H25 JCM 実現可能性調査(FS) 最終報告書(概要版) 「太陽光・ディーゼルハイブリッドシステムの導入」 (調査実施団体:株式会社みずほ銀行) 調査協力機関 日立造船株式会社および ICPV 調査対象国・地域 ミャンマーおよびインドネシア 対象技術分野 再生可能エネルギー プロジェクトの概要 ミャンマーの僻地マイクログリッドおよびインドネシアの離島独立 グリッドに対して、太陽光発電とディーゼルエンジンを組み合わせ たハイブリッド発電システムを導入し、電力供給を行う。インドネシ アでは 1MW 太陽光+1.5MW のディーゼルエンジン、ミャンマー では 2MW 太陽光+1.5MW×3 台のディーゼルエンジンを導入す ることで、太陽光発電の出力変動をディーゼルエンジンにて補い、 全体制御により、発電最適化と出力平準化を行うものである。 JCM 方法論 適格性要件 分類 ① 事業のタイプ ①-1 システムの構成要素 ①-2 電力の供給先 ② 太陽光発電のポテンシャルを最大限 ②-1 太陽光パネルの温度係数 に活用するための技術的要件 ②-2 ディーゼル発電機の運転負荷 ②-3 蓄電池の利用 ③ 高品質なベース電源を供給するため ③-1 ハイブリッド制御装置の具備すべき機能 の技術的要件 ④ 耐用年数期間に性能を最大限に発 ④-1 保守契約の内容 揮させるための保守要件 デフォルト値 の設定 パラメータ EFy データの説明 出典 y 年におけるグリッドの CO2 排出係数(EF) 小規模 CDM [tCO2/MWh] 方法論 ※以下の場合に適用 AMS-I.D. (- インドネシアにおいて、離島独立グリッドが化 設定値 0.8 ver.15) 石燃料として液体燃料のみ利用している場合 ミャンマーにおいて、僻地マイクログリッドの将 来電源がディーゼル発電の場合 NCVDO,y ディーゼル燃料の真発熱量[GJ/t] IPCC 0.0741 EFDO,y ディーゼル燃料の CO2 排出係数[tCO2/GJ] IPCC 43.0 リファレンス排出量の計算のため、y 年におけるグリッ IPCC ― ドの CO2 排出係数(EF)[tCO2/MWh]を決定するた 燃料種ご とに設定 めの各化石燃料の CO2 排出係数 リ フ ァ レ ン ス リファレンスシナリオはグリッドの排出係数に反映される。なお、大 排 出 量 の 算 規模グリッドへの接続については、本ハイブリッドシステムの必要 定 性が低く、その想定を行わないものとする。そのため、ここでは、 III-1 小規模 CDM の考え方(インドネシア)および CDM における「抑圧 された需要」の考え方(ミャンマー)を準用している。 国 場合分け 計算方法 本事業適用値 [tCO2/MWh] ①離島 ①-1 離島独立グリッドが デフォルト値を適用する。 独立グリ 化石燃料として液体燃料 (本事業サイトにおいては適用す ッド 0.80 のみ利用している場合 る) ①-2 離島独立グリッドが グリッド全体で燃料別に加重平均 化石燃料として液体燃料 を行った排出係数を計算する。(本 以外も利用している場合 事業サイトにおいては適用しない) ②僻地 「抑圧された需要」の考え 抑圧された需要を満たすための政 マイクロ 方を適用 策・対策として、将来において導入 グリッド (0.83) 0.80 されることが計画されている電源の 排出係数を適用する。 モニタリング 手法 項目 EGDJ,y データの説明 y 年において、プロジェクト活動の実施の結果として発電 頻度 月別 され、グリッドに供給されるネットの発電量 [MWh/y] PDOy プロジェクトにおけるディーゼル燃料の消費量[t/y] EFy y 年におけるグリッドの CO2 排出係数(EF)[tCO2/MWh] 月別 月別 NCVDO,y ディーゼル燃料の真発熱量[GJ/t] IPCC 公表の最新値 EFDO,y ディーゼル燃料の CO2 排出係数[tCO2/GJ] IPCC 公表の最新値 GHG 排出量及び削減量 プロジェクト排出量: PEy = (ディーゼルエンジン発電に必要な熱 量/単位発熱量 * ディーゼルエンジン発電量) * 単位発 熱量 * ディーゼル燃料の排出係数 = 8,415 tCO2/y <インドネシア>、10,553 tCO2/y <ミャンマー> リファレンス排出量: Rey = EGPJ,y * EFy = 10,528 tCO2/y <インドネシア>、14,056 tCO2/y <ミャンマー> 排出削減量: ERy = REy – PEy = 2,112 tCO2/y <インドネシア>、3,502 tCO2/y <ミャンマー> 環境影響等 特になし 事業計画 【ミャンマー】 2MW 太陽光+1.5MW×3 台のディーゼルエンジン を導入する。初期コストの 50%を日本側の補助金、25%を MIC 社、25%を SSG/PWH 社が負担する。 【インドネシア】 1MW 太陽光+1.5MW のディーゼルエンジンを導 入する。初期コストの 50%を日本側の補助金、50%を PLN 社が 負担する。 日本技術の導入可能性 適格性要件の設定により、太陽光パネル、制御技術ともに、日本 技術の導入可能性が高いものとなっている。 ホスト国における持続可能 電力供給能力の向上(電化率がかなり低い地域における電化率 な開発への寄与 の向上)、他産業の促進(電力の供給により、地場産業の電源とし て資する)、雇用創出(工事や運転での地元労働者の雇用・経済 活性化)が期待できる。 III-2 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 調査名:二国間クレジット制度(JCM)実現可能性調査(FS) 「太陽光・ディーゼルハイブリッドシステムの導入」 (ホスト国:ミャンマーおよびインドネシア) 調査実施団体:株式会社みずほ銀行 1.調査実施体制: 日立造船株式会社: 技術的評価、MRV 方法論検討、事業化検討を行い、事業化計画を策 定することにより、事業の対象案件を組成する。 ICPV(オーストラリア法人): インドネシアにおける交渉の調整を担う。 Eco Daya(インドネシア法人): 上記 ICPV のインドネシアにおける活動拠点として、実際に上 記の交渉調整を行う。 SSG および PWH(タイ法人): ミャンマーにおける事業化にあたって、下記 Golden Butterfly の株主として日本・ミャンマー間の調整を行う。なお、PWH は SSG の EPC 子会社である。 Golden Butterfly(ミャンマー法人)および MIC (Mogok Image Construction): ミャンマーにお ける事業主体となることを想定し、調査協力を行う。なお、MIC は Golden Butterfly 傘下の電 力事業者である。 2.プロジェクトの概要: (1)プロジェクトの内容: ミャンマーの僻地マイクログリッドおよびインドネシアの離島独立グリッドに対して、太陽光発電と ディーゼルエンジンを組み合わせたハイブリッド発電システムを導入し、電力供給を行う。インドネ シアでは 1MW 太陽光+1.5MW のディーゼルエンジン、ミャンマーでは 2MW 太陽光+1.5MW ×3 台のディーゼルエンジンを導入することで、太陽光発電の出力変動をディーゼルエンジンに て補い、全体制御により、発電最適化と出力平準化を行うものである。 本システムを導入しなかった場合には、化石燃料による発電の増設・焚き増しが想定される。従 って、本システムの導入により、太陽光発電の実施相当量について化石燃料の燃焼をすべて回 避することができ、また、ディーゼルエンジン発電の実施相当量について発電効率等の向上によ る化石燃料の燃焼量削減が可能となる。CO2 排出量は、その両者により削減される。 (2)ホスト国の状況: 本システムが特徴とする安定電源は、再生可能電源の不安定さが需要側にとって障害となって しまう場合に有効であり、小規模グリッドにおいて適性がある。 無数の離島からなるインドネシアでは小規模な島グリッドが多く、政府の太陽光発電促進計画 でも主対象となっている。また、極端に電化率が低いミャンマーでは、大規模グリッドに頼らない電 力供給が必要とされる。従って、本システムのニーズが高い 2 カ国で事業化を検討することが妥当 であり、来年度以降の事業化を目指すものである。 3. 調査の内容及び結果 (1)JCM 方法論作成に関する調査 ①適格性要件 III-3 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 本事業において用いる太陽光・ディーゼルハイブリッドシステムは、小規模系統(MW 以下クラス) のベース電源として安定化した出力の電力を供給することを目的としており、インドネシアにおい ては離島独立グリッド、ミャンマーにおいては僻地マイクログリッドがその対象となる。逆に、大規模 グリッドであれば、出力変動の大きい太陽光発電による電力を平準化を講じずに接続しても、変 動による影響は限定的と考えられるため(既に再生可能電源が多く接続されていれば追加電源の 変動の影響が大きくなるが、両国においてはまだ既導入量も少ない)、本システムの導入ニーズ は小さい。従って、本方法論は、小規模グリッドに限定したものとする。 図 1 2 ヵ国の送電状況と本システムの適用範囲 図 2 本システムによるベース電源供給のパターン事例 従って、本システムの基本的な技術的特性である以下の適格性要件すべてを満たすことが必 要と考えられる。 表 1 適格性要件および留意点 分類 ② 事業のタイプ 要件 ①-1 システムの構 制御ソフトウェアにより、太陽光発電システム、ディーゼル発電機お 成要素 よび補足的な蓄電装置による発電電力の総出力を安定化し、ベー ス電源として利用するもの。 III-4 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 分類 要件 ①-2 電 力 の 供 給 発電した電力を、離島独立グリッドまたは僻地マイクログリッドに供給 先 するもの。 ② 太陽光発電のポテ ②-1 太 陽 光 パ ネ 0.35% / ℃以下を満足する高温地域に適した太陽光パネルを採用 ンシャルを最大限に活 ルの温度係数 したもの。(仕様書または契約書で確認する。) 用するため の技術的 ②-2 ディーゼル発 低負荷連続運転に支障がない低負荷対応ディーゼル発電機を採 要件 電機の運転負荷 用したもの。(仕様書または契約書で確認する。) または既存のディーゼル発電機を採用したもの。 ②-3 蓄 電 池 の 利 電力変動緩和のための蓄電装置を使用していないシステム、または 用 補足的に C 値が 60 以上かつ推定寿命が 10 年以上の蓄電装置を 採用したもの。(仕様書または契約書で確認する。) ③ 高品質なベース電 ③-1 ハイブリッド制 ハイブリッド発電プラントからの総発電出力が所望の値(ベース電源 源を供給するための 御装置の具備すべ として利用する場合は一定)になるよう、ハイブリッド制御装置が以 技術的要件 き機能 下の機能をもつもの。(仕様書または契約書で確認する。) 太陽光発電システムの発電電力をリアルタイムでモニタリング し、ハイブリッドシステムの合計出力目標値と太陽光発電シス テム単体の発電出力の偏差として、ディーゼル発電機に対す る発電出力目標値を計算。 ディーゼル発電機制御系において、実発電出力と目標値を一 致させるのに必要な燃料流量を計算。 その燃料流量になるよう燃料制御弁の開度を調整。 ④ 耐用年数期間に ④-1 保 守 契 約 の ハイブリッドシステムのメーカーまたはベンダーが、ユーザーとの間 性能を最大限に発揮 内容 で、故障対応および部品供給を含む保守契約を結ぶもの。 させるための保守要件 ②プロジェクト実施前の設定値 以下のデフォルト値・事前設定値を想定する。 表 2 デフォルト値・事前設定値 パラメータ EFy データの説明 出典 y 年におけるグリッドの CO2 排出係数(EF)[tCO2/MWh] 小規模 CDM 方法論 ※以下の場合に適用 AMS-I.D. (- ver.15) 設定値 0.8 インドネシアにおいて、離島独立グリッドが化石燃料と して液体燃料のみ利用している場合 ミャンマーにおいて、僻地マイクログリッドの将来電源が ディーゼル発電の場合 NCVDO,y ディーゼル燃料の真発熱量[GJ/t] IPCC 0.0741 EFDO,y ディーゼル燃料の CO2 排出係数[tCO2/GJ] IPCC 43.0 III-5 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) パラメータ データの説明 出典 リファレンス排出量の計算のため、y 年におけるグリッドの ― IPCC CO2 排出係数(EF)[tCO2/MWh]を決定するための各化石 設定値 燃料種ごと に設定 燃料の CO2 排出係数 ③排出削減量の算定(リファレンス排出量・プロジェクト排出量の算定) ■ 排出削減量 ERy = REy – PEy 但し ERy y 年における CO2 排出削減量 [tCO2/y] REy y 年におけるリファレンス CO2 排出量 [tCO2/y] PEy y 年におけるプロジェクト CO2 排出量 [tCO2/y] ■ プロジェクト排出量 PEy = PDOy * NCVDO,y * EFDO, y 但し PEy y 年におけるプロジェクト CO2 排出量 [tCO2/y] PDOy プロジェクトにおけるディーゼル燃料の消費量[t/y] (バイオ起源のものについては計上しない) NCVDO,y ディーゼル燃料の真発熱量[GJ/t] EFDO,y ディーゼル燃料の CO2 排出係数[tCO2/GJ] ■ リファレンス排出量 REy = EGPJ,y × EFy 但し REy y 年におけるリファレンス CO2 排出量 [tCO2/y] EGPJ,y y 年において、プロジェクト活動の実施の結果として発電され、グリッドに供給されるネット の発電量 [MWh/y] EFy y 年におけるグリッドの CO2 排出係数(EF)[tCO2/MWh] リファレンスシナリオはグリッドの排出係数に反映され、以下のように決定する。なお、大規模グ リッドへの接続については、本ハイブリッドシステムの必要性が低く、その想定を行わないものとす る。そのため、ここでは、小規模 CDM の考え方を準用している。 表 3 グリッド排出係数の決定方法 国 場合分け 計算方法 本事業適用値 [tCO2/MWh] ①離島独立グ ①-1 離島独立グリッ デフォルト値を適用する。 リッド ドが化石燃料として (本事業サイトにおいては適用する) III-6 0.80 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 国 場合分け 計算方法 本事業適用値 [tCO2/MWh] 液体燃料のみ利用し ている場合 ①-2 離島独立グリッ グリッド全体で、当該年のデータを用いて(ex-post)、燃料別 ドが化石燃料として に加重平均を行った排出係数を計算する。(本事業サイトに 液体燃料以外も利用 おいては適用しない) (0.83) * している場合 ②僻地マイクロ 「抑圧された需要」の 抑圧された需要を満たすための政策・対策として、将来にお グリッド 考え方を適用 いて導入されることが計画されている電源(事業計画として 0.80 蓋然性の高いもの、又は、短期的に最も実現可能性が高い 手段と位置づけられるもの)の排出係数を適用する。 電源の燃料種が計画に複数存在する場合には、それらの 計画発電量によって加重平均を行う。 注) * 評価サイトのニアス島における計算値。 ■ 「抑圧された需要」 CDM の排出係数計算ツールでは、グリッドに接続している発電所からの CO2 排出係数を用い て CO2 削減量を計算することとされている。一方、ミャンマーにおいては水力発電の割合が 7 割 以上と高く、排出係数が低くなり、プロジェクトの排出削減量が小さく計算されてしまうこととなる。 一般に、途上国の排出係数の低さは電源開発の技術不足や資金不足に起因する(抑圧された 需要)。この場合に、不安定な水力発電に対し、安定電源を化石燃料を用いて供給しようとすれ ば、排出削減量がマイナスとなってしまう。 ミャンマーにおいても、アジア通貨危機を境に、同国の経済政策の悪さも相まって、外国投資 が滞り、水力発電が増加し続けてきたという経緯がある(図 3、図 4)。しかし、同国では電源政策 を転換し、電化率を上げるために火力等にシフトしてきている。 100 90 80 水力発電の割合(%) 70 60 50 40 30 20 10 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 0 図 3 ミャンマーにおける水力発電の割合1 1 世界銀行データにより作成。 III-7 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 20,000 クウェート ルクセンブルグ フィンランド 1人当り電力消費量(kWh) カナダ カタール 15,000 スウェーデン 米国 豪州 ニュージーランド 10,000 日本 スイス オーストリア モンテネグロ 5,000 0 0 10 20 30 40 50 水力発電の割合(%) 60 70 80 90 100 ミャンマー 図 4 1 人当り電力消費量と水力発電の割合との関係2 従って、ここでは、本事業が接続する僻地グリッドへの供給が今後見込まれる電源の導入を、リ ファレンスシナリオとして設定し、その排出係数を計算する。現地調査の結果、今後見込まれる電 源はディーゼル発電機と考えられる。 ■ 排出削減推計量 プロジェクト排出量: PEy = PDOy * NCVDO,y * EFDO, y = (ディーゼルエンジン発電に必要な熱量/単位発熱量 * ディーゼル エンジン発電量) * 単位発熱量 * ディーゼル燃料の排出係数 = 8,415 tCO2/y <インドネシア> = 10,553 tCO2/y <ミャンマー> リファレンス排出量: REy = EGPJ,y * EFy = 10,528 tCO2/y <インドネシア> = 14,056 tCO2/y <ミャンマー> 排出削減量: ERy = REy – PEy = 2,112 tCO2/y <インドネシア> = 3,502 tCO2/y <ミャンマー> (2)JCM プロジェクト設計書(PDD)の作成に関する調査 ■ 環境影響評価 導入されるハイブリッドシステムは、新たな環境への影響はない。 【インドネシア】 環境影響評価制度において、環境に重大影響を及ぼす可能性のある事業は環 境影響評価を実施する必要があるが、政令で指定される業種・設備規模等に本件は該当しない。 【ミャンマー】 2013 年 1 月の新外国投資法の施行細則により、EIA が認可の条件となる投資分野 が規定されたことを受け、環境影響評価に関する政令(EIA procedures)が検討されている(2013 年 2 月時点)。ドラフト段階の EIA Procedures ではプロジェクトセクター、規模によって分類を規定 2 世界銀行データにより作成。 III-8 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) しているが、具体的なセクター、規模については未定である。 ■ ステークホルダーの特定及び当該協議の実施方法 設備導入先の PLN(インドネシア)および Mogok Image Construction(ミャンマー)、設備製造・ 納入を行う日立造船が一義的なステークホルダーとなる。また、現地の関連政府機関においても、 本事業を支持している。地域住民に関しては、本事業による環境への悪影響や住民移転などは 考えられず、ステークホルダーとは見なされない。なお、実証事業の場合には、相手国との Joint Committee を含めた事業組成が必要となる。 ■ モニタリング計画(体制や取得データ保管方法を含む) ホスト国事業者(ミャンマー:Golden Butterfly 傘下の Mogok Image Construction、インドネシア: PLN)がハイブリッド発電システムを運用するとともに、その設備においてモニタリング業務を行う計 画となっている。日本企業は、ホスト国事業者が行ったモニタリング業務について責任を持って確 認し、Excel スプレッドシートでの排出削減量計算値を報告する。 本調査にて導入を提案しているハイブリッド発電システムは、太陽光発電システムとディーゼル 発電機を組み合わせたものであり、各々の電力供給量を分離してモニタリングする必要がある。 太陽光発電システムからの発電量は、ハイブリッド発電システム全体の発電量から、ディーゼル 発電機から創出された電力を区別し、電力取引メーターにて継続的にモニタリングを行う。この電 力取引メーターは SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)と呼ばれる監視制御シス テムにて常時モニタリングおよびデータ保管を行うことが可能である。ディーゼル発電機からの発 電量も同様に、SCADA にてモニタリングおよびデータ保管を行う。この際、モニタリング業務の事 業者負担が最小となる方法を検討する。 また、GHG 排出量の定量化に必要なグリッド排出係数については、ハイブリッド発電設備自身 の構成および導入するグリッドの電源構成により、デフォルト値の使用可否が決まる。従って、発 電設備の新設、更新計画を半年毎程度ごとにモニタリングする事が必要である。また、発電所が 新設、更新された際には、グリッド全体で燃料別に加重平均を行った排出係数を計算する事が可 能か確認する。 ■ 計測機器を利用する場合の校正に係る事項等 【インドネシア】 モニタリングに用いる計器類の較正頻度については、以下の通り。 ・ 電力計: 装置メーカーが設置し、PLN が 6~12 ヵ月ごとに比較用の計器を設置して、検査と 校正を実施する。交換時間に関する規制はなく、計器自体が、物理的に良好であり、校正で きている間は交換の必要はない。 ・ 燃料計: 規制はなく、計器を含む全ての機器は検査機関や地方政府により検査・認証される。 計器の使用期限に関する規制もなく、計器が良好に動作している間は交換の必要はない。 【ミャンマー】 現地電力公社でのヒアリングにおいて、計測機器に関する基準・規制は整備されて おらず、国際基準に従うべきとの話が得られた。今後、インドネシアと同様の考え方で問題ないこ とを確認する。 III-9 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) (3)プロジェクト実現に向けた調査 ①プロジェクト計画 ■ プロジェクトの資金計画 【ミャンマー】 ミャンマーでは 2MW 太陽光+1.5MW×3 台のディーゼルエンジンを導入することで、 初期投資額は約 12 億円である。本プロジェクトでは、初期コストの 50%を日本側の補助金、25%を MIC 社、25%を SSG/PWH 社が負担する。MIC 社は全額自己資金、SSG/PWH はさらに自己負担 資金額のうち、50%を自己資金、残りの 50%を融資で賄う予定である。融資は SSG/PWH 社はタイ、 タイ地場銀行あるいは邦銀を想定する。タイ地場銀行の金利は 8%程度で、融資期間は 10 年間 程度である。 【インドネシア】 インドネシアでは 1MW 太陽光+1.5MW のディーゼルエンジンを導入することで、 初期投資額は約 6 億円である。本プロジェクトでは、初期コストの 50%を日本側の補助金、50%を PLN 社が負担する。PLN は現段階では 100%自己資金の投資を考えているが、場合によっては、 地場銀行、邦銀からの融資も考えうる。地場銀行の場合、利息 12%、10 年間の返済期間が考えら れる。 ■ 実施スケジュールの想定 インドネシア、ミャンマーともに、下記のスケジュール案に基づいて、現地カウンターパートとの 交渉を行っている。 2013 年 7 月~2014 年 3 月 環境省 JCM 実現可能性調査 2014 年 6 月~ 環境省 JCM 設備補助事業に適用 2014 年 9 月 着工、環境省 JCM プロジェクト設備補助 2016 年 4 月 商業運転開始(2016 年 1 月完工を想定) ②MRV 体制 計測(M)および報告(R)は、本ハイブリッドシステムを運用する事業主体が行う。 また、検証(V)は、現地の認証機関が行う。 表 4 計測 項目 EGDJ,y データの説明 頻度 y 年において、プロジェクト活動の実施の結 月別 留意点 果として発電され、グリッドに供給されるネッ トの発電量 [MWh/y] PDOy プロジェクトにおけるディーゼル燃料の消費 月別 バイオ起源については計上しない 月別 グリッド全体で燃料別に加重平均を行った排出係数 量[t/y] EFy y 年におけるグリッドの CO2 排出係数(EF) を計算する。(インドネシアにおいて、グリッドが化石 [tCO2/MWh] 燃料として液体燃料以外も利用している場合) NCVDO,y ディーゼル燃料の真発熱量[GJ/t] IPCC 公表 検証(V)の際に最新であることを確認 EFDO,y ディーゼル燃料の CO2 排出係数[tCO2/GJ] IPCC 公表 検証(V)の際に最新であることを確認 III-10 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) ③プロジェクト許認可取得 【インドネシア】 PLN が事業主体となるため、事業権の取得、PPA 契約の締結などは必要ない。 事業の実施においては、PLN 傘下の研究所と日立造船傘下の研究所が JV を形成することを計 画している。 【ミャンマー】 事業主体である Mogok Image Construction は、電力公社と Mogok での電力供給事 業に関する譲渡契約を結んでいる。用地は候補地を 3 か所保有しており、そのうち 2 か所が有望 である。 ④日本の貢献 本プロジェクトで利用するハイブリッドシステムは、安定電源を必要とする小規模グリッドに電力 を供給するものであり、電力安定化のため、高額かつ故障しやすい蓄電池の替わりに、燃料調達 しやすく技術的に安定したディーゼルエンジンを利用する。そのため、単なる電源としてのディー ゼルエンジン単体との比較や、単なる太陽光発電との比較においては、コスト上、優位に立つこと ができない。むしろ、安定電源の開発、CO2 削減、再生可能エネルギーの推進、技術移転といっ た点が、日本技術の貢献できる付加価値として位置づけられる。 本 JCM 方法論では、温度係数を 0.35%/ 以下の太陽電池パネルを使用して実発電量を多く することを適格性要件の 1 つとしている。このような太陽電池としては、CIS 太陽電池やアモルファ スシリコン薄膜太陽電池等が上げられ日本が先行する技術である。 太陽電池世界シェア上位は中国メーカが占めているが、多くは同様の仕様である結晶シリコン 太陽電池が主流となっている。以下のように、代表的な中国製太陽電池パネル単体の仕様にお いては、太陽電池パネルに関する適格性要件を満たしていないことがわかる。 表 5 海外一般製品(中国製)との性能比較 本 FS システム 海外一般製品 生産国 日本 中国 定格出力 170W 195W 開放電圧 112V 24.2V 短絡電流 2.2A 8.23A 温度係数 0.31%/℃ 0.42%/℃※ サイズ 1257 x 977 x 35mm 1330 x 990 x 40mm 重量 20kg 15.4kg 10 位以下 1位 世界シェア 備考 ※適格性要件に不適合 ⑤環境十全性の確保 【インドネシア】 リファレンスシナリオが化石燃料利用であり(石炭火力またはディーゼルエンジン)、 太陽光発電およびディーゼル発電機のエネルギー効率向上により、CO2 削減が実現できる。 【ミャンマー】 現在は水力発電および国家グリッドからの供給電力を利用しているものの、今後は、 さらに化石燃料による発電を増やして需要増加に対処していく方向である。抑圧された需要という III-11 H25 JCM FS 最終報告書(概要版) 観点からは、今後の化石燃料による発電に伴う CO2 排出量が削減できると期待される。 また、本システムの導入による悪影響は考えられない。ソーラー2MW/ディーゼル 4.5 MW の導 入に際しては約 2.8ha の土地を必要とするが、問題なく土地収用が可能であり、本案件の実施に より、大きな土地開発、整地に伴う地崩れの懸念のある土木工事などは発生しない。さらに、本シ ステムのディーゼルエンジンの燃料として、バイオ燃料(ジャトロファ等)を使用する場合には、バイ オ燃料の有効活用という点で、環境への好影響が期待できる。 ⑥ホスト国の持続可能な開発への寄与 ホスト国の持続可能な開発に貢献する事項としては、以下の項目が挙げられる。 電力供給能力の向上: インドネシアの二アス島においても、ミャンマーのモーゴウ市におい ても、現状では電化率がかなり低いところであり、本事業による電化率の向上が期待できる。 他産業の促進: ミャンマーのモーゴウ市はルビー等の宝石採掘が主要産業であり、電力の 供給により、研磨等一次加工の電源として資することができる。 雇用創出: 工事や運転により、地元労働者の雇用や経済活性化に貢献できる。 ⑦今後の予定及び課題 (1)今後の見込み インドネシア、ミャンマーともに、下記の実施スケジュール案に基づいて、現地カウンターパート との交渉を行っている。 2013 年 7 月~2014 年 3 月 環境省 JCM 実現可能性調査 2014 年 6 月~ 環境省 JCM 設備補助事業に適用 2014 年 9 月 着工、環境省 JCM プロジェクト設備補助 2016 年 4 月 商業運転開始(2016 年 1 月完工を想定) (2)課題 【インドネシア】 事業主体である PLN の事業実施の意思が未確定であり、引き続き、DNPI 等の協 力のもと、交渉を進めている。 【ミャンマー】 売電単価を高く設定しなければ、事業の採算性が低い。事業者は、需要の高まりに よって売電単価を高くできると考えており、その実現性・蓋然性を引き続き確かめる必要がある。 III-12
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