FocusOn April 2012 Japan’s Hotel Market After The Quake 震災後の日本ホテルマーケット アップデート版 April 2012 2 FocusOn –Japan’s Hotel Market After The Quake – Updates - April 2012 著者 沢柳 知彦 ジョーンズ ラング ラサールホテルズ 東京オフィス マネージング ディレクター tom.sawayanagi@ap.jll.com 2000 年 6 月 ジョーンズ ラング ラサール ホテルズ 東京オフィスを開 設、シニア ヴァイス プレジデントに就任。マンダリン・オリエンタル東京プ ロジェクト、ロイヤルパーク汐留タワープロジェクト等でオーナー側アドバ イザーを務める。 2003 年 7 月 エグゼクティブ ヴァイス プレジデント就任。以後、賃貸住 宅の運営契約を含むリッツカールトン東京プロジェクト、全日本空輸とイ ンターコンチネンタルホテルズとのホテル運営会社 JV 組成等の企業提 携支援業務に従事。アジア・パシフィック地域最大といわれる全日本空輸 ホテルポートフォリオ売却案件のプロジェクトリーダーを務める。 2007 年 7 月 マネージング ディレクター就任。以後、ニセコヴィレッジ他 複数案件において、日本に初めて投資を行なうアジア投資家向けの売却 案件のプロジェクトリーダーを務める。 一橋大学経済学部卒。コーネル大学ホテル経営学部修士課程修了。 . 用語解説 ADR Average Daily Rate 平均客室単価 BCP Business Continuity Plan 事業継続計画 RevPAR Revenue Per Available Room 1 日当たり販売可能客室 FocusOn - Japan’s Hotel Market After The Quake - Updates– April 2012 はじめに レポートの目的 2011 年 5 月そして同年 7 月、当社は 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災の日本ホテルマーケット への影響に関するリサーチレポートを発刊した。 本レ ポートは、2012 年 3 月 31 日現在(「本レポート作成時」)、 当初見通しとの比較や、将来のホテル運営実績や資産 価値の予測を立てるために新たに考慮に入れるべき問 題がないかを再度検討し、情報を更新するために作成 された。 当レポートでは以下の問題を取り上げる。 i. 日本のツーリズム及びホテルビジネスに影響を 与えている要因の現在の状況 ii. ホテル運営実績の現在の状況と今後の見通し iii. 日本のホテル投資マーケットへの影響 iv. 東日本大震災後の見通し 3 4 FocusOn –Japan’s Hotel Market After The Quake – Updates - April 2012 日本のツーリズム及び ホテルビジネスに影響を 与える要因の現況 1. 余震 気象庁によると、東日本大震災の余震数は時間の経 3. 電力不足 2011 年夏、政府は東京電力管内の企業と家庭に向 過とともに減少しており、これまでのところ 2011 年7月 けて、電力消費を前年夏と比べて 15%節約するよう要請 に発生したマグニチュード 7.0 超の余震を超える大きな した。東京電力管外の地域でも原子炉原子炉が検査の 余震は起きていない。 ために停止し、程度の差はあるが、同様の問題が起き グラフ 1: 東日本大震災余震回数 た。東京電力はかつて電力供給の約 30%を原子炉原子 炉に依存していたが、2012 年 3 月までに依存率は 0% まで下がった。国は、2011 年の電力消費ピーク時の電 力不足はしのぐことができたが、2012 年夏のピーク時、 東京電力管内では 13.4%の電力不足が見込まれている。 原子炉停止のため、東京電力は原子力発電に比べ格 段に運転コストが高い火力発電所に大きく依存せざるを 得なかった。進行する世界的な原油価格上昇もあり、東 京電力は 2012 年 4 月以降年間契約を更新する際には 17%の電気料金値上げを決めた。この自動的な値上げ は政府だけでなく企業・家庭からも批判されている。し かし、東京電力には電力の安定供給を行い、福島原子 力発電所事故に起因する損害賠償を行う責任がある。 遅かれ早かれ、東京電力を救うためこの電気料金値上 2. 放射能漏洩 東京電力は、福島の破損した 4 機の原子炉に水冷装 置を設置した。その結果、2011 年 9 月以降原子炉内部 の温度は 100℃未満を保っている。また、原子力発電 所敷地境界の放射線量は、年 0.1 ミリシーベルトまで減 少した。こうした事実から、2011 年 12 月 16 日、野田佳 彦首相は福島第一原発事故収束に向けた工程表ステ ップ 2 が完了したと宣言した。 げは実行されることになるだろう。 ホテル総売上の 12%が電気料金とすると、何も節電対策を行わない場合、 この値上げによって運営コストが 0.2-0.3%上昇すること が考えられる。 FocusOn - Japan’s Hotel Market After The Quake - Updates– April 2012 4. 訪日外国人数の減少 これは、依然として日本の宿泊産業の完全復興を妨 げている問題である。日本政府観光局によると、2012 年 2 月の訪日外客数は 548,000 人で、前年 2 月に比べ 19.3%減少している。この主な要因は、本来中国の春節 の間に旅行者が多かったのが、2012 年に春節の時期 が 2 月から 1 月に変更されたことである。実際、2012 年 1 月の訪日外客数は 685,000 人で、前年 1 月に比べ てわずか 4.1%の減少に留まっている。 全体としてみると、中国からの訪日外客数は増加して いる。2011 年第 4 四半期でさえ、中国からの訪日客数 は前年同時期と比較して 13.2%増加している。一方、か つて訪日外国人で最も多かった韓国からの旅行者は 45.6%減少した。震災直後、韓国では日本に地理的に近 いことや、正確な情報が伝わっていなかったことから、 放射能漏洩が韓国まで及ぶのではないかという不安が 広がった。現在の落ち込みの要因は、そうした感覚の問 題だけではなく、円高に対する韓国ウォン安のため、韓 国からの旅行者にとって日本旅行費用が高くなっている ことにもある。 2011 年第 4 四半期 居住国別訪日宿泊者数 順位 居住国 宿泊者数 前年同 期比 vs 4Q2010 1 中国 920,000 18.1% 13.2% 2 台湾 670,000 13.3% -10.7% 3 韓国 570,000 11.2% -45.6% 4 米国 540,000 10.6% -21.5% 5 香港 380,000 7.4% -1.6% 5,090,000 100.0% -19.4% 合計 出典: 日本政府観光局(JNTO) 5 6 FocusOn –Japan’s Hotel Market After The Quake – Updates - April 2012 ホテル運営実績の現況と 今後の見通し グラフ 2 : 東京シティホテル客室稼働率 (%) 東京シティホテルマーケット 2011 年 4 月の東京シティホテルの RevPAR(販売可 能一室当り一日当り客室売上)は 8,776 円まで落ち込ん だ。これは、前年同月比 56.8%の減少である。この落ち 込みは、ADR が 9.5%、客室稼働率が 52.2%それぞれ大 幅に減少していることに起因している。 ホテルオペレーターは宿泊需要の落ち込みにも関わ らず、大幅な値下げを避けてきたが、その努力は客室 稼働率が年後半に戻ってきた時に報われた。事実、 2011 年 12 月には震災後初めて RevPAR が前年同月 グラフ 3 : 東京シティホテル ADR (JPY) 比 3.7%上昇した。 しかし、この好調な流れは長続きはしなかった。2012 年 1 月及び 2 月には RevPAR が前年同月比で 5.2%減 少しており、東京シティホテルマーケットが震災の影響 から完全には脱しきっていないことが分かる。後述する が、訪日外客数が完全に回復しておらず、これにより、 本マーケットにおいて法人需要が好調にも関わらず、ホ テル運営業績の不安定要因となることが考えられる。今 後数ヶ月の間に訪日外客数が完全に復調することで、 2012 年後半期東京シティホテルマーケットの RevPAR は 2010 年の水準をしのぐ結果になるだろう。 全体としてみると、復調のペースは当初予測よりもず っと速い。残された懸念は、法人の料飲及び宴会需要 の回復が、個人客に比べて遅いことだ。 当社の当初 予測は、東京シティホテルマーケットの業績は 2013 年 3 月までに 2010 年の水準にまで回復するというものだ った。ホテル運営会社の多くは 2012 年 12 月期予算を 2010 年度実績と同じかそれ以上の水準で見ている。 グラフ 4 : 東京シティホテル RevPAR (JPY) FocusOn - Japan’s Hotel Market After The Quake - Updates– April 2012 東京ビジネスホテルマーケット . このセグメントの RevPAR の推移は、東京シティホテ グラフ 5 : 東京ビジネスホテル客室稼働率 (%) ルマーケットのものと似ているが、ADR の回復の遅れ が懸念となっていた。 2011 年 3 月に客室稼働率が 80%台前半から 60%にま で落ち込んだ経験から、多くのビジネスホテルオペレー ターは需要を掘り起こそうと、先を争って客室料金を下 げた。だが、宿泊客の多くが出張者のため価格に的をし ぼったプロモーションは効果がなく、この戦略はうまくい かなかった。 結果として、2011 年 4 月は客室料金の値 下りにも関わらず、客室稼働率は上がっていない。 2011 年 6 月には客室稼働率が 80%まで上昇するも、 ADR は依然として前年同月比 9.4%のマイナスとなって グラフ 6 : 東京ビジネスホテル ADR (JPY) いる。2011 年 9 月から 11 月までの月別客室稼働率は 90%近くまで回復していたが、震災以降、前年同月比で ADR の増加が確認できるのは 12 月に入ってからである。 これは、値下げによって市場全体の売上が増えるわけ では無いため、個々の物件の価格政策が必ずしも市場 規模の極大化をもたらさないことの典型的な例である。 このセグメントが訪日観光客需要や宴会売上への依 存度が低いこともあって、当社の当初予測ではホテル の業績は 2012 年 9 月までに 2010 年の水準にまで回復 するというものであった。しかし、早い段階で着実に法 人セクターでの需要が戻ってきたことが RevPAR の素速 い回復を支え、このセグメントは 2012 年 3 月には 2010 年の水準にまで完全に回復したと思われる。 グラフ 7 : 東京ビジネスホテル RevPAR (JPY) 7 8 FocusOn –Japan’s Hotel Market After The Quake – Updates - April 2012 大阪シティホテルマーケット 2011 年 3 月から 4 月にかけ、BCP(事業継続計画)を導 グラフ 8 : 大阪シティホテル客室稼働率 (%) 入している多くの多国籍企業では、本社を大阪に移転 することを考える企業も出て、一時的に需要に変化があ った。こうした企業のうち、移転を実行に移したのはわ ずかだったにも関わらず、大阪やその他関西の主要都 市では客室を確保するため高額な室料が支払われた。 ADR の急激な上昇が見られた最初の 2 ヶ月を過ぎる と通常の水準に戻ったが、客室稼働率は 2011 年 4 月以 降着実に上がっている。これは法人、観光、MICE セグメ ントの需要が東京から大阪に移ってきていることが一因 である。また、多くのシティホテルが所在する梅田地区 グラフ 9 : 大阪シティホテル ADR (JPY) に、大阪ステーションシティの新規開業を含む再開発計 画が進行していることも要因としてあげることができる。 2011 年 5 月にオープンしたこの新しい複合商業ビルに は、三越伊勢丹や大丸百貨店も入居している。梅田地 区では今後 3 年から 4 年間で「うめきた」と呼ばれる 24 ヘクタールの再開発計画が進められる予定だ。 当社の当初予測では、東京マーケットに比べて震災 の影響が少なく、訪日観光客需要への依存度も低いこ とから、このセグメントにおけるホテル業績は 2012 年 9 月までに 2010 年の水準まで回復すると見込んでいた。 しかし、2011 年 7 月以降既に毎月、前年同月をしのぐ 水準で RevPAR が推移している。問題は、この調子を 維持できるかどうかである。当セグメントが好調なのは 梅田地区の再開発計画に依るところが大きく、この恩恵 は今後数年続くと見られる。 グラフ 10 : 大阪シティホテル RevPAR (JPY) FocusOn - Japan’s Hotel Market After The Quake - Updates– April 2012 ホテル投資マーケットへ の影響 震災後の売買取引 2011 年前半は 2010 年の同時期と比較して、ホテル 資産売買取引件数は減少した。これは売主、買主ともに • 2 件の取引のみが 50 億円以上であり、金額非開示の 取引の多くは、10 億円以下であった。なお、2011 年に 売却された物件の平均客室数は 149 室で、2010 年の 東日本大震災が、対象となるホテルのキャッシュフロー 164 室より減少している。これは小規模で安価なホテ と資産価値にどの程度影響を与える可能性があるのか ルが多く売却されたことを示している。また大規模ホテ 様子を伺っていたためと推測される。その結果、2011 年 ル資産にマーケット価格で投資する買主が少ない一方、 経営不振の物件を好む投資家が多い。 後半の売買取引件数は、以下の 2 点が主な要因となっ て 2010 年の同時期と比較して上昇した。まず、西日本を 売買取引の詳細については、別途ジョーンズ ラング 中心にホテル運営業績が急速に回復し、それが先延ば ラサール ホテルズから発行予定の「ホテルインテリジェ しになっていた売買取引を合意へと導いた。また、売主と ンスジャパン 2012」をご参照いただきたい。 レンダーのなかには今回の震災の影響を受け、譲渡損 失を確定させる意思決定をした先があった。 以下は 2011 年に顕著だった事柄である。 • 少なくとも 55 件の売主のうち 15 件は投資ファンドであ った。多くのファンドが投資期限を迎えたり、融資が満 期となる為、この傾向は 2012 年も継続するとみられる。 • 買主のうち少なくとも 5 社は、ホテル以外の用途での 再開発を目的とした、日本のデベロッパーであった。 • 買主のうち 5 社は J-REIT であるが、そのうち 3 件は J-REIT のスポンサー企業により売却されている。 • 買主の少なくとも 8 社は主に香港やシンガポールなど 海外に拠点をおく会社もしくはファンドである。うち 6 件 の取引が 2011 年 3 月 11 日以降にクローズされてい る。これは海外投資家が東日本大震災を理由に日本 への投資を見送ることはなかったことを意味する。 グラフ 11: 日本におけるホテル売買取引数 9 10 FocusOn –Japan’s Hotel Market After The Quake – Updates - April 2012 ホテル賃料支払い上のトラブル 先に述べた通り、東日本大震災により売り上げが低 下し、ホテル賃借人が期日通りに賃貸人に賃料を支払 えない事例が見られた。そうした賃貸人の多くは、未払 賃料を向こう数ケ月に渡って分割払いとすることに同意 したが、中にはホテル賃借人に対し強硬姿勢を示した 事例もある。例えば日本ホテルファンド投資法人が保有 していた新宿のスターホテル東京では、賃借人が建物 からの立ち退きに応じ、アコーがこれを機に同ホテルを 2011 年 11 月 1 日に日本初の「ホテルイビス」としてオ ープンさせた。一方で、賃借人が賃貸人に対し、賃料減 額を求めた事例もある。こうした要求は東日本大震災が 引き金ではあるが、主に震災前からの売り上げ低下が 原因となっている。 こうした紛争は長引く傾向にあり、 裁判所に判断を委ねる例もある。結論が出るまでには、 今後数ヶ月から 1 年程かかるだろう。 FocusOn - Japan’s Hotel Market After The Quake - Updates– April 2012 東日本大震災後の見通し 訪日外客数は現在も回復途上にあるものの、国内の ら 350 キロも離れているにも関わらず、2011 年 から 宿泊産業は、2012 年 3 月までに東日本大震災がもたら 2012 年の冬期に入っても、前年同時期と比較して、24% した負の影響から大幅に回復した。しかし日本のホテル 減少の 214,000 人であった。 青森県は東北地方に位 産業に問題や課題は残っており、今後の成長を妨げか 置しており、東北全域が放射能の懸念があると考えら ねない。本節では、こうした課題がマーケットの見通しに れている。つまり、東北地方においては、企業による高 与える影響について述べる。 い客室需要がある一方、観光による需要は低く、否定 的な報道の影響から立ち直るには時間がかかると見ら 1. 東北地方の客室需要 れる。 先節にて、東日本大震災がホテル運営実績にもたら した負の影響について述べた。しかし仙台のマーケット 2. 本レポートの冒頭部分にて述べた通り、東京電力は は状況が異なる。 東北地方の玄関口である仙台市は、人口 100 万人を エネルギーコストの増大 電気料金を平均で 17%値上げする予定である。 東京 擁し、東日本大震災による津波で甚大な被害を受けた宮城 電力管外においても、火力発電への依存が大きく、原 県の県庁所在地である。市内のインフラ整備は 2011 年 油価格が近年高騰していることから、同様の傾向があ 4 月に急速に回復し、東北地方の復興作業の監督拠点 る。 として、多くの政府関係者や企業従業員が滞在している。 こうした状況はホテルオーナーの省エネ設備への投 その結果、仙台市の稼働率は 90%を超え、RevPAR は、 資や、省エネルギー計画の導入を後押しするだろう。 前年同月比で 25%から 40%上昇した。 主要なインフラ 白熱灯照明から LED 照明への変更は、電力消費量と 整備終了後も、町や村の丘陵地への移転や鉄道の再 共に、LED 照明は白熱灯照明の 10 倍長く使用できるた 建を含め、東北地方沿岸部の再設計と復興に向けた大 め保守担当者の人件費も削減出来る。例えば 2012 年 規模な事業が必要とされている。従って、仙台市の客室 3 月 8 日に開業した客室数 221 室のアパホテルなんば 需要は今後数年間は高い水準を保つものと予想される。 心斎橋の照明機器は、全て LED である。同ホテルは節 水方式の浴槽とガス燃料のコジェネレーターも導入した。 対照的に、福島県のみならず青森県から栃木県に至 るリゾート地は東日本大震災以降、主に福島の原子力 既存ホテルオーナーにとって、設備投資は競争力を維 持するための経費削減に不可欠であると言える。 発電所に起因する放射線被ばくの恐れから、軒並み売 上が落ちている。放射線量は健康に害をおよぼす基準 値以下であるにも関わらず、観光客はこの地域をあえ 3. インバウンドビジネス 先述の通り、訪日外客数は徐々に回復している。例 て訪問先として選ばない。例えば、世界遺産である東照 えば、2011 年 12 月の訪日外客数は前年同月比で 宮のある栃木県日光市は、福島の原子力発電所から 11.8%の減少となったが、2011 年 4 月には前年同月比 150 キロも離れているにも関わらず、震災以降 3 か月 で 62.5%の減少であったことを考えると、大きく改善して 連続で、前年同月比で 30%観光客が減少した。青森県 いる。訪日外客数は、国内の宿泊需要の 5%から 6%を の十和田湖国立公園の観光客数は、原子力発電所か 占める程度だが、東京は他地域よりもこのセグメントに 11 12 FocusOn –Japan’s Hotel Market After The Quake – Updates - April 2012 依存する部分が大きい。実際、訪日外客数と東京のシ ティホテルマーケットには、強い相関関係が見られる。 4. 格安航空会社の参入 本論からは離れるが、関西国際空港に拠点を置く全 それ故、東京のホテル運営実績の完全な回復には、訪 日空出資のピーチ・アビエーションが、2012 年 3 月に就 日外客数の復調が不可欠である。 2011 年 12 月は、 航することを皮切りに、本年は日本国内に格安航空会 震災以降初めて、このセグメントにプラス成長が見られ 社が参入する最初の年となる。日本航空とカンタス航空 たが、2012 年 1 月および 2 月は減少を記録した。この が共同出資したジェットスター、そして全日空とマレーシ 動きは下掲のグラフ上でアノマリー(変則的な動き)とし アのエアアジアが共同出資したエアアジア・ジャパンが て見て取れる。 通常、10 月から 12 月には訪日外客数 2012 年の 7 月と 8 月にそれぞれ成田空港を拠点として の急増が見られなくても RevPAR は大幅に上昇する。 就航を始める。 就航路線は、千歳空港(札幌)、神戸空 そのため、この時期に訪日外客数が減少しても運営実 港、福岡空港、長崎空港、鹿児島空港、那覇空港を予 績が良好なのは、自然なことである。 定している。 加えて、現存の独立系航空会社スカイマ 詳しくは後述するが、格安航空会社が日本の国内線 ークが、那覇-宮古島線をはじめ新規路線に低価格に にて就航を開始し近い将来にはより多くの格安航空会 て参入を開始した。その結果 2011 年 12 月の宮古島へ 社が国際線に参入を始めるだろう。時間の経過と共に、 の観光客数は、前年同月比で 28%増加した 放射能の懸念やヨーロッパ通貨危機不安が払拭されれ 格安航空会社の参入は、国内外の旅行者数を押し ば、今後数か月のうちに訪日来客数は完全に回復する 上げ、ゆくゆくは日本の宿泊産業に恩恵をもたらすだろ と予測される。 う 。 グラフ 12:東京シティホテル RevPAR と訪日外客数の推移 FocusOn - Japan’s Hotel Market After The Quake - Updates– April 2012 5. 不良債権および商業不動産担保証券の処理 ムーディーズによると、2011 年末の時点で、商業用 不動産担保証券(CMBS)のうち約 6,000 億円の貸付残 高が債務不履行となっており、その中にはホテル資産が 担保となっているものもあり、既にテイル期間(融資延 長期間)のものも多い。こうした債務不履行は主に震災 の影響ではなく、2006 年から 2007 年のマーケットのピ ーク期に過大なレバレッジをかけたことに起因する。し かし震災により担保となるホテルのキャッシュフローが 一時的に減少し、借主はローン完済可能な金額での売 却や借り換えが困難な状況に陥ったことも事実である。 ローンをバランスシートレンダーが保有している場合、 状況によっては借り換えが可能である。 しかし商業用 不動産担保証券は借り換え不可で、担保物件は最終的 には売却され投資家に配当されることになる。このこと から、日本のホテル売買市場においては、今後数年間、 より多くの資産売却が見られるものと予想される。 13 14 FocusOn –Japan’s Hotel Market After The Quake – Updates - April 2012 ジョーンズ ラング ラサール ホテルズ ジョーンズ ラング ラサール ホテルズは、ホテルおよびホスピタリティ分野に特化したグローバルな不動産サービス会 社である。買収・資金調達にかかるアドバイス、資産評価、売却支援、ホテルアセットマネジメント業務を提供しており、 その対象資産は、高級ホテル、中級ホテル、バジェットホテル、小規模ホテル、パブに及ぶ。また単体のホテルから大型 ポートフォリオ、複合開発プロジェクトまでを網羅している。 過去 5 年において、約 4,000 件のアドバイザリー・資産評価業務および他社を凌駕する取引額の売却・買収・資金調達 支援業務を提供しており、その取引総額は 300 億ドルを上回る。世界 20 カ国 42 事業所にて業務を展開しており、事業 所間の綿密な連携も他社にない強みとなっている。専門的かつ広範なリサーチおよび実績を通じて、各種マーケットと プレイヤーに精通し、問題解決へのプロセスを提供している。 www.joneslanglasallehotels.com 免責事項 本レポートは、本レポートの受領者宛に対外秘で作成されており、ジョーンズ ラング ラサール ホテルズからの書面による事前承 諾なく、本レポートの全部若しくは一部を、資料、報告書、閲覧物、その他媒体を問わず、第三者に公表することを禁じる。 本レポートに記載される将来予測については、確実性を伴うものではなく、不確実な見込みに過ぎない。また、将来予測は多数の 変動要因についての想定に基づくものであり、その変動要因は状況に応じて変化するとともに、最終的な将来予測結果に多大な影 響をもたらす可能性もある旨、留意いただきたい。ジョーンズ ラング ラサール ホテルズは本レポートに伴って公表される資料の内容 について何ら表明・保証を行うものではなく、また、本レポートは投資家及びその他の第三者に対して取引の勧誘・奨励を目的として 作成されたものでもない。 本レポートはあくまで一般的な参考資料として作成されており、助言を目的として作成されたものではない。本レポートの利用者 は、本レポートの内容に依拠することなく、記載されている情報につき自ら確認・検証すべきである。なお、本レポート中の情報につい ては、信頼性の高いと思われる情報源から引用しているが、ジョーンズ ラング ラサール ホテルズは、これら情報の正確性について 独自に検証を行なったわけではない。 本レポートは誠実かつ細心の注意を以って作成されているが、本レポートの全部若しくは一部に関して、その正確性、通用期間、 完全性、適用性につき何ら表明・保証するものではない。ジョーンズ ラング ラサール ホテルズ、及びその取締役、従業員、外注業 者、並びに代理人は、本レポートに依拠したことに起因して直接的・間接的に生じた、損失、支払い義務、損害、支出につき、(法令で 許容される限度において)その責任を負うものではない。また、左記の記載に拘わらず、損害が是認された場合においても、当該損 害金額は、1,000 米ドルを超過しないものとする。 Jones Lang LaSalle Hotels’ Dedicated Offices Atlanta 3344 Peachtree Road, Suite 1200 Atlanta, GA 30326 United States tel: +1 404 995 2100 fax: +1 404 995 2109 Dallas 8343 Douglas Avenue, Suite 100, Dallas TX 75225 United States tel: +1 214 438 6100 fax: +1 214 438 6101 Leeds St Paul’s House,Park Square Leeds LS1 2ND United Kingdom Tel: +44 113 244 6440 Fax: +44 113 245 4664 Moscow Kosmodamianskaya Nab. 52/3 Moscow 115054 Russia tel: +7 495 737 8000 fax: +7 495 737 8011 San Francisco One Front Street, Suite 300 San Francisco, CA 94111 United States tel: +1 415 395 4900 fax: +1 415 955 1150 Auckland PricewaterhouseCoopers Tower Level 16, 188 Quay Street, Auckland New Zealand tel: +64 9 366 1666 fax: +64 9 358 5088 Denver 1225 Seventeenth Street, Suite 1900 Denver, CO 80202 United States tel: +1 303 260 6500 fax: +1 303 260 6501 London 22 Hanover Square London W1A 2BN United Kingdom tel: +44 20 7493 6040 fax: +44 20 7399 5694 Bangkok 19/F Sathorn City Tower 175 South Sathorn Road Tungmahamek, Sathorn Bangkok 10120 Thailand tel: +66 2 624 6400 fax: +66 2 679 6519 Dubai Burj Dubai Business Square Hub Building 1 Office 403, Sheikh Zayed Road PO Box 214029 Dubai, UAE tel +971 4 426 6999 fax +971 4 365 3260 Los Angeles 515 South Flower Street, Suite 1300 Los Angeles, CA 90071 United States tel: +1 213 239 6000 fax: +1 213 239 6100 Mumbai 1st Floor,2 Brady Gladys Plaza,1/447 Senapati Bapat Marg,Lower Parel, Mumbai - 400 013, India tel: : +91 22 3985 1400 fax: +91 22 2496 0324 Shanghai 25/F Tower 2 Plaza 66 1366 Nanjing Road (West) Jing An District Shanghai 200040 China (PRC) tel: +86 21 6393 3333 fax: +86 21 6288 2246 Barcelona Passeig de Gracia 11 4a Planta, Esc. A, 08007 Barcelona Spain tel: +34 93 318 5353 fax: +34 93 301 2999 Düsseldorf Kaistrasse 5, 40221 Düsseldorf Germany tel: +49 211 13006 0 fax: +49 211 13399 0 Beijing China World Trade Centre 4/F West Wing Office 1 Jianguomenwai Avenue Beijing 100004 China (PRC) tel: +86 10 5922 1300 fax: +86 10 6505 0298 Birmingham No.1 Colmore Square Birmingham B4 6AJ United Kingdom Tel: +44 121 643 6440 Fax: +44 121 634 6510 Brisbane Level 33, Central Plaza One 345 Queen Street Brisbane QLD 4000 Australia tel: +61 7 3231 1400 fax: +61 7 3231 1411 Buenos Aires Av Cordoba 673 7th Floor C1054AAS Buenos Aires Argentina tel: +54 11 4893 2600 fax: +54 11 4893 2080 Chicago 200 E Randolph Drive Chicago IL 60601 United States tel: +1 312 782 5800 fax: +1 312 782 4339 Exeter Keble House , Southernhay East Exeter EX1 1NT tel: +44 1392 423696 fax: +44 1392 423698 Frankfurt Wilhelm-Leuschner-Strasse 78 60329 Frankfurt Germany tel: +49 69 2003 0 fax: +49 69 2003 1040 Glasgow 150 St Vincent Street , Glasgow G2 5ND United Kingdom tel: +44 141 248 6040 fax: +44 141 221 9032 Istanbul Yeşim sok. No:2 Akatlar - Levent Istanbul 34335 Turkey tel: +90 212 350 0800 fax: +90 212 350 0806 Jakarta Jakarta Stock Exchange Building Tower 1, 28th Floor, Sudirman Central, Business District Jl. Jend Sudirman Kav 52-53 Jakarta 12190, Indonesia tel: +62 21 515 5665 fax: +62 21 515 5666 Lyon 55, avenue Foch 69006 Lyon Tel: +33 4 78 89 26 26 Fax: +33 4 78 89 04 76 Madrid Paseo de la Castellana, 51 Planta 5, 28046 Madrid Spain tel: +34 91 789 1100 fax: +34 91 789 1200 Manchester Chancery Place, 50 Brown Street Manchester M2 2JT tel: +44 161 828 6440 fax: +44 161 828 6490 Melbourne Level 21, Bourke Place 600 Bourke Street, Melbourne VIC 3000 Australia tel: +61 3 9672 6666 fax: +61 3 9600 1715 Mexico City Monte Pelvoux 111, Piso 5 Lomas de Chapultepec México, DF 11000 tel: +52 55 5980 8091 fax: +52 55 5202 4377 Miami 2333 Ponce de Leon Blvd, Suite 1000 Coral Gables, Florida 33134 United States tel: +1 305 529 6345 fax: +1 305 529 6398 Milan Via Agnello 8 20121 Milan Italy tel: +39 02 8586 8672 fax +39 02 8586 8670 Munich HighLight Munich Business Towers Mies-van-der-Rohe-Strasse 6 80807 Munich Germany tel: +49 89 2900 8882 fax: +49 89 2900 8888 New Delhi Level 9 Tower A, Global Business Park, Mehrauli Gurgaon Road, Sector 26, Gurgaon 122002 Haryana, India tel: +91 124 4605000 fax: +91 124 4605001 New York 601 Lexington Avenue, 33rd Floor New York NY 10022 United States tel: +1 212 812 5700 fax: + 1 212 421 5640 Paris 40-42, rue La Boétie 75008 Paris France tel: +33 1 4055 1718 fax: +33 1 4055 1868 Singapore 9 Raffles Place, #38-01 Repulic Plaza Singapore 048619 tel: +65 6536 0606 fax: +65 6533 2107 Sydney Level 18, 400 George Street Sydney NSW 2000 Australia tel: +61 2 9220 8777 fax: +61 2 9220 8765 Tokyo 3rd Floor, Prudential Tower 2-13-10 Nagatacho, Chiyoda-ku Tokyo 100-0014 Japan tel: +81 3 5501 9240 fax: +81 3 5501 9211 Washington D.C. 1801 K Street NW , Suite 1000 Washington, DC 20006 United States tel: +1 202 719 5000 Perth Level 29, Central Park 152 - 158 St Georges Terrace Perth Western Australia 6000 tel: +61 8 9322 5111 fax: +61 8 9481 0107 Rome Via Bissolati 20 00187 Rome Italy tel: +39 06 4200 6710 fax: +39 06 4200 6720 São Paulo Rua Joaquim Floriano, 72 – cj. 97 04534-000 São Paulo, SP tel: +55 11 3043 6900 fax: +55 11 3043 6999 www.joneslanglasallehotels.com COPYRIGHT © JONES LANG LASALLE IP, INC. 2012. All rights reserved. No part of this publication may be reproduced or transmitted in any form or by any means without prior written conse Jones Lang LaSalle. It is based on material that we believe to be reliable. Whilst every effort has been made to ensure its accuracy, we cannot offer any warranty that it contains no factual error would like to be told of any such errors in order to correct them.
© Copyright 2024 Paperzz