日本小児麻酔学会第8回大会 大会プログラム 会 期:2002年9月6日 (金) ・7日 (土) 会 場:名古屋国際会議場 会 長 島 田 康 弘 (名古屋大学大学院医学系研究科 機能構築医学専攻 生体管理医学講座 教授) 大会事務局 幹事 西脇公俊、佐藤栄一 〒 466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町 65 名古屋大学大学院医学系研究科 機能構築医学専攻 生体管理医学講座内 TEL: 052-744-2341, 2340 FAX: 052-744-2342 E-mail: jspa2002@med.nagoya-u.ac.jp Home page: http://www.med.nagoya-u.ac.jp/anesth/8ped/ ご 挨 拶 日本小児麻酔学会第8回大会を開催するにあたり、会長として本大会の主題である「小児麻酔の現 状と展望」に沿ってまとめましたプログラムの特徴について一言述べさせていただきます。 私が麻酔を本格的に学び始めたのは小児麻酔であり、もう 30 年も前のロスアンジェルス小児病院 でした。そのときのことは未だに目に焼き付いていますが、小児麻酔を行う手術室の環境、症例の多 さ、テクニックの華麗さ、どれをとってもわが国は20年くらい後れをとっているという印象でした。 しかし現在では、小児麻酔の領域でもわが国から多くのことを発信できるようになったことは、欧 米の雑誌を見ても明らかであり頼もしい限りです。今回も、わが国の小児麻酔の現状を会員の皆様に 知ってもらい、明日からの臨床の参考にしていただけるようにプログラムを組ませていただきました。 この大会でもっとも重要な講演は岩井誠三記念講演です。今回は毎年ロスアンジェルス等で行われ る Pediatric Anesthesia Conference で必ず講演される、Berry 教授をお招きすることを決めました。 故岩井教授も過ごされたロスアンジェルス小児病院ゆかりの人で、きっと接点がおありになると思っ ております。 特別講演や教育講演では、麻酔周辺領域の先生方のお話を聞く機会を多く設けました。特別講演で は、新生児医療の権威でおられる仁志田教授をお招きして、新生児の生理的特長についてご講演いた だけることになりました。また、招待講演では韓国の国立ソウル大学の金先生、米国スタンフォード 大学の Hammer 先生をお招きして、それぞれ小児 ICU および脊椎麻酔と全身麻酔併用による心臓外 科麻酔についてご講演いただけることになりました。シンポジウムは小児周術期のペインコントロー ル、ワークショップは小児気道管理の工夫というテーマで、それぞれ Hammer 先生および米国イン ディアナ大学のDierdorf教授のご講演に続いて各施設での工夫について発表をいただき、大いに議論 していただこうという企画を組ませていただきました。ことに気道管理の工夫につきましては、すべ て公募から 10 題の演題を選ばせていただきました。 一般演題につきましては、期限内の応募が少なく、期限延長やお願いをいたしましたが、その結果 96題もの応募をいただき、スタッフ一同うれしい悲鳴を上げました。本当に皆様のおかげです。あり がとうございました。昨年度好評だったポスター展示形式を今年も踏襲させていただくことといたし ました。座長とコメンテータの先生方には進行について多大なご助力をいただくことになりますが、 よろしくお願いいたします。 市民公開講座も当学会として重要な企画の一つになりつつあります。今回は「子どもの事故を予防 する」 「子どもの救急蘇生の実際」といった、市民の皆様に役立つ知識を得ていただける企画といた しました。時間があればぜひ参加していただきたいと思います。 私どもは大学病院ですので、小児麻酔に関する知識はどうしても遅れがちとなります。今回の企画 につきましては全国の小児病院の先生方から貴重なご提言、ご示唆を頂戴しましたことを感謝いたし まします。また、大会運営に当たっては、幹事の西脇公俊、佐藤栄一を中心に教室員一同一丸となっ てこれまで努力してまいりましたが、何かと不行き届きの点があるかと存じます。どうかその都度ご 指摘くだされば幸いです。皆様よろしくお願い申し上げます。 2002 年9月 日本小児麻酔学会第8回大会 会 長 島 田 康 弘 -3- 日本小児麻酔学会第8回大会 会 長 島田康弘(名古屋大学大学院医学系研究科 機能構築医学専攻 生体管理医学講座 教授) 会 期 2002年9月6日(金)・7日(土) 会 場 名古屋国際会議場 〒 456-0036 名古屋市熱田区熱田西町1番1号 TEL 052-683-7711 FAX 052-683-7777 口演会場 (4号館1階 白鳥ホール北) 総会、講演、シンポジウム、ワークショップ、教育セミナー 展示会場 (4号館1階 白鳥ホール南) 医療機器展示、医学書展示販売、ドリンクコーナー P1会場 (4号館1階 白鳥ホール南) 一般演題(ポスター A, B, C, D 討論1日目) P2会場 (4号館3階 会議室 432) 一般演題(ポスター E, F, G, H 実習会場 (4号館3階 会議室 431) ラリンジアルマスク実技講習会(2日目) ランチョンセミナー 討論2日目) 市民公開講座 (2号館1階 展示室 211) 大会本部 (4号館3階 会議室 436) 総合受付 (4号館1階白鳥ホール前) 新規入会受付、年会費納入、学会誌(抄録集)販売等 学 会 会 議 理 事 会 2002年9月5日(木)16:00∼18:00 ホテルグランコート名古屋 5階ローズルームⅠ 評 議 員 会 2002年9月6日(金)12:10∼13:00 名古屋国際会議場 2号館1階展示室212 総 会 2002年9月6日(金)16:00∼16:30 名古屋国際会議場 4号館1階白鳥ホール北(口演会場) 医療機器展示 日 時 2002年9月6日(金)・7日(土) 会 場 名古屋国際会議場4号館1階 白鳥ホール南(展示会場) 会員懇親会 日 時 2002年9月6日(金)18:45開宴 会 場 名古屋国際会議場 1号館4階 レセプションホール 会 費 無料(全員ご参加ください。) 市民公開講座 日 時 2002年9月7日(土)14:00∼16:00 会 場 名古屋国際会議場 2号館1階 展示室211 -5- 日本小児麻酔学会第8回大会 運営要項 1.参加資格 (1)会期中の学術集会、医療機器・ポスター展示等は全ての参加登録者に公開されます。 (2)本大会に参加される方は、全て参加登録を行ってください。 (3)一般演題の演者・共同演者は本学会会員に限ります。未入会の方は至急入会手続きをおとりください(会場での 入会受付も可能です)。 2.参加登録 (1)参加登録は会場にて午前8時 40 分より受け付けます(事前登録はありません)。 (2)参加登録費は 10,000 円です。 (3)参加登録と引き換えに名札および参加証明書をお渡しします。会場内では必ず名札をお付けください。 3.プログラム・抄録集について (1)このプログラム・抄録集は、会場では配布いたしませんので、各自ご持参ください。 (2)学会当日に受付にて有料販売も行ないます。 4.講演・シンポジウム・ワークショップ・教育セミナー A.演者へのお願い (1)1面のみの映写です。 (2)司会者の指示に従い、終了時刻厳守でお願いします。 (3)ワークショップの発表はスライドにてお願いします。 (4)スライド発表について 1)Kodak のカルーセルを使用します。 2)枚数制限はありませんが、講演は予め指定された時間内でお願いします。 3)同じスライドを複数回使用する場合は、別々にご用意ください。 4)スライドの操作は演者ご自身でお願いします。 (5)スライドの準備・撤収(口演会場前に準備のための試写コーナーを用意します) 1)講演の 30 分前までに各自でセットし、試写確認してください。 2)セッション終了後 1 時間以内にご自身でお引き取りください。 (6)コンピューターを使用される場合について 1)コンピューター本体はご自分でご用意ください(メディアのみの受付はいたしません)。 2)コンピューターの設定で、外部画面出力となっているか予め各自準備確認をしてください。 3)外部出力端子はD-sub15ピン(ミニ)を用意しております。特殊なアダプターが必要な場合各自でご用意くだ さい(例えば VAIO ノート等では外部ディスプレーにつなぐ専用アダプターが必要な場合があります)。 4)コンピューター設定確認のための試写コーナーを口演会場前に用意します。実際に外部画面につないでいただ き、表示可能か確認していただきます。この設定確認は1時間以上前 (できれば、会場に到着されたらまず初 めに立ち寄ってください)までに行ってください。直前に確認され、万一外部画面に写らない場合はコン ピュータープレゼンテーションが不可能となる場合も考えられます。 5)口演開始 20 分前には、口演会場前で受付を済ませ、口演会場内次演者席についてコンピューターの接続・立 ち上げなどの準備して下さい。スクリーンへの接続切り替えだけで、すぐに口演を始めていただけるように準 備しております。演壇には電源をご用意いたします。 -6- (7)シンポジウム・ワークショップの打ち合わせは以下を予定しています。 シンポジウム 2002年9月6日(金) 9:00∼10:00 4号館3階 会議室434 ワークショップ 2002年9月6日(金) 9:00∼10:00 4号館3階 会議室435 各自、御参集ください。 B.司会者へのお願い (1)各セッションの開始 10 分前までに会場にお入りください。 (2)会場前の司会受付にプログラム開始 30 分前にお越しください。 (3)講演時間有効活用のため、司会者による演者経歴紹介はごく簡単にお願いします。 (4)終了時刻は厳守ください。 5.一般演題(ポスター) A.発表形式 (1)一般演題はすべて、ポスターでのご発表となります。 (2)ポスターは学会期間中を通して展示され、会期途中でのポスターの入れ替えは行いません。多くの参加者の方が 一般演題のご発表を閲覧できるようにしました。じっくりとご検討いただきたく存じます。 (3)それぞれの一般演題を討論いただく時間を設けます(ポスター番号 A, B, C, D は9月6日(金)16:30 ∼ 18:30 P1会場、ポスター番号 E, F, G, H は9月7日(土)14:00 ∼ 16:00 P2会場)。討論はポスター会場で、座長 の先生の指示に従って行ってください。それぞれの演題の要旨は座長の先生にご解説いただき、それに対して発 表者に1∼2分程度の意見を述べていただく予定にしております。スライド等は使用できません。 B.ポスター展示 (1)ポスター展示会場 ポスター番号 A, B, C, D はP1会場(4号館1階 白鳥ホール南) ポスター番号 E, F, G, H はP2会場(4号館3階 会議室 432) 90 cm 30 cm (2)掲示開始時刻 9 月 6 日(金)8:40 (3)撤収時間 9 月 7 日(土)16:00 ∼ 16:30 21 cm * 時間内に撤去されない場合は学会事務局で取り外し、処分させて いただきます。 (4)ポスターボードの仕様:縦 180cm、横 90cm のポスターボードを準 備します。ポスターの左上 21cm × 30cm(A4 サイズ横)のスペー スは演題番号を記入しますので、その部分は使用できません。それ 以外のポスターボード枠内のレイアウトは自由です。ただし、抄録 をポスターボードの最も見やすい場所に貼って下さい。 180 cm (5)実物の資料、文献などの貼付はご自由です。 C.座長とコメンテーターの先生へのお願い (1)セッションの開始・終了の放送はございません。ポスター討論の進 行は座長の先生におまかせします。 (2)プロジェクターや OHP などの使用はできません。 (3)1時間に 10 ∼ 11 の演題を討論いただくことになりますので、座長 の先生にはかなり工夫していただくことになると存じます。第7回 大会のポスター討論形式(以下)を参考にしていただければ幸いで す。 1)座長とコメンテーターの先生には、ご担当セッションの全演題の 要旨を事前に把握していただきます。 2)その上で、ご担当の演題をいくつかの小グループに分けていただきます。 -7- 3)小グループごとに、座長の先生がご理解されている演題の要旨を座長の先生自らがご解説になり、それに対し て、それぞれの演題の発表者に1∼2分程度の意見を述べていただきます。コメンテーターの先生には、必ず しも全演題に対してコメントしていただく必要はなく、重要だと思われる演題に対してのご意見を述べていた だきます。時間が許せば、聴衆からの質問を受け付けます。 4)発表者に自由に発表していただくと時間が超過する可能性が高いので、それぞれのセッションの進行は、座長 の先生が統括します。定められた時間以外にも自由に討論できるポスター展示の利点を活かされるようご配慮 ください。 D . 質疑応答 (1)演者の先生方は、指定された討論時間のほか、休憩時間などにポスターの前に立ち、参加される方からの質問に お答えできるようにポスター近くに待機いただければ幸いです。 (2)質問用紙や配布資料のご準備、発表者の電子メールアドレスのポスターへの記載、演者がポスター前に立つ予定 時間を示すなど、有意義な意見交換ができる方法を各自ご考案ください。 6.ラリンジアルマスク実技講習会 ラリンジアルマスク実技講習会を9月7日(土)12:30 ∼ 16:00 実習会場(4号館3階 会議室 431)にて行います。 13:00 からと 15:00 からの各 30 分間に、サテライト講演 演者 Dr. Stephen F. Dierdorf による直接指導が受けられる予 定です。奮ってご参加ください。それ以外の時間も随時実習していただけます。 7.大会中の呼び出し・伝言など (1)4 号館1階受付近辺の掲示板を各自でご利用ください。サブスライドによる呼び出しは行いません。 (2)携帯電話はマナーモードに設定してください。 8.ドリンクコーナー・昼食 (1)両日ともランチョンセミナーの会場で製薬会社・医療機器メーカーの協賛により昼食を準備します。 (2)ドリンクコーナーは展示会場(4号館1階 白鳥ホール南)に設けます。 9.会員懇親会 9月6日(金)の会員懇親会(1号館4階 レセプションホール 18:45 開宴)へもご参加ください。 -8- 会 場 へ の 交 通 案 内 図 至名古屋空港 TO NAGOYA INT'L AIRPORT 市役所 SHIYAKUSHO 久屋大通 丸の内 錦通 名古屋 市 道 江 川 線 NAGOYA 栄 伏見 地下鉄鶴舞線 SUBWAY TSURUMAI LINE 名鉄 上前津 伏 見 通 近鉄 KINTETSU RAILWAY JR東海道本線 KAMIMAEZU JR中央本線 金山 JR TOKAIDO HONSEN SHINKANSEN 地下鉄名城線 SUBWAY MEIJO LINE FUSHIMI MEITETSU RAILWAY 新幹線 地下鉄桜通線 地下鉄東山線 SUBWAY HIGASHIYAMA LINE SAKAE 堀 川 SUBWAY SAKURADORI LINE HISAYA-ODORI MARUNOUCHI JR CHUO HONSEN KANAYAMA 西高蔵 4 1 1 9 NISHI TAKAKURA 日比野 HIBINO 名古屋 国際会議場 NAGOYA CONGRESS CENTER 熱田 ATSUTA 神宮前 JINGUMAE 1 市 道 江 川 線 中央卸売市場 西高蔵 NISH TAKAKURA 日比野 名古屋国際会議場 NAGOYA CONGRESS CENTER(NCC) MEIJO LINE 地 下 鉄 名 城 線 中部圏の表玄関名古屋は、陸、海、空の交通の結節点です。 名古屋空港は、世界の33都市と直行便で結ばれ、名古屋駅は JR、私鉄、地下鉄など鉄道網が集中しています。新幹線のぞ みで東京から1時間 36 分、大阪から 52 分。名古屋空港から 名古屋国際会議場には自動車で約40分、都心からは地下鉄を 使い約 10 分とアクセスの良さが自慢です。 伏 見 通 白鳥庭園 SHIROTORI GARDEN 1 地 下 鉄 名 城 線 MEIJO LINE 19 N 市内交通は ●地下鉄 名城線名古屋港行きで「日比野」または同線新瑞 橋行きで「西高蔵」下車、徒歩5分 ●電 車 JR または名鉄で「金山」下車、地下鉄に乗り換 え「日比野」または「西高蔵」下車、徒歩5分 ●自動車 名古屋駅から約 15 分、栄から約 10 分 熱 田 神 宮 ATSUTA SHRINE 名古屋空港から国際会議場へは 約 40 分 ●空港バス 約55分、 「黒川」下車、地下鉄に乗り換え名城線 「日比野」または「西高蔵」下車、徒歩5分 ●タクシー -9- 会 場 案 内 図 SHIRATORI HALL 白鳥ホール 4号館1F∼2F 搬入口 控室 EV パントリー ド リ ン ク コ ー ナ ー 搬入口 WC WC P1会場 演者控室 口演会場 展示会場 EV 書籍展示・販売 クローク WC エスカレーター WC ロビー WC 1号館 総合受付 EV 大会本部 437 436 435 434 433 会議室 会議室 会議室 会議室 会議室 CONFERENCE ROOMS 会議室〈4号館〉 打合せ室 演者控室 EV 3F 中庭 中庭 ロビー WC WC EV WC ロビー 3号館 - 10 - プレス 控室 ルーム 控室 432 会議室 P2会場 431 会議室 実習会場 1号館 EXHIBITION ROOMS 展示室 2号館1F 評議員会会場 市民公開講座 9月6日(金) 12:10∼13:00 9月7日(土) 14:00∼16:00 1号館 213 会議室 ロビー 受付コーナー クローク WC エスカレーター ロビー EV EV 控室 控室 212 展示室 WC 211 展示室 WC 搬入口 RECEPTION HALL レセプションホール 1号館4F 会議室 141 WC WC 懇親会会場 (西) WC (東) EV パントリー - 11 - EV EV 日本小児麻酔学会第8回大会日程表 〔第1日目〕平成 14 年 9 月 6 日(金) 8:40 9:10 9:15 P2 会場 口演会場 P1 会場 (白鳥ホール北) (白鳥ホール南) (4 号館 3 階 会議室 432) 一般演題 (ポスター展示) 一般演題 (ポスター展示) 評議員会会場 展示会場 (2 号館1階 (白鳥ホール南) 展示室 212) 開 場 開会式 招待講演1 Clinical evaluation on pediatric intensive care of Seoul national universitiy children’s hospital Chong Sung Kim(北島敏光) 10:00 サテライト講演1 Anesthesia for thoracic surgery in children Gregory B Hammer(丸山一男) A 病院システム・ 疼痛管理 岩井誠三記念講演 B 気道管理1 11:00 Management of pain and nausea and vomiting in children Frederic A Berry(島田康弘) 12:00 E 特殊な疾患 C 合併症・モニター・ 技術開発 D 気道管理2・肝移植 F 術前管理・ 術後覚醒・ 日帰り麻酔・ 鎮静 G 心臓・ 大血管疾患 ランチョンセミナー1 周術期における選択的β1拮抗薬の意 義と今後の展望 H 周産期・新生児・ 未熟児 林 行雄(小松 徹) 13:00 12:10 ∼ 13:00 評議員会 招待講演2 The use of regional anesthesia in combination with general anesthesia for cardiac surgery in children Gregory B Hammer(尾原秀史) 14:00 シンポジウム 15:00 16:00 小児周術期ペインコントロール (秦 恒彦、盛 直久/Gregory B Hammer*) 16:00 ∼ 16:30 総 会 教育セミナー1 17:00 小児脳神経外科手術の麻酔 ポスター討論 川名 信(前川信博) 教育セミナー2 A(朝原章二 / 岩崎 寛 *) 自閉症症例の周術期医療 B(羽鳥文麿 / 安岡朝子 *) 重見研司(田中義文) 教育セミナー3 18:00 小児の麻酔回路 ポスター討論 大畑 淳(鈴木玄一) C(福光一夫/小久保荘太郎*) 医 療 機 器 ・ 書 籍 展 示 ・ ド リ ン ク コ ー ナ ー D(永田 昇 / 村川雅洋 *) 19:00 会 員 懇 親 会 (1号館4階 レセプションホール、18:45 開宴) ( ) :座長、 *:コメンテーター - 12 - 〔第 2 日目〕平成 14 年 9 月 7 日(土) P2 会場 口演会場 P1 会場 (白鳥ホール北) (白鳥ホール南) 実習会場 市民公開講座 展示会場 (4 号館 3 階 (4 号館 3 階 (2 号館1階 (白鳥ホール南) 会議室 432) 会議室 431) 展示室 211) 9:00 サテライト講演2 The laryngeal mask airway for pediatric anesthesia Stephen F Dierdorf(宮坂勝之) 10:00 ワークショップ 小児気道管理の工夫 11:00 一般演題 一般演題 (ポスター展示) (ポスター展示) (山下正夫、石部裕一 / Stephen F Dierdorf*) 12:00 ランチョンセミナー2 アメリカにおける超短時間作用性 麻薬を使用した小児痲酔の臨床 A 病院システム・ E 特殊な疾患 疼痛管理 F 術前管理・ B 気道管理1 術後覚醒・ 日帰り麻酔・ C 合併症・ 鎮静 モニター・ 技術開発 G 心臓・ 大血管疾患 D 気道管理2・ 肝移植 H 周産期・ 新生児・ 未熟児 上園晶一(熊澤光生) 13:00 Stephen F Dierdorf 直接指導 特別講演 新生児の生理学的特長 仁志田博司(三川 宏) 14:00 教育セミナー4 のびる生存限界と低出生体重児の麻酔 木内恵子(川島康男) 教育セミナー5 先天性心疾患の手術適応と至適手術時期 15:00 斎藤彰博(土肥修司) 教育セミナー6 知っておきたい小児外科手術時に起こり得る合併症 安藤久實(太城力良) 教育セミナー7 最近の小児の静脈麻酔 16:00 木村智政(藤原孝憲) ラリンジアル マスク E(広木公一 / 野口良子 *) 実技講習会 ポスター討論 F(古家 仁 / 村田 洋 *) ポスター討論 G(鈴木美佐子 / 森田 潔 *) H(照井克生 / 深津 修 *) 市民公開講座 1子どもの事 故を予防する 山中龍宏(佐藤光晴) Stephen F Dierdorf 2小児救急蘇生 直接指導 の実際 医 療 機 器 ・ 書 籍 展 示 ・ ド リ ン ク コ ー ナ ー 高野碧年(佐藤光晴) 閉会式 ( ) :座長、 *:コメンテーター - 13 - 目 次 岩井誠三記念講演/ Iwai Memorial Lecture 第1日目 9月6日(金) 口演会場 11:00∼12:00 Management of pain and nausea and vomiting in children Frederic A Berry, MD (Department of Anesthesiology, University of Virginia, USA) 司会 島田康弘(名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学) p27 特別講演/ Special Lecture 第2日目 9月7日(土) 口演会場 13:00∼14:00 新生児の生理学的特長 仁志田 博司(東京女子医科大学母子総合医療センター)/司会 三川 宏(杏林大学医学部 麻酔科学) p35 招待講演/ Invited Lecture 招待講演1 第1日目 9月6日(金) 口演会場 9:15∼10:00 Clinical evaluation on pediatric intensive care of Seoul national university children’s hospital Chong Sung Kim, MD (Department of Anesthesiology, Seoul National University, Korea) 司会 北島敏光(獨協医科大学 麻酔科学) p39 招待講演2 第1日目 9月6日(金) 口演会場 13:00∼14:00 The use of regional anesthesia in combination with general anesthesia for cardiac surgery in children Gregory B Hammer, MD (Department of Anesthesia and Pediatrics, Stanford University Medical Center, USA) 司会 尾原秀史(神戸大学大学院医学系研究科 周術期管理学) p41 サテライト講演/ Satellite Lecture サテライト講演1 第1日目 9月6日(金) 口演会場 10:00∼11:00 (丸石製薬・ダイナボット株式会社との共催) Anesthesia for thoracic surgery in children Gregory B Hammer, MD (Department of Anesthesia and Pediatrics, Stanford University Medical Center, USA) 司会 丸山一男(三重大学医学部 麻酔学) サテライト講演2 第2日目 9月7日(土) 口演会場 9:00∼10:00 p53 (東機貿株式会社との共催) The laryngeal mask airway for pediatric anesthesia Stephen F Dierdorf, MD (Department of Anesthesia, Indiana University School of Medicine, USA) 司会 宮坂勝之(国立育成医療センター 手術集中治療科) p61 教育セミナー/ Educational Seminar 教育セミナー1 第1日目 9月6日(金) 口演会場 16:30∼17:00 小児脳神経外科手術の麻酔 川名 信(北海道立小児総合保健センター 麻酔科)/司会 前川信博(香川医科大学 麻酔・救急医学) - 14 - p67 教育セミナー2 第1日目 9月6日(金) 口演会場 17:00∼17:30 自閉症症例の周術期医療 重見研司(愛知県心身障害者コロニー中央病院 麻酔科)/司会 田中義文(京都府立医科大学 麻酔学) p69 教育セミナー3 第1日目 9月6日(金) 口演会場 17:30∼18:00 小児の麻酔回路 大畑 淳(長野県立こども病院 麻酔科)/司会 鈴木玄一(順天堂大学医学部 麻酔科学) p71 教育セミナー4 第2日目 9月7日(土) 口演会場 14:00∼14:30 のびる生存限界と低出生体重児の麻酔 木内恵子(大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科)/司会 川島康男(帝京大学医学部 麻酔科学) p73 教育セミナー5 第2日目 9月7日(土) 口演会場 14:30∼15:00 先天性心疾患の手術適応と至適手術時期 斎藤彰博(静岡県立こども病院 循環器科)/司会 土肥修司(岐阜大学医学部 麻酔・蘇生学) p75 教育セミナー6 第2日目 9月7日(土) 口演会場 15:00∼15:30 知っておきたい小児外科手術時に起こり得る合併症 安藤久實(名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科学)/司会 太城力良(兵庫医科大学 麻酔科学) p77 教育セミナー7 第2日目 9月7日(土) 口演会場 15:30∼16:00 最近の小児の静脈麻酔 木村智政(名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学)/司会 藤原孝憲(神奈川県労働衛生福祉協会) p79 シンポジウム/ Symposium 第1日目 9月6日(金) 口演会場 14:00∼16:00 小児周術期ペインコントロール 司会 秦 恒彦(福岡市立こども病院 麻酔科) 司会 盛 直久(岩手医科大学医学部 麻酔科) コメンテーター Gregory B Hammer, MD (Stanford University Medical Center, USA) S-01, 02 司会の言葉 S-1 S-2 S-3 S-4 p83 先取り鎮痛としての全身麻酔下脊椎麻酔の応用 堀本 洋(静岡県立こども病院 麻酔科) p84 硬膜外麻酔併用 住吉理絵子(福岡市立こども病院・感染症センター) p84 PCA を主体とした術後疼痛管理体制 近藤陽一(国立育成医療センター 手術集中治療部) p85 小児におけるケタミン併用麻酔後の術後疼痛管理 谷津祐市(弘前大学医学部 麻酔科学) p85 - 15 - ワークショップ / Workshop 第2日目 9月7日(土) 口演会場 10:00∼12:00 小児気道管理の工夫 司会 山下正夫(茨城県立こども病院 麻酔科) 司会 石部裕一(鳥取大学医学部 麻酔・集中治療医学) コメンテーター Stephen F Dierdorf, MD (Indiana University School of Medicine, USA) W-001, 002 司会の言葉 W-01 W-02 W-03 W-04 W-05 W-06 W-07 W-08 W-09 W-10 p89 小児におけるラリンジアルマスク挿入法の工夫 鳥取大学 医学部 麻酔科 1、鳥取大学 医学部 附属病院 高次集中治療部 2 永井小夜 1、稲垣喜三 1、廣澤壽一 2、石部裕一 1 p90 小児におけるラリンジアルマスクを用いた分離肺換気 宝塚市立病院 麻酔科 1、兵庫医科大学 麻酔科学教室 2 藤原俊介 1、辻本三郎 2、太城力良 2 p90 先天性左横隔膜ヘルニア術後乳児の右肺中葉切除の麻酔で分離肺換気を試みた経験 磐城共立病院 麻酔科 1、茨城県立こども病院 2 斎藤歌織 1、新井としみ 2、山下正夫 2 p91 小さい子にカフ付き気管チューブはいけないのか? 香川医科大学 医学部 麻酔・救急医学講座 1、香川小児病院 麻酔科 2 中村玲子 1、蔵谷紀文 2、小野純一郎 2、弓場智子 2、森下 淳 2、前川信博 1 p91 小児では予測できない挿管困難に遭遇する場合がある ― 挿管困難セットを準備することの有用性 神奈川県立こども医療センター 矢数芳英、広木公一 p92 新生児口唇口蓋裂手術での気道管理 藤田保健衛生大学 医学部 麻酔科 広瀬紀子、貝沼関志、山田守正、大原義隆、角野宏佳、増田健太郎、加藤忠、黒田俊久、木村直暁 p92 ラリンジアルマスクと細径気管支ファイバースコープで挿管に成功した未熟児挿管困難症例 熊本市立熊本市民病院 麻酔科 増田和之、満瀬哲郎、橋口清明、城 嘉孝、赤坂威史、尾方信也 p93 意識下ラリンジアルマスク挿入後気管挿管した、ピエールロバン症候群の一例 大阪医科大学 麻酔科学教室 1、康生会武田病院 麻酔科 2 林 さつき 1、黒嵜明子 1、宇田るみ子 1、大塚みき子 2、南 敏明 1 p93 Y型気管チューブによる長期気道管理 東京都立八王子小児病院 麻酔科 深津 修、兵頭亜紀子 p94 HUMMAXTM 加温加湿器を用いた麻酔回路 長野県立こども病院 麻酔科 1、s メトラン 2 須藤貴世子 1、大畑 淳 1、井口まり 1、根本三雄 2 p94 - 16 - ランチョンセミナー/ Luncheon Seminar ランチョンセミナー1 第1日目 9月6日(金) 口演会場 12:10∼12:55 (小野薬品工業株式会社との共催) 周術期における選択的β1拮抗薬の意義と今後の展望 林 行雄(大阪大学大学院医学系研究科 生体調節医学)/司会 小松 徹(愛知医科大学医学部 麻酔科学) ランチョンセミナー2 第2日目 9月7日(土) 口演会場 12:10∼12:55 p97 (ヤンセンファーマ株式会社との共催) アメリカにおける超短時間作用性麻薬を使用した小児麻酔の臨床 上園晶一(東京女子医科大学 麻酔科)/司会 熊澤光生(山梨医科大学 麻酔科学) p99 市民公開講座 第2日目 9月7日(土) 2号館1階 展示室211 14:00∼16:00 司会 佐藤光晴(名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学) 市民公開講座1 子どもの事故を予防する 山中龍宏(緑園こどもクリニック) p103 市民公開講座2 小児救急蘇生の実際 高野碧年(名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学) - 17 - p105 一般演題(ポスター) 第1日目 9月6日(金) P1会場(白鳥ホール南) 16:30∼17:30 A 病院システム・疼痛管理 座長:朝原章二(国立育成医療センター 手術集中治療部)、コメンテーター:岩崎 寛(旭川医科大学医学部 麻酔・蘇生学) A-01 A-02 A-03 A-04 A-05 A-06 A-07 A-08 A-09 A-10 A-11 国立成育医療センター手術室の紹介 国立成育医療センター 手術集中治療部 朝原章二、林 玲子、田中 基、田村高子、近藤陽一、宮坂勝之 p109 国立成育医療センターでの電子的麻酔記録システム(MightyComp) 国立成育医療センター 手術集中治療部 麻酔科 阿部世紀、林 玲子、田中 基、田村高子、近藤陽一、朝原章ニ、宮坂勝之 p109 福岡小児麻酔カンファレンスの紹介∼ 17 年間を振り返って∼ 福岡市立こども病院・感染症センター 麻酔科 自見宣郎、住吉理絵子、水野圭一郎、森本文子、秦 恒彦 p110 小児鼡径ヘルニア根治術に対する腸骨鼡径・腸骨下腹神経ブロック;穿刺ポイントの検討 りんくう総合医療センター 市立泉佐野病院 麻酔科 佐々岡紀之、吉谷健司、鈴木敦裕 p110 仙骨麻酔の有効性の検討∼鼠径ヘルニアと臍ヘルニアを比較して∼ 名古屋第一赤十字病院 麻酔科 岡村ひろみ、小栗幸一、川瀬 恭、藤原祥裕 p111 脊椎手術における術野からの硬膜外カテーテル留置の試み 大阪市立総合医療センター小児麻酔科 中尾美保、藤井 崇、辻井健二、永田 昇、中田一夫 p111 小児漏斗胸患者の周術期における鎮痛法、術後経過についての検討 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 1、大垣市民病院 2 鳥居 圭 1、西脇公俊 1)、鈴木章悟 2)、佐藤光晴 1)、木村智政 1)、島田康弘 1) p112 小児心臓手術麻酔におけるくも膜下モルヒネ投与併用についての検討 静岡県立こども病院 麻酔科 竹内和世、遠山貴之、尾松徳則、石垣敬子、今村 誠、堀本 洋 p112 小児の扁桃摘出術の術後痛に対する PCA の使用経験 神奈川県立 こども医療センター 麻酔科 1、横浜南共済病院 麻酔科 2 新堀博展 1、三輪高明 2)、上島賢哉 1)、広木公一 1) p113 持続フェンタニール投与による小児外科手術の疼痛管理 総合病院 中津川市民病院 1、愛知医科大学 麻酔科学講座 2 神取慶治 1、小松 徹 2) p113 思春期のターミナルケアの一例 静岡県立こども病院 麻酔科 1、獨協医科大学病院 麻酔科学教室 2 臼井要介 1、桜田育子 1)、森田正人 1)、蕨 謙吾 1)、花形和之 1)、堀本 洋 1)、北島敏光 2) p114 - 18 - B 気道管理1 座長:羽鳥文麿(千葉県こども病院 麻酔科集中治療科)、コメンテーター:安岡朝子(群馬県立小児医療センター 中央手術部) B-01 B-02 B-03 B-04 B-05 B-06 B-07 B-08 B-09 B-10 気管支ブロッカーを用いて片肺換気を行った症例の検討 大阪市立総合医療センター 小児麻酔科 1、淀川キリスト教病院麻酔科 2 永田 昇 1、辻井健二 1)、藤井 崇 1)、中尾美保 1)、中田一夫 1)、吉本圭一 2) p114 Fogarty カテーテルによる分離肺換気が有用であった肺嚢胞切除術の1症例 奈良県立医科大学 麻酔科学教室 1、奈良県立医科大学 中央手術部 2 瓦口至孝 1、呉原弘吉 2)、堀内俊孝 1)、北口勝康 1)、古家 仁 1) p115 Nuss 法の麻酔管理 藤枝市立総合病院 麻酔科 長谷川愼一、伊藤正樹、野村明日香、高橋健二 p115 胸腔鏡補助下胸骨挙上術(Nuss 法)の麻酔管理 福島県立医科大学 医学部 麻酔科 六角由紀、大槻 学、村川雅洋 p116 新生児胸腔鏡下手術において胸腔内加圧による低酸素血症が見られた一症例 獨協医科大学 麻酔科学教室 石川和由、手塚正智、恵川宏敏、濱口眞輔、奥田泰久、北島敏光 p116 胸腔鏡下手術における換気方法の検討 群馬県立小児医療センター 麻酔科 原 哲也、安岡朝子 p117 左肺分画症の周術期管理 長野県厚生連佐久総合病院 麻酔科 室井賢一 p117 術前の気道の炎症症状が原因と考えられた術後胸部レントゲン異常を認めた症例 大阪府済生会 富田林病院麻酔科 1、大阪市立大学医学部麻酔集中治療学教室 2 梁 権守 1、野田啓一 1)、中本あい 2) p118 術前のバンコマイシン投与により難治性気管支攣縮をきたした1症例 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 浅野直子、矢野華代、西脇公俊、木村智政、島田康弘 p118 小児巨大縦隔腫瘍患者の麻酔管理 大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科 谷口晃啓、春名純一、木内恵子、宮本善一、平尾 収、北村征治 p119 第1日目 9月6日(金) P1会場(白鳥ホール南) 17:30∼18:30 C 合併症・モニター・技術開発 座長:福光一夫(大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科),コメンテーター:小久保荘太郎(聖隷浜松病院 麻酔科) C-01 C-02 一般病院における小児のインシデント発生率に対する年齢の影響 愛知医科大学 医学部 医学科 麻酔科学講座 廣川 満、伊藤 洋、洪 淳憲、堀場 清、小松 徹 p119 名古屋大学医学部附属病院における麻酔中に発生したオカーレンス報告の検討 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 矢野華代、西脇公俊、佐藤栄一、佐藤光晴、木村智政、島田康弘 p120 - 19 - C-03 C-04 C-05 C-06 C-07 C-08 C-09 C-10 C-11 小児カテコラミンルートに関するトラブルの原因とその対策:ロック付きシリンジと三方活栓の接続について 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 1、大垣市民病院 2 高野碧年 1、西脇公俊 1)、鈴木章悟 2)、矢野華代 1)、佐藤栄一 1)、佐藤光晴 1)、木村智政 1)、島田康弘 1) p120 中心静脈カテーテル留置のための内頚静脈穿刺後に椎骨動静脈瘻を生じた一例 兵庫県立こども病院 麻酔科 香川哲郎、鈴木 毅、村田 洋 p121 気管挿管後に反回神経麻痺をきたした一例 国立療養所 三重病院 麻酔科 1、三重大学医学部麻酔学教室 2 大井由美子 1、丸山一男 2) p121 小児における加湿加温器の安全性の検討 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 梅田亜希子、矢野華代、西脇公俊、木村智政、島田康弘 p122 Off-line pulse oximetry による小児睡眠時呼吸障害のスクリーニング 大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科 宮本善一、井口直也、木内恵子、福光一夫、谷口晃啓、平尾 収 p122 扁桃・アデノイド摘出術後の小児の睡眠時呼吸障害の経日経過 ― Off-line pulse oximetry を用いて ― 大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科 宮本善一、井口直也、木内恵子、福光一夫、谷口晃啓、平尾 収 p123 持続髄液圧モニター下で麻酔管理した頭蓋形成術の一例 市立四日市病院 麻酔科 1、名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 2 野々垣幹雄 1、近藤潤夫 1)、加藤潤子 1)、菅原昭憲 1)、西脇公俊 2)、近藤博子 2)、島田康弘 2) p123 小児用胃用カテーテルを用いた簡易食道心電図電極 京都府立医科大学 麻酔学教室 田中義文 p124 新生児、乳児、小児における心血管整合バランスの測定 京都府立医科大学 麻酔学教室 1、愛知県心身障害者コロニー中央病院 麻酔科 2 林 和子 1、重見研司 2)、田中義文 1) p124 D 気道管理2・肝移植 座長:永田 昇(大阪市立総合医療センター 小児麻酔科)、コメンテーター:村川雅洋(福島県立医科大学医学部 麻酔科学) D-01 D-02 D-03 D-04 口蓋床装置装着術の麻酔の検討 東海大学 医学部 外科学系 麻酔科学部門 新田雅彦、福山東雄、斉藤 聡、平澤美代子、長谷川啓一郎、鈴木利保 p125 脳性麻痺患者における腹腔鏡下手術の麻酔 旭川医科大学 医学部 麻酔科・蘇生科 岡田華子、仙石和文、高畑 治、岩崎 寛 p125 喉頭気管分離手術の麻酔経験 仙台赤十字病院 麻酔科 1、東北大学 医学部附属病院 麻酔科学講座 2 嶋 武 1、千葉聡子 1)、村上憲孝 1)、加藤正人 2) p126 気管無形成症の周術期管理の経験 香川小児病院 麻酔科 1、香川医科大学 麻酔・救急医学講座 2 森下 淳 1、前川信博 2)、弓場智子 1)、小野純一郎 1)、蔵谷紀文 1) p126 - 20 - D-05 D-06 D-07 D-08 D-09 D-10 D-11 気管狭窄に対する肺動脈形成術、気管形成術を人工心肺下に行った際、無気肺を生じたと思われる1症例 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 1、市立四日市病院 2 小林 信 1、木村智政 1)、加藤潤子 2)、西脇公俊 1)、島田康弘 1) p127 加齢により挿管困難は緩和されるのか?:典型的挿管困難症での検討 大阪市立総合医療センター 小児麻酔科 辻井健二、今中宣依、藤井 崇、中田一夫、永田 昇 p127 ファイバースコープ挿管用換気マスクの作り方 神奈川県立こども医療センター 矢数芳英、広木公一 p128 小児のトラキライトを用いた挿管における気管チューブ先端位置に関する検討 神奈川県立 こども医療センター 麻酔科 1、東京医科大学病院 麻酔科 2 新堀博展 1、石崎 卓 2)、何 廣臣 1)、広木公一 1) p128 当施設における在宅気管切開・酸素・人工呼吸療法の実情と問題点 北海道立小児総合保健センター 麻酔科 川名 信、豊島由希、佐藤 仁、平田直之 p129 小児の生体肝移植術中に reperfusion syndrome を引き起こし心停止に至った症例 神奈川県立こども医療センター 麻酔科 東光美果、広木公一 p129 当院における生体肝移植の麻酔管理 自治医科大学 麻酔科学集中治療医学講座 蛭田章子、高野友美子、鈴木英雄、蛭田昌宏、平林由広、瀬尾憲正 p130 第2日目 9月7日(土) P2会場(4号館3階 会議室432) 14:00∼15:00 E 特殊な疾患 座長:広木公一(神奈川県立こども医療センター 麻酔科)、コメンテーター:野口良子(国立療養所西新潟中央病院 麻酔科) E-01 E-02 E-03 E-04 E-05 E-06 Robinow 症候群患児の麻酔管理 兵庫県立こども病院 麻酔科 魚住 亮、岡田直子、久次米依子、高辻小枝子、阪井啓一、鈴木 毅、香川哲郎 p130 Freeman-Sheldon 症候群の麻酔経験 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 1、公立陶生病院 麻酔科 2、半田市立半田病院 3 近藤俊樹 1、矢野華代 1)、西脇公俊 1)、木村優子 2)、山下明子 3)、木村智政 1)、島田康弘 1) p131 Larsen 症候群患児の麻酔経験 獨協医科大学麻酔科学教室 恵川宏敏、石川和由、手塚正智、濱口真輔、永尾 勝、奥田泰久、北島敏光 p131 Prader-Willi 症候群の麻酔経験 ― とくにベクロニウムへの感受性について 駿河台日本大学病院 麻酔科 山口千尋、伊藤富美子、鈴木孝浩、野田 薫、中村 卓、佐伯 茂 p132 色素性乾皮症の麻酔 ― 紫外線遮蔽フィルターの使用効果― 国立大阪病院 麻酔科 清水智明、渋谷博美、赤松哲也、岡田俊樹、竹田 清 p132 選択的脊髄後根切断術における麻酔方法の検討 沖縄県立那覇病院 新崎康彦、與座浩次 p133 - 21 - E-07 E-08 E-09 E-10 痙性小児脳性麻痺3症例における機能的脊髄後根切断術の麻酔経験 国立療養所 西新潟中央病院 麻酔科 野口良子 p133 Muscle afferent block によって筋痙縮が改善した脳性麻痺患者の2例 愛知県心身障害者コロニー中央病院 麻酔科 1、愛知県心身障害者コロニー中央病院 整形外科 2、 京都府立医大附属病院 麻酔科 3 水野省司 1、沖 高司 2)、上野博司 3)、重見研司 1) p134 一歳4ヶ月児の脳底動脈瘤クリッピング術の麻酔経験 山梨医科大学 麻酔科 趙 航、奥山克巳、古屋敦司、長嶺教光、花形和之、熊澤光生 p134 副腎癌による、小児のクッシング症候群患者の麻酔経験 福島県立医科大学 医学部 麻酔科学講座 根本千秋、斎藤祐司、大槻 学、村川雅洋 p135 F 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 座長:古家 仁(奈良県立医科大学 麻酔科学)、コメンテーター:村田 洋(兵庫県立こども病院 麻酔科) F-01 F-02 F-03 F-04 F-05 F-06 F-07 F-08 F-09 ラフチジンが小児麻酔導入時の胃液性状に及ぼす影響 神戸大学大学院 医学系研究科 周術期管理学 三川勝也、上杉貴信、仁科かほる、高雄由美子、森川 修、尾原秀史 p135 小児手術患者に対する経口ミダゾラム前投薬の健忘作用について ― 第2報 ― 淀川キリスト教病院 麻酔科 1、大阪市立総合医療センター 小児麻酔科 2 吉本圭一 1、辻井健二 2)、藤井 崇 2)、中田一夫 2)、永田 昇 2) p136 フルマゼニルはミダゾラム前投薬後の覚醒時間を短縮させる 名古屋第一赤十字病院 麻酔科 岡村ひろみ、小栗幸一、川瀬 恭、藤原祥裕 p136 せん妄を起こさず覚醒も遅延させないプロポフォールの血中濃度 静岡県立こども病院 麻酔科 石垣敬子、竹内和世、遠山貴之、尾松徳則、今村 誠、堀本 洋 p137 子供のそけいヘルニア手術での覚醒時興奮と術後嘔吐について 香川小児病院 麻酔科 1、香川医科大学 麻酔・救急医学講座 2 森下 淳 1、前川信博 2)、弓場智子 1)、小野純一郎 1)、蔵谷紀文 1) p137 回復室におけるペンタゾシン投与の PONV に対する影響 鳥取大学 医学部 麻酔科 1、鳥取大学 医学部 附属病院 高次集中治療部 2 永井小夜 1、青木亜紀 1)、坪倉秀幸 1)、廣澤壽一 2)、稲垣喜三 1)、石部裕一 1) p138 ハローセンも捨てた物じゃない 兵庫県立こども病院 麻酔科 村田 洋 p138 術前・術後外来における小児待機手術に対する検討 奈良県立医科大学 麻酔科学教室 古家 仁、堀内俊孝、瓦口至孝、呉原弘吉、北口勝康 p139 通常の Day Surgery には麻酔科医の術前診察は必要ない 聖隷浜松病院 麻酔科 林 喜代、小久保荘太郎 p139 - 22 - F-10 F-11 小児日帰り麻酔の満足度に対する検索 和歌山県立医科大学 麻酔科学教室 1、日赤和歌山医療センター 麻酔科 2 長谷川 愛 1、中畑克俊 2)、畑埜義雄 1) p140 鎮静外来の試み 国立成育医療センター 近藤陽一、阿部世紀、林 玲子、田中 基、田村高子、朝原章二、宮坂勝之 p140 第2日目 9月7日(土) P2会場(4号館3階 会議室432) 15:00∼16:00 G 心臓・大血管疾患 座長:鈴木美佐子(埼玉県立小児医療センター 麻酔科)、コメンテーター:森田 潔(岡山大学医学部 麻酔・蘇生学) G-01 G-02 G-03 G-04 G-05 G-06 G-07 G-08 G-09 G-10 G-11 左心低形成症候群に対する Norwood 手術の成功症例について 山梨医科大学 麻酔科 1、市立甲府病院 麻酔科 2 奥山克巳 1、石山忠彦 1)、寺田仁秀 2)、福島久史 1)、花形和之 1)、熊澤光生 1) p141 左心低形成症候群に対する Van Praagh 手術2症例の麻酔経験 三重大学 医学部 麻酔学教室 渡邉栄子、五十嵐 文、川喜田美穂子、宮原ひろみ、天野 誉、丸山一男 p141 小児続発性拡張型心筋症に対する SAVE 手術(septal anterior ventricular exclusion)の麻酔経験 京都大学 医学部 附属病院 麻酔科 鳥居ゆき、一澤 敦、古谷秀勝、石井久成、七野 力、福田和彦 p142 Fontan および Glenn 手術術中の呼吸管理が脳血流に及ぼす影響 国立循環器病センター 麻酔科 藤井美江、大西佳彦、畔 政和 p142 MICS による小児開心術後の肺酸素化能の検討 三重大学 医学部 麻酔科 五十嵐 文、廣 加奈子、宮原ひろみ、天野 誉、丸山一男 p143 乳児先天性胸腹部大動脈瘤における人工血管置換術の麻酔管理の1例 埼玉県立小児医療センター 麻酔科 武藤理香、古谷 実、寶田潤子、鈴木美佐子 p143 重複大動脈弓8例の麻酔管理の検討 埼玉県立小児医療センター 麻酔科 古谷 実、宝田潤子、武藤理香、鈴木美佐子 p144 動脈管による左主気管支の圧排により左肺の過膨張と縦隔の右方偏位を呈した肺動脈閉鎖症の麻酔経験 秋田大学 医学部 麻酔科 1、秋田大学 医学部 附属病院 中央手術部 2 安部恭子 1、堀口 剛 2)、齋藤 厚 1)、梅原志乃 1)、西川俊昭 1) p144 小児原発性肺高血圧症患者への皮下埋め込み型カテーテル挿入術の麻酔 東邦大学 医学部 第一麻酔科学教室 寺田享志、牧 裕一、岡田美砂、上野裕美、前原康宏、菊地博達 p145 拡張型心筋症合併虫垂切除術に経食道ドップラー循環モニターを使用した一例 千葉県こども病院 麻酔科 崔 俊人、羽鳥文麿 p145 吸気性喘鳴および完全型新内膜症欠損症合併乳児の両側鼠径ヘルニア根治術の麻酔管理 筑波大学付属病院 麻酔科 1、筑波大学 臨床医学系 麻酔科 2 細谷真人 1、大坂佳子 2)、上村 明 2)、宮部雅幸 2) p146 - 23 - H 周産期・新生児・未熟児 座長:照井克生(埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター麻酔科) コメンテーター:深津 修(東京都立八王子小児病院) H-01 H-02 H-03 H-04 H-05 H-06 H-07 H-08 H-09 H-10 H-11 サイトメガロウイルス感染症にてグロブリンを胎児輸注した一症例 防衛医科大学校病院 麻酔科 1、防衛医科大学校病院 手術部 2 福田 功 1、内橋慶隆 1)、吉良麻利茂 1)、唐澤富士夫 1)、菅原真哉 1)、佐藤哲雄 1) p146 出生前診断した上顎体の1症例 鳥取大学 医学部 器官制御外科学講座 麻酔・集中治療医学分野 1、鳥取大学医学部付属病院 手術部 2 青木亜紀 1、永井小夜 1)、坂本成司 2)、南ゆかり 1)、石部裕一 1) p147 胎児仙尾部奇形腫の周産期・周術期の管理経験 日本大学 医学部 麻酔科学教室 柏崎美保、前川 衛、石川久史、平島潤子、加藤 実、小川節郎 p147 異なる経胎盤的胎児麻酔法を用いた先天性横隔膜ヘルニアの3例 埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター 周産期麻酔部門 1、 埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科 2 照井克生 1、半田冨美 1)、河村智永子 1)、横田和美 1)、内田淳子 1)、宮尾秀樹 2) p148 成育医療センターが開設されて最初の先天性横隔膜ヘルニアの麻酔管理 国立成育医療センター 手術集中治療部 林 玲子、阿部世紀、田中 基、田村高子、近藤陽一、朝原章二、宮坂勝之 p148 NICU における先天性横隔膜ヘルニアに対する根治術の麻酔経験 高知県立中央病院 麻酔科 小幡典彦、上野 剛、銅前崇平、田路大悟、日高秀邦、青野 寛、武田明雄 p149 超低出生体重児に対し NICU で施行した新生児壊死性腸炎の麻酔管理 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 秦 麻希子、横田修一、西脇公俊、木村智政、島田康弘 p149 超低出生体重児 PDA 根治術の新生児集中治療室での麻酔 京都第一赤十字病院 麻酔科 小松久男 p150 492g の超未熟児 PDA 結紮術の麻酔経験 国立病院呉医療センター 麻酔科 1、愛知医科大学 麻酔科学教室 2 洪 淳憲 1, 2、山中真波 1)、蛭田博行 1)、山田祐子 1)、山森祐治 1) p150 出生直後より高度肺鬱血を呈し、肺静脈狭窄解除術にても救命し得なかった総肺静脈還流異常症の1症例 大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科 春名純一、宮本善一、平尾 収、木内恵子、福光一夫、谷口晃啓、松田陽一 p151 未熟児網膜症の麻酔 市立四日市病院 1、名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 2 加藤潤子 1、木村智政 2)、西脇公俊 2)、島田康弘 2) p151 - 24 - 岩井誠三記念講演 岩 井 誠 三 記 念 講 演 岩井誠三記念講演/ Iwai Memorial Lecture MANAGEMENT OF PAIN AND NAUSEA AND VOMITING IN CHILDREN Frederic A. Berry, M.D. Professor of Anesthesiology & Pediatrics, Department of Anesthesiology, University of Virginia, USA Learning Objectives 1) the management of pain and 2) the management of nausea and vomiting. We practice medicine in an “outcome” driven environment. For anesthesiologists the outcome that we are most interested in is patient safety. The outcome that most patients and parents of children are interested in is comfort. The three main areas that patients are concerned about are: 1) pain, 2) nausea, and 3) vomiting. The question is can the anesthesiologist practice safe medicine while at the same time providing for a maximum of patient comfort? The answer should be “yes”, but we have to constantly update our various treatment options to take advantage of ongoing medical knowledge and its application to both safety and comfort. Let’s look at the issue of pain management first. In years gone by pain management was usually mono-modal, meaning that we used either narcotics for pain relief or perhaps local anesthesia. Then we developed neuraxal analgesia first with local anesthetics, then with narcotics, then a combination of local anesthetics and narcotics, and now with various other substances such as the alpha-2-agonist clonidine and dexmedetomidine. These latter techniques for pain management require an enormous amount of high maintenance by the physician. This talk is going to be directed at some of the low intensity techniques and drugs that we might employ in our management of patient pain which at the same time has an impact on pain and nausea and vomiting. THE USE OF DEXAMETHASONE FOR THE TREATMENT OF PAIN AND NAUSEA AND VOMITING. Recent studies particularly in children revealed that dexamethasone is a particularly effective, very cost effective antinausea and pain reliever in many situations. It is particularly useful for pediatric patients undergoing tonsillectomy. The dose there being 0.5 mg/kg. It has also been shown to be effective in patients undergoing cholecystectomy and has proven to be effective in reducing the nausea and vomiting following the use of epidural narcotics for pain management. The usual dose of dexamethasone is 0.2 mg/kg with a total dose of up to 10–12 mg. There are few drawbacks to this single dose therapy and there have been no reports about an increased incidence of infections and/or a reduction in healing. The exact mechanism has not yet been defined. KETAMINE AND MAGNESIUM: THE OLD DRUGS WITH NEW APPLICATIONS The concept of preemptive analgesia has been well known to anesthesiologists for decades. Preemptive analgesia refers to the administration of a drug before the surgical stimulus to block the development of the neural mechanisms that lead to central nervous system (CNS) sensitization. CNS sensitization refers to the hyperexcitable state also known as “the wind up phenomenon” that develops within the CNS with the stimulus of pain. We know that the CNS has plasticity and that there are DNA changes that occur, so that even after the pain stimulus has been removed pain remains because of the changes in the CNS. The object of pain management then is to prevent the change within the DNA of the CNS and also to treat the pain after it has been established by such drugs as narcotics, local anesthetics, nonsteroidal antiinflammatory drugs, etc. The NMDA glutamate receptor is one of the receptors that is thought to be responsible for the establishment of the pain pathways. One of the concepts of preemptive analgesia is to find drugs that will block or antagonize the NMDA receptor. The usual drugs that we think about that are NMDA antagonists are drugs which block the various channels such as sodium and calcium. These drugs classically have been drugs such as ketamine and magnesium. Recent observations in - 27 - experimental animals though have revealed that the local anesthetic procaine also blocks the channels within the NMDA receptor and these drugs act at that location. Two old drugs have been found to be partially effective. These drugs are ketamine and magnesium sulphate. The goals of treatment with these two agents are to prevent the central sensitization and to reduce or abolish the established hypersensitivity. The doses to accomplish this is 0.2 mg/kg intravenously of ketamine and 30 mg/kg intravenously of magnesium sulphate. They are given at the start of surgery. For cases lasting longer than 3–4 hours the doses are repeated at about 3 hours. These drugs alone will not eliminate postoperative pain but they reduce the amount of narcotic and other drugs that are required to do so. Narcotics and NSAIDS still need to be given but in much smaller doses. It was shown as long ago as 1993 in patients undergoing elective cholecystectomy that ketamine greatly reduced the morphine dose required postoperatively while at the same time increasing patient satisfaction. There is the theoretical possibility that with a reduction in the amount of narcotics that are required for postoperative pain relief there would also be a reduction in nausea and vomiting which is another of the primary outcomes that patients desire. One of the other advantages of ketamine is the fact that there is thought to be neuroprotective activity. With damage to the CNS there is activation of the NMDA and non-NMDA receptors which lead to an increase in intracellular calcium and which causes an intracellular cascade of events leading to cell damage and in some cases cell death. In this context, again knowing that ketamine is an NMDA receptor antagonist, the experimental administration of ketamine has been shown to reduce CNS damage. This is an effect of ketamine that potentially would have advantages if the patient were to suffer an unexpected period of severe hypotension and/or airway obstruction where there may be CNS ischemia. These events unfortunately may occur during the course of anesthesia. Studies to prove the value of ketamine in these circumstances would be impossible to conduct. One can only carry over the potential neuroprotective effects of ketamine in the experimental animal to what may happen in the clinical situation. DRAWBACKS OF KETAMINE One of the problems of ketamine even in small doses is that occasionally patients will have very mild altered consciousness in the postoperative period. These changes are minimal but nonetheless they do occur. So far there has been no way to prevent these rare and short lived problems. Explaining that possibility to the parent or the patient is indicated when ketamine is used as the preemptive analgesic. This author uses ketamine and magnesium on all patients having any degree of significant pain. THE ANESTHESIOLOGIST AS THE PERIOPERATIVE PHYSICIAN Training several decades ago in anesthesia centered around the concept of the anesthesiologist as primarily being involved with the immediate preoperative evaluation of the patient, the intraoperative anesthetic management and the early postoperative pain management. These concepts have now been expanded into what is called the perioperative physician where the anesthesiologist may be much more involved with the preoperative cure as well as the postoperative pain management and general care. The postoperative pain management depends upon whether or not the patient is an in patient or an out patient. For patients who are an out patient, i.e., having same day surgery, then the concepts may differ somewhat. However, regardless of in patient or out patient, the concepts of using various drugs for the postoperative pain management are aimed at more than the first several hours, they are aimed at the first 48 hours postoperatively so that we might be able to keep our patients more comfortable not only in the immediate postoperative period but thereafter. In summary, preemptive analgesia has proved to be effective in pain management by its analgesic properties as well as reducing the requirement for narcotics. This reduction in the need for narcotics increases patient safety while at the same time reducing potentially the nausea and vomiting that are associated both with pain and with the administration of narcotics. Ketamine in doses of 0.1 mg/kg has also been effective in managing the postoperative patient with hard to control pain. - 28 - ALPHA 2-ADRENOCEPTOR AGONIST – CLONIDINE AND DEXMEDETOMIDINE The other old drugs that have been rediscovered are the alpha 2 agonist. Both drugs cause drowsiness as well as a state of analgesia. Currently they are being used as a premedication in the oral form before surgery to reduce the amount of postoperative nausea and vomiting as well as a reduction in the anesthetic requirement. The side effect of this has been mild drowsiness. Clonidine and Dexmedetomidine have also been used for central neuraxis analgesia. Clonidine has been approved for use in this manner and Dexmedetomidine is currently being tested. The value of these drugs is that there is little respiratory depression while at the same time providing analgesia. In addition, both of these drugs will reduce the blood pressure and heart rate. One of the possible mechanisms for the reduction and postoperative nausea and vomiting is that there is little need for narcotic analgesics. However, even if they are needed they can be administered in reduced dosages which will reduce the incidence of nausea and vomiting. NAUSEA AND VOMITING EVALUATION AND TREATMENT The most frequent cause of unplanned and unexpected admissions to hospitals following what in many medical centers would be same day surgery is nausea and vomiting. Causes of nausea and vomiting are due to peripheral mechanisms such as within the stomach and central mechanisms such as: a) the vestibular apparatus and b) the vomiting center. What are the neurotransmitters which are responsible for activating the central mechanisms for nausea and vomiting. The answer is unclear but recent studies have suggested that the tachykinin substance P plays a role in this cycle. Substance P is found in the gastrointestinal system where the peripheral effect of nausea and vomiting is triggered as well as centrally in the brains emetic regions. It is hoped that a neurokinin receptor antagonist may prove to be effective treatment for both the peripheral as well as the central sites for postoperative nausea and vomiting. The prevention and treatment of nausea and vomiting has led to the publication of an enormous number of “outcomes” based studies in the United States. The two issues are: 1) effectiveness and 2) cost. Ondansetron, a 5HT3 receptor antagonist was discovered to be effective in the reduction of nausea and vomiting. The problem with the routine administration of the drug is its very high cost. Therefore, strategies were developed to try to identify “high risk patients”. High risk includes patients with a history of nausea and vomiting, patients undergoing abdominal surgery and women. At the same time there was also an appreciation of two old drugs and their effects on nausea and vomiting. Droperidol has long been recognized for its antiemetic properties but in the previously administered high dosage range it led quite frequently to sedation requiring hospitalization, and dysphoria. Newer guidelines for the use of droperidol suggest that the dose should be .01 mg/kg. At this reduced dosage the antiemetic properties are still mainly present but the side effects have been greatly reduced. Still, however, when small dose morphine, i.e., .05 mg/kg is combined with droperidol there will be a very mild degree of postop sleepiness which, in most cases, is gone within an hour or two of the end of surgery. Even at that the sleepiness is not thought to be a disadvantage. Therefore, droperidol in the above-mentioned dose has become one of the most frequently used preemptive antiemetics in the United States. Anesthesiologists in the United States have been stunned by the FDA report on the status of droperidol and the basis for its “black box” warning. Droperidol has been used clinically for approximately 30 years and very few drugs have the safety reference when used in the appropriate dose as does Droperidol. The problem is that the recommended dose according to the manufacturer and one that was used by anesthesiologists in the past but not presently, was approximately three times the current recommended dose of 0.01 mg/kg. All of the studies that have been done to demonstrate the prolongation of the QT interval by the intravenous administration of Droperidol have come from doses of 0.1 to 0.25 mg/kg. This is 10–25 times the dose that most anesthesiologists use for postoperative nausea and vomiting. One clinical report in which there was Droperidol administered in the usual clinical dose did demonstrate a QT prolongation with a serious cardiac arrhythmia. However, the drug had been given 2 1/2 hours before the arrhythmia and 2 other drugs that are known to have severe effects on the QT interval tri-cyclic antidepressants had also been administered. The FDA plans to convene a meeting of the Anesthetics and Life Support Drug Advisory Committee in the near future to discuss the issues of this drug. It is of interest that even in the studies where there was a documented prolongation of the QT interval with very high doses that the study period was only 10 minutes after the administration of the drug and did not document anything further than that although this needs to be done. The other drug that has become - 29 - very popular is dexamethasone (Decadron). Decadron was discovered to be an antiemetic when combined with other antiemetics in the treatment of oncology patients. It was then used as the sole antiemetic and in the pediatric patient group has been found to be an effective antiemetic by itself. The exact mechanism of action is not clearly understood. We know that it does two things. It is an antiinflammatory and decreases pain and by this mechanism may reduce nausea and vomiting. It also reduces prostaglandins which may also be responsible for nausea and vomiting. At any rate, in a dose of 0.2 mg/kg given at the end of surgery, Decadron is an effective antiemetic. There are no reports of any difficulty with healing, adrenal suppression, etc., with this single dose of Decadron. STRATEGIES FOR DEALING WITH POSTOPERATIVE NAUSEA AND VOMITING This author’s strategy for management of postoperative nausea and vomiting depends upon the history of the patient and the length of surgery. For children and adults having short procedures which last up to 15 min, unless there is a strong history of nausea and vomiting, no antiemetics are used. On the other hand, any patient with a history of nausea and vomiting are given the three drugs. 1) Droperidol 0.01 mg/kg, 2) Decadron 0.2 mg/kg, and 3) Ondansetron 0.05 mg/kg. All of these drugs are given at the end of surgery since it has been shown that giving them shortly after the induction of anesthesia is not as effective as giving them at the end of surgery. In patients in whom there is no history of nausea and vomiting, prophylactic antiemetics are still administered. The two drugs that are the most cost effective and effective are droperidol and Decadron. If the patient in spite of these drugs has nausea and vomiting in the recovery room, then the first drug of choice is Ondansetron (or whatever new 5HT3 antagonist may appear in the future). The dose is as above. CONCLUSIONS The attempts to meet patient’s needs of reduced pain and postop nausea and vomiting (PONV) can be accomplished while at the same time enhancing patient safety. Using the multimodal technique of therapy meaning using several drugs at lower doses. This can reduce the undesired side effects of the various medications while at the same time reducing pain and PONV. The reduction in the doses of narcotics, NSAIDS and other sedatives can be accomplished with this multimodal technique with both enhanced and improved outcome for patients as well as patient safety. REFERENCES 1. Suzuki M, Tsueda K, Lansing PS, Tolan MM, Fuhrman TM, Ignacio CI, Sheppard RA: Small-dose ketamine enhances morphine-induced analgesia after outpatient surgery. Anesth Analg 1999; 89: 98-103 2. Macario A, Weinger M, Truong P, Lee M: Which clinical anesthesia outcomes are both common and important to avoid? The perspective of a panel of expert anesthesiologists. Anesth Analg 1999; 88: 1085-91 3. Kohrs R, Durieux ME: Ketamine: Teaching an old drug new tricks. Anesth Analg 1998; 87: 1186-93 4. Asaboe V, Raeder JC, Groegard B: Betamethasone reduces postoperative pain and nausea after ambulatory surgery. Anesth Analg 1998; 87: 319-23 5. White PF, Watcha MF: Postoperative nausea and vomiting: Prophylaxis versus treatment. Anesth Analg 1999; 89: 1337-9 6. 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Hollmann MW, Liu H-T, Hoenemann CW, Liu W-H, Durieux ME: Modulation of NMDA receptor function by ketamine and magnesium. Part II: Interactions with Volatile Anesthetics. Anesth Analg 2001; 92: 1182-91 12. Liu H-T, Hollmann MW, Liu W-H, Hoenemann CW, Durieux ME: Modulation of NMDA receptor function by ketamine and magnesium: Part I. Anesth Analg 2001; 92: 1173-81 13. Lischke V, et al: Droperidol causes a dose-dependent prolongation of the QT interval. Anesth Analg 1994; 79: 983-6 14. Michaelets EL, et al: Torsade de Pointes resulting from the addition of droperidol to an existing cytochrome P450 drug interaction. Am Pharmacother 1998; 32: 761-5 15. Nishizawa N, Shirasaki T, Nakao S, Matsuda H, Shingu K: The inhibition of the N-methyl-D-aspartate receptor channel by local anesthetics in mouse CA1 pyramidal neurons. Anesth Analg 2002; 94: 325-30 - 31 - 特別講演 特 別 講 演 特別講演/ Special Lecture 新生児の生理学的特長 東京女子医科大学母子総合医療センター教授・所長 仁志田博司 Physiological Characteristics of the Neonate Nishida Hiroshi, M.D. Professor and Chairman, Maternal & Perinatal Center Tokyo Women’s Medical University 近年の周産期新生児医療の進歩により、これまで成育限界とみなされていた極めて未熟な児や、超低出生体重児と呼ば れる児にも医療が施される時代となった。そのような児が行われる外科的治療に伴う麻酔管理においては、その物理的な 小ささ故の技術的問題に加え、種々の未熟性に伴う生理学的問題を考慮しなければならない。(表1) さらに、早期新生児 期の麻酔の際には、子宮内環境から子宮外環境への適温整備も考慮しなければならない。(表2) 本講演においては、まず我が国の世界一のレベルとなった新生児医療の現状の紹介するとともに、how small is too small?と呼ばれる成育限界の考え方について私見をのべる。(表3・図) 表1 未熟性に起因した疾患 低体温 低カルシウム血症 未熟児クル病 晩発生代謝性アシドーシス 非乏尿性高カリウム血症 低血糖症 高ビリルビン血症 代謝・栄養 呼吸・循環器系 呼吸窮迫症候群 無呼吸発作 Wilson-Mikity 症候群 動脈管開存による心不全 その他 脳室内出血 脳室周囲白質軟化症 未熟網膜症 壊死性腸炎 未熟児貧血 易感染症による敗血症 表3 成育限界を考えるうえでのポイント 医学的観点 物理的に小さすぎる 生理学的に未熟すぎる 死亡率、後遺症発生率が高すぎる 社会的観点 あまりに低い生存率にあまりに多大な労力 あまりに低い生存率にあまりに多大な出費 より助かる可能性のある児の医療を受ける機会を圧迫する 家族への精神的・経済的圧迫 法律的観点 人工流産の適応基準とのかねあい 安楽死の是非 親の子どもに対する生死決定の権利 倫理的観点 医学的興味、実験の意味合いが強くないか 超未熟児といえども生きる権利 超未熟児といえども尊厳をもって死ぬ権利 在 30週 ·········· 28週 ··········· 26週 ·········· 24週 ··········· 胎 週 数 表2 適応不全症候群 代謝系 低体温 低血糖 低カルシウム血症 高ビリルビン血症 呼吸・循環系 一過性多呼吸症 無呼吸発作 胎児循環遺残(持続性肺高血圧症) 動脈管開存 その他 新生児メレナ 出 1,250g ···········1,000g ···········750g ········· 500g ·········· 生 体 重 社 会 的 医 学 的 成育限界 成育限界 (一般的同意として) (個々の症例として) 図 2000 年代のわが国における成育限界 - 35 - 招待講演 招 待 講 演 招待講演1/ Invited Lecture 1 Clinical Evaluation on Pediatric Intensive Care of Seoul National University Children’s Hospital Chong Sung Kim, M.D., Ph.D. Professor, Departemnet of Anesthesiology, School of Medicine, Seoul National University Chief, Division of Pediatric Anesthesia, Pediatric Intensive Care Unit, Seoul National University Children’s Hospital 1. General Introduction Seoul National University Children’s Hospital was dedicated as a health service center for children from October 16, 1985. The hospital consists of the Pediatric Department, and 14 divisions with 5 central units. There are 263 beds. There are 20 beds in Pediatric Intensive Unit, including of 9 beds allocated to cardiothoracic surgery, 2 to Pediatric general surgery, 2 to Neurosurgery, and 7 to medical department, roughly. The neonates aged under 1 month are admitted to NICU which located on another floor and which has 18 beds served by neonatologists. PICU patients are cared by pediatric anesthesiologists, pediatrician and original services. Two residents, one is belong to department of pediatrics and the other to department of cardiothoracic surgery, keeping their patients in PICU for 24 hours. Forty one nursing staffs are working in our PICU. The ratio of patients to nurse is between 3:1 and 1:1 according to the patient’s condition. The national credential of ICU specialist does not start yet although the Korean Society of Intensive Care Medicine was established in 1980. The main equipments available in our PICU are special ICU beds, monitors (8 parameter display), ventilators (including high frequency oscillator), NO delivery system, ABGA and electrolytes measuring equipment. The author will describe the status of our PICU and the interesting issues done in our PICU. 2. The Patient Admission and Mortality The pediatric patients under 1 month old are not admitted but there is no age limitation of patients who have cardiothoracic surgery. About 900 patients are admitted in the PICU one year and the proportion of cardiothoracic surgery patients is 53 %, and pediatric patients is 28 %, neurosurgery patients is 9 %, pediatric general surgery patients is 8 % and the others is 2 %. The mortality rate of those is 2.4 % in cardiothoracic surgery, 19 % in pediatrics, 2.7 % in pediatric neurosurgery and 4.5 % in pediatric general surgery. The cause of their death will be analyzed and compared to other relating reports. 3. Unexpected Postoperative Intensive Care It would be almost predicted whether postoperative intensive care would be necessary according to the preoperative patient’s condition or the extent of sugery. However, because of unexpected incidents during the operation or anesthesia, postoperative intensive care could be required occasionally, even though preoperative evaluation showed no need to have ICU care. We review this kind of patients for prospective prevention. 4. Inhalaled NO Therapy in PICU NO has been used to treat pulmonary hypertension and hypoxemia in thousands of patients worldwide. Inhaled NO is an effective pulmonary vasodilator in many disease states characterized by pulmonary hypertension. In addition, inhaled NO decreases pulmonary venous admixture in diffuse lung injury, and thereafter increases systemic oxygenation in many patients. In case of congenital cardiac anomaly, pulmonary hypertension may cause high morbidity and mortality after - 39 - surgical correction. We also use inhaled NO to treat pulmonary hypertension and hypoxemia in the patients who had openheart surgery. We will present the outcome of inhaled NO therapy in our PICU. 5. Home Mechanical Ventilation Children who required prolonged respiratory support often have spent their whole lives in the hospital. Advances in medical technology have made it possible for them to have time with their families in their own home. Advantages of mechanical ventilation at home vs in the hospital include decreased hospital-acquired infections, increased morbidity, improved nutritional status, better resumption of normal interaction, and improved routines of daily living. But the safety of home mechanical ventilation managed by the family members has been questioned. In addtion, there are many difficulties such as limitation in regard to social services and support system, financial and educational problems. The home mechanical ventilation started last year in our PICU. We will present our experience and the follow-up of the patients who discharged from our PICU with home mechanical ventilator. 6. In Near Future What we would like to try to do to extend our work in the near future are noninvasive ventilation for pediatric patients and the telemedicine for the patients who are performing the home mechanical ventilation and for those who transferred to local hospital. Noninvasive mask ventilation was attempted a few times but none of those trials succeeded, so the respiratory support had to be done with tracheal intubation or tracheostomy. Telemedicine will be offered in two ways. One will be supposed to assess a patient condition and consult for home mechanical ventilation. Another will be to cooperate with local hospitals where intensive care specialists are not available for the management of the patients who are discharged from our PICU with various reasons. - 40 - 招待講演2/ Invited Lecture 2 The Use of Regional Anesthesia in Combination with General Anesthesia for Cardiac Surgery in Children Gregory B. Hammer, M.D. Associate Professor, Department of Anesthesia and Pediatrics Stanford University Medical Center, USA Introduction The use of regional anesthesia in combination with general anesthesia for children undergoing cardiac surgery is the subject of a growing number of publications and presentations. Reported benefits of regional anesthesia in patients having cardiac surgery include attenuation of the neuroendocrine response to surgical stress, improved postoperative pulmonary function, enhanced cardiovascular stability, and improved postoperative analgesia. To the extent that regional anesthesia facilitates early tracheal extubation in cardiac surgical patients, compliactions and costs associated with postoperative mechanical ventilation may be reduced. These benefits must, however, be weighed against the adverse effects which may accompany the use of regional anesthesia. These include hypotension, postoperative respiratory depression, and epidural hematoma formation. In this article, the benefits and risks of regional anesthesia in infants and children having open heart surgery are reviewed. In addition, specific techniques currently in use are described. The benefits of regional anesthesia in cardiac surgery Adverse physiologic responses which occur during and after cardiac surgery include alterations in circulatory (tachycardia, hypertension, vasoconstriction), metabolic (increased catabolism), immunologic (impaired immune response), and hemostatic (platelet activation) systems.(1,2) Together, these changes are referred to as the “stress response”. The stress response associated with cardiac surgery in neonates may be profound and is associated with increased morbidity and mortality.(3) Anand, et. al., measured such responses during and after cardiac surgery in 15 neonates anesthetized with halothane and morphine. They found elevated plasma concentrations of epinephrine, norepinephrine, cortisol, glucagon, and beta endorphin in all patients, accompanied by hyperglycemia and lactic acidemia. The four deaths in the study group occured in neonates with the greatest stress responses. Bromage et al., first demonstrated in 1971 that the stress response associated with major abdominal and thoracic surgery could be attenuated with epidural blockade.(4) Since then, several investigators have shown that the use of regional anesthesia during and after cardiac surgery (i.e. intraoperative anesthesia and post-operative analgesia) may decrease the stress response as well as morbidity and mortality.(5,6,7,8,9,10,11,12) While these adverse responses can be attenuated with intravenous opioids, regional anesthesia (intrathecal or epidural blockade) with opioids and/or local anesthetics appears to be more effective in inhibiting the stress response associated with surgery. For example, epidural fentanyl is more effective than intravenous fentanyl in reducing the stress response after thoracotomy in adults.(13) Epidural morphine administration was shown to attenuate the adverse decrease in T3 (liothyronine) concentration in children undergoing open heart surgery compared with general anesthesia alone.(10) Epidural anesthesia with bupivacaine suppresses the increase in serum catecholamines, glucose, and ACTH more effectively than intravenous fentanyl in infants.(14) Epidural local anesthetics may be more efficacious than opioids in attenuating the stress response.(15) In a study of fetal lambs, total spinal anesthesia completely blocked the stress response to surgical manipulation and cardiopulmonary bypass.(16) Additional benefits that may be attributed to regional anesthesia include improved pulmonary function, greater circulatory stability, and reduced pain scores. Several randomized, controlled studies in adults have shown that patients receiving epidural analgesia have better pulmonary function after thoracic surgery than those treated with intravenous opioids. Thoracic epidural opioids are associated with improved pulmonary function following chest surgery compared with IV opioids.(17) In a study comparing thoracic epidural bupivacaine to IV morphine for post-operative analgesia, the - 41 - patients receiving epidural infusions had significantly greater FEV1 and FVC, and were more cooperative with deep breathing maneuvers than those in the IV morphine group.(18) Thoracic epidural anesthesia may also improve respiratory performance postoperatively by effecting an improvement in diaphragmatic function.(19) Several studies in infants and children demonstrate reduced opioid requirements and improved analgesia following cardiac surgery with neuraxial anesthesia. Jones et al., reported the use of intrathecal morphine for postoperative analgesia in 56 children undergoing cardiac surgery.(20) Following induction of anesthesia, patients received intrathecal morphine 0.02 or 0.03 mg/kg. Tracheal extubation was performed in all patients after admission to the ICU postoperatively. The duration of analgesia in both groups was similar, with two thirds of patients requiring no supplemental analgesia for more than 18 hours. In a retrospective review of pain control in 91 children undergoing cardiac surgery, Shayevitz et al., compared lumbar epidural morphine infusions to intravenous opioid analgesia.(21) In the epidural analgesia group, lumbar epidural catheters were placed following induction of anesthesia. Preservative-free morphine sulfate was administered in a bolus dose of 0.05 mg/kg followed by a continuous infusion of 0.03–0.04 mg/kg/hr during and after surgery. Children in the intravenous analgesia group received an initial IV dose of fentanyl 0.05 mg/kg followed by a continuous infusion of 0.018 mg/kg/hr during surgery. The fentanyl infusion was reduced to 0.006 mg/kg/hr postoperatively. Patients in the epidural analgesia group had significantly lower pain scores and received significantly less supplemental analgesia postoperatively than patients in the intravenous analgesia group. In a prospective, randomized, controlled study Rosen and Rosen evaluated the efficacy of caudal epidural morphine compared with intravenous morphine in 32 children following open cardiac surgery.(22) Patients in the study group received a caudal injection of preservative-free morphine sulfate (0.075 mg/kg) in the OR following surgery but prior to awakening and tracheal extubation. Patients in the control group received intravenous morphine alone for postoperative analgesia. Supplemental doses of intravenous morphine were given to children in both groups as needed, prior to which pain scores were recorded. Children having received caudal morphine required significantly less intravenous morphine and had significantly lower pain scores postoperatively than patients in the control group. The mean duration of complete analgesia in children receiving caudal morphine was 6 hours (range 2–12 hours), but decreased analgesic requirements were noted for the entire 24 hour study period. Beside having improved lung function and pain control, patients receiving epidural anesthesia have fewer opioid related side effects than patients treated with intravenous opioids. Patients receiving epidural anesthesia have more rapid return of bowel function following surgery compared with those receiving intravenous analgesics. In a recent review of sixteen studies comparing epidural and systemic analgesia with regard to postoperative recovery of gastrointestinal function, all eight studies with epidural catheter placement above T12 showed more rapid recovery of bowel function when epidural analgesia was used.(23) The use of postoperative thoracic epidural analgesia with bupivacaine and morphine is associated with earlier return of gastrointestinal function and decreased hospital costs due to shortened hospital stay compared with IV morphine patient controlled analgesia.(24) A study comparing epidural versus intravenous fentanyl analgesia following thoracotomy also reported a lower incidence of nausea, shorter duration of ileus, and earlier hospital discharge in the epidural analgesia group.(17) Adverse Effects of Regional Anesthesia for Cardiac Surgery The most serious complications that may be associated with regional anesthesia for cardiac surgery are hypotension, respiratory depression, and epidural hematoma formation. Systemic arterial hypotension is an undesired effect of intrathecal and epidural local anesthetic blockade. In adults with coronary artery stenosis and myocardial ischemia, local anesthetic-induced blockade of cardiac sympathetic nerve activation alleviates angina and improves coronary blood flow and ventricular function. (15,25,26,27) However, local anesthetic blockade to upper thoracic dermatomes produces hypotension accompanied by a decrease in coronary artery perfusion.(28,29) In infants and young children, local anesthetic blockade to T3–T5 does not produce significant changes in blood pressure nor heart rate.(30) This may attributable to decreased sympathetic innervation of the lower extremities and/ - 42 - or immaturity of the sympathetic nervous system in young children. In a recent study of high spinal blockade in children undergoing open heart surgery, hemodynamic stability was demonstrated in all patients.(31) Dose-dependent respiratory depression may be seen in children following the administration of epidural opioids in doses exceeding 0.05 mg/kg.(32) In a study of children undergoing cardiac surgery and receiving epidural morphine in a bolus dose of 0.05 mg/kg followed by a continuous infusion, however, respiratory depression did not occur.(21) Several other studies in children have shown excellent analgesia and no evidence of respiratory depression when the dose of epidural morphine does not exceed 0.05 mg/kg.(33,34,35) Similarly, doses of intrathecal morphine of 0.02 or 0.03 mg/kg may result in significant respiratory depression following cardiac surgery in children.(20) Intrathecal morphine 0.01 mg/kg has also been associated with respiratory depression postoperatively when combined with intravenous fentanyl 0.02 mg/kg and midazolam in adult patients undergoing cardiac surgery.(36) However, in a review of children given intrathecal morphine in a dose of 0.02 mg/kg in whom no intravenous opioids were administered during surgery, no patient had postoperative respiratory depression.(37) In addition, no child required supplemental opioid analgesia for at least 15 hours following surgery. In a recent study comparing intrathecal morphine in doses of 0.005, 0.007, and 0.010 mg/kg in children having open heart surgery, the trachea of each patient was extubated at the conclusion of surgery and no patient had signs of respiratory depression.(38) Epidural hematoma formation following epidural or spinal anesthesia is a rare but potentially catastrophic complication of neuraxial blockade in patients receiving anticoagulant therapy. In an analysis of 20 series, including more than 850,000 cases of epidural blockade and 650,000 cases of spinal anesthesia in adult patients, only 3 case reports of epidural hematoma were documented.(39) Based on these data, the author estimated the risk of epidural hematoma following epidural anesthesia to be 1:150,000, and 1:220,000 following spinal anesthesia. Unfortunately, it is unknown what the incidence of clotting disorders, use of anticoagulants, or traumatic procedures was in these reports. In a thorough review of the literature from 1906 through 1994, Vandermeulen et al., found 61 published cases of epidural or subdural hematoma following epidural or spinal anesthesia in adult patients.(40) Of these 61 cases, 42 occurred in patients with impaired coagulation prior to epidural or spinal needle placement, including 25 patients receiving heparin. In 15 patients, the procedure was reported to be difficult and/or traumatic. A clotting disorder or difficult/traumatic needle placement was present in 53 of the 61 cases (87%). In a series of over 4,000 epidural or spinal anesthetics performed prior to anticoagulation with heparin for vascular surgery, no cases of epidural hematoma were reported.(41) The authors reported important precautions which were undertaken in these patients, including delaying surgery for 24 hours in the event of traumatic needle placement and allowing at least 60 minutes between needle placement and heparin administration. Other recommended precautions include use of the smallest dose of heparin necessary to achieve therapeutic objectives and removal of epidural catheters only when normal coagulation function has been restored.(42) Epidural hematoma formation has not been reported in a patient following spinal or epidural anesthesia prior to cardiopulmonary bypass. Regional Anesthesia Techniques A variety of techniques of neuraxial blockade have been reported in children undergoing cardiac surgery. These include intrathecal (spinal) and epidural techniques utilizing opioids and/or local anesthetics. Epidural approaches include single dose (“single shot”) caudals as well as thoracic, lumbar, and caudal catheter techniques. Intrathecal (Spinal) Techniques The use of spinal opioid analgesia as an adjunct to general anesthesia was first described by Mathews and Abrams in 1980.(43) In this report, 40 adults received intrathecal morphine in a dose of 1.5–4.0 mg prior to surgery. All patients remained comfortable for more than 24 hours. Subsequently, many studies demonstrated the efficacy of spinal opioids, primarily morphine, in producing analgesia following cardiac surgery in adult patients. These reports have been summarized elsewhere.(42) Although intrathecal morphine alone has not been shown to attenuate the stress response associated with cardiac surgery per se, it may attenuate the stress response in the immediate postoperative period.(44) In order to augment the effects of intrathecal opioids in reducing the stress response and circulatory instability in - 43 - patients undergoing cardiac surgery, local anesthetics have been used in combination with intrathecal opioids. In adults, however, intrathecal injection of local anesthetics in doses needed to attain high spinal blockade results in hypotension.(45) Children, on the other hand, do not develop hypotension following high spinal blockade. Finkel, et al., studied the hemodynamic effects of spinal anesthesia in children undergoing cardiac surgery.(31) In this study, 30 children between the ages of 7 months and 13 years received intrathecal morphine mixed with tetracaine following induction of general anesthesia and tracheal intubation. The dose of tetracaine was adjusted for age, according to the estimated volume of cerebrospinal fluid. Patients aged 6–12 months received intrathecal tetracaine 2.0 mg/kg, those between the ages of 1 and 3 years received 1.0 mg/kg, and those over the age of 4 years received 0.5 mg/kg. Tetracaine was mixed with 10% dextrose to yield a 0.5% hyperbaric solution, and all patients received preservative-free morphine in a dose of 0.005–0.010 mg/kg. Patients were placed in a 30∞ head-down (Trendelenberg) position for a minimum of 10 minutes following administration of the intrathecal solution. Although there was mild slowing of the heart rate in children over age 4 years, there was no clinically significant bradycardia nor hypotension observed. Hammer et al., have also reported hemodynamic stability following intrathecal tetracaine/morphine in children undergoing cardiac surgery.(46) We currently utilize spinal anesthesia in combination with general anesthesia in children for whom tracheal extubation is planned prior to leaving the operating room following open heart surgery. Surgical procedures include, for example, repair of atrial and/or ventricular septal defects or partial anomalous pulmonary venous return, aortic or pulmonary valvuloplasty, right ventrical-to-pulmonary artery conduit placement or exchange, bidirectional cavopulmonary shunt, and the modified Fontan procedure. Spinal anesthetic blocks (SAB) are performed immediately after tracheal intubation (i.e. prior to placement of arterial and central venous catheters) in order to maximize the time interval between SAB and heparinization for cardiopulmonary bypass. Patients are placed with the head of the table 30∞ down for a minimum of 15 minutes following SAB. No intravenous opioids are administered intraoperatively. Our dosing regimen for SAB is based on the above-referenced studies and is shown in Table 1. Table 1. Dosing regimens for spinal anesthesia. Age (years) Tetracaine (mg/kg) Morphine (m g/kg) <1 2.0 7 1–3 1.0 7 4–8 0.5 7 >8 0.5 10 Epidural Techniques The use of postoperative epidural analgesia in patients undergoing open heart surgery was first described by Hoar et al., in 1976.(47) Subsequently, El-Baz and Goldin reported the use of epidural blockade initiated prior to surgical incision.(48) In 1989, Rosen and Rosen first reported the efficacy of epidural morphine analgesia in children undergoing cardiac surgery.(22) Since then, many studies have reported favorable results with epidural anesthesia and analgesia for cardiac surgery.(42) In general, epidural anesthesia is used in patients undergoing open heart surgery for whom tracheal extubation is planned in the OR following the completion of surgery or shortly thereafter. The epidural technique most commonly used in children appears to be the administration of a single dose of morphine injected into the caudal epidural space. Morphine is favored for caudal epidural administration due its low lipid solubility and commensurate tendency to spread rostrally to thoracic dermatomes.(49,50) Following induction of general anesthesia and tracheal intubation, preservative-free morphine sulfate is injected in a dose of 0.05–0.10 mg/kg into the caudal epidural space via an epidural needle or intravenous catheter. Intravenous opioids, if administered intraoperatively, are given in restricted doses (eg., fentanyl 0.01–0.02 mg/ kg). - 44 - Alternatively, a caudal epidural catheter may be inserted to facilitate continuous administration of morphine during and after surgery. Following an initial dose of epidural morphine 0.04 mg/kg, a continuous infusion is begun in a dose of 0.0075 mg/kg/hr. The infusion is continued throughout the intraoperative period and maintained postoperatively for 48– 72 hours. If the patient appears overly somnolent the infusion is decreased in increments of 0.0025 mg/kg/hr.1 In order to attenuate the stress response associated with cardiac surgery and cardiopulmonary bypass as well as optimize postoperative analgesia, a combination of epidural opioids and local anesthetic agents may be used. Although local anesthetic agents may spread to thoracic dermatomes when administered via the caudal epidural space, potentially toxic doses of local anesthetics may be required to achieve thoracic analgesia.(51,52) Thoracic epidural blockade may be achieved with greater safety and efficacy by placing the epidural catheter tip in proximity to the spinal segment associated with surgical incision. Segmental anesthesia may then be achieved with lower doses of local anesthetic than those needed when the catheter tip is distant from the surgical site. In infants, a catheter can reliably be advanced from the caudal to the thoracic epidural space.(53) For example, with the infant in the lateral decubitus position, a 20-gauge epidural catheter may be inserted via an epidural needle or an 18-gauge intravenous catheter placed through the sacrococcygeal membrane and advanced 16–18 cm to the mid-thoracic epidural space. Minor resistance to passage of the catheter may be overcome by simple flexion or extension of the spine. If continued resistance is encountered, no attempt should be made to advance the catheter further, as the catheter may become coiled within or exit the epidural space. In older children, a thoracic epidural catheter may be inserted directly between T4 and T8 to provide intraoperative anesthesia and postoperative analgesia. As with SAB, epidural catheter placement should be performed immediately following tracheal intubation in order to maximize the time elapsed prior to heparin administration for CPB. In our practice, an initial dose of hydromorphone 0.007–0.008 mg/kg and 0.25% bupivacaine 0.5 ml/kg is administered. Subsequent doses of 0.25% bupivacaine 0.3 ml/kg are administered intraoperatively at approximately 90 minute intervals. No intravenous opioids are given during surgery. Postoperatively, a continuous infusion of 0.10% bupivacaine and hydromorphone 0.003 mg/ml is administered at a rate of 0.3 ml/kg/hr. An advantage of epidural catheter compared with “single shot” techniques is that adjustments can be made in dosing postoperatively according to the patient’s level of comfort. For example, a “bolus” of epidural anesthetic agents may be given and the infusion rate increased if the patient is experiencing pain. Alternatively, the infusion may be decreased if the patient becomes somnolent. Our dosing regimen for thoracic epidural anesthesia and analgesia is shown in Table 2. Table 2. Dosing regimens for epidural anesthesia. Intraoperative Dosage Bupiv. 0.25% (ml/kg) HM (m g/kg) 0.5 initially, then 0.3 q 90 min. Postoperative Infusion Bupiv 0.1%+HM 3 m g//ml @ 3 ml/hr 7–8 Bupiv. = bupivacaine; HM = hydromorphone Treatment of Side Effects Side effects related to neuraxial opioids include nausea and vomiting, pruritus, somnolence, respiratory depression, and urinary retention. Nausea and vomiting as well as pruritus appear to be relatively uncommon in infants and are primarily seen in children over the age of 3 years. These side effects are more common with morphine compared with hydromorphone and fentanyl.(54) Due to greater rostral spread, respiratory depression is also more common when morphine is used compared with hydromorphone.(49,54) Urinary retention is seen most commonly during the initial 24 hours of therapy, during which time the majority of patients have urinary catheters in place. Suggested treatment for side effects related to spinal and epidural opioids is shown in Table 3. 1D. Rosen – personal communication - 45 - Table 3. Treatment for side effects of neuraxial opioid administration. Side effect Treatment Comments Extrapyramidal reactions may occur but are uncommon Nausea/vomiting Metoclopromide (Reglan® ) 0.1–0.2 mg/kg/dose IV Q 6 hours Maximum dose: 10 mg Droperidol (Inapsine® ) 0.025–0/05 mg/kg IV Q 6 hours prn Maximum dose: 1.25 mg Diphenhydramine (Benadryl ® ) 0.5–1.0 mg/kg IV Q 6 hours prn Maximum dose: 50 mg Ondansetron (Zofran® ) 0.1–0.2 mg/kg IV Q 6 hours prn Maximum dose: 4 mg Nalbuphine (Nubain® ) 0.1 mg/kg IV Q 6 hours prn Naloxone (Narcan® ) 0.001–0.005 mg/kg/hr infusion Propofol (Diprivan® ) 0.001–0.010 mg/kg hr infusion Pruritus Very sedating – avoid if somnolent Very sedating – avoid if somnolent May substitute other 5-HT3 antagonist, eg. Granisetron (Kytril ® ) Excessive doses may compromise analgesia Diphenhydramine (Benadryl ® ) 0.5–1.0 mg/kg IV Q 6 hours prn Maximum dose: 50 mg Nalbuphine (Nubain® ) 0.1 mg/kg IV Q 6 hours prn Naloxone (Narcan® ) 0.001–0.005 mg/kg/hr infusion Very sedating – avoid if somnolent Excessive doses may compromise analgesia Somnolence Decrease epidural opioid infusion Consider low-dose naloxone infusion (above) Respiratory depression Severe: Administer 100% via facemask Initiate positive pressure ventilation prn Naloxone 0.001–0.010 mg/kg IV Stop epidural infusion Subsequently/Mild-moderate depression: Increase FIO2 Reduce epidural opioid infusion Naloxone (Narcan® ) 0.001–0.005 mg/kg/hr infusion Urinary retention Replace urinary catheter prn Conclusion The use of epidural and spinal anesthesia in infants and children may attenuate the stress response and thereby decrease morbidity and mortality associated with cardiac surgery. In addition, the use of these regional anesthesia techniques during and after cardiac surgery may result in improved pulmonary function, greater circulatory stability, and better postoperative pain control compared with general anesthesia and postoperative intravenous opioid analgesia. To the extent that regional anesthesia may facilitate tracheal extubation in the operating room immediately following surgery, complications and the expense associated with mechanical ventilation in the postoperative period may be avoided. In those patients who undergo tracheal extubation in the ICU, cost savings may be achieved due to reductions in time of mechanical ventilation and ICU length of stay, as well as earlier resumption of a regular diet. - 46 - The risks of epidural and spinal anesthesia in these patients include undesired side effects (nausea and vomiting, pruritus), hypotension, respiratory depression, and epidural hematoma formation. The incidence of side effects does not appear to exceed that associated with intravenous opioid analgesia. Hypotension, associated with local anesthetic spinal and epidural blockade in adult patients, is uncommon in infants and young children. Postoperative respiratory depression is greatly reduced by avoiding intraoperative opioids and using prudent doses of spinal and epidural opioids. The risk of epidural hematoma formation is small but finite. This risk can be minimized by employing reasonable safeguards. Appropriate precautions include selecting patients with normal coagulation function prior to needle placement, abandoning the regional anesthesia technique if needle placement is difficult, and delaying surgery in the event of return of blood via the needle or epidural catheter. The time interval between needle placement and heparin administration should be maximized, allowing for an interval of at least 60 minutes. Epidural catheters should be removed only after normal coagulation function has been restored. Future studies may provide additional information regarding the dose-response relationships of regional anesthetic agents in patients undergoing cardiac surgery. Modulation of the stress response in neonates, e.g. utilizing total spinal anesthesia, warrants investigation. In addition, strategies to decrease the incidence of side-effects (e.g. prophylactic antiemetic therapy) may be developed. References 1) Weissman C: The metabolic response to stress: an overview and update. Anesthesiology 73: 308-27, 1990. 2) Kehlet H: Surgical stress: the role of pain and analgesia. Br J Anaesth 63: 189-95, 1989. 3) Anand KJS, Hansen DD, Hickey PR: Hormonal-metabolic stress responses in neonates undergoing cardiac surgery. 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A brief review of “surgical” disorders afflicting infants and children will be followed by their anesthetic management. II. SURGICAL LESIONS OF THE CHEST A. Neonates and Infants A variety of congenital intrathoracic lesions for which surgery is required may present in the newborn period or within the first year of life. These include lesions of the intrathoracic airways, lung parenchyma, and diaphragm. Pulmonary sequestrations result from disordered embryogenesis producing a nonfunctional mass of lung tissue supplied by anomalous systemic arteries. Intralobar sequestrations are usually isolated anomalies, and may not present until late in childhood or adulthood. Extralobar sequestrations are commonly associated with other congenital anomalies, including bronchial agenesis, duplication of the colon, vertebral anomalies, and diaphragmatic defects. Presenting signs, which occur during the neonatal period up to 2 years of age, include cough, pneumonia, and failure to thrive. Diagnostic studies include CT scans of the chest and abdomen and arteriography. Surgical resection is performed following diagnosis. Lung hypoplasia may be caused by a variety of intrauterine problems, including compromised intrathoracic space (congenital diaphragmatic hernia, tumor, pleural effusion), oligohydramnios (fetal renal failure with oliguria), and absent or poor fetal breathing movements (Werdnig-Hoffman disease, congenital myotonic dystrophy, anencephaly, agenesis of phrenic nerves). The “scimitar syndrome” presents with hypoplasia of the right lung with dextrocardia and other cardiac deformities. Unilateral lung hypoplasia may be associated with recurrent pneumonia and/or hypoxemia due to ventilation/ perfusion (V/Q) mismatching, and may therefore require surgical resection. Pulmonary arteriovenous (A-V) fistulas occur most commonly along with widespread vascular abnormailities, such as in patients with Osler-Weber-Rendu syndrome (hereditary hemorrhagic telangiectasis). These lesions may present during infancy or in older children with hypoxemia, due to right-to-left shunting of blood, or with congestive heart failure. Acquired A-V fistulas may develop in children with elevated pulmonary artery pressure (e.g., pulmonary hypoplasia, mitral stenosis, cystic fibrosis) or following chest trauma. Many of these fistula can be completely or partially coiloccluded in the catheterization laboratory. Persistent lesions amy require surgical resection. Congenital cystic lesions in the thorax may be classified into three categories. Bronchogenic cysts and dermoid cysts usually do not communicate with the airways and often present later in childhood. Surgical excision is indicated for symptomatic lesions. Cystic adenomatoid malformations (CAM) include structures similar to bronchioles but which lack associated alveoli, bronchial glands, and cartilage. They may become overdistended due to air trapping, leading to respiratory distress in the first few days of life. When they are multiple and air-filled, CAM may resemble congenital diaphragmatic hernia (CDH) radiographically. Treatment is surgical resection of the affected lobe. As with CDH, prognosis depends on the amount of remaining functional lung tissue, which may be diminished due to compression in utero. Congenital lobar emphysema often presents with respiratory distress shortly after birth. This lesion may be caused by “ball-valve” bronchial obstruction in utero, causing progressive distal overdistension with fetal lung fluid. The resultant emphysematous lobe may compress lung bilaterally, resulting in a variable degree of hypoplasia. Congenital cardiac deformities are present in about 15% of patients. Radiographic signs of hyperinflation and atelectasis may be misin- 53 - terpreted as atelectasis. Positive pressure ventilation may exacerbate lung hyperinflation. Surgical resection is usually performed when the PaO2 is less than 50 mmHg despite supplemental oxygen administration. Congenital diaphragmatic hernia is a life-threatening condition occuring in approximately 1 in 2,000 live births. Failure of a portion of the fetal diaphragm to develop allows abdominal contents to enter the chest, interfering with normal lung growth. In 70–80% of CDH, a portion of the left posterior diaphragm fails to close, forming a triangular defect known as the foramen of Bochdalek. Failure of the central and lateral portions of the diaphragm to fuse, on the other hand, results in a retrosternal defect in the foramen of Morgagni. This usually presents with signs of bowel obstruction rather than respiratory distress. Hernias of the foramen of Bochdalek occuring early in fetal life usually cause respiratory failure immediately after birth due to pulmonary hypoplasia. Distension of the gut postnatally (eg, due to bag-and-mask ventilation) exacerbates the ventilatory compromise by further compressing the lungs. The diagnosis is often made prenatally, and fetal surgical repair has been described. Neonates present with tachypnea, scaphoid abdomen, and absent breath sounds over the affected side. Chest radiography (CXR) shows bowel in the left hemithorax with deviation of the heart and mediastinum to the right and compression the right lung. Right-sided hernias occur late and present with milder signs. In the presence of significant respiratory distress, bag-and-mask ventilation should be avoided and immediate tracheal intubation should be performed. Infants should be ventilated with small tidal volumes and low inflating pressures in order to avoid pneumothorax on the contralateral (right) side. In cases of severe lung hypoplasia and pulmonary hypertension (PaO2 < 50 mmHg with FiO2 1.0), extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) may be initiated early in order to avoid progressive lung injury. A particularly poor prognosis is predicted if associated cardiac deformities, a-AdO2 > 500 mmHg, or severe hypercarbia despite mechanical ventilation are present. Surgical correction via a subcostal incision with ipsilateral chest tube placement may be performed during ECMO. Tracheoesophageal fistula (TEF) with or without esophageal atresia occurs in approximately 1 in 4,000 live births. In 80–85% of infants, this lesion includes TEF with a distal esophageal pouch and tracheal fistulous connection. Afflicted neonates present with pooled oral secretions and may develop progressive gastric distension and tracheal aspiration of acidic gastric contents. A common association is the VACTERL complex, consisting of vertebral, anorectal, cardiac, tracheoesophageal, renal, and/or limb defects. Esophageal atresia is confirmed when orogastric tube is passed through the mouth and cannot be advanced more than about 7 cm. The tube should be secured and placed on suction, after which a chest radiograph is diagnostic. Occasionally, emergency gastrostomy is performed due to massive gastric distension. Mask ventilation and tracheal intubation are avoided if possible as they may exacerbate gastric distension and respiratory compromise. Evaluation should be performed to diagnose associated anomalies, particularly cardiac defects. Esophageal atresia without connection to the trachea and “H type” TEF occur much less commonly. Patent ductus arteriosus (PDA) and coarctation of the thoracic aorta (COTA) are relatively common lesions with a wide range of presentations. PDA occurs in about 1 in 2,500 live births and accounts for approximately 10% of congenital heart defects. 40% of premature infants weighing less than 1,000 gm and 20% of those under 1,750 gm have a PDA. The PDA in these infants is typically quite large and commonly results in congestive heart failure due to left-to-right shunting of blood, with pulmonary edema and decreased systemic perfusion. Small PDAs may close spontaneously or in response to administration of indomethacin. Alternatively, small lesions may present with a heart murmur in asymptomatic children. COTA is a localized narrowing of the aorta occuring close to the insertion of the ductus arteriosus into the aorta. COTA occurs in 1 in 1,200 live births. COTA may present in the newborn as a critical aortic obstruction in which a PDA supplies most of the perfusion to the lower body. These patients are frequently critically ill, with a metabolic acidosis and cyanosis of the lower body. Prostaglandin E1 is infused to maintain ductal patency until surgical correction is performed. COTA more typically presents later in childhood with arterial hypertension in the arms and low blood pressure in the lower extremities, with poor or absent femoral pulses. Turner’s syndrome and bicuspid aortic valves may be associated with COTA. B. Childhood Many of the lesions described above may not be diagnosed until childhood. These include pulmonary sequestration, A-V fistulas, cystic lesions, lobar emphysema, PDA, and COTA. Other disorders for which thoracic surgery is performed - 54 - in children, either for definitive treatment or diagnostic purposes, include neoplasms, infectious diseases, and musculoskeletal deformities. Tumors of the lung, mediastinum, and pleura may be primary or metastatic. Primary tumors of the chest are uncommon in children. Perhaps the most common are lymphoblastic lymphoma, a form of non-Hodgkin’s lymphoma, and Hodgkin’s disease. These neoplasms may present as an anterior mediastinal (thymic) mass with pleural effusion, dyspnea, pain, and/ or superior vena cava syndrome (swelling of the upper arms, face, and neck). Neuroblastoma, the most common extracranial solid tumor of childhood, may arise in the thoracic sympathetic chain. Signs and symptoms include Horner’s syndrome (lesions of the cervical and upper thoracic sympathetic chain), spinal cord compression, bone pain (skeletal metastasis), or, rarely, with hypertension, tachycardia, and flushing due to catecholamine secretion. Ganglioneuroblastomas and ganglioneuromas are variants of neuroblastoma which are also derived from neural crest cells and are histologically benign. Osteogenic sarcoma (osteosarcoma) and Ewing’s sarcoma arise in bone but commonly metastasize to the lung. Other tumors of childhood, including rhabdomyosarcoma and germ cell tumors, may also metastasize to the lung. Empyema is a complication of bacterial pneumonia most commonly caused by S. aureus and S. pneumoniae. H. influenzae type b is less common owing to the use of the HIB vaccine in young children. Empyema is diagnosed by CXR and is associated with prolonged fever and leukocytosis. Despite therapy with antibiotics and chest tube drainage, with or without urokinase instillation, surgical treatment is often necessary. Rarely, lung abscesses which persist despite antibiotics and percutaneous drainage may also require surgical treatment. Surgical lung biopsy may be performed for diagnostic purposes in cases of interstitial lung disease (ILD), which may be infectious (pneumocystis, respiratory syncytial virus, cytomegalovirus) or non-infectious (eg, nonspecific or allergic). Pectus excavatum results form excessive growth of the costochondral cartilages, with resultant inward depression of the sternum. It may be associated with Marfan’s syndrome or lung disease, the latter due to large negative intrathoracic pressure during inspiration. Children with severe deformities may have circulatory impairment due to distortion of the heart and great vessels, or respiratory compromise due to lung compression. Surgical repair is deferred, if possible, until adolescence. Scoliosis is a curvature of the spine measuring 10∞ or more in the frontal plane. This disorder may present as infantile (< 3 y.o.), juvenile (3–10 y.o.), or adolescent (>10 y.o.) forms. Scoliosis may be associated with congenital malformations of the vertebra, neuromuscular disease (eg, muscular dystrophy), neoplastic diseases (eg, neurofibromatosis), or may be idiopathic. Surgical correction is delayed until the teenage years unless the deformity is severe, and consists of posterior spinal fusion with instrumentation with or without anterior (thoracic) spinal fusion. III. VENTILATION/PERFUSION DURING THORACIC SURGERY Ventilation is normally distributed preferentially to dependent regions of the lung, so that there is a gradient of increasing ventilation from the most non-dependent to the most dependent lung segments. Because of gravitational effects, perfusion normally follows a similar distribution, with increased blood flow to dependent lung segments. Therefore, ventilation and perfusion are normally well matched. During thoracic surgery, several factors act to increase V/Q mismatch. General anesthesia, neuromuscular blockade, and mechanical ventilation cause a decrease in functional residual capacity of both lungs. Compression of the dependent lung in the lateral decubitus position may cause atelectasis. Surgical retraction and/or single lung ventilation result in collapse of the operative lung. Hypoxic pulmonary vasoconstriction (HPV), which acts to divert blood flow away from underventilated lung, thereby minimizing V/Q mismatch, is diminished by inhalational anesthetic agents and other vasodilating drugs. These factors apply to infants, children, and adults. The overall effect of the lateral decubitus position on V/Q mismatch, however, is different in infants compared with older children and adults. In adults with unilateral lung disease, oxygenation is optimal when the patient is placed in the lateral decubitus position with the healthy lung dependent (“down”) and the diseased lung non-dependent (“up”). Presumably, this is related to an increase in blood flow to the dependent, healthy lung and a decrease in blood flow to the non-dependent, diseased lung due to the hydrostatic pressure (or gravitational) gradient between the two lungs. This phenomenon favors the adult patient undergoing thoracic surgery in the lateral decubitus position. - 55 - In infants with asymmetric lung disease, however, oxygenation is improved with the healthy lung “up”. Several factors account for this discrepancy between adults and infants. Infants have a soft, easily compressible rib cage that cannot fully support the underlying lung. Therefore, functional residual capacity is closer to residual volume, making airway closure likely to occur in the dependent lung even during tidal breathing. When the adult is placed in the lateral decubitus position, the dependent diaphragm has a mechanical advantage, since it is “loaded” by the abdominal hydrostatic pressure gradient. This pressure gradient is reduced in infants, thereby reducing the functional advantage of the dependent diaphragm. Finally, the infant’s small size results in a reduced hydrostatic pressure gradient between the non-dependent and dependent lungs. Consequently, the favorable increase in perfusion to the dependent, ventilated lung is reduced in infants. For these reasons, infants are at an increased risk of significant oxygen desaturation during surgery in the lateral decubitus position. IV. INDICATIONS AND TECHNIQUES FOR SINGLE LUNG VENTILATION (SLV) IN INFANTS AND CHILDREN Prior to the 1990s, nearly all thoracic surgery in children was performed by thoracotomy. In the majority of cases, anesthesiologists ventilated both lungs with a conventional tracheal tube and the surgeons retracted the operative lung in order to gain exposure to the surgical field. During the past decade, the use of video-assisted thoracoscopic surgery (VATS) has dramatically increased in both adults and children. Recent advances in surgical technique as well as technology, including high resolution microchip cameras and smaller endoscopic instruments, have facilitated the application of VATS in smaller patients. VATS is being used extensively for pleural debridement in patients with empyema, lung biopsy and wedge resections for ILD, mediastinal masses, and metastatic lesions. More extensive pulmonary resections, including segmentectomy and lobectomy, have been performed for lung abscess, bullous disease, sequestrations, lobar emphysema, CAM, and neoplasms. In addition, closure of PDA, repair of hiatal hernias, and anterior spinal fusion have been reported. Although VATS can be performed while both lungs are being ventilated, using CO2 insufflation and placement of a retractor to displace lung tissue in the operative field, single lung ventilation (SLV) is extremely desirable during VATS. There are several different techniques that can be used for SLV in children. A. Single-lumen endotracheal tube (ETT) The simplest means of providing SLV is to intentionally intubate the ipsilateral mainstem bronchus with a conventional single lumen endotracheal tube (ETT). When the left bronchus is to be intubated, the bevel of the ETT should be rotated 180∞ and the head turned to the right. The ETT is advanced into the bronchus until breath sounds on the operative side disappear. A fiberoptic bronchoscope (FOB) may be passed through or alongside the ETT to confirm or guide placement. When a cuffed ETT is used, the distance from the tip of the tube to the distal cuff must be shorter than the length of the bronchus so that the cuff is not entirely in the bronchus. This technique is simple and requires no special equipment other than a FOB. This may be the preferred technique of SLV in emergency situations such as airway hemorrhage or contralateral tension pneumothorax. Problems include failure to provide an adequate seal of the bronchus, especially if a smaller, uncuffed ETT is used. This may prevent the operative lung from collapsing or fail to protect the healthy, ventilated lung from contamination by purulent material from the contralateral lung. One is unable to suction the operative lung using this technique. Hypoxemia may occur due to obstruction of the upper lobe bronchus, especially when the short right mainstem bronchus is intubated. Variations of this technique have been described, including intubation of both bronchi independently with small ETTs. One mainstem bronchus is initially intubated with an ETT, after which another ETT is advanced over a FOB into the opposite bronchus. B. Balloon tipped bronchial blockers Recently, the use of an end-hole, balloon wedge catheter (Arrow International Corp., Redding, PA) as a bronchial blocker has been described. The bronchus on the operative side is initially intubated with an ETT. A guidewire is then advanced into that bronchus through the ETT. The ETT is removed and the blocker is advanced over the guidewire into - 56 - the bronchus. An ETT is then reinserted into the trachea alongside the blocker catheter. Alternatively, a Fogarty embolectomy catheter may be placed with or without bronchoscopic guidance. A FOB may be used to confirm position of the blocker. With an inflated blocker balloon the airway is completely sealed, providing more predictable lung collapse and better operating conditions than with an uncuffed ETT in the bronchus. A potential problem with this technique is dislodgement of the blocker balloon into the trachea. The inflated ballon will then block ventilation to both lungs and/or prevent collapse of the operative lung. The balloons of most catheters currently used for bronchial blockade have low volume, high pressure properties and overdistension can damage or even rupture the airway. A recent study, however, reported that bronchial blocker cuffs produced lower “cuff-to-tracheal” pressures than double lumen tubes. When closed tip bronchial blockers are used, the operative lung cannot be suctioned and continuous positive airway pressure (CPAP) cannot be provided to the operated lung if needed. C. The Univent tube The Univent tube (Fuji Systems Corporation, Tokyo, Japan) is a conventional ETT with a second lumen containing a small tube that can be advanced into a bronchus. A balloon located at the distal end of this small tube, when inflated, serves as a blocker. Univent tubes require FOB for successful placement. Pediatric size Univent tubes are now available in sizes as small as a 3.5 and 4.5 mm internal diameter (ID). Because the blocker tube is firmly attached to the main ETT, displacement of the Univent blocker balloon is is less likely than when other blocker techniques are used. The blocker tube has a small lumen which allows egress of gas and can be used to insufflate oxygen or suction the operative lung. A disadvantage of the Univent tube is the large amount of cross sectional area occupied by the blocker channel, especially in the smaller size tubes. Smaller Univent tubes have a disproportionately high resistance to gas flow. The Univent tube’s blocker balloon has low volume, high pressure characteristics so mucosal injury can occur during normal inflation. D. Double-lumen tubes (DLTs) All DLTs are essentially two tubes of unequal length molded together. The shorter tube ends in the trachea and the longer tube in the bronchus. DLTs for older children and adults have cuffs located on the tracheal and bronchial lumens. The tracheal cuff, when inflated, allows positive pressure ventilation. The inflated bronchial cuff allows ventilation to be diverted to either or both lungs, and protects each lung from contamination from the contralateral side. Conventional plastic DLTs, once only available in adults sizes (35, 37, 39, and 41 Fr), are now available in smaller sizes. The smallest cuffed DLT is a 26 Fr (Rusch, Duluth, GA) which may be used in children as young as 8 years old. DLTs are also available in sizes 28 and 32 Fr (Mallinckrodt Medical, Inc., St. Louis, MO) and are suitable for children 10 years of age and older. In children the DLT is inserted using the same technique as in adults. The tip of the tube tube is inserted just past the vocal cords and the stylet is withdrawn. The tube is rotated through 90 degrees to the appropriate side and then advanced into the bronchus. In the adult population the depth of insertion is directly related to the height of the patient. No equivalent measurements are yet available in children. If FOB is to be used to confirm tube placement, a bronchoscope with a small diameter and sufficient length must be available. A DLT offers the advantage of ease of insertion, ability to suction and oxygenate the operative lung with CPAP, and the ability to visualize the operative lung. Left tubes are preferred to right DLTs because of the shorter length of the right main bronchus. Right DLTs are more difficult to accurately position because of the greater risk of right upper lobe obstruction. DLTs are relatively safe and easy to use. There are very few reports of airway damage from DLTs in adults, and none in children. Their cuffs high volume, low pressure cuffs should not damage the airway if they are not overinflated with air or distended with nitrous oxide while in place. Use of these techniques for providing SLV in infants and children is summarized in Table 1. - 57 - Table 1. Tube selection for single lung ventilation in children. Univent ®*** AGE (yrs) ETT (ID)* BB** (Fr) 0.5–1 3.5–4.0 5 1–2 4.0–4.5 5 2–4 4.5–5.0 5 4–6 5.0–5.5 5 6–8 5.5–6 6 3.5 8–10 6.0 cuffed 6 3.5 26 10–12 6.5 cuffed 6 4.5 26–28 12–14 6.5–7.0 cuffed 6 4.5 32 14–16 7.0 cuffed 7 6.0 35 16–18 7.0–8.0 cuffed 7 7.0 35 DLT (Fr)# *** Sheridan ® Tracheal Tubes, Kendall Healthcare, Mansfield, MA. *** Arrow International Corp., Redding, PA. *** Fuji Systems Corporation, Tokyo, Japan. # 26 Fr – Rusch, Duluth, GA; 28–35 Fr – Mallinckrodt Medical, Inc., St. Louis, MO. ID = internal diameter, Fr = French size, DLT = double-lumen tube. V. MONITORING AND ANESTHETIC TECHNIQUES A thorough preoperative evaluation is essential in caring for pediatric patients scheduled for thoracic surgery. As discussed above, imaging and laboratory studies will have been performed preoperatively according to the lesion involved. Guidelines for fasting, choice of premedication, and preparation of the OR are invoked as for other infants and children scheduled for major surgery. Following induction of anesthesia, arterial catheterization should be performed for most patients undergoing thoracotomies as well as those with severe lung disease having VATS. This facilitates close monitoring of arterial blood pressure during manipulation of the lungs and mediastinum as well as arterial blood gas tensions during SLV. For thoracoscopic procedures of relatively short duration in patients without severe lung disease, insertion of an arterial catheter is not mandatory. Placement of a central venous catheter is not generally indicated if peripheral intravenous access is adequate for projected fluid and blood administration. Inhalational anesthetic agents are commonly administered in 100% O2. Isoflurane may be preferred due to its lesser effect on HPV compared with other inhalational agents, although this has not been studied in children. Nitrous oxide is avoided. Isoflurane is commonly supplemented with intravenous opioids in order to limit its concentration and impairment of HPV. Alternatively, total intravenous anesthesia may be used with a variety of agents. The combination of regional anesthesia with genereal anesthesia is particularly desirable for thoracotomies, but may also be beneficial for VATS, especially when chest tube drainage is used following surgery. A variety of regional anesthetic techniques have been described, including intercostal blocks, intrapleural infusions, spinal anesthesia, and epidural anesthesia. Of these, epidural anesthesia best facilitates excellent intraoperative anesthesia and postoperative analgesia. In order to attenuate the stress response associated with thoracic surgery, minimize the inhaled anesthetic concentration, and provide optimial postoperative analgesia, a combination of epidural opioids and local anesthetic agents should be used. Although local anesthetic agents may spread to thoracic dermatomes when administered via the caudal epidural space, potentially toxic doses of local anesthetics may be required to achieve thoracic analgesia. Thoracic epidural blockade may be achieved with greater safety and efficacy by placing the epidural catheter tip in proximity to the spinal segment associated with surgical incision. Segmental anesthesia may then be achieved with lower doses of local anesthetic than those needed when the catheter tip is distant from the surgical site. In infants, a catheter can reliably be advanced from the caudal to the thoracic epidural space. For example, with the infant in the lateral decubitus position, a 20-gauge epidural catheter may be inserted via an epidural needle or an 18-gauge intravenous catheter placed through the sacrococcygeal - 58 - membrane, and then advanced 16–18 cm to the mid-thoracic epidural space. Minor resistance to passage of the catheter may be overcome by simple flexion or extension of the spine. If continued resistance is encountered, no attempt should be made to advance the catheter further, as the catheter may become coiled within or exit the epidural space. In older children, a thoracic epidural catheter may be inserted directly between T6 and T8 to provide intraoperative anesthesia and postoperative analgesia. In our practice, an initial dose of hydromorphone 7–8 mg/kg and 0.25% bupivacaine 0.5 ml/kg is administered. Subsequent doses of 0.25% bupivacaine 0.3 ml/kg are administered intraoperatively at approximately 90 minute intervals. No intravenous opioids are given during surgery. Postoperatively, a continuous infusion of 0.10% bupivacaine and hydromorphone 3 mg/ml is administered at a rate of 0.3 ml/kg/hr. An advantage of epidural catheter compared with “single shot” techniques is that adjustments can be made in dosing postoperatively according to the patient’s level of comfort. For example, a “bolus” of epidural anesthetic agents may be given and the infusion rate increased if the patient is experiencing pain. Alternatively, the infusion may be decreased if the patient becomes somnolent. Our dosing regimen for thoracic epidural anesthesia and analgesia is summarized in Table 2. Table 2. Dosing regimens for epidural anesthesia. Intraoperative Dose Bupiv. 0.25% (ml/kg) HM (m g/kg) 0.5 initially, then 0.3 q 90 min. 7–8 Postoperative Infusion (ml/kg/hr) Bupiv 0.1%+HM 3 m g//ml @ 0.3 Bupiv. = bupivacaine; HM = hydromorphone Side Effects of Neuraxial Opioids Side effects related to neuraxial opioids include nausea and vomiting (N/V), pruritus, somnolence, respiratory depression, and urinary retention. Nausea and vomiting as well as pruritus appear to be relatively uncommon in infants and are primarily seen in children over the age of 3 years. These side effects are more common with morphine compared with hydromorphone and fentanyl. Treatment includes metoclopromide 0.1–0.2 mg/kg IV and ondansetron 0.1–0.2 mg/kg IV Q6 hrs. Pruritus may be treated with diphenhydramine 0.5–1.0 mg/kg IV Q6hrs or nalbuphine 0.1 mg/kg IV Q6hrs. Both of these therapies are also efficacious in the treatment of N/V. Due to greater rostral spread, respiratory depression is more common when morphine is used compared with hydromorphone. Respiratory depression with oxygen desaturation should be treated with 100% O 2 and, if necessary, repeated doses of naloxone 0.5–1.0 mg/kg IV administered incrementally. Persistent N/V, pruritus, and respiratory depression can be treated with a continuous infusion of naloxone 1–5 mg/kg/hr IV. Urinary retention is seen most commonly during the initial 24 hours of therapy, during which time patients may benefit from having a urinary catheter in place. VI. CONCLUSION Perioperative care of infants and children undergoing thoracic surgery presents a great challenge to the anesthesiologist. To meet this challenge, the practitioner benefits from a review of congenital and acquired “surgical” diseases of the chest in this age group. Equally important are an understanding of the physiology of lung ventilation and perfusion during surgery, monitoring requirements, appropriate anesthetic techniques, and methods of providing single lung ventialtion safely and effectively. Skill in performing regional anesthetic techniques in infants and chidlren, including thoracic epidural anesthesia and postoperative analgesia, are also important in managing pediatric patients undergoing thoracic surgery. References 1. 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Dierdorf, M.D. Professor of Anesthesia Indiana University School of Medicine Indianapolis, IN, USA Email: sstev47@aol.com Introduction The invention and development of the laryngeal mask airway (LMA) by Dr. Archie Brain has had a significant impact on the practice of anesthesia, management of the difficult airway, and cardiopulmonary resuscitation. The LMA provided anesthesiologists with a new type of airway device: the supraglottic airway, and airways can now be classified into three categories: 1) pharyngeal airways, 2) supraglottic airways, and 3) intratracheal airways. Anesthesiologists have a greater variety of airways from which to choose and the airway can be closely matched with the patient, type of anesthesia, and the surgical procedure. Pediatric patients are more likely to develop intraoperative and postoperative airway complications. Can the LMA be used as frequently for pediatric patients as for adult patients? Are the potential benefits and complications of LMA use the same for pediatric and adult patients? Pediatric Airway Anatomy And Physiology Neonates have a high metabolic rate and a large oxygen consumption per unit of body weight that is over twice that of the adult: 7 ml/kg/min (neonate), 3 ml/kg/min (adult). The respiratory muscles are weak and prone to fatigue. Tidal volume is relatively fixed and an increased demand for oxygen must be met with an increase in respiratory rate. The ratio of the minute alveolar ventilation to the functional residual capacity (FRC) is high which reduces the oxygen reserve in the lungs once ventilation ceases. The relatively large tongue and prominent soft tissue of the neck and pharynx increase the likelihood of upper airway obstruction after a sedative drug (intravenous or inhalation) has been administered. The infant and child’s airway reflexes are very reactive to foreign materials and infectious agents. The maturation process of the pediatric airway is gradual and inflection points of change to a more adult-like pattern cannot be precisely identified. Perioperative management of the pediatric airway must be done with great care and precise monitoring. In addition to the complications of tracheal intubation that occur in adults, children are more likely to develop mucosal injury, hoarseness, subglottic edema, and cough. Administration of anesthesia via an LMA may reduce the incidence of many of these postoperative complications. An LMA should not, however, be used for patients when tracheal intubation is clearly indicated. LMA Insertion Technique The technique for LMA insertion as developed by Brain has been shown to provide the best position of the airway device in the widest variety of patients for many types of surgeries. Although a number of variant techniques have been advocated, none have been consistently shown to be better than Brain’s technique. Many of the alternative techniques result in an LMA placement that is too high in the upper airway and the cuff is over-inflated to prevent gas leak around the LMA. A high LMA cuff pressures is more likely to cause swelling of pharyngeal structures and a reduced tolerance for the LMA during emergence. The concept of LMA insertion is similar to the physiologic process of swallowing. After food is thoroughly masticated, the tongue flattens the bolus of food against the hard palate and in concert with pharyngeal muscles propels the food into the hypopharynx. Insertion of the LMA, in a similar fashion, is done by flattening the deflated LMA - 61 - cuff against the hard palate with the index finger pushing the LMA along the surface of the hard and soft palate in a sweeping arc into the hypopharynx. This technique is suitable for both adults and children and is basic for all LMA models. LMA Models The classic LMA, unlike other supraglottic airways, is available in a wide range of sizes, one of which will fit neonates or large adults. Selecting the correct size for the individual pediatric patient is not always precise and different sizes should be readily available. The LMA has an increased likelihood of malposition in children that may be secondary to sizing irregularities. The success of the classic LMA prompted development of other LMA models for specific purposes such as blind tracheal intubation (intubating LMA) and access to the stomach (proseal LMA). The proseal LMA offers two advantages: 1) the presence of the gastric conduit permits passage of a gastric tube and gastric decompression, and 2) a redesign of the LMA cuff that results in a better fit of the LMA to the airway and higher potential inflation pressures. Currently, the smallest size available for the intubating LMA and the proseal LMA is size #3. The LMA And Pediatric Anesthesia The LMA provides a more secure airway than can be obtained with a pharyngeal airway and a face mask in pediatric patients. The LMA bypasses the tongue and upper pharyngeal structures that cause upper airway obstruction in children. The brevity of the surgical procedure such as a myringotomy may not warrant an LMA, but in certain patients (mandibular hypoplasia), the LMA may be a better choice for even brief procedures. In the situation where an anesthesiologist is working alone (even if tracheal intubation is planned) and an inhalation induction is being performed, an LMA inserted after induction of anesthesia may provide a secure airway while the anesthesiologist is cannulating a vein prior to tracheal intubation. The LMA is especially appropriate when general anesthesia is required for relatively non-invasive diagnostic or therapeutic procedures such as MRI, CT scanning, cardiac catheterization, nuclear scans, and radiation therapy. The complications and side effects of tracheal intubation can be avoided for these types of procedures. Other types of surgery for which the LMA has been useful include non-cavity invasive general surgery, orthopedic surgery, plastic surgery and genitourinary surgery. The LMA is not a replacement for the tracheal tube; however, many pediatric patients have, in the past, been intubated simply because standard pharyngeal airways have not provided a secure enough airway. Each anesthesiologist should review the indication for tracheal intubation in their pediatric patients to determine whether an LMA may provide a secure airway with minimal risk of side effects. The ProSeal LMA The question of whether pediatric patients are more prone to aspiration of gastric contents has been debated for many years. The most recent comprehensive review of aspiration indicates that the pediatric patient has only a slightly increased risk of perioperative aspiration pneumonitis. Excessive positive pressure ventilation by face mask may produce gastric distention, which by increasing intragastric pressure, can increase the likelihood of regurgitation. Most children have very compliant lungs and the level of positive pressure ventilation suitable for an adult, when applied to the child, can overcome closure of the upper and lower esophageal sphincters and cause distention of the stomach. Such distention also limits diaphragmatic excursion and impairs effective ventilation. The proseal LMA with the gastric conduit provides a means by which the stomach can be decompressed after the LMA is in place. The proseal LMA is a more anatomic fit for the airway and is more suitable for positive pressure ventilation. These two advantages of the proseal LMA should be of great benefit for pediatric anesthesia when smaller sizes of proseal LMAs are manufactured. The LMA And The Difficult Airway Although not specifically invented for management of the difficult airway, the LMA has proven to be the most significant advance in difficult airway management in the past thirty years. The medical literature is replete with case reports and clinical studies demonstrating the efficacy of the LMA to establish ventilation in patients with difficult airways - 62 - under elective and emergent conditions. This is true for both adult and pediatric patients. Ventilation of pediatric patients with congenital syndromes such as Pierre-Robin, Treacher-Collins, Goldenhar, Klippel-Feil, Beckwith-Weidemann is much easier with an LMA than other devices. Fiberoptic-assisted tracheal intubation is facilitated by the presence of an LMA and has revolutionized airway management for a wide variety of patients with airway abnormalities. In most cases the LMA can be inserted after the patient has been rendered unconscious with an inhalation agent (sevoflurane). For patients where ventilation may be unpredictable after induction of anesthesia, the LMA can be facilitated with topical anesthesia. Summary The invention and development of the LMA for clinical use has revolutionized operative management of the airway for patients with normal and abnormal airways. The LMA is the first true supraglottic airway. The success of the classic LMA design led to the production of several different LMA models with specific indications. Airway management is the most important task for the anesthesiologist and the importance of this function cannot be overemphasized. The anesthesiologist cannot accept limitations in airway management and must always be prepared to abandon a technique when the clinical situation requires a different approach. There is no single airway device or technique that is suitable for every patient and anesthesiologists must be skilled in many techniques to ensure optimal airway management with minimal risk. References 1. Brambrink AM, Meyer RR: Management of the paediatric airway: new developments. Curr Opin Anaesthesiol 15: 329, 2002. 2. Flick RP, Schears GJ, Warner MA: Aspiration in pediatric anesthesia: is there a higher incidence compared with adults. Curr Opin Anaesthesiol 15: 323, 2002. 3. Haynes SR, Morton NS: The laryngeal mask airway: a review of its use in paediatric anaesthesia. Paediatr Anaesth 3: 65, 1993. 4. Rowbottom SJ, Simpson DL, Grubb D: The laryngeal mask airway in children. A fibreoptic assessment of position. Anaesthesia 46: 489, 1991. 5. Walker RWM: The laryngeal mask airway in the difficult paediatric airway: an assessment of positioning and use in fibreoptic intubation. Paediatr Anaesth 10: 53, 2000. 6. Morray JP, Geiduschek JM, Caplan RA, Posner KL, Gild WM, Cheney FW: A comparison of pediatric and adult anesthesia closed malpractice claims. Anesthesiology 78: 461, 1993. - 63 - 教育セミナー 教 育 セ ミ ナ ー 教育セミナー1/ Educational Seminar 1 小児脳神経外科手術の麻酔 北海道立小児総合保健センター 麻酔科 川名 信 Pediatric Neuroanesthesia Shin Kawana Division of Anesthesia, Hokkaido Children’s Hospital and Medical Center 1.はじめに 小児の脳神経外科疾患は成人と異なり先天性疾患が大部分を占める.そのため術前には手術の対象となる中枢神経疾患 のみではなく、合併奇形を含めた全身の病態を把握する必要がある.麻酔中および術後は全身状態、特に呼吸・循環の変 化に注意を払った管理が要求される. 2.小児の脳循環生理・薬理 1) 脳血流量 脳血流量は出生後しばらく成人より少ないが、乳児以降は成人より多くなり、脳組織酸素消費量も高い.新生児でも脳 血流自己調節は機能しているが、体血圧が低いので自己調節範囲は成人より低い.出生時に仮死や頭蓋内出血を伴うと、自 己調節能は著しく障害される.また脳血管の CO2 反応性は新生児期からみられる. 2) 頭蓋内圧 大泉門は1歳頃まで開大しており、頭蓋骨縫合が癒合する10歳頃までは緩徐な頭蓋内圧亢進では頭囲の拡張により圧の 上昇が緩和される.しかし急激な容積変化に対しては緩衝作用が弱く、年長児より頭蓋内圧が上昇しやすい.またシャン トや脱水による頭蓋内圧の低下では大泉門の陥没、さらに新生児では頭蓋骨縫合部の重合などの現象が見られる. 3) 吸入麻酔薬と脳血流 イソフルランは正常乳幼児で脳血流量を大きく変化させないと報告されているが、頭蓋内圧亢進状態での報告はない.セ ボフルランは正常乳幼児ではハロタンより脳血流量の増加が少ないという報告もあるが、さらなる研究が必要であろう.最 近はイソフルラン、セボフルランのけいれん誘発作用についても検討が加えられるようになってきた. 3.術前評価 新生児期の脳内出血や低酸素性虚血性脳症の場合には、筋緊張低下、凝視異常、反復性瞬目、よだれ、あくび、無呼吸 のほか、ペダルこぎやスイミングという異常運動が見られることが多い.新生児仮死後には心筋抑制や脳血流の自己調節 能破綻がみられることが多い.乳児期以降では中枢神経系の障害により術前から喘鳴や閉塞性呼吸パターンを示すような 場合もある.呼吸状態は手術によって改善することもあるので、個々の症例を検討し麻酔の適応を決定する.てんかん患 者でカルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウムなどの血中半減期が短い抗痙攣薬を内服している場合は、中断時間が長くな らないように術直前まで投与し、術後も早期に開始する. 4.疾患別麻酔管理 1) 脊髄髄膜瘤 先天性心疾患を伴う頻度が高いので心エコーによる評価は必須である.体位固定時には頸椎を愛護的に扱い、過伸展、過 屈曲とならないようにする. 脊髄髄膜瘤の患者のほとんどは小脳下部や橋、延髄、第4脳室が大後頭孔から脊椎管へ陥入 するChiari II型の奇形を伴い、無呼吸、徐脈、嚥下障害、誤嚥など、脳幹障害による症状を示すことが多い.治療はシャ ント術が第一選択となるが、シャント術施行後も無呼吸、喘鳴などが持続し脳幹部の圧迫が考えられる場合には後頭蓋窩 減圧術を施行する. - 67 - 2) 脳腫瘍 小児の脳腫瘍は神経膠腫、髄芽腫(primitive neuroepithelial cells tumor; PNET)、胚細胞腫瘍が多く、成人で多く見 られる髄膜腫や転移性腫瘍は少ない.頭蓋内圧亢進症状の他に脳幹症状が出ることが多い.手術部位が脳幹部の場合、徐 脈を起こしやすい. 3) 水頭症 中脳水道狭窄、Dandy-Walker 奇形、Chiari II 奇形などの先天性水頭症と、新生物、くも膜のう胞や出血による後天性 水頭症がある.水頭症の原因を把握しておくことが重要である.新生児・乳児では頭蓋内圧亢進の症状としては頭囲拡大、 落陽現象、無呼吸発作や傾眠がちになり、ミルクの飲みが悪い、飲んだミルクを吐くなどがみられる.年長児では頭痛、嘔 吐、複視、うっ血乳頭、意識障害、腹痛、行動異常などが出現する.脳室ドレナージで急激に減圧すると血圧が低下する ことがある. 最近は閉塞性水頭症に対して内視鏡を用いて第三脳室から中脳水道の閉塞を解除する手術もおこなわれる.大 量出血や高度徐脈などの合併症が報告されている.徐脈の原因として第三脳室圧の上昇、あるいは第三脳室底の刺激など が考えられている. 4) 頭蓋骨早期癒合症 頭蓋骨早期癒合症のなかでもCrouzon病、Apert症候群などは挿管困難症を伴うことが多い.出血量は手術時間に比例 して多くなるので十分な輸血量を準備する.小児の場合、人為的低血圧麻酔は血圧の下げ幅が小さいためあまり効果的で ない.空気塞栓は拡大頭蓋形成では 60-80% に発生すると報告されている.小児の場合には頭が大きいため通常の仰臥位 でも手術野と心臓との間に高低差が生じる.体位に注意しできるだけ頭部と心臓の高低差を少なくする.胸壁ドップラー、 食道聴診器、終末呼気二酸化炭素分圧をモニターする.空気塞栓が疑われた場合には、術野を濡れたガーゼで覆う、輸液・ 輸血を負荷する、一時的に頭低位にするなどの処置をとる. 5) 脳動静脈奇型 症状としては脳内出血、痙攀、水頭症、心不全、呼吸不全などがあるが、新生児では心不全が唯一の症状であることが ある.最近は心不全を主徴とする新生児症例では血管内外科手術が第一選択となることが多い.塞栓術および外科的クリッ ピングによる急激な後負荷の増大に対し血管拡張薬を準備する.大量出血に対する人為的低血圧麻酔の効果は明らかでは ない.脳保護作用のための軽度低体温では体温が下がりすぎないようにする. 4.術後管理 手術侵襲が大きい場合や脳幹部をいじった場合は、呼吸・循環動態が落ち着くまで挿管のまま人工呼吸管理を続ける.頭 蓋内圧亢進や拡大頭蓋形成のあとなどは完全に不動化し症状の悪化や出血量の増加を防ぐ. 5.今後の課題 脳神経外科領域の術後疼痛管理は呼吸抑制の問題や効果の評価が難しいことで積極的には行われてこなかったが、いか に安全で有効な術後鎮痛を得るかが課題である.また今後増える可能性のある胎児脳神経外科手術に対する麻酔管理も検 討してゆく必要がある. - 68 - 教育セミナー2/ Educational Seminar 2 自閉症症例の周術期医療 愛知県心身障害者コロニー中央病院 麻酔科、児童精神科 * 重見研司、水野省司、若子理恵 * Perioperative care of autistic people Kenji Shigemi, Shouji Mizuno, Rie Wakako* Departments of Anesthesiology and Child Psychiatry*, Aichi Prefectural Colony Central Hospital 最近、児童虐待や家庭内暴力、学級崩壊などが新聞紙上を賑わし、子供たちを取り巻く社会環境が非常に騒がしい。児 童精神医学領域においては、上記のトピックスに加えて、学習障害や多動がクローズアップされている。なかでも、 「自閉 症」と診断される児童が世界的規模で爆発的に増加している。特に「自閉症」と診断される子供が日本で増えている理由 は、疾患の概念が確立されて医師の診断能力が向上したことに加えて、「個性」より「一律」を重視している日本独自の社 会的条件が加味されているという意見もある(1)。自閉症は診断基準(DSM-IV)に則して診断されるが、その際に文化的 背景が関与するため、一般の疾病のように国外の文献を無条件に国内の症例に応用できない。それゆえ、全身麻酔に際し ても本邦独自の対応を確立しなければならないが、現在は各施設において臨機応変に試行錯誤し暗中模索の状態である。ま た、成人の自閉症者は、非常に複雑な行動をとる場合が多く対応が大変難しい。それは、本来の自閉症の特性に加えて、自 閉症に対する理解が不十分であった時代に幼年期を過ごし、早期に的確な療育を受けることができず、二次的に情緒障害 をきたしているからである。 自閉症の古典的なトリアスは「社会的孤立、異常な言語、同一性の保持」であった。近年は障害の本質が徐々に明らかと なり「社会性の障害、意思疎通の障害、想像力の障害」と表現される。加えて「感覚の過敏」も大きな問題である(2)。そ れぞれの障害の程度に差があるので、対応の方法も一律ではない。また、これらの障害をもとに形成された情緒面の考察も 対応策の重要な要因となる。これは本人だけの問題ではなく、家族や友人、先生、施設職員などの環境の影響も大きい。こ のように、麻酔科医は、上記の4つの一般的な自閉症の特性と、各症例を個々に注意深く観察して得られた各症例独自の特 性を組み合わせて、個別の処方箋を検討しなくてはならない。特に、パニックを頻発する症例や、自傷・他害が顕著である 場合などは、メジャートランキライザーを大量に長期間投与されることが多いので、前投薬のタイミングや内容と量、また、 麻酔導入薬剤の量などに工夫が必要である。全身麻酔中の経過や覚醒経過も一般の過程とは異なり、絶食による常用薬剤の 中止で血中濃度が不十分となり、予想外のバイタルサインや行動の変化の原因となることにも注意を要する。 自閉症の原因については、「心の理論」や「ツーヒット・メカニズム」など興味深い説がいくつか提案されている。いず れも完全ではないが、それらを理解することにより、根本的な治療法がない現状で、具体的な対応策を練る上で基本的な 情報を得ることができる。療育面では、 「体罰」を含めてたくさん方法が提案されているが、学童期には有効でも、成長し てからパニックの原因になるなど決め手は無い。現在は TEACCH 法(3) が有力なコミュニケーションの手段であるが、 麻酔に応用することは難しい。試行錯誤した上で成功した事例を顧みると、結果的にこの方法を取り入れていたことが後 にわかる場合があるが、計画的に麻酔に応用した例は見当たらない。また、小学校高学年になると「心の理論」を学習し て習得する場合も多く、麻酔に際しては、「感覚の過敏」に重点を置いた対策が有効であるとも考えられる。 小児麻酔の領域においては、患児と充分コミュニケーションが図られた場合、例えば全身麻酔前投薬は不必要である。自 閉症症例では、言葉による意思疎通が困難で、通常の説明方法では納得が得られ難い場合が多い。その場合、本人は恐怖 の対象である手術室に強制的に連行されることになる。記憶力の良い自閉症症例にはこの経験がトラウマとなって将来パ ニックの一因になる可能性も高い。また本人が納得しても本人の意思とは無関係に衝動的行動が生じ、パニックに陥るこ ともある。そこで、自閉症児の術前準備では、本人とのコミュニケーションを図ることではなく、気をそらしているうち に、また場合によっては有無を言わせずに薬物を投与し、手際よく全身麻酔を導入することを主目的とする場合も多い。具 体的には前投薬としてケタミンを 7 mg・kg – 1 経口投与するか、5 mg・kg – 1 筋肉内投与することをすすめている施設があ る(4) が、工夫の余地があると考える。 - 69 - 自閉症症例が虫垂炎に罹患する可能性は一般症例と変わりはないが、その手術前後の状況は特異である。腹膜炎をきた していても安静を保つ様子が無く、容易に重症化し、発見が遅れる原因となる。また、自閉症症例は自傷の頻度が高く、パ ニック時には行動の自制が無いので、網膜剥離や切傷、裂傷など、外傷の頻度が高い。この場合も、動脈や腱が切断され て骨が見えても安静を保つことは無い。鎮静を目的としてジアゼパムを通常量の5倍程度静脈内投与しても入眠せず、強 制的な抑制を必要とする。しかし、一旦入眠して全身麻酔の状態となれば、麻酔薬は通常量を必要とし、少量では頻脈や 高血圧をきたし、いわゆる麻酔が浅い状況を呈する。術後も自閉症症例は、活発に運動し、安静を保つことは無く、創痛 は無いように見える。自閉症症例の痛覚は、覚醒時には閾値が非常に高いが、無意識下では一般と同様と考えられる。 当院における具体的な症例とその対応策を列挙して問題を提起すると同時に、ヒトの脳の高次機能と麻酔の関係につい て考察を深めることができれば望外の喜びである。 参考文献 (1) Nature, 411: 882-884, 2001 (2) 小児内科, 32: 1354-1359, 2000 (3) 「自閉症の理解」学苑社, 1999 (4) Paediatric Anaesthesia, 11: 401-408, 2001 - 70 - 教育セミナー3/ Educational Seminar 3 小児の麻酔回路 長野県立こども病院 麻酔科 大畑 淳 Pediatric anesthetic circle Jun Ohata The Department of Anesthesia. Nagano Children's Hospital Tピース法 小児麻酔の麻酔回路は、機械的死腔量が少なく、軽量で、呼吸抵抗が小さいことのが理想的である。Ayreによって考案 され、Jackson Reesによって改良されたTピース法は、小児麻酔の回路として、最も好ましいといえる。閉鎖循環式の麻 酔回路(同軸回路、F 回路)を変形して、T ピース法と同様の形式で用いる方法も使用されている。Bein 回路もTピース 法の一変形である。 Tピース法は、新鮮麻酔ガスを連続流として呼気ガスを洗い出すことによって、再呼吸を防ぐ原理になっている。この 原理で呼吸回路として機能するために重要な要素は、新鮮ガス連続流と、患者自身の換気量および呼気枝としての蛇管部 分の容積とバッグ容量である。新鮮麻酔ガス流量が患者の分時換気量の2.5倍あれば、患者の自発呼吸、補助呼吸、調節呼 吸などの呼吸のパターンにかかわりなく、再呼吸を防ぐことができる。蛇管部分の容積は一回換気量の75%が必要とされ ている。また、バッグは新生児 500ml、体重 10kg 未満 1L、20kg 未満 2L、それ以上 3L を用意する。新鮮ガス流量が少な いなどの間違えた使用は呼気ガスを再呼吸する可能性があり注意が必要である。調節呼吸では用手的換気法も機械的人工 呼吸法も可能であり、機械的人工呼吸ではTピースのバッグが付く蛇管部分に呼吸器を接続し用手でバッグを押す代わり に人工呼吸器を用いる。自発呼吸での使用と比べて最低必要な麻酔ガス流量は分時換気量分となり少なくなる。気管内 チューブのリークの多い時にはより多くの流量が必要となる。 呼吸回路の加温加湿 回路に流れる麻酔ガスの加温加湿は、1)乾燥ガス吸入による気道損傷の予防、2)気道よりの熱喪失、体温低下の予 防、3)気道よりの水分喪失の予防などの理由により重要である。通常、気管内挿管をしての病棟や集中治療室での人工 呼吸管理には、十分な加温加湿が必要とされている。実際、人工呼吸の吸気ガスは加温し、口元での体温に近い温度で相 対湿度を100%にする。このことは、気管内挿管人工呼吸管理しての全身麻酔にも当てはまることであり、特に小児では大 切なことである。乾燥ガスは気管内チューブ内分泌物の固形化により閉塞をきたす。特に肺出血や気管出血を起こしたと きは顕著であり、小児に使用する気管内チューブは内径が当然細くより注意が必要となる。また気管粘膜や繊毛上皮の運 動を抑制し、分泌物の貯留をきたす。分泌物は乾燥ガスにより固まりやすくなる。以上のことは術後の肺合併症を起こす 原因に十分なりうる。未熟児や新生児の麻酔においては、体温に加温された相対湿度で100%にした麻酔ガスを吸入ことに より、熱喪失を大きく軽減することができる。同軸回路をTピース法の変法として利用し回路内熱線入りの加温加湿器を 組み込むことは、小児麻酔では有用であり、口元の温度を35∼36℃に保つことができる。相対湿度が重要であるため、水 温を高めに設定しガス温が下がらない温度設定が大切である。現在、我々の施設では疎水性中空糸膜を熱線に覆い、最終 的に口元の温度センサーで管理された温度で、吸気ガスが相対湿度ほぼ100%のガスが供給でき、かつ回路内結露を最小限 にとどめることができる加温加湿器を利用した同軸回路をTピース法式で使用している。 半閉鎖式回路 小児用の半閉鎖式回路(インファントサークル)まだ存在している。多量の麻酔ガス流量を必要としないし少しは加湿 が可能であるが、呼吸抵抗が大きいことや弁の故障の可能性を考えると、十分な加湿を行ったTピース法式が新生児や乳 幼児ではより有用である。成人用の閉鎖式回路も年長児では使用可能である。人工鼻(heat and moisture exchanger: HEM)の使用は少しでも加湿効果があがることを考えると、付けないより付けた方が望ましい。閉鎖式回路を用い低流量 麻酔がブームとなっているが、小児の気管内挿管ではリークのある気管内チューブを選択することにより麻酔管理が非常 に困難となるため推奨できない。 - 71 - 教育セミナー4/ Educational Seminar 4 のびる生存限界と低出生体重児の麻酔 大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科 木内恵子 Improved viability and anesthesia for low birth weight infants Keiko Kinouchi Osaka Medical Center for Maternal & Child Health サーファクタントと出生前ステロイドの普及により呼吸窮迫症候群(RDS)の予後が劇的に改善し、超低出生体重児(出 生体重< 1000g)の生存率が 1988 年頃を境にして飛躍的に向上した。RDSの予後の改善とともに気胸、間質性肺気腫など の重症合併症の重症度も低下した1,2)。 1976 年の WHO による周産期統計表の定義のなかで出生体重 500g 未満(在胎週数 22 週未満に相当する)の出生児は生 存不能であるので、周産期統計の観点からは出生とは見なさないと記載されている3)。1992年のアメリカ合衆国の3059人 の新生児科医へのアンケート調査では90%以上の人が在胎23週未満の出生児については積極的な治療を行わないのが妥当 と考えるという調査結果であり、この頃、生存限界は在胎週数 23 週から 24 週であると考えられていたと思われる4)。 5年ごとに行われる日本小児科学会新生児委員会の新生児医療調査によると在胎 22 週未満での出生では 1990 年、1995 年、2000 年のいずれにも生存者はなく、在胎 22 ∼ 24 週の区分での新生児死亡率は、1990 年 65.8%、1995 年 68.8%、2000 年65.1%と改善が認められない。2000年の出生体重別では、乳児期までの死亡率は、400g以下では85.7%、401-500gでは 68.3%、501-600g では 42.2%、601-700g では 30.9%、701-800g では 17.6% であった5)。 一方、2000年時点での全国の総合周産期母子医療センターレベルの施設数41、準じる施設66、地域周産期母子医療セン ターレベルの施設106、準じる施設 102であり、NICU病床数は 1995年の871床から2000年には 1482床に増加した。また、 社会保険上の新生児特定集中治療室の認可を受けた施設の数が1995年の122施設から209施設と増加したということで、低 出生体重児を扱う施設と病床数は増加している5)。 当センターは 1981 年にわが国初の周産期専門医療施設として発足して以来、大阪府を中心とする新生児診療相互援助 システム(NMCS)および産婦人科診療相互援助システム(OGCS)の基幹病院として年間 1500 前後の分娩管理と年間 50 ∼70の超低出生体重児の治療・育成を行っている。新生児科入院統計では、在胎期間22∼23週の死亡率は、1981∼1987 年 83.3%(10/12)、1988 ∼ 1995 年 47.2%(25/53)、1996 ∼ 2000 年 48.8%(20/41)であり、1988 年以降は改善が見られ ていない。在胎 24 ∼ 25 週の死亡率は、1981 ∼ 1987 年 44.0%(33/75)、1988 ∼ 1995 年 16.7%(24/144)、1996 ∼ 2000 年 17.5%(17/97)であり、在胎 24 週以降では生存の可能性がかなり高いといえる。出生体重別では 500g 未満では 1990 年 まで生存者はなく、死亡率は 1988 ∼ 95 年 60.0%(15/25) 、1996 ∼ 2000 年 55.9%(19/34)である。出生体重 500 ∼ 749g では 1981 ∼ 1987 年 39.8%(33/83) 、1988 ∼ 95 年 23.6%(42/178)、1996 ∼ 2000 年 13.2%(15/114)と改善が認められ る6,7)。 当センターで在胎期間 32 週未満の早産児に生後6カ月以内に行った麻酔管理症例数(1991 年∼ 2001 年)を図 1 に示し た。在胎 32 週未満の早産児に対する麻酔件数は 1997 年以降むしろ増加しているが、これはおもに在胎 24 ∼ 25 週児と 26 ∼28週児に対する麻酔件数の増加によるものである。主な手術術式には未熟児網膜症に対する光凝固・冷凍凝固、動脈管 開存に対する動脈管結紮術やクリッピング、鼠径ヘルニア根治術、消化管穿孔や壊死性腸炎に対する腹腔ドレナージや腸 瘻造設術、脳室内出血などによる水頭症に対するオンマヤ留置術・脳室腹腔ドレナージなどがある。超低出生体重児や超 早産児(在胎期間 22-28 週未満)の手術の特徴として、同一患児に繰り返し手術を行うことが多いことが挙げられる。ま たほぼ全症例が気管挿管で管理された。手術術式別の年次推移では図2に示したように動脈管結紮あるいはクリッピング 手術や、鼠径ヘルニアの手術件数は増加していないが、未熟児網膜症手術や消化管穿孔または壊死性腸炎に対する手術は 増加している。サーファクタント療法の普及により、RDS、気胸、間質性肺気腫の頻度は低下したが、極低出生体重児 (出 生体重< 1500g)の未熟児網膜症、壊死性腸炎、敗血症などの頻度は低下していないという報告があるように1,2)、新生 - 73 - 児医療の全般的な進歩に関わらず、超出生体重児あるいは超早産児の手術対象となる疾患は減少していないと言える。手 術を必要とするこれら小さな重症患児の安全な麻酔のニーズはこれからもますます増加しそうである。 70 60 60 50 手術件数 麻酔件数 50 40 30 40 30 20 20 10 10 0 0 その他 消化管穿孔 or NEC ヘルニア PDA ROP 70 29∼31週 26∼28週 24∼25週 21∼23週 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 図1.在胎週数別麻酔件数 (在胎 32 週未満早産児の生後6カ月以内の手術) (大阪府立母子保健総合医療センター 1991 ∼ 2001 年) 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 図2.在胎週数 32 週未満生後6カ月以内手術の内訳 (大阪府立母子保健総合医療センター 1991 ∼ 2001 年) 参考文献 1) Horbar JD, Wright EC, Onstad L, et al. Decreasing mortality associated with the introduction of surfactant therapy: An observational study of neonates weighing 601 to 1300 grams at birth. Pediatrics 1993; 92: 191-6. 2) Schwartz RM, Luby AM, Scanlon JW, Kellogg RJ. Effect of surfactant on morbidity, mortality, and resource use in newborn infants weighing 500 to 1500g. N Engl J Med 1994; 330: 1476-80. 3) WHO. Recommended definitions, terminology and format for statistical tables related to the perinatal period and use of a new certificate for cause of perinatal deaths. Acta Obstet Gynaecol Scand 1977; 56: 247-253 4) Sanders MR, Donohue PK, Oberdorf MA et al. Perceptions of the limit of viability: Neonatologists’ attitudes toward extremely preterm infants. J Perinatol 1995; 15: 494-502. 5) 日本小児科学会新生児委員会新生児医療調査小委員会わが国の主要医療施設におけるハイリスク新生児医療の現状 (2001 年 1 月)と新生児死亡率(2000 年 1 ∼ 12 月).日本小児科学会雑誌 2002; 106: 603-613 6) 大阪府立母子保健総合医療センター年報 第 15 号,1996 年,p. 27-32. 7) 大阪府立母子保健総合医療センター年報 第 19 号,2000 年,p. 32-38. - 74 - 教育セミナー5/ Educational Seminar 5 先天性心疾患の手術適応と至適手術時期 静岡県立こども病院 循環器科 斎藤彰博 Operative indications of congenital heart disease and optimum age for surgery Akihiro Saito Shizuoka Children’s Hospital, Division of Cardiology Ⅰ.はじめに 先天性心疾患の中にはチアノーゼを認めるものから認めないものまで数多くの疾患が含まれ、各疾患はいくつかの病型 に分かれ、症状も全くの無症状から緊急の処置を要する心不全状態まで多岐に渡る。このため各疾患の手術適応や手術時 期も、疾患名や病型、重症度によりことなってくる。 心臓の手術には生命の危険も伴い、合併症や後遺症の可能性もあるので、一般に手術の危険性や合併症と比較して、よ り大きな負担がある場合に手術適応となる。この場合の負担には、低酸素血症や心不全、呼吸不全、肺高血圧などが含ま れ、内科的治療に限界がある場合に手術介入を考慮することになる。現在の状態は悪くないが、ある程度以上の容量負荷 や、圧負荷、合併症があるために、将来的に確実に心負荷が増大することが明かな場合には、負荷が症状として表れる前 に手術を勧めることもある。 ただし、手術の危険性や合併症の確率は施設によりことなるため、手術適応や手術時期も施設により多少異なっている のが現状である。 Ⅱ.疾患毎の手術適応 A) 非チアノーゼ性心疾患 1)心室中隔欠損(VSD): 先天性心疾患のなかでもっとも頻度の多い疾患で、その中でも約80%を占める膜様部欠損や、筋性部欠損では自然閉 鎖や縮小の可能性もあるので、内科的管理を第一に考える。その中でも、肺高血圧を合併している症例や、心不全や呼吸 不全の強い症例は乳児期に手術を行う必要がある。特にDown症候群に合併したVSDでは、早期に不可逆性の肺血管病変 を合併する危険があるので、3∼6ヶ月以内に手術を行う。 乳児期以降まで待機できた患者でも、肺血流量が多い場合には手術適応となる。一般に、肺体血流比が2.0以上では手 術を勧めることになる。肺体血流比が 1.5 以下では手術の適応は無いが、肺体血流比が 1.5 と 2.0 の間では、呼吸器感染が 頻回であったり、発育が遅れたり、他の社会的要因で手術適応となる場合がある。 両半月弁下欠損(Ⅰ型)や膜様部欠損(Ⅱ型)では大動脈弁直下を高速の短絡血が流れるため大動脈弁逸脱などの弁の 変形を来したり大動脈弁逆流を引き起こすことがある。大動脈弁の変形や逆流は進行すれば大動脈弁置換を必要とするこ ともあるため、大動脈弁逸脱が明瞭であったり、大動脈弁逆流を合併してくるようであれば、短絡は少ないとしても手術 の適応となる。 短絡のために拡大した肺動脈や左房などが気管を圧迫して気管狭窄を引き起こし、無気肺や肺気腫を合併してくること がある。気管狭窄を認め、その原因が心臓や肺動脈にある場合には手術適応である。 一方、高度の肺高血圧を合併した場合には手術不適応となることがある。一般には肺血管抵抗が12単位以上では手術適 応はないといわれているが、心臓カテーテル検査時の呼吸状態や、鎮静の状態などを加味して判断すべきで、判断に迷っ た場合には肺生検で最終的に判断することもある。肺血管抵抗が高い場合でも手術前後に酸素療法を行ったり、血管拡張 剤を使用して乗り切れる場合もある。 2)心房中隔欠損(ASD): 新生児期から乳児期にかけて認められる卵円孔の不完全な閉鎖による左右短絡を除き,心房中隔欠損は自然閉鎖が期待 - 75 - できない。施設により多少異なるが,心臓カテーテル検査での肺体血流比が1.5から2.0以上は手術適応と考えられている が,当科では2.0以上はそれだけで手術適応と,1.5から2.0の間では,頻回の感染症罹患や発育不全、その他の社会的要因 がある場合に手術適応と考えている。 最近では心房中隔欠損の術前に心臓カテーテル検査を行わない施設も増加しているが,心エコー検査での欠損孔の径が 10 mmを超える場合には有意の左右短絡があると考えられており,手術適応である。肺高血圧や心不全、呼吸不全などを 合併した症例は急いで手術を行う必要がある。 手術時期は,成人心房中隔欠損では肺高血圧を合併したり,弁の逆流,不整脈,心拡大などを合併してくる可能性が高 いので,小児の内に行うのが原則である。一般にはその施設で無輸血体外循環が可能と考えられる体重になったら手術を 行っている。 近い将来に非手術的にカテーテルを用いた Device 閉鎖が可能となるので,家族には十分な説明が必要である。 3)動脈管開存(PDA): 一般に動脈管は生後4ヶ月までは自然閉鎖の可能性があり、それ以降に短絡を認めるものは、小短絡でも感染性心内膜 炎の危険性があり,手術の危険性がかなり低いので,全例で手術適応となる。それ以前でも、未熟児動脈管開存の様に,循 環不全や呼吸不全が強く内科的管理が困難な場合にはその時点で手術適応となる。 他の左右短絡疾患と同様に,肺高血圧や気道圧迫による気道狭窄を合併している場合には早期に手術を行う。 カテーテルを用いた coil 塞栓術が広く行われている。確実性では手術の方が勝っているが、費用や入院日数、手術創な どの点ではカテーテル治療が優位である。 B) チアノーゼ性心疾患 チアノーゼ性心疾患は低酸素血症を有し、チアノーゼ発作や血栓症などの危険もあるので、全例で手術適応がある。し かし、左心低形成症候群や無脾症候群、共通肺静脈腔閉鎖などの重篤な疾患に対しては、手術適応が無いと判断する施設 があるのも事実である。前述したように、手術適応は施設の経験や体制で異なってくる。また、最終手術が二心室治療が 可能な疾患と一心室治療(Fontan 型手術)しか可能でない疾患とがあり、手術時期や術式は自ずからことなる。 1) 二心室治療が可能な疾患 完全大血管転位:生後2週間以内に根治手術(Jatene 手術) ファロー四徴:乳児期に根治手術 総肺静脈還流異常:診断後早期に根治手術 総動脈幹症:診断後早期に根治手術 2) 一心室治療群 無脾症候群:新生児期に総肺静脈還流異常解除、共通房室弁修復、ブラロック手術 乳児期に Glenn 手術または Fontan 手術 左心低形成症候群:診断後早期に Norwood 手術、乳児期に手術または Fontan 手術 単心室、三尖弁閉鎖:新生児期に肺動脈絞扼かブラロック手術 乳児期に Glenn 手術または Fontan 手術 C) 緊急手術、準緊急手術を要する疾患 代謝性アチドーシスや重篤な呼吸不全を合併してきた疾患は、重症度の程度により緊急または、内科的治療後に早期に 手術を行うことになる。 大動脈縮窄/大動脈離断:診断後早期に一期的根治手術を行う 左心低形成症候群:診断後早期に Norwood 手術 総肺静脈還流異常:診断後早期に根治手術 - 76 - 教育セミナー6/ Educational Seminar 6 知っておきたい小児外科手術時に起こり得る合併症 名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科 安藤久實 Complications During Pediatric Surgery Hisami Ando Department of Pediatric Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine いつもと違い時間がかかって難渋していることは感じても、何がどうなっているのか声に出して聞くこともはばかられ、 遠慮しているうちに何となく手術が終わってしまった。というような経験をされた先生方も多いと思われる。外科医がど のような手術を行っており、手術に際し今どのような点に直面して困っているかについては、麻酔科の先生には案外知ら れていないのが現状であろう。 例えば、小児外科手術の中で最もその数が多い外鼡径ヘルニアにおいて、何故こんなに時間がかかるのだろう、何故こ んな簡単な手術なのにトラブルが起きるのだろうなどの麻酔科医の素朴な疑問について、本講演では小児外科医の立場か ら手術の実際とその問題点について解説する。 小児外鼡径ヘルニアに対する手術方法は、ヘルニア嚢を周囲組織から剥離して腹膜の直上に存在する腹膜前脂肪組織の 位置においてヘルニアの結紮(高位結紮)を行う simple herniorraphy(Lucas-Championnire 法あるいは Potts 法など)と 呼ばれる術式が一般的に行われている。近年、ミルクの飲ませ過ぎによると思われる肥満児が多く、点滴確保が困難なよ うに、皮下脂肪が多くて小さい皮膚切開では手術もやりにくい。患児の年齢が3ヶ月以内か以上かによっても大きく異な る。新生児や未熟児ではヘルニア嚢が薄く破れ易い。一旦ヘルニア嚢が破れると腹膜まで裂けてしまい、その修復のため に手術時間は大幅に延長する。 ヘルニア手術中の副損傷も少なくない。代表的なものを挙げると、 1. 神経損傷:鼡径管を開くと外腹斜筋腱膜の直下に腸骨鼡径神経が存在するが、これを損傷したり結紮したりすると術 後に疼痛を来し、いつまでも泣き止まない原因ともなる。 2. 血管損傷:精巣動静脈を損傷すると精巣の萎縮を来す。わずかな出血でもしっかりと止血しておかないと術後に陰嚢 が腫大する。また、鼡径靱帯のshelfing edge直下には大腿動静脈が走行しているため、ヘルニア嚢の探索時にこれを 突き破ると大腿動静脈からの出血を来す。また、大腿動脈をヘルニア嚢と間違って切離してしまう危険性もある。鼡 径管の前壁補強をする際に縫合針が深く入り過ぎると大腿動静脈壁を突き破ることがある。術中に気がつけば圧迫止 血により事無きを得るが、気がつかないと後腹膜への出血のために発見が遅れて死亡した例が報告されている。 3. 精管損傷:高位結紮時にヘルニア嚢にへばりついた精管が巻き込まれたり、外腹斜筋腱膜縫合時に巻き込まれたりし て閉塞を来すことがある。男子不妊外来に通う成人男子の内で、小児期に鼡径ヘルニア根治術の既往のある人の4人 に1人の割合で精管閉塞が見られるという。 4. 膀胱損傷:内側に寄り過ぎると鼡径管後壁を突き破り容易に膀胱に達するため、ヘルニア嚢を開いたつもりが、中か ら尿が出てびっくりすることがある。 5. 腸管損傷:術前に脱出臓器を還納したつもりでも、ヘルニア嚢内に再脱出してきてヘルニア嚢を開いた時に腸管を損 傷してしまうことがある ... などなど。 このように、外科医は簡単と思われている外鼡径ヘルニアの手術においても、様々な術中のトラブルと戦いながら手術 を行っている。取り分け小手術においては経験の浅い外科医が執刀する機会が多いために合併症の生じる危険性も少なく ない。合併症に遭遇しないように外科医は冷や汗を流しながら手術を施行していることを報告する中で、麻酔科医の手術 に対する御理解がより一層深まれば幸甚である。 - 77 - 教育セミナー7/ Educational Seminar 7 最近の小児の静脈麻酔 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学 木村智政 Current issues of intravenous anesthetics in pediatric patients Tomomasa Kimura Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine 小児手術患児の周術期管理の質を向上させるためには、麻酔中の安全性の確保が不可欠であり、麻酔薬の選択がキーポ イントとなっている。以前は小児の麻酔法として、亜酸化窒素、酸素、筋弛緩薬の組み合わせが主流だったことがあるが、 この方法は患児に大きなストレスを与えるものでしかなかった。このため近年小児麻酔領域にセボフルラン、プロポフォー ルといった新しい麻酔薬が導入され、術後鎮痛にも配慮した小児麻酔管理法へと大きく変遷してきている。 患児が起きている間に痛みを伴う点滴をしないほうがより侵襲が少ないとされ、その容易さと相まって小児患児ではもっ ぱら吸入麻酔薬によるマスク導入が行われることが多かった。しかしその方が麻酔導入中おとなしいようであっても術後 かえって悪い記憶として残っている頻度の高いことが指摘されてきている。実際に頻回麻酔をうけている患児では、マス ク麻酔による導入をきらう患児がきわめて多いことは日常の臨床の場ではよく経験される。このため麻酔導入における静 脈麻酔への関心が高まっているといえよう。 静脈麻酔薬は吸入麻酔薬と並んで小児麻酔の主要な麻酔薬の一種である。フェンタニル麻酔における薬物動態の知識が 深まり、さらに麻酔導入、覚醒の早いプロポフォールを用いた静脈麻酔法が成人への麻酔で繁用されるようになり、小児 への応用が進んできている。同時にコンピュータの発達に伴って静脈麻酔の深度予測が比較的手軽に可能となってきてお り、安定した麻酔深度を維持することが困難であった静脈麻酔法の欠点が解決されつつある。 一般的に静脈麻酔薬間には相乗作用がみられることが多いが、時には拮抗作用がみられることもある。静脈麻酔薬が臨 床濃度において効果を示す系は比較的限られており、麻酔薬の種類によっても異なる。作用特異性が高いことはある意味 では望ましい性質でもあるが、それは一剤の静脈麻酔薬では十分な麻酔状態が得られ難い事を意味する。従って、安定し た麻酔状態を得るためには複数の静脈麻酔薬を使用してバランス麻酔をおこなう必要がある。プロポフォールの鎮痛作用 は弱いが、大量に使用すれば単独でも侵害刺激に対する体動反応を抑制できる。プロポフォールとフェンタニールなどの 鎮痛薬には、吸入麻酔薬間ではみられない有意な相乗効果が認められる。したがってフェンタニールとプロポフォールの 適切な組み合わせで、より少ない量で麻酔維持が可能となる。静脈麻酔薬の薬物動態は吸入麻酔薬に比較して個人間の変 異が大きいが、術中管理の手助けとなるのがプロポフォールで利用されているターゲットコントロールインフュージョン (TCI) である。これを使用することにより手術内容の変化に対して、吸入麻酔よりも迅速に対応ができる術中管理となる。 フェンタニルに比較して麻酔導入覚醒がより迅速なレミフェンタニルもTCIへの応用が期待されているが、すでに国内で は第3相臨床治験が終了しており、その発売が待たれている。レミフェンタニルは欧米では小児でも使用されており、そ の薬物動態の特徴に関してフェンタニルと比較して紹介したい。 小児では発達期における肝容積と総体重との発達速度の乖離があることが示唆されており、薬物投与量の体重のみによ る補正では至適投与量が見かけ上異なる現象が示唆されている。また小児の薬物に対する感受性は成人と必ずしも同一で ないことが推測され、これら両要因を考慮に入れた小児薬用量を作成すべきことが明らかとなってきており、静脈麻酔薬 の至適投与量を再考する余地が残されている。 本講演では以上の観点から、①静脈麻酔法の歴史的変遷、②静脈麻酔薬の小児における薬物動態の特徴、③小児におけ る Target Control Infusion、の3点に関して、言及したい。 - 79 - シンポジウム シ ン ポ ジ ウ ム S–01 小児周術期ペインコントロール S–02 小児周術期ペインコントロール 司会の言葉 司会の言葉 秦 恒彦(福岡市立こども病院麻酔科) 盛 直久(岩手医科大学医学部麻酔学講座) Symposium on the perioperative pain control in infants and children: Preface Tsunehiko Shin, MD (Department of Anesthesiology Fukuoka Children’s Hospital and Medical Center for Infectious Disease) Symposium on the perioperative pain control in infants and children: Preface Naohisa Mori, MD (Department of Anesthesiology, Iwate Medical University) 今日は患者管理の質が重要視される時代である。 周術期の痛みは、患者にとって精神的にも非常に苦痛 小児麻酔領域でも、かつては酸素 - 亜酸化窒素 - 筋弛緩薬 であるし、また生理学的にも様々なストレス反応を引き で麻酔を維持するジャクソンリース法が全盛の時期があ 起こし、術後の快復を遅らせる一因ともなると言われて り、小児では疼痛に対する感受性が低いからと教えられ います。この反応は成人のみならず、小児においても同 てきた。 様に起こることは周知の事実となっています。米国スタ しかし、その後小児での区域麻酔法が普及して術中術 ンフォード大学のHammer先生は、このシンポジウムに 後の疼痛対策が練られ、さらには鎮痛薬(特にオピオイ 先立って行われる招待講演『The Use of Regional Anes- ド)、静脈麻酔薬なども小児の麻酔法の中に取り込まれ、 thesia in Combination with General Anesthesia for Car- 全身麻酔との併用により疼痛対策をも加味した麻酔法と diac Surgery in Children』の中で、小児の開心術におい して普及しつつある。 ても、気管挿管全身麻酔に脊椎麻酔や硬膜外麻酔を積極 今日では、pre-emptive analgesia の概念の元に、手術 的に併用することによって、患児の術中のストレス反応 侵襲に対するストレス反応を防御するため、局所麻酔薬 を予防することができ、手術室抜管も可能となると述べ を用いた区域麻酔法の併用、静脈麻酔薬やオピオイドに られています。そこで本日のシンポジウムでは、この周 よる全身麻酔、オピオイドの区域麻酔への応用などが試 術期の痛みをどうすれば少なくでき、理想的には無くす みられており、好成績を収めている。さらには、このよ ことができるかについて、小児のペインコントロールに うな積極的な周術期ペインコントロールは単に手術侵襲 積極的に取り込んでおられる諸施設から4施設を指名し、 による痛みの制御のみならず、術後肺機能の改善、心血 それぞれの方法をご提示頂きます。まず、静岡県立こど 管系の安定など、多方面にわたって効果があることが判 も病院の堀本先生からは『先取り鎮痛としての全身麻酔 明してきた。これには、数多くの麻酔薬の使用が可能に 下脊椎麻酔の応用』という題で、脊麻は手技も容易で効 なるとともに、術中麻酔管理技術の発達はもちろんのこ 果発現までの時間が短くせっかちな外科医にも対応可能 と、術後患者管理体制の充実も大きく関係していると思 でかつ合併症も少ないことを、ついで福岡市立こども病 われる。 院の住吉先生からは『硬膜外麻酔併用』という題で、全 一方、我々がもちいる種々の手段には、期待する効果 身麻酔に併用した硬膜外麻酔が術後の鎮痛に有用である のほかに招かざる副作用が存在し、その有効性は効果と ことを、国立成育医療センターの近藤先生からは『PCA 副作用のかねあいで決定される。小児領域で数多く使用 を主とした術後疼痛管理体制』という題で、麻酔科医師 されるようになった周術期鎮痛法にも種々の副作用が考 が4時間おきに回診を行うなど積極的な病棟でのPCA管 えられ、その対策が練られている。しかし、その副作用 理法を、最後に弘前大学医学部の谷津先生からは『小児 の程度や頻度は成人とは異なることも報告されている。 におけるケタミン併用麻酔後の術後疼痛管理』という題 これら小児特有の反応を加味して、周術期ペインコン で、ケタミンを主体とした静脈麻酔が、極端に覚醒が遷 トロールに対する理解を深めることが出来ればと、考え 延することはなく吸入麻酔薬に見られる興奮が少なく穏 ている。 やかな覚醒が得られることをご発表頂きます。演者間の 討論後、会場からの質問へお答え頂きます。またコメン テーターであるHammer先生からは、有益なコメントが 頂けるものと考えています。このシンポジウムが出席者 の皆様の明日からの臨床に、大いに役立つものと確信し ております。 - 83 - S–1 小児周術期ペインコントロール S–2 小児周術期ペインコントロール 先取り鎮痛としての全身麻酔下脊椎麻酔の応用 硬膜外麻酔併用 堀本 洋(静岡県立こども病院 麻酔科) A spinal block combined with general anesthesia as a means of preemptive analgesia Yoh Horimoto, MD (Department of Anesthesia, Shizuoka Children’s Hospital) 住吉理絵子、水野圭一郎、自見宣郎、森本文子、秦 恒彦 (福岡市立こども病院・感染症センター) Management of perioperative pain in children using epidural analgesia Rieko Sumiyoshi, MD (Fukuoka Children’s Hospital and Medical Center for Infectious Disease) 私たちは2000年夏頃より全身麻酔に脊麻を併用するこ とにより、術中、術後の鎮痛レベルの質の向上をめざし ている。決して脊麻のみによって術後全ての痛みをコン トールするのではなく、まず痛みによる有害刺激が中枢 神経系に侵入し、sensitize されるのを脊麻によって完全 に防ぎ、脊麻の効果が保たれている間に、それに続く鎮 痛手段を講じるのである。したがって各種鎮痛手段を併 用することが常である。その手段として、硬膜外ブロッ ク、末梢神経ブロック、麻薬、NSAIDs、ケタミンなどが 挙げられる。 仙骨ブロックなどの硬膜外ブロックは手技にも、効果 発現までの時間もかかり、手術開始時に血圧、心拍数が 上昇する症例を多く経験しており、中枢神経系の sensitizationを考えると完璧な先取り鎮痛の必要性を強く感 じていた。その点脊麻は手技も容易で、なによりも効果 発現までの時間が短いことが大きな長所で、せっかちな 外科医にも対応可能である。 80年代の低出生体重児への意識下脊麻の報告から、27 週、770g 出生児が、生後23週に手術時体重1700gの時に も安全に施行されており、確実にL4-5, L3-4の椎間から穿 刺すれば脊麻針による脊髄損傷は問題とはならない。 脊麻後頭痛や脊麻施行後の血圧低下は成人に比べてそ の発生頻度や低下程度は少ないと報告されている。 効果時間は脊椎管内に存在するCSFの体重当たりの量 の多さから、成人に比べてかなり短く、運動神経ブロッ ク時間は60分程度であることから、例えヘルニア手術の ような短時間手術症例に使用しても術後に「足が動かな い」という訴えは聞かれない。 要するに成人と小児の脊麻はかなりその作用、副作用 などに相違点があることから、成人で経験される悪いイ メージはそのまま小児に当てはめることはできない。全 手術症例に施行できる訳ではないが、簡便に手術開始前 に完璧な鎮痛を可能にする少ない方法のひとつとして積 極的に試みることを推奨する。 硬膜外麻酔は、手術中は侵害刺激を遮断し、侵襲に伴 う内分泌反応を抑制し、痛みを軽減する。手術中の出血 量が少ない、循環動態が安定する、吸入麻酔薬や筋弛緩 薬の使用量を減ずることができるなどのさまざまな利点 がある。 福岡市立こども病院では周術期のペインコントロールに、 全身麻酔と併用して硬膜外麻酔を積極的に行っている。 1回投与法:短時間で終了する体表面の手術では、局 麻薬を術前に一回投与している。局麻薬は1%メピバカイ ン、0.25%ブピバカインを単独または混合して使用してい たが、最近では0.2%ロピバカインの使用頻度が増えてい る。仙骨麻酔は、23Gまたは25Gの注射針で穿刺を行う。 胸・腰部硬膜外麻酔では 20G の Tuohy 針を使用する。手 術中から術後数時間の除痛が得られ、他の鎮痛薬の追加 が必要となることはほとんどない。 持続注入法:長時間の手術や、術後疼痛が強いと考え られる症例(漏斗胸や縦隔腫瘍などの開胸手術や、胆道 拡張症、腎臓摘出、腎盂形成、膀胱尿管逆流防止などの 開腹手術、股関節や脚延長などの整形外科手術など)を 対象としている。18G、60 mm の Tuohy 針と 0.8 mm の カテーテルを使用する。術後はシリンジポンプで0.2%ロ ピバカイン0.2 ml/kg/hr(最高5 ml/hr)の持続投与を行 う。疼痛域が狭い手術では十分な効果が得られる。膀胱 尿管逆流防止術のように疼痛域が広い場合は、ロピバカ イン単独では十分な鎮痛を得るのは難しいため、フェン タニールを 1 ∼ 2 mg/ml の濃度で加えている。鎮痛効果 は良好であるが、嘔吐の頻度が高く、ドロレプタンの併 用など対策を検討中である。 小児の胸・腰部硬膜外麻酔の問題点 技術的な困難:小児用の穿刺針を使用することにより、 低年齢層でも安全に行えるが、ある程度の熟練、慎重さ は必須。乳児または 10 kg 以下の小児ではあえて胸・腰 部での穿刺は行わずに仙骨部から長めにカテーテルを挿 入している。無理はせず他の麻酔法を選択し、術後鎮痛 はオピスタンの持続皮下注、フェンタニールの持続静注 などで行う場合も多い。 合併症:硬膜穿刺の頻度は0.9%程度。局麻薬中毒疑い (痙攣)は、術後0.2%ロピバカインを使用するようになっ て以来、生じていない。開院以来、重篤な合併症は硬膜 外膿瘍の 1 例のみであり、後遺症を残した症例はない。 - 84 - S–3 小児周術期ペインコントロール S–4 小児周術期ペインコントロール PCA を主とした術後疼痛管理体制 小児におけるケタミン併用麻酔後の術後疼痛管理 近藤陽一、田中 基、阿部世紀、林 玲子、田中 基、 田村高子、朝原章二、宮坂勝之(国立成育医療センター 手術集中治療部) 谷津祐市(弘前大学医学部麻酔科学教室) Postoperative Pain Management with PCA Yoichi Kondo, MD (National Center for Child Health and Development, Department of Anesthesia and Intensive Care) 術後疼痛対策の第一選択としてPCAを採用すると、手 術件数が増えるにつれ必要な PCA ポンプの台数も増加 し、麻薬希釈液を準備し補充する麻酔科医師の仕事量も 増大する。国立成育医療センターでは、周産期部門が新 しく加わり、無痛分娩も含めると年間4000例の麻酔件数 を目標にしていて、それ相応の術後疼痛管理体制が必要 になる。以下に我々の施設での管理方針の概要を紹介す る。 小児:IVPCA モルヒネ希釈液 50 ml 持続 1 ml/hr ボー ラス 1 ml 成人:PCEA ロピバカインフェンタネスト混合液 400 ml 持続 6 ml/hr ボーラス 3 ml IVPCA 用としてアトム PCA500 が 14 台、PCEA 用と して輸液バッグに接続できる CADD-LEGACY PCA MODEL 6300が6台稼動しているが、台数が不足するこ とが予想されている。 PCAは術後回復室で開始し、PCA終了時期は持続投与 を中止してもPCAボタンを押さなくなるまでとして特に 期限を定めていないので、数日後に麻薬混合液の追加が 必要になることがある。PCAを使用している間は、毎日 4時間おきに麻酔科医師が回診し、副作用の有無、ボー ラス回数をチェックし PCA の設定を適宜変更している。 麻薬希釈液の作成はベッドサイドで麻酔科医師が行っ ているが、注射オーダーに連動した薬剤部での中央混合 を可能にすべく薬剤部と協議を重ねている。 - 85 - Postoperative analgesia by ketamine anesthesia in pediatric patients Yuichi Yatsu, MD (Department of Anesthesiology, University of Hirosaki School of Medicine) 弘前大学麻酔科では、1989年からケタミンを併用した 全静脈麻酔の臨床応用を開始し、現在までに 28,000 例以 上(関連病院での症例を含む)を管理してきた。現在は、 成人のほぼ全例、小児の約50%に全静脈麻酔を施行して いる。小児における全静脈麻酔と吸入麻酔(セボフルラ ン+鎮痛薬)の使い分けは必ずしも明確ではないが、お おむね重症例や侵襲の大きい手術には全静脈麻酔を選択 している。麻酔薬の組み合わせとしては、プロポフォー ル、フェンタニール、ケタミン (PFK) 、プロポフォール、 ペンタゾシン、ケタミン(PPK)、ドロペリドール、フェ ンタニール、ケタミン (DFK)、フェンタニール、ケタミ ン(FK)などがあるが、プロポフォールの使用は原則と して3歳以上としているため、2歳以下の症例はFKを選 択することが多い。 当院では、全身麻酔を施行した患者は必ず回復室に入 室させ、十分全身状態が安定してから病棟に帰室させて いる。回復室では麻酔科医と専属の看護師が患者管理に 当たっており、手術室の回転効率にとらわれることなく 納得のゆくまで疼痛管理を含めた手術直後の全身管理を 行えるようになっている。回復室で鎮痛が必要になった 場合は、ペンタゾシンなどの静脈内投与を行うが、小児 では親を回復室に呼び面会させることで効果的に鎮静・ 鎮痛を図っている。 全静脈麻酔と吸入麻酔(セボフルラン+鎮痛薬)とで は、施行する対象がやや異なっているため、手術後の鎮 痛状態の厳密な比較はできないが、ケタミン併用全静脈 麻酔の方が鎮静・鎮痛ともに優れている印象がある。 (1991 年にDFK とエンフルランを比較した当科の臨床研 究では DFK の方が優れているという結果が得られたが、 現在おもに施行している PFK とセボフルランに関して は、目下研究中である。) ケタミン併用全静脈麻酔の欠点としては、セボフルラ ン麻酔と比較して麻酔の調節にややコツを要することと、 覚醒までに要する時間がやや長いことがあげられる。し かし、極端に覚醒が遷延することはなく、むしろ吸入麻 酔薬に見られるagitationが少なく穏やかな覚醒が得られ るという点では、吸入麻酔より優れているといえよう。 ワークショップ ワ ー ク シ ョ ッ プ ワークショップ/ Workshop W–001 小児気道管理の工夫 W–002 小児気道管理の工夫 司会の言葉 司会の言葉 山下正夫(茨城県立こども病院麻酔科) 石部 裕一(鳥取大学医学部器官統御外科学講座 麻酔・ 集中治療医学分野) Workshop on the airway management in infants and children: Preface Masao Yamashita, MD (Department of Anesthesiology, Ibaraki Children’s Hospital) 小児の気道管理では、我々が直面している色々な問題 Workshop on the airway management in infants and children: Preface Yuichi Ishibe, MD (Tottori University Faculty of Medicine Department of Surgery Division of Anesthesiology and Critical Care Medicine) があり、それに対して色々な工夫がなされています。 ※ 生理解剖学的問題:解剖学的に小さいことが大因子で 小児では成人に比して、肺の酸素reserveが少ないため すが、さらに生理的に低酸素状態に陥りやすい、呼吸 呼吸停止により容易に低酸素血症に陥る。また咽頭・喉 不全を起こしやすい、気道閉塞を来しやすい、などの 頭・気管粘膜への機械的刺激によって浮腫や出血が生じ 問題に直面しなければなりません。 やすく上気道閉塞の原因になりやすい。そのため確実で ※ 小児に特殊な病態、病理:遷延性新生児肺高血圧、挿 しかも愛護的な気道確保の手技が求められる。一方では、 管困難症候群(ピエ−ルロビン症候群、トレチアコリ 先天性奇形などによる挿管困難症を経験する機会が多い ン症候群、ゴールデンハー症候群など)、 のも小児麻酔の特徴である。最近、小児の気道確保にラ 先天性横隔膜ヘルニア、肺気腫、気管食道瘻、喉頭軟 リンゲアルマスクと細径の気管支ファイバースコープが 化症、気管気管支軟化症など、気道管理が困難な病態の 導入され、気道管理の手技が大きく変貌しつつある。本 患児の管理に直面します。 ワークショップでは小児のカフ付き気管チューブの是非、 ※ 新しい手術法に対する対応: 一側肺換気が要求される ラリンゲアルマスク挿入法の見直し、先天奇形での挿管 手術術式の普及(傾向?)、胸腔鏡的手術法の小児領域 困難症例の対応策、乳児片肺換気の試み、気管狭窄症の への応用。手術の長時間化。 長期気管挿管時の工夫、麻酔中の吸入ガス加湿法などに ※ 用具の問題:ラリンジアルマスク(LMA)、気管チュ ついて、臨床麻酔の経験から生まれた斬新なアイデアを −ブ、カフ付き気管チューブ、ダブルルーメンチュー 提示していただき、小児気道管理の新しい方向性を探っ ブ、気管支ブロッカー、特殊チューブ(ユニベント てみたいと思います。 チューブ、特殊加工試作チュ−ブ)など、小児に適し たサイズがあるか否か、使い方の工夫、挿入手技の確 立、など今後解決しなければならないことが沢山あり ます。 ※ 気管支ファイバ−スコ−プ:気道管理上必須となって きた用具ですが、それなりの慣れが必要で、また適し た補助具(ファイバ−スコ−プ挿管用マスク、など) の 改良も必要です。 ※ 症例数の問題:挿管困難は忘れた頃にやってきます。 また、ある一定の症例数をこなさなければ手術も麻酔 も上達しません。 これらの問題について、このワ−クショップを通じて 理解を深めていければと考えています。 - 89 - W–01 小児気道管理の工夫 W–02 小児気道管理の工夫 小児におけるラリンジアルマスク挿入法の工夫 小児におけるラリンジアルマスクを用いた分離肺換気 永井小夜 1、稲垣喜三 1)、廣澤壽一 2)、石部裕一 1)(鳥取 大学 医学部 麻酔科 1、鳥取大学 医学部 附属病院 高次集中治療部 2) 藤原俊介 1、辻本三郎 2)、太城力良 2)(宝塚市立病院 麻 酔科 1、兵庫医科大学 麻酔科学教室 2) A Modified Technique for Insertion of the Laryngeal Mask Airway in Children NAGAI SAYO (Department of Anesthesiology, Tottori University Faculty of Medicine, Yonago, Japan) One lung ventilation by Laringieal mask for Pediatric anesthesia FUJIWARA SHUNSUKE (The Department of Anesthesiology, Takarazuka Municipal Hospital, Takarazuka, Japan) ラリンジアルマスク(以下 LMA)は、小児においても 小児において分離肺換気を行う手段として、ダブル 気道確保の一法として広く用いられている。Brainらの推 ルーメンチューブ(DLT)は幼児以下では入手できず(ブ 奨する標準的な挿入方法は特別な器具や手技を必要とせ ロンコキャスTMで最小28Fr.)、気管支ブロッカーを装着 ず,容易であるとされているが、実際には、ある程度習 したチューブ(Univent tubeTM)は内径 3.5mm 以上しか 熟する必要があることは臨床医の実感であろう。LMAの なく外径が太いので6∼8才頃から使用可能とされる。 挿入法については、既に多くの変法が報告されており、 それ以下の小児においては、Forgatyカテーテル・肺動脈 我々も小児に対する挿入法の工夫を試みた。その挿入法 カテーテルなどによる気管支ブロッカーやシングルルー は以下の通りである。1.LMAのカフを、各サイズの標 メンチューブを選択的に気管支挿管して用いられている 準的空気注入量の3分の2の空気を注入して、ある程度 が、いずれの方法も手技的に煩雑で十分な非換気側の脱 膨らませておく。2.LMAを標準的な挿入法からチュー 気を得ることができない、さらに片肺換気は出来ても肺 ブを軸として 90 度回転させ、舌面に対し垂直に挿入す 胞タンパク症に対する肺洗浄に必要な分離肺換気はでき る。3.咽頭後壁に当たったところで標準的な向きに戻 ない。この対策として2本の気管チューブを継ぎ足した しながら、さらに進めた後、カフに残りの空気を注入し 気管支チューブ(BT)を作成し、回転コネクタを装着し て固定する、というものである。この方法は以前本学会 たラリンジアルマスク(LMA)を通じて主気管支内まで で紹介しているが、その後に行ったLMAに不慣れな麻酔 挿入してDLTアダプタと接続し、分離肺換気を行う方法 科医を験者とした研究でも、良好な結果を得た。【方法】 を報告した。それから、LMA-classicを用いて小児の年齢 対象は ASA1-2、4ヶ月から 13 歳までの小児で、全身麻 に応じた適正気管支チューブの内径と長さを検討した。 酔中の気道管理をLMAで行う予定の小児40人とした。無 LMAは体重別の推奨サイズとし、BT内径サイズは、BT 作為に2群に分け、標準的な方法でLMAを挿入する群を 内径断面積よりも BT 外側の気管内腔断面積が同一か大 S群、我々の考案した変法で挿入する群をM群とした。担 きくなるものを適正として算出した。BT必要長は、 (1) 当麻酔科医は他科からの麻酔科研修中で研修期間が6ヶ LMA 開口部から回転コネクタまでの距離(A)、(2)喉 月未満の医師、あるいは麻酔科医であるがLMAの使用回 頭から気管分岐の距離(B)、(3)適正径 BT のカフ近位 数がまだ数回であり、LMAに不慣れな医師とした。麻酔 端から先端までの距離(C)、(4)回転コネクタより BT は GOS で緩徐導入し、それぞれの挿入法で LMA を挿入 は3.5cm以上出ることとして、A+B+C+3.5を必要長 (cm) した。挿入に失敗した場合、挿入操作は3回までとし、4 とした。その結果、5歳以下では適正気管チューブより 回目はそれぞれもう一方の挿入法で挿入を試みた。LMA 2サイズ細い BT、6歳以上では3サイズ細い BT(最大 挿入成功後、気管支鏡にて声門展開の様子を4段階で評 ID5.5mm)を用いればよいと判明した。そして、気管 価した。また、抜去後のLMAの血液の付着を記録した。 チューブ内を通過する気管支ファイバーを所有するなら 【結果】挿入の成功率、挿入に要した時間、挿入を試みた 29cm 長のカフ付き BT(ID3mm)と LMA#2 を用いれば 回数、気管支鏡による評価は、2群間に有意差はなかっ 1才過ぎより使用可能となり、27.5cm 長のカフなし BT た。抜去後のLMAに血液の付着を認めたのはS群で6例、 (ID2.5mm)と LMA#1.5を用いれば 3/12 歳より使用可能 M群では1例のみであった。【考察】今回は我々の挿入法 と考えられる。本法は、挿入手技が容易で安全性も高い を具体的に、また研究結果を示しながら、LMA挿入の一 し、成人の挿管困難例での分離肺換気にも応用可能と考 変法として紹介したい。 える。 - 90 - W–03 小児気道管理の工夫 W–04 小児気道管理の工夫 先天性左横隔膜ヘルニア術後乳児の右肺中葉切除の麻酔 で分離肺換気を試みた経験 小さい子にカフ付き気管チューブはいけないのか? 斎藤歌織 1、新井としみ 2)、山下正夫 2)(磐城共立病院 麻酔科 1、茨城県立こども病院 2) Differential ventilation in an infant for pulmonary lobectomy SAITO KAORI (Department of anesthesiology, Iwaki Kyoritsu Hospital, Fukushima, Japan) 中村玲子 1、蔵谷紀文 2)、小野純一郎 2)、弓場智子 2)、森 (香川医科大学 医学部 麻酔・救 下 淳 2)、前川信博 1) 急医学講座 1、香川小児病院 麻酔科 2) Cuffed tracheal tube for small children: Is it still contraindicated? NAKAMURA REIKO (Department of Anesthesiology and Emergency Medicine, Kagawa Medical University, Kagawa, Japan) 【はじめに】ラリンゲルマスク(LMA)と市販の長い気 管チューブとを利用して乳児症例で分離肺換気を試みた 従来より小児患者にはカフ付き気管チューブ (C-ETT) ので報告する。【症例】2ヶ月女児、体重 3.3kg。先天性 の使用は禁忌とされてきた。しかし最近はこの考え方も 左横隔膜ヘルニアのためHFOおよびNO吸入にて管理さ 見直されてきている。当院では昨年より新生児、乳児に れ生後 6 日に根治手術を受けた。急速に進行する右肺気 も適応があればC-ETTを使用している。当院での現在ま 腫のため右肺中葉切除が予定された。右肺下葉は無気肺 でのC-ETT使用例をまとめ、文献的考察もまじえて報告 化し、極度に拡張した右肺(上)中葉は左側に突出して する。結果:内径4.5mm以下のC-ETTを導入してから1 いた。術前は気管挿管下でHFOにて換気されていた。全 年間に計 51 例の患者に使用した(表)。適応としては心 身麻酔導入後、気管チュ−ブを抜去しLMA#1.5を 臓手術患者のような手術後も人工呼吸管理が予定された 挿入、旋回式コネクターを接続麻酔回路にて換気。コネ 場合が最も多かった。経鼻挿管を行う場合も多かった。C- クターのスリットから LMA 内腔を通過させて ID3.0mm ETTを使用した場合には通常よりも1サイズ細いチュー の市販の長い気管チューブ(Single Use Blue Line ブが選択される傾向がみられた。声門下狭窄などの気管 Paediatric Tracheal Tube, Extra Length, Portex)を気 挿管によると思われる合併症は経験しなかった。C-ETT 管内に進めた。X 線透視下で気管チューブが右気管支に の利点としては気管チューブ周囲のリークがないことに 達することを確認した。開胸となり拡張した右肺(上) より呼吸管理が容易になること、気管チューブサイズの 中葉が胸郭の外に出るまでは、気管チューブは気管内に 選択に迷わなくてよいこと、である。大きな欠点といえ 留めHFOにて両肺を換気した。肺気腫の右中葉が胸郭外 るものは見あたらなかったが、チューブの値段が高くな に出されたあと、気管チューブを右気管支内に進めた。 ること、亜酸化窒素を使用したにはカフ圧が必要以上に 用手加圧で右肺下葉の拡張を試みたが、右肺中葉を完全 高くなる可能性があること、があげられる。まとめ:適 には分離することはできなかった。気管チューブから 応を選べば C-ETT は小児の麻酔管理に有用である。 HFO, LMAからは麻酔ベンチレータにて換気した。手術 終了後、LMAを抜去し、通常の気管チューブ(ID3.5)を 気管に挿入し、NICU に帰室させた。【考察】本症例では 陽圧換気で右肺(上)中葉が過拡張しないように、無気 肺状態の右肺下葉と低形成左肺とで酸素化を維持する換 気方法を考えなければならなかった。Tsujimoto ら(1) は、intubating LMA(Fastrack)と MLT チュ − ブを使った手作りの長い気管チューブとを用いる分離肺 換気法を紹介している。我々が報告したLMAと市販の長 い気管チューブとを用いる方法(2)では、新生児・乳 児でも分離肺換気を試みることが可能である。(文献) 1)Tsujimoto S, et al: Anesthesiology 1999; 91: 327. 2)Yamashita M: J Clin Anesth 1997; 9: 432-433 - 91 - チューブ内径 症例数 (mm) (例) 平均体重 (Kg) 術後人工呼吸 経鼻挿管 (%) (%) 4.5 18 13.6 ± 2.8 027.8 16.7 4.0 16 17.6 ± 1.7 056.3 62.5 3.5 09 15.2 ± 0.8 100.0 88.8 3.0 08 13.0 ± 0.5 75.0 75.0 平均体重は平均値±標準偏差 W–05 小児気道管理の工夫 W–06 小児気道管理の工夫 小児では予測できない挿管困難に遭遇する場合がある ― 挿管困難セットを準備することの有用性 ― 新生児口唇口蓋裂手術での気道管理 矢数芳英、広木公一(神奈川県立こども医療センター) Proper preparation for unrecognized difficult airway YAKAZU YOSHIHIDE (Department of Anesthesiology, Kanagawa Children’s Medical Center, Kanagawa, Japan) 広瀬紀子、貝沼関志、山田守正、大原義隆、角野宏佳、増 田健太郎、加藤 忠、黒田俊久、木村直暁(藤田保健衛 生大学 医学部 麻酔科) Airway management of the neonates with cleft-lip and palate HIROSE NORIKO (Department of Anesthesiology, Fujita Health University, Toyoake, Japan) 小児の挿管困難患者は、特殊な奇形症候群の有無や過 去の病歴で予測可能なことが多い。実際、当麻酔科の様 な小児専門病院でも5年間の 13557 症例の分析で、3回 以上の喉頭展開が必要な挿管困難症例は112例(0.8%)に 過ぎず、重度な症例は上記の範疇に入る。しかし、予測 できない挿管困難症例に遭遇する事があり、当科でも独 自のガイドラインで対応している。その対応策として は、・特殊な喉頭鏡・Laryngeal mask airway (以下LMA) のみの気道確保・LMAを介したファイバースコープ気管 挿管・挿管用換気マスクによるファイバースコープ気管 挿管・トラキライト・緊急気管切開などである。その際、 小児では年齢や体格により、気管チューブ、LMA、挿管 用換気マスク、喉頭鏡 (直かMacintosh、MacCoy型か?) などの準備物品が異なり、かつ全ての年代に対応しなけ ればならない(全種類が全サイズ必要!となる場合があ る) 。さらに、LMAを介した気管挿管では、・Barを切り 取った各サイズの LMA・その LMA を通過しうる気管 チューブサイズ・その気管チューブを通るファイバース コープのサイズなどの関係が問題となり、簡単には覚え 口唇口蓋裂新生児の全身麻酔導入時に、マスク換気、 喉頭展開、気管挿管などの気道確保時の工夫を紹介する。 片側性、両側性に完全唇顎口蓋裂を有する患児では、喉 頭鏡ブレードの一部分が裂隙部分に陥入すると、声門部 分がかろうじて見えても明視野部分がかなり狭く、気管 チューブを挿入しようとすると、チューブに邪魔されて、 声門部分がまったく見えなくなってしまうことが、しば しばある。我々は、これらの症例にホッツ人工口蓋床を 麻酔導入時に装着することによって、口唇口蓋裂児のマ スク換気、気管挿管を円滑に行っている。本学では、1986 年8月より口唇口蓋裂児へのチームアプローチ(口唇口 蓋裂診療班)を作り、新生児期に口唇形成術を施行する ことにしている。出生後早期に桑原式改良型を口腔内に 装着する。これは、経口哺乳の補助、口腔機能の確保、顎 成長の誘導、顎顔面形態の正常な発育を促進する目的が あるが、麻酔導入時の気道確保にも極めて有用である。 現在までに新生児口唇口蓋裂手術は 756 症例であり、 ホッツ人工口蓋床はこのうち 300 例以上で用いている。 本方法を紹介し、これまでの経験を報告したい。 られない。そこで、上記物品をケースにまとめた挿管困 難セットと携帯型コードレスファイバースコープ(メ ディカルサイエンス社:BP1-255 型:外径 2.65mm これで 殆どの小児は管理可能)および緊急気管切開物品を搭載 したカートを準備し不測の事態に対応するようにしてい る。一般の病院でここまでの準備が必要か否か(逆に常 に緊急対応になる?)は解らないが、当科での対応を報 告する。 - 92 - W–07 小児気道管理の工夫 W–08 小児気道管理の工夫 ラリンジアルマスクと細径気管支ファイバースコープで 挿管に成功した未熟児挿管困難症例 意識下ラリンジアルマスク挿入後気管挿管した、ピエー ルロバン症候群の一例 増田和之、満瀬哲郎、橋口清明、城 嘉孝、赤坂威史、尾 方信也(熊本市立熊本市民病院 麻酔科) 林さつき 1、黒嵜明子 1)、宇田るみ子 1)、大塚みき子 2)、 (大阪医科大学 麻酔科学教室 1、康生会武田 南 敏明 1) 病院 麻酔科 2) A case of premature infant with difficult airway which was successfully intubated using laryngeal mask airway and bronchofiberscopes of small diameter. MASUDA KAZUYUKI (The Department of Anesthesiology, Kumamoto City Hospital, Kumamoto, Japan) 【症例】月齢3ヶ月(修正2ヶ月),体重2.282kg,身長47cm で、Dandy Walker 症候群と多発奇形症候群があり眼裂狭 小,小顎症,口蓋裂,耳介低位を認めた。出生直後,人工呼 吸管理が行われたが挿管困難で喉頭鏡による挿管は約1時間 を要していた。その後機械的人工呼吸から離脱できていた が,水頭症の進行と反復する心嚢液貯留のため脳外科による VPシャントと心臓外科による心嚢開窓術の同時手術が予定 された。術前の診察で適正チューブサイズは内径 2.5mm と 考えられた。【麻酔計画】まず覚醒時挿管を試み,不成功時 は麻酔導入してサイズ1のラリンジアルマスク(LMA)を 挿入し,それをガイドに挿管する方針とした。麻酔前投薬は 用いなかった。【経過】手術室入室後、1)まず覚醒時挿管 を試みたが成功しなかった。このため2)ミダゾラム 1 mg, ベクロニウム0.5mgを静注したのちサイズ1のLMAを挿入 しそれを介して盲目的挿管を数回試みたが成功しなかった。 3)LMA を抜去しフェイスマスクで換気しながら数名の麻 酔科医が喉頭展開を試みたが不成功に終わった。4)LMA を再挿入し外径2.4mmの気管支ファイバースコープ(BFS) を挿入したところLMAを介して喉頭を確認できたので,そ の位置で経 LMA 的盲目的挿管を再試行したが入らなかっ た。直接の挿管と盲目的挿管が不成功であったため,5)内 径 2.5mm の気管チューブを予め通した外径1 mm の BFS を 気管内まで進めようとしたが,視野と先端の可動域が狭く気 管内まで進めることはできなかった。6)ここで外径2.4mm の BFS を挿入し喉頭を観察しながら LMA の真正面に声門 が位置するよう LMA の位置を調整した後,外径1 mmn の BFSを挿入すると容易に先端を気管内へ進めることができ, それをガイドに気管挿管を行うことができた。入室から覚醒 時挿管,経LMA盲目的挿管,喉頭鏡による挿管を試みた1) ∼4)までが1時間 10 分,細経の BFS を LMA を介して気 管内に進めようとした5)が約 20 分,外径 2.4mm の BFS と 1.0mm の BFS を組み合わせて挿管に成功するまでの6)が 約15分で合計1時間45分を要した。【結論】サイズ1のLMA と大小2種類の BFS を組み合わせて挿管困難を有する未熟 児の気管挿管を行い得た。 - 93 - Tracheal intubation through a lasryngeal mask in a patient with Pierre-Robin syndrome HAYASHI SATSUKI (Department of Anesthesiology, Osaka Medical College, Takatsuki, Japan) 【はじめに】意識下にラリンジアルマスク(以下 LMA) を挿入し、その後気管支ファイバースコープを用いて気 管挿管したピエールロバン症候群の一例を経験したので 報告する。【症例】症例は生後1ヶ月、男児。在胎 41 週、 2875gにて出生。生下時より、呼吸障害をみとめ、次第 に悪化してきたため、気管切開、舌固定術が施行される ことになった。術前に気道確保が困難であると予想され たため、静脈路を確保し、リドカインスプレーを噴霧し、 mask aperture barsを切除した1.5号のLMAを意識下に 挿入した。酸素、亜酸化窒素、セボフルランによる緩徐 導入を行い、2本連結した内径3.0mmの気管チューブに 通した気管支ファイバースコープで、LMAの位置を確認 後、気管挿管を行った。LMA挿入から気管挿管までに要 した時間は約7分で SpO2 は 100% を維持していた。【考 察】意識下LMA挿入はマスクによる換気、気管挿管が困 難と思われる症例に有用であると報告されているが、特 に無呼吸の許容時間が短い新生児、乳児には安全確実な 方法であると考えられる。【結語】気道確保が著しく困難 な症例に、LMA挿入後、気管支ファイバースコープを用 いて気管挿管する方法が有用であった。 W–09 小児気道管理の工夫 W–10 小児気道管理の工夫 Y型気管チューブによる長期気道管理 HUMMAXTM 加温加湿器を用いた麻酔回路 深津 修、兵頭亜紀子(東京都立八王子小児病院 麻酔 科) 須藤貴世子 1、大畑 淳 1)、井口まり 1)、根本三雄 2)(長 野県立こども病院 麻酔科 1、s メトラン 2) Airway management assisted with Y-type-intratrachealtube FUKATSU OSAMU (Department of Anesthesia, Tokyo Metropolitan Hachioji Children’s Hospital, Tokyo, Japan) The pediatric anesthetic circle with HUMMAXTM new humidifier SUDO KIYOKO (The Department of Anesthesia. Nagano Children’s Hospital. Toyoshina. Japan) 当施設では小児の麻酔回路として、加温加湿にメトラ 【目的】先天性気管狭窄症や気管軟化症に対して長期挿 ン社製 HUMMAXTM加温加湿器を利用した同 管管理をしていると、チューブ先端の刺激により気管内 軸回路を T −ピース方式変法として使用している。全身 に肉芽を生じ換気障害をきたすことがしばしばある。 麻酔中の麻酔ガスの加温加湿は、小児麻酔の領域におい チューブをさらに深くしたり、肉芽を切除したりして管 ては呼吸器系合併症を少なくするためにも重要である。 理しても、チューブ先端の刺激により気管分岐部上部に 従来、Fisher & Paykel社製回路内熱線なし加温加湿器を 新しい肉芽を発生し上気道の気道管理に難渋することが 加えた回路を使用してきた。しかし、回路内で温度が低 ある。このような症例に対しわれわれは、1年9ヶ月に 下し、結露を起こし水が貯留しやすく頻回に水を払うこ わたってY型気管チューブを留置し、9回のチューブ交 とが必要であった。HUMMAXは血液透析用の疎水性中 換を試みながら抜管に成功したので報告する。【方法】最 空糸膜を熱線に覆い、最終的に口元の温度センサーで制 初に作成したY型気管チューブは、ID3.5 mmのロング 御された温度で、吸気ガスが相対湿度ほぼ100%のガスが チューブに ID2.5 mmのチューブを微妙なトリミングで 供給でき、かつ回路内結露を最小限にとどめることがで 患児の主気管支分岐角に合わせ、ナイロン糸で縫合して きる。人工呼吸器用の新しい加温加湿器として開発され 作成した。Y型左右のチューブは上葉枝分岐手前の距離 たが、麻酔回路用として二つの改良を加えた。電源が入 で切離した。これを挿管するために左右チューブ先端手 りかつガス流量がなければ口元の温度が上昇しないため 前内側に細孔を作成し,この細孔を通じてY型気管 に、熱線を暖めつづけ、回路が溶けることなど生じるた チューブ入り口から1本の釣り糸をたぐり、釣り糸の牽 め、ガス流量の有無で、電源の on off ができるフローセ 引でY型気管チューブを直線化し挿管した。透視下に気 ンサーを麻酔器のガス出口に取り付けた。また、熱線が 管分岐部手前で釣り糸を抜去しY型部分を開大させ、左 電気メスなどで影響を受けにくくするすることなどによ 右気管支に挿入した。最終的には ID4.5 mm +3.0 mmま り、T −ピース方式の同軸麻酔回路にして使用が可能に でサイズアップし挿管管理した。チューブは鼻孔から1 なった。長時間麻酔になると呼気及び吸気側にも水がた cmで切断し、顔に固定しなかった。結果的にはこの方法 まることや、熱線の温度が上昇し、最悪燃焼する可能性 が良かったのか、チューブの先端の気管支に肉芽はでき がまだ残るなど、麻酔回路に取り入れるためにまだ改良 なかった。【結論】Y型気管チューブは、気管分岐部に近 のすべき点はあると考えられるが、HUMMAXは小児麻 接した狭窄や無力症を保存的に管理するのに有用であっ 酔の呼吸回路の加温加湿に有用と思われる た。 - 94 - ランチョンセミナー ラ ン チ ョ ン セ ミ ナ ー ランチョンセミナー1/ Luncheon Seminar 1 周術期における選択的 β1 拮抗薬の意義と今後の展望 大阪大学大学院医学系研究科 生体調節医学(麻酔科学)講座 林 行雄 Clinical significance and future expectation of selective β1 antagonists during perioperative management. Yukio Hayashi, M.D. Department of Anesthesiology, Osaka University Faculty of Medicine 薬剤が特異的に結合する受容体を明らかにする事は既存の薬剤の薬理作用のメカニズムを明らかにすると共に新たな薬 剤開発においても重要なステップである。カテコールアミンが a および b の2つの受容体を介して作用するといういわゆ る“受容体説”を発展させて b 受容体が b 1 および b 2 の2つのサブタイプに分類されることを Lands らが Nature 誌上に 発表したのは 1967 年のことであり、そのなかで b 1 を介する作用として心収縮力増強や心拍数増加などの心臓に対する作 用を、b 2を介する作用として気管支拡張作用や血管拡張作用と明確に区別して示している。この考えは b 1選択的な作動 薬や拮抗薬の開発が心臓に特異的に働く新薬を生み出す可能性を示しており、事実その後特に選択的なb 1遮断薬の開発が 競って行われ、多くの b 1 選択的な遮断薬を世に送り出した。その後の b 受容体の研究では心臓にも b 2 受容体の存在が明 らかとなり、当初Landsらが唱えたサブタイプの明確な局在に訂正が加えられる結果となった。心臓に b 1および b 2の2 つのサブタイプが存在することの意義については最近になっていくつか興味ある見解が示されているが明確な結論には至っ ていないのが現状である。それは選択的b 1遮断薬により心臓のb 1のみを選択的に拮抗し、b 2受容体を残すことの意義が 問い直されていると言い換えうると思われる。このように基礎研究の分野では心臓の b 受容体に関してはやや混迷してい るものの、臨床においての b 1遮断薬の役割はますます確固たるものとなりつつある。b 1遮断薬は元来抗不整脈剤として 登場し、内科的には降圧薬として確固たる地位を得たが、最近10年間その適応はさらに慢性心不全や周術期心筋虚血予防 にまで拡大され、麻酔科医にとっても無関心ではいられない薬剤となったといえる。今秋より本邦でも短時間作用性で静 注可能な選択的b 1遮断薬であるランジオロールが相次いで発売され、麻酔管理における有力なカードを1枚手札に加える ことができるものと思われる。本ランチョンセミナーではb 1受容体を選択的に阻害することの意義を最近の知見を交えて 再度検証し、本邦初の b 1 選択的拮抗薬の今後の臨床的な意義を占ってみたい。 - 97 - ランチョンセミナー2/ Luncheon Seminar 2 アメリカにおける超短時間作用性麻薬を使用した小児麻酔の臨床 東京女子医科大学 麻酔科学教室 上園晶一 Clinical use of an ultra-short acting opioid, remifentanil, in pediatric anesthesia: US experience Shoichi Uezono, MD Tokyo Women's Medical University, Department of Anesthesiology 1998 年 11 月から 2000 年9月まで、アメリカのスタンフォード大学の小児麻酔部門で麻酔科スタッフとして勤務した。 そこで、当時すでに臨床使用可能であった合成麻薬レミフェンタニールを用いた小児麻酔の症例を多数経験した。日本で も、数年のうちにレミフェンタニールが市場に出る予定なので、この新しい麻薬の小児患者における臨床麻酔例をここに 紹介する。 レミフェンタニールは、ベクロニウムのようにパウダーとして保存されており、使用前に生食などで溶解して用いる。 フェンタニールとほぼ同程度の力価を持つレミフェンタニールの特徴を挙げる。(1)血液脳関門を容易に通過するので、 作用発現が速やかである。 (2)組織や血漿中に存在する非特異的なエステラーゼによって加水分解されるため、排泄半減 期は数分である。 (3)代謝は肝臓や腎臓に依存せず、また、代謝産物の活性はほとんどないので、肝臓や腎臓の機能が低 下している患者でも作用時間は遷延しない。 (4)持続投与時間によらず、context-sensitive half-life はわずか8分である。 これらのデータは、成人を対象とした臨床実験から得られた結果であり、小児については、残念ながらまとまったデータ はほとんど存在しない。しかし、実際に使用した印象からすると、成人のデータと大差がないように思われる。 作用発現が早く、持続時間が短く、さらに蓄積性がない、という特徴をもつレミフェンタニールは、フェンタニールや モルヒネなど既存の麻薬に比べると、格段に調節性に優れている。そのため、呼吸抑制など麻薬の重大な副作用が問題に なる小児の症例では、理想的な麻薬といえる。ただし、レミフェンタニールに代わる術後疼痛対策を、覚醒前にたててお かないと、レミフェンタニール投与中止数分後に患者は術後痛を訴えるようになる。 レミフェンタニールの調節性の良さを利用して、同様の性質を持つプロポフォールを併用すると完全静脈麻酔が容易に 可能になる。本来、2つの薬剤に対し、おのおのIVポンプが必用であるが、スタンフォードでは、レミフェンタニールを プロポフォールに混ぜて使用することで、一台のIVポンプで完全静脈麻酔を行っていた。通常の症例では、プロポフォー ル 10 ml につきレミフェンタニール 0.1 mg を加える混合溶液(1:1000 溶液)を用い、プロポフォール 100-200 m g/kg/ min 程度から開始していた。この場合、レミフェンタニールの投与量は、0.1-0.2 m g/kg/min になる。刺激が強いと思わ れる症例(例えば、頭蓋形成術など)では、レミフェンタニールの濃度を2倍にして用いていた。 具体的な臨床使用例を示す。 (1)新生児手術一般 (2)脳外科手術 (3)硬性気管支鏡 (4)脊椎手術 (5)心臓手術(開心術、非開心術) (6)食道・胃・大腸内視鏡検査 (7)心臓カテーテル検査 本講義では、これらの症例におけるレミフェンタニールの具体的な使用法と注意点について解説する。 - 99 - 市民公開講座 市 民 公 開 講 座 市民公開講座1 子どもの事故を予防する 緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長 山中龍宏 Injury prevention in childhood Tatsuhiro Yamanaka Ryokuen Children’s Clinic 子どもの事故の実態は? わが国では、1960年以降、0歳をのぞいた小児の死因の第1位は不慮の事故となっている。先進国と比較すると、わが 国の乳幼児の事故による死亡率は高く、改善の余地がある。 日々厖大な数の事故が発生しているが、地域のレベルで収集されたデータをみると、子どもの年齢層、事故の種類、発 生頻度は酷似しており、地域差はみられない。すなわち、ある月齢、あるいは年齢になると、ある一定の頻度で事故が発 生している。 事故へのアプローチとは? 事故の問題について考える場合、1) 事故が起こる前、2) 事故が起こったとき、3)事故が起こった後、の3つのphase (相)に分けて考える必要がある。起こる前は「予防」、起こった時は「救急処置」、起こった後は「治療、リハビリテーショ ン」となる。この中で、最も大切であり、経済的にもすぐれたアプローチは「予防」である。 事故予防の考え方とは? 現在まで、事故予防の指導はどのように行われてきたのだろうか。最もよく言われるのが「子どもの事故は親の責任」 「親が不注意だから事故が起きる」という指摘であった。また「気をつけましょう。子どもから目を離さないで」という言 葉も頻用されてきた。しかし、これらは事故予防としては何の役にも立たない。 事故は健康を障害する事象として科学的に分析し、具体的な予防策を考える必要がある。すなわち、1)重症度が高い 事故、2)発生頻度が高い事故、3)増加している事故、4)具体的な解決方法がある事故、について優先的に取り組む べきである。 有効な事故予防活動を! 子どもの健康にとって最大の敵は「不慮の事故」であることを再認識する必要がある。子どもの発達にともなって起こ りやすい事故のパターンは決まっており、それらに対する有効な予防法もほぼわかっている。 予防活動の評価は、1)事故の発生数の減少、あるいは、2)傷害の重症度(通院日数、入院日数、医療費など)の軽 減によって科学的に判定する必要がある。 現在、私が行っている事故予防活動の一例として、誤飲や窒息の予防、ならびにチャイルドシートの着用指導について 紹介したい。事故の予防は、科学的に効果が証明されている方法を実施し、つねにその安全装置を使用するという「行動 の変容」によって初めて達成される。 事故の予防に対する意識改革を! 子どもに対する保護者の責任とは、前もって安全な環境を整備、確保することであるが、個人レベルの責任だけを追及 しても効果は無い。子どもの安全に対して、社会が大きな責任を負っていると認識すべき時であり、今、そのような意識 の改革が求められている。 子どもの安全のために、安心な子育てをサポートするために、そしていっしょに子どもの事故予防を推進するために、 「子どもの事故予防情報センター」(http://www.jikoyobou.info)を開設したので、ぜひご覧いただきたい。 - 103 - 市民公開講座2 小児心肺蘇生の実際 名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学 高野碧年 Cardiopulmonary Resuscitation for Children Hekitoshi Takano Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan 身の回りでぐったりしている子供を見かけたとき、あなたはどうしますか? 呼吸が出来なくなると、数分で心臓が止まってしまいます。心臓が止まり血液の流れがなくなると、3∼4分で脳に障 害を残す可能性が生じます。 心肺蘇生とは、脳を守るために心臓と呼吸の働きを助けてあげることです。 「救急車を呼んだけれど、あとは何をすればいいのかわからない。」 救急車が来るまでの間にも脳への障害は進んでしまいます。心肺蘇生は一刻を争います。保護者や市民の皆様が心肺蘇 生を実施することで、救急隊へ少しでもよい状態で傷病者を受け渡すことができます。そして救急隊からわれわれ医療者 へ治療が受け継がれます。 子供が意識を失って呼吸をしていない場合、息の通る道をつくり(気道確保)人工呼吸をしなければなりません。また それでも反応が無い場合は心臓マッサージをして脳に血液を送らねばなりません。人工呼吸と心臓マッサージを合わせて 心肺蘇生と呼びます。 意識のない人に遭遇したときの対応は、傷病者が成人の場合と小児の場合では最初から異なります。救助者が一人の場 合、成人および8歳以上の小児ではまず119番通報します。しかし8歳未満の小児ではまず1分間の心肺蘇生をします。こ れは成人では心臓が原因の危急事態が圧倒的に多く、小児では呼吸停止に続く心停止が圧倒的に多いからです。小児では 心臓が止まる前に人工呼吸を行なうことで、心停止に至らず回復することもあります。 今回は8歳未満の小児の心肺蘇生を中心に解説します。以下に具体的な手順を説明します。成人の場合とは異なること を御了承ください。 1)意識の有無の確認 意識がない場合、大声で助けを求めます。近くに人がいたら 119 番通報してもらい、自分は心肺蘇生をします。 近くに人がいない場合、子供が8歳未満のときは、まず1分間の心肺蘇生を行ないます。小児では呼吸困難が原因で心 臓が止まってしまうことが多いからです。それから 119 番通報します。 2)気道確保 意識がなくなると舌が喉の奥の方に落ち込み、息の通り道をふさぐことがあります。呼吸の有無の確認や人工呼吸に先 立ってまず息の通り道を作ります。頭を後ろに反らし、あごの先を持ち上げることで息の通り道が生まれます(頭部後屈 あご先挙上法)。 3)呼吸の有無の確認 胸の動きを見たり、鼻や口に耳を近づけて聞いたり、鼻や口に頬や手を近づけて呼吸に触れることで呼吸の有無を確認 することができます。 4)人工呼吸を2回 気道確保をしても呼吸をしないときは、口や鼻から息を吹き込みます(人工呼吸) 。気道確保の姿勢のまま、幼児以上で - 105 - は鼻をつまんで口から口へ、乳児では口と鼻を自分の口で覆い息を吹き込みます。一回1∼1.5秒で息を吹き込み、2回繰 り返します。息を吹き込むことで胸が上がることを確認してください。 口の中に異物が見えた場合はこれを取り除きます。 5) 反応(循環のサイン)の確認 人工呼吸を2回したあと、咳をしたり体の動きがないか(循環のサイン)を短時間で観察します。咳や体の動きがなけ れば血液が流れていないと考え、すぐに心臓マッサージを開始します。 医療従事者以外は脈を触れる必要はありません。すぐに心臓マッサージを開始します。 6)心臓マッサージを5回 小児(1歳以上8歳未満)は片手の掌で、胸の中央のみぞおちより上を、胸の厚さの3分の1程度沈むまで圧迫します。 速さは一秒に2回弱です。肘が曲がらないように注意します。8歳以上の小児は成人と同様に両手で心臓マッサージをし ます。 乳児(1歳未満)は、胸の中央で乳首を結んだ線より指一本下のところを指二本で押します。胸の厚さの3分の1程度 沈むまで圧迫します。速さは一秒に2回弱です。 お腹を押さないように注意します。 7)人工呼吸1回と心臓マッサージ5回を交互に繰り返します。 人工呼吸と心臓マッサージを1分間繰り返した後に、119番に電話し救急車を要請します。救急車が来るまで心肺蘇生を続 けます。 一般市民から救急隊へ、救急隊から医療者への心肺蘇生のリレーを 「救命の鎖」 、「救急蘇生の連鎖」 と呼んでいます。あ なたが行なう心肺蘇生が鎖の始まりとなります。 名古屋市消防局では救命講習が毎月行なわれています。また市内の各消防署でも定期的に救命講習が行なわれています。 救命講習では、蘇生練習用の人形を使って実習をすることも出来ます。心肺蘇生のトレーニングを受けることで、いざと いう時に正しい処置を行なうことが出来ます。心肺蘇生について知ることは親や子供を預かる保護者の義務ともいえます。 皆様の善意による心肺蘇生が一人の命を救い、救命率の向上にも繋がります。 - 106 - 一般演題(ポスター) 一 般 演 題 ︵ ポ ス タ ー ︶ A—02 病院システム・疼痛管理 A—01 病院システム・疼痛管理 国立成育医療センターでの電子的麻酔記録システム (MightyComp) 国立成育医療センター手術室の紹介 朝原章二、林 玲子、田中 基、田村高子、近藤陽一、宮 坂勝之(国立成育医療センター 手術集中治療部) Operation rooms of National center for child health and development ASAHARA SHOJI (National Center for Child Health and Development) 国立成育医療センターは従来の診療科の枠を超えた成 育医療(小児医療に加えて、母性・父性医療及び関連・境 阿部世紀、林 玲子、田中 基、田村高子、近藤陽一、朝 原章ニ、宮坂勝之(国立成育医療センター 手術集中治 療部 麻酔科) Electoronic anesthesia recording system (MightyComp) in National Center for Child Health and Development ABE SEIKI (Department of Anesthesia, National Center for Child Health and Development, Tokyo, Japan) 界領域を包括する医療)を推進するために旧国立小児病 院と旧大蔵病院を統合して 500 床のナショナルセンター 国立成育医療センター麻酔科では、2002年3月の病院 病院として平成 14 年 3 月 1 日に新規開設されたものであ 開設当初からフィリップス社と共同開発した電子的麻酔 る。当センターの手術部はこの設置理念とリスクマネー 記録システム(MightyComp)を導入し、現在まで運用 ジメント概念に基づき、手術室を中心として ICU 及び してきているので報告する。当科の麻酔記録システムは NICU 同一階内で隣接させ、かつ手術部内に CT 検査室、 基本的に完全ペーパーレスを実現している。バイタル MRI検査室、心カテ室も設置し新生児から成人までの手 データの入力は、従来の記録用紙と同様のグラフ入力が 術、集中治療、及び検査等を麻酔科医により包括的に施 マウス操作で可能である。術中イベントに関しては選択 行可能としている。手術室は11室で、患者カルテに加え 項目を設けることによりマウス入力が可能となり、時間 て 麻 酔 記 録 も ICU、 NICU と 連 結 し て 完 全 に 電 子 化 軸はスケール変更ができ、麻酔状況により入力スケール (Mighty Comp) され、感染防御の視点から麻酔器、患者 を自由に選択することが可能である。さらに、手術中の モニタ−等は全て天井吊り下げ式とし、手術室入室は一 麻酔ガスや麻酔薬、輸液、輸血なども容易にマウス入力 切履き替えをしない一足制としている。麻酔症例数は旧 ができ、使用量は自動的に計算される。このことにより、 国立小児病院外科系に脳神経外科、形成外科、産科、婦 麻酔操作に集中でき、患者の安全性を確保した麻酔管理 人科、胎児診療科等を加えて、新生児から新たに成人ま が可能となった。開院当初は、麻酔記録に人手を要した でを対象とし、24時間体制の救急診療も行うことから年 が、記録の簡便化を図り、習熟することにより、紙面に 間約4500例を予定している。麻酔科のスタッフ数は集中 よる麻酔記録と遜色ない運用ができる上に、電子化に伴 治療科および、術後疼痛管理に加えて麻酔科主導による う多くの利点を享受できる。また、麻酔台帳機能により 無痛分娩を行なう疼痛管理科、高度在宅医療科を含めて 過去の麻酔記録も容易に検索、参照でき、日本麻酔科学 計12名、そしてレジデントは計20名の構成で診療を開始 会に提出する麻酔偶発症集計も可能である。当院の手術 している。このハード及びソフトウェアー共に全く新し 室、PICU、NICUは同一システムを用いており、記録は い概念により設置された手術室の開設以来の稼動状況を 間断なく継続できるので、術前,術中,術後へと一貫し 紹介したい。 た患者管理に貢献している。従来のシステムが、医事会 計との整合や、画面の見栄え、オンラインのバイタルサ イン収集のみを重視してきたのに対し、本システムは小 児麻酔特有の短時間症例や急性期の患者病態に対応でき る、手入力の容易さとICU/NICU患者とのデータの連続 性確保を重視し、麻酔科医の立場に立ったシステムとい う特徴を持つ。医療情報の電子化は、ソフトウエアの開 発改良だけで全て解決できる訳ではないが、現状で十分 に実用段階であると考え報告する。 - 109 - A—03 病院システム・疼痛管理 A—04 病院システム・疼痛管理 福岡小児麻酔カンファレンスの紹介 ∼ 17 年間を振り返って∼ 小児鼡径ヘルニア根治術に対する腸骨鼡径・腸骨下腹神 経ブロック;穿刺ポイントの検討 自見宣郎、住吉理絵子、水野圭一郎、森本文子、秦 恒 彦(福岡市立こども病院・感染症センター 麻酔科) 佐々岡紀之、吉谷健司、鈴木敦裕(りんくう総合医療セ ンター 市立泉佐野病院 麻酔科) Introduction of the Fukuoka conference on pediatric anesthesia JIMI NOBUO (Fukuoka Children’s Hospital and Medical Center for Infectious disease, Fukuoka, Japan) Ilioinguinal/iliohypogastric nerve block for hernia repair in children;Evaluation of puncture site SASAOKA NORIYUKI 【目的】小児鼡径ヘルニア根治術に用いられる腸骨鼡 日本小児麻酔学会第9回大会の開催が決定している福 径・腸骨下腹神経ブロックには前腸骨棘近傍のみを穿刺 岡市とその周辺地域には、小児麻酔の情報交換の場とし するもの(以下1点穿刺法とする)1)とさらに恥骨結 て、福岡小児麻酔カンファレンスの存在がある。カン 節近傍を加えた2点を穿刺するもの(2点穿刺法)2)が ファレンスの運営は、近隣の北九州市と熊本市の市中病 ある。今回、術中、術後に関してどちらの手技がより効 院の麻酔科の協力を得て、福岡市立こども病院麻酔科が 果的であるのかを比較検討した。【対象と方法】鼡径ヘル 行っている。1985 年 2 月に第1回のカンファレンスを ニア根治術を受ける ASA1 ∼2の患児(6ヶ月∼ 10 歳) 行って以来、年2回の割合で、現在まで35回を数えてい 87 人を対象とし、無作為に1点穿刺群(以下 1P 群)と2 る。カンファレンスは、4∼6題の一般発表と特別講演 点穿刺群(以下2P群)に振り分けた。前投薬は使用せず、 によって構成されており、現在までに、小児麻酔に関す 笑気、酸素、セボフルランにて緩徐導入後、ラリンジア る 180 題の発表があり、主な発表の内容は以下のようで ルマスクまたは気管挿管にて気道確保した。導入後 25 あった(重複を含む)。症候群・特殊疾患の麻酔46題、呼 ゲージ鈍針を使用し、0.25%ブピバカイン0.3ml/kgにて 吸・気道管理28題、心臓麻酔25題、合併症とその麻酔19 各ブロックを施行した。維持は笑気、酸素、セボフルラ 題、未熟児・新生児の麻酔14題、モニタリング14題など ン(2%固定)にて行った。手術開始前(コントロール値)、 である。臨床の場ではなかなか経験できない小児特有の 皮切時、ヘルニア嚢牽引時の血圧、心拍数を測定し、コ 症候群や特殊疾患の麻酔はカンファレンスのメインテー ントロール値の10%未満の変動に留まったブロックを効 マとなっている感がある。心臓麻酔と新生児麻酔、その 果あり、それ以上の変動または、体動の現れたブロック 際のモニタリングは小児麻酔において最も苦手になりが を効果不十分とした。また、術後、鎮痛薬の使用状況を ちな領域である。これらの麻酔経験の中から、様々な苦 調べた。統計学的検討にはχ2検定を用い有意水準をp< 労とそれによって産み出される工夫が常に発表されてい 0.05 とした。【結果】皮切時の判定は 1P 群で 40/4(効果 る。特別講演では、麻酔からは少し離れた内容が多かっ あり / 効果不十分)、2P 群で 40/3 であった。ヘルニア嚢 た。風邪やアレルギーなどの身近な病気から喘息・痙攣・ 牽引時は 1P 群で 30/14、2P 群で 37/6 であった。術後の 腎臓病・心疾患などの特殊疾患まで、麻酔科医が理解し 鎮痛薬使用の有無は 1P 群で 5/39(使用 / 使用せず)、2P ていそうで理解していない病気の成因、治療法や薬剤の 群で 4/39 であった。牽引時のみ 2P 群が有意に効果が高 使い方や、さらに心電図や画像診断などのレクチャーが かった。【考察】両ブロックの根本的な違いは、陰部大腿 あり、知識の収得、再確認に役立っている。カンファレ 神経ブロックの有無にある。一般に陰部大腿神経は陰嚢、 ンスの参加者は毎回 30 名程度である。発表・討論時間は 陰唇,大腿上部のみに分布すると考えられがちであるが、 約15分と通常の学会と比べ長く、スライドの枚数も制限 鼡径部にも分布が認められるため、2点穿刺によりブ していない。スライド以外にもビデオを用いた発表も可 ロック効果が高められる可能性がある。2点穿刺は1点 能であり、活発な討論が展開されている。カンファレン 穿刺に比べ手技が煩雑であり、ヘルニア嚢に血腫形成の スの内容は、質疑応答、司会者のコメント、まとめを加 可能性を示唆する報告もあり必ずしも有利な手技ではな えて、雑誌『臨床麻酔』 (真興交易医書出版部)に掲載さ いがヘルニア嚢牽引に対しブロック効果が高く術中維持 れている。 には有利であると思われる。【文献】1)Yaster et al. Anesthesiology 70: 324-338, 1989 2)Dalens 著 小児の 局所麻酔 - 110 - A—05 病院システム・疼痛管理 A—06 病院システム・疼痛管理 仙骨麻酔の有効性の検討∼鼠径ヘルニアと臍ヘルニアを 比較して∼ 脊椎手術における術野からの硬膜外カテーテル留置の試 み 岡村ひろみ、小栗幸一、川瀬 恭、藤原祥裕(名古屋第 一赤十字病院 麻酔科) 中尾美保、藤井 崇、辻井健二、永田 昇、中田一夫 (大阪市立総合医療センター小児麻酔科) The efficacy of caudal block – comparison between inguinal hernia and umbilical hernia – OKAMURA HIROMI (Nagoya First Red Cross Hospital, Nagoya, Japan) Postoperative analgesia for spinal fusion operation by intraoperatve placement of epidural catheter NAKAO MIHO 術後の鎮痛法としての持続硬膜外麻酔の有用性は認めら 【背景】仙骨麻酔は一般に下腹部の手術に適応とされて れている。しかし、脊椎手術では穿刺やカテーテル留置部 いるが、その有効範囲は明らかではない。今回我々は、鼠 位が術野となるため術前にカテーテルを留置することは難 径部と臍高部でその効果に差があるかを検討するため、 しく、また術後の留置も創部の出血や創部汚染の危険性が 鼠径ヘルニアおよび臍ヘルニアに対して仙骨麻酔を行い、 あるため困難である。そこで今回、脊椎手術を行った3症 術後鎮痛の効果を比較した。 例に対し、術中に術野より直視下に硬膜外カテーテルの挿 【方法】当施設において 2000 年1月から 2002 年5月ま 入・留置を行い、術後鎮痛に用いたところ有効であったの でに臍ヘルニアおよび鼠径ヘルニア根治術をうけた2歳 で報告する。症例1:7歳女児、19.5kg。L5 の辷り症と 以上7歳以下の臍ヘルニア 17 例(仙骨麻酔施行群 10 例、 診断され、L4からS1まで後方椎体間固定術を受けた。硬 非施行群7群)、鼠径ヘルニア 19 例(仙骨麻酔施行群 11 膜外カテーテルの先端は L5 に留置した。症例2:10 歳女 例、非施行群8例)の計36例を対象とした。仙骨麻酔は、 児、24.3kg。T3 から L2 までの思春期側弯症に対し CD 法 笑気・酸素・セボフルランによる緩徐導入後、0.25%ブピ が行われた。硬膜外カテーテルの先端はT10に留置した。 バカインを1ml/kgを投与した。術後帰棟時の鎮静度を興 症例3:13歳女児、36.9kg。T2からL2までの思春期側弯 奮 / 号泣・穏やか・入眠の3段階で、痛みの程度を強い・ 症に対しCD法が行われた。硬膜外カテーテルの先端はT9 自制内・無しの3段階で評価した。痛みが強ければ鎮痛 に留置した。方法:硬膜外カテーテルの挿入は椎体固定手 剤を使用した。 術が終了し硬膜外腔が直視できる時期に、切開創の外側か 【結果】同一手術における2群間の性別、年齢、体重に ら 18G の Touhy 針 で 穿 刺 を 行 っ た 。 薬 剤 は 0.125% 有意差は無かった。臍ヘルニア術後では、痛みの程度は bupivacaine と fentanyl(5 mg/ml)の合剤を用い、術後 仙骨麻酔施行群で有意に軽減していたが、鎮静度は有意 は硬膜外 PCA(初期設定;background infusion 2ml/ 差が無かった。一方鼠径ヘルニア術後では、鎮静度、痛 hour、bolus injection 2ml、lockout time 15min) とし、術 みの程度ともに有意差がみられた。鎮痛剤の使用に関し 後72時間まで鎮痛の有効性、副作用について検討した。な ては臍ヘルニア、鼠径ヘルニアともに有意差は無かった。 お、PCA 使用中はパルスオキシメーターで呼吸抑制の有 【結語】仙骨麻酔は鼠径部、臍高部ともに有効な鎮痛方 無を監視した。結果:硬膜外カテーテルを希望の椎体の高 法であるが、鼠径部でより効果的である傾向がみられた。 さに留置できたので、従来通りの硬膜外麻酔と比較しても 同等の鎮痛効果が認められた。呼吸抑制や悪心、嘔吐、掻 痒感、発疹などの副作用は皆無であった。考察:脊椎外科 手術を受ける患者は術前より呼吸機能が低下していること が多く、術後は疼痛による喀痰排出困難や無気肺となり呼 吸機能が一層低下するため、積極的な術後鎮痛が必要とな る。今回施行した術野からの硬膜外カテーテル留置法は従 来の盲目的穿刺法に比べると短時間で正確にカテーテルの 留置が可能なため、より確実に効果が得られたと思われ た。結論:脊椎外科手術後の鎮痛法として術野からの硬膜 外カテーテル留置法は、穿刺による合併症がなく、かつ十 分に鎮痛効果が得られ有用な方法であると思われた。 - 111 - A—07 病院システム・疼痛管理 A—08 病院システム・疼痛管理 小児漏斗胸患者の周術期における鎮痛法、術後経過につ いての検討 小児心臓手術麻酔におけるくも膜下モルヒネ投与併用に ついての検討 鳥居 圭 1、西脇公俊 1)、鈴木章悟 2)、佐藤光晴 1)、木村 智政1)、島田康弘1) (名古屋大学大学院医学系研究科 麻 酔・蘇生医学講座 1、大垣市民病院 2) 竹内和世、遠山貴之、尾松徳則、石垣敬子、今村 誠、堀 本 洋(静岡県立こども病院 麻酔科) Assessment of perioperative pain management for funnel chest surgery TORII KEI (Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan) Intrathecal Morphine for Pediatric Cardiac Surgery TAKEUCHI KAZUYO 当院では、小児心臓手術の麻酔管理にくも膜下モルヒ ネ投与を併用して早期抜管、術後鎮痛をめざしている。 その効果、副作用等について検討した。[対象]2001年10 月から2002年4月までに根治術が予定された重篤な合併 【目的】小児漏斗胸患者に対する手術(主に胸骨挙上 術)の周術期における鎮痛法と術後経過について retrospective に検討した。 【対象】最近3年間に当院にて漏斗胸手術を施行された 12 歳までの患者 42 名(男子 31 名、女子 10 名)、平均年齢 症のない ASD、VSD、ECD の 23 症例である。[麻酔法] 麻酔導入後脊麻を行い、塩酸モルヒネ10 mg/kg+ブピバ カイン (5例)、塩酸モルヒネ5 mg/kg+ブピバカイン(12 例)、塩酸モルヒネ 5 mg/kg のみ(4例)をくも膜下腔に 投与した。術中維持にはフェンタニル、吸入麻酔薬、プ 5.6 歳(1 ∼ 12 歳)、平均身長 114cm、平均体重 19.7kg。 ロポフォール等を使用した。[結果]術中に使用したフェ 【方法】周術期管理に硬膜外麻酔を使用した群(1 群; ンタニルは平均8.3 8mg/kgであった。手術終了から抜管 21名)と、使用しなかった群(2群;21名)とに分け、術 後経過と鎮痛剤の使用状況について比較検討した。また までの時間は平均 46.5 分で、17 例(73%)が手術室で抜 管した。鎮痛薬として術後平均 18.5 時間後に塩酸ペンタ 1 群をモルヒネを使用した(1a 群;17 名)と、使用しな ゾシンを投与されていた。合併症は悪心・嘔吐 12 例 い(1b 群;4名)に、2 群を鎮痛剤の定期処方されてい (52%)、掻痒感6例(26%)、興奮1例(4.3%)だった。重 た(2c 群;6名)と、定期処方のなかった(2d 群;15 名) 症例では嘔吐に対して塩酸グラニセトロンを、掻痒感に のサブグループに分けて鎮痛薬の使用状況を比較した。 対してヒドロキシジンを投与した。誤って塩酸モルヒネ 統計にはStudent’s t検定、Mann-Whitney検定、Kruskal- 50 mg/kg(予定投与量の 10 倍)が投与された1例は抜管 Wallis 検定を用いた。 後呼吸回数の低下が見られ、塩酸ナロキソンを投与した。 【結果】年齢、性別、身長体重、術後在院日数、麻酔時 脊麻時に出血した1例では投与を中止して手術を施行し 間、手術時間、臨時鎮痛薬の総投与回数と投与期間、術 たが出血による合併症はみられなかった。[考察]術後 後酸素投与期間、術後無気肺合併率について1群と2群 悪心・嘔吐(PONV)の発生は投与量の差による違いは を比較したところ、臨時鎮痛薬の総投与回数(1.7±2.9回 ないが、鎮痛効果がほぼ同様であることを考えれば、モ vs4.1 ± 3.1 回)のみに有意差(P < 0.05)を認めた。サブ ルヒネのくも膜下投与量は 5 mg/kg が適量と思われる。 グループにおける臨時鎮痛薬の総投与回数は1a群:1.5± 呼吸抑制が見られたのは10倍量を投与された症例のみで 2.6 回、1b 群:2.2 ± 3.9 回、2c 群:2.7 ± 2.0 回、2d 群:4.7 5 ∼ 10 mg/kg では呼吸抑制はなかった。また、ブピバカ ± 3.3 回であり 1a 群と 2d 群間のみに有意差を認めた。1a インを投与した方が手術開始時の循環動態の変動が少な 群のモルヒネ量は 2.6mg ± 1.0mg で、溶剤は 0.5% リドカ かったことから、併用する方がよいと思われる。70% 以 インが多く用いられた。麻酔記録を見る限りでは両群と 上が手術室で抜管でき、術後管理が容易になるという大 も、麻酔中トラブルやバイタルの大きな変動はなかった。 きなメリットがある。有効鎮痛時間は長くなったが、モ また、硬膜外穿刺に関する大きな合併症はなかった。 ルヒネの効果が消えた後の鎮痛薬の使用の仕方には今後 【考察】硬膜外麻酔併用により術後の小児患者に対処的 の検討が必要である。 な鎮痛薬投与を減らすことができ、疼痛対策という面で は有用と言えた。硬膜外麻酔を用いない時は、鎮痛薬の 定期処方をした方が、より質の高い術後管理ができると 思われた。また 1 群でモルヒネを加えた方が鎮痛薬の投 与回数が少ない傾向にあった。 - 112 - A—09 病院システム・疼痛管理 A—10 病院システム・疼痛管理 小児の扁桃摘出術の術後痛に対する PCA の使用経験 持続フェンタニール投与による小児外科手術の疼痛管理 新堀博展 1、三輪高明 2)、上島賢哉 1)、広木公一 1)(神奈 川県立 こども医療センター 麻酔科1、横浜南共済病院 麻酔科 2) 神取慶治1、小松 徹2) (総合病院 中津川市民病院 1、愛 知医科大学 麻酔科学講座 2) Pain treatment with patient controlled analgesia after tonsillectomy in children SHIMBORI HIRONOBU (Department of Anesthesiology, Kanagawa Children's Medical Center, Kanagawa, Japan) Postoperative pain manargement in children by fentanyl infusing KANDORI MICHIHARU (Nakatsugawa Citizen Hospital) 目的:社会環境に対応する能力が未熟なために自分の 意思を思うように伝えることは十分にできない小児にお 【目的】扁桃摘出術は比較的術後痛が強いが、術後の出 いて持続フェンタニール投与が術後疼痛管理として有効 血や浮腫による気道閉塞の危険性があり、麻薬などの強力 かを検討した.対象:愛知医科大学附属病院において術 な鎮痛薬の使用は慎重でなくてはならない。そのため非ス 後ICU入室を予定していた漏斗胸手術4例,脊椎手術4 テロイド抗炎症薬(NSAID)やアセトアミノフェンが一 例,開腹手術1例,開頭および脊椎同時手術症例1例の 般に使用されているが、これらのみでの疼痛管理は困難な 小児外科手術患者10症例について主治医および患者家族 場合もある。そこで小児でPCAにより、少量のモルヒネ に説明し同意を得て行った.方法:フェンタニールは麻 を適量投与による術後鎮痛を試みた。【方法】 5-12歳の扁 酔導入時に 2 mg/kg を静注した後に持続投与を開始し 2 桃摘出術を受ける健康な小児を対象とし、術前に患者と介 護者にPCAポンプの説明をした。麻酔は、導入、維持と mg/kg/hrの一定量で継続投与させた.フェンタニールの 投与は術後 48 時間または ICU 退室4時間前まで投与し も吸入麻酔薬を使用し、他の鎮痛薬は使用しなかった。 た.持続投与中のフェンタニール血中濃度をICU入室時, PCA の薬液内容は、生理的食塩水 100ml に塩酸モルヒネ 24時間後およびICU退室時の3回の採血を行い,採取後 1mg/kg を加え、設定はボーラス投与1回 2ml(塩酸モル 血清分離をし -70℃で凍結保存した後に測定を行った. ヒネ 20 mg/kg に相当)、ロックアウト時間 10 分とし、持 術後の鎮痛レベルとして Ramsey score,鎮静レベルを 続注入は行わなかった。病棟帰室時とその後2、4、6、8、 Bis monitorによって,それぞれ採血時に評価した.また 12、24 時間ごとに、鎮痛スコアー(modified Children’s 心拍変動はICU入室後より連続記録測定し解析した. 結 Hospital of Eastern Ontario Pain Scale(mCHEOPS))、 果:鎮静状態は,Ramsey sedation score から見ると入室 鎮静スコアー、呼吸数、血圧、嘔吐回数を記録した。また 後より3以上を示し経過中も3∼5とよくコントロール SpO2 を持続的に測定し、SpO2 < 95%となった場合には されていた.また,BISindex値から見た鎮静状態は70∼ 酸素を投与した。30分以内に2回以上嘔吐があった場合、 90を示した.心拍変動の日内リズムでは1例について検 制吐剤を使用した。また退院前日に、疼痛コントロールの 討すると,術前は睡眠時,覚醒時に認めていた心拍の日 満足度に関するアンケートを患者および介護者に行った。 内変動が術後は消失していた.心拍変動は術後2病日に 【結果】男児7人、女児5人の計12人に使用した。年齢は 回復を傾向を示した.また,日内リズムをRR間隔で見て 平均 89 ± 19ヶ月、体重は 26.7 ± 7.9kg であった。疼痛コ みると術後1病日では,睡眠時と覚醒時の平均RR間隔に ントロールは良好に行われ、観察期間中 mCHEOPS は平 差はなかった.術後2日病日は,平均RR間隔は覚醒時に 均2以下であった。過度の鎮静、呼吸抑制を認めた症例は 比べて睡眠時は延長しているが統計上の有意差はなかっ なく、酸素を必要としたのは過度の肥満を合併した1例の た.血液中のフェンタニール濃度は入室時の血中濃度が みであった。また嘔吐は5人(41.7%)に認め、この内3 2.3ng/ml と高かったグループと 1.5ng/ml と低かったグ 人にドンペリドン坐薬を使用した。退院前日に行ったアン ループに分かれた.両群とも 24 時間後の血中濃度は ケート調査では全ての介護者がPCAによる鎮痛に満足ま 1.5ng/ml を示し投与中止4時間後の ICU 退室時には たはやや満足と答え、患者本人に行ったアンケートでは9 0.5ng/mlを示していた.結語:小児においてフェンタニー 人(75%)が、次回手術するとしたら同じ鎮痛法を選択し ルの持続投与は術後疼痛コントロールに有効であった. たいと答えた。【結論】小児扁桃摘出術後の鎮痛に麻薬を BIS indexは睡眠や覚醒などの意識状態を的確に判断でき 用いた PCA は安全に使用でき、また満足度も高かった。 た. - 113 - A—11 病院システム・疼痛管理 B—01 気道管理1 思春期のターミナルケアの一例 気管支ブロッカーを用いて片肺換気を行った症例の検討 臼井要介 1、桜田育子 1)、森田正人 1)、蕨 謙吾 1)、花形 和之 1)、堀本 洋 1)、北島敏光 2)(静岡県立こども病院 麻酔科 1、獨協医科大学病院 麻酔科学教室 2) 永田 昇 1、辻井健二 1)、藤井 崇 1)、中尾美保 1)、中田 (大阪市立総合医療センター 小児麻 一夫1)、吉本圭一2) 酔科 1、淀川キリスト教病院麻酔科 2) A case of ephebic terminalcare USUI YOSUKE One-lung ventilation using Fogarty catheter as a bronchial blocker in pediatric patients NAGATA NOBORU (The Department of Pediatric Anesthesia, Osaka General Hospital, Osaka, Japan) 横紋筋肉腫の再発により切除不能となった思春期の少 女のターミナルケアを経験したので報告する。 横紋筋肉腫 に対して摘出術が行われフォローされていた。骨盤内に 腫瘍が再発し再手術が行われたが、ストーマ造設のみと なった。術後一ヶ月経過した後、腰下肢痛が出現し、 NSAIDs の頓用が処方されたが疼痛コントロールはでき なかった。MSコンチン20mg分2が処方され、激しい吐 気と嘔吐が出現したため、全ての内服を拒否するように なった。しかしさらに痛みが増強したため麻酔科に疼痛 管理の依頼があった。痛みの部位は左下肢と腰腹部で安 静時 VAS は 80mm、体動時 VAS は 90mm、夜間は 15 分 毎に覚醒してしまう状態だった。余命は半年から一年と みなされ最終目標を在宅医療とし、WHO 方式のがん疼 痛治療にのっとった治療を試みた。 WHO方式のがん疼痛 治療の三大原則は経口、定時、段階的投与である。薬物 の経口投与を拒否している患児に理解してもらうために はやさしく丁寧な説明と同意が必要であった。段階的な 治療目的をクリアするためには薬を飲む必要があること を説明した。次に鎮痛薬の血中濃度を維持するためには 定時投与が必要であることを説明した。最後に弱い鎮痛 薬から始めればひどい副作用も無く痛みが減少すること を説明し同意を得た。 患児は薬物の内服を再開し、副作用 も無く疼痛管理を行うことができた。一時的に外泊も可 能となったが、徐々に経口不能となってきたため持続皮 下注入を行うこととした。大人によく使用する金属の翼 状針を前胸部に刺すことに対し患児は恐怖心を持ち拒否 されたため、翼付き静脈留置カテーテルを使用すること にした。これは刺入部痛も少なく固定しやすいため患児 の納得する治療が行えた。また、アロマセラピーもス トーマの消臭対策と鎮静目的に行い、患児の表情に明る さが戻り熟睡もでき大変有効であると思われた。 成人の胸部手術ではダブルルーメンチューブ(DLT)を 用いた片肺換気がルーチンに行われているが、小児では気 道が狭いため DLT の代わりに様々なカテーテルを気管支 ブロッカーとして用いた片肺換気が行われてきた。当セン ターではフォガティー血栓除去用バルンカテーテル(Fカ テ)を気管支ブロッカーとして用いて片肺換気を行ってい るが、今回はその有用性について検討したので報告する。 対象:最近の5年間にFカテを用いて片肺換気を行った のは22例で、右片肺換気7例、左片肺換気15例あった。年 齢は8月から8歳、男児14例、女児8例で、施行手術は漏 斗胸に対するNuss手術10例、縦隔腫瘍摘出術4例、肺葉 切除術8例であった。術前合併症では1例が人工呼吸器で 管理されていたが、他の症例には異常はみられなかった。 F カテの留置手順:1.麻酔導入後に気管内チューブ (ET)を気管内挿管する。2.気管支ファイバースコープ (BF)でETを選択的に気管支内挿管をする。3.ETの内 腔を通してFカテを気管支内に挿入する。4.Fカテを残 し、ETを抜去する。5.再度ETを挿管する。6.Fカテ の位置を BF で確認する。 術 中 管 理 : 片 肺 換 気 中 は SpO 2 98% あ る い は PaO 2 100mmHg 以上になるように吸入気酸素濃度(FiO2)を調 節した。検討はFカテの留置に要した時間、片肺換気の成 功率、合併症などについて行った。 結果:F カテの留置に要した時間は 10 分以内であった。 片肺換気を断念したのはFカテが手術中に脱落した2例と バルンが破裂した1例であった。片肺換気時に必要とした FiO2 は 0.5 から1であった。術中合併症では Nuss 手術例 で肺損傷2例、心外膜損傷1例、不整脈3例をみた。術後 合併症では無気肺3例、気胸3例、胸水貯留1例がみられ たが、数日で改善した。 考察:肺膿瘍や肺出血、肺嚢胞などの症例に片肺換気が 行われてきたが、最近では手術の容易さの観点から胸部手 術全般に片肺換気が要求されてきた。当センターでは前述 の方法で片肺換気を行っているが、今回の結果より本法は 短時間で留置ができ、成功率も高く、重篤な術後合併症も 少ないことより有用な方法であると思われた。 結論:習熟することでFカテによる片肺換気は安全に行 うことができる。 - 114 - B—02 気道管理1 B—03 気道管理1 Fogarty カテーテルによる分離肺換気が有用であった肺 嚢胞切除術の1症例 Nuss 法の麻酔管理 1 2) 1) 1) 瓦口至孝 、呉原弘吉 、堀内俊孝 、北口勝康 、古家 仁 1) (奈良県立医科大学 麻酔科学教室 1、奈良県立医科 大学 中央手術部 2) One-lung ventilation using a Fogarty catheter for a patient undergoing cystectomy KAWARAGUCHI YOSHITAKA (Department of Anesthesiology, Nara Medical University, Nara, Japan) 長谷川愼一、伊藤正樹、野村明日香、高橋健二(藤枝市 立総合病院 麻酔科) Anesthetic management for the correction of pectus excavatum (Nuss procedure) under video-assistance HASEGAWA SHINICHI (Department of anesthesiology, Fujieda municipal general hospital, shizuoka, Japan) 【症例】5才6ヵ月、男児、身長110cm、体重18kg。出 著明な分泌物が貯留した肺嚢胞切除術に Fogarty カ 生および発達に問題なく、漏斗胸以外に特記すべき所見 テーテルを用いた分離肺換気が有用であった症例を報告 はなかった。また、術前検査でも異常は認めなかった。前 する。【症例】1歳6ヶ月の女児、身長 70cm、体重 9kg。 投薬はミダゾラム 8.5 mgを経口投与した。麻酔は笑気、 【現病歴】生後 3-4ヶ月頃より感冒時に喘鳴が出現しやす 酸素、セボフルラン(GOS)で緩徐導入し、ベクロニウ く、近医にて喘息様気管支炎と診断されていた。1歳 ム1mg投与後、ID5.5mmの気管挿管を行なった。次に 5ヶ月時に熱性痙攣にて近医受診、一旦解熱したが湿性 気管チューブ内に 6Fr のシリコンバルーンカテーテルを 咳が持続し、さらに再度発熱および呼吸困難も出現した 挿入し、透視下に右主気管支内に留置した。術中はGOS ため当院小児科に転院となった。胸部レントゲンおよび 調節呼吸下に適宜バルーンを拡張させて分離肺換気を行 CT にて右肺に直径 6cm 大の niveau を伴う嚢胞像を認め なった。麻酔中の吸入酸素濃度は50%であったが、術中 た。抗生物質・γグロブリン製剤投与により呼吸困難は に低酸素血症や高炭酸ガス血症は認められなかった。手 軽快し炎症反応も軽減したが、依然嚢胞内に大量の分泌 術は 55 分で終了し、抜管後も呼吸状態は安定していた。 物が貯留した状態であり、感染の再燃予防のため嚢胞切 術後疼痛に対して、手術終了前に創部に局所麻酔薬を浸 除術が予定された。【麻酔経過】入室 30 分前にミダゾラ 潤させ同時にジクロフェナク座剤6.25mgを使用した。手 ム0.5mg/kgを経口投与した。麻酔導入は酸素6L/min、セ 術終了後よりペンタゾシン 30mg およびフルルビプロ ボフルラン 5% による緩徐導入で行い、内径 4mm の フェンアキセチル100mgを24時間持続注入し、加えてジ チューブを気管挿管した。麻酔維持は酸素、空気、セボ クロフェナク座剤 6.25mg を8時間毎に使用した。なお、 フルラン、フェンタニルおよびベクロニウムで行った。 術中・術後に気管支損傷、皮下気腫、気胸、無気肺、呼 術中に分離肺換気を行うために、気管挿管後に 4Fr の 吸状態の悪化などはなかった。【考察】Nuss 法(漏斗胸 Fogarty カテーテルを声帯と気管チューブの隙間から挿 手術)の麻酔管理では、術中はバーの胸腔内挿入時に肺 入した。手術体位を確保後、気管支ファイバースコープ 損傷を防ぐことや挿入時の不整脈や心血管損傷に注意す 下に Fogarty カテーテル先端を右主気管支に留置し、右 ることが重要であり、術後は疼痛管理が問題となる。前 主気管支がブロックできることを確認した。気管挿管後 者に対して Fogarty カテーテルや導尿用カテーテルを用 より分泌物が多く、左片側換気中は吸入酸素濃度(FIO2) いて分離肺換気を行なった報告が多い。今回使用したシ 1.0、用手換気にて pH 7.18、PaO2 123mmHg、PaCO2 リコンバルーンカテーテルは気管内チューブを通して透 71mmHgであった。嚢胞切除後は嚢胞の圧迫による中下 視下での確認が容易であり、柔軟性にも富むため気道損 葉の無気肺が解除され、両肺換気を再開し FIO2 0.6、用 傷の危険性が少ないこと、さらに低価格であることから 手換気にてpH 7.28、PaO2 104mmHg、PaCO2 48mmHg も有用と思われた。また術後疼痛管理には硬膜外麻酔が であった。術後は挿管のままICUに移送し、翌日に抜管 推称されているが、鎮痛薬の持続静脈内投与と座剤の併 できた。【考察および結語】小児において片側換気する方 用による管理も可能と思われた。【結語】Nuss 法に対し 法はいくつかあるが、今回の症例のように片側肺に感染 てシリコンバルーンカテーテルを用いた分離肺換気と各 を伴う分泌物が貯留している場合には、Fogarty カテー 種鎮痛薬により麻酔管理を行なった。 テルを使用して患側をブロックすることが、健側肺への 分泌物の垂れ込み防止に有用であると考えられた。 - 115 - B—04 気道管理1 B—05 気道管理1 胸腔鏡補助下胸骨挙上術(Nuss 法)の麻酔管理 新生児胸腔鏡下手術において胸腔内加圧による低酸素血 症が見られた一症例 六角由紀、大槻 学、村川雅洋(福島県立医科大学 医 学部 麻酔科) Anesthetic Management for minimally invasive of pectus excavatum ROKKAKU YUKI (Department of Anesthesiology, Fukushima Medical University, Fukushima, Japan) 1998 年に報告された漏斗胸に対する術式(Nuss 法)は 石川和由、手塚正智、恵川宏敏、濱口眞輔、奥田泰久、北 島敏光(獨協医科大学 麻酔科学教室) A case Hypoxemia by Compression in Cavum Thoracis Was Seen in Art Poor at Neonate Thoracoscope ISHIKAWA KAZUYOSHI (Department of Anesthesiology, Dokkyo University School of Medicine, Tochigi, Japan) 肋軟骨切除、胸骨骨切りを行わず、両側の胸腔と縦隔を 通し胸骨の後側に横走させたプレート(ペクタスバー) 近年,低侵襲であり術後回復が早い鏡視下低侵襲手術が を回転することにより胸部の陥凹を矯正する手術法であ 乳幼児に対してもおこなわれているが,今回われわれは新 る。今回我々は 1999. 7 ∼ 2002. 1 の間に6症例の漏斗胸 生児に対する胸腔鏡下手術において胸腔内加圧による低酸 に対してNuss法に準じた胸骨挙上術の麻酔管理を行った 素血症が発生した1例を経験したので報告する。【症例】 ので報告する。【症例】年齢は 10 ∼ 23 歳で漏斗胸以外の 生後 12 日,女児。身長 51.5cm,体重 4602 g【既往歴】39 重篤な合併症を認めなかった。麻酔は硬膜外麻酔を併用 週6日,3304g,正常分娩にて出生。出生前エコーで胎児 した全身麻酔で行い、全例両側肺換気で行った。術中合 の胸腔内異常陰影を指摘されていたため,正常分娩にて出 併症として症例3(19 歳男性)でプレート挿入時に一時 生した後にNICUへ入室となった。この時点で特記すべき 換気を止めたことで、挿入後酸素飽和度の低下が認めら 臨床症状は無かったが,CT と MRI にて 5 × 3 cm の右後 れ速やかな改善が得られず、無気肺を生じたことが疑わ 縦隔腫瘤を認め,AFP195,000 ng /mlと高値であったこ れた。また症例6(10 歳女児)でイントロデューサーを とから奇形腫が疑われ,生後 12 日目に外科的に摘出術が 胸腔内に挿入時上室性期外収縮、心室性期外収縮が生じ 予定された。【麻酔経過】麻酔導入チアミラールおよび た後、内視鏡ポートから大量出血があり緊急開胸術とな フェンタニル,ベクロニウムで行い,酸素,空気およびセ り右房損傷修復術が施行された。イントロデューサーに ボフルランの吸入とフェンタニルの間欠投与にて麻酔を維 より心臓が捻転し、下大静脈右房接合部が亀裂したと考 持した。人工呼吸は用手的に行い,FiO2 = 0.5 で SpO2 は えられた。術後の合併症として2例に両側気胸、1例に 100%を維持し,左側臥位にて第6肋間より直径2mmの 無気肺、1例に皮下気腫が認められた。症例3で術後17 胸腔鏡用ポートが挿入され,視野を得るために 4 cmH2O 日目にプレートの偏位が認められ、再固定術が施行され の CO 2 を用いた胸腔内加圧が行われた。その直後より た。術後鎮痛のために持続硬膜外麻酔を使用したが、胸 SpO2は低下し最低値が90%となった。この時点での動脈 郭を物理的に挙上することによる胸部の鈍痛が強くジク 血ガス分析で PaO 2 値は 52.7mmHg まで低下しており, ロフェナク坐薬等を加えて使用する必要があった。【考 FiO2 = 1.0 かつ PEEP 5 cmH2O に換気条件を変更したと 案】Nuss法は侵襲が少なく出血量もほとんどなく、手術 ころ,SpO2は95%まで回復した。その後,著明なSpO2の 時間の短縮も可能で整容的にも優れた術式とされ最近注 低下はみられなかったために手術が開始され,腫瘤の摘出 目を集めている。しかし、合併症として従来の気胸、創 が完了して胸腔内加圧が終了されるとともに SpO2 は 100 感染、肺炎に加え、本法特有のものとしてプレートの圧 %へと速やかに上昇した。手術終了時にはSpO2値,動脈 迫による潰瘍、プレートの偏位、心室穿孔などが報告さ 血ガス分析値はともに、胸腔内加圧前と変わらない数値を れている。我々の経験した症例においても術中に右房損 示したため,抜管し帰室した。【考察および結語】今回わ 傷という重篤な合併症をきたした。また術後の合併症も れわれが経験した症例のように,術視野を得ることのみが 決して少ないものではない。今後本法を安全に施行する 目的である胸腔内加圧により,新生児では容易に低酸素血 ためには可能な限り分離肺換気を使用しイントロデュー 症を生じる危険性があるため術中管理の困難性と低侵襲手 サー挿入時に良好な視野を得ること、操作中の不整脈発 術の有益性をよく検討する必要性があると思われた。 生には厳重な注意を払うべきことが必要と考えられた。 - 116 - B—06 気道管理1 B—07 気道管理1 胸腔鏡下手術における換気方法の検討 左肺分画症の周術期管理 原 哲也、安岡朝子(群馬県立小児医療センター 麻酔 科) 室井賢一(長野県厚生連佐久総合病院 麻酔科) Methods of ventilation in pediatric patients undergoing thoracoscopic surgery HARA TETSUYA (Department of Anesthesia, Gunma Children Medical Center, Gunma, Japan) Anesthetic Management of Left Pulmonary Sequestration MUROI KENICHI (Department of Anesthesiology, Saku Central Hospital) 症例:4歳2ヶ月男児、身長 104cm 体重 16kg、2001/ 低侵襲である内視鏡下手術は小児外科領域においても 12/19∼22肺炎のため入院、退院時の胸部XP, CTで肺分 積極的に導入されるようになってきている。胸腔鏡下の 画症を指摘され、2002/1/9 外科受診 1/22 手術となった。 手術は分離肺換気の成否が大きなポイントとなる。現在 麻酔:入室2時間前にジアゼパムシロップを経口投与し までに行われた9例について術中の換気方法を検討した。 笑気酸素セボフルランで緩徐導入し、入眠後静脈ライン 症例は肺腫瘍1,縦隔腫瘍3,肺分画症2,乳び胸水 確保、硫酸アトロピン、ベクロニウムで気管挿管した後、 1,横隔膜弛緩症1,胸壁リンパ管腫1,であり、腫瘍 右側臥位にし、Th9/10 より硬膜外カテーテルを挿入し、 摘出,分画症摘出,胸管結紮,横隔膜縫縮,胸膜癒着術 1%メピバカイン 2cc テスト注入後 0.75%ロピバカイン がそれぞれに行われた。分離肺換気は13歳と15歳の症例 6cc注入した。術中は笑気酸素プロポフォールベクロニウ にブロンコキャスを用いた他は Fogarty catheter による ム + 硬膜外麻酔で維持した。ブロッカーによる分離肺換 選択的気管支閉塞(以下 SBO)を試みた。気管チューブ 気は行わなかったが術中患側からの分泌物の垂れ込みは を通してブロッカーである Fogarty catheter をブロック チュ−ブの方のみで、健側には無かった。手術終了後は 側気管支に挿入、気管支鏡でバルーンの位置を確認、聴 100%酸素としリバース後抜管した。術後はICU入室し第 診器による呼吸音の聴取で適切なSBOとなっているかど 1病日硬膜外を抜去、第2病日ドレーン抜去後一般病棟 うかを判断した。2ヶ月 2.27kgの乳び胸水例はSBOが不 へ転棟し、第7病日退院した。術後疼痛は、硬膜外持続注 可能、1歳 4.24kgの横隔膜弛緩症例は右SBOで経皮酸素 入を 0.75%ロピバカイン 12cc、生食 25cc、フェンタニー 飽和度の低下が著しく、やむなく両肺換気で手術を行っ ル 0.3mg、ドロペリドール 1.25mg の混合液 2cc/h で行っ た。この2症例を除いては良好な換気と術野が得られた。 た。発熱のためアセトアミノフェン坐薬を用いたが追加 気管チューブを通して Fogarty catheter を挿入するた の鎮痛剤は使用しなかった。考察:今回Fogatyカテーテ め、チューブ内径は4.0mm以上が望ましい。また乳児で ルによる分離肺換気の用意はあったが、1.現在炎症は は体位変換などによりブロッカーのバルーンが逸脱しや 収まっており、対側への垂れ込みは少ない。2.Fogaty すい。手術側が dependent lung である場合は SBO によ カテーテルのバルーン圧で気管支の損傷の可能性がある。 り酸素化が不十分となることもある。 3.挿管チューブの内径が狭いため気道狭窄や窒息の危 標準的な発育をしている1才以上の症例の胸腔鏡下手 険性がある。と考え分離肺換気は行わなかった。硬膜外 術においては、一側肺換気により良好な視野が得られ、 麻酔及び術後鎮痛の適用(年齢、症例、量、期間など)に 酸素化にも問題はなかった。 ついて議論すべき点もあるが、術中術後管理は良好に行 い得た。課題:1分離肺換気の是非2小児の硬膜外麻酔 の適応3術後鎮痛法。結語:小児の肺分画症において笑 気酸素プロポフォール及び硬膜外麻酔・鎮痛で周術期管 理を良好に行う事が出来た。しかしいくつかの課題が 残った。 - 117 - B—08 気道管理1 B—09 気道管理1 術前の気道の炎症症状が原因と考えられた術後胸部レン トゲン異常を認めた症例 術前のバンコマイシン投与により難治性気管支攣縮をき たした1症例 梁 権守 1、野田啓一 1)、中本あい 2) (大阪府済生会 富 田林病院麻酔科 1、大阪市立大学医学部麻酔集中治療学 教室 2) 浅野直子、矢野華代、西脇公俊、木村智政、島田康弘 (名 古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座) A case report of postoperative chest X-ray abnormality associated with preoperative chronic airway inflammation RYO KENSH (Anesthesia Department of Tondabayashi Hospital, Oosaka, Japan) Preoperative intravenous administration of vancomycin induced bronchospasm during anesthesia ASANO NAOKO (Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan) 【はじめに】バンコマイシン(VCM)は、急速注入や高 濃度溶液を投与するとヒスタミン遊離現象(red man 症 (症例)8才、女児.身長120cm、体重21kg.左上腕骨 顆上骨折にて全身麻酔下での経皮的ピンニングが予定さ れた.患児は1才より気管支喘息の診断で治療を受けて いる.一週間前に溶連菌感染症に罹患し、抗生物質を内 服していた.術前診察時に、軽度の喘鳴を認めた.母親 の言では喘息の状態は安定しており、小児科医の術前評 価でも、手術に問題ないとのことであった.(麻酔経過) 前投薬は投与せず.入室後、呼吸音を確認後、ケタミン、 フェンタニル、プロポフォール、ベクロニウムを用いて 急速導入した.酸素、亜酸化窒素、セボフルランを用い てマスク換気し、気管挿管した.以後、吸入麻酔を中心 に麻酔維持した.手術中、一時的に喘鳴があるも呼吸音 は、ほぼ清明であり、酸素飽和度もFiO2 が0.5で100%を 維持していた.手術は20分で終了したが、自発呼吸が出 現した頃より、左右の呼吸音の低下を認め、喘鳴が出現 した.気管内吸引にて多量の分泌物を吸引したが、呼吸 音は改善しなかった.胸部レントゲンで、両側肺上葉を 中心に透過性の低下が認められた.分泌物の貯留が原因 と考え、理学療法と気管内吸引を繰り返して呼吸音の改 善を認めた.再度の胸部レントゲンでは、左上葉の所見 は著明に改善し右肺の所見も、やや改善していた.抜管 後は空気呼吸で酸素飽和度が96%であった.帰室後、湿 性咳嗽が持続したが、翌日の胸部レントゲン写真では、 異常陰影は消失していた.術後2日目に患児は軽快退院 した.(考察)今回、短時間の手術にもかかわらず、手術 中の気道分泌亢進と呼吸音の変化、及び術後の胸部レン トゲンで両肺野の異常陰影を認めた症例を経験した.喘 息の患児では内服や吸入療法で発作をコントロールされ ていても、慢性の気道炎症が基礎にあり、手術の一週間 前に罹患した溶連菌感染が気道の炎症を更に修飾した可 能性がある.このような状況での気管挿管による全身麻 酔が、今回のエピソードの誘因になったと推察された. 慢性の炎症性変化が気道に存在する症例に全身麻酔する 際には、小児科との連携も含め、手術時期の決定、術中 の麻酔管理方法について、より慎重なアプローチが必要 であると反省された. 候群)を生じる。このため、ヒスタミン遊離作用のある全 身麻酔薬との併用には注意が必要であり、麻酔開始1時間 前には VCM の点滴静注を中止することが推奨されてい る。今回、小児患者において、全身麻酔開始1時間前に投 与中止したが、難治性気管支攣縮をきたした1症例を経験 したので報告する。【症例】12歳、女児、身長151cm、体 重43kg、潰瘍性大腸炎による難治性痔瘻に対し、腸瘻造 設術を行った。便培養で MRSA 陽性のため、病棟で、手 術開始2時間前にVCM9mg/ml溶液を100ml/時間で投与 した。投与開始後 50 分頃から red man 症候群を認めたた め、直ちに投与を中止した。バイタルサインに異常はな く、手術室入室時、発赤は消失していた。麻酔は、ケタミ ン、ベクロニウムで導入し、維持は酸素 - 空気 - セボフル ランで行った。気管内挿管直後より、気道内圧上昇、両肺 野でのWheezingを聴取した。メチルプレドニゾロン、ア ミノフィリンの投与、高濃度セボフルランにて対応した が、手術終了直前まで気管支攣縮が持続した。手術終了 後、呼吸状態は改善し、抜管した。術後は特に問題なかっ た。【考察】小児の VCM 投与による発疹や皮疹の発現率 は成人の約3倍であるが、症状は軽度である場合が多いと いわれている。Jan Sahaiらは、VCM投与によりred man 症候群を生じた患者の血中ヒスタミン濃度を測定した。一 時間かけて投与したところ、血中ヒスタミン濃度は、約3 倍に上昇したが、終了一時間後には投与前に戻ったと報告 している。今回、麻酔導入時はVCM投与終了約1時間後 であること、小児での半減期は成人の約半分であることか ら、VCMの血中濃度は上限値以上ではなかったと推察さ れる。麻酔中に生じた難治性気管支攣縮は、術前から生じ た気道過敏性によるものではなく、VCMと全身麻酔薬の 相互作用により過剰のヒスタミンが遊離したことによると 考えられた。【結語】バンコマイシン投与後における全身 麻酔薬の投与には、注意が必要である。 - 118 - B—10 気道管理1 C—01 合併症・モニター・技術開発 小児巨大縦隔腫瘍患者の麻酔管理 一般病院における小児のインシデント発生率に対する年 齢の影響 谷口晃啓、春名純一、木内恵子、宮本善一、平尾 収、北 村征治(大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科) 廣川 満、伊藤 洋、洪 淳憲、堀場 清、小松 徹 (愛知医科大学 医学部 医学科 麻酔科学講座) Anesthetic management of a pediatric patient with giant mediastinal tumor TANIGUCHI AKIHIRO 巨大縦隔腫瘍患児において最初の麻酔管理で換気不全 Anesthesia incident report study in pediatric patients in AMU-the influence of age HIROKAWA MITSURU (Department of Anesthesiology, Aichi medical University, Nagoya , Japan) に陥ったが、化学療法による腫瘍縮小後、安全に管理で きた症例を経験した。【症例】6 才 1 カ月の男児、身長 【はじめに】2000 年6月から 2002 年3月までの愛知医 117cm、体重 20.5kg。現病歴:2002 年 4 月上旬より咳嗽 科大学附属病院麻酔科管理症例のインシデント報告を検 が出現し5月7日には呼吸困難、喘鳴、軽度の顔面浮腫 討した。インシデントの内容を循環器系、呼吸器系、備 が認められた。呼吸困難は仰臥位で増悪し、座位または 品・機器関連、その他に分類した。年齢別に検討したと 右側臥位で軽減した。CT検査では前縦隔を占拠する巨大 ころ、65歳以上では循環器系のインシデントが多かった 腫瘍が気管下部から左右の主気管支を前後に圧排し、ま のに対し、13 歳未満では呼吸器系のインシデントが多 た上大静脈は完全に閉塞していた。治療方針決定のため かった。小児においては耳鼻科手術における気管内 の腫瘍生検を翌日依頼されたが、気道狭窄症状が強いた チューブの閉塞、固定不良、換気不良、高二酸化炭素血 め全身麻酔施行を危険と判断し、腫瘍縮小化のための化 症、片側挿管、事故抜管などの気道トラブルが多いため 学療法を優先した。プレドニゾロンを投与し症状の改善 と思われた。(第 49 回日本麻酔科学会発表)今回さらに をみた 2 日後、腫瘍生検が予定された。麻酔経過:100% 13歳未満の年齢層を6歳未満と6歳以上13歳未満に細分 酸素吸入下にケタミン20mgを2回に分けて静注した。傾 し、小児におけるインシデント発生率に対する年齢の影 眠状態でセボフルラン吸入を開始し、マスクによる補助 響を検討した。インシデント件数は延べ件数とした。 【結 呼吸が可能であることを確認してから吸入濃度を徐々に 果】麻酔科管理症例数は6歳未満が 502 症例、6歳以上 増加した。口腔内分泌物を吸引したところ、突然自発呼 13歳未満が323症例であった。以下、( )内に各年齢層 吸が停止しマスク換気も困難となったため、内径5.5mm における麻酔科管理症例のインシデントの発生率を示す。 のチューブを気管挿管した。すぐに用手換気を試みたが 6歳未満のインシデント件数は 47 件(9%)であった。こ 全く換気不能であった。突然の自発呼吸停止を息こらえ のうち循環器系は3件(6%)、呼吸器系は 14 件(30%)、 と判断しベクロニウム2mgを静注したが換気は全く不可 備品・機器関連は 14 件(30%)、その他 16 件(34%)で 能で、SpO2は低下した。ただし徐脈には至らず、数分後 あった。6歳以上 13 歳未満のインシデント件数は 36 件 用手換気がなんとか可能になった。セボフルランを中止、 (11%)であった。このうち循環器系は 2 件(6%)、呼吸 筋弛緩を拮抗して麻酔から覚醒するのを待ったが、その 器系は 16 件(44%)、備品・機器関連は 8 件(22%)、そ 間にも2度数分間の換気不全に陥った。およそ 100 分後 の他 20 件(56%)であった。【結語】当教室におけるイン に自発呼吸が確立し抜管後ICU に入室した。なお、手術 シデント報告では、年齢層6歳未満と6歳以上13歳未満 室での体位は終始右側臥位であった。術後よりビンクリ のインシデント発生率に有意な差はなかった。 スチン投与による強力な化学療法を開始し、症状が軽減 し体位変化による増悪が消失した3日後、腫瘍生検を全 身麻酔で安全に行うことができた。【考察】呼吸器症状を 伴う巨大縦隔腫瘍患者では、麻酔薬や筋弛緩薬投与によ り狭窄症状の増悪や気道の完全閉塞を惹起することがあ る。本症例でも最初の全身麻酔導入により重篤な換気不 全に陥ったが、化学療法による腫瘍縮小後には安全に管 理しえた。臨床症状を含めた術前評価が最も重要で、狭 窄症状が強い場合、安易な鎮静や麻酔薬使用は避けるべ きである。 - 119 - C—02 合併症・モニター・技術開発 C—03 合併症・モニター・技術開発 名古屋大学医学部附属病院における麻酔中に発生したオ カーレンス報告の検討 小児カテコラミンルートに関するトラブルの原因とその 対策:ロック付きシリンジと三方活栓の接続について 矢野華代、西脇公俊、佐藤栄一、佐藤光晴、木村智政、島 田康弘(名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医 学講座) 高野碧年 1、西脇公俊 1)、鈴木章悟 2)、矢野華代 1)、佐藤 栄一 1)、佐藤光晴 1)、木村智政 1)、島田康弘 1) (名古屋大 学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座 1、大垣市民 病院 2) An analysis of anesthetic occurrence reports in Nagoya University Hospital YANO KAYO (Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan) 【目的】当院では、麻酔中に生じた危機的状況(偶発症、 すなわち心停止、高度低酸素血症、高度低血圧)を含め Disconnection of IV route with Luer-lock syringe and stopcock for catecholamine administration in a pediatric patient TAKANO HEKITOSHI (Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan) た呼吸器系(開口障害、挿管困難、低酸素血症、高炭酸 ガス血症、喉頭痙攣、気管支痙攣、肺水腫、誤嚥、再挿 管)、循環器系(ショック、高血圧、心筋虚血、不整脈、 徐脈) 、代謝系 (高体温、低体温、悪性高熱、シバリング) 、 神経系(覚醒遅延、運動末梢神経障害、知覚末梢神経障 害、硬・脊麻酔効果不十分、硬膜穿刺)、外傷(眼、歯、 顔面、口腔、熱傷) 、その他 (機械トラブル、予期せぬICU 入室)の出来事(オカーレンス)に関して、全症例でそ の有無についてデーター入力することを実施している。 今回、そのデーターベースに基づいて 2000 年1月から 2002年5月までのオカーレンス発生率とその内容を年齢 別に調査し、小児における特徴を検討したので報告する。 【方法】1ヶ月未満、1ヶ月∼1歳未満、1∼6歳未満、 6∼15歳未満、15歳以上に分類し、調査した。【結果】オ カーレンス発生率は、全体では10.8%で、年齢別では15.1 %、13.3%、6.1%、5.9%、11.7%であった。15 歳未満で は、呼吸器系が最も多く、43.2%であった。中でも低酸素 血症と高炭酸ガス血症の発生が最も多く、呼吸器系の 55.8%を占めた。また、麻酔が原因で生じたと考えられる 偶発症はなかった。15 歳以上では循環器系が最も多く、 45.1%であったが、呼吸器系は 11.2%であった。【考察】 オーストラリアでの偶発症に関する調査では、小児は成 人より呼吸器系で有意に多かったと報告している。当院 でも同様の結果であり、ヒューマンエラーである導入時 や抜管時での気道管理や低換気に関連した低酸素血症や 高炭酸ガス血症の発生が多かった。特に、小児(15 歳未 満)の中でも、1歳未満のオカーレンス発生率は1歳以 上の約2倍であり、呼吸器系に関するものが約半数で あった。小児麻酔管理では、呼吸器系の管理に十分注意 する必要があると考えられる。【結語】当院での小児にお けるオカーレンス発生は、呼吸器系に関連した報告が最 も多く、特に 1 歳未満では発生率が高いため十分な態勢 の下での麻酔管理が必要である。 【はじめに】カテコラミンを確実に投与するため、当院 ではロック付きシリンジと三方活栓、耐圧延長チューブを 使用している。今回我々はシリンジと三方活栓の接続部の トラブルを経験し、その原因と対策について検討したので 報告する。【症例】ICU でカテコラミンが投与されている 小児が手術となった。術中シリンジを交換後、しばらくし て血圧が低下した。ルートを確認すると、ロック付きシリ ンジと三方活栓の接続部より薬液が漏れていた。接続部に 緩みは無かったので確認のため接続部を外してみるとねじ 切られた筒先が三方活栓に埋まっており、ルート全体の交 換を余儀なくされた。初めの交換時に筒先の一部に断裂を 生じ、そこから薬液が漏れていたと推察された。【考察】 当院ではシリンジはA社で統一されている。三方活栓は手 術室ではA社を採用しているが、ICUではB社のモニタリ ング用三方活栓が採用されていた。A社ロック付きシリン ジとA社三方活栓の組み合わせでは、360度回転させると ぴったり接続できるが、A社シリンジとB社三方活栓の組 み合わせでは270度の回転でよく、それ以上回すとシリン ジ筒先の破損が起こる。A社同士を組み合わせる要領(手 術室での通常操作)でA社シリンジとB社三方活栓を接続 するとトラブルが発生することがわかった。ロック付きシ リンジや三方活栓について JIS、ISO 等で規格が定められ ているが、メーカーにより細部は異なっているため、一見 問題なく接続できる組み合わせでも、使用法等によっては トラブルが発生する。小児に限らず広く院内全体の使用状 況を見直し、複数社の製品が混在するシステムが今回のト ラブルの一因と判断し、三方活栓を統一する対策をとっ た。【結語】小児カテコラミンルートに関するトラブルの 原因として、複数社の製品が採用されているシステムが一 因とわかり、一種類に統一する対策をとった。小児ではカ テコラミンに限らず、多くの薬剤がシリンジポンプを使っ て投与され、また一人の患児が病期によりNICU、手術室、 ICU、病棟など色々な部署で管理される可能性がある。製 品採用にあたっては、リスクマネジメント的視野での検討 が必要である。 - 120 - C—04 合併症・モニター・技術開発 C—05 合併症・モニター・技術開発 中心静脈カテーテル留置のための内頚静脈穿刺後に椎骨 動静脈瘻を生じた一例 気管挿管後に反回神経麻痺をきたした一例 大井由美子 1、丸山一男 2) (国立療養所 三重病院 麻酔 香川哲郎、鈴木 毅、村田 洋(兵庫県立こども病院 科 1、三重大学医学部麻酔学教室 2) 麻酔科) A case of vertebral arteriovenous fistura following internal jugular vein puncture. KAGAWA TETSURO (Hyogo Prefectural Kobe Children’s Hospital) A case of recurrent nerve palsy following endotracheal intubation OHI YUMIKO (Department of Anesthesia, National Mie Hospital, Tsu, Japan) 今回、乳児の外鼠径ヘルニアの術後、反回神経麻痺を 心奇形根治術の際に右内頚静脈に中心静脈カテーテル きたした症例を経験したので報告する。【症例】生後 78 を留置する際に動脈を穿刺し、術後に椎骨動静脈瘻を生 日、男児。身長48cm、体重3785g。 【出生歴および出生後 じた一例を経験したので報告する。【症例】在胎 40 週、 経過】在胎33週5日、生下時体重1730gにて出生、NICU 2440gにて出生の男児。生下時よりチアノーゼを認め、肺 にて一過性多呼吸が見られたが、特に大きな異常は認め 動脈閉鎖、心室中隔欠損の診断にて生後5ヶ月時に左 られなかったため2週後に退院した。【現病歴】左鼠径部 Blalock-Taussig シャントを作成。10 歳時(身長 116cm、 の腫留に気づかれていたが、今回3日間頻回に陥頓した 体重 19kg)に根治術(心室中隔欠損閉鎖、Rastelli 型手 ため、急遽両側外鼠径ヘルニアの手術が予定された。貧 術)を行った。麻酔導入後SpO2 は80%前後、収縮期血圧 血にて投薬治療中であった。【麻酔】硫酸アトロピンを投 70mmHg前後。この際の内頚静脈穿刺においては、輪状 与後、酸素−低濃度セボフルランとベクロニウムにて気 軟骨の高さで内頚動脈拍動を触知し、その5mm外側から 管挿管を行った。喉頭展開は容易で、内径3.0mmの気管 23G 針にて試験穿刺の後 16G ピールオフタイプの穿刺針 チューブ(Portex 社製)は抵抗なく挿入でき、正中付近 にて穿刺し、18G カテーテルを挿入した。カテーテルを で固定した。麻酔維持は、酸素−フェンタニールで行っ 圧トランスデューサーに接続したところ動脈圧波形が見 た。枕は乳児用の円座を用いた。術中、呼吸・循環動態 られたため直ちに抜去し、10分間圧迫止血を行った。右 はやや不安定であり、特に挿管後30分、換気は不安定で 正中静脈から中心静脈カテーテルを挿入し手術を行った。 あった。気管チューブ留置時間は1時間53分、抜管後の 術中ヘパリン化による頚部の腫脹などは認めなかった。 全身状態は良好であった。【術後経過】術後より嗄声が認 2ヵ月後の心臓カテーテル検査時に頚部動静脈瘻を作成 められ、術後6日に「むせてうまく哺乳できない」との していることが判明したが、全身状態良好なため経過観 訴えが母親よりあった。耳鼻科受診にて、左反回神経麻 察とした。3年後(13 歳時)に心拡大、呼吸困難と心不 痺(左声帯副正中位固定)と診断され、プレドニゾロン 全を呈し、椎骨動脈造影で鎖骨下動脈分岐部より2cm遠 を処方されたが内服されなかった。術後13日には、左声 位、第6頚椎の高さで椎骨動脈から椎骨静脈への動静脈 帯・嗄声の部分的な回復が認められ、次の受診日(術後 瘻を認めた。これを全身麻酔下に結紮し動静脈瘻は治癒 27日) には、嗄声・声帯の可動性ともに回復していた。 【考 し、また術後に神経学的症状を残すことなく退院した。 察】本症例は、挿管に起因する反回神経麻痺と考えられ 【考察】内頚静脈穿刺の際に椎骨動静脈瘻を作成したと た。小児において、開胸手術や甲状腺の手術後および脳 いう報告は小児では少ない。今回の原因として(1)太 圧亢進時の術後やICUでの長期間の挿管に起因する反回 い穿刺針で穿刺したこと、(2)穿刺針を深く入れすぎた 神経麻痺の報告は見られるが、全身麻酔のための挿管だ こと、に加え(3)チアノーゼがあるため静脈血と誤認 けに起因する反回神経麻痺の報告は見当たらない。挿管 し、また血液の逆流は明らかな勢いがなく、カテーテル による反回神経麻痺の原因は数多く挙げられるが、本症 を挿入したあとで動脈と気がついたこと、が考えられる。 例にあてはまるものはほとんどなく、組織の脆弱性が関 また椎骨動静脈瘻結紮術の麻酔においては、術前からの 与したのではないかと推察している。【結語】生後 78 日 心不全、椎骨動脈損傷や血流低下に伴う脳障害、瘻孔閉 の鼠径ヘルニアの術後、気管挿管にて左反回神経麻痺を 鎖後の脳血流の急激な上昇による脳浮腫や脳血管破綻を きたした症例を経験した。術後 27 日には、嗄声・声帯の 考慮する必要がある。上記の症例につき報告する。 可動性ともに回復した。 - 121 - C—06 合併症・モニター・技術開発 C—07 合併症・モニター・技術開発 小児における加湿加温器の安全性の検討 Off-line pulse oximetry による小児睡眠時呼吸障害のス クリーニング 梅田亜希子、矢野華代、西脇公俊、木村智政、島田康弘 (名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座) The Assessment of respiratory humidifiers during anesthesia for children UMEDA AKIKO (Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan) 宮本善一、井口直也、木内恵子、福光一夫、谷口晃啓、平 尾 収(大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科) Normal off-line pulse oximetric values for children MIYAMOTO YOSHIKAZU (Department of Anesthesiology, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health, Izumi, Japan) 【はじめに】人工呼吸で、乾燥ガスを直接吸入すると、 気管・気管支上皮細胞の損傷、線毛運動の障害による喀 痰の粘稠化や喀出困難になる。また、熱や水分の喪失が 多くなるため、特に小児の人工呼吸において加湿加温は 必須である。今回、小児全身麻酔患者においてFisher & Paykel 社製 MR 730 型加湿加温器(MR 730)を使用した 際、回路内温度が異常上昇した症例を経験したので報告 する。【症例】1ヶ月、男児、身長54cm、体重4.5kg、胆 道閉鎖症に対して肝門部空腸吻合術が施行された。麻酔 器(オメダ社、Excel)に MR 730 を組み込み、回路内温 度を39℃に設定し、チャンバー出口温度測定プローブを 接続せず、回路内温度測定プローブおよび加熱ワイヤ回 路のみ接続した。導入後しばらしてからアラームが鳴り、 回路内温度は約50℃を示していた。直ちにチャンバーと 呼吸回路を取り替え、正常にプローブを接続して使用し た。患者に術後合併症は生じなかった。【考察】MR 730 は、ヒータープレートで水を温めチャンバー内のガスを 熱し、ヒーターワイヤで回路内を流れるガスの温度を保 つ2つの独立した加熱システムを持つ加湿加温器である。 ガス温度の過加熱は、1)回路内温度が41℃に達した時、 ヒータープレートとヒーターワイヤへの電力を切ること、 2)ヒータープレートの温度が118±6℃を超えた時、加 湿加温器への電源が切れることで防止している。横山ら は、分時換気量30Lで換気した後、換気を停止するとチャ ンバー出口温度は50℃以上に上昇したが、回路内温度は 37℃以下であったと報告している。今回、術中と同様の 条件下である分時換気量1.5Lでシミュレーションしたと ころ、回路内温度が 41.1℃に達した時にアラームが作動 し、チャンバー温度は直ちに低下したが、回路内温度は 2分後には 50.7℃まで上昇し、その後低下した。分時換 気量が少ないため、ヒータープレートとヒーターワイヤ の電力が切れた後でも、チャンバー出口温度は上昇し続 けたと推察される。【結語】低流量を用いた小児での加湿 加温器を使用する場合には過加熱に注意を要する。 【目的】睡眠時呼吸障害(sleep-related breathing disorders, SRBD)は Obstructive sleep apnea hypopnea syndrome(OSAHS)と Upper Airway Resistance Syndrome(UARS)とに大別されるが、いずれも小児で の診断基準は確立されていない。UARS とは上気道抵抗 上昇から睡眠断片化を来す症候群であり、小児では扁桃・ アデノイド肥大患児で多い。OSAHS・UARS診断のgold standard は各々、睡眠ポリグラフ検査・食道内圧測定で あるが、装着に不快感を伴うため小児での施行は困難で ある。今回我々は、Off-line pulse oximetry(OLPO)の みによる小児SRBDスクリーニングの基準作製を試みた。 【対象と方法】SRBD症状がなく、扁桃肥大のない小児31 例(2∼ 10 歳,累計 81 例)をコントロール(C)群、扁 桃肥大 II ∼ III 度で SRBD が疑われ、扁桃・アデノイド摘 出術が予定された小児 72 例(2∼ 10 歳)を疾患(P)群 とし、Nellcor N-395 を用いて睡眠時 OLPO を行った。 SpO2 値・体動等のデータを 0.1Hz で抽出し、Microsoft Excel上で動作する自作ソフトウェアを用いて、IDI/IRI (incidence of desaturation/re-saturation index:SpO2 値 が 10 秒間で 2% 以上低下 / 上昇するイベントの回数[/ hr])、PD(proportion of desaturation:SpO 2 値が desaturation 時の値以下で継続する状態、または 94% 以 下の状態の時間の割合[%])を求めた。P 群については 術後の改善の有無を、IDI, IRI はχ2 検定及び Fisher’s exact test、PD は one-way ANOVA 及び unpaired t-test を用いて判定した。C 群で基準値以下となる症例の割合 をCc[%]、P群で術前基準値以上の症例のうち術後改善 する症例の割合を sensitivity(Se) [%]、P 群で術前基準 値以下の症例のうち術後改善を認めない症例の割合を specificity(Sp) [%]と定義し、C 群の mean+2S.D. 値近 傍で 3 つの値(Cc, Se, Sp)の平均値が極大(ただし 90% 以 上)となるように基準値を設定した。【結果】PD<2.1[%] (Cc=98.8%, Se=94.1%, Sp=92.7%)、IDI < 3.1[回 /hr] (Cc=96.3%, Se=90.5%, Sp=88.2%)、IRI < 2.9[回 /hr] (Cc=100%, Se=90%, Sp=98.1%)を小児SRBDスクリーニ ングの基準値と設定できた。【結語】OLPOのみを用いた 本解析法は、小児睡眠時呼吸障害を高感度・高特異性で 検出できる。 - 122 - C—08 合併症・モニター・技術開発 C—09 合併症・モニター・技術開発 扁桃・アデノイド摘出術後の小児の睡眠時呼吸障害の経 日経過 ― Off-line pulse oximetry を用いて ― 持続髄液圧モニター下で麻酔管理した頭蓋形成術の一例 野々垣幹雄 1、近藤潤夫 1)、加藤潤子 1)、菅原昭憲 1)、西 宮本善一、井口直也、木内恵子、福光一夫、谷口晃啓、平 尾 収(大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科) 脇公俊 2)、近藤博子 2)、島田康弘 2) (市立四日市病院 麻 酔科 1、名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学 講座 2) Nightly off-line pulse oximetric analysis of children undergoing tonsillectomy and adenotomy MIYAMOTO YOSHIKAZU (Department of Anesthesiology, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health, Izumi, Japan) 【はじめに】睡眠時呼吸障害(sleep-related breathing disorders, SRBD)を呈する扁桃・アデノイド肥大患児は、 扁桃・アデノイド摘出術(T&A)後に症状が改善するこ とが多いが、改善の程度を経時的に検討した報告は少な い。今回我々は、Off-line pulse oximetry(OLPO)によ る小児SRBDスクリーニングの基準を作製し、T&Aを受 ける小児の OLPO の各パラメータの変化を経日的に解 析・検討した。【対象】T&Aを予定された72名の小児(2 ∼10歳) 。扁桃肥大II∼III度で、問診・臨床所見よりSRBD が疑われた症例が T&A の適応とされた。【方法】術前日 から最長術後4日目まで毎晩、Nellcor N-395を用いて睡 眠時 OLPO を行った。自作のソフトウェアにて IDI/IRI (incidence of desaturation/re-saturation index:SpO2 値 が 10 秒間で 2% 以上低下 / 上昇するイベントの回数[/ hr])、PD (proportion of desaturation:SpO 2 値が desaturation 時の値以下で継続する状態、または 94% 以 下の状態の時間の割合[%])を求め、経日変化を解析し た。IDI, IRIについてはχ2検定及びFisherユs exact test、 PD については one-way ANOVA 及び unpaired t-test を 行い、術後の改善の有無を判定した。正常値としては、今 回当施設で作製した基準値(PD<2.1[%]、IDI<3.1[回/ hr]、IRI < 2.9[回 /hr])を用いた。【結果・考察】 [1] 術前にSRBDの基準に該当した症例は、PD, IDI, IRIに関 して各々 17 例(24%)、21 例(29%)、20 例(28%)であ り、術後は各々90%以上の症例で改善を認めた。各パラ メータは術後経日的に改善する傾向にあり、正常値に回 復するまでの日数と術前値との間には正の相関が認めら れた。[2]術前にSRBDの基準に該当しなかった症例の 85%以上は術後改善を認めなかった。[3]術当日∼術翌 日は一時的にパラメータが悪化する症例が10∼20%認め られた。これは、術野や口腔・咽頭・舌等の腫脹のため、 上気道狭窄症状が一時的に悪化したものと考えられた。 【結語】T&A 後、睡眠時呼吸障害患児の症状は一時的に 悪化することもあるが、多くは経日的に改善する。我々 が定義した OLPO の各パラメータは、手術適応判定の基 準・術後の症状改善に要する日数の指標・術後経過の客 観的評価手段として有用である。 - 123 - Management of cranioplasty with continuous CSF pressure monitoring NONOGAKI MIKIO (Department of Anesthesiology and Critical Care Medicine, Yokkaichi Municipal Hospital, Yokkaichi, Japan) 今回、我々は小児の頭蓋形成術において、くも膜下カ テーテル留置による持続髄液圧モニターを行い麻酔管理 を行った一例を経験したので報告する。(症例)5ヶ月の 女児。身長 64.5cm、体重 6855g。生下時より高度の四肢 合指症、特異顔貌あり当院へ搬送された。入院時から頭 部冠状縫合の閉鎖、矢状縫合の離開があり、小児科にて アペール症候群、頭蓋縫合線早期癒合症の診断となり、 頭蓋形成術の予定となった。前処置はせず、手術室入室 後、酸素・セボフルラン下に緩徐導入を行い、気管挿管 を行った。その後に、中心静脈ライン、観血的動脈圧ラ インを挿入した。患者体位を側臥位とし、L4/5間よりく も膜下に径0.6mmの小児用硬膜外カテーテル挿入を試み たが、カテーテルが柔らかく髄液圧に抗して挿入するこ とは著しく困難であった。このため、中心静脈穿刺セッ トのガイドワイヤーをスタイレットとしてくも膜下腔に カテーテルを挿入した。術中は酸素・亜酸化窒素・セボ フルランにて維持し、フェンタニル、ベクロニウムを間 欠的に投与した。手術中の髄液圧波形はモニター上で明 瞭に監視出来た。髄液圧は血行動態の安定しているとき は11∼19mmHgで変動し、頭蓋骨のワイヤー固定時は髄 液圧の変化を見ながら、締める程度を決定した。手術終 了後の覚醒は良好で、四肢麻痺はなく、抜管後 ICUに入 室した。手術時間は5時間 40 分、麻酔時間8時間 48 分。 総輸液量 1184ml、輸血量 MAP 2単位、FFP 1単位、尿 量140ml、出血量277gだった。(考察)小児の術中の髄液 圧モニター関する報告はまだ少なく、今回我々は、硬膜 外麻酔用カテ−テルを使って有効に圧測定が出来た。カ テーテル挿入に際して、カテーテルの柔らかさと、高圧 の髄液流出のためにカテーテルの挿入が困難であったが、 ガイドワイヤーを使うことで対処できた。本症例のよう に、髄液圧測定下での頭蓋形成術は小児用硬膜外カテー テルを挿入することで安全に管理できるものと思われる。 (結語)持続髄液圧モニター下での頭蓋形成術を、硬膜外 用カテーテルをくも膜下腔に挿入することで、有効且つ 安全に管理できた。 C—10 合併症・モニター・技術開発 C—11 合併症・モニター・技術開発 小児用胃用カテーテルを用いた簡易食道心電図電極 新生児、乳児、小児における心血管整合バランスの測定 田中義文(京都府立医科大学 麻酔学教室) 林 和子 1、重見研司 2)、田中義文 1)(京都府立医科大学 麻酔学教室1、愛知県心身障害者コロニー中央病院 麻酔 科 2) Monitoring of esophagial electro cardiogrram by means of stomach tube electrode. TANAKA YOSHIFUMI (Department of Anesthesiology, Kyoto Prefectural univasity of Medicine, Japan) 食道心電図は心電図上 P 波が強く反映するために不整 The estimation of cardiovascular performance in infants. HAYASHI KAZUKO (Department of Anesthesiology, Kyoto prefectural University of medicine, Kyoto, Japan) 脈解析によく用いられ、また、ペーシングなどにも利用 されている。しかし、通常の術中麻酔のために専用の食 道電極を調達することは経費的に負担が大きく、それな ら経静脈的心室ペーシングカテーテルを挿入して患者の 安全確保に努めるべきとの意見もある。しかし小児に適 応する市販食道心電図や経静脈電極は入手が困難である。 また一般に、成人における正常心では心房P波は小さく、 注意深く電極位置を設定しなくては P 波のトランジショ ナル波形(2相波形)が観測できなかった。今回小児用 胃用カテーテルに銅電極を装着し、測定したところ、成 人とは異なり心房トランジショナル波形(2相波形)を 容易に観測できた。これは、成人と異なり心臓、縦隔、消 化器に比べて肺の発育が未発達である小児の体型に起因 するものと考えられる。また、小児特有の麻酔中のジャ ンクショナルリズムやAV-ブロックの早期診断にも役立 つため、食道心電図電極付きの胃用カテーテルは有効と 考える。 (背景)新生児では心拍出量は180-240 ml/kg/minとい われ、成人の心拍出量約80ml/kg/minと比較すれば体重 換算で成人の2∼3倍の分時心拍出量があり、成人とほ ぼ同等の体重あたりの血液量を 3 倍近い速度で循環させ ていることが知られる。一方、新生児の平均血圧は成人 の 1/2 程度であり、これらから体重あたりの末梢血管抵 抗値は成人の 1/5 程度となり、一見、心血管制御バラン スが成人とは異なるようにみえる。そこで今回、心拍出 効率の点から新生児・乳児・小児における心血管整合バ ランス(Ees/Ea)を検討した。(方法)周術期の心血管系 に異常を認めない新生児・乳児、小児を対象とした。心 血管整合バランス値の算定に必要な収縮期時間と動脈圧 を、心電図、心音図と、観血的橈骨動脈圧波形またはト ノメトリー波形を用いて計測し、左心の時変エラスタン ス曲線を2直線近似することで、一心拍毎のEes/Eaを算 定した。(結果、考察)小児において心血管整合バランス 値は成人と比べて有意差は認められなかった。また、Ea、 Ees値ともに成人より大きかったが、体重1kgあたりに 換算するとこれらに成人との間で較差は認められなかっ た。乳児、新生児についても報告する予定である。 (結語) 小児の心血管整合バランス値は成人と同等である。 - 124 - D—01 気道管理2・肝移植 D—02 気道管理2・肝移植 口蓋床装置装着術の麻酔の検討 脳性麻痺患者における腹腔鏡下手術の麻酔 新田雅彦、福山東雄、斉藤 聡、平澤美代子、長谷川啓 岡田華子、仙石和文、高畑 治、岩崎 寛(旭川医科大 一郎、鈴木利保(東海大学 医学部 外科学系 麻酔科 学 医学部 麻酔科・蘇生科 学部門) The anesthetic management of Latham appliance insertion NITTA MASAHIKO (Department Of Anesthesiology, Tokai University School of Medicine, Kanagawa, Japan) Anesthesia management of laparoscopic surgery with cerebral palsy OKADA HANAKO (Department of Anestheiology and Critical Care Medicine Asahikawa Medical College, Asahikawa, Japan) 口唇口蓋裂症例の口唇閉鎖術における周術期管理は気 脳性麻痺患者において胃食道逆流の合併は多く、誤嚥 道管理に苦慮することが多い。術中のチューブトラブル 性肺炎を繰り返す場合もある。近年鏡視下手術の小児領 だけでなく口腔内の構造の変化により術後も気道管理に 域での普及に伴い、脳性麻痺患者の噴門形成術も腹腔鏡 注意が必要となることもある。また麻酔に関連する他の 下で行われることが多くなった。我々の施設における過 先天奇形を伴う場合や挿管困難が予想される場合もある。 去2年5症例の麻酔方法について検討した。年齢9∼16 国内ではまだ普及していないが当院では1998年より、口 歳、平均体重 19.7kg。導入は点滴確保後に胃管の持続吸 唇閉鎖手術や術後の矯正治療を容易にするため、口唇閉 引を行いながら、サイアミラール、べクロニウムで行っ 鎖手術前に口蓋床装置装着による術前顎矯正治療を施行 たのが3例。点滴確保後、胃管を挿入せずにべクロニウ し有用性を認めている。口蓋床装置装着術は口腔内の構 ムのプライミング dose 投与後タイミング法でサイアミ 造の変化が少ないため術後の気道管理は比較的容易であ ラール、べクロニウムで行ったのが2例。うち1例で挿 るが、術中のチューブトラブルが非常に多い。また口蓋 管困難があり経皮的酸素飽和度が一過性に20%まで低下 閉鎖術に先だって早期に行われるため患児の麻酔管理に した。気管挿管チューブは気腹による換気不全を避ける は特に注意が必要である。今回我々は、口蓋床装置装着 ため、全例カフ付きチューブを使用した。導入時に嘔吐 の15例の麻酔法について検討したので報告する。通常の や誤嚥を生じた症例は無かった。維持は酸素―空気―セ 口唇閉鎖術では気管内チューブは経口挿管され開口器に ボフルランとフェンタニ−ルで行った。伝達麻酔は施行 よって一度固定されればチューブトラブルは比較的少な しなかった。術中換気不全や大きな循環変動は認められ い。しかし口蓋床装置装着術では開口器は使えないため なかった。手術終了後、十分な覚醒と1回換気量、換気 経口挿管だと手術操作により気管内チューブが抜けたり 回数の平常化を確認した後抜管した。抜管後に1例でナ 屈曲し換気不全となりチューブトラブルに難渋すること ロキソンを使用、別の1例で経鼻エアウエイを必要とし が非常に多い(10 例中7例そのうちチューブ抜去4例)。 た。脳性麻痺患者の麻酔管理上の問題点は多々あるが、 そこで片側完全唇顎口蓋裂の口蓋床装置装着術に対して、 腹腔鏡下手術の場合、麻酔導入時の問題として、気道確 手術は軟口蓋を操作しないこともあり、経鼻挿管を行っ 保のため胃食道逆流を有する患者に気管挿管が必要であ たところ、安定した気道管理を行うことが出来た。 (気道 ること、さらに胸郭の変形、肺合併症などから換気困難、 の攣縮によるものと思われるSpO2の低下が1例あった。 ) 挿管困難が予想されることである。今回もタイミング法 この際、コネクター前後のチューブや蛇管の屈曲を防ぐ での導入において挿管困難症例があったことより、導入 ために、チューブのコネクターを既存のものより金属製 においては胃管を挿入し、換気可能なことを確認した後 のあらかじめ90度曲がった物に変更した。両側唇顎口蓋 に筋弛緩薬投与による方法が望ましいと考えられる。麻 裂では経鼻挿管だとチューブの安定性が低下し、術野を 酔維持管理上の問題点として、気腹に伴う換気不全と、 妨げる可能性があるため、今後検討の余地がある。口蓋 鎮痛手段の検討がある。抜管後の問題として胸郭の変形、 床装置装着術は開口器を使用出来ないため気道管理に苦 肺合併症による換気困難と低酸素血症の発生が予想され 慮することが多いが片側完全唇顎口蓋裂に対する口蓋床 る。以上の問題点につき文献的考察を加え発表する。 装置装着術に対しては経鼻挿管を行い、コネクターを既 存の物より金属製の物に変更し、良好な麻酔管理を行う ことができた。 - 125 - D—03 気道管理2・肝移植 D—04 気道管理2・肝移植 喉頭気管分離手術の麻酔経験 気管無形成症の周術期管理の経験 嶋 武 1、千葉聡子 1)、村上憲孝 1)、加藤正人 2)(仙台赤 十字病院 麻酔科1、東北大学 医学部附属病院 麻酔科 学講座 2) 森下 淳 1、前川信博 2)、弓場智子 1)、小野純一郎 1)、蔵 谷紀文 1)(香川小児病院 麻酔科 1、香川医科大学 麻 酔・救急医学講座 2) Anesthetic Management for Tracheoesophageal Diversion SHIMA TAKESHI (Sendai Red Cross Hospital, Sendai, Japan) Perioperative management of tracheal agenesis: Case report MORISHITA JUN (National Kagawa Children’s Hospital, Kagawa, Japan) 【目的】脳障害による喉頭機能不全を有する症例はくり 気管無形成症の周術期管理を経験したので報告する。 返し誤嚥を起こし、致死的肺炎となり、対処の方法が無 【症例】母親は 30 歳。胎児エコー検査で食道閉鎖が疑 い。このような症例には喉頭気管分離手術が適応となる。 われていた。在胎 36 週1日に緊急帝王切開により出生。 本手術は気管を切断し、永久気管瘻にするとともに、唾 出生体重は 2627g。出生時は自発呼吸および啼泣はなく 液が溜まらないよう声門下気管と食道を吻合する手術で Apgar1/5であった。直ちに気管挿管を試みるも気管内に ある。今回、当院で本手術の麻酔を経験したので報告す チューブを進めることができず、やむをえず食道挿管と る。 した。食道挿管されたチューブを通して陽圧呼吸が可能 【方法】 【成績】症例は年齢が1歳より12歳平均6歳で、 であった。胸部レントゲン写真では食道挿管された気管 平均身長 98cm、平均体重 13kg、女5人男1人の6症例 チューブ内のガイドワイヤーが気管支内に入っている所 であった。麻酔の導入・維持はセボフルランにより行い、 見がみられ、気管チューブは気管食道瘻を偶然通過して 気管切開が行われていた3症例を含め、すべて経口気管 先端は気管内にあるものと考えられた。心奇形などの他 挿管とした。手術が進行し、気管を切離後、ラセンチュー の重症奇形を認めなかった。生後1日に全身麻酔下で喉 ブを手術野より気管に挿入し、滅菌した接続チューブを 頭ファイバーおよび気管支鏡を行ったところ、気管 介して麻酔回路に接続した。手術終了時ラセンチューブ チューブは門歯より9cmのところにある気管食道瘻を通 を抜去し、気管切開チューブを挿入した。なお、気管切 過していた。本来の喉頭の部分には声門様の構造物はあ 開口形成のため、一時ラセンチューブを抜去する直前は るもののその先は盲端となっていることが判明した。こ 酸素のみとしたが、それ以外は亜酸化窒素を併用した。 れらの所見により気管無形成症と診断され、食道 6症例とも酸素飽和度を低下することなく、平均5.0時間 Banding および胃瘻造設術が行われた。術後は陽圧呼吸 で手術は終了した。 にて管理したが、いつのまにか気管食道瘻から気管 【結論】喉頭気管分離手術は術中気道の変更を伴うた チューブが外れているのが判明した。この状態でも換気 め、術者と協調して注意深い気道管理が必要と思われた。 が不可能となることはなかったのでチューブについては そのまま食道内留置とした。生後27日目に全身麻酔下で 気管支鏡、食道再 Banding、頚部食道瘻造設を行い、術 後は頸部食道瘻から挿入した気管チューブを通して呼吸 管理を行った。自発呼吸では呼吸状態が悪化することも あるので、陽圧呼吸管理も併用して経過観察中である。 【まとめ】気管無形成症は周術期を通して管理が困難 である。 - 126 - D—05 気道管理2・肝移植 D—06 気道管理2・肝移植 気管狭窄に対する肺動脈形成術、気管形成術を人工心肺 下に行った際、無気肺を生じたと思われる1症例 加齢により挿管困難は緩和されるのか?:典型的挿管困 難症での検討 小林 信 1、木村智政 1)、加藤潤子 2)、西脇公俊 1)、島田 康弘 1) (名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学 講座 1、市立四日市病院 2) 辻井健二、今中宣依、藤井 崇、中田一夫、永田 昇 (大 阪市立総合医療センター 小児麻酔科) A case report of bronchialconstriction. KOBAYASHI MAKOTO (Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan) 人工心肺を使用している際の人工呼吸は停止し新鮮ガス 供給はは遮断するか、純酸素数リットル毎分の定常流によ り数センチ水柱の PEEP をかけるのが通常の管理とされ てきた。今回、我々は先天性気管狭窄症に対し、人工心肺 下に肺動脈形成術、気管形成術を緊急に行った症例で、人 工心肺時の長時間にわたる人工呼吸停止によると思われる 無気肺を生じ、ウィーニングに際し低酸素血症を長時間に わたり呈した経験をしたので報告する。症例は男児。他院 にて在胎 37 週 4 日、母親に頚管ポリープがあったため帝 王切開にて出生。生下時の体重は2630g。生下時より多呼 吸を認め、クベース収容にて酸素投与開始。生後 29 日時 点でCT上、気管狭窄症と診断。哺乳力低下、低酸素血症、 徐脈を認め、生後1ヶ月8日で気管挿管による人工呼吸管 理とミダゾラムによる沈静、ネオフィリン持続静注を開 始。生後1ヶ月 15 日の時点で当院集中治療室に転院。0 歳1ヶ月 19 日の時点で緊急手術となった。手術時の体重 は 3.9kg。麻酔時間は9時間 25 分。手術時間は8時間 15 分。麻酔導入はファンタニル。維持はミダゾラムとフェン タニル。術中使用薬剤はドーパミン、ドブタミン、イソプ ロテレノールであった。心拍停止はせず。人工心肺時間は 332分。うち4時間は完全に人工呼吸を止め、チューブは 大気に開放していた。人工心肺からのウィーニングを試み たところFiO2=1.0にてPaO2 が39.5mmHgへ低下し、結局 ウィーニングに1時間を要し、試行 3 回目にて成功した。 手術終了時の PaO2 は 296mmHg(FiO2=0.64)であった。 術中の出血は 490g、尿量 490ml。輸血は MAP970ml、 FFP40mlであり、トータルバランスは+4625mlであった。 今回の反省点としては、長時間にわたって人工心肺を施行 したにもかかわらず、その間人工呼吸をまったく行ってい なかったために、肺胞での酸素吸収にともなう無気肺 (absorptional atelectasis)を生じたと推測されることであ る。これが今回ウィーニング時に著名な低酸素血症を呈し た原因と推測される。こうした症例の場合、気管形成時を 除いては、窒素、酸素による軽い機械換気を人工心肺時も 併用した方が、無気肺の予防に有効と思われる。 - 127 - Effect of Aging on the Pediatric Patients with Difficult Airway TSUJII KENJI (The Department of Pediaric Anesthesia, Osaka City General Hospital, Osaka, Japan) Pierre-Robin 症候群,Goldenhar 症候群,Treacher Collins症候群はいずれも鰓弓の発生異常に由来する症候群 であり,典型的な挿管困難を呈する症候群として知られて いる.これら3症候群で,加齢により挿管困難度が変化す るかどうか検討した. 【対象】1996年∼2002年4月に当センターで手術を受け た3症候群 12 例. 【方法】麻酔導入後,マッキントッシュ型のブレードを 用いて通常の喉頭展開を試みて得た喉頭展開所見 (Cormack の分類)を検討した. 【結果】Pierre-Robin 症候群6例計 15 回,Goldenhar 症 候群4例計6回,Treacher Collins症候群2例計4回の喉 頭展開所見が得られた.(1)Grade IIIであったのは3症 候群とも1歳未満の症例であった.(2)1歳以上4歳未 満で Grade II を呈したのは Pierre-Robin 症候群で 10 回中 4回,Goldenhar 症候群では4回中2回であった.Grade I を 呈 し た の は Pierre-Robin 症 候 群 で 10 回 中 6 回 , Goldenhar症候群では4回中2回であった.(3)4歳以上 では Pierre-Robin 症候群,Goldenhar 症候群はすべて Grade I であった.Treacher Collins 症候群では Grade II が2回,Grade Iが1回であった.(4)同一症例でのGrade の変化をみると,Pierre-Robin 症候群の4例では,いずれ の施行においてもGrade Iであった2例を除き,年齢の増 加に伴いGrade III→II,Grade II→Iと低下していた.同 様に Goldenhar 症候群,Treacher Collins 症候群の Grade III であった1例ずつが Grade II に低下していた. 【 考 察 】 Pierre-Robin 症 候 群 , Goldenhar 症 候 群 , Treacher Collins 症候群はいずれも小顎症を伴い,口腔, 鼻咽頭が狭い.また,エアウエイが狭いことより,新生児 期,乳児期に上気道閉塞による呼吸障害,哺乳障害,体重 増加不良を起こすことも共通している.下顎の発達に伴 い,幼児期にはこれらの症状は軽減する事が多いといわれ ている.また,今回の結果から,これら3症候群は加齢に より挿管困難度が緩和される傾向があるといえる.喉頭展 開所見の改善の点からも,加齢により上記の臨床症状が軽 快することの説明になると思われる. 【 結 語 】 Pierre-Robin 症 候 群 , Goldenhar 症 候 群 , Treacher Collins症候群は加齢により挿管困難度が緩和さ れる. D—07 気道管理2・肝移植 D—08 気道管理2・肝移植 ファイバースコープ挿管用換気マスクの作り方 小児のトラキライトを用いた挿管における気管チューブ 先端位置に関する検討 矢数芳英、広木公一(神奈川県立こども医療センター) Anesthesia mask with diaphragm as aids to fiberoptic tracheal intubation YAKAZU YOSHIHIDE (Department of Anesthesiology, Kanagawa Children’s Medical Center, Kanagawa, Japan) 成人の挿管困難患者の対応策の中で、意識下または軽 度鎮静下での経口・経鼻ファイバースコープ挿管は、幼 小児では協力が得られず、全身麻酔下でのファイバース 新堀博展 1、石崎 卓 2)、何 廣臣 1)、広木公一 1)(神奈 川県立 こども医療センター 麻酔科1、東京医科大学病 院 麻酔科 2) Tracheal intubation with the Trachlight in children: A method for assuring correct depth of tube placement SHIMBORI HIRONOBU (Department of Anesthesiology, Kanagawa Children’s Medical Center, Kanagawa, Japan) コープ挿管が必要となる。従来からこの目的のために開 発されたものとして、Frei endoscopy mask や Patil- 【目的】成人でのトラキライトを用いた挿管では、胸骨 Syracuse endoscopy maskが知られているが、本邦での 切痕で明かりが消えた位置が適切な気管チューブの深さ 持続的な購入や確保は難しい。また北村らによる自作マ であるとされているが、小児での適切な位置に関する記 スクによる麻酔管理の報告がある。我々も同様に市販の 載は見あたらない。そこで成人と同様の方法で挿管した マスク(メラ社クリアマスク)を改造し、安価なファイ 場合の気管チューブ先端の位置を検証し、小児での適切 バースコープ挿管用換気マスクを作成し有用な結果を得 な位置について検討する。【方法】予定手術を受ける健康 たので紹介する。[準備するもの]:メラ社クリアマスク な乳幼児15例を対象とした。予め挿管困難の疑われる症 (大小2サイズ) 、50mm用ディスポ注射器、歯科用ラバー 例、喉頭病変を有する症例は対象から除外した。全身麻 ダム(なければ手術用手袋でも良い)、穴開け道具(ドリ 酔導入後、体位を頚部伸展、頭部伸展となるようにした。 ル・カッターナイフなど) [作成方法]1、 50mm 用ディ トラキライトには年齢に相当した適切なサイズの挿管 スポ注射器の外筒をつばから3−4cmで切る2、 それを チューブを装着し、指定の位置で90度に折り曲げた。左 クリアマスクの平面部にあて大きさを測る3、 穴を開ける 手で下顎を前方に挙上しつつ、挿管チューブを口腔内に (硬いのでドリルで穴をあけ、カッターナイフで修正す 挿入し、正中に位置するようにゆっくりと進めた。トラ る) 4、 マスクの内側からラバー膜を張った状態で、注射 キライトの明かりが喉頭隆起の真下に明るく見えた位置 器外筒を通す。(つばは内側になる)もしくは注射器外筒 をposition 1(P1)とし、スタイレットを引き抜いてさら を通して、ラバーを輪ゴムで抑える。小児の挿管困難症 に進め、明かりが胸骨切痕で消えた位置を position 2 例は一般病院では頻繁に遭遇するものではないかもしれ (P2)として、それぞれの位置で門歯での挿管チューブの ない。更に近年は、laryngeal mask airwayによる気道管 深さを記録した。その後P2の位置で挿管チューブを固定 理などで、必ずしも気管挿管にこだわる必要はなくなっ し、頭部を自然な位置に戻してから、気管支ファイバー ているが、開口障害患者などで経口・経鼻ファイバース を用いて、気管分岐部からチューブ先端までの距離 コープ挿管が必要な場合もある。この改造マスクは、安 (distance 1=D1)を測定し、また喉頭鏡を用いて直視下 価であり簡単に作成可能であり、一般病院でも準備して に声門から気管チューブ先端までの距離(distance 2 = おけば有用であろう。Kitamura S ら: Paediatr Anaesth D2)を測定した。【結果】P2 での D1 は 2.0 ± 0.8cm であ 1999; 9: 119-122 り、中には先端が気管分岐部直上に位置していた症例も あった。P1 での D2 は 3.9 ± 1.2cm であった。また P1 と P2の中間に、挿管チューブの先端を位置させたと仮定し た場合の、D2 は 3.6 ± 1.9cm となり、これは計算上の気 管の長さ D1 + D2 のほぼ中央に位置することとなった。 【結論】小児では胸骨切痕に明かりが消えたところで挿管 チューブを固定すると深すぎることがあるため、喉頭隆 起の真下に明かりが見えた時の深さとの中間点を目安に すると、挿管チューブの先端は気管のほぼ中央に位置す ることとなり適切である。 - 128 - D—09 気道管理2・肝移植 D—10 気道管理2・肝移植 当施設における在宅気管切開・酸素・人工呼吸療法の実 情と問題点 小児の生体肝移植術中に reperfusion syndrome を引き 起こし心停止に至った症例 川名 信、豊島由希、佐藤 仁、平田直之(北海道立小 児総合保健センター 麻酔科) 東光美果、広木公一(神奈川県立こども医療センター 麻酔科) Home oxygen therapy and home ventilation therapy for pediatric patients with or without tracheostomy in our institution KAWANA SHIN (Divison of Anesthesia, Hokkaido Children’s Hospital and Medical Center, Otaru, Japan) A pediatric case with reperfusion-induced cardiac arrest during liver transplantation TOKO MIKA (Department of Anesthesiology, Kanagawa Children’s Medical Center, Yokohama, Japan) 肝移植の術中合併症として、再灌流直後に低血圧、除 小児の在宅気管切開・酸素・人工呼吸療法(以下在宅 療養)の施行は患者のQOLの向上には有効であるが、実 施するにあたっては様々な問題を解決しなくてはいけな い.当施設では在宅療養への移行にあたって在宅診療委 員会を設け、在宅療養の適応、患者家族の教育、外来で のフォローアップと医療材料の支給までを一貫して取り 組むようにしたので報告する.在宅診療委員会は主治医、 看護師、医療相談室、麻酔科医、訪問看護ステーション のスタッフからなり、在宅療法候補患者が出たときに委 員会で適応や退院までのスケジュールを決定する.原疾 患の評価は主治医、看護師は家族の教育、麻酔科医は人 工呼吸器の選定と設定を受け持つ.医療相談室は各種助 成制度の申請や訪問看護ステーションとの調整を行う. 在宅療養移行後の外来フォローアップは外来担当医のほ かに、気管切開および人工呼吸管理患者は麻酔科医が必 ず診察する.そこで支給する医療材料を一括管理し、保 険点数内で患者の必要なものを患者間で不公平感が出な いように支給することとした.現在、当施設で在宅療養 を受けているのは25名で、気管切開をうけているものが 15 名、その内酸素投与を受けていないものが 4 名、酸素 投与のみを受けているものが6名、さらに人工呼吸療法 を受けているものが 5 名であった.気管切開なしで酸素 投与のみが11名、NPVによる人工呼吸管理を受けている ものが1名であった.外来診療では麻酔科医が必ず診察 するようになってから気道管理がよりきめ細かくなった. 在宅診療委員会が立ち上がってから在宅療養に移行した のは現在のところ 1 名であるが、スムーズな移行であっ た.在宅療養の問題点として指導管理料の請求がある. 気管切開患者はほぼ毎月気管カニューレ交換に外来を受 診するが、酸素療法だけの場合は毎月受診しない患者も 多い.また在宅療養の患者が再入院した場合など、指導 管理料を請求できない場合のレンタル機器使用料の支払 いが問題となっている.さらに医療材料の支給について も一定の基準が決めにくいなどの解決すべき問題が多い が、在宅診療委員会を立ち上げたことでこれからの在宅 療養の質の向上が期待される. - 129 - 脈、心室性不整脈、稀に心停止を引き起こすことが知ら れている。原因として移植肝内の蓄積物質の放出や、肝 保護液の直接作用による高K血症、低Ca血症、代謝性ア シドーシスなどがあり、reperfusion syndromeといわれ ている。我々は、小児の生体肝移植時にreperfusion syndrome を引き起こし、心停止に至った症例を経験したの で報告する。 症例は生後11ヶ月の女児、身長77cm、体重10.8kg。発 熱、下痢、哺乳量減少にて発症し、肝機能と凝固機能異 常を認め、劇症肝炎を疑われ当院入院となった。交換輸 血、血漿交換を繰り返したが肝障害は増悪し、入院15日 目に母親をドナーとする生体部分肝移植を施行した。移 植肝の血管吻合が終了し、肝静脈、門脈をほぼ同時に declamp したところ、次第に肝腫脹をきたし急激に血圧 が低下した。心電図でT波増高、また急激な体温低下 (35.7 ℃→33.9℃)をきたし、その後心電図でST低下、除脈を 認め心臓マッサージを開始した。動脈血液ガス分析では 著明な代謝性アシドーシス(BE -12.6 mmol/l)と低 Ca 血症(0.19 mmol/l)を認めた。気管内からは大量の血性 分泌物が吸引でき、PEEP圧7.5cmH2Oでの用手換気が必 要となった。心停止から8分後に自己心拍が再開し、徐々 に肺酸素化能、アシドーシスや電解質バランスも改善し た。術後は未覚醒のまま ICU に入室した。 本症例のreperfusion syndromeの原因として、移植肝 の肝保護液(Na 29 mEq/l K 125 mEq/l)の洗浄が不充 分であったことが考えられる。そのため高濃度 K 溶液の 心臓への灌流と、急激な血液温低下により心停止に陥り、 それによる急性肺水腫が引き起こされたと思われる。臓 器吻合後の再灌流時に血行動態が悪化した場合、reperfusion syndrome の可能性が高く、速やかに原因を追求 し対処すると同時に、二次的に引き起こされる病態に対 して適切に対処できることが重要である。 D—11 気道管理2・肝移植 E—01 特殊な疾患 当院における生体肝移植の麻酔管理 Robinow 症候群患児の麻酔管理 蛭田章子、高野友美子、鈴木英雄、蛭田昌宏、平林由広、 瀬尾憲正(自治医科大学 麻酔科学集中治療医学講座) 魚住 亮、岡田直子、久次米依子、高辻小枝子、阪井啓 一、鈴木 毅、香川哲郎(兵庫県立こども病院 麻酔科) Anesthetic management of living-related liver transplantation HIRUTA AKIKO (Department of Anesthesiology and Critical Care Medicine, Jichi Medical School, Tochigi, Japan) Anesthetic Management of Robinow Syndrome UOZUMI RYO (Hyogo Prefectural Kobe Children’s Hospital, Kobe, Japan) 【はじめに】Robinow 症候群は特徴的な顔貌(胎児様顔 貌と呼ばれる) 、四肢短縮を伴う低身長、性器低形成など 生体肝移植の麻酔管理には外科医との協力とともに、 を主徴とする稀な症候群である。我々は、同症候群患児 大量出血の対応や凝固能のコントロールなど、きめの細 の麻酔を経験したので報告する。【症例】5才 11 カ月女 かい全身管理が必要である。本院において、2001年5月 児、身長84cm、体重9.4kg。在胎40週, 2712g にて出生。 から小児生体部分肝移植が開始され、2002年3月までの 顔貌異常より Robinow 症候群と診断された。生後二週間 間、計15例の小児生体部分肝移植術が行われた。この15 で心雑音から肺動脈管開存(PDA)を指摘されていたが、 例を対象に、現在までの麻酔管理や重症度に関与する周 PDA径が小さく心不全症状もないことから経過観察を続 術期の因子について検討した。麻酔時間は 1037 ± 182 分 けていた。染色体検索では、2番染色体長腕の一部に欠 で長時間の管理を必要とし、術中出血量は105±187mL/ 損がみられた。前額突出、眼間開離、短鼻などの顔貌異 kgでほぼ等量の新鮮凍結血漿を投与した。15例中4例で 常、歯列不正、扁桃の肥大、脳室拡大、精神および身体 再開腹手術を必要とし、延べ手術は計 10 回施行された。 面の発育不良がみられた。心臓カテーテル検査および これら15例の検討では、入室時の凝固能と術後経過に有 PDA コイル塞栓術を全身麻酔下に施行することとなっ 意な相関関係が認められた。また、大量出血を来した1 た。前投薬として導入60分前にジアゼパム5mgを経口投 例は、術後不幸な転帰をたどり、許容範囲の狭い麻酔管 与した。亜酸化窒素、酸素、セボフルラン(GOS)によ 理を強いられている事を再確認した。 る緩徐導入後、換気困難のないことを確認し、ベクロニ ウム (Vb) 投与下に喉頭展開した。声門視認は容易であっ た。挿管後 GOS、Vb で維持した。術中、循環動態に著 変なく、PDA はコイルにてほぼ塞栓された。覚醒 , 抜管 および周術期に異常なく、翌日に退院した。【考察】本症 候群患児において外科的治療の対象となるものに、口唇 口蓋裂、歯列不整、先天性心疾患、外表奇形などがあげ られる。麻酔管理は顔貌異常や歯列不整に伴う挿管困難、 先天性心疾患、精神発達遅延、反復する麻酔の必要性な どを念頭におく必要があると考えられた。 - 130 - E—02 特殊な疾患 E—03 特殊な疾患 Freeman-Sheldon 症候群の麻酔経験 Larsen 症候群患児の麻酔経験 近藤俊樹1、矢野華代1)、西脇公俊1)、木村優子2)、山下明 恵川宏敏、石川和由、手塚正智、濱口真輔、永尾 勝、奥 田泰久、北島敏光(獨協医科大学麻酔科学教室) 3) 1) 1) 子 、木村智政 、島田康弘 (名古屋大学大学院医学系 研究科 麻酔・蘇生医学講座 1、公立陶生病院 麻酔科 2、 半田市立半田病院 3) Anesthetic Management of Freeman-Sheldon Syndrome KONDO TOSHIKI (Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan ) Anesthesia experience of Larsen syndorome complex child patient EGAWA HIROTOSHI (Department of Anesthesiolosy, Dokkyo University School of Medicine, Mibu, Tochigi, Japan) Larsen 症候群は股関節・膝関節を主とする先天性多発 性関節脱臼に加え,鼻梁陥没,両眼解離を有する特徴的 Freeman-Sheldon 症候群は、1938 年に Freeman & Sheldonが、口笛を吹くような特異的顔貌、手指の屈曲拘 縮、先天的内反足を伴う症候群として報告した。本症候 群の麻酔管理上の問題点としては、挿管困難、呼吸器系 合併症、筋弛緩薬の使用、静脈確保困難などがある。今 回我々は、同一症例に対し、計4回の麻酔を経験したの で報告する。【症例】2ヶ月の男児。生下時より両手指変 形、先天的内反足、多発性関節拘縮があり、矯正ギプス 目的に入院。同時にFreeman-Sheldon症候群と診断され た。入院後、突然呼吸停止をきたし、蘇生を行った。原 因は下顎が小さいことによる気道閉塞と思われた。また それ以降、哺乳が十分できないため経管栄養が導入され た。その後左ソケイヘルニアと副耳に対し、全身麻酔下 で手術を行った。笑気、酸素、セボフルレンにて緩徐導 入した。静脈確保に20分、その後挿管までに15分を要し た。術後まもなく抜管するも、気道狭窄によるものと思 われる陥没呼吸をきたし、約 40 分様子を見て退室とし た。その10日後右ソケイヘルニアに対し全身麻酔下で手 術が予定された。2回目も笑気、酸素、セボフルレンにて 緩徐導入。静脈確保に45分と難渋し、頭部より27Gの頭 皮針にて静脈確保を行った。その後挿管までに10分を要 した。手術終了30分後に退室した。退院後、10ヶ月時再 び呼吸停止をきたしICUにてラリンジアルマスク挿入後、 気管支ファイバー補助下に気管内挿管が行われた。その 数日後気管切開のため、3回目の全身麻酔を行った。4 回目は1歳3ヶ月時両握り拇指に対し全身麻酔を施行。 気管切開中であり、静脈確保に15分要したが、その他問 題なく終了した。【考察】Freeman-Sheldon症候群は全身 性進行性の筋疾患であり、その特徴上頻回の手術が必要 な可能性がある。したがって四肢の変形、術後の瘢痕な どにより、よりいっそう静脈確保が困難となったり、開 口制限が進行することにより挿管困難や術後上気道閉塞 を新たにきたすことなどが予想される。今回我々は、同 一症例に対し、計 4 回の麻酔を経験したが、麻酔の施行 にあたり十分な術前の評価と術後の注意深い観察が必要 と思われた。 - 131 - 顔貌,手・足の変形を特徴とする症候群である。今回わ れわれは,本疾患を有する患児の両側内反足に対する麻 酔を経験したので報告する。【症例】3歳,女児。他院に てLarsen症候群と診断され,両側内反足に対する後側解 離術目的に当院整形外科を紹介された。術前診察時に心 室中隔欠損,右valsalva洞の軽度拡大,僧帽弁逸脱症,二 尖大動脈弁などの心疾患を認めた。腰椎X線上,L4を中 心に配列異常を認めるが神経学的異常所見は認めなかっ た。【麻酔経過】前投薬は使用せずに酸素・空気・イソフ ルラン(OAI)にて 緩徐導入を行った。その後,マスク 換気ができることを確認してから筋弛緩薬を投与し,気 管挿管を行った。麻酔維持はジャクソンリース下にOAI で行った。術中には特に問題となる循環動態の変動など はみられず,麻酔終了後,十分に覚醒を確認後に抜管し 退室させた。病棟にてパルスオキシメータ及び心電図を 翌日まで装着しモニターしたが,特に問題はなかった。 【考察】Larsen 症候群は,1)多発性の先天性関節脱臼, 膝関節脱臼による反張膝,先天性股関節脱臼 2)顔貌 異常(眼瞼解離,鼻根部平坦化,前頭部突出)3)へら 状指を三徴とする先天性骨疾患で臨床症状とし,この三 徴に加え,頸椎後彎,足変形(特に内反足),口蓋裂,難 聴,喉頭,気管軟骨の軟化症に伴なう上気道閉塞や本症 例のように先天性心疾患の合併などが報告されている。 従って,気道確保が困難であることを想定した気道管理 と術後の呼吸状態の注意深い観察,及び本患者のように 心疾患を合併している場合には周術期循環動態の注意深 い観察も必要であると思われた。【結語】Larsen 症候群 患児の麻酔を経験した。術後の上気道閉塞及び心電図に よる管理を行い安全に麻酔管理をなし得た。 E—04 特殊な疾患 E—05 特殊な疾患 Prader-Willi症候群の麻酔経験 ― とくにベクロニウムへ の感受性について 色素性乾皮症の麻酔 ― 紫外線遮蔽フィルターの使用効果― 山口千尋、伊藤富美子、鈴木孝浩、野田 薫、中村 卓、 佐伯 茂(駿河台日本大学病院 麻酔科) 清水智明、渋谷博美、赤松哲也、岡田俊樹、竹田 清 (国立大阪病院 麻酔科) Vecuronium-induced neuromuscular blockade in a patient with Prader-Willi syndrome. YAMAGUCHI CHIHIRO (Department of Anesthesiology Surugadai Nihon University Hospital, Tokyo, Japan) Anesthetic management of Xeroderma Pigmentosum patients; the efficiency of UV protect screen SHIMIZU TOMOAKI (Department of Anesthesiology, Osaka National Hospital, Osaka, Japan) 色素性乾皮症(Xeroderma Pigmentosum;XP)は常 Prader-Willi症候群は麻酔管理上、筋緊張低下、体温調 染色体劣性遺伝疾患であり、光線過敏症や色素沈着など 節障害、肥満、糖尿病や挿管困難など多種の問題点を有 の皮膚症状が主症状である。また、DNAの修復過程の欠 する疾患である。麻酔リスクのうち筋緊張低下は筋原性 損により紫外線の曝露時に染色体の破壊を生じやすく、 あるいは神経原性萎縮が原因として疑われているものの、 皮膚癌の発生率も高い。今回我々は、手術室における 非脱分極性筋弛緩薬に対する感受性に関しては明らかに 様々な条件下で紫外線量を計測したので報告するととも されていない。そこで今回本疾患患児の全身麻酔時に、 に、当院で行っているXP患者に対する紫外線防御の方法 ベクロニウムの筋弛緩効果を観察したので報告する。症 をあわせて紹介する。紫外線は一般に使用される蛍光灯 例:11歳、男児。示指屈筋腱、指神経損傷に対する腱、神 からも発生することが知られているが、手術室において 経縫合術が全身麻酔下に予定された。術前、握力が右 は通常の照明に用いる蛍光灯に加え、術野用の無影灯が 8kg、左4kgと著明な筋緊張低下が認められた。また本疾 使用されており、手術を受ける患者に曝露される紫外線 患に特異な顔貌から挿管困難が予測された。検査上、心 の量は非常に多いと考えられる。XP患者の症状の発現は 電図で不完全右脚ブロックが認められたが、他のデータ 紫外線曝露の量に相関すると考えられるため、XP患者の は正常範囲内であった。麻酔経過:アトロピン、ペチジ 手術の場合、無用な紫外線曝露を避けるための工夫が必 ンを前投薬として用いた後、セボフルラン、亜酸化窒素 要となる。我々の施設においては、使用する無影灯の数 による緩徐導入を行った。麻酔安定後、2Hz Train-of-four を極力減らすとともに、紫外線遮蔽フィルターで、術野 尺骨神経刺激による母指内転筋収縮反応を加速度トラン 以外の体表面を出来る限り被覆している。また、周術期 スデューサで記録した。反応の安定後、ベクロニウム には紫外線モニターをベッドサイドに置いて、随時、紫 0.02mg/kgを静脈内投与した結果、T1はコントロールの 外線量を計測しながら環境条件を出来る限りコントロー 49%に抑制された。さらに2回目の同量投与 (計0.04mg/ ルするように心掛けている。 kg)によりコントロールの4%まで抑制された。最大遮断 が得られた後気管挿管したが、手技は比較的容易であっ た。麻酔はセボフルラン、亜酸化窒素で維持し、その後 はベクロニウムを投与せず、筋弛緩からの自然回復の推 移を継続的に観察した。ベクロニウム初回投与からT1が コントロールの 25%に回復するまでの持続時間は 28.3 分、回復指数は 18.5 分であった。以上の結果より本症例 のベクロニウムへの感受性は健常児と差がないと考えら れた。 - 132 - E—06 特殊な疾患 E—07 特殊な疾患 選択的脊髄後根切断術における麻酔方法の検討 痙性小児脳性麻痺3症例における機能的脊髄後根切断術 の麻酔経験 新崎康彦、與座浩次(沖縄県立那覇病院) 野口良子(国立療養所 西新潟中央病院 麻酔科) Anesthetic management for Selective Dorsal Rhizotomy in Children ARASAKI YASUHIKO (Anesthetic Service, Okinawa Prefectural Naha Hospital, Naha, Okinawa, Japan) Anesthetic management for functional posterior rhizotomy in three children with spastic cerebral palsy NOGUCHI RYOUKO (Depatment of Anesthesia, National Nishi-Niigata Central Hospital, Niigata, Japan) 10数年前より、北米を中心に小児脳性麻痺の痙性四肢 麻痺に対して選択的脊髄後根切断術(SDR)が行われ、そ 機能的脊髄後根切断術は、痙性四肢麻痺を呈する脳性 の治療成績も向上している。本邦でも2,3の施設で 麻痺小児に対して痙性を減らし、歩行障害の改善を主目 SDRが行われるようになったが、その麻酔方法は当初よ 的として施行される手術である。欧米特に北米中心に10 り、麻酔薬の末梢神経束における電気生理学的な影響の 年以上の歴史があり、普及している。日本では、最近限 関与が指摘され、吸入麻酔薬や完全静脈麻酔などの変遷 られた施設において数例試みられている。当院では平成 が見られる。 13 年7月以降3例の機能的脊髄後根切断術が行われた。 当院でも患児の術前状態により、麻酔方法を選択して 今回我々は、その麻酔管理について検討を加えて報告す いるが、その目的は る。[症例]症例1)3才、92cm 16.5kg。てんかん、高 1,患児の術中、術後の合併症を少なくする、 度の精神遅滞、股関節脱臼のほか、従来の手術適応基準 2,術中の安定した呼吸循環動態を得ることにより電気 外に近い高度側弯が認められたが、介護負担の軽減目的 生理学的に障碍を受けない環境をつくる。 に手術が決定された。症例2)10 才、111cm、14.5kg。 3,すべての患児に適応できる麻酔方法をめざしてその てんかん、高度の精神遅滞に加え、関節拘縮が著明で重 検討を加えてきた。 度の側弯もあり本来適応外と考えられたが、介護容易化 当院でも6症例を経験したが、初期の2症例はセボフ の目的で術者、両親、麻酔科医ともにチャレンジケース ルランを主とした吸入麻酔、後の4症例はプロポフォー として共通認識で手術に臨んだ。症例3)4才、103cm、 ル、フェンタニ−ルによる静脈麻酔だった。SDRの至適 16.55kg。両下肢痙性麻痺に対する基本的適応症例。 [麻酔 な麻酔について検討を加えると共に、若干の文献的考察 管理上の問題点]1.手術適応の決定プロセスに麻酔科 を述べたい。 も参加すべきである。症例1と2は、高度側弯のために 術中体位及び術野の展開が困難であった。2.腹臥位長 時間手術にて麻酔時間は8∼10時間。3.術当日朝通常 量の抗痙攣薬を内服させ、前投薬としてトリクロホスナ トリウムシロップ投与した。4.術中神経生理学的モニ タリングのため筋弛緩薬の使用は挿管時のみ。5.術中 神経生理学的モニタリングに支障をきたさない麻酔薬を 選択しほぼ一定した麻酔深度を保持する。3例ともプロ ポフォール・フェンタニールを主体に維持したが筋電図 判定に悪影響はなかった。3例とも手術室で抜管できた。 6.小児麻痺患児における周術期気管支痙攣、上気道感 染予防上、全例術前夜から気管支拡張薬(アミィノフィ リン)の持続静注を開始し、術後1日目まで投与した。 7.術中筋収縮による体温上昇のリスクがあるため積極 的加温を避ける。8.術後鎮痛は必須。閉創前くも膜下 モルヒネ 0.01mg/kg 投与後、手術終了直前モルヒネ持続 静注(10mg/kg/hr)を開始し術後2日目まで投与した。 重篤な副作用はなかった。術当夜は集中治療室における 観察が望ましい。 - 133 - E—08 特殊な疾患 E—09 特殊な疾患 Muscle afferent blockによって筋痙縮が改善した脳性麻 痺患者の2例 一歳4ヶ月児の脳底動脈瘤クリッピング術の麻酔経験 趙 航、奥山克巳、古屋敦司、長嶺教光、花形和之、熊 水野省司 1、沖 高司 2)、上野博司 3)、重見研司 1)(愛知 県心身障害者コロニー中央病院 麻酔科1、愛知県心身障 害者コロニー中央病院 整形外科2、京都府立医大附属病 院 麻酔科 3) Muscle afferent block decreased spasticity of cerebral plasy: Two case report MIZUNO SHOUJI (The Depertment of Anesthesiology, Aichi Prefectural Colony Central Hospital, Aichi, Japan) 澤光生(山梨医科大学 麻酔科) Anesthetic management for a small child recieved the operation for basilar artery aneurysm ZHAO HANG (Department of Anesthesiology, Yamanashi-Medical University, Yamanashi, Japan) 症例:1歳4ヶ月、男児既往歴:特記すべきことはな い。現病歴:深夜未明、呼吸状態の異常に母親が気づく がすぐに収まったので様子を見ていた。同日早朝にも四 今回、我々はMuscle afferent block(以下MAB)によっ て脳性麻痺患者の2例において筋痙縮の改善が見られたた め報告する。【症例】 症例1:25歳,女性,脳性麻痺 主 訴:左肩外転・肘伸展拘縮,右肘屈曲拘縮,両肩挙上 夜 間に筋緊張が強くなり不眠が続く事、左肩外転により介護 が行いにくいことから当院整形外科より紹介。左三角筋中 間部,右上腕二頭筋、両僧帽筋に 6%フェノールにより Motor point block を施行。筋緊張の低下が得られたため 維持療法として外来にてMABを施行とした。現在、外来 フォロー1年となるが1ヶ月に1回の施注にて筋の過緊張 はほぼ防止できている。症例2:9歳,女児,脳性麻痺 主訴:左膝屈曲拘縮 左股関節内転屈曲変形・両膝屈曲変 形に対して両股関節内転筋群・両ハムストリングス延長術 を受け、約1ヶ月ギプス固定となる。固定解除後に左膝屈 曲拘縮を認め、他動伸展にて啼泣を認めるため整形外科よ り紹介。週1回のMABと下肢装具の併用にて改善し、立 位訓練が可能となり退院となった。【考察】 : 小児の療育現 場の中で、脳性麻痺患者への加療は大きな比率を占めてい ると考えられる。当科では当院整形外科からの依頼のもと に、脳性麻痺患者の痙縮に対して神経ブロックを主体とし た加療の機会を得ている。 当科では、(1)残されている 機能を出来るだけ温存し、(2)感覚障害などの新たな障 害を作らない事を基本姿勢としてブロック方法を検討し施 行している。このため脊髄・末梢神経系より末梢でのブ ロックの必要となるケースが多く、具体的にはMAB,神 経破壊薬を用いた Motor point block,ボツリヌス毒素施 注などが挙げられる。 MABはリドカインと少量の無水エ タノールをもちいて、主に痙性斜頚などのジストニアを適 応とするが、脳性麻痺患者への報告もある。頻回の施注が 必要であるが、繰り返しの施注により効果期間が徐々に長 くなってゆく特徴をもち他の2者に比較して重篤な副作用 が無い。手技も容易であり小児例においても安全に施行可 肢強直性痙攣が生じたため当院救急外来受診し痙攣の重 積発作と診断され、抗痙攣薬を投与された。入院後も頻 回に痙攣発作が生じるため頭部CT施行し、くも膜下出血 が認められた。同日緊急に脳血管造影を全身麻酔下に施 行し脳底動脈に脳動脈瘤が存在する事が確認された。翌 日脳動脈クリッピング術が施行された。術前状態:脳血 管造影後もミダゾラムの持続投与が行われ人工呼吸管理 とされた。血圧、心拍数は安定し痙攣発作は認められな かった。麻酔経過:フェンタニル、ミダゾラム、ベクロ ニウムで導入し、酸素 - 亜酸化窒素 - セボフルラン - フェ ンタニルで麻酔維持を行い、ベクロニウムを適宜投与し た。中心静脈圧測定目的で右内頚静脈から 5Fr のダブル ルーメンカテーテルを挿入した。循環動態は全体的には 安定していたが、貧血のため輸血をおこなった。術前か らミダゾラムが長時間持続投与(15 時間程度)され、比 較的出血量が多かったため手術室で抜管せずICUへ帰室 した。輸液量:1100ml、輸血量:225ml、出血量:240ml、 尿量:790ml、手術時間:7時間5分、麻酔時間:8時間 35 分術後経過:術後約3時間に抜管された。高 Na 血症 (155mq/l)左上肢不全麻痺が一時認められたが順調に回 復し、ICU を退室した。しかし、術4日後痙攣発作が生 じ、頭部CT上左中大脳動脈領域の広範な脳梗塞が生じ、 意識障害を来してしまった。結語:小児脳動脈瘤破裂に よるくも膜下出血はいくつか報告があるが、1歳4ヶ月 という年齢では少ない。今回、術中麻酔管理は成人麻酔 管理に準じておこなった。循環血液量が少なく血圧変動 が生じやすいと考え、中心静脈圧を参考に輸液管理をお こなった。術後一時的に高Na血症や左上肢の不全麻痺が 認められたが回復し順調な経過をたどっていたが、4日 後突然の痙攣、脳梗塞が生じてしまった。原因は脳動脈 のれん縮が考えられた。小児脳動脈瘤の麻酔管理につい て文献的考察を加えて報告する予定である。 能と考えられる。 - 134 - E—10 特殊な疾患 F—01 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 副腎癌による、小児のクッシング症候群患者の麻酔経験 ラフチジンが小児麻酔導入時の胃液性状に及ぼす影響 根本千秋、斎藤祐司、大槻 学、村川雅洋(福島県立医 科大学 医学部 麻酔科学講座) 三川勝也、上杉貴信、仁科かほる、高雄由美子、森川 修、尾原秀史(神戸大学大学院 医学系研究科 周術期 管理学) Anesthetic management of a child with Cushing syndrome caused by adenocarcinoma of the adrenal gland NEMOTO CHIAKI (Department of Anesthesiology, Fukushima Medical University School of Medicine, Fukushima, Japan) The effect of preoperative lafutidine on gastric fluid property in children MIKAWA KATSUYA 誤嚥性肺炎は麻酔導入時の重篤な合併症のひとつであ り従来よりその予防法としてH2アンタゴニストの前投薬 【背景】クッシング症候群の多くは良性の副腎腫瘍によ が行われてきた。最近新しいタイプのH2アンタゴニスト るもので、成人に好発する。われわれは、副腎癌による であるラフチジンが開発された。今回経口ラフチジンが クッシング症候群の小児の麻酔管理を経験した。 麻酔導入時の胃液酸度・胃液量を減少させて誤嚥性肺炎 【症例】7歳9ヶ月、女児。身長131cm、体重57kg。既 のリスクを少なくするかどうかをシメチジンと比較、検 往歴・家族歴に特記すべきことはない。4歳時より陰毛 討した。【対象及び方法】4∼15歳の予定手術患児(ASA の発生、5歳時より急激な体重増加、7歳4か月時より リスク1)90例を対象とし30例ずつ3群に分けた:コント 皮膚線条・座瘡・腋毛の発生が認められた。近医で思春 ロール、ラフチジン5mg手術当日朝、 シメチジン200mg 期早発症と診断され、当院を紹介された。当院で左副腎 手術当日朝。麻酔導入・気管挿管直後に胃管を挿入し胃 癌と診断され、左副腎摘出術を予定された。検査所見上、 液を採取し量と pH を測定した。 【結果】3群間で患者の 白血球増加(12,200/mm3)、多血症(赤血球 581 × 104/ 背景因子に有意差は認められなかった。導入直後採取し mm3、Hb19.0g/dl、Ht55.0%)、洞性徐脈(53bpm)が特 た胃液量・pHはコントロ−ル群で各々0.33mL/kg、 2.1で 徴的であった。麻酔前投薬として、手術室入室30分前に あった。ラフチジン群、シメチジン群では胃液量(それ アトロピン 0.5mg を経口投与した。手術室入室時には洞 ぞれ 0.17、0.15mL/kg)、pH(5.0、5.3)とも有意に低下 性徐脈(43bpm)が認められたため、アトロピン0.5mgを していた 。ラフチジン群、シメチジン群間に有意差はな 静脈内投与したところ、心拍数は 140 ∼ 160bpm となっ かった。誤嚥性肺炎の危換性を示す胃液量0.4mL/kg以上 た。チオペンタール250mg、ベクロニウム6mgを静脈内 かつ胃液 pH が 2.5 以下の症例はコントロ−ル群において 投与して急速導入を行い、気管挿管を行った。亜酸化窒 33% でありラフチジン群、シメチジン群では有意に低下 素 66%‐酸素 33%‐セボフルラン 2 ∼ 3%、フェンタニー していた(ともに 3.3%)。【結論】麻酔前投薬としての経 ル 0.2mg で麻酔を維持した。術中、FIO2 0.33 で PaO2 が 口ラフチジンは小児麻酔導入時においても胃液量・pHを 77mmHg と低値であったため、FIO2 を 0.5 に増加させた 低下させ誤嚥性肺炎のリスクを少なくした。この効果は ところ、PaO2 は124mmHgに上昇した。その他術中経過 シメチジンと同程度であった。 に特に問題はなかった。手術終了後、覚醒も速やかで、循 環・呼吸状態などに異常を認めず、抜管して ICU に入室 した。術後経過は順調であった。 【考察】今回の症例では、過去の報告どおり、クッシン グ症候群特有の肥満と、それによると考えられるPaO2の 低下などが問題となったが、肥満による挿管困難や、 クッシング症候群患者に多いとされている血圧上昇・耐 糖能異常などはみられなかった。ただし、術前から認め られた洞性徐脈は、以前には報告されていないもので あった。洞性徐脈がクッシング症候群によるものか否か については定かではないが、クッシング症候群患者の麻 酔に際しては、内分泌学的異常による諸症状のほか、徐 脈の発生などに関しても注意が必要かもしれない。 - 135 - F—02 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 F—03 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 小児手術患者に対する経口ミダゾラム前投薬の健忘作用 について ― 第2報 ― フルマゼニルはミダゾラム前投薬後の覚醒時間を短縮さ せる 吉本圭一 1、辻井健二 2)、藤井 崇 2)、中田一夫 2)、永田 昇 2) (淀川キリスト教病院 麻酔科 1、大阪市立総合医療 センター 小児麻酔科 2) 岡村ひろみ、小栗幸一、川瀬 恭、藤原祥裕(名古屋第 一赤十字病院 麻酔科) A expanded study to amnesic effect of oral midazolam as premedication in children undergoing minor surgery YOSHIMOTO KEIICHI (Department of Anesthesiology, Yodogawa Christian Hospital, Osaka, Japan) Flumazenil leads to rapid recovery after premedication with midazolam OKAMURA HIROMI (Nagoya First Red Cross Hospital, Nagoya, Japan) 【背景】小児の前投薬としてミダゾラムは広く使用され ており、当施設でもジュースと混合し経口投与を行って 【目的】患児の手術に対する恐怖心や両親からの分離に いる。ミダゾラム経口投与は、ハロセンによる麻酔では 対する不安感を軽減するために、前投薬としてミダゾラ 短時間の手術でも覚醒に影響しないとされているが、セ ム経口投与がその前方向性健忘作用が有用であることを ボフルランによる麻酔では覚醒を遅らせるとの報告があ 第 6 回大会で報告した。今回は麻酔導入で使用されるプ る。今回我々は、ミダゾラムの拮抗薬であるフルマゼニ ロポフォールの健忘に及ぼす影響の有無をより正確な記 ルを投与することにより、覚醒にどのような影響を及ぼ 憶の調査を行い、検討した。【方法】対象は全身麻酔下に すか検討した。 小手術を予定されている小児のうち、中枢神経系に異常 【方法】当施設において 2001 年 11 月から 2002 年 5 月ま のないASA 1∼2の4歳から15歳までの65例である。方 で鼠径部小手術をうけた1歳以上7歳以下の26例を対象 法は麻酔導入1時間前にリドカイン添加テープを静脈穿 とし、無作為にフルマゼニル投与群と対照群にわけた。 刺予定部位に貼付した。麻酔導入30∼45分前にミダゾラ 前投薬としてミダゾラム0.5mg/kgをリンゴジュース8ml ムシロップを投与した M 群と投与しなかった C 群に無作 と混合し 30 分前に経口投与した。笑気・酸素・セボフル 為に分類した。(M 群 56 例:C 群 9 例)。麻酔導入は静脈 ラン(5%)による緩徐導入後、笑気・酸素・セボフルラ 路確保可能な患児は静脈確保後、プロポフォールの静注 ン(3%)で維持し、皮下埋没縫合時に笑気を中止、手術 で行い、点滴拒否の場合は亜酸化窒素−セボフルレンに 終了時にセボフルランを中止し、同時にフルマゼニル よるマスク緩徐導入を行い、維持は両群とも亜酸化窒素 0.02mg/kg を静注した。第3者が手術終了より覚醒まで −セボフルレンで行った。記憶のチェックは前投薬の投 の時間および覚醒時、退出時、帰棟時における覚醒の質 与、出棟、手術室到着、静脈確保、そして、導入前にト をそれぞれスコア化して評価した。 ランプを1枚引いてもらい、その数字と種類を覚えてお 【結果】 2群間で性別、年齢、体重に有意差は無かった。 くように伝えた。手術翌日に記憶についての質問を行っ フルマゼニル投与群は対照群に比べ有意に覚醒が早かっ た。【成績】C 群は1例が静脈確保を忘れていた以外は、 た(2.4 ±1.6vs4.9 ± 2.6分、p=0.006)。しかし覚醒の質は シロップを飲んだことから、トランプの数と種類まで正 どの時点でも有意差が無かった。 確に記憶していた。一方、M群では経口投与の記憶は全 【結語】前投薬としてミダゾラムを投与した場合、フル 例あったが、その後の記憶は有意に消失しており、入眠 マゼニルは覚醒の質に影響することなく覚醒時間を短縮 状態で手術室に到着したため、トランプテストが不可能 させる。 であったのが14例(25%)、トランプテスト実施自体を覚 えていなかったのは28例(50%)、トランプテストが不正 解であったのが2例(4 %)であった。つまりトランプ テストを正解したのは 12 例(21%)であった。【結論】ミ ダゾラムの前方向性健忘作用が、麻酔導入法の違いに影 響されず示されており、小児の手術に対する恐怖観念を 遮断するために有用な前投薬であると考えられた。 - 136 - F—04 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 F—05 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 せん妄を起こさず覚醒も遅延させないプロポフォールの 血中濃度 子供のそけいヘルニア手術での覚醒時興奮と術後嘔吐に ついて 石垣敬子、竹内和世、遠山貴之、尾松徳則、今村 誠、堀 本 洋(静岡県立こども病院 麻酔科) 森下 淳 1、前川信博 2)、弓場智子 1)、小野純一郎 1)、蔵 谷紀文1) (香川小児病院 麻酔科1、香川医科大学 麻酔・ 救急医学講座 2) Blood concentration of propofol which does not cause delirium or awakening delay,either ISHIGAKI KEIKO 【目的】プロポフォールによる麻酔後は術後せん妄が少 Emergence agitation versus vomiting in pediatric inguinal surgery MORISHITA JUN (National Kagawa Children’s Hospital, Kagawa, Japan) ないと言われている。その原因として血中濃度がある程 度保たれている可能性を考えた。【方法】鼠径ヘルニア18 子供のそけいヘルニア手術では覚醒のはやいセボフル 例、左大腿母斑1例の計19例の予定手術症例を対象とし レン麻酔が一般的となったので、覚醒時の興奮が問題に た。前投薬として手術室入室前にミダゾラム0.6mg/kg経 なっている。疼痛は覚醒時興奮(EA: emergence agita- 直腸投与した。酸素、笑気、セボフルランによる緩徐導 tion)の一要因であるので、Regional blockの併用が行わ 入後、鎮痛のためジクロフェナク坐薬約 1mg/kg 投与と れている。さらにオピオイドの併用が試みられているが、 脊椎麻酔(L4/5またはL5/S1より高比重0.5%マーカイン 一方で術後嘔吐(POV: post-operative vomiting)が増加 0.4mg/kg)を施行した。その後セボフルランを中止しプ する可能性がある。この研究ではオピオイド併用の有無 ロポフォール持続投与を開始した。手術終了時にプロポ による EA と POV の発生頻度について調べた。 フォールを中止し、その時点と抜管後に自発開眼した時 方法: 対象患者は過去20ヶ月間にそけいヘルニア手術 点で血中濃度測定のために採血を行った。投与速度を を受けた生後6ヶ月以上6歳以下の基本的に元気な子供 5mg/kg/h 群(5mg 群)10 例、10mg/kg/h 群9例(10mg 135例。麻酔方法はおおむね、ミダゾラム(0.5 mg/kg)経 群)の2群で比較した。【結果】平均投与時間は5mg群で 口投与による前投薬、セボフルランによるマスク導入と 31.1分、10mg群で37.2分であった。プロポフォール終了 麻酔維持、ラリンゲルマスクもしくは気管挿管による気 から抜管までの時間はそれぞれ 4.9 分、8.7 分、自発開眼 道確保、執刀前の 0.25% ブピバカインによる仙骨ブロッ までの時間は 34.8 分、42.1 分であった、投与終了時にお ク、もしくは腸骨そけい神経ブロック、及び非ステロイ ける平均血中濃度はそれぞれ 0.86 mg/ml、2.13 mg/ml で ド性消炎鎮痛薬(NSAID)の坐薬、もしくは静注投与で あった。自発開眼時は 5mg 群で 0.201 mg/ml 、10mg 群 あった。前半の10ヶ月はオピオイド併用なしで行い、後 で0.287 mg/mlであった。両群ともに譫妄状態となった症 半の 10ヶ月はオピオイド(フェンタニル 2.3 ± 1.6 mcg/ 例はなかった。【考察】一般に鎮静目的のプロポフォール kg、モルヒネ 130.3 ± 67.8mcg/kg、平均±標準偏差)を 血中濃度は 2 ∼ 3 mg/ml と言われている。しかし完全な 術中に併用した。麻酔後の看護記録からEAとPOVの有 鎮痛が可能であれば今回の 1.0 mg/ml 以下の血中濃度で 無を調べた。 も術中の鎮静ができることが分かった。覚醒児にせん妄 結果: 表に示す。 のなかったことを考慮すれば少なくとも 0.201 mg/ml の 結論: セボフルラン麻酔/Regional Block/NSAIDでは 血中濃度を維持すれば術後覚醒してもせん妄のない状況 EAを完全に防ぐことができなかった。オピオイド併用に を作りだせると考えられた。 より EA は減少した.POV の増加には予防的制吐薬の投 与を考慮すべきである。 年齢(歳) 麻酔時間(分) EA(%)* POV(%)* 麻薬なし (n=76) 2.7±1.9 53.9±10.5 42.0 3.9 麻薬併用 (n=59) 2.9±1.8 47.9±12.2 20.3 18.6 年齢、麻酔時間は平均±標準偏差 *P<0.05 by Fisher’s Exact Test - 137 - F—06 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 F—07 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 回復室におけるペンタゾシン投与の PONV に対する影響 ハローセンも捨てた物じゃない 永井小夜 1、青木亜紀 1)、坪倉秀幸 1)、廣澤壽一 2)、稲垣 喜三 1)、石部裕一 1)(鳥取大学 医学部 麻酔科 1、鳥取 大学 医学部 附属病院 高次集中治療部 2) 村田 洋(兵庫県立こども病院 麻酔科) Effects of pentazocine in PACU for postoperative nausea and vomiting in children NAGAI SAYO (Department of Anesthesiology, Tottori University Faculty of Medicine, Yonago, Japan) Halothane is still alive MURATA HIROSHI (The Department of Anesthesia, Hyogo pref. Kobe Children’s Hospital, Kobe, Japan) この十数年小児に対する吸入麻酔剤の主役はセボフル レンである。導入、覚醒の早さ、気道に対する刺激性の 少なさ、循環系への抑制の少ないこと等利点は多い。一 術後回復室における小児の譫妄や疼痛に対し、我々の 方、覚醒直後の異常な興奮、使用量が多くしかも高価格 施設ではペンタゾシンを投与することが多い。今回、回 であると言う欠点を有する。一時代前の小児麻酔の吸入 復室におけるペンタゾシン投与と術後の悪心・嘔吐(以 麻酔剤の主役であったハローセンは循環抑制、肝障害な 下 PONV)との関連を retrospective に検討したので報告 どの欠点はあるが、術後の覚醒は緩徐で比較的おとなし する。【方法】対象は平成 13 年 12 月から平成 14 年 4 月ま くしかも安価(価格及び使用量がセボフルレンの各々約 でに当院で手術を受けた小児のうち、年齢 12 歳以下、 1/2)である。そこで、両者の長所を活用するため以下の ASA-PS 1-2、4 時間以内の頭頚部、体表、四肢の予定手 麻酔を行い検討を加えたので報告する。(方法)兵庫県こ 術で、以下の麻酔法で行った28例とした。前投薬はミダ ども病院の日帰りで鼠径ヘルニア、停留精巣、眼科手術 ゾラムシロップ 0.5mg/kg を導入 30 分前に経口投与、麻 (内反症、霰粒腫、斜視)を受ける1歳以上の患児を亜酸 酔は OAS あるいは GOS で緩徐導入し、挿管症例ではベ 化窒素、酸素、セボフルレン(5%) (以下 GOS)で導入 クロニウム 0.1mg/kg 静脈内投与した後挿管した。下腹 し、15∼20分経過後セボフルレンをハローセン(1%) (以 部、下肢の手術の場合は仙骨麻酔 0.25% ブピバカイン 下 GOF)に切り替え(5∼ 10 分間両者を併用する)手術 1ml/kg を併用し、その他はアセトアミノフェン坐薬 終了まで維持する。手術終了後未覚醒の状態で回復室に 20mg/kg を麻酔導入後執刀前に挿肛した。手術終了後、 移動し、親付き添いの状態で監視する。覚醒時の状態を 筋弛緩薬を投与した症例では、アトロピン0.02mg/kg、ワ 観察し、興奮の発生状況を GOS 単独群と GOF 併用群と ゴスチグミン 0.06mg/kgでリバースした。覚醒した後回 で比較検討する。なお、全例術後の鎮痛として麻酔導入 復室に収容、疼痛を訴えた症例と抑制を必要とするほど 後にジクロフェナック坐剤(1mg/kg)と 0.25%ブピバカ の譫妄状態となった症例に対し、ペンタゾシン0.3mg/kg イン 1 ∼ 2ml の術野への散布を行った。(結果)1)鼠径 を静脈内投与した。病棟帰室後24時間以内のPONVの有 ヘルニア、停留精巣症例では、両群間の差は少なかった 無を記録した。【結果】術後ペンタゾシンを投与した症例 2)眼科手術群では、GOF 併用群で興奮する児が明らか は 10 例中4例(40%)に PONV を認め、ペンタゾシンを に少なかった3)GOF 併用群では術後、嘔気嘔吐を来す 投与しなかった症例18例中ではPONVを認めたのは1例 児が比較的多く認められた4)年齢層では、幼児後期(4 (5%)のみであり、オッズ比は 11.3 であった。【考察】ペ ∼6才)症例で GOF 群に効果が認められた(考察)疼痛 ンタゾシンは PONV の誘因となるという報告があり、 および興奮を来す要件の多い眼科症例でGOF併用群に効 我々も小児では術中はあまり使用しなくなっている。し 果が認められた事はセボフルレンからの急速な覚醒より かしながら、術後の譫妄や疼痛に対しては即効性のある ハローセンにように緩徐に覚醒する方が児に取っては術 ペンタゾシンの静脈内投与を行うことが多い。今回の結 後の状態に慣れるのには有効なのではないかと考えられ 果では、回復室でペンタゾシンを投与した小児では る。あるいはセボフルレンは薬剤の特性として児によっ PONVが多く認められる傾向にあったが、術後の譫妄や ては興奮させる作用を有しているのではないかと考えら 疼痛が誘因となるのか、ペンタゾシンによるものかは検 れる。(結論)術後半にハローセン麻酔に切り替える方法 討できていない。いずれにせよセボフルラン麻酔後の譫 は術後の興奮防止に効果があると共に経済的効果がある。 妄や疼痛のコントロールに対する検討が必要と思われた。 - 138 - F—08 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 F—09 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 術前・術後外来における小児待機手術に対する検討 通常の Day Surgery には麻酔科医の術前診察は必要ない 古家 仁、堀内俊孝、瓦口至孝、呉原弘吉、北口勝康 (奈良県立医科大学 麻酔科学教室) Retrospective evaluation of pre- and post-anesthetic care in pediatric patients FURUYA HITOSHI (Department of Anesthesiology, Nara Medical University, Kashihara, Japan) 林 喜代、小久保荘太郎(聖隷浜松病院 麻酔科) The regular ambulatory surgery doesn’t need the preoperative examination by anesthesiologists. HAYASHI KIYO (The Department of Anesthesiology, Seirei Hamamatsu General Hospital, Hamamatsu, Japan) Day Surgeryの最大の利点は患者在院時間短縮である。 小児待機手術においては,かぜ,喘息,予防接種など 手術に際し術前検査や術前診察の為に来院する回数が 様々な原因で手術が延期になる場合が少なくない.奈良 Day Surgery をするために増えるようでは、在院時間短 県立医科大学では全麻酔科管理症例に対して術前,術後 縮効果が相殺されてしまう。当院では手術当日までに患 を麻酔担当医の管理に加えて外来でも管理するシステム 者が来院する回数は、初診日、主治医による術前診察/術 を始め,その中から小児待機手術に対する対応について 前検査日(手術1週間前)の2回とし、手術当日朝まで 検討したので報告する.対象と方法2001年1月∼2002年 の体調変化等による手術中止申込を、24時間電話で対応 4月までに,術前外来を受診した小児(12 歳以下)待機 するシステムを取っている。術前検査は検血(血球、血 手術患者388例を対象とした.術前外来初診時には,個々 液像、血液型)、検尿、感染症、胸部X線写真、心電図検 の患児の麻酔方法,麻酔の危険性等について説明した. 査を行い、検査その他異常が認められた場合、小児専門 2001年7月からは,以前は入院後の受診であった方法を, 科、麻酔科医に対診する。手術当日朝は 8 時 45 分までに 手術決定時に担当科外来から当科外来を受診してもらう 来院し主治医の直前診察後、手術室内の母(父)同伴導 方法を行い,外来患者には麻酔延期の要因についてのパ 入室へ入室する。そこで麻酔医が診察後麻酔導入を行う。 ンフレットを渡して説明し,不要な入院を避けるため, 患児の状態により、この時点で中止することもできる。 入院決定時に家族および担当科医に延期の有無を判断し このシステムで2001年度563例のDay Surgeryを行った。 てもらった.術前外来を受けた時点の入院の有無によっ 術中、術後、目立った合併症もなく安全に遂行、麻酔医 て入院後群,外来群に分け,延期症例,麻酔満足度,周 がOPE直前に中止を決定したケースも無かった。【考察】 術期に苦痛であったことに関して検討した.統計学的検 手術患者の安全管理に優れている麻酔科医を術前から術 討は,χ二乗独立性検定もしくはFisherの直接確率計算 中、術後に充分に配置することはもちろん望ましいこと 法を用い,P < 0.05 を有意とした.結果延期症例は 44 例 である。しかし、充分でない麻酔医数で予定手術を安全 (全体の 11.3%)で,入院後群は 174 例中 27 例,外来群は 確実に遂行しつつ、生命に関わる緊急手術に迅速対応で 211 例中 17 例(入院をしていない患児)であった.麻酔 きる体制を確保する工夫が求められている。小児は出生 満足度は満足であったと答えた患者が外来群で 66.1%, 時、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、10ヶ月、1才、1才6ヶ 入院後群で 50.5% と,外来群で有意に高かった.周術期 月、3才健康診査、マススクリーニング検査と、健康発 の苦痛の訴えは両群で変化はなかった.考察小児の待機 育状態を発達段階に応じて検査されている。この検診シ 手術では,麻酔の危険性に関して,家族の不安が大きく, ステムと主治医 / 小児科医による術前診察をクリアした 関心も高い.また入院後の延期は患者の負担となり,手 患児から、麻酔科医が新たに術中管理上の問題となる症 術室運営上も問題となる.今回の試みは,麻酔満足度に 例を発見する確率は非常に少ない。確率の極めて少ない も影響し,有用な方法であると思われる.今後は麻酔術 ものであれば、麻酔直前の診察によって確認する方法で 前検査の麻酔科管理や小児以外での検討も必要と考える. 充分にシステムとして成り立つのではないかと考える。 【結語】Day Surgeryにおける人的配置として、麻酔安全 管理上のポイント、患者家族の利便性と麻酔科医師数の 現状から麻酔科術前診察を手術当日にするシステムは現 実的である。 - 139 - F—10 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 F—11 術前管理・術後覚醒・日帰り麻酔・鎮静 小児日帰り麻酔の満足度に対する検索 鎮静外来の試み 長谷川 愛 1、中畑克俊 2)、畑埜義雄 1) (和歌山県立医科大 1 学 麻酔科学教室 、日赤和歌山医療センター 麻酔科 2) 近藤陽一、阿部世紀、林 玲子、田中 基、田村高子、朝 原章二、宮坂勝之(国立成育医療センター) Satisfaction with Ambulatory Anesthesia HASEGAWA AI (Wakayama Medical University Department of Anesthesiolosy, Wakayama, Japan) Development of Sedation Policy KONDO YOICHI (National Center for Child Health and Development, Tokyo, Japan) <背景>近年、医療費の削減、患者へのサービス向上 小児の鎮静ガイドラインとしてはアメリカ小児科学会 を目的とし、日帰り麻酔が増加している。当院において のものが有名であるが、我が国の実情はこのガイドライ 小児日帰り麻酔の満足度について十分な評価はなされて ンと大きくかけ離れてる。我々は国立小児病院の鎮静検 いなかった。われわれは今回、術後のアンケート調査に 査の反省から国立成育医療センター移転に伴い、麻酔科 より日帰り麻酔に対する保護者の満足度について検討し 外来の一環として鎮静外来を開設し、統一したプロトコ たので報告する。<方法>鼠径ヘルニア根治術が予定さ ルに従って鎮静検査を行っているので紹介したい。対象: れた0∼12歳の小児49人を対象とした。患児と保護者に 鎮静が必要な検査 (脳波、ABR、心臓エコー、CT、核医 対し、外来にて術前診察を行った。手術当日、絶飮食の 学)を受けるASAリスク分類が1ないし2の患者鎮静プ もとで入院させ、前投薬としてトリクロリールシロップ ロトコルの概要検査当日ではなく、あらかじめ外来で経 0.5ml / kg 、アタラックスPシロップ 0.5ml / kg、硫酸 口摂取制限などの説明を行う検査当日、患者を診察した アトロピン沫 0.02mg/kg を経口投与した。入室時、啼 上で鎮静剤処方を行う(トリクロリール内服)鎮静剤投 泣する患児には、保護者に同伴入室を許可した。麻酔導 与前にバイタルサインを測定し、検査中は全例SpO2をモ 入は笑気、酸素、セボフルランによる緩徐導入で、維持 ニターする鎮静検査中は救急カートをそばにおいておく は笑気、酸素、セボフルランで行った。帰宅に際し、日 鎮静剤追加投与が必要になった場合は、医療従事者が患 帰り麻酔帰宅スコアリングにより判定した。手術当日の 者のそばを離れない検査終了後、覚醒の確認を行った後、 夜、帰宅後、電話による調査を行った。内容は術前の日 帰宅許可を出すMRI検査、心臓カテーテル検査は深い鎮 帰り麻酔に対する不安の有無、術後の満足度、保護者同 静が必要なので、上記のプロトコル対象外として、入院 伴入室に対する感想であった。<結果>患児の平均年齢 の上、麻酔と同等の管理体制下で検査を行うこうした鎮 は 3.6 ± 0.4 歳であった。術前外来後、日帰り麻酔に対し 静ガイドラインを関連各科に説明した結果、外来検査の 不安のあった保護者は26人(53.1%)、不安のなかった保 ほぼ 100%、毎日5− 10 名程度の患者の鎮静検査が麻酔 護者は 23 人(46.9%)で、術後、日帰り麻酔に対して満 科に依頼されるようになった。現状では鎮静中の監視体 足であった保護者は39人(79.6%)、入院させたかったと 制は十分とはいえないが、今後は麻酔科以外の医療従事 回答した保護者は 10 人(20.4%)であった。同伴入室し 者を含めた鎮静チーム結成にむけ努力を重ねていきたい。 た保護者の 63.6%がよかったと回答しており、アンケー トを行ったすべての保護者の 63.3%が今後も同伴入室を 希望すると回答した。<考察>術前、日帰り麻酔に対す る不安を訴えた保護者が多く、術前外来での説明に改善 の余地があると考えられた。日帰り麻酔帰宅基準により 判定したので、帰宅後の合併症はほとんどなかったこと が、日帰り麻酔に対する高い満足度につながった。術後 激しい疼痛を訴えた患児はなかったが、日帰り麻酔の質 を高めるために、今後疼痛対策も必要であろう。さらに 全体の 63.3%が今後も同伴入室を希望すると回答したこ とから、同伴入室を許可することで、日帰り麻酔の満足 度が上がることが示唆された。 - 140 - G—01 心臓・大血管疾患 G—02 心臓・大血管疾患 左心低形成症候群に対する Norwood 手術の成功症例に ついて 左心低形成症候群に対する Van Praagh 手術2症例の麻 酔経験 奥山克巳 1、石山忠彦 1)、寺田仁秀 2)、福島久史 1)、花形 和之 1)、熊澤光生 1)(山梨医科大学 麻酔科 1、市立甲府 病院 麻酔科 2) 渡邉栄子、五十嵐 文、川喜田美穂子、宮原ひろみ、天 野 誉、丸山一男(三重大学 医学部 麻酔学教室) Anesthetic management of HLHS syndrome OKUYAMA KATSUMI (The Department of Anesthegiolory, Yamanashi Medical University, Yamanashi, Japan) Anesthetic Management of Van Praagh Method Applied for Neonates with Hypoplastic Left Heart Syndrome WATANABE EIKO (Department of Anesthesiology, Mie University School of Medicine) 症例:日齢 11。女児。体重 2300g 経過:38 週、正常分 左心低形成症候群(hypoplastic left heart syndrome: 娩で出生(Agar 9/10)した。しかし2日後よりチアノー HLHS)に対する第一期外科治療として、肺動脈−下行 ゼを呈し転院して左心低形成症候群(HLHS)と診断され 大動脈吻合を行うVan Praagh(VP) 手術が施行された た。全身状態は悪化しショック状態となったが、若干の改 新生児2例の麻酔を経験した。 【症例1】生後19日男児。 善が認められたため当院に手術目的に搬送された。依然 身長49cm、体重2.6kg。生後2日目に啼泣時のチアノー ショック状態は継続していたが、肺血流量調節目的で窒素 ゼ、心雑音が認められ、心エコーにてHLHS と診断され を人工呼吸器回路内に混入し吸入酸素濃度を 0.18 程度に た。気管挿管され、人工呼吸管理が行われた。生後8日 調節し呼吸管理を行い、全身状態の安定を図った。徐々に 目にballoon atrial septostomy (BAS)が施行された。循 ショックから離脱し状態が安定したため手術が予定された 環動態の維持のため、窒素混入にて吸入酸素濃度 (FIO2) が、血圧等が不安定になったため緊急に手術が行われた。 を0.15∼0.17に調整し管理した。麻酔経過:入室時のSpO2 術前血液ガス:pH 7.5, PaCO2 34 mmHg, PaO2 44 mmHg, は FIO2 0.16 にて上肢 85%、下肢 80%であった。フェン BE − 5.9 麻酔経過:前投薬はなし。フェンタニル、マス タニル5 mg/kgにて麻酔導入し、PaCO2を50mmHg前後 キュラックスを適宜投与し麻酔を維持した。呼吸管理は に呼吸管理した。右側臥位にて左第3肋間開胸し、左右 SpO2 を85%, EtCO2 を45 mmHgを目標とし吸入酸素濃度 肺動脈絞扼術を行ったところ収縮期血圧は 40mmHg か 0.21 で行った。術式は Norwood の変法(右室−肺動脈を ら60mmHg台に上昇した。SpO2 は93%から78%に低下 5 mmの人工血管で吻合)が行われた。人工心肺からの離 した。主肺動脈と下行大動脈を人工血管グラフトにて吻 脱は Nitroglycerin, Dopamine, Dobutamine, Milrinone を 合し、その後左右の肺動脈絞扼を調節した。 【症例2】 生 持続投与して行った。SpO 2 は 80% 代後半、P a CO 2 は 後20日女児。身長49cm、体重3.2kg。生直後より末梢チ 40mmHg 代後半を目標に FIO2、呼吸回数などを調節し アノーゼを認め、精査にてHLHSと診断された。気管挿 た。離脱後の血圧は 60/35mmHg 心拍数は 150/ 分であっ 管による人工呼吸管理を行い、窒素吸入にてFIO2を調節 た。止血に難渋し、開胸のまま ICU へ帰室した。人工心 した。麻酔経過:入室時、FIO20.21 で SpO2 は上下肢と 肺時間は4時間 30 分、麻酔時間は 10 時間 45 分であった。 も83%であった。症例1と同様に麻酔導入、体位変換を 術後経過:術後5日目に閉胸し、22日目には抜管した。現 行った。左右肺動脈絞扼術により、収縮期血圧は 在も経過順調であり、次回手術を待機中である。結語:当 42mmHgから 50mmHgに上昇した。SpO2 が55%まで低 院では過去5例 HLHS に対して Norwood 手術が行われた 下した為FIO2 を 1.0まで徐々に上げ、一酸化窒素の吸入 がいずれも残念な結果に終わっていたが、今回初めて手術 を開始した。 SpO2 は 60%台後半を推移した。【考察】 が成功した。術前に窒素を投与しショック状態から離脱で HLHS に対する VP 手術は、Norwood 手術に比べると体 きたこと、術式、呼吸管理方法などが功を奏したのではな 外循環に起因する危険因子を除外することが出来るもの いかと考えられる。過去の症例と比較し考察する予定であ の、適切な循環動態の維持には綿密な周術期管理が必要 る。 とされた。 - 141 - G—03 心臓・大血管疾患 G—04 心臓・大血管疾患 小児続発性拡張型心筋症に対する SAVE 手術(septal anterior ventricular exclusion)の麻酔経験 FontanおよびGlenn手術術中の呼吸管理が脳血流に及ぼ す影響 鳥居ゆき、一澤 敦、古谷秀勝、石井久成、七野 力、福 田和彦(京都大学 医学部 附属病院 麻酔科) 藤井美江、大西佳彦、畔 政和(国立循環器病センター 麻酔科) Anesthetic management of SAVE operation for a child with secondary dilated cardiomyopathy TORII YUKI (The Department of Anesthesiology, Kyoto University Hospital, Kyoto, Japan) Changes in cerebral blood flow with respiratory management during Fontan and Glenn operation FUJII YOSHIE (National Cardiovascular Center, Suita, Japan) SAVE 手術は拡張型心筋症に対する左室縮小手術の1 FontanやGlenn手術では軽度過換気により,肺血管抵 法で、心室中隔と左室前壁を含む動きの悪い心室壁をよ 抗を減少させ,還流血液量を増加させる管理が推奨され り面積の小さい心室内パッチに縫合する術式である。今 ている.しかし,過換気が脳血流を減少させることも知 回我々は僧帽弁置換術後に拡張型心筋症となった小児に られている.今回我々は,こうした症例で動脈血二酸化 対する SAVE 手術の麻酔管理を経験した。症例:11 歳女 炭素濃度(PaCO2)を変化させ,経頭蓋的パルスドップ 児。身長125cm 、体重18kg。現病歴:1歳時に先天性僧 ラー(TCD)にて脳血流の変化を測定した.対象と方法: 帽弁狭窄および閉鎖不全と診断された。5歳時に心不全 Fontan 手術 10 症例(F 群)および Glenn 手術 10 症例(G 症状が出現し、6歳時に僧帽弁置換術を施行された。そ 群) を対象とした.平均年齢は各々15.5±2.2,11.9±4.0ヶ の後次第に心機能が低下し、10歳時に左室駆出率が17% 月,平均体重は 8.5 ± 1.1,7.4 ± 1.6kg であった.麻酔導 になり、人工弁の機能不全が見られ、心不全の自覚症状 入後手術前および手術終了後安定時に PaCO2 を 35,40, が増強した。血栓溶解療法を施行しても人工弁の機能回 45mmHgへと呼吸回数を変動して,TCDによる中大脳動 復が見られず、カテコラミン投与が必要な状態が持続し 脈血流速度を計測し,動脈血採血および循環動態の変動 た。心臓移植を検討していたが、排便時のいきみを契機 を記録した.結果:TCDによる血流速度は両群で,手術 に心不全が急激に増悪したため、僧帽弁再置換術および 前に比べて手術後は減少した.F 群は G 群に比べて有意 左室縮小術を施行することになった。術前管理:ミダゾ に低下した.手術後もPaCO2 変化による反応性は保持さ ラム、モルヒネによる鎮静下に人工呼吸管理、大動脈内 れていた.心拍数,平均血圧に有意差はなかった.手術 バルーンポンプ(IABP)による心補助を行い、カテコラ 後の中心静脈圧はG群で16,17,17mmHgと差は認めな ミンの減量を図った。オルプリノンを持続投与した。利 かったが F 群では 16,17,19mmHg と PaCO2 45mmHg 尿薬投与によっても尿量確保できず腹膜灌流を必要とし で有意に上昇を示した.G群では術後の酸素飽和度が82, た。手術及び麻酔管理:ミダゾラム、フェンタニルを段 85,87%と PaCO2 35mmHg で有意に低下した。結語: 階的に投与して麻酔導入を行い、以後プロポフォールを FontanおよびGlenn手術後もCO2 反応性は保持されてお 持続投与した。経食道心エコー上左室の著明な拡大と全 り,軽度PaCO2が高いほうが脳血流は良好である.Glenn 体的な壁運動の低下が見られた。拡張期容量を減少させ 術後は特に過換気で酸素飽和度が低下する.一方, ると側壁後壁では収縮期に壁厚の増加を認めたが、前壁 Fontan術後の低換気は中心静脈圧を上昇させるため,低 と中隔では見られなかった。心拍動下に僧帽弁再置換術 換気は避ける必要がある。 および SAVE 手術が施行された。IABP の使用、オルプ リノン、エピネフリン、ドパミン、ドプダミン、ニトロ TCD による中大脳動脈血流速 グリセリンの投与により人工心肺から離脱できた。術後 経過:2日目に IABP から離脱、12 日目にカテコラミン G群 から離脱、13日目に抜管、14日目に一般病棟へ移り、71 日目に退院した。考察:二次的拡張型心筋症による重症 F群 心不全に対する左室縮小形成手術は術前のカテコラミン 減量、心肺離脱時に心収縮力のサポートと後負荷の軽減、 適切な前負荷が重要と思われた。経食道心エコーが切除 範囲の決定や前負荷の調節に必須であった。 - 142 - 手術前 PaCO2 35 PaCO2 40 PaCO2 45 49 ± 14 56 ± 13 65 ± 12 手術後 40 ± 10 50 ± 11 58 ± 13 手術前 46 ± 80 54 ± 70 60 ± 70 手術後 33 ± 10 39 ± 12 47 ± 13 G—05 心臓・大血管疾患 G—06 心臓・大血管疾患 MICS による小児開心術後の肺酸素化能の検討 乳児先天性胸腹部大動脈瘤における人工血管置換術の麻 酔管理の1例 五十嵐 文、廣 加奈子、宮原ひろみ、天野 誉、丸山 一男(三重大学 医学部 麻酔科) 武藤理香、古谷 実、寶田潤子、鈴木美佐子(埼玉県立 小児医療センター 麻酔科) Clinical evaluation of pulmonary oxygenation after minimally invasive cardiac surgery in children IGARASHI AYA (Department of Anesthesiology, University of Mie, Mie, Japan) Anesthetic management for the surgery of thoracoabdominal aortic aneurysm in an infant MUTO RIKA (Saitama Children’s Medical Center) [目的]小児の先天性心疾患の手術において、胸骨非切 成人に罹患率の高い胸腹部大動脈瘤における人工血管 開ないし小切開を用いた Minimally invasive cardiac 置換術の乳児例を経験したので、その麻酔管理について surgery(以下 MICS)による低侵襲開心術が導入され、 報告する。症例2ヶ月男児、5536g、在胎37週1日、3260g、 広く行われるようになってきた。当施設では 1999 年以 正常経膣分娩にて出生。新生児仮死なし。生来哺乳、体 降、剣状突起下法、逆 L 字型法、胸骨部分切開による先 重増加ともに良好、生後2ヶ月時に感冒症状を認め近医 天性心疾患のMICSが施行されている。MICSは美容上の 受診。多呼吸、頻脈を認め他院へ搬送。胸部Xp上縦隔腫 利点のみならず、創部痛の軽減や入院期間の短縮などが 瘍の疑いで当院外科入院、精査の結果胸腹部大動脈瘤の 報告されている。われわれは第 7 回小児麻酔学会におい 診断で循環器科転科、人工血管置換術予定となった。既 て MICS で行われた症例が、胸骨正中切開で施行された 往歴、家族歴には特記すべきことなく、Marfan症候群は 症例に比べ、体外循環終了直後のPaO2値が高いという結 否定された。麻酔導入はアトロピン投与後、ミダゾラム、 果を報告した。今回は術後回復室における血液ガスにつ フェンタニールを用い自発呼吸を残し換気が可能である いて検討した。また回復室における鎮痛薬の使用状況に ことを確認後、ベクロニウム、リドカインで気管挿管し ついても検討した。[方法]1995 年から 2001 年に行われ た。挿管後、血圧、心拍数の変化はほとんどなかった。維 た ASD 直接閉鎖術 29 例を対象とした。胸骨正中切開で 持はフェンタニール、パンクロニウム、セボフルレンを 施行された 10 例を F 群、MICS で行われた 19 例を M 群 主体とし、人工心肺中はさらにモルヒネを用いた。手術 とし各種パラメーターについて検討した。[結果]年齢、 は右半側臥位で胸骨・腹部正中切開および左第4肋間側 身長、体重、手術時間、麻酔時間、大動脈遮断時間、体 開胸の下、下行大動脈起始部から腹腔動脈直上に渡る大 外循環時間に両群間の差はなかった。術後回復室におけ 動脈瘤を縦切開し、その中に人工血管を通した。人工心 るPaO2/FIO2 値は、入室直後、入室一時間後ともに有意 肺は右房脱血、上行大動脈および腹腔動脈より中枢側の 差は認められなかった。また術後回復室にて鎮痛薬を使 腹部大動脈への送血で行った。心肺離脱には DOA, 用した患者はF群において6例(60%)、M群において1 DOB,アムリノンを用い、血圧を上昇させないように管 例(5%)と F 群において多くみられた。[考察]今回の 理した。離脱時は吻合部からの大量出血のコントロール 検討では術後酸素化能において、MICS と胸骨正中切開 に難渋した。尿量、血行動態の安定した術後8日目に抜 との間に有意差が認められなかった。しかし術後の鎮痛 管、術後約2ヵ月(生後4ヵ月)で退院となった。動脈 薬の使用量には有意差が見られ、MICS において創部痛 瘤壁の病理像は現在精査中である。乳幼児における動脈 が軽減するものと思われた。 瘤は、臍動脈カテーテルによる後天的な合併症としてみ られることがあるが、稀である。先天的な疾患としては 極めて稀である。成人のそれと異なり、乳児では心疾患、 脳循環障害、糖尿病、腎機能障害、といった生活習慣病 の合併率が低いため、麻酔管理は比較的円滑であった。 血管作動薬に対する児の反応は良好であり、輸液管理が 正しければ、高血圧や末梢循環不全で管理が難航するこ とはなかった。現時点では下肢の運動麻痺や消化管運動 障害はないが、術中の神経系のモニターが十分に普及し ていないとはいえ、その監視ができなかったことは反省 すべき点である。 - 143 - G—07 心臓・大血管疾患 G—08 心臓・大血管疾患 重複大動脈弓8例の麻酔管理の検討 動脈管による左主気管支の圧排により左肺の過膨張と縦 隔の右方偏位を呈した肺動脈閉鎖症の麻酔経験 古谷 実、宝田潤子、武藤理香、鈴木美佐子(埼玉県立 小児医療センター 麻酔科) 安部恭子 1、堀口 剛 2)、齋藤 厚 1)、梅原志乃 1)、西川 俊昭 1) (秋田大学 医学部 麻酔科 1、秋田大学 医学部 Anesthetic managements in eight children with double aortic arch. FURUYA MINORU (Department of Anesthesiology, Saitama Children’s Medical Center, Iwatsuki, Saitama, Japan) 【はじめに】1983 年から 2002 年までの当センターにお ける重複大動脈弓の全身麻酔症例8例について後ろ向き に検討した。 【結果】男児が5例、女児が3例。初発症状は、喘鳴が 7例で、哺乳困難が2例で見られた。症状発現から診断 までの時間は 20 日より 407 日と幅広く、手術時の年齢は 2ヶ月より1歳9ヶ月(中央値9ヶ月)であった。 VATER 連合の1例を除き、7例は他の奇形を合併しな い単純な重複大動脈弓の症例であった。呼吸不全での気 管挿管後に気管支鏡にて診断されたものが2例、ラリン ジアルマスクによる全身麻酔下で気管支鏡にて確定診断 されたものが 1 例あった。気管支鏡による気道狭窄部か ら気管分岐部までの距離は、1.5cm、1cm、0cm、0cm。術 後から抜管までの時間は 38 分より 3 日であった。再手術 はなく、全例軽快退院した。 【考察】VATER 連合を除いた 7 例中、3 例で呼吸管理 上問題があった。症例1:頭位のわずかな変化や自発呼 吸の出現によって換気困難を来した。症例2:故意に右 気管支内挿管することで換気を安定させた。血管輪によ る気管狭窄部から気管分岐部までの距離が極めて短いた めに、気管チューブ先端の位置決めが難しい。そのため、 麻酔中の体位変換やバッキングなどにより容易に気道閉 塞を来たしたり、あえて気管支内挿管をして気管チュー ブ先端を固定させなければならない場合が生じる。一方、 Moorthyらの報告にあるように、胃管や食道聴診器の挿 入が気管の圧迫を助長する可能性もある。また、大動脈 弓と気管または大動脈弓と食道との穿通によって致死的 な出血を来たした報告もある。そこで、胃管や気管 チューブは適切なサイズを選択し、愛護的に挿入する必 要がある。重要なのは、麻酔中に気管支鏡で気道の状態 を再確認していくことである。症例3:血管輪に伴う気 管軟化症のために術後再挿管した。血管輪に伴う気管軟 化症は外科的治療を行えばすぐに改善するものではなく 術後にも残存するということを念頭に置き、術後の気管 支鏡の所見に従って、周術期の気道管理を行うべきであ る。 【結語】重複大動脈弓の全身麻酔では、周術期を通した 注意深い気道管理が要求される。 附属病院 中央手術部 2) Anesthetic management of pulmonary atresia in a patient with left bronchial compression by PDA ABE KYOKO (Department of Anesthesiology, Akita University School of Medicine, Akita, Japan) PGE1 の投与により拡張した動脈管が左主気管支を圧 排し、左肺の過膨張・縦隔の右方偏位を来したため、左 開胸でBlalock-Taussig手術及び動脈管結紮術を行った肺 動脈閉鎖症の麻酔管理を経験したので報告する。【症例】 在胎40週5日、2608gで出生。出生直後に肺動脈閉鎖、心 室中隔欠損、卵円孔開存及び動脈管開存症と診断され lipoPGE1の持続投与を開始した。日齢21に拡張した動脈 管の左主気管支の圧排のためと思われる、チェックバル ブ現象による左肺の過膨張と縦隔の右方偏位を認めた。 lipoPGE1 を 3ng/kg/min から 2ng/kg/min に減量したと ころ動脈管の径は 4.4mm から 2.2mm に縮小したが再度 4 mm に拡張し、左肺の過膨張も改善しないため BlalockTaussig手術と動脈管結紮術が予定された。Qp/Qs は0.4 ∼ 0.6 であった。【麻酔】入室時、lipoPGE1 1ng/kg/min 投与下でのSpO2は83%であった。空気・ミダゾラム・フェ ンタニル・パンクロニウムで麻酔導入し、気管内挿管後 は吸入酸素濃度(FiO2) 21%、空気・セボフルラン・フェ ンタニルで従圧式人工呼吸(吸気圧 16cmH2O)で維持し た。人工呼吸開始後もSpO2 75%で呼吸音、循環動態に変 化を認めず、右側臥位で手術を開始した。Shuntが形成さ れるまで lipoPGE1 は 1ng/kg/min で投与した。shunt 形 成後の SpO2 は 80% であった。手術終了時は FiO20.6 で SpO2 82% で、術後経過は良好であった。【結語】肺血流 量を確保し、かつ左主気管支の圧排を最小限にするため の動脈管径を維持するよう術中も lipoPGE1(1ng/kg/ min)を投与した。また左肺の過膨張の進展を防ぎ、かつ 肺血管抵抗を下げるため最高気道内圧16cmH2O換気回数 25 回の人工呼吸を行った。 - 144 - G—09 心臓・大血管疾患 G—10 心臓・大血管疾患 小児原発性肺高血圧症患者への皮下埋め込み型カテーテ ル挿入術の麻酔 拡張型心筋症合併虫垂切除術に経食道ドップラー循環モ ニターを使用した一例 寺田享志、牧 裕一、岡田美砂、上野裕美、前原康宏、菊 地博達(東邦大学 医学部 第一麻酔科学教室) 崔 俊人、羽鳥文麿(千葉県こども病院 麻酔科) Anesthesia management of a central venous catheter insertion to pediatric patients having primary pulmonary hypertension. TERADA TAKASHI (First Department of Anesthesiology, Toho University School of Medicine, Tokyo, Japan) Transesophageal doppler hemodynamic monitoring in a case of appendectomy complicated by dilated cardiomyopathy SAI TOSHIHITO (Department of Anesthesiology, Chiba Children’s Hospital, Chiba, Japan) 【はじめに】拡張型心筋症患児の虫垂切除術中に、経食 道ドップラー法を用いた非侵襲的循環動態モニター 原発性肺高血圧症(Primary pulmonary hypertension; HemoSonic100TM(米国 Arrow 社製)を使用したので報 PPH)は、治療抵抗性の強い右心不全症状を伴う、肺小 告する。【症例】11歳女児。5年前から軽度拡張型心筋症 血管(毛細血管)の原因不明のびまん性閉塞性内腔狭窄 の診断で当院循環器内科に通院してカプトプリル、ジギ による肺高血圧症であり、診断後、余命2から3年と予 タリス製剤を服用していた。嘔吐、腹痛より発症し、虫 後不良である。近年、本邦でもPGI2の持続静注法が行わ 垂炎の診断で抗生剤投与を受け、いったん軽快するも再 れるようになった。当施設でも 1998 年より PGI2 療法を 発、虫垂切除術の予定となった。術前心エコーで 導入、それに伴い皮下埋め込み型カテーテル(ブロビ LVEDV=142.8%N、LVEF=44.6%N と、左室の拡張と収 アック社製)挿入術が行われるようになった。患者は小 縮能低下が見られた。【方法】ミダゾラム、フェンタニル 児が多く全身麻酔を必要とすることも多い。本年の日本 にて麻酔導入し、気管内挿管後、HemoSonic100TM のプ 麻酔学会において我々は、1998 年 12 月から 2001 年9月 ローブを経口的に挿入し、観血的動脈圧測定ライン、中 までに行われた、カテーテル挿入術中、9例中2例にPH 心静脈カテーテル挿入を行った。通常のモニターに加え、 クリーゼを起こしたことを報告した。今回、その反省か HemoSonic100 TM で大動脈血液流量(ABF)、心係数 ら、麻酔科医、小児科医、外科医、看護師による周術期 (CI)、推定拍出量(SV)、推定末梢血管抵抗(TSVR)な マニュアルを制作したので報告する。マニュアル【術前】 どを監視した。【経過】執刀時に血圧、心拍数、TSVRが 局麻および全麻に関わらず、麻酔科が関与する。【術当 増大し、それに伴ってABF、CI、SVが軽度減少した。術 日】1、前投薬投与後必ず30分経過してから入室とする。 操作が進むにしたがってTSVRの増大、ABF、CI、SVの 2、移動中は酸素を投与する。3、患者の分離不安を考 減少が進み、吸入麻酔薬の増量、麻薬の血管内投与では 慮し必要に応じて保護者同伴とする。4、モニターとし コントロールが困難となり、ニトロプルシドの持続投与 て、心電図、血圧計、動脈血酸素飽和度、BIS、ANEMON を開始した。まもなく ABF、CI、SV の改善が見られ、 を使用する。5、クライシスの要因として考えられるス TSVR も減少したが、血圧の低下、心拍数の増加は軽度 トレスの最も予想される執刀時と皮下トンネルを造設す であった。【考察】本症例では、血圧心拍数の変動は比較 る時は術者と麻酔科医は必ず声を掛け合う。以上マニュ 的少なく、通常のバイタルサインの監視だけでは循環動 アル製作後、手術部スタッフ間の連絡がスムーズに行え 態の異常を正しく評価できない可能性があった。 るようになり、全麻3例局麻2例をクライシスの併発も HemoSonic100TM を用いたことで、より細かな評価がで なく行えた。 き、循環の破綻をきたすことなく麻酔管理を行えた。 【結 論】拡張型心筋症を合併した虫垂切除術中に、経食道 ドップラー法による非侵襲的循環動態モニターを使用し、 良好な麻酔管理が行えた。 - 145 - G—11 心臓・大血管疾患 H—01 周産期・新生児・未熟児 吸気性喘鳴および完全型新内膜症欠損症合併乳児の両側 鼠径ヘルニア根治術の麻酔管理 サイトメガロウイルス感染症にてグロブリンを胎児輸注 した一症例 細谷真人 1、大坂佳子 2)、上村 明 2)、宮部雅幸 2) (筑波 大学付属病院 麻酔科 1、筑波大学 臨床医学系 麻酔 科 2) 福田 功1、内橋慶隆1)、吉良麻利茂1)、唐澤富士夫1)、菅 原真哉1)、佐藤哲雄1) (防衛医科大学校病院 麻酔科1、防 衛医科大学校病院 手術部 2) Anesthetic management of an infant with severe wheezing and complete Endocardial Cushion Deffect HOSOYA MASATO (Department of Anesthesiology, University of Tsukuba, Japan) A case report of cytomegalovirus infected fetus treated with γ-globulin FUKUDA ISAO (The Hospital of National Deffense Medical Collage, Tokorozawa, Saitama, Japan) 肺血流増加を伴う完全型心内膜床欠損症、脳皮質形成 【目的】近年、医療機器の発達によって胎児治療が行わ 異常、吸気性喘鳴を合併する乳児の両側鼠径ヘルニア根 れるようになった。臍帯穿刺は無菌的操作によって,超 治術を主に硬膜外麻酔と局所麻酔で管理したので報告す 音波ガイド下に母体腹壁より,23 GのPTC針などを用い る。【症例】生後3ヶ月、男児、体重 2908g。頻回のヘル て直接臍帯静脈を穿刺して胎児血を採取し,胎児診断を ニア陥頓に対し両側の鼠径ヘルニア根治術が予定された。 行う手技で、1. 薬剤投与(胎児薬物療法)や、2. 輸血(胎 生下時より吸気性喘鳴があり、哺乳時、啼泣時に酸素飽 児輸血*)などの胎児治療のルートとしても用いられる. 和度の低下がみられたが、原因は不明であった。全身麻 今回、サイトメガロウイルス感染症の診断で胎児輸血を 酔後の抜管困難と全身麻酔による術後の中枢性の呼吸抑 行った症例を経験したので報告する。【症例】A.N. 26才、 制や術中・術後の循環動態の悪化を避けるため、腰部硬 初産。妊娠中期に、超音波検査法で胎児腹水を認められ 膜外麻酔で管理することにした。前投薬は投与せず、心 精査したところサイトメガロウイルス感染症と診断、胎 電図、非観血的血圧、酸素飽和度モニターを装着後、あ 児グロブリン注入法の適応となり、産科と小児科そして らかじめ病棟で確保された静脈ラインからケタミン1mg 麻酔科との十分な協議の上、妊娠29週3日全身麻酔下に を静注した。患児を側臥位にして L5/S1 から硬膜外腔を て臍帯穿刺が予定された。【麻酔法】前投薬はなし。手術 穿刺し、1%リドカイン2ml(20mg)注入後、カテーテル 室入室後、サイオペンタール250mg、ベクロニウム7mg を留置した。患児はよく鎮静され、スムーズに留置でき にて気管内挿管を行い、酸素 33%、笑気 66%、セボフル た。仰臥位にしてカテーテルから 1% リドカイン 2ml を ラン1.5-2% で維持し、ETCO2 が 35-40mmHgとなるよう さらに追加したが、ピンプリックのレベル確認で右の無 に調節呼吸を行った。循環が安定した後、産科医により 痛域が不十分であったため、右ilio-inguinal blockを追加 超音波ガイド下に臍帯穿刺が施行された。穿刺用エコー した。手術時間が延長し、体動が出現したためケタミン とは別に経腹エコーを胎児心拍モニターとして装着した。 やマスクによる亜酸化窒素の鎮静を必要としたが、児の 循環動態モニターとしては母体では観血的動脈圧測定、 呼吸・循環動態に大きな影響を与えることなく周術期の 胎児モニターとして臍帯静脈圧を測定した。穿刺した臍 全身状態を保つことができた。術後、意識は清明で麻酔 帯静脈よりパンクロニウム0.24mg静注した後、胎児腹腔 レベルはTh10以下であったため帰室した。術後の経過も 内にg -グロブリン30ml投与し、手術を終了した。妊娠36 良好であった。【考察】小児の区域麻酔が普及し、成人と 週 3 日、胎児仮死の診断にて帝王切開術施行され、児体 同じように施行されるようになってきているが、成人と 重3000g、Ap9→10の女児を出産した。【考察】胎児麻酔 は違い全身麻酔後に施行されることがほとんどである。 を大別すると母体に全身麻酔をかける方法と母体に局所 しかし区域麻酔施行時の鎮静が良好であれば、小児でも 麻酔をして臍帯穿刺にて直接麻酔をかける方法があるが、 区域麻酔のみでの麻酔管理も可能である。特に本症例の 胎児輸血のように頻回に採血を必要とする場合には母子 ように呼吸器系の合併症を伴う児では、区域麻酔のみで 同時に麻酔できる全身麻酔が有用であると考えられた。 の麻酔管理が合併症を増悪させず、最適な麻酔方法であ また、胎児における輸血量、輸血速度は経腹エコーにて る。【結語】完全型心内膜床欠損症、脳皮質形成異常、吸 胎児心拍の監視が必要であると考えられた。【結論】妊娠 気性喘鳴を合併する乳児の両側鼠径ヘルニア根治術を硬 29週3日全身麻酔下にてサイトメガロウイルス感染症の 膜外麻酔と局所麻酔で管理し、良好な結果を得た。 診断で胎児輸血を行った症例を経験した。妊娠36週、帝 王切開術施行され、女児を出産した。 - 146 - H—02 周産期・新生児・未熟児 H—03 周産期・新生児・未熟児 出生前診断した上顎体の1症例 胎児仙尾部奇形腫の周産期・周術期の管理経験 青木亜紀 1、永井小夜 1)、坂本成司 2)、南ゆかり 1)、石部 (鳥取大学 医学部 器官制御外科学講座 麻酔・ 裕一 1) 集中治療医学分野1、鳥取大学医学部付属病院 手術部2) 柏崎美保、前川 衛、石川久史、平島潤子、加藤 実、小 川節郎(日本大学 医学部 麻酔科学教室) A Case of Epignathus Diagnosed Antenatally AOKI AKI (Department of Anesthesiology and Critical Care Medicine, Tottori University Faculty of Medicine) Perinatal and perianesthetic management of the sacrococcygeal teratoma in neonates KASHIWAZAKI MIHO (Department of Anesthesia, Nihon University School of Medicine, Tokyo, Japan) 出生前の超音波検査で顔面腫瘤による気道閉塞の危険 胎児診断にて仙尾部奇形腫と診断され帝王切開術にて 性が危惧された新生児の周産期管理を経験した。【症例】 出生した2症例を経験したので報告する.症例1:在胎 26歳、女性。妊娠40週5日、超音波検査で胎児の顔面腫 28週時に胎児超音波検査およびMRIにて仙尾部奇形腫と 瘤を指摘され当院紹介となった。腫瘤は超音波検査上で 診断された.産科、新生児科、小児外科、麻酔科でカン は胎児の口腔から下顎を占拠していた。MRIで詳細な評 ファレンスを行い、在胎34週に帝王切開術により児を娩 価を試みたが、奇形腫が疑われたものの、気道の開通性 出し、その後、腫瘍切除術を施行することが予定された. についての評価は十分できなかった。出生後の気道確保 術前検査にて母体は軽度貧血を認める以外異常所見は認 困難が危惧されたので、産婦人科、小児科、小児外科、麻 められなかった.胎児は在胎 34 週時体重 2044g、腫瘍の 酔科で検討し、4科立ち合いのもと緊急帝王切開術を施 大きさは 14 × 12cm と推定された.帝王切開術の麻酔は 行した。出生時には小児科医、麻酔科医が母体の手術台 硬膜外カテーテル挿入後、脊椎麻酔を施行し管理した. 上での気管挿管に備えて、清潔ガウンを着用して手術台 手術開始6分後に児を娩出後、腫瘍からの出血を認め、 脇に待機し、外科医は緊急気管切開を準備して待機した。 直ちに止血および児の蘇生を行ったが、出生1時間4分 帝王切開術は脊椎麻酔下に行い、開始後10分で児を娩出 後に死亡した.母体は術中著変なく、術後経過も良好で した。児の啼泣が確認された後、臍帯を切断した。児は 術後7日目に退院した.症例2:在胎 35 週時に胎児超音 体重 3527g、男児、アプガースコア 8 点 / 8 点であった。 波検査および MRI にて仙尾部奇形腫と診断された.産 腫瘍からの出血の可能性もあり気道確保のため経口気管 科、新生児科、小児外科、麻酔科でカンファレンスを行っ 内挿管を施行した。挿管は、マッキントッシュによる喉 た結果、症例1の経験より、児娩出時腫瘍からの出血を 頭展開で可能であった。腫瘍は上顎軟口蓋より発生して いかに防ぐか、児娩出後の腫瘍への血流をいかに最小限 おり、上顎体と診断した。翌日、腫瘍摘出術を施行した。 にとどめかが問題点としてあげられた.その対策として、 【結語】胎児の気道閉塞の危険を伴う腫瘤の存在が出生前 在胎36週で全身麻酔下に帝王切開術を施行し、児を就眠 に判明したことにより、出生時の気道確保の準備を整え 状態で娩出することとした.術前検査にて母体は異常所 て帝王切開を施行し、適切な気道管理が可能であった。 見は認められなかった.胎児は在胎36週時体重2826g、腫 瘍の大きさは15.6×12.7cmと推定された.帝王切開術の 麻酔は硬膜外カテーテル挿入後、ベクロニウムの precurarization後、フェンタニル、ジアゼパム、スキサメト ニウムで導入、気管挿管を行い、酸素、笑気、セボフル ランで維持した.麻酔開始25分後、手術開始8分後、就 眠状態で児は娩出され、速やかに気管挿管を行い、NICU にて管理した.母体は術中、術後とも著変なく経過し術 後9日目に退院した.児は日齢1日、仙尾部奇形腫の診 断にて腫瘍切除術が施行された.術中著変なく術後経過 も良好で、術後 42 日目に退院し、その後外来にて follow upされている.今回の2症例に若干の文献的考察を加え て報告する. - 147 - H—04 周産期・新生児・未熟児 H—05 周産期・新生児・未熟児 異なる経胎盤的胎児麻酔法を用いた先天性横隔膜ヘルニ アの3例 成育医療センターが開設されて最初の先天性横隔膜ヘル ニアの麻酔管理 照井克生 1、半田冨美 1)、河村智永子 1)、横田和美 1)、内 田淳子 1)、宮尾秀樹 2)(埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター 周産期麻酔部門1、埼玉医 科大学総合医療センター 麻酔科 2) 林 玲子、阿部世紀、田中 基、田村高子、近藤陽一、朝 Perinatal management of congenital diaphragmatic hernia with three different maternal anesthetic management TERUI KATSUO (Center for Maternal Fetal Neonatal Medicine, Saitama Medical Center, Saitama Medical School, Kawagoe, Japan) 【背景】先天性横隔膜ヘルニア(CDH)児の予後を改善 すべく、帝王切開時に母体に薬物を投与し、あえて児を sleepingとして娩出する試みが広がっている。しかし報告 される方法は様々で、児の予後に与える影響も確立してい ない。そこで当センターの最近 3 例の CDH 症例に対して、 異なる経胎盤的胎児麻酔法を試みたので報告する。 【症例】 3例とも出生前診断され、妊娠 36 週から 38 週の間に予定 もしくは緊急帝王切開にて娩出した。3 例とも合併奇形は なかった。3例とも帝王切開の麻酔は全身麻酔としたが、 1例目は母体にジアゼパム10mg、フェンタニル500mcg投 与後、酸素、亜酸化窒素、セボフルラン2%にて維持した。 児はアプガースコア2点でsleepingで出生し、直ちに挿管、 HFO管理となったが、気胸を生じた。生後4日にNICUに て修復術が行われたが、PPHNに加えて気胸や気管支れん 縮を併発して、生後11日に死亡した。2例目は、母体にフェ ンタニル 400mcg とパンクロニウムを投与し、セボフルラ ン0.5%にて維持した。児はsleepingで出生したが、気管内 挿管は声門が閉じていたため困難であり、NICU 入室時に は左肺尖部まで腸管ガス像を認めた。日齢6に手術室で修 復術を行い、軽快退院した。3 例目は母体にセボフルラン 5%と酸素のみを投与した。児はsleepingで出生したが、挿 管後に静脈路を確保している最中には体動が見られ始めた。 日齢 1 に修復術を行い、軽快退院した。3例とも脱出臓器 は、小腸、結腸の一部、脾臓であり、2例目は胃も脱出し てた。出生後の管理はいずれもHFO、肺血管拡張薬、鎮静、 鎮痛薬、筋弛緩薬投与と差はなかった。 【考察】3例のCDH 症例に異なる経胎盤的胎児麻酔法を試みたが、児への影響 と予後はまちまちであった。2例目の挿管困難は、フェン タニルによる声門閉鎖の可能性があると思われる。経胎盤 的胎児麻酔には、新生児の薬物濃度とその効果をきちんと 評価して、母体投与薬物の種類と量を決める必要があると 考えられた。【結論】出生前診断された CDH の3症例に対 して、全身麻酔下の帝王切開にて異なる薬物を投与し、 sleeping bady での娩出を試みた。児の予後は一定してお らず、経胎盤的胎児麻酔の方法には更に検討が必要である。 原章二、宮坂勝之(国立成育医療センター 手術集中治 療部) The first anesthesic management case of congenital diaphragmatic herniation since National Center for Child Health and Development has been established. HAYASHI REIKO (National Center for Child Health and Development) [はじめに]国立成育医療センターは本年3月1日に成 育医療(小児医療に加えて母性、父性を包括する医療)を 推進するために開設された。旧国立小児病院では母体搬 送は行えず、新生児は搬送による悪影響を強く受けざる を得なかったが、当センターではNICU、手術室、ICUが 同じフロアに隣接し、さらにNICU、産婦人科、小児外科、 麻酔科、集中治療科が一体となり、母体および患児に理 想的な環境で先天性横隔膜ヘルニア症例の麻酔管理を行 い得たので報告する。[症例]出生前診断された先天性横 隔膜ヘルニア。予定帝王切開術にて、在胎38週3日、体 重2940g、Apgar Score6/6点で出生。出生直後患児は連 結された隣の手術室に移動され NICU スタッフにより気 管内挿管、胃管挿入、静脈路確保を行い鎮静下に移送用 ベンチレーター(Puppy 2)にて人工呼吸されながら手術 室から PICU へ入室した。入室後は PFC の惹起予防と肺 保護戦略から充分な鎮静下にHFOによる呼吸管理3日間 の待機期間を経て PICU で横隔膜欠損部閉鎖術が行われ た。[麻酔管理]麻酔は鎮静目的で持続投与していた塩酸 モルヒネ、ミオブロックに加え、フェンタニルを追加投 与し深麻酔とし、HFO(Humming V)の設定はFIO2: 1,0, MAP: 8cmH2O, SV: 6ml で十分な振動を得た。モニター は胸壁聴診器、SpO2、観血的動脈圧、中心静脈圧、心電 図を使用し、手術はヘルニア内容を還納後、欠損口を直 接縫合閉鎖し終了した。麻酔時間は1時間 46 分であっ た。術後呼吸、循環動態は安定し NICU に転棟後経過は 順調で日令23日目退院となった。[考察] 本院ではNICU、 手術室、集中治療部が同じフロアで隣接しており、本症 例のような外科的介入の必要な新生児の搬送、治療が円 滑に運べるように設計されている。今後も母体および胎 児ハイリスク症例で、NICU、手術室、集中治療部、産科、 外科が一体となっての治療が円滑に進むものと期待され る。 - 148 - H—06 周産期・新生児・未熟児 H—07 周産期・新生児・未熟児 NICUにおける先天性横隔膜ヘルニアに対する根治術の麻 酔経験 超低出生体重児に対し NICU で施行した新生児壊死性腸 炎の麻酔管理 小幡典彦、上野 剛、銅前崇平、田路大悟、日高秀邦、青 野 寛、武田明雄(高知県立中央病院 麻酔科) 秦 麻希子、横田修一、西脇公俊、木村智政、島田康弘 (名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座) Anesthetic experience of a neonate with congenital diaphragmatic hernia in NICU OBATA NORIHIKO A case of anesthetic management for neonatal necrotizing enterocolitis in the NICU HATA MAKIKO (Department of Anesthesiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan) 最近では小児に対する手術室外での処置や検査の麻酔 管理を依頼される機会が増加してきている。今回我々は、 今回我々は、超低出生体重児における新生児壊死性腸 手術室への搬送時の危険を回避するため、NICU で先天 炎(NEC) ・腸穿孔の手術、麻酔管理を NICU 内で施行し 性横隔膜ヘルニア根治術の麻酔症例を経験したので報告 たので報告する。症例は2ヶ月男児、身長32.5cm、体重 する。【術前経過】近医にて先天性横隔膜ヘルニアと出生 773g。23 週0日切迫早産のため 656g にて出生、Apgar 前診断され当院紹介となった。平成 13 年 12 月 11 日、在 scoreは1分6点、5分7点、生後直ちに気管内挿管・人 胎38週0日で帝王切開にて出生、出生時体重は2630gで、 工呼吸管理された。生後9日目に腹部膨満を認め、精査 アプガースコア(1分値/5分値)は4点/6点であっ 結果 NEC・腸穿孔と診断され翌日局所麻酔下に腹腔内ド た。直ちに気管挿管しHFOによる呼吸管理、サーファク レナージを挿入し腹腔内洗浄が行われていた。完全静脈 タントの投与を行ったが、呼吸状態は改善せず、待機手 栄養が続けられていたが経管栄養の開始を目的に根治術 術とし NICU 入室となった。高度の左肺低形成に対して が施行される運びとなった。手術を行うにあたり手術室 一酸化窒素吸入療法を併用し、呼吸状態が安定し始めた への移送にて生じうる児への負担を考慮し、新生児科・ 日齢9に根治術が予定された。しかし、手術室への搬送 小児外科医よりNICUで手術を行いたいとの要望があり、 には危険が伴うため、NICUで手術を行うこととなった。 協議の上 NICU での手術が決定した。他の患児のクベー 【術中経過】NICU での手術に対し、麻酔科医3名、手術 スを少しずつ移動させ NICU 一角にスペースを確保し、 場看護師2名が派遣され、その他小児科医、NICU看護師 手術台代わりのインファントウォーマーを設置、その周 が数名参加した。患児の状態としては、術前よりドパミ 囲に人工呼吸器やモニター等を配置した。予め室温を加 ン、プロスタグランディンE1が持続投与されており、呼 温し新生児科医によって児をインファントウォーマーへ 吸管理は間欠的強制換気(IMV)で行われていた。麻酔 移動させた。麻酔はベクロニウム、フェンタニルにて導 はIMVモードのまま酸素投与下に、フェンタニル20 mg/ 入、維持を行った。術中出血量は約2gであったがサード kg、ベクロニウム0.1mg/kgで導入し、それぞれ適宜追加 スペースへの漏出が原因と考えられる血圧低下がみられ、 投与した。手術時間 1 時間 50 分、麻酔時間2時間 30 分、 輸液の増量と共に PPF を適宜静注し血圧維持に努めた。 出血量 26ml、総輸液量 35ml であった。欠損孔は4×6 手術は癒着を剥離、腸管穿孔部を縫合し約 2 時間で終了 cmで、脱出臓器は、胃、小腸、大腸、肝左葉、脾臓であっ した。NICU での麻酔管理は我々にとって初めての経験 た。【考察】当院では3階のNICUから2階の手術室への であり、スペースが充分でない上に不慣れな場所である 搬送にかかる所要時間は、エレベーターを経て10分程度 こと、手術室専門スタッフの不在や器材の不足など解決 である。しかし、搬送中に呼吸状態が急変する可能性は すべき課題は多い。また NICU に隣接し手術可能な専用 十分に考えられ、NICUでの手術となった。最大の問題点 スペースを設けることが望ましいと考えられる。反面、 としては、high riskの患者に対する慣れない手術室以外 手術室への患児移送によって生じうるトラブルや体温低 の場所での麻酔管理があげられる。その他には、手術室 下を回避できること、NICU 専門医の助言や協力を得ら と比較して清潔度が低い点や、スペースが狭く麻酔科医 れやすいなどメリットも大きい。今後 NICU での麻酔管 の場所が確保できにくい点が問題となった。当院では 理を依頼される機会が増える可能性もあり、麻酔科・小 NICU での麻酔管理は今回初めての試みであったが、術 児外科・新生児科・NICU スタッフ共同で環境整備やマ 前の慎重な計画、準備により良好な管理を行うことがで ニュアル作成に取り組む必要があると考えられた。 きた。 - 149 - H—08 周産期・新生児・未熟児 H—09 周産期・新生児・未熟児 超低出生体重児PDA根治術の新生児集中治療室での麻酔 492g の超未熟児 PDA 結紮術の麻酔経験 小松久男(京都第一赤十字病院 麻酔科) 洪 淳憲1,2、山中真波1)、蛭田博行1)、山田祐子1)、山森 (国立病院呉医療センター 麻酔科 1、愛知医科大 祐治 1) 学 麻酔科学教室 2) Anesthesia for PDA ligation in the extreme low birth weight infants in the NICU KOMATSU HISAO (Department of Anesthesia, Kyoto First Red Cross Hospital, Kyoto, Japan) 【目的】超低出生体重児の PDA に対し、しばしば生後 An anesthetic case report of PDA ligation in a 492g baby KOH JUNKEN (Department of Anesthesia, National Kure Medical Center, Kure,Japan) 早期に結紮術を行う必要に迫られる。しかし、中央手術 室への搬送には大変な手間と時間がかかるばかりでなく、 体重 492g の超未熟児 PDA 結紮術の麻酔を経験したの 児の状態が悪化することも稀ではない。そのためわれわ で、報告する。症例 26 週 3 日、体重 560g にて出生した。 れの施設では、新生児集中治療室(NICU)で動脈管結紮 アプガースコア1/8。サーファクタント投与をはじめとし 術を行っているが、今回はその麻酔管理について最近4 た全身管理をNICUで行っていた。日齢30頃よりPDA開 年間(1998∼2001年)に経験した7例をもとに検討する。 存による肺高血圧が著明となり、インドメサシン投与に 【方法】男児5、女児2の計7例。生後平均17日、体重は も関わらず尿量減少、BUN33mg/dl、Cr2.6mg/dlと腎機 平均859g、全例術前から気管挿管下に人工呼吸管理がな 能が悪化、ドパミン投与を余儀なくされたため、日齢52 され、利尿剤とカテコラミンが投与されていた。NICUの に PDA 結紮術となった。手術は手術室に搬送して行っ 一画に手術台替わりのラディアントウオーマーを置き、 た。麻酔は末梢静脈ルートよりアトロピン0.01mg投与後 その周囲に手術器械台、人工呼吸器、麻酔カート、吸引 にミダゾラム 0.1mg で導入、気管挿管されていたが、ベ などを配置した。麻酔は、ミダゾラム (1例を除く) 、フェ クロニウム 0.1mg 及びフェンタニル 1mg を投与して手術 ンタニル、ヴェクロニウム(2例はパンクロニウム)で 開始した。麻酔中はFiO2 が0.33となるよう酸素空気混合 導入、維持は酸素-空気に、フェンタニルとヴェクロニウ 投与したが上肢、下肢にて測定したSpO2は90%以上を示 ムを持続投与または適宜ボーラス投与した。人工呼吸器 していた。また右橈骨動脈で測定した動脈圧も、術中一 で呼吸管理を行い、亜酸化窒素や吸入麻酔薬は使用しな 時的な変動があったものの、収縮期血圧50mmHg以上を かった。【結果】平均手術時間は 60 分、平均麻酔時間は 維持でき、心拍数も180/分以上で安定していた。麻酔時 151分。体温は平均37.0℃→36.8℃と低下はなく、術後心 間は2時間 40 分で、フェンタニルの総投与量は 2mg、ベ 不全や感染をきたしたものもなかった。ただし1例は麻 クロニウム 0.3mg であった。超未熟児の麻酔では、1手 酔導入から執刀までに時間がかかったため右上葉が無気 術適応、2手術場所、3体温管理、4麻酔薬の選択、な 肺となり、手術を中断した。トイレッティングにより改 ど、通常の小児麻酔以上の厳密な周術期管理を必要とす 善した後に手術を再開し、無事終了した。【結論】NICU る。また 500g 以下の体重で PDA 結紮術の報告も本邦に における超低出生体重児PDA結紮術の周術期管理は搬送 おいては大変少ない。本症例では、緊急時における麻酔 によるトラブルがなく、ラインやモニターがそのまま使 科医を中心とするスタッフの対応の習熟度から、患児を 用でき、また児の扱いに慣れたスタッフの協力も得られ 手術室まで搬送した。また体温管理には諸家の報告のよ 良好に行われた。一方、中央手術室から麻酔関連薬品や うに綿包帯とアルミホイールを用いた結果、麻酔中の体 器具、手術器具を持ち出し、直接・間接の看護師の協力 温変化は小さかった。導入に用いたドルミカムに関して を求めなければならない。また、環境が清潔でないこと、 は、代謝が速やかで循環系への影響が少ないとされてお 狭くて暑くアラーム音が常に鳴り響いている環境下での り、また我々の施設での小児麻酔の経験から投与に問題 麻酔管理は麻酔科医には非常なストレスであること、な ないと判断した。フェンタニル及びベクロニウムに関し ど課題も多い。 ては、麻酔科医の判断に従って適宜投与した。麻酔中循 環動態は安定し、大きな問題は生じなかったものの、両 薬物とも未熟児に関しての薬物動態学的解析は未だに進 んでいない。今後検討を要すべき問題と思われた。 - 150 - H—10 周産期・新生児・未熟児 H—11 周産期・新生児・未熟児 出生直後より高度肺鬱血を呈し、肺静脈狭窄解除術にて も救命し得なかった総肺静脈還流異常症の1症例 未熟児網膜症の麻酔 加藤潤子 1、木村智政 2)、西脇公俊 2)、島田康弘 2)(市立 春名純一、宮本善一、平尾 収、木内恵子、福光一夫、谷 口晃啓、松田陽一(大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科) A case of total anomalous pulmonary venous drainage with pulmonary venous obstruction (PVO) that showed sever pulmonary congestion soon after birth, and couldn’t be saved by the repair of PVO HARUNA JUNICHI (The Department of Anesthesiology, Osaka Medical Center and Reseach Institute for Maternal and Child Health, Osaka, Japan) はじめに 出生直後より両側自然気胸、 肺静脈狭窄 (PVO)を伴う総肺静脈還流異常症(TAPVD) ・高度肺鬱 血像、重度の呼吸不全を呈し、TAPVD修復術にても呼吸・ 循環状態を改善し得なかった症例を経験したので報告す る。症例 妊娠 40 週4日、体重 3090g、Apgar score 8/8 にて出生。出生直後より多呼吸・チアノーゼを認め、酸素 投与下で SpO2 60-70%(上肢)であったため、当センター へ搬送された。胸部X-Pで両側気胸と高度の肺鬱血像を認 めたため、両側胸腔ドレナージを施行したが、血液ガスの 改善なく、PaO2:15-20mmHg、PaCO2:60-70mmHgであっ た。気管挿管し、サーファクタントを投与、一酸化窒素吸 入、HFO 等の治療を行ったが血液ガスの著明な改善はみ られなかった。心エコーにて TAPVD with PVO を認め、 内科的治療では全身状態の改善が得られないため、緊急手 術に踏み切った。LA-Common PV 直接吻合にて修復、 ASD閉鎖、PDA結紮後、人工心肺からの離脱を試みた。離 脱直後より over systemic PH を呈したため、すぐに人工 心肺を再開した。用手換気にて肺の膨らみが悪く、肉眼上 白っぽく、含気・血流に乏しい肺をしており、先天性肺疾 患を強く疑った。サーファクタントを再投与、PDA を開 放したが、肺高血圧は残存した。DOA、DOB、AD、ミル リノン、PGE1、一酸化窒素使用下でHFO換気を行ったが、 大動脈圧49/30mmHg、肺動脈圧74/44mmHgであった。両 親との話し合いでECMOは導入しない方針であったため、 そのままの状態で人工心肺から離脱した。離脱後も over systemic PHの状態が続き、血液ガスも改善せず、ICU入 室後3日目に死亡した。考察 新生児の両側気胸は非常に 稀である。また出生直後からの高度肺鬱血が、呼吸不全の 主因と考えられたが、鬱血像の発症時期が TAPVD with PVO としては非典型的であった。PVO 解除によって、肺 鬱血・呼吸状態の改善が得られる確証はなかったが、全身 状態の悪化から緊急手術に踏み切らざるを得なかった。結 局、PVO 解除後も呼吸・循環状態の改善は得られなかっ た。今回病理所見が得られず確定診断はついていないが、 先天性肺疾患による呼吸不全を強く疑った。 - 151 - 四日市病院 1、名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇 生医学講座 2) Perioperative management of the infants with retinopathy of prematurity KATOU JUNKO (Yokkaichi Municipal Hospital, Yokkaichi, Japan) 未熟児網膜症の周術期管理は種々の問題点があげられ る。今回我々は、名古屋大学医学部附属病院における過 去3年間の未熟児網膜症症例の麻酔についてに検討した。 症例数は、計 25 例で、平均年齢は 5.2ヶ月。平均体重は 3.2kg(1.3 ∼ 7.6kg)であり、このうち体重が 2kg 以下の 症例は5例あった。平均麻酔時間は 272 分、平均手術時 間は 211 分と、長時間に及ぶ傾向があった。術前問題点 としては、ほとんどの症例で出生時、在胎 26 週未満で あったため出生直後からサーファクタントを投与され、 人工呼吸管理されており、肺の圧損傷に注意が必要で あった。また未熟児であるがゆえの心奇形合併や、頭蓋 内出血、ヘルニアなども見られた。術中は、1.気道管 理、2.体温管理、3.水分管理で特に注意を要した。術 野が顔面であること、術操作で頭部を左右に移動するこ とがあるため気管内チューブの管理に注意を要し、途中 から片肺になった症例が1例認められた。また眼球心臓 反射による高度な除脈をみたものは 2 例あった。加温加 湿器使用により高度な体温低下をみた例はなかったが、 逆に 38 度以上まで体温が上昇した症例が 6 例あった。術 後、挿管したままでNICUへ帰室した例は2例だった。未 熟児網膜症の周術期管理は、手術侵襲は少ないが手術が 長時間に及ぶことが多いため、新生児、未熟児の麻酔に 準じた総合的かつ厳重な管理が必要である。
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