神戸労災病院広報誌 神戸労災病院の理念 1.勤労者医療の推進 2.患者様中心の医療提供 3.やさしさと和 4.専門職としての 社会的責任の遂行 No.10 内痔核の硬化療法について ∼いぼ痔を切らずに治療∼ 外科 中村吉貴 痔は、日本人 察を受けたほうがよいでしょう。 の3人に1人は 痔核の治療法としては薬物療 かかえている身 法 、手 術 、注 射 療 法があります 近な病気です。 が、数年前から脱出する内痔核 排便時の出血、 (いぼ痔)に対しては硬化剤(ジ 痛み、肛門部の オン注)を注射して縮小させる 違和感、腫瘤感 硬化療法が行われるようになってきました。この方法で などを症状とし すと、多くの場合切らずに治療できますし、切る場合も切 ま す 。痔 は 痔 除の大きさを小さくすることができます。再発率はやや 核、裂肛、痔瘻(じろう)の3つに分類されていますが、そ 手術に劣りますが、再注射が可能ですし、痛みが軽く低侵 の中でも約6割を占めるのが痔核(いぼ痔)です。 襲な方法です。外痔核に対しては硬化療法の適応はあり 痔核(いぼ痔)は肛門周囲の血管や支持組織が肛門内 ません。 に膨 れ 上 がって できたも の で す 。肛 門 の ふ ち から約 痔は症状の軽いうちに治療をはじめることが大切で 1.5cm奥に歯状線とよばれる直腸粘膜と肛門のつなぎ す。 トイレで長くいきまない、便秘・下痢を避ける食習慣を 目がありますが、それより上方(直腸側)にできるものを つくる、入浴して肛門の血行を良くするなど生活習慣を 内痔核、下方(肛門側)にできるものを外痔核といいま 改善し、外用薬を使用することで症状はかなりよくなりま す。外痔核のように皮膚に近いものほど痛みを伴うこと す。また脱出を伴う内痔核に対しては硬化療法が一般的 が多くなります。また内痔核自体は奥にあるので痛みま となってきました。当院では一泊二日で硬化療法を行 せんが、排便時にいきむと出血したり、肛門の外側へ飛び なっています。詳細は当院外科外来を受診し御相談くだ 出して脱肛と呼ばれる状態になると痛みが出てくること さい。 があります。出血の程度はさまざまで紙に付着する程度 のものから、ぽたぽたと便器が真っ赤になるものまであ り、出血を繰り返して貧血をおこすこともしばしばありま す。脱肛も、排便後に自然に肛門内へ戻るものから、指で おせば戻るもの、おしても戻らないもの、さらには出っ放 しの痔核が肛門にしめつけられて腫れ上がり激しく痛む ものまでさまざまです。 気をつけたいのは肛門出血の約10%は痔以外の原 因によるものということです。肛門からの出血を痔が原 因だと思い込み、市販の薬を使用しているうちに大腸が んが進行していたということがありますので、早めに診 神戸労災病院広報誌 やまびこ 聴診器と、新しい心血管撮影装置 循環器内科部長 井上信孝 2011年8月、サッカーの松田直樹選 の医療機器があります。前述した心血 手が心筋梗塞で倒れました。最近心臓 管撮影装置、心電図、心エコー、胸部レ 病に罹患されるかたの若年化を実感致 ントゲン、そして聴診器など様々です。 します。またその一方で、日本は超高齢 聴診器にて聴き取られる心臓の音、心 化社会を迎えており、心臓病を有する高 臓の雑音からは、たくさんの情報がわ 齢者の方々を診察する機会が増えてき かります。心臓弁膜症の有無、心不全の ました。さらに生活習慣の多様化も加わ 状態、血管が細くなっているかなど、心 り、急性心筋梗塞、急性冠症候群などの 臓の音を聴くだけで患者さんのかなり 冠動脈疾患の患者さんが増加していま ことが評価できます。聴診器で患者さ す。心臓は血液を体中に送りこむポンプです。その心臓自身 んを評価することは、医師としての「匠」の技術のひとつと に栄養し、血液を心臓の筋肉に供給するのは、冠動脈によっ 思っています。私は、医者になりたての頃から、聴診器には てまかなわれています。急性心筋梗塞は、この冠動脈が突 一番いい物をずっと使用してきました。これは自慢話ではな 然に血栓(血の塊) によってその流れが途絶え、心臓自身が く、聴き取れないことを聴診器のせいにしたくないからで 壊死に陥る病気です。我々は、 こうした心臓病の対する治療 す。 「この聴診器は安物なので、聴き取れません」、そんない の手段として、2011年11月、心血管撮影とカテーテル治 い訳をしたくないからです。 療を行う専門装置、 ドイツ・シーメンス社製フルデジタル心 今回、我々は最新鋭の心血管撮影装置を手にいれまし 血管撮影装置を導入しました。 た。もう、機器のせいにするような言い訳はできません。今 これまでの機器に比べて、格段に優れた高画質能を有し 後は、最新鋭の心血管撮 ており、微細な血管まで描出が可能になりました。また、 この 影装置を用いて、多くの 装置の導入により一度に2方向からの撮影することが可能 心臓病の方々に対して、 になり、検査に使用する造影剤の量が少なくてすむことにな 最良の医療を提供する りました。造影剤は、 どうしても腎臓に負担をかけるので、腎 ことが我々の責務である 臓の働きが低下している患者さんや、高齢者の方々への負 ことを認識し、循環器内 担が軽減されることが大いに期待されます。 科スタッフ一同一層努力 心臓が悪い患者さんの病状を評価するために、たくさん してまいります。 2 階総合受付、または下記の電話、FAX、 メールのいずれかでお申込み下さい。 神戸労災病院では、ひろく勤 労者とその御家族を対象とし て、勤労者予防医療セミナー を開講しております。 セミナーでは、生活習慣に対 するアドバイスを通じて、み なさまが健康な日々を過ごす ためのお手伝いをいたします。 みなさまの御参加を心よりお 待ちしております。 平成24年 月 10:00∼ 1 21日(土) 平成24年2月18日 (土) 11:00∼ 平成24年 宴会シーズン・ 暴飲暴食に注意しよう 寒い冬は要注意! 高血圧はサイレントキラー 糖尿病予備軍といわれて 安心してませんか? ∼冬の消化器感染症と脂肪肝∼ 独立行政法人 労働者健康福祉機構 神戸労災病院 勤労者予防医療部 神戸労災病院広報誌 No.10 (平成24年1月4日発行) T E L 078-231-5901 F A X 078-242-5316 ∼手間いらず簡単鍋で減塩工夫∼ 講義:久保 公了(消化器内科副部長) 講義:大西 一男(予防医療部長) 栄養指導:久永 文(栄養管理室長) 講義:¥1,000講義+食事指導:¥2,500- 11:00∼ 3月10日(土) ∼糖尿病の基礎知識と合併症の予防∼ 講義:西海 智子(糖尿病内科副部長) 栄養指導:久永 文(栄養管理室長) 講義+食事指導:¥2,500- TEL:078-231-5901(内線2643) FAX:078-242-5382 E-mail:yobou@kobeh.rofuku.go.jp 独立行政法人 労働者健康福祉機構 〒651-0053 神戸市中央区籠池通4丁目1−23 心の電話相談 078-231-5660 URL http://www.kobeh.rofuku.go.jp ※予告なくセミナーの内容が変更となる場合がありますことを御了承ください。 患者の権利の尊重 と 患者−医療者のパートナーシップ ・良質で安全な医療を行います。 ・わかりやすく十分な説明を心がけます。 ・治療法などに関し患者様の意向を尊重します。 ・患者様のプライバシーを尊重します。
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