権で保護できるのか
特許要件
(1)新規性 (Novelty)
(2)非自明性 (Non-obviousness)
(3)有用性 (Utility)
„
現在の知的財産法制は、私的財産と個人のイノベーションをい
かに保護するかという理念の上に形成。集団的な知識の創造
と伝承を重んじ、文章化よりも口承で何世代にもわたって伝え
られてきたTKを保護するための制度としては、知的財産法制
は機能しにくい。
ターメリックの事例
„
„
„
Curcuma longa,
haldi,ウコン
黄褐色の根茎をもつ
ショウガ属の多年草。
インド亜大陸において
は、古くから化粧品、染
料、医薬(傷、発疹の治
療薬)として利用。
„
先進国企業による遺伝資源・TKの「囲い込
み」(権利化)
→インドの研究機関(CSIR)が、米国特許の
有効性を争った最初のケース
→途上国政府、研究機関、世界のNGOを
巻き込む紛争へ
ターメリックの事例
„
„
„
„
„
„
傷治療におけるターメリックの利用(Use of
turmeric in wound healing)
米国特許 5,401,504
発明者 Suman K. Das, Hari Har P.
Choly
譲受人 ミシシッピー大学メディカルセンター
特許出願日 1993年12月28日
特許付与日 1995年3月28日
ターメリックの事例
„
インド最大の国立研究機関CSIR(Council
for Scientific and Industrial
Research)が、「先行技術」の存在に基づい
て、1996年10月28日、6つのすべてのク
レームの有効性に対して再審査を請求。
ターメリックの事例
„
„
CSIRは、ターメリックが数千年に及んで、傷や発疹
の治療薬として使われてきたことを示す古代サンス
クリット語の文献と、1953年にIndian Medical
Associationが発行した雑誌等32に及ぶ文献を提
出、当該発明が特許要件としての「新規性」を満た
すものではないと主張。
米国特許商標庁は、CSIRから提出された文
献に基づき、当該特許を無効とした
ニームの事例
„
„
Azadirachta indica
インド原産の常緑樹、熱帯、亜熱帯地域に植
生。インド亜大陸では古くから穀物、経典、神
仏具、衣類等の害虫除けとして利用。葉は、
殺菌・防虫用、種子は皮膚病などの医薬とし
て、枝は歯ブラシとして日常的にも利用。
ニームの事例
„
„
1980年代以降、欧米でニームの実の抽出
液に含まれるアザジラクチンに防虫効果があ
ることが明らかになり、減農薬素材として注目
され始める。
ニームに関して数多くの特許が申請され始め
る。
ニームの事例
„
„
„
„
„
„
„
貯蔵安定なアザジラクチン配合物(Storage
Stable Azadirachtin Formulation)
アザジラクチンを活性成分として含有する貯蔵安定
性の殺虫剤に関する特許
米国特許 第5124459号
発明者 Charles G. Carter他
譲受人 W.R.Grace社(米国)
特許出願日 1990年10月31日
特許付与日 1992年6月23日
ニームの事例
„
„
„
„
„
„
疎水的に抽出したニーム油を用いる植物上
の菌類の制御方法(Method for
controlling fungi on plants by the aid
of a hydrophobic extracted neem oil)
欧州特許 第0436257号
発明者 James C. Locke他
譲受人 W.R.Grace社(米国)
特許出願日 1990年12月20日
特許付与日 1991年3月19日
ニームの事例
„
„
1994年 ニーム・キャンペーンが展開。世界45カ
国225のNGOなどがインドの伝統的な抽出方法と
特許された方法が異なるものではないとして、特許
性を争う姿勢を見せる。
米国特許 第5124459号については、1998年
米国特許商標庁は特許性を肯定。欧州特許第
0436257号については、2000年欧州特許庁は、
新規性及び非自明性を欠くとして特許を取り消した。
“bio-piracy”(生物資源の盗用行為)
“bio-piracy”
①遺伝資源保有国の事前の同意なく、資源にアクセス
し利用すること →利益配分が行われない。
②当該遺伝資源に関連する発明について、先行技術
が存在しており、本来特許になるはずではなかった
にもかかわらず、特許を取得すること →勝手に独
占されることに対する危惧。
インドにおける“bio-piracy”対策①
„
TKDL (Traditional Knowledge Digital Library)
目的:
インドにおいて既にパブリックドメインに置かれている新規性の
ない発明に対して国外で特許が付与されることを防ぐこと。200
2年度までに、1180万ルピーを投じて、医薬に関する伝統的シ
ステムの文章化(14のアユールベーダの文献から摘出された3
5000の処方の翻訳の文章化)がほぼ完成。英語、ドイツ語、フ
ランス語、日本語、スペイン語(将来的には30の言語)に翻訳。
TKDL
(Traditional Knowledge Digital Library)
„
Ayurveda以外の伝統的な医学用法であ
る、UnaniやSiddha, Yoga,
Naturopathy等の体系についても同様に
TKDLに組み込むべく作業開始。
TKDL
(Traditional Knowledge Digital Library)
„
„
最終的目標:薬草とその伝統的知識を分類し、世
界の特許審査官に検索可能なデータベースとして
提供すること。そのために、世界の特許審査官が
審査の際に参照することができるようにIPC(国際
特許分類)ともリンクづけできる4500の生物資源・
伝統的知識に関する分類方法(Traditional
Knowledge Resource Classification: TKRC)
の確立を急ぐ。
インド政府は、2001年2月のWIPO(世界知的所
有権機関)のIPCに関する専門家委員会の特別連
合会で、既にその構想と体系については発表を行
い、同連合会は、既にTKRCに関する研究を行う委
員会を設けることに合意している。
インドにおける“bio-piracy”対策②
ー生物多様性法(2002年)ー
目的
(i)生物資源及び生物資源に関連する知識の使用から
生じる利益の衡平な配分を達成する目的のために、
国の生物資源へのアクセスを規制する。
„
(ii)生物多様性を保全し、持続可能に使用する。
(iii)生物多様性に関連する地域社会の知識を尊重し保
護する。
(iv)生物資源の保全者並びに生物資源の使用に関す
る知識及び情報の保有者としての地域住民との利益
配分を確保する。
インドにおける“bio-piracy”対策②
ー生物多様性法(2002年)ー
(v)生物多様性の観点から重要な地域を生物多様性
遺産と宣言することにより、その地域を保全し開発
する。
(vi) 絶滅に瀕している種を保護し回復する。
(vii)委員会の設置を通じて法律の実施の広いスキー
ムにおいて自治体を関わらせる。
生物多様性法による規制
„
外国人・外国居住者による生物資源又はそ
れに関する知識へのアクセス規制(第3条)
→国家生物多様性庁の事前の承認がなけれ
ば、研究又は商業的利用又は生物調査及び
生物利用を目的として、インドにある生物資
源又はそれに関する知識を獲得できない。
生物多様性法による規制
„
発明についての知的財産権の出願制限(第6
条)
→インドから取得された生物資源に関する研究
又は情報に基づく発明については、インドに
おいて又は外国において、いかなる名称のも
のであるかを問わず、国家生物多様性庁の
事前の承認を得ずしては、知的財産権を出
願することはできない。
生物多様性法による規制
→国家生物多様性庁は、承認を与える際に、
利益配分の料金若しくはロイヤリティ若しくは
その両方を課すこと、又は権利の商業的利
用から生じる財政的利益の配分を含む条件
を課すことができる。
インドにおける“bio-piracy”対策③
ーインド特許改正法(2002)ー
„
„
„
生物素材を含む特許については、明細書において、
生物素材の出所を明示しなければならない。(第10
条4項)
生物素材の出所が明細書に書かれていない場合、
国内の地域社会あるいは先住民社会において、利
用可能になっているところの知識に鑑みて、新規性
がないと判断された場合、特許付与に対する異議
申立ができる。(第25条)
生物素材の出所の不表示・虚偽表示の場合、特許
は取消される。(第64条)
「財産的情報」に関わる法的拘束力ある国際的
制度をめぐって
・2003年12月1-4日
第2回 アクセスと利益配分作業部会
先進国、途上国の意見が対立。
・2004年2月9-20日
生物多様性条約第7回締約国会議(COP7)
で交渉再開。
法的拘束力のある国際的制度をめぐって
„
COP7では、遺伝資源の適切な利用と、それに伴っ
て生じる利益の公正かつ衡平な配分を確保する国
際的枠組み(International Regime)のあり方に
ついて議論。国際的枠組みの可能性の一つとして、
特許出願時に、遺伝資源又は関係する伝統的知識
の原産国を海事することについて、遺伝資源アクセ
スの事前の同意(PIC)や原産国の国際証明
(Certification of Origin)の取得が検討。法的拘
束力の有無も含め、検討結果はCOP8で報告(20
06年ブラジル)。→しかし、具体的な動きはみられ
ず。
原産国の開示についての各国の意見
日本
米国
出所開示に反
出所開示に反
対(特許制度の 対(契約の問
趣旨)
題)
„
欧州
アフリカ・
グループ
ブラジル・
インド
出所開示の義
務化(条件付き
で賛成)
出所開示の義
務化(TRIPs
出所開示の義
務化
協定改正)
(出所開示=
無効理由)
加藤浩「知財政策と環境の調和に向けてー生物多様性条約と特許法ー」発明
Vol.102. No.9(2005年)
出所開示に関する特許法改正動向
ノルウェー
デンマーク・
スウェーデン
スイス
インド
出所開示の
義務化
出所開示の
義務化
出所開示の
義務化
出所開示の 出所開示の
義務化
義務化
・原産国不知の場
合には出願の中
でその事実を示す
・特許の有効性に
は影響しない
・原産国不知の
場合にはその旨
を出願に記載す
る。
・原産国不知
の場合にはそ
の旨を宣言す
る。
・出願開示に ・出願開示に違
違反する場合、 反する場合、特
特許取消。
許取消。
„
ブラジル
加藤浩「知財政策と環境の調和に向けてー生物多様性条約と特許法ー」発明Vol.102.
No.9(2005年)
5.インド、知的財産立国に向けて
「知的財産権制度における理想の形は、技術
者個人のインセンティブと公衆の利益とのバ
ランスを保ち、かつ最大限の技術革新をもた
らすことのできる偏りのない制度であるべき
だ。この新しい制度がそのバランスを兼ね備
えていると確信している。」(マンモハン・シン
首相第92期国会開会演説 2005年1月3
日)