The Bank of Things あらゆるものをつなぐ銀行 あらゆるものをつなぐインターネットは 金融サービスをどのように変革するか 目次 新しく「わくわく感」のあるサービスへの進化 3 あらゆるものをつなぐインターネット 4 変わりゆく銀行の役割 5 あらゆるものをつなぐ銀行の3つのシナリオ 6 あらゆるものをつなぐ銀行の実現に向けた対策 8 あらゆるものをつなぐ銀行に不可欠な機能 9 未来は気づく前にやって来る 2 10 新しく「わくわく感」のある サービスへの進化 デジタル技術とモバイル技術の進歩は、顧客行動 や顧客の期待を根本から変えようとしています。 「カスタマー 3.0」と呼ばれる昨今の顧客は、 年齢、性別、収入といった従来のセグメント ではその姿を捉えることができません。カス タマー 3.0 は、ソーシャルメディアなどをよ く利用し、多くの情報を得て、高い要求を持ち、 多数の選択肢を求めています。これらの顧客 は望む時と場所と方法で、自分たちの思い通 りにやりとりすることを望んでいます。 銀行は、こういった顧客をより深く理解しよ うと、データから洞察を得る方法を模索して おり、そのナレッジをもとに、卓越したカス タマーエクスペリエンス(顧客体験)の提供 を検討しています。 それと共に特筆すべきは、「あらゆるものを つなぐインターネット」(Internet of Things) と呼ばれる新たな情報革命が起こっているこ とです。この情報革命によって、金融サービ ス企業がきめ細かいアドバイスや商品および サービスをほぼリアルタイムに提供できると いう、今までになかった機会を手中に収めま す。すなわち銀行は、あらゆるものをつなぐ インターネットのパワーを活用することで、 顧客の日々の暮らしにおける銀行の役割を変 え、人々の生活に新しく「わくわく感」のあ るものを提供するようになるのです。 アクセンチュアはこの新たな状況を、「あらゆ るものをつなぐ銀行」(Bank of Things) と呼び ます。 新たな顧客パラダイム:カスタマー 3.0 テクノロジーを利用して個別の ニーズを満たすことができる 特別なカスタマーエクスペリエンスが どのようなものかを知っており、組織との あらゆる対話にそれに相当するレベルの 体験を求めている ソーシャルメディアなどを よく利用する デモグラフィックの特定セグメント向けに 販売されたものではなく、顧客固有の 具体的な嗜好やニーズに応じたアドバイス、 オファー、提案を受けることによって、個人で 関わりを持つことを望んでいる クラウドを信頼している 各自の都合に合わせたタイミングで リアルタイムに答えを得ようとする 多くの情報を得ており、 要求が厳しい 自分が選んだチャネル(多くはデジタルの 手段) を通じて関わりを持ちたいと考えている 3 あらゆるものをつなぐ インターネット このわずか 25 年間で、インターネットは私た ちの生活を大きく変えました。現在、100 億 台以上の端末がインターネットに接続してお り、人々は従来よりも効率的に仕事をし、情 報を共有し、コラボレーションすることが可 能になりました。今後 10 年の間には、家電製 品から重機、果ては農作物や家畜に至るまで、 100 ~ 200 億種類のアイテムがセンサーを介 してさらにつながると予想されます。それぞ れのアイテムから安定したデータストリーム が提供されると、より理解が深まり、より的 確でより迅速な意思決定が可能になります。 要するに、「あらゆるものをつなぐインター ネット」が現実化します。 最近のさまざまなイノベーションから、この 未来の姿を垣間見ることができます。今や、 スマートフォンを使って温度自動調節器や家 庭内の照明を制御できます。オランダのある 新興企業は、家畜をインターネットに接続さ せる方法を見いだし、畜産農家が家畜の健康 1 状態を監視できるようにしました 。インター ネットに接続されたデバイスを使って、植物 や農産物の太陽光、熱、水、肥料レベルを測 定できます。運転手を乗せずに走る車やパイ ロットが要らない航空機は、もはや SF 小説の 話ではありません。あらゆるものをつなぐイ ンターネットの潜在性を抑制するものがある とすれば、それは人間の想像力とリスク選好 度のみです。 あらゆるものをつなぐインターネットは、か つてないレベルのデータとデータに基づく顧 客の洞察を銀行に提供します。これにより、 銀行は、顧客の人生や暮らしにおける日常の イ ベ ン ト を 反 映 し た 洞 察、 ア ド バ イ ス、 オ ファーを通じ、個人と法人の区別なく、真に 個別化したカスタマーエクスペリエンスを提 供するのです。あらゆるものをつなぐインター ネットは、銀行が Bank of Things すなわち、 「あ らゆるものをつなぐ銀行」へと完全に生まれ 変わるための重要ファクターなのです。 4 変わりゆく銀行の役割 カスタマー 3.0 が強く望み求めるエクスペリ 図 1:拡張されたエコシステム しに不可欠かつ重要な存在となり、またそう あり続けるためには、以下の 3 つの役割を果 銀行は、顧客のエコシステムやコミュニティ の重要な一端を担う存在となる必要がありま す。これを実現するには、特別な提携やパー トナーシップを構築し、顧客にアピールする 特別な価格設定のオファーを提示することが 有効です。 たす必要があります。 1. アドバイスの提供 銀行は、信頼できるアドバイザーとしての従 来の立場を守る必要があります。ただし、こ れからの銀行は、顧客のニーズを、顧客が必 要とするタイミングや状況で、それぞれに合 わせた個別のアドバイスを提供する努力をし なければなりません。 3. アクセスの支援 銀行は顧客との関係を利用して、保険会社、 医療機関、航空会社、ホテルといった、他のサー ビス業とのつながりを築き、顧客のニーズや ライフスタイルに合わせた価値あるオファー を提供する必要があります。 2 食品 電子機器 家電 燃料 衣料/靴 ペット 不動産(購入・賃貸) 消費財 電気/ガス 自動車(購入・修理) ザーとしての銀 バイ 行 ド ア 住 居 比較機能 購入提案 家具 関 機 通 交 家屋の修理 ハウスクリーニング/ ホームケア 2. 価値の統合 図 1 が示すように、銀行が顧客の日々の暮ら エンスを提供し、あらゆるものをつなぐ銀行 の時代がもたらす機会を最大限に活かすため に、銀行は社内の膨大な顧客データを、ソー シャルメディアやその他のデータソースから 導き出した洞察と照らし合わせる必要があり ます。このデータに基づいたアナリティクス を行うことにより、銀行は個々の顧客に対す る理解を深め、より最適なエクスペリエンス を提供できるようになります。銀行は、今日 の顧客の相違点を理解したうえで、イノベー ションと変革によって各自のニーズをより的 確に予測し、それを満たしていかねばなりま せん。 交通機関/駐車場 ホームセキュリティ ー シ ョ 対象を 絞った 広告 トレーニング/教育 め 対するソリュ 情報 &教育 の とし ズ 新聞/雑誌/書籍 役 スニー ての銀 足 ービ ズに 充 の 銀 行 Dマーケット プレイス 旅 行& レジ ャー イベント ホテル と し 航空便 ー の調 整 し と て ニ サ ン ら チケット 発券 者 自動車保険 の 融 金 暮 支援 防 健康&予 個人・家族保険 アクセス 医療サービス 行 クーポン/ 引換券/ ポイント 各種支払い 形態 価 値 の ま エコシステム内のサービス 通信 スポーツ活動 大企業 電話/インターネット 小売業者/中小企業/企業 レジャー活動 レストラン/バー 5 あらゆるものをつなぐ銀行の 3 つのシナリオ あらゆるものをつなぐインターネットがもたらす膨大なデータを受け、あら ゆるものをつなぐ銀行は、顧客の暮らしや日々の活動の中に常に存在するよ うになります。 あらゆるものをつなぐ銀行は、顧客のニーズ を予測し、その状況の変化に応じて顧客の目 的達成に役立つ適切なソリューションをタイ ムリーに提供します。顧客にとって、常に信 頼できるアドバイザー兼支援者であり、価値 をまとめる役目を果たします。ただし、その ためには、個々の顧客のニーズや特性を親密 とも言えるレベルで把握していなければなり ません。 パーソナルバンキング あらゆる種類のスマートデバイスを通じて取 得したデータにアクセスすることにより、あ らゆるものをつなぐ銀行は、最新の個人の資 産状況の全容をリアルタイムで顧客に提供す ることができます。銀行はデータ主導型の洞 察を活用して顧客ニーズを予想し、顧客が経 済面において賢く安全な意思決定を下すのに 役立つアドバイス、商品、ソリューションを 提供できます。このように、あらゆるものを つなぐ銀行は、常に見守り、役に立つアドバ イザー兼支援者となり、その結果として、顧 客ロイヤルティが築かれ、取引の増加につな がる可能性が高まります。 米国を拠点とする自動車保険会社の Progressive and Travelers は、 す で に テ レ マ ティクス端末を使用して、顧客の実際の運転 行動をモニターし、それに応じて保険料を調 整しています。これは、顧客を中心にした正 確な価格設定が標準となる世の中へと変わる 第一歩だと言えます。将来的には、家財保険 の補償範囲と保険料が、各世帯の家財道具や スマートデバイスから送信されるデータスト リームに基づいて、定期的に調整されるよう になるかもしれません。 あらゆるものをつなぐ銀行の パーソナルバンキング: 2019 年の東京 佐藤ユミさんは自家用車を整備工場に持って 行かなければなりませんでした。職場から帰 宅する途中で、ダッシュボードの警告ランプ が点滅したからです。彼女は、修理代が高く ついたらどうやって支払おうか、と悩んでい ました。 自宅に着いたユミさんがタブレットを取り出 して銀行のアプリを起動したところ、一目で 予算に余裕のないことがわかりました。彼女 の銀行では、支出、貯金、生活費に関する行 動の概略をリアルタイムに提供するために、 スマート冷蔵庫、電気メーター、貯水タンク、 その他の電化製品をはじめ、スマートフォン のデジタルウォレットや自動車からも、常時 データを収集しています。 6 これからの時代に成功する商業銀行は、顧客 企業が大きな商業的成果を出せるよう支援す る銀行です。サプライヤーから卸売業者や小 売業者に至るまで、法人顧客のバリューチェー ン全体からデータを入手することにより、あ らゆるものをつなぐ銀行は、はるかに深遠な 顧客の洞察を明らかにできます。銀行はこれ を通じて財務分析を実施し、ソーシャルメディ アなどがよく利用される極端に競争の激しい 市場において法人顧客が競争優位性を獲得で きるような商品やサービスを提案できます。 情報分析は、あらゆるものをつなぐ銀行が法 人顧客に提供できる最も価値ある商品サービ スのひとつです。たとえば、法人顧客独自の データに基づく洞察(顧客の好み、地域別市 場の相違点、需要変動の洞察など)をデモグ ラフィックデータや市場セグメントのデータ に組み合わせると、その法人顧客の価格モデ ルを見直すのに役立ちます。 画面の数字を見ていると、銀行からのアラー トメッセージが表示されました。銀行は、ユ ミさんの車の修理が必要であることを知り、 別の例として、輸送行程に関して法人顧客に 修理業者 2 社の見積金額と予約可能時間を連 よりよいサービスを提供する方法もあります。 絡してきたのです。まるで彼女の考えが分かっ 今後、利用可能な輸送データが増加すると、 たかのように、修理代の捻出方法の提案も含 製造企業は、商品の損傷・紛失の発生率が高 まれていました。それによると、休暇のため い輸送手段、輸送業者、ルートなどを特定して、 の積立貯金を 6 か月間減額するか、クレジッ リアルタイムに在庫価値を調整できるように トカードの利用限度額を修理代金の分だけ引 なります。あらゆるものをつなぐ銀行がこれ き上げるかのどちらかで、なんとかなるよう らのデータを他の法人顧客のデータと統合し です。銀行の提案では、最近の運転行動に関 て、さまざまな輸送オプションに伴うリスク する車のデータをもとにした自動車保険料の を突き止めれば、それに見合う価格で保険商 品を販売できます。 減額も考慮されていました。 ユミさんは、今年の休暇は近場で我慢するこ とに決め、カレンダーを調べて修理工場に予 約を入れました。その途端に、休暇のための こ の ほ か に も ト ル コ の Garanti 銀 行 で は、 積立金の目標額が画面上で更新されました。 iGaranti モバイルアプリを使用して、顧客の 好みのブランドにおける特別オファーの案内、 貯蓄方法の提案、支払いパターンに基づく月 末の予想残高などを配信しています。これは、 あらゆるものをつなぐ銀行が提供可能なサー ビス内容を示唆した例のひとつです。 ビジネスバンキング あらゆるものをつなぐ銀行の ビジネスバンキング 第一次産業向けバンキング ジョンさんは毎日この銀行にアクセスして、 農場の財務状況を更新しています。取引銀行 あらゆるものをつなぐインターネットによっ は、農場から送られた豊富なデータをもとに、 2020 年の広州(中国) て、農業事業者はかつてないほど正確に業績 農場の不動産や設備の価値と潜在的な生産高 医療機器メーカーの Hawkins + Weill(H+W) を把握できるようになります。リアルタイム を評価し、ジョンさんに貸付可能な融資額を は、世界中の多くのメーカーと同様に、サプ にデータが送信されることにより、農家は常 常時調整しています。この数年間に銀行が分 ライチェーンを命綱としています。顧客の期 に正確に農作物や家畜の健康状態を評価し、 析した農場データから、農場の財務状況はも 待の高まりと利益の縮小が続く中で、会社が 予想産出量、資産価値、事業全体の価値につ ちろん、土地の価値が上昇する可能性がある ことがわかりました。 健全な状態を維持していくためには、サプラ いてより高い精度で判断できます。 イチェーンを運用面と財務面の両方でうまく 農家とその取引銀行はもはや、過去の実績を ジョンさんは、古くなった収穫機を買い換え 管理することが不可欠です。 ベースにして融資金額と支払い条件を決める たいと考えています。オンライン中に、必要 毎日 H+W の本社に送られてくるデータスト 必要がありません。データを使用すれば、あ な機器購入ローンの事前承認が通っているこ リームは、サプライヤーからコンテナやトラッ らゆるものをつなぐ銀行は、現状と結果予測 とがわかりました。表示メッセージをクリッ クまで、また工場から倉庫や卸売業者まで網 に基づき、自然災害などの予測不可能な事象 クすると、オンラインアプリケーションが起 羅されているため、会社の在庫状況が細部ま も考慮に入れたうえで、柔軟かつ適切な返済 動し、わずか数分で融資が受けられることを で明らかに示されます。任意の時点で、自社 条件を算定できるからです。その結果、農家 確認できました。また、農場のバランスシー 製品とその構成部品をピンポイントで指定で の財務状況は改善し、取引銀行との関係もよ トへの影響もすでに記録されていました。 きるため、会社の納入プラン、価値交換の管理、 り強固なものとなります。 新しい収穫機の使用状況や状態に関するデー タは定期的に送信されることになるため、ジョ あらゆるものをつなぐ銀行による ンさんも取引銀行もいつでもその価値を把握 農業事業者向けバンキング できます。ジョンさんにとって何より重要な これと同じサプライチェーンデータが、同社 2021 年のオーストラリア、 のは、取引銀行が機器の使用状況に応じた柔 の取引銀行にも届いています。取引銀行は、 ニューサウスウェールズ州ハーデン 軟なローン返済条件を決定するために、この このデータを使用して H+W の財務状況や在 庫回転率をより詳しく理解し、銀行がこのメー ジョン・マーティン一家は、100 年以上にわ データがどのように使われるかということで (デー カーに提供している在庫担保融資を動的に調 たり、農場で小麦を育てています。技術が進 す。取引銀行は新しい収穫機と「トーク」 タのやり取り)をすることで、その使用状況 節しています。数か月前、主要な売上げの達 んでも、キャッシュフローの課題は依然とし 成前にサプライヤーへの支払期限が到達する て解決していません。しかし、ジョンさんは を見極め、農場の収入に対するこの機器の寄 ために、H+W のキャッシュフローが滞ること 融資面には自信がありました。というのも、 与率を計算し、ジョンさんの毎月の返済額を を予測した銀行は、事前に支払い猶予の条件 取引銀行が彼の農場の事業パートナーだから 調節します。 を同社に申し入れました。 です。 設備コストを抑えるための在庫レベルの縮小 などに役立ちます。 最近では、土壌や作物の状態、肥料レベル、 家畜の健康状態、さらには、農業機器やトラッ クの使用状況に至るあらゆる面から、農場の 日常業務がセンサーで分刻みにモニターされ ています。ジョンさんはこのデータを使用し て農場を管理し、銀行も同じデータを使って ジョンさんに最善のアドバイスを提供します。 7 あらゆるものをつなぐ銀行の 実現に向けた対策 前述したあらゆるものをつなぐ銀行のシナリオは、それほど現実離れした話 ではありません。あらゆるものをつなぐインターネットに関連したテクノロ ジーおよびサービスの収入は、2012 年の 4 兆 8 千億米ドルから 2020 年には 8 兆 9 千億米ドルへ増加すると予測されています。未来は瞬く間にやってき ます。この機会を生かすために、今、銀行は明日のあらゆるものをつなぐ銀 行を推進するエコシステムと機能の開発に投資するべきです。 あらゆるものをつなぐ銀行のエコシステムの構築 あらゆるものをつなぐ銀行を実現させるには、 この新しいモデルを支えるビジネスのエコシステムを確立する3つの 重要エリアに注目する必要があります。 1. 適切なパートナーシップ 2. 3. 収集データのアナリティクス コネクティビティ リーチを拡大し、顧客の生活エリアのすべてに 銀行内部データのアナリティクスに基づく顧客 卓越したカスタマーエクスペリエンスを提供し、 商品を組み込むために、エコシステムのパート の洞察を活用して、戦略的なビジネスの意思決 収益機会の拡大を牽引するために、複数のチャネ ナーと共同で取り組む必要があります。パート 定の土台が継続的に形成されます。ただし、エコ ルでシームレスに一貫性のある体験を創出しま ナーの例としては、他の金融サービス機関、 システムのすべてのパートナーとこれらのデー す。あらゆるものをつなぐ銀行は、 このような体 モバイルペイメント開発企業、公益サービス企 タを集成できたときに初めて、あらゆるものをつ 験をベースにして成り立つものであり、外部の新 業、通信企業、小売業者、テクノロジー企業 なぐ銀行が真に完全で個別化され、統合された しい配信チャネルを統合し、相互接続ネットワー などが挙げられます。 カスタマーエクスペリエンスを提供できます。 クを開発することで、既存の「銀行が所有する」従 来型チャネルからリーチを拡大できます。 8 あらゆるものをつなぐ銀行に 不可欠な機能 あらゆるものをつなぐ銀行は、膨大な量のデータを操作し、多数の顧客対話 ポイントにアクセスする必要があり、さらには、顧客のニーズを満たすため に考案されたさまざまなアクティビティを調整する、重要なハブとしての機 能を果たさねばなりません。 これを成功させるには、銀行がいくつかの重 要な機能の開発に投資する必要があります。 i. アナリティクス 銀行は、保有している顧客データとソーシャ ルメディアなどから送られる外部データを活 用して、顧客のニーズを予測し、タイムリー にオファーを提供できる独自の方法がないか、 検討を始めています。あらゆるものをつなぐ インターネットの時代には、利用可能なデー タの量は爆発的に増加します。銀行は、高度 に 個 別 化 さ れ、 価 値 が 高 く、 実 行 可 能 な オ ファーを顧客に提供するために、この新しい データのすべてを処理して意義ある形に変換 できるような、アナリティクス機能への投資 を継続する必要があります。常に最適な商品 と顧客重視のアドバイスを提供することによ り、大切で信頼できる、自分のためのファイ ナンシャルアドバイザーとして、顧客はより 頻繁に「日常」ベースで銀行と関わりを持つ ようになります。 あらゆるものをつなぐインターネットによっ て、銀行は、まったく新しいレベルで商品開 発を行う機会を得ます。顧客行動、モノの使 用状況、日常の出来事など、個々の顧客につ いて掘り下げた膨大な量のデータを手に入れ た、将来のあらゆるものをつなぐ銀行は、特 定の顧客のニーズに合わせた商品を設計し、 顧客の総合的な利用状況に照らし合わせた価 格で提供する必要があります。 iii. 配信手段 顧客の日々の暮らしにシームレスに銀行サー ビスを組み込み、かつ過剰な介入を避けるに は、銀行が個々の顧客との通信に使用する配 信用ツール、アプリケーション、手法をよく 選ばなければなりません。個々の顧客のニー ズや特性を、データ主導で理解することが重 要になります。銀行は、顧客をやり取りの中 心とすることもあれば、エコシステム内のパー トナーと顧客のやり取りにおいて中枢的な役 割を果たすこともあります。 ii. 個別の価格設定と商品開発 iv. 俊敏性 銀行は、一様で融通性に欠ける価格設定モデ ルや、「すべてのニーズにひとつで対応する」 商品を提供するやり方からの脱却を目指して います。現在は、一連の価格モデルと商品機 能の開発に、近似分析、予測分析、トレンド 分析、顧客セグメント分析がすべて使用され ています。あらゆるものをつなぐインターネッ トの普及と共に、銀行はこれをさらに進化さ せて、商品を個別に作成し、リアルタイムか つ動的に価格を判断することができるように なります。 あらゆるものをつなぐインターネットは、常 に変化するテクノロジーとインフラを特色と します。銀行は、自らが進化してテクノロジー やインフラのシフトに順応できるように、変 化に対する俊敏性とキャパシティへの対応に 力を入れる必要があります。業績が優れてい る組織は、変化への対応能力がコアコンピテ ンシーであり、あらゆるビジネス活動の一端 を担っていることをすでに認識しています。 「自らを育成」して俊敏性を高めることができ る銀行は、テクノロジーの変化に迅速かつ柔 軟に対応でき、その結果、市場との適合性を 維持できます。 v. 継続的なイノベーション あらゆる業種においてビジネスの競争力と収 益性を主に牽引するのは、イノベーションで す。銀行からあらゆるものをつなぐ銀行へと 進化する改革は、継続的なプロセスであり、 絶えず変化する将来の顧客のニーズや需要を 予測して対応するためには、継続的なイノベー ションが要求されます。イノベーションを迅 速に成功させる能力をつけることにより、銀 行 は、 顧 客 ベ ー ス を 拡 大 し、 カ ス タ マ ー バ リューを高めることができると同時に、将来 に向けて市場でのポジションを強化できます。 vi. デジタルリスクの管理 今日の銀行は、一連の信用モデルに基づいて リスクプロフィールを管理し、3 次元評価を 使って与信の可否判断のバランスを最適な状 態に維持しています。また、不良債権のクラ スタ分析を実施して、潜在的なデフォルトリ スクが高い傾向にある顧客グループを特定し、 リカバリー戦略を策定しています。さらに、 債権の回収が必要になった場合には、リアル タイムで担保価値の計算を見直します。 銀行は、今後もこれらの信用モデルの管理に 時間と労力を費やす必要がありますが、同時 に、将来にも備えておかなければなりません。 あらゆるものをつなぐインターネットによっ て、銀行は顧客とのコラボレーションを通じ てそのニーズ、経済状況、担保価値をより的 確に把握できるようになり、同時に付随する 業務の多くは自動化されるようになります。 顧客の日々の暮らしのデータにアクセスでき ることにより、あらゆるものをつなぐ銀行は、 信用モデルの改良と総合的なリスク状況の改 善を継続的に図ることができます。 9 未来は気づく前に やって来る あらゆるものをつなぐイ ンターネットの時代が近 づいています。近い将来、 ごく一般的な家電製品か らも安定したデータスト リームが送り出されるよ うになり、それに基づく 分析やアクションが可能 になるでしょう。 この新しい世界で発展し、持続可能な競争力 を築き上げて維持するために、今日の銀行は、 データの収集およびアナリティクス機能への 投資を継続していかねばなりません。さらに、 一人ひとりの顧客に対して真のあらゆるもの をつなぐ銀行のエクスペリエンスを提供する ために必要なデータを確実に入手するため、 さまざまな組織との新たなパートナーシップ の構築にも力を入れる必要があります。この ような機会を生かせる組織は、顧客の生活に おいて、定着した中心的なプレーヤーとなる 可能性が大きいと言えます。 10 11 執筆者 参照資料 金融サービスのマネジング・ディレクターで 1 http://www.theiet.org/sectors/informationcommunications/hot-topics/internet-ofあるイアン・ウェブスター (Ian Webster) は、 things.cfm 15 年以上にわたり金融機関に対しサービスを 提供し、現在はアジア・太平洋地域のディス トリビューション・マーケティングを牽引し ている。 2 アクセンチュア ‘The Everyday Bank’ EMail: i.webster@accenture.com お問い合わせ先 金融サービス本部 マネジング・ディレクター 宮良 浩二 銀行業担当 AccentureAisaPacific@accenture.com アクセンチュアについて アクセンチュアは、経営コンサルティング、 テクノロジー・サービス、アウトソーシング・ サービスを提供するグローバル企業です。29 万 3 千人以上の社員を擁し、世界 120 カ国以 上のお客様にサービスを提供しています。豊 富な経験、あらゆる業界や業務に対応できる 能力、世界で最も成功を収めている企業に関 する広範囲に及ぶリサーチなどの強みを活か し、民間企業や官公庁のお客様がより高いビ ジネス・パフォーマンスを達成できるよう、 その実現に向けてお客様とともに取り組んで います。2013 年 8 月 31 日を期末とする 2013 年会計年度の売上高は、約 286 億 US ドルで し た(2001 年 7 月 19 日 NYSE 上 場、 略 号: ACN)。 アクセンチュアの詳細は www.accenture.com を、 アクセンチュア株式会社の詳細は www.accenture.com/jp をご覧ください。 Copyright © 2014 Accenture All rights reserved. Accenture, its logo, and High Performance Delivered are trademarks of Accenture. 14-2998
© Copyright 2024 Paperzz