提出日:西暦 2014 年 10 月 15 日 基礎工学部同窓会50周年記念在校生支援事業 基礎工学部同窓会海外研修奨励賞 海外研修活動成果報告書(2014 年度) (対象期間:2013 年 10 月 1 日~2019 年 9 月 30 日) 1) 申請者氏名(ふりがな) :柴田 2)所属:基礎工学研究科 賢(しばた 機能創成専攻 けん) 生体工学分野 博士前期課程 1 年生 3)連絡先:三宅研究室 申請者 E-mail: k.shibata@bpe.es.osaka-u.ac.jp 4)渡航の主目的: 私は、シアノバクテリアのバイオ水素発生機構の解析と応用法の研究を行っている。バイ オエネルギーの先端研究を行うルール大学の Rögner 教授の研究室は、酸素高耐性ヒドロゲ ナーゼの実現を目指した遺伝子の改変を主目的としている。同研究室は基盤研究のみなら ず屋外応用可能な大規模培養リアクターを有するなどバイオ水素の応用法についても豊富 な知見、技術を保有している。Rögner 教授は、私の所属する三宅研究室の三宅教授とも古 くから学生交流を行うなど深い親交があり、半年の研究滞在を通して屋外環境下での実験 と三宅研究室での実験系製作を研究滞在の目的とした。同時に世界トップクラスの再生可 能エネルギー導入を推進するドイツのエネルギー体制、中でもバイオエネルギーの導入に ついて調査するため村内のエネルギー需要のすべてを再生可能エネルギーで賄うドイツで 最初の村ユーンデ村を視察することも理由のひとつであった。さらに英語での議論や異な る文化を持つ相手とのコミュニケーションを経験することは、今後国外にも活躍の場を広 げる研究者になる助けになると共に、公私問わず国際的なコネクションを築く上で重要で あると考え、渡航を志望した。 5)国際交流活動の実施内容: 私の住む学生寮の隣りの学生寮には研究室仲間が数多く住んでいた。彼らと話す機会があ った際、相手の話を聞くことに終始してしまうのでなく、自分からも意志を発信できるよ う拙いながらも自分の趣味であるサッカーや日本人にとってのドイツサッカーの立ち位置 の話をした。お互いの趣味が一致したことがきっかけとなって話が弾むことで研究後には 毎週サッカーやバーベキューを楽しむようになり、日本の友人と遜色なく気兼ねなく話せ るような友人関係が築けた。ベルリン観光、友人の結婚式、サッカー観戦などは国境を越 えた友人との良い思い出として今も深く残っている。ドイツではパーティーなどの集まり にお互い友人を招待することに躊躇しない。そういった国民性の下に身を置き、初対面で あっても相手に興味を持ち話しかけていくことが出来るようになったことで、友人がさら に増えていく喜びを知り、友人関係も国際色豊かなものとなった。また、生活の中でドイ ツ語を学びたいと強く感じるようになり、日本語に興味のあるルール大学の学生との会合 に参加してコネクションを作り、彼らとお互いの言語や文化を教え合う機会を週 2 回ほど 持つようにもなった。研究においても、3 ヶ月に 1 度の 研究報告発表の前には友人や担当教員となる博士の方 にお願いして発表練習をさせて頂き、意見を貰うことで 研究室のスタイルに合った発表に自分の研究意図を落 とし込むよう注力した。月並みではあるが、自分の意志 を何とか伝えようとすること、貴重な機会を逃さないよ うトライしてみることを渡航直後から一貫して心掛け て行えたことが非常に有意義な生活を齎してくれた。 (研究室の仲間と) 6)国際交流活動で得られた特筆すべき成果の内容: Rögner 教授の研究室での実験を通してリアクターシステムについて学び、私の所属する三 宅研究室にも小規模型のバイオリアクターの実験系の製作と運用が可能となった。不明点 に関しても、ルール大学の担当教員と連絡を取ることでスムーズに作業が進み、彼らの持 つ技術を私達の研究室に取入れることが出来た。今後、大規模の実験系に拡張し、屋外環 境での実験に移行する予定である。またバイオエネルギー村であるユーンデ村の視察にお いては、村民のバイオエネルギーで生活を自給自足することに対する強い想いと信念を聞 いた。さらに実際にその生活の中での困難についても生の声を聞けたことは、バイオエネ ルギー運用法を考える上で大きな参考となった。帰国後も続く友人関係を築くことが出来 たことも大きな成果の一つである。彼らとは SNS やメールを通じて現在も連絡を取り合っ ている。Rögner 教授の研究室の仲間が日本へ研究留学に来た際には、私の研究室のメンバ ーを紹介し、彼らがしてくれたように飲みに出かけて日本でも共に楽しい時間を過ごした。 夏休みの間にドイツから多くの友人が日本を訪れた際には、自宅である京都の片田舎に案 内し、寝食を共にすることで、観光では感じられないような日本の生活についてこちらか ら発信出来たと考えている。 7)自己アピール:(400 字以内で記載) 信念を持って諦めずやり抜くという資質が私の長所である。新たな研究テーマに取り組む ことがきっかけで今回の留学を志す運びとなり、学部生時代の卒業研究と研究滞在中の新 たな研究テーマの計画立案に追われて精神的、時間的に苦しいこともあった。しかし一度 決めたことを最後までやり抜くという強い気持ちを持つことで研究留学という貴重な機会 を頂けた。持ち前のガッツに加え、留学を通じて何事にもトライする大胆さが身に付いた。 日本を離れた新しい土地での生活は初めてであったが、偶然の一致や予期せぬ出会いが私 の楽しみや経験の幅を広げてくれた。その偶然は決して図って得られるものではなかった。 しかしそれを逃さないようには億劫にならず何かに繋がるトライが大切だと考えるに至っ た。この点で私は留学前の自分の殻を破ることが出来た。今年参加予定のマレーシアでの 国際学会においても、今回の留学での学びを生かす所存である。
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