第 24 回 日本逆流性腎症フォーラム

第 24 回
日本逆流性腎症フォーラム
Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
プログラム・抄録集
会長
郭 義胤
福岡市立こども病院
腎疾患科
会場
九州大学医学部百年講堂
会期
2016 年 2 月 6 日(土)
大ホール
Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
ご 挨 拶
第 24 回日本逆流性腎症フォーラム
会長
郭
義胤
(福岡市立こども病院
腎疾患科)
このたび、第 24 回日本逆流性腎症フォーラムを福岡市で開催させていただくにあたり、ご挨拶
を申し上げます。まずは本フォーラムを開催する機会を与えていただいたことを光栄に思い、心よ
り感謝申し上げます。九州での開催は 2005 年の伊藤雄平先生、2011 年の山口孝則先生についで 3
回目の開催になります。
さて、UTI・VUR の診療方針は、エビデンスに基づいてこれまでにいくつかの大きな変更を経て
きました。ガイドラインも変化しています。しかし、その結果として診断や治療はいくつかの流れ
に分断されてしまい、臨床現場で診療方針が統一されていない状況に陥っています。これは若手医
師には UTI・VUR の診療を理解する妨げでもあります。さらに、幅広い grade の VUR 患者に抗菌
薬予防投与の有効性検証のため二重盲検法を行い、その結論が待望されていた Randomized
Intervention for Children with Vesicoureteral Reflux (RIVUR) trial の結果が 2014 年に発表さ
れたものの、その解釈については様々な議論が引き起こされ、かえって混乱を悪化させた感もあり
ます。
しかし、私達はこれらの混乱した様々な流れを越えて、より良い UTI・VUR 診療を作り上げて
いかなければなりません。そのために今回のテーマを「流れを越えて」としました。シンポジウ
ムは少し大仰かも知れませんが「時の流れと診療方針の流れ、そして My Opinion!」と題
し、各シンポジストの先生に担当分野の現在までの診療の流れを俯瞰していただいて若手参加者の
理解も得た上で、ご自身の診療方針とその意図を解説いただくことにしました。総合討論の中で、
参加者と共に明日の診療に向かって有意義な議論を深められれば幸いです。また、特別講演には
CAKUT の遺伝子解析を積極的に進めている神戸大学の森貞直哉先生をお呼びし、次世代シークエ
ンサーの登場で進歩が著しい CAKUT の遺伝子解析とその意義、さらにこれからの CAKUT 診療に
ついてご講演いただく予定です。
冬の福岡は九州とは言え玄界
からの寒風の吹く日が多い街ですが、会員の皆様のご参加を心か
らお待ちするとともに、フォーラムでの熱いご討議を通して暖かい友誼を深めていただきます様お
願い申し上げます。
また、フォーラム後は会場近くのビストロにて無料の懇親会を準備しておりますので、中洲や天
神の街などに行かれる前に是非ご参加下さい。
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
交通案内
九州大学医学部 百年講堂 〒812-8582 福岡市東区馬出3丁目1番1号
【福岡空港からお越しの場合】
地下鉄箱崎線「馬出九大病院前」下車 徒歩8分
福岡空港駅(K13)
中洲川端駅(K09)
箱崎線に乗換
地下鉄空港線・・・・・・・・・・・・・・・・
馬出九大病院前駅(H04)
地下鉄箱崎線(貝塚行)・・・・・・・・・・・
【天神からお越しの場合】
地下鉄箱崎線「馬出九大病院前」下車 徒歩 8 分
天神駅(K08)
馬出九大病院前駅(H04)
地下鉄箱崎線(貝塚行)・・・・・・・・・・・
【JR 博多からお越しの場合】
地下鉄箱崎線「馬出九大病院前」下車 徒歩 8 分
博多駅(K11)
中洲川端駅(K09)
地下鉄空港線・・・・・・・・・・・・・・
箱崎線に乗換
地下鉄箱崎線(貝塚行)・・・・・・・・・・・
【博多港からお越しの場合】
タクシーにて 20 分
博多港
九州大学病院キャンパス
馬出九大病院前駅(H04)
九州大学医学部百年講堂
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
会場案内
懇親会会場
福岡市博多区千代 4 丁目 32-1
博多メディカル専門学校 1F
BISTRO au bascou(ビストロ・オー・バスクー)
TEL 092-643-6711 / FAX 092-643-6712
屋台ずし
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
お知らせ
■ 会
場
九州大学医学部百年講堂
大ホール
福岡市東区馬出 3 丁目 1-1
■会
期
2016 年 2 月 6 日(土)
・運営幹事会
10:00∼11:00
中ホール2
・合同幹事会
11:00∼12:30
中ホール 2
・学術集会
13:00∼18:10
大ホール
・懇親会(無料)
18:30∼
オー・バスクー(会場から徒歩 5 分)
■集会事務局
〒713-0017
福岡市東区香椎照葉 5 丁目 1-1
TEL:092-682-7000
福岡市立こども病院
FAX:092-682-7300
腎疾患科
第 24 回日本逆流性腎症フォーラム事務局
(担当:三井所/西村/郭)
■参加費
1.
参加費 4,000 円を会場の総合受付にてお納め下さい。
参加証のない方の入場は、固くお断りします。
2.
受付時間:2 月 6 日(土)12:00∼16:00
3.
『プログラム・抄録集』を購入される方は総合受付にて 1 部 1,000 円で販売しておりま
す。部数に制限がありますので会員の方は各自ご持参下さい。
■幹事・運営幹事の方へ
2015 年度の幹事施設会費 5,000 円をまだお納めいただけていない幹事施設は総合受付にて
お納め下さい。
運営幹事会は 10:00 から、合同幹事会は 11:00 より開始いたします。合同幹事会にてご昼食
を用意いたします。
■認定単位
日本小児科学会専門医研修集会
3 単位
日本泌尿器科学会専門医教育研修単位
3 単位
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
■クローク
設置いたしません。お荷物は会場内の各自のお席の近くにお置き下さい。
■懇親会
フォーラム終了後、懇親会を会場近くの「ビストロ・オー・バスクー」で開きます。参加費
は無料ですので、皆様是非ご参加下さい。九大正門を出て左手に徒歩 3 分ほどです。
講演・討論される先生方へ
■各講演の演者および発表者の先生方へ
◆ 一般演題:発表 6 分/質疑 4 分です。
◆ シンポジウム:発表 14 分、質疑はまとめて総合討論の時間に行います。
・ 発表は、基本的に PC(Windows)発表のみとします。
・ OS は windows 7、アプリケーションは PowerPoint 2010 を使用いたします。
・ フォントは Windows に標準搭載されているもののみをお使い下さい。
・ データの受け渡しに使用する USB メモリーなどはあらかじめウィルスチェックをお願い
します。
・ Macintosh および動画を使用される方は、ご自身の PC 本体をお持ち下さい。その際に
電源アダプターと映像出力アダプターを忘れずにご持参下さい。
・ データ受付は総合受付にございますので各自受付をお願いいたします。お預かりした発
表データは、学術集会終了後に会長立ち会いの下、削除させていただきます。
・ PC プロジェクターは 1 台(1 面映写)です。
・ 発表者はご自身の発表 30 分前までにデータ受付をお済ませいただき、15 分前には次演
者席へご着席下さい。
・ 発表/討論の時間は座長の指示に従って下さい。追加/質問はマイクの前で待機し、座
長の許可を得た上で所属、氏名を明らかにしてから発言して下さい。
■座長の先生方へ
1.
担当セッション開始 5 分前までに次座長席にお着き下さい。
2.
討論時間は所定の時間内で終了するようにご配慮をお願いします。
3.
シンポジウムの質疑は原則としてまとめて総合討論の時間に行いますが、各演者の討論
時間は座長に一任いたします。
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
■演者の先生方へ
「日本逆流性腎症フォーラム記録集」への掲載について下記の要領で必ずお送りいただきま
すようお願いいたします。
<要項>
・ タイトル
・ 本文 2,800 文字以内
・ 図表 3 枚程度
・ 文献(必要最小限にとどめる)
<形式>
CD-R(MS Word 形式、TEXT 形式)と紙に印刷した原稿
<締め切り>
2016 年 3 月 31 日(木)必着
<送付先>
「第 24 回日本逆流性腎症フォーラム記録集用原稿」と明記の上、簡易書留便で下記(事務局)
までお送りください。但し、電子メールでお送りの方は、本文は MS Word 形式で、図表は
MS PowerPoint 形式でメールに添付してお送りください。
〒541-0046
大阪市中央区平野町 3-2-13 平野町中央ビル 4F
福田商店広告部内
日本逆流性腎症フォーラム事務局(担当:大森啓次)
TEL:06-6231-2723
E-mail:rn-forum@adfukuda.jp
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学術プログラム
Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
学術プログラム
13:00∼13:05
会長挨拶
郭義胤(福岡市立こども病院腎疾患科)
13:05∼13:45
一般演題 1
座長
此元竜雄(福岡市立こども病院泌尿器科)
1) 遅発発症膀胱尿管逆流の臨床的検討
琉球大学医学部腎泌尿器外科
○與那嶺智子、宮里実、宮城亮太、仲西昌太郎、斎藤誠一
2) 原発性膀胱尿管逆流に対する乳児期の開放逆流防止術の成績
あいち小児保健医療総合センター泌尿器科
○久松英治、吉野薫
3) 福岡市立こども病院における VUR に対する外科的治療の現状;2000 年ころとの比較
福岡市立こども病院泌尿器科
○鯉川弥須宏、此元竜雄、長沼英和、山口孝則
4) VUR 手術症例の長期予後
福岡大学泌尿器科学
○坪内和女、松岡弘文、田中正利
13:45∼14:25
一般演題2
座長
秋岡祐子(埼玉医科大学小児科)
5) 排泄習慣自立後に初発する有熱性尿路感染症症例の男女差
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児泌尿器科
○川合志奈、日向泰樹、中村繁、中井秀郎
6) MERS を合併した急性巣状細菌性腎炎一症例におけるサイトカインの検討
1)
2)
佐賀大学医学部小児科 、佐賀大学医学部泌尿器科 、
宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野
1)
1)
3)
1)
1)
1)
1)
○大塚泰史 、在津正文 、陣内久美子 、大串栄彦 、岡政史 、佐藤忠司 、
2)
2)
3)
東武昇平 、野口満 、布井博幸 、松尾宗明
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1)
Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
7) RN フォーラムスタディーに登録された乳児症例のアウトカム予備調査
宮城県立こども病院泌尿器科
○坂井清英、竹内晃、相野谷慶子
8) 腎障害を伴う逆流性腎症患者の高尿酸血症に対するフェブキソスタットの投与
福岡市立こども病院腎疾患科
○郭義胤、西村真直
14:25∼14:40
休憩
14:40∼14:55
総会
14:55∼15:20
学術委員会報告
15:20∼16:20
特別講演
座長
郭義胤(福岡市立こども病院腎疾患科)
「先天性腎尿路奇形(CAKUT)の原因遺伝子解析」
神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座疫学分野
森貞直哉
16:20∼16:30
休憩
16:30∼17:40
シンポジウム
座長
「時の流れと診療方針の流れ、そして My Opinion!」
白髪宏司(埼玉県済生会栗橋病院小児科)
坂井清英(宮城県立こども病院泌尿器科)
S-1) RIVUR study を読み解く
関西医科大学小児科学講座
○木全貴久、辻章志、金子一成
S-2) 画像診断(エコー・DMSA シンチ・VCUG)の適応
宮城県立こども病院泌尿器科
○相野谷慶子
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
S-3) 予防投与の是非
∼やるのか?やらないのか?∼
愛知医科大学腎臓・リウマチ膠原病内科小児腎臓
○永井琢人
S-4) 逆流防止術の変遷と問題点・展望
あいち小児保健医療総合センター泌尿器科
○吉野薫、久松英治
S-5) 逆流性腎症患者の内科的治療
∼腎保護のために∼
東京都立小児総合医療センター腎臓内科
○濱田陸
17:40∼18:00
シンポジウム総合討論
18:00∼18:05
次期会長挨拶
吉野薫(あいち小児保健医療総合センター泌尿器科)
18:05∼18:10
閉会の辞
郭義胤(福岡市立こども病院腎疾患科)
18:30∼
懇親会
BISTRO au bascou(ビストロ・オー・バスクー)
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抄録
一般演題1
一般演題2
特別講演
シンポジウム
Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
一般演題1
1)
遅発発症膀胱尿管逆流の臨床的検討
琉球大学医学部腎泌尿器外科
○與那嶺智子、宮里実、宮城亮太、仲西昌太郎、斎藤誠一
【目的】当院における遅発発症の膀胱尿管逆流(以下 VUR)の臨床的特徴を検討した。
【方法】1989
年から 2015 年 4 月の 26 年間に当院を受診した VUR 141 例のうち遅発発症(おむつトレーニン
グ後)の primary VUR24 例 37 尿管(男児 7 例、女児 17 例)を retrospective に検討した。【結
果】発症年齢は 3 歳から 11 歳(平均 5.3 歳)であった。合併奇形では上部尿路奇形 4 例、潜在性
二分脊椎 2 例であった。予防的抗菌薬を投与した 20 例のうち、4 例に breakthrough infection を
認めた。DMSA 腎シンチによる腎瘢痕は、G0 2 例、G1a 8 例、G1b 5 例、G2a 4 例、G2b 2 例、
G3 0 例、不明 3 例であった。排尿障害(尿失禁、尿意切迫)あり 7 例(29.2%)、なし 12 例、不
明 5 例であった。排便状況は毎日排便 9 例、便秘 6 例(25%)、不明 9 例であった。経過観察を
選択した 11 例の転帰は、自然治癒 2 例、グレードダウン 4 例、不明 5 例であった。【考察】遅発
発症 VUR では排尿・排便障害が多い傾向にあり、Bladder Bowel Dysfunction の正確な評価と適
切な治療介入が重要と思われた。
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
<<MEMO>>
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
一般演題1
2)
原発性膀胱尿管逆流に対する乳児期の開放逆流防止術の成績
あいち小児保健医療総合センター泌尿器科
○久松英治、吉野薫
【背景】乳児期の逆流防止術は、膀胱の大きさや高度逆流による尿管拡張のために十分な長さの粘
膜下トンネルを確保しにくいという問題がある。当科の乳児期の逆流防止術の成績を報告する。
【対象・方法】対象は 2003∼2014 年に 1 歳未満で逆流防止術を施行された原発性 VUR の患児
42 例。各症例の臨床因子を検討した。
【結果】男児 39 例、女児 3 例。手術時年齢は平均 8 ヶ月。Breakthrough UTI のために手術とな
ったのは 23 例(55%)。片側 13 例、両側 29 例。VUR gradeⅡ 2 尿管、gradeⅢ 1 尿管、grade
Ⅳ 26 尿管、gradeⅤ 42 尿管。術後平均観察期間 75 ヶ月。術後 VCUG を施行した 39 例中 36 例
で VUR は消失していた。上部尿路通過障害のために再手術が必要となった症例はなかった。
【結語】高度 VUR に対する乳児期の逆流防止術は安全かつ確実に施行できる。
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
<<MEMO>>
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
一般演題1
3)
福岡市立こども病院における VUR に対する外科的治療の現状;
2000 年ころとの比較
福岡市立こども病院泌尿器科
○鯉川弥須宏、此元竜雄、長沼英和、山口孝則
VUR の治療は、より待機的に変遷してきている印象で、我々も感染さえコントロールされれば、
早急な外科的治療の対象とはならないと思っている。しかしながら、感染をコントロールしにくい
症例や腎の形成不全を伴う症例が少なからずあることも事実で、小児科の先生方からの早期の外科
的介入を依頼されることも少なくない。そこで、外科的介入をされた 15 年前の 36 症例と昨年の
33 症例を比べ、症例がどのように変遷しているかを検討してみた。予想に反して昨年は 15 年前に
比べ手術時の平均年齢は低くなっていたが、逆流の程度は強く、腎機能障害、変形も強い症例に傾
いていた。なかでも DMSA 分類 Group2 以上が 11/33 例、感染のコントロール不良が 9/33 例と
多く、より重症な症例へは積極的に外科介入しているように思われた。しかしながら、この外科的
介入は感染のコントロールに寄与するとは考えるが、RN の発症や進行予防にどの程度効果的なの
かは、意見の分かれるところであろう。
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
<<MEMO>>
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
一般演題1
4)
VUR 手術症例の長期予後
福岡大学泌尿器科学
○坪内和女、松岡弘文、田中正利
(目的)
膀胱尿管逆流症(VUR)に対する逆流防止術後 10 年間経過観察した症例の、長期予後に影響する因
子を調べた。
(対象・方法)
小児原発性膀胱尿管逆流症例のうち、逆流防止術後 10 年間観察しえた 38 例(初診時年齢 0 歳 4 カ
月∼15 歳、平均 4.8 歳、男児 29 例・女児 9 例)を対象とした。評価項目は UTI の有無、収縮期血
圧、尿所見(定性蛋白尿、尿中α1MG、β2MG)、腎機能(血清 Cr、eGFR、DMSA 腎摂取率)とした。
(結果)
VUR の程度が高度、術前尿中β2MG 高値、術前 DMSA シンチにて腎実質障害高度の症例は、10
年後の腎機能が低下している傾向を認めた。逆流防止術の時期が乳児、もしくは学童期の症例は、
幼児期の症例と比較して腎機能が低下している傾向を認めた。蛋白尿を 38 例中 10 例に認めたが
高血圧との関連を認めた症例はなかった。
(結論)
VUR の程度、尿中β2MG 値、腎実質障害の程度は、逆流性腎症の予後予想因子として重要である。
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
<<MEMO>>
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
一般演題2
5)
排泄習慣自立後に初発する有熱性尿路感染症症例の男女差
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児泌尿器科
○川合志奈、日向泰樹、中村繁、中井秀郎
【目的】排泄習慣自立後有熱性尿路感染症(以下 fUTI)初発例の男女差を明らかにする。
【対象・方法】2007 年 11 月∼2015 年 4 月に 4 歳以上 fUTI 初発症例を対象とした。昼間尿失禁
あり、1 日排尿回数 4 回以下、1 回排尿量/年齢推定膀胱容量 150%、排便週 3 回未満、硬便頻
度 50%以上のいずれか認める場合を BBD とした。5 度 VUR・UTI 制御不能症例は逆流防止術適
応とした。
【結果】対象は 57 例(男児 22 例)で 47 例(男児 17 例)に BBD を、慢性期 DMSA 異常(RN
フォーラム分類 Group1a 以上)を 35 例(男児 17 例)に認めた。3 度以上 VUR(以下高度 VUR)
を 24 例に認め、男児 16 例中 4 例(25%)、女児 8 例中 4 例(50%)は BBD 治療のみで VUR grade
が改善した。経過観察期間(平均 27 か月)中 9 例(男児 5 例、全例 BBD 群)が UTI を再発した。
高度 VUR を認めたのは男児 2 例のみで逆流防止術施行した。
【結語】BBD 合併例・DMSA 異常症例に男女の有意差はないが、男児では高度 VUR 合併例が多く、
BBD 治療のみでは限界のある例がある。
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
<<MEMO>>
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
一般演題2
6)
MERS を合併した急性巣状細菌性腎炎一症例におけるサイトカインの検討
1)
2)
佐賀大学医学部小児科 、佐賀大学医学部泌尿器科 、
宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野
1)
1)
1)
2)
3)
1)
1)
1)
○大塚泰史 、在津正文 、陣内久美子 、大串栄彦 、岡政史 、
2)
3)
佐藤忠司 、東武昇平 、野口満 、布井博幸 、松尾宗明
1)
【緒言】
急性巣状細菌性腎炎(AFBN)は、膿瘍を伴わない腫瘤性病変を呈する腎感染症である。近年、AFBN
では可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)の合併が報告されており、AFBN に
よるサイトカイン活性化が議論されている。
【症例】
1 歳男児。発熱、痙攣、意識障害のため当院を紹介された。炎症反応は上昇し、髄液に以上なく、
MRI にて MERS を認めた。また造影 CT にて左腎腫大および低吸収所見を認め、尿の Enterococcus
faecalis より AFBN と診断。1.5 か月後の VCUG では両側 VUR を確認したが、その直後 Citrobacter
braakii による急性腎盂腎炎(APN)を発症した。本患者の AFBN 時の血清と髄液、および APN
時の血清のサイトカインを測定した。いずれの血清も IL-6 上昇を認めたが、APN では自然免疫系
サイトカインが上昇していた。髄液で上昇したサイトカインは APN に類似しており、AFBN では
血清と髄液に乖離がみられた。
【結論】
AFBN は APN に比べ腎に限局した炎症であると考えられ、AFBN の血中サイトカインが髄液サイ
トカインに影響するとはいえない。
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
<<MEMO>>
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
一般演題2
7)
RN フォーラムスタディーに登録された乳児症例の長期アウトカム予備調査
宮城県立こども病院泌尿器科
○坂井清英、竹内晃、相野谷慶子
RN フォーラム学術委員会においては、2003 年に J Urol に RN フォーラムより発表された乳児
VUR 患児の長期アウトカム調査を立案中である。東北大学泌尿器科より登録された症例について、
長期のアウトカム評価の実態を調査した。
当時の study に登録された症例は 43 例(男 37、女 6)で、VUR 患側(右 8、左 12、両側 23)、
VUR grade(両側の場合、高い方)は I: 0、 II: 3、 III: 15、 IV: 23、 V: 1、DMSA 腎シンチグ
ラフィ分類(旧分類)は Group 0: 24、 G1a: 5、 G1b: 1、 G2: 11、 G3: 2
であった。lost follow-up
の 4 例を除外した 39 例中、手術例は 17 例で、その他は自然軽快(Grade down)ないしは消失し
た。10 歳­18 歳まで経過観察できたのは 25 例(男 22、女 3)で、この症例を中心に、DMSA 腎
シンチグラフィ、尿蛋白、血圧、eGFR などの結果を報告する。
24
Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
<<MEMO>>
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
一般演題2
8)
腎障害を伴う逆流性腎症患者の高尿酸血症に対する
フェブキソスタットの投与
福岡市立こども病院腎疾患科
○郭義胤、西村真直
高尿酸血症は慢性腎臓病の増悪因子である。痛風や痛風腎、尿路結石だけでなく、炎症、酸化ス
トレス、レニン̶アンジオテンシン系、内皮障害、動脈硬化などに密接に関連している。しかし従
来の治療薬は腎機能障害を有する患者には使いづらかった。一方フェキソブスタットは肝で不活化
された後に便中と尿中に排泄され、軽度∼中等度の腎機能低下でも使いやすい。今回腎機能障害と
高尿酸血症を伴った逆流性腎症患者にフェキソブスタットを投与し有用性と安全性を検討した。
2
患者は男児 6 例(7∼17 歳)、投与開始時の eGFR は 33.9∼86.25mL/min/1。73m 。尿酸値は
投与前平均 7.4(5.0∼9.5)mg/mL から平均で 1.4mg/mL 低下した。血清クレアチニンは 3 例で
上昇し 2 例で低下したが、上昇率の低下が5例にみられた。有害事象はみられなかった。症例数は
少ないがフェキソブスタットの有用性を確認し、その腎保護効果も示唆する結果であった。
26
Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
<<MEMO>>
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Reflux Nephropathy (RN) Forum Japan
特別講演
先天性腎尿路奇形(CAKUT)の原因遺伝子解析
神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座疫学分野
森貞直哉
【はじめに】先天性腎尿路奇形(congenital anomalies of the kidney and urinary tract、CAKUT)
は腎低異形成や多嚢胞性異形成腎、膀胱尿管逆流などを包括した概念である。CAKUT は小児期の
末期腎不全の原因疾患として極めて重要で、CAKUT の原因として母体環境の異常や遺伝子の異常
が指摘されているが、詳細はまだよくわかっていない。
【CAKUT の原因遺伝子】これまでの研究で
PAX2 や HNF1B など腎発生に関与する遺伝子の異常が CAKUT の発症に関与していることが明ら
かになっている。しかし遺伝子変異同定率は当科の検討でも腎外症状を持つ syndromic CAKUT
で 37%、腎外症状のない non-syndromic CAKUT で 15%であり、未だ原因不明の症例も多く残さ
れている。【新しい遺伝子解析法】近年、次世代シークエンサー(next generation sequencing、
NGS)をはじめとした遺伝子解析法が急速に進歩している。NGS は未知の疾患原因遺伝子の同定
にきわめて有用なツールで、CAKUT やネフロン癆(nephronophthisis related ciliopathy、
NPHP-RC)などで新たな疾患原因遺伝子が同定されている。一方で NGS により既知遺伝子の包括
的な解析も可能である。われわれは原因遺伝子不明の CAKUT 症例 44 例において、CAKUT およ
び NPHP-RC 原因遺伝子 91 種類をパネル化して NGS により包括的に解析し、その 22%に疾患原
因遺伝子を同定した。その中にはまったく予想外の原因遺伝子が同定された例もあった。腎疾患に
おける遺伝子型(genotype)と臨床症状(phenotype)の関係についてはまだ十分に解明されてい
ない。【今なぜ遺伝子解析が重要か】原因遺伝子の解明は次子再発率などの遺伝カウンセリングに
有用である他、新たな治療法開発につながる可能性がある。2015 年、日本研究開発機構(AMED)
は未診断疾患イニシアチブ(IRUD)を立ち上げ、希少疾患から新治療法を開発する戦略を示した。
これには詳細な臨床情報と基礎医学的かつ臨床的なゲノム医療への理解が必須である。したがって
これからの CAKUT 診療には、小児科医、小児泌尿器科医、臨床遺伝専門医、基礎研究者の連携が
必須であると考えられる。
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シンポジウム「時の流れと診療方針の流れ、そして My Opinion!」
S-1)
RIVUR study を読み解く
関西医科大学小児科学講座
○木全貴久、辻章志、金子一成
膀胱尿管逆流(VUR)は、有熱性尿路感染症(fUTI)の発症と腎の瘢痕化のリスクを増大させる。1970
年代に、二重盲検や偽薬を用いない小規模研究で、抗菌薬の長期的な予防内服(CAP)の有効性が
報告され、以来、VUR の保存的治療として慣習的に CAP が行われるようになった。そして 1997
年の米国泌尿器科学会のガイドラインでは、年齢、性別、腎実質病変の有無にかかわらず、5 歳ま
でのⅠ∼Ⅳ度の VUR すべてに、CAP が推奨された。一方で 2000 年代後半以後、randomized
control
trial(RCT)を用いた CAP の検証がさかんに行われ、
「必ずしも全ての VUR 小児におい
て CAP が必要とはいえない」と否定的な意見が相次いで報告された。
一定の見解が得られない CAP の効果を明らかにするために大規模な RCT である The RIVUR trial
が実施された。その結果、UTI 後に VUR と診断された生後 2 か月∼71 か月の小児を対象として、
予防抗菌薬(ST 合剤: 37。5mg/kg/day)を投与した場合、再発リスクが大幅に軽減することが判
明した(50%低下)。一方で、腎瘢痕の発生率については、CAP 群とプラセボ投与群で有意差は見
られなかった。但し、腎瘢痕の発生率に関しては観察期間が短いことを考慮する必要がある。
結果として、対象の 92%が女児であること、Ⅴ度の VUR、水腎症・尿管瘤・尿道弁その他の泌尿
器疾患を合併した児は対象から除外されている点に注意する必要があるが、CAP が fUTI の再発予
防に有効であることを高いエビデンスレベルで示したといえる。
CAP を選択することにより生ずる不利益として、耐性菌の出現があげられる。RIVUR study では、
1人の UTI 再発を予防するために約 8 人に CAP を必要とし、また、68.4%vs24.6%と CAP 群が有
意に耐性菌の出現率が高かった。
ここで、耐性菌の出現率が高かったにもかかわらず、fUTI の発症率が半減していることに注目し
たい。演者らが行った興味深い ST 合剤による CAP の研究を示す。演者らは、成人の好中球に ST
合剤を添加すると、好中球中の一酸化窒素(NO)産生能が増加し、食細胞の殺菌能に異常を認め
る遺伝性免疫不全症の慢性肉芽腫症患者において、ST 合剤の CAP が好中球からの NO 産生を亢進
させ、感染予防に有用であることを報告した(Tsuji S、 Nitric Oxide、 2002)。この結果から、
高度 VUR 症例に対する ST 合剤の抗菌作用は、葉酸拮抗作用だけでなく、好中球の殺菌能亢進作
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用が考えられ耐性菌に対しても効果を示す可能性がある。多剤耐性菌を作らないために ST 合剤に
限定した CAP は、試みてもよいのではないかと考えられる。
以上、私見を述べると、fUTI の反復は腎瘢痕のリスクであるため、ST 合剤による CAP は、長期
的には腎瘢痕のリスク軽減につながるものと考えられ、行うべきであると思われる。
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シンポジウム「時の流れと診療方針の流れ、そして My Opinion!」
S-2)
画像診断(エコー・DMSA シンチ・VCUG)の適応
宮城県立こども病院泌尿器科
○相野谷慶子
小児尿路感染症例に対する画像診断は、VUR をはじめとする先天性尿路疾患の合併の有無を調
べるとともに、腎実質障害の有無を検出することが目的である。
現在小児の尿路感染後に一般的に行われる画像診断は、腹部エコー、VCUG、DMSA 腎シンチグラ
フィである。
腎尿路系の形態的評価として、まず安全でかつ簡便な超音波検査を行う。
排尿時膀胱尿道造影(VCUG)は、VUR の有無を調べるために最も重要な検査手段である。本邦
ではラジオアイソトープを用いた方法(RI cystography)は一般的ではなく、通常は透視下に行う
VCUG による。VCUG では VUR の有無と、重症度の判定、膀胱、尿道の形態的、機能的評価が可
能である。
99mTc-DMSA 腎シンチグラフィは腎皮質の描出に優れており、腎形態や左右の腎集積率の違いを
見るには極めてよい方法である。有熱性尿路感染症の急性期には、病変部の欠損が診断につながる
が、慢性期の腎瘢痕との鑑別はむずかしい。VUR 症例における腎瘢痕など慢性病変の評価は、間
質の浮腫が改善するとされる発症後 4-6 か月以降に行うことが推奨されている。
これらの画像検査はそれぞれが重要な役割を持っているが、尿路感染後に一律に施行するかどう
かは、2000 年代に入り異論がみられている。2007 年に出された NICE ガイドラインでは、画像診
断はかなり制限され、特に VCUG の適応は極めて狭く定められている。
尿路感染症後にまず VCUG を施行し、VUR の有無を調べる従来の手順は bottom up approach
と呼ばれる。これに対して急性期に DMSA 腎シンチグラフィを行い、腎病変の有無を調べる方法
を top down approach と呼ぶ。これは VUR の有無は問題ではなく、尿路感染に起因する腎実質
障害を見逃してはならないという考え方である。
VCUG を含めた画像検査の適応や手順は、ガイドラインを含め、意見がわかれているのが現状であ
る。今回は尿路感染症、VUR 症例に対する画像診断の適応、アプローチの変遷について触れ、参
考に当施設の方針を提示する。
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シンポジウム「時の流れと診療方針の流れ、そして My Opinion!」
S-3)
予防投与の是非
やるのか?やらないのか?
愛知医科大学腎臓・リウマチ膠原病内科小児腎臓
○永井琢人
尿路感染症は小児科医にとって日常診療でよく遭遇する疾患であるが、その明確な治療方針は混
沌としたなかにある。上部尿路感染症を有した小児のうち、8 から 30%程度が再発性尿路感染症を
生じるとされる。繰り返す尿路感染症による腎瘢痕が増加することは示されており、瘢痕の進展を
防止するためにどの様な治療戦略を選択にするのが重要な点として挙げられる。再発抑止について
は、抗生剤の予防投与、VUR の手術適応や早期診断も必要な要素となってくる。どの項目につい
ても議論が残る状態であるが、今回は抗生剤の予防投与によって再発をいかに抑止できるかに絞っ
て話を進めていくこととする。予防投与の是非については、ガイドライン、システマティックレビ
ュー、二重盲検試験等が各国で作成されており代表的と思われる物の結論を下記(原文が可能なも
のはそのまま)に示す。
!
ガイドライン
"
"
"
!
American Urological Association, 2010
# Recent studies have demonstrated that CAP has not been proven to reduce the incidence of febrile
UTI in children with VUR. These results have challenged the core of current expectant therapy of
VUR, yet the general applicability of these new findings remains uncertain. Very careful review of
the strengths and limitations of these studies must be considered before broadly accepting this
approach. However, these data do suggest that an observational approach to VUR with
antibiotic therapy initiated on diagnosis of an acute UTI may be an option in selected
children
American Academy of Pediatrics, 2011
# Data from the most recent 6 studies do not support the use of antimicrobial prophylaxis to
prevent febrile recurrent UTI in infants without vesicoureteral reflux or with grade I to IV VUR.
European Association of Urology (EAU) / European Society for Paediatric Urology (ESPU), 2015
# Consider prophylaxis
!
>1 yr of age, girl specific
"
With or without treatment of VUR
!
>1 yr of age, boy specific
"
Consider treatment of phimosis with or without treatment of VUR
!
Toilet trained, girl specific
"
Treatment of BBD/LUTS with or without treatment of VUR
!
Toilet trained, boy specific
"
Treatment of BBD/LUTS with or without treatment of VUR Consider treatment of
phimosis
システマティックレビュー
"
The Cochrane Library, 2011
# Long-term antibiotics appear to reduce the risk of repeat symptomatic UTI in
susceptible children but the benefit is small and must be considered together with the
increased risk of microbial resistance.
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!
二重盲検試験
"
"
!
The RIVUR Trial. The New England Journal of Medicine 2014
# Among children with vesicoureteral reflux after urinary tract infection, antimicrobial
prophylaxis was associated with a substantially reduced risk of recurrence
but not of renal scarring .
The New England Journal of Medicine. 2009
# Long-term, low-dose trimethoprim–sulfamethoxazole was associated with a decreased
number of urinary tract infections in predisposed children. The treatment effect
appeared to be consistent but modest across subgroups.
Others
"
"
Up to Date (updated: Jul 27, 2015)
# We suggest antimicrobial prophylaxis in children without vesicoureteral
reflux (VUR) who have frequent recurrent UTIs (three febrile UTIs in six months or
four total UTIs in one year).
Antibiotic Prophylaxis and Renal Damage In Congenital Abnormalities of the Kidney and
Urinary Tract (PREDICT)
# 現在治験中.
上記にあるように、多様な報告がなされており、一定見解を結論より見出すことは困難な状態で
ある。年齢、性別や VUR の有無で解釈に制限がかかっているのも事実である。今回は上記を踏ま
えたうえで、実臨床の現場ではどのように治療を行っているかの私見を述べたいと考えている。
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逆流防止術の変遷と問題点・展望
あいち小児保健医療総合センター泌尿器科
○吉野薫、久松英治
膀胱尿管逆流(VUR)を積極的に手術しようとした時代があった。1952 年に初めて VUR 手術成
功例が報告されて以来、Cohen 法や Politano-Leadbetter 法など種々の膀胱内・外アプローチ手術
が発表され、開放逆流防止術における VUR 消失率は 95%以上の安定した良好な成績を示す。VUR
について議論することは何もないと極論さえ言われたが、その後の発展によって VUR の管理は逆
に混沌としている。
1970 年代以降、手術治療と保存的治療で UTI や腎瘢痕新生の頻度に有意差がないことが示された。
有熱性 UTI の発症は手術により明らかに抑えられることも示され、手術適応は有熱性 UTI をコン
トロールできない症例や有熱性 UTI の高リスク症例であることに今でも議論の余地はない。しかし
個々の症例で手術適応を判断するのは必ずしも容易でない。
手術法は technology の発展に伴って、内視鏡的注入療法、腹腔鏡による膀胱外逆流防止術や気膀
胱手術などが追加された。内視鏡的注入療法においては初期の TeflonⓇは成績がいいものの
migration が問題であった。FDA に承認され世界中に広がった DefluxⓇは VUR 消失率 95%とい
う好成績をだすグループはあるものの一般には VUR 消失率 70-80%で、長期成績を疑問視する論
文もある。腹腔鏡手術は従来の手術の欠点である術後の血尿・膀胱刺激症状・排尿障害がおこりに
くく、体表創の点でも優れている。しかし低年齢では難しく、一部保険診療になったとはいえ高額
で、技術と機器をもっている施設でしか行えない。
有熱性 UTI の高リスク因子を持ちながら保存的治療で UTI をコントロールできる症例で残存する
VUR に対する手術のタイミングを決めるのも容易ではない。女児は長期的に UTI 再発が多く、成
人での開放手術が容易でないこともあり、学童女児の VUR は手術対象と考えられてきた。しかし
手術法の発展や多様性により学童期女児の手術適応も施設による差が出ている。以上、逆流防止術
の変遷を追いながら問題点と当施設の現在の方針を明確にしたい。
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逆流性腎症患者の内科的治療
∼腎保護のために∼
東京都立小児総合医療センター腎臓内科
○濱田陸
逆流性腎症(RN)は、主に男児に多くみられる先天性(congenital)のものと、主に女児にみられる
後天性(acquired)のものとが存在する。特に先天性のものは低形成異形成腎との区別が難しく先天
性腎尿路奇形(CAKUT)に分類される場合もあり、正確な頻度は明らかでないが、小児慢性腎臓病
(CKD)の原因疾患の一つとして重要である。
RN の治療は腎機能障害進行予防としての①感染反復の予防、②腎保護に分けて考えることがで
きる。①に関しては本シンポジウムの前半で触れられるため、本項では②に関して考えていく。
「小
児 RN の腎保護」に関してはエビデンスとなり得るような研究結果は存在しない。RN は病態とし
ては低形成異形成腎に類似した塩分喪失性腎症を呈することが多く、低形成異形成腎は腎機能低下
をきたす CAKUT の主要因であり、CAKUT は小児 CKD の原因の約 60%を占めている。つまり「小
児 RN の内科的治療」 「小児 CKD の内科的治療」と考えることが可能だが、残念ながら小児 CKD
治療自体も、成人 CKD で腎保護効果が認識されている薬剤の明らかな有効性は示されていないの
が現状である。
これらの状況下で、現在我々が行えることは、1)長期経過観察が必要な RN 患者の選別(2015 年
RN フォーラム
シンポジウムより:腎機能障害を認める、高血圧を認める、蛋白尿/尿細管性蛋白
尿を認める、腎エコーで異常所見を認める、DMSA シンチグラフィで G2 以上の瘢痕を認める)に
はじまり、2)生活習慣指導(排尿習慣の指導、脱水予防のための飲水励行、無用な塩分制限の回避)、
3)薬物療法(蛋白尿を認める患者へのアンジオテンシン変換酵素阻害薬/アルドステロン受容体拮抗
薬、高血圧に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬やカルシウム受容体拮抗薬、慢性脱水所見を
認める乳児に対しての塩分付加、腎毒性薬剤の回避など)、と考えられる。また、残念ながら末期
腎不全に至ってしまった患者に対しては、可能な限り先行的腎移植を行えるように、合併しうる尿
路奇形や下部尿路異常の評価・管理を小児泌尿器科医・移植医とともに行っておくことも重要と考
える。
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