JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ1 No. 31 2004.4 現場主義の功と罪 荒 川 文 生 2月の例会で、講師の宇井純さんが公害問題で こうした「現場主義」の功罪を踏まえて、テレ の厳しい闘いの経過を淡々と語っておられた姿 ビ・インターネット時代における「現場主義」を は、きわめて印象に深かった。そこで繰り返し述 どのように考えたらよいのであろうか。いまや、 べられたことに、下水処理に関するデータがウソ テレビは居ながらにしてわれわれを「現場」に連 か本当かを見分けるために、「現場をよく見る」 れて行く。インターネットで検索すれば、事件の という話があった。 分析や識者の示唆、つまりは理論と思想を地球規 事件の捜査に当たる刑事にも、記事を書く新聞 記者にも「現場」の重要性が説かれる。産業界に 模で読み取ることができる。 ところが、これこそ宇井さんの言われる「ウソ あって技術の適用に従事してきた者にとっても、 ではないが、本当でもない」現場であり、理論で 耳にタコができるほど聴かされた言葉がある。 あり、思想ではないかだろうか。なぜならば、テ 「現場で役に立たない技術に価値はない」「技術は 現場で厳しく鍛え上げられる」 。 レビやインターネットの伝える情報は「加工」さ れているからである。 つまり、科学には理論が欠かせないように、技 つまり、情報化時代の「現場主義」は、情報を 術では実践の結果が問われる。その意味で、技術 加工する過程を逆にたどる手法を身につけること は実践的経験の集積である。 なしに、その「罪」を克服して「功」となし得な このように、技術の成果は現場の実践によって 試され、評価されるということは、現場主義の い。テレビの画面に映っていない事実を認識する 「裏読み」の技である。 「功」の側面である。しかし、現場の体験が冷静 情報を発信する側に立てば、自らの立場と情報 な思考を狂わせることが少なくない。これを政治 処理の手法を明らかにするのが、公正な透明性を 的に利用するのが、たとえばニューヨークの9. 保ち、明確な説明責任を果たすゆえんである。現 11の現場Ground Zeroに立ってテロリストの武 場の体験を冷静に分析するには、関連する情報を 力制圧を訴える演説のたぐいだ。これなどは、現 充分に踏まえた「大局観」が要る。これを抜きに 場主義の「罪」の側面だろう。 した「現場主義」に意味はない。 (㈱地球技術研究所) 現場主義の功と罪 ..................................................1 会員報告/桃木暁子..............................................8 例会報告 1 有本文部科学省局長 ....................2 会員報告/浅井恒雄..............................................9 例会報告 2 宇井沖縄大学名誉教授 ...............3 世界連盟の動き ....................................................10 例会報告 3 中辻京大教授 .................................4 新入会員自己紹介 ................................................11 例会報告 4 東芝科学館・テルモ見学 ...........5 事務局から・新刊紹介 .......................................12 科学ジャーナリスト塾 .....................................6-7 1 JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ2 例会報告 1 「魅力ある研究現場を」有本さん、科学技術政策を語る 科学技術基本法ができてから来年で10年になる を国内で育てることだ。自らが進んで投資したい が、ふえた政府投資によって研究現場に活力が生 と思うような、魅力にあふれた国づくりをしなけ まれているのか。今年最初の例会は1月15日、文 ればならない。 部科学省科学技術・学術政策局長になったばかり これまでの日本のような「出る杭は打たれる」 の有本建男さんを招き、「科学技術政策はどう作 組織体制では先行きが難しい。長所を伸ばす、柔 られるか」と題して話してもらった。官僚の立場 軟で流動性に富む、多様性のある組織づくりが必 を超えて、歯に衣を着せぬ語り口で、「魅力ある 要だ。 研究現場」の大切さを強調した。 物づくりと知の空洞化が進む 科学技術政策の重要な問題の一つは人材だ。こ のところアメリカは、自国内に人材を求めるよう になり、そのための仕組みをつくっている。 企業や研究者・学生たちが、みずから活動した いと思う国を選ぶ時代になってきている。魅力の ある研究現場を作っていかないと、研究者が外国 に出て行ってしまう。物づくりの空洞化と知の空 洞化の両方が起きかねない。 科学技術基本法ができたのが1995年。科学技術 ▲有本建男・文部科学省科学技術・学術政策局長 基本計画の第2期(2001∼2005年)には、政府は 24兆円の研究開発費を投資し、バイオ、IT、環境、 現場の意識を変えなくては ナノテクを重点4分野としてきた。科学・技術は 政策としてますます重要になってきてはいる。そ 大学を見ても、教授会があって、これが非常に れでは第3期は24兆円を超えるのかというと、そ 閉鎖的な世界で、さまざまな弊害を産み、学生を んなことはない。 悩ましている。教育・研究環境が開放的になり、 第3期は第2期より難しい。よほど用意周到に 各人が自己のモチベーションをもち、素朴な感動 しないといけない。国民の理解と信頼、そして支 を共有するようになれば、理科離れにも解決策が 持を得なければならない。 見つかるのではないか。 ビックサイエンスとスモールサイエンスの概 科学で創造な仕事をするには、時空の座標軸を 念、基礎科学とは何か、この定義が曖昧だ。たと もった世界認識が必要だ。クオークなどの極小の えば、ゲノム解析を日本でもやっているが、研究 世界から、宇宙全体までの大きさの空間軸、それ は外国の装置を使っている。これで基礎研究をし に宇宙の始まりから未来までの時間軸を頭の中に ていると言えるのだろうか。 持っているといい。こうした座標軸での日本の位 21世紀の政策課題としては、地球規模で直面す る問題とわが国をめぐる問題がある。グローバリ 置も認識していないといけないが、いまの日本で はそんなことは教えていない。 ゼーションや大競争時代に対して、科学的ソリュ 科学や科学者に対する社会、公衆の態度を「理 ーションを見つけていくことが大切だ。科学につ 解・認識」から「信頼・支持」に変えていく。そ いての政策とともに、政策についての科学が要る。 れにはまず、科学者がどういう人間かを知らせる 21世紀前半の日本の課題は、人材、企業、投資 2 ことから始めなければならない。 (片桐良一) JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ3 例会報告 2 宇井さん、「現場で感じとること」を強調 2月例会は16日、環境科学者の宇井純・沖縄大 学名誉教授を招き、「公害問題の過去・現在・未 来」と題した話をうかがった。長年の自主講座 「公害原論」や、市民の手による公害監視運動な どの経験にもとに、現場を踏むことの重要性を説 き、ジャーナリストにとっても耳が痛い話だった。 いくつもテーマをもつこと 度々あった。研究がどれ位の確率で紙面に正確に 載るか、仲間内で議論したことがあった。 まず、研究者である自分たちが問題を整理して 話すことができるかどうか。次は記者が事前によ く勉強しているかどうか、記事を見るデスクが酔 っぱらわずに仕事をしているかどうか、営業の横 やりが入らないかどうか、中国の核実験で紙面を とられないかどうか。これらの確率をすべて掛け ていくと、5%くらいになった。 科学が進めば、公害問題も解決すると信じてい る人がいる。間違いとは言い切れないが、どんな 効率をあえて下げること に科学が進もうとも、できないことはできない。 大切なのは人間の生活そのものを変えていくこと であり、力でねじ伏せるようでは解決しない。 環境問題は、ほかの科学研究にくらべて進みが 遅く、競争的ではない。私がやってこられたのは、 行き詰まったときのために、同時にいくつものテ ーマを持ってきたからだ。私は公害問題の研究、 大学の教育問題の実践、下水の実験を同時に進め てきた。 どんなことでも続けていると1 0年でものにな り、20年もやっていると世界の第一線になる。も し芽が出ないとすれば、それはテーマが悪いのだ。 排水のための溝を下水処理のために利用する簡 便な方法を考案したオランダの科学者のところに 行ったことがある。その学者は、日本のメーカー に実施権を売った際、「この技術を土木屋の手に 渡すと沈殿池と返送ポンプを付けるにちがいな い」と懸念していた。果たしてオリジナルの技術 は殺され、金をかけて効率を上げる技術に歪めら れてしまった。 あえて効率を下げることのよさがある。効率を 落とすと、システムの安定性が増す。暇をたっぷ りかけるような廃水処理をする。これは、いわば 指導教官の言いなりに研究するのではダメだ。 「工業の農業化」である。 正確な記事が載る確率は5% ウソではないがホントでもない 1960年代に公害の問題がクローズアップされ、 私のところにも多くの記者が取材に来たが、なか なか言うことが伝わらず、後で当惑することが 環境科学者の仕事は、人に会って話を聞くこと が原点となる。議論で難しいのは測定データの扱 いだが、役所から出てくるデータは「ウソではな いが、ホントでもない」ことが多々ある。たとえ ば、水質のデータでは、同じ場所でも日にちや時 間によって変わる。うんと汚染がひどいデータを 採ろうとすれば夜中の3時くらいに採取すればい いし、逆に事前に上流の工場に採取日を教えてお けば汚染がすくないデータになる。 ▲宇井純・沖縄大学名誉教授 重要なのは、実際に現地に足を運ぶことだ。自 分で川を見ること、匂いをかぐこと、そして地域 住民に聞いてみることだ。そうすれば、くさいと か、濁っているとか、住民が感じていることがわ かる。この点で、環境科学者とジャーナリストは、 同じことを要請されている。 (片桐良一) 3 JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ4 例会報告 3 ヒトES細胞から再生医療へ 中辻京大教授にきく 3月例会は24日、日本記者クラブで哺乳類発生 生物学者の中辻憲夫・京大再生医科学研究所長を 招いて開いた。中辻さんはES(胚性幹)細胞の 意義を指摘し、国内初のヒトES細胞づくりや、 再生医療への展望をたっぷり語った。会員外の約 20人も含め約60人が参加して、これまでの例会で もっとも盛況だった。 無限増殖の多能な細胞 ES細胞は1981年、マウスでまず実現し、特定 の遺伝子を壊した実験動物のノックアウトマウス ▲中辻憲夫・京大再生医科学研究所長 に応用されてきた。未分化のまま、どんどん増え 続ける不思議な細胞だ。正常な初期胚からつくる されていた凍結胚20数個をいただいた。そのうち ので、ネズミに移植しても良性腫瘍にしかならな 4、5個しか細胞分裂が始まらず、胚盤胞になっ い。 た3個からES細胞株をやっと樹立して、KhE ほぼあらゆる種類の細胞に分化できる。では、 全能かというと、胎児をつくる能力はない。体の S1、2、3と名付けました。ひやひやの成功だ った。 部品はつくれるが、設計図通りに組み立てること 凍結胚の提供を受けるに当たっては、プロセス はできない。複雑な生物を形成していく空間情報 が細かく決められています。それを厳格に守った。 は卵子の細胞質にある。「多能性細胞」といった 社会の信頼を得ながら慎重にゆっくり進めること ほうが正しいだろう。 が、結局は確実な早道だと思っている。日本の社 ヒトES細胞は98年に米国で報告された。受精 会は良識があり、一般の人々も好意的だった。 5日目の胚盤胞の内部細胞塊からつくる。マウス これらのヒトES細胞は公共の資源だ。政府が のES細胞は1日に2回分裂する。ヒトES細胞 認めた研究機関への無償分配も始めた。研究成果 は1日半に1回分裂し、無限に増え続ける。薬の は使用機関に属する。新しい治療法研究や新薬の 安全性の試験にはすぐ使えるし、細胞移植の治療 開発に役立ててほしい。 にも期待されている。 外国に出すかどうかは決まっていない。日本の 組織の幹細胞は、増殖能に限界があります。分 ヒトES細胞と交換したいというような申し入れ 化能が高くて、増殖能が無限大というのは、初期 があれば、対応を考えないといけないだろう。米 胚に由来するES細胞だけの性質だ。大量培養も 国だけはヒトES細胞の特許が成立している。米 できるので、細胞の3%しか心筋細胞にならなく 国に出せば、特許侵害で訴えられる可能性がある。 ても、選別できれば十分な量は確保できる。遺伝 ヒトES細胞で実用化が一番近いのはパーキン 子改変もできる。 ソン病だ。ドーパミンをつくる神経ができればよ い。5年後には世界のどこかで臨床試験が始まっ ひやひやの成功 ているだろう。脊髄損傷や心筋症、糖尿病、肝硬 変に応用が続いたにしても、免疫拒絶の問題解決 昨年、われわれのグループがヒトES細胞をつ など、再生医療の最終ゴールまで数十年かかると くった。カニクイザルのES細胞づくりの経験か 予想される。今後は、細胞の再プログラム化の仕 ら、条件を最適化して臨んだ。3つの病院に保存 組みなどを解明する必要がある。 4 (小川明) JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ5 例会報告 4 東芝科学館と家電解体工場を見学 4月例会は14日午後、東芝科学館と家電解体工 しい魅力を備えていた。 場のテルムを見学した。約30人が参加し、盛会だ 戦前の電気冷蔵庫や1970年代の日本語ワープロ った。東芝の社会投資ともいえる事業を見て、創 など、国産1号機の電気・エレクトロニクス製品 設者の天才からくり師、田中久重(1 7 9 9 - 1 8 8 1) がずらりと展示され、20世紀の産業技術史を垣間 から脈々と引き継がれる創造の気風も感じ取れ 見ることができる。東大に納入した1954年の国産 た。 初の電子計算機が現在の小さな1チップの演算能 力も下回ることも、実物の比較で解説しており、 国産1号機がずらり 川崎市幸区にある科学館は、東芝の85周年記念 目覚ましい進歩と価格の低下を実感できる。 手作業ですばやく解体 事業として1961年に、当時の中央研究所の一隅に 設立された。浅田靖之館長は「地域に開かれた文 横浜市鶴見区の工業地帯、東芝京浜事業所にあ 化施設の企業館としては日本の草分けです」と話 るテルムの家電解体工場は、資源循環型社会を目 す。 指す総合環境ソリューション企業で、従業員約 370人。 年間125億円の売り上げがある。ISO取得の コンサルタントや環境エンジニアリングも手掛け るが、家電製品の環境リサイクル事業が主力だ。 東芝科学館と同じく61年に設立された。パソコ ン、テレビ、冷蔵庫、エアコンの解体工程を見た。 パソコンは作業員がドライバーでねじを外してい た。手で有害物質や有効な金属を仕分ける根気の 要る作業だ。自動化が進む製造工程より、手間は かかりそうだ。 ラインは7つ。1ラインに5、6人の作業員が 防じんマスクやヘルメット、手袋をして、冷蔵庫 年間約12万人が訪れ、うち半分は中学生の修学 やテレビを順次すばやく解体していた。シュレッ 旅行や小学生の校外学習だという。科学館のテー ダーに頼らず、手による解体が中心。騒音は高い マは「人と科学のふれあい」。近所の親子連れも が、上部から風を流してほこりを吸い込み、作業 来て遊んでいた。 環境はきれいだった。 土曜日には、子供向けの実験室や実験ショーも 長谷川滋テルム取締役は「採算とリサイクル率 開いている。子どもたちが超電導など最先端技術 の両立が難しい」と語った。産廃など行政の許認 に触れて、体験しながら科学に親しめるようにな 可手続きが複雑で、煩雑なのが悩みのようだ。最 っており、人気が長続きする理由が分かる。 近は産廃の不法輸出や不法投棄が多い。これらの 豪華な建築が目立つ最近の公的科学館に比べれ ば、何の変哲もない地味な3階建てだが、中身は 不法行為の防止にも注意を払うという。 「解体で一番大切なのはプラスチック。処理す なかなかのもの。液晶や大型ディスプレーでは、 る業者間のネットワークができあがっている」と 商品化前の新技術まで紹介。超伝導磁石による浮 長谷川さんはいう。情報公開に心がけていて、年 上効果の実演(写真)など、案内して下さった川 約5000人の見学を受け入れて、環境報告書も発行 島水保さんも、科学の面白さを伝えるのにふさわ している。 (小川明) 5 JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ6 科学ジャーナリスト塾 塾生が新聞づくり・番組づくりに挑む 科学ジャーナリスト塾の第2期は、2004年3月 で、全日程を終了した。カリキュラムは、1期生 たちの強い希望で、講義型から演習型に大きく転 換し、塾生自身の手で新聞・番組制作を行うこと を中心に展開した。 塾生自らが選んだ「遺伝子治療」「環境問題」「科 学技術政策」「理科教育」の4つのテーマに、それ ぞれ希望するテーマ別に分かれた6人ずつの8チ ームが新聞・番組制作に向けて走り出して約5ヶ 月。仕事の関係などで2チームが途中で空中分解 してしまったのは、なんとも残念だった。 しかし、その 一方で、塾の授 業とは別に、毎 週のように日曜 日に集まって作 業したチームな どもあって、と にかく6チーム が新聞も番組も 完成させたのは 立派だった。最 終日に塾生と講 師らの投票によ り、 1編ずつ「グ ▲新聞づくりで、グランプリを得た塾生新聞 ランプリ」を選 んで表彰したが、いずれも甲乙つけ難い、なかな かの出来栄えだった。 塾生らの感想は別項の通りだが、総じて言えば 「有意義だったけど、きつかった」という声に集約 されよう。全体の反省点としては、テーマが大き すぎて抽象的になってしまったこと(もっと個別 のテーマの方がやりやすかったのではなかった か) 、2チームずつ競争させた意味があまりなく、 8チームが8テーマを追ってもよかったこと、新 聞か映像番組か、どちらかを選択させるという方 法もあったこと、などが挙げられる。 第2期は、新聞・番組づくりの演習に全体の半 分の時間を割いたが、残りの時間で「科学ジャー ナリストに聴く、訊く」と題して、新聞を佐藤年 緒氏(時事通信OB)に、テレビを林勝彦氏(N HK)に、雑誌を高木靭生氏(日経サイエンス) に、フリーの記者について神保哲生氏(ビデオ・ 6 ジャーナリスト)に、それぞれ存分に語ってもら った。 科学ジャーナリスト塾は、2期もまずまず成功 だったと自己評価しており、塾の開講によって科 学ジャーナリズムを支える人の輪が確実に広がり つつあることを実感している。 (柴田鉄治) 塾生たちの感想 環境教育の疑問に答え(岡山泰史) 私自身が強い関心を持っていたテーマで、まが りなりにも作品がまとまったことに感謝したい。 「環境教育とはなにか」というここ数年の疑問へ の答えを自分なりに持てた気がしている。 おう盛な議論などにも支えられ、新聞と映像の 両方を並行してまとめるというかなり欲張った目 標も達成することができたが、正直、みなさんこ こまでやるか!と驚いた。 次回は、雑誌というメディアを作るというのは どうだろう。まず編集会議をしてコンセプトを固 め、班分けし、各班で数ページずつ分担する。最 後はレイアウトソフトで流し込み作業までやり、 簡易印刷する。こんな内容なら、ぜひ参加したい。 ネットワーク築きたい(長谷川式子) 記事を書く、番組製作の姿勢、ご苦労などは十 分に伝わった。塾での演習活動にあって、 私た ちの班はなにより「人」に恵まれた。何事にも協 力的で、投げかけたことに必ず返事が返ってきた。 お互いを尊重しあい、それぞれの発言に率直に感 動できた。 今回の活動を通じて感じたことは、これからジ ャーナリストを目指す方のネットワークを、広く 堅く、築くことが必要だということ。これからも 続く各期の塾生との関わりをもてるような企画も 必要なのではないかと思う。 科学を面白く伝える使命(梅田和宏) 科学を分かりやすく伝えるべきか、それとも面 白く伝えるべきか一各チームが卒業制作でつくっ た新聞や映像を見ながら、こんなことを考えてい た。そして塾を卒業した今、分かりやすい科学の JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ7 ▲塾での実習風景 コンテンツが「面白い」につながるのか、と思索 している。 現状では、科学に興味のない人にいくら分かり やすく科学を伝えても、「面白い」にはつながら ない。ならば、科学ジャーナリストの役割として 求められているのは、科学を表面的に伝えるので はなく、科学を面白く伝える力なのではないか、 と考えるようになった。もっといえば、科学を面 白く伝え、興味をもたせることにおいてこそ、科 学シャーナリストはその手腕を発揮するといえ る。ここでの出会いを大切にしてこれからも邁進 して行こうと思う。 放課後の議論も有意義(高嶋秀行) 科学雑誌編集者・記者の私にとって有意義だっ たのは、講師の方の講演はもちろんだが、毎回、 放課後にうどん屋でお酒を酌み交わしながら諸先 輩方から、生の現場の声を伺えたこと。同じ班に 原子力業界で働いている方がいて、講師の方々と 原子力問題でちょっとした論争(?)もできた。 演習に関しては、塾としての目的が曖昧になり、 十分な成果は挙げられなかったのではないか。私 たちの班も含めて学級新聞の域を出ないものが多 かったようだ。来期は「ジャーナリズムとは何か」 を塾生の間で徹底的に議論した上でテーマを決め るべきだろう。二次情報で作品をつくるのではな く、しっかりとした取材に基づいて記事・映像を つくっていく必要があると思う。 実務的なワザを盗みたい(徳富亨) 私は本を企画するために,自己流で取材したり 人に会ったりしてきた。「意見や感想は誰でも言 えるが,そのバックデータを保証することこそプ ロである」というのが私の考えなので,それにつ いて何か実務的な「ワザ」を身につけたいという のが今回の参加趣旨だった。 ところが「課題」2本の作製が講座の中心にな ってしまい,しかも最も抽象的なテーマである 「科学技術政策」だったので,いきおい「特に新 しいデータを取ってくることもなく,誰にでも言 えそうな意見を書いた」だけに終わってしまった。 書籍で世に新しい知見を送り出すということに ついては「報道」と同じ責任の重さを担っている はず。それを支える背骨となるのはやはりバック データだと思う。これからもJASTJ に参加して, 先輩諸氏からその辺りの「ワザ」を盗もうと企み 続ける確信犯となろう。 人に伝わる情報発信を(鈴木亮) 大学院博士課程を卒業したばかりの研究生とし て、科学という難しそうなものを、わかりやすく おもしろく、そして正確に伝えるのはとても難し いことを学んだ。個人的には、都立大の問題を提 起したことによって、よりその難しさを感じた。 私の問題提起の仕方は、わかりにくく不正確で、 多くの人の誤解を招いた。どうしたら人に伝わる 情報の発信ができるのか、今回の塾からはまだ見 出せなかった。それが私の今後の課題であり、ま た塾の課題ではないかとも思う。塾生からの情報 発信に対し、積極的に批評がされることを望みた い。 アマチュアも情報の送り手に(石川泰彦) 今回の記事編集の過程で気がついたことはアマ チュアであっても新聞はつくれるということだっ た。パソコンでかなりのことができることがわか った。具体的には編集ソフト『朝刊太郎』を使用 することで段組などのレイアウトがある程度、簡 易にできた。 新聞というメディアが一般の間でも使われ、多 くの人が制作や読後批判に参加するようになれ ば、科学者や教育関係者、そして一般の方におけ るメディアリテラシーの普及にも役立つのではと 思う。一見それらしく見えるということは悪くす れば情報の混乱を招くかもしれないが、誰もが気 軽に情報の送り手になれる状況は確実に広がって いる。そのような時代にあって、科学ジャーナリ スト塾がアマチュアによる科学ジャーナリズム文 化の健全な発展に果たす役割も大きくなるのでは ないかと考える。 7 JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ8 会員報告 1 科学者と市民の対話をフランスに見る フランスでは、科学と社会を結ぶためのイベン 泊、食事はすべて提供される。地元ウ゛ィエンヌ トが国立機関の主催でよく開かれている。どんな 県とポワトー=シャラント地方が全面的に援助し ものか体験してみたいと思い、昨秋、代表的な2 ているようだ。討論のほかに、ダンスパーティな つの催し会場を訪れた。そこで見た科学と社会の ども企画され、とても楽しい雰囲気だった。 交流ぶりを、個人的感想をまじえながら紹介する。 第12回科学の祭典 第13回CNRS科学と市民の出会い 2 0 0 3年1 0月1 3 - 1 9日、フランス研究・新技術省 2 0 0 3年1 0月2 4 - 2 6日、フランス国立科学研究セ ンター(CNRS)主催。 主催。 これは、いわば地元密着型の催しだ。フランス 「きみが1 8 - 2 5歳なら、すべての分野の研究者 全国とヨーロッパのいくつかの国で、毎年10月の たちと話しに来ませんか。CNRS科学と市民の出 第3週に同時開催される。場所は、各地の研究機 会い、年1回の考えるための出会いに参加しませ 関、大学、博物館など。研究者が企画した展示、 んか。さあ、登録しよう!」 講演、映画、カフェ、演劇などが催され、市民は このような呼びかけを C N R Sのホームページ (http://www2.cnrs.fr/jeunes/120.htm)でみつけ 好きなとき、好きな催しに参加できる。 わたしはパリ地域だけを訪れ、おもに「科学村」 て興味をもった。対象年齢ではないのでオブザー というのを見学した。これは、各地で3日間設営 バーとして参加できないかと問い合わせたとこ される研究者と市民の交流の場で、パリではフラ ろ、あっさりと許可がおりた。 ンス研究・新技術省の敷地が使われる。いろいろ 会場は、フランス中西部の古い歴史をもつ町、 な研究機関の催しを見て回ったほか、伝統あるカ ポワティエの郊外にある会議場。参加した若者た ルチエ・ラタンをめぐるツアーにも参加してみ ちは丸2日間ほとんど缶詰になり、専門分野の研 た。すべてボランティアの研究者たちが運営し、 究者をかこんで討論する。 楽しそうに進められていた。詳しくはホームペー このイベントの発案者は、現代フランスを代表 する思想家、エドガール・モランと1990年代初め にC N R S所長だったフランソワ・クリルスキー。 ジ(http://www.recherche.gouv.fr/fete/2003/) を 参照。 フランスでは、1980年代の後半あたりから科学 目的は、将来を担う若者たちと研究者の間に対話 と社会の乖離を問題視する声が、研究者の間で出 を生み出すこと。今回のテーマも次のように多様 始めたときく。それをなんとかしなければと、 だ。 1990年代の初めに上のような活動が始められたわ すべての人のためのエネルギーとは▽ヨーロッ けだ。しかし現実はきびしく、このような活動に パ/アジア、異文化相互性と多文化性▽研究、進 積極的にかかわろうという研究者は少数派だとい 歩、開発▽言語と言語能力▽文明とリスク▽化学、 う。いわゆる研究業績にならないからである。論 すべての危険を生む科学か▽映像の力と可能性▽ 文業績優先という、いま世界の科学研究界がかか 数学的思考▽宇宙学▽生物学と社会的要求 える問題が、ここにも影を落としている。 わたしは、 「ヨーロッパ/アジア...」のワーク そのような情況の中で、フランスの活動をみて ショップに参加してみたが、ここでは主に、異文 興味深かった点は、 「科学を伝える」ことよりも、 化相互性( i n t e rc u l t u r a l i t ) é と多文化性 科学者と市民という「人と人との対話」が強調さ (m u l t i c u l t u r)の違い、異文化同士が出会っ alité たときになにが起こるか、が話し合われた。 全体の参加者は500人ほど。参加は無料で、宿 8 れていることである。 (桃木暁子) JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ9 会員報告 2 心臓・大動脈瘤・大腸……連続手術からの生還記 医学が進歩するなかで、医療事故にまつわる話 人工血管はダクロン製の直径2.5cmほどのジャ も多い昨今。相次ぐ大手術に耐え2月初旬に退院 バラ管で、実際には脊髄等へ枝血管が出ているた した私に、近況を−というわけで、書けば長い話 め、すべてを人工血管につながなければ半身不随 をちょっとだけ。 になる。手術には13時間以上もかかったようだ。 1週間も意識不明で集中治療室に入っていたが、 病気はただ一つ、大動脈瘤の治療が当初の目標 だった。風邪をこじらせて日経診療所に行くと、 次の週は強い麻酔薬のせいか幻視・幻聴・見当意 識障害などの「せん(譫)妄」に見舞われた。 胸のレントゲン写真を撮られた。それを診た名医 ベッドの周りにセンサーを張って看護師さんが が「変なものが写っている」という。肺炎ですか、 見守っていた。我ながら面白い経験をしたものだ。 肺がんですか。「いや、変な影が見える」。健康診 せん妄も大動脈瘤の原因もまだ十分解明されてい 断は毎年受けていたのに。さっそく、東大病院で ないと言う。 CTによる精密検査を受けたら動脈瘤が見つかっ た。 心臓バイパスと腸ポリープ切除 最後は大腸摘出の緊急手術 しかし、これにも耐えて手術は無事成功し12月 に退院。これで終了と一部の方に年賀状も書いた それから年が経った。動脈瘤は直径5c mを超 が、暮れにまた大出血し救急車で病院に逆戻り。 えると危険になる。破裂すれば一巻の終わり。い 「出血多量で命がもたない」と言われ、今度こそ よいよ時期が来て、新装なった東京大学医学部付 私も観念した。8月にもあった出血は「憩室」か 属病院で昨年2月に手術しようとしたところ、心 らのものだったことが分かり、緊急に大腸の全摘 臓が弱っていて出来ないとのこと。 出手術をした。 そういえば階段を駆け上ると胸が痛む。カテー この手術も成功し、やっと病から解放されたよ テルを入れて調べると、冠動脈のほとんどが詰ま うだ。まだ体力は落ちているが、今度こそ大丈夫 っている。心筋梗塞を防ぐため、胸と腕を同時に でしょう。 切り開き3本の動脈を切り出して心臓に巻き付け るバイパス手術をした。これで8月には大動脈に 再挑戦できる見通しとなった。 ところが、いよいよ手術しようとしたところ、 この間、多くの方々から激励・お見舞いの便り も頂いた。心より御礼申し上げます。 私の場合、幸い近代医学とそれを駆使する専門 医たちに恵まれた。術後の経過も良く、以前と変 今度は腸から大出血。調べたところ直径3c mの わらぬ生活に戻れそうだ。文字通り命からがらだ 大ポリープがあるとのこと。早速これを切除し、 ったが、おかげで、最新医学もその都度、勉強す 10月にやっと本命の大動脈瘤手術をすることにな ることができた。 った。 人工血管の取材をしていたころ、テレビ東京の 解説放送で細い人工血管は詰まりやすいとか、製 大動脈を人工血管に取り替え 造物責任法で製造が止まった話をした記憶があ る。未だ解決した様子はないが、人工血管は死ぬ これが半端じゃない。2度に分けてやるところ までもつそうだ。 (浅井恒雄) を体が弱ってくるので、1度に手術することにな り、胸から腹部、両股の分かれ目まで長さ5 0 c m 以上の大動脈を人工血管に取り替える手術となっ た。 9 JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ10 世界連盟だより WFSJ加盟相次ぎ、正式発足の運び 世界科学ジャーナリスト連盟(W F S J=W o r l d 同連合に加盟する22団体のうち、以下のアイ Federation of Science Journalists)への加盟が6 ルランド、ドイツ、スペインの3協会が個別での 団体を越え、規約に従って正式発足の運びとなっ 加盟も希望している。 た。いよいよ活動を開始する。加盟を表明してい るのは以下の団体。 The Irish Science Journalists Association (ISJA) http://www.iol.ie/~isja/ 国際サイエンスライター協会 The International Science Writers Association Journalistenvereinigung für technisch- (ISWA、本部米国) wissenschaftliche Publizistik, Germany (TELI) http://www.internationalsciencewriters.org/ http://www.teli.de/ 中国科学技術ジャーナリズム協会 Asociación Española de Periodismo Científico Chinese Society for Science and Technology (AEPC) Journalism (CSSTJ) http://www.ciencytec.com/pc/index.html http://www.csstj.org.cn/htdocs/cindex1.asp?tab= &menuid=284 このほか、ブラジルとカナダ・ケベックの科学 ジャーナリスト団体が加盟の意思表示をしてい る。 日本科学技術ジャーナリスト会議 Japanese Association of Science and Technology 韓国とエール交換 Journalists (JASTJ) http://www.jastj.jp カナダ・モントリオールで開かれる第4回科学 日本医学ジャーナリスト協会 ジャーナリスト世界会議事務局に、韓国科学記者 Medical Writers Association of Japan 協会(Korean Science Reporters Association http://www.meja.jp (KOSRA) http://www.scinews.co.kr)の会長から 会議参加とともに連盟加盟を希望するメールが届 コロンビア科学ジャーナリズム協会 いた。それによると、韓国科学記者協会は1984年 Colombian Association of Science Journalism に設立され、94年に政府の認可を受けた。現在、 (ACPC), 31社450人の会員がおり、会長のほか5人の副会 http://anm.encolombia.com/noticyt7.htm 長、6人のDirector、2人の監事がいて、年に1 回の大会と3 - 4回のセミナーを開いているとのこ とだ。 カナダサイエンスライター協会 Canadian Science Writers' Association WFSJ理事・当会副会長として歓迎の意をメ ールで送ったところ、まもなく会長から「モント http://www.sciencewriters.ca/ リオール会議には3、4人が韓国から参加する。 近いうちに日韓で話し合いの機会をもちたい」と 欧州科学ジャーナリスト協会連合 European Union of Associations http://www.esf.org/eusja Science Journalists' いう旨の返信が届いた。 アジア各国との連携を深めながら、世界との交 流を広げていくことができるよう、会員の皆様の ご協力をお願いします。 10 (高橋真理子) JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ11 新入会員自己紹介 岩村 秀(放送大学教授 東京文京学習センター所長) 放送大学の主題科目「若者の科学離れを考える」 物理年としました。研究者は井の中に閉じ籠る傾 向が強まり、社会は科学を重要な学問と考えなく がこの4月から始まっています。これまで研究一 なっているなど、科学と社会との乖離が進んでい 筋だったのですが、この制作を契機に、科学者の ます。この溝を少しでも埋めることができたらと 社会に対する責務を自覚し、科学・技術の啓発に 願っております。 おける科学ジャーナリズムの重要性を学びまし た。 白楽 ロックビル(お茶の水女子大学教授) 30年以上、細胞生物学の研究をしてきましたが、 太田 泰弘(情報知識学会専門用語研究部会長) 10年前から「バイオ政治学=国民の幸福のための 日本規格協会(JSA)のなかで専門用語の標準 バイオ研究のあり方」を提唱し、①バイオ研究と 化に取り組んでおります。ISOなどの国際標準へ メディア②バイオ研究費の問題③研究者の事件− の発言権強化が国の方針となり、ようやく日本語 を研究しています。 での表現が重視される気運が高まりましたので、 皆様とのかかわりを深めたいと念願しています。 引野 肇(東京新聞科学部長) 11年ぶりに本籍の科学部に戻ってきました。社 岡村 定矩(東京大学大学院理学系研究科長) 会部時代も、科学関係の本を読んだり、講演会に 就職以来25年間、大学という社会から出たこと 出たりと、できるだけ科学の近くにいるよう心が がない天文学者です。基礎科学を中心的に担う部 けていました。顔なじみの方も多く、再びお付き 局の責任者となり、科学ジャーナリズムへの関心 合いのほど、よろしくお願いします。 が増してきました。この会の活動から多くを学べ ることを期待しています。 堀越 俊一(講談社ブルーバックス出版部長) ブルーバックスは昨年、創刊40周年を迎えまし 小嶋 修一(TBS報道局社会部次長) これまでに厚生省や環境庁などの記者クラブを カバー、現在は医療・環境・福祉を担当する総合 た。これからも面白くてわかりやすい科学啓蒙書 の出版を続けるために、当会で勉強させていただ きたいと思います。 デスクです。「がん・難病などの最先端医療」「生 命科学と倫理」をテーマにしています。昨年は一 ヶ月余りかけて米国のポストゲノム事情を取材し ました。 森杉 美知代 (ベネッセコーポレーション岡山本社) 高校生向け理科教材の編集に携わっており、理 科教育や地域での青少年向け科学啓蒙活動にも関 心を持っております。会議のサイトを見て興味を 佐々 義子(NPO「くらしとバイオプラザ21」) GM食品などのバイオテクノロジー関連情報を 持っていました。関西からの参加ですが、ぜひ積 極的に勉強させていただければと思っています。 市民に伝えるため、H P運営、資料作成、イベン ト企画などをしています。バイオリテラシーとは 柳田 明子(日本テレビ報道局「からだ元気科」ディレクター) 何か、人の痛みのわかる情報の共有のあり方につ 医療情報を中心とした番組づくりに携わって8 いて実践しながら考えていきたいと思います。 年弱になります。医療現場における科学者のこだ わりや言葉をより多くの人に享受してもらうため 並木 雅俊(高千穂大学教授) IUPAP(国際純粋・応用物理学連合)は、アイ に、これからも科学に寄り添い、私なりの情報科 学の神髄を模索し続けたいと思います。 ンシュタインの奇跡の年から百年の2005年を世界 11 JASTJ会報/No.31/全部 04.4.27 11:53 AM ページ12 事務局だより ■5月12日に総会 ■会報デザインを一新 定期総会を5 月12日(水)午後6時から日本記者クラブ この号から会報のデザインを一新しました。会報がホ で開きます。昨年の会則改正以来、科学と社会のコミュ ームページに掲載されるのもスピードアップします。今 ニケーターを目指す人など広範な層から入会者があり、 回の会報と一緒に会員名簿も添付しました。変更があれ 会員は130人を超えました。創立10年の節目で、会の方 ば事務局に連絡ください。 向を決める総会になります。 ■次の会報は特集号、原稿募集 ■科学ジャーナリスト養成でフリートーク 次の会報32号は10周年特集号です。会に期待すること、 総会後には、「科学ジャーナリストをどう養成するか」 をテーマに会員同士の自由な意見発表の場を設けます。 ジャーナリズム論、科学と社会の架け橋に必要なことな ど、テーマは自由です。積極的な寄稿を待っています。 皆さんからの積極的な提言をお願いします。 字数は1ページ分(22字×70行程度、写真も歓迎)。半ペ ■10周年記念事業 ージでも結構。締め切りは5月末。あて先は、武部俊一 ◇7月3日には記念行事 編集長stakebe@hotmail.com. J A S T J創立1 0周年を記念するイベントを7月3日(土) 午後1時30分から日本記者クラブで開催します。 新刊紹介 ◎第1部は「ジャズミュージシャンとサイエンス」と題 BOOKS 『京都議定書は実現できるのか―CO2規制社 会のゆくえ』 して、ミジンコなどの生物に詳しいサックス演奏者の坂 田明さんに、演奏をまじえて科学の話を伺います。 ◎第2部(2時半すぎから)は「2 1世紀の科学と社会」 石井孝明著(平凡社新書・740円) をテーマにしたシンポジウム。評論家・立花隆さん、池 温室効果ガスの排出削減を義務付けた京都議定書 の成立過程を振り返り、遵守が厳しくなった原因や 背景を総整理した。筆者は地球サミット以降の1996 年に入社した時事通信記者。「環境」推進派への冷 めた目での評論に終わらぬ今後に期待。(年) 内了・名古屋大教授、有本建男・文部科学省科学技術・ 学術政策局長、高橋真理子・朝日新聞論説委員が出演、 林勝彦 N H Kエンタープライズ2 1・エグゼクティブプロ デューサーのコーディネーターのもとに進めます。 ◎第3部(午後5時すぎ)は、懇親パーティ(立食式、 会費3000円)です。 このイベントの準備や当日の運営を手伝って下さる方 がいると助かります。お気持ちのある方は、早めに連絡 いただけると幸いです。 ◇記念図書の出版 会員30人以上が協力してまとめた「科学ジャーナリズ ムの世界」(仮題)を6月末までに刊行する準備が進んで います。化学同人発行、約300ページ、価格は2400円前 後になりそうですが、会員には1部ずつ贈呈する予定で す。 編集 後記 『物理学者たちの20世紀――ボーア、アイン シュタイン、オッペンハイマーの思い出』 アブラハム・パイス著、杉山滋郎、伊藤伸子訳(朝日 新聞社、3990円) ナチスのユダヤ人迫害と戦後の素粒子物理学の革 命を生き抜いた物理学者が、出会った天才たちの素 顔や生きざまを描いた、臨場感あふれる自伝。「2 0 世紀は戦争と科学の世紀」という言葉通りの時代を 生きた当事者の証言として最後のものかもしれな い。ボーア、アインシュタイン、オッペンハイマー など百人近いノーベル賞級学者との交友が描かれ興 味がつきない。(豊) イラクで多くの市民や兵士が命を落としているうちに、サクラが散り、新緑の季節となりまし た。国内では、都会の思わぬ所に死角がありました。ビルの回転扉事故です。小さな命が失われ てから、「危ないと思っていた」という声が噴き出ました。こういう身近なリスクに警鐘を鳴らす のも、科学ジャーナリストの役割ではなかったか。 今年は、わたしたちJASTJの創設10周年。7月に向けて記念の出版物や催し物の企画が進んで います。次号の会報は、会員のみなさんの意見をできるだけたくさん盛り込んだ記念特集としま す。ふるって投稿して下さるようお願いします。 (俊) 編集・発行 日本科学技術ジャーナリスト会議 Japanese Association of Science & Technology Journalists (JASTJ) ホームページ 12 〒105-0004 東京都港区新橋2-10-5 末吉ビル科学技術広報財団気付 会 長 牧野賢治 makinok34@yahoo.co.jp 事務局長 佐藤年緒 hello@jastj.jp 編 集 長 武部俊一 stakebe@hotmail.com http://www.jastj.jp
© Copyright 2024 Paperzz