ネパールのビール

(中学校)
第2学年○組
道徳学習指導案
平成○年○月○日(○)
第○校時
在籍生徒数
指導者
1
主題名
誠実な生き方
2
資料名
「ネパールのビール」
3
主題設定の理由
教諭
○
○
○
名
○
○
1-(3)
出典(
「自分を考える」あかつき)
(1) ねらいとする道徳的価値について
内容項目1-(3)は、「自律の精神を重んじ、自主的に考え、誠実に実行してその結果に責任を
もつ」ことをねらいとしている。中学校では、小学校高学年の「誠実に、明るい心で楽しく生活する」
という目標を基盤として、「ものごとを誠実にやり遂げることで、自律的な生き方が生まれ、自らの
責任によって生きる自信となり、人間としての誇りがもてるようになる」ことを理解させたい。自分
の行為の純粋さにとどまらず、その行為が及ぼす結果についても深く考えることが必要である。自由
を放縦と誤解することなく、自分や社会に対して常に誠実でなければならないことを自覚し、責任を
もった行動がとれるようにさせることが大切である。そして、高等学校の「自主・自律の精神をもっ
て、自他の尊厳を重んじ誠実に生きる」ことに繋げていきたい。
(2) 生徒の実態について
この時期の生徒は、係活動や清掃活動などにおいて、自分が為すべき役割を誠実に実行する生徒が
いる反面、友だちに押しつけてしまったり、ごまかしてみたり、自分がやりたくないことに対して逃
げてしまう生徒も少なくない。また、年上の人の言うことを素直に聞き入れることができず、行動に
移せないこともある。自分の行為が自分や他人にどのような結果をもたらすかを考え、「誠実に生き
ることが、人間として大切なことだと思う心」を耕していきたい。
(3) 資料の活用について
本資料は、ネパールの山岳地帯の村に撮影のために滞在していた主人公「私」が、一人の少年「チ
ェトリ」の誠実な行動に心をうたれる話である。車がつかえないこの村での撮影は、機材や食料を人
が背負って運ぶため、余分なものはいっさい割愛された。スタッフ全員で協議のした末、諦めたのに
主人公が「ここでビールを飲んだら、うまいだろうな」と口にしたことから話が始まる。この言葉を
聴きつけた少年がビールを買ってきてくれた。次の日も買って来てくれるという少年の言葉が嬉しく
て、主人公は前日よりも大金を預けた。しかし、少年は2日たっても帰ってこない。事故にでも合っ
たのではないかと心配する主人公に対し、村人や教師までもが「あれだけのお金を手にしたら帰って
こない」と言う。後悔の念にかられていた深夜、泥まみれになった少年が帰ってきた。主人公のため
に 3 日間かけて少年はビールを買ってきてくれたのだ。少年の誠実さに心をうたれた主人公が、自分
や社会に対して常に誠実でありたいと思う話である。
指導の視点として、次の3つの場面を中心に取り上げ、本時のねらいに迫るようにする。
①ビールを買って来たチェトリを拍手で迎えた場面
②チェトリ君が 2 回目にビールを買いに行って帰ってこない場面
③ 3 日目の深夜、チェトリが立っていた場面
①では、4 本買ってきてくれと頼まれたにもかかわらず、5 本のビールを買ってきたチェトリの誠
実さから、わたしの信頼感が生まれていることに注目させる。②では、チェトリを信じたい気持ちと
疑う気持ちをぬぐいきれないでいるわたしの気持ちを理解させる。③ではチェトリの姿から自分で考
え、決めたことは誠実に実行し、その結果に責任をもつことの大切さを十分に考えさせ、それが、人
間としての誇りになることに気付かせていきたい。
4
ねらい
自分で考え、決めたことは誠実に実行し、その結果に責任をもとうとする心情を養う。
5
事前指導
・ネパール王国(文化・生活・日本との違い)について、インターネットを利用して調べ学習を行
う。
6
本時の展開
段階
導
入
学習活動
◎主な発問
予想される生徒の反応
指導上の留意点
☆評価の観点
1 ネパールについて知る。
・ネパール産のビールを見
る。
◎これはどこのビールだと ・ビールを見て、外国の
思いますか。
ビールであることに興
・ネパールの山岳地帯と子
味をもつ。
どもたちの写真を提示す ・厳しい環境の中での生
る。
活は大変そうだ。
◎写真を見て感じたことを ・みんな、裸足なんて、
発表してください。
生活が貧しそうだ。
・「 ビール」と「ネパールの山岳地
帯の子どもたちの写真」で導入し、
授業への関心を高めるとともに、
条件・情況をつかませる。
・苦しい生活をしているにもかかわ
らず、子どもたちの笑顔が印象的
であることに気付かせたい。
☆ネパールの子どもたちの厳しい生
活条件を知ることができたか。
(表情、態度、発言、つぶやき)
2
・条件・情況を説明し、主人公の立
場で考えられるようにする。
資料の登場人物、条件
・情況について知る。
・主人公の「私」は、撮影のためにネパールのドラカ村に滞在する。
・電気・水道・ガスの設備、車輪の通れる道路もなく、人々は裸足で生活している。
・村人は荷物を背負って、子どもまでが一本の道を歩くしかない。
・ポーターを雇って機材や食料を運ぶため、ビールを持ってくるのは諦めた。
・村の少年チェトリは15歳だが、働きながら学校にいく生活をしている。
3
資料の範読を聞き、話
題の整理と確認をする。
・範読を聞く。
・心に残ったこと、話し
合いたいことを発表す
る。
・主人公である私のチェトリ君に対
する思いを考えさせながら範読を
聞かせる。
☆チェトリに対する私の思いを感じ
とることができたか。
(発言、つぶやき)
4 話題をもとに話し合う。
①ビールを買って来たチェ
トリを拍手で迎えたとき
のわたしの気持ちを考え
る。
◎ 4 本買ってきてくれと頼
まれたにもかかわらず、5
本のビールを背負ってき
たチェトリをわたしはど
う思っただろうか。
・大変な思いをして買っ
てきてくれてありがた
い。
・お金が残ったのなら、
自分の小遣いにすれば
よかったのに。
・なんてやさしい子なん
だろう。
・1 本多く買ってきてく
れるなんてうれしい。
・ドラカ村の地理的条件などについ
て押さえる。
・安易な気持ちで頼んだにもかかわ
らず、1 本多く買ってきてくれた
誠実さから、チェトリに対する信
頼感が生まれていることに注目さ
せる。
②チェトリ君が 2 回目にビ
ールを買いに行って帰っ
てこないときのわたしの
気持ちを考える。
◎歯ぎしりするほど後悔し
たのはなぜだろう。
・あんなにお金を持たせ
るのではなかった。昨
日、買ってきてくれた
からといって、気軽に
頼んでしまって申し訳
ない。
・4 本頼んだのに 5 本買
ってきてくれた子がお
金を持って逃げ出すよ
うなことはないだろう
・ケガでもして歩けなく
なったら、あの子の一
生をダメにしてしまう
のではないか。
・お金を持って逃げられ
たにしても、けがをし
たとしても、あの子に
とっては大変なことだ
から。
・貨幣価値の違いについて簡単に触
れる。
・大金を持って逃げたのだろうと言
う言葉に、チェトリ君を信じたい
気持ちと疑う気持ちをぬぐいきれ
ないでいる私の気持ちがあること
に気付かせる。
③ 3 日目の深夜、チェトリ ・自分の言動に責任を持
君が立っていた姿を見た
たなければいけないこ
わたしの気持ちを考え
とを教えられたから。
る。
・一生懸命買ってこよう
◎近頃あんなに泣いたこと
としたチェトリに、頼
はないというのはなぜだ
まれたことは最後まで
ろう。
責任をもってやり遂げ
なくてはいけないこと
を学んだから。
・大人である自分が、チ
ェトリ君に大事なこと
を教えてもらった気が
したから。
・チェトリのもつ責任感の強さにも
ふれていく。
・チェトリの私に応えようとする
ひたむきな心、誠実さを十分感じ
とらせて、ねらいに迫る。
・逃げようとすればいくらでも逃げ
られる情況にあったのに、最善の
努力をしているチェトリの姿に私
が感動していることをつかませ
る。
☆チェトリに対する信頼感を感じと
ることができたか。(発言・態度)
☆チェトリを信じたい気持ちと疑う
気持ちの両方があることに気付く
ことができたか。
(発言・態度)
○わたしからチェトリ君へ
手紙を書こう。
終
末
・チェトリの誠実な態度
に、人間としての大切
なことを教えてもらっ
た。
・気軽に頼んだことなの
にここまで誠意を尽く
してくれたチェトリに
これからの生き方を教
えてもらったような気
がした。
5 在り方生き方について
の説話を通して、まとめる。
☆チェトリの姿から自分で考え、決
めたことは誠実に実行し、その結
果に責任をもつことの大切さを感
じることができたか。
(表現・発言、態度)
☆人間として誇りのもてる生き方と
は何か考えることができたか。
(表現・態度)
「一に誠実、二に誠実、三に誠実 誠実を忘れ
ると処世も人生も誤る」雪舟の生き方について
読み、今日の授業で感じたことをまとめる。
7
本時の評価の観点
○生徒サイドの観点
・主人公のチェトリ君への期待や後悔、不安、そして学んだことなどを考えることができたか。
・チェトリの姿から、自分で考え決めたことは誠実に実行し、その結果に責任をもつことの大切さ
を感じとることができたか。
・人間として誇りのもてる生き方とは何か考えることができたか。
○教師サイドの評価
・資料の内容、展開時の授業構成は、生徒の実態に適切であったか。
・生徒のつぶやきをよく聴き、話合いに生かすことができたか。
・話合いを通して、一人一人が道徳的価値の自覚を深めることができたか。
・本時のねらいとする「誠実な生き方」に迫る発問は適切であったか。
8
事後指導
・学級通信や道徳だよりなどで感想や誇りをもった生き方についてのメッセージなどを紹介する。
図
ネパールのビール
ヒマラヤ山脈の
写真
山岳地帯
電気、ガス、水道がない。
移動手段は足(はだし)
村の写真
○ チェトリ君に大事なことを教えてもらったから
○ った自分が情けない。
疑
誠意を尽くしてくれたチェトリに申し訳ない
人間としての誇り
番氏名
地
チェトリ
君の顔
子ども
たち
誠実
今日の授業の感想を書こう
村の
写真
い
← 私 撮影の仕事で滞在
思
☆ ビールが飲みたい。
四本買ってきてくれ
○ 五本のビールを背負ってくる。
○なんてやさしい子なんだろう。
○一本多く買ってきてくれてうれしい
○大変な思いをして買ってきてくれて
ありがたい。
一ダース分以上のお金を渡す
帰ってこない 歯ぎしりするほど後悔したのはなぜ
逃げた? だろう
○ あ ん な に お 金 を 持 た せ る ので は な か っ た
○なぜ、気軽に頼んでしまったのか
○けがでもしたらどうしよう
三日目の深夜 近頃あんなに泣いたことはないという
顔
のはなぜだろう
き
泣
チェトリ君 ドラカ村
貧しい生活
ネパールの写真
板書計画
9
授業記録
授業記録
主題名
誠実な生き方
1-(3)
資料名
「ネパールのビール」
( 出 典 :「 自 分 を 考 え る 」 あ か つ き )
授業者
杉戸町立広島中学校
第2学年4組
指導者
春日部市立春日部中学校長
山
西
実
教諭
田中
智子
先生
[事 前 の 学 習 ]
ネパール王国の文化・生活・日本との違いに
ついて調べ学習を行い、資料を理解するための
情報を交換し合う。
授業当日の朝読書の時間に資料を読み味わい、
話し合いたい事など話合いの柱を考えておく。
[本 時 の 展 開 ]
資料への導入を図る
T
・今朝、読書の時間に資料を渡しました。
皆さん、資料を読んだことと思います。
・ 今日は、ネパールの話をしたいと思います。
・( 写 真 を 示 し な が ら ) 前 に 調 べ て み ま し た が 、 ネ パ ー ル っ て 、 ど ん な と こ ろ で
したか。
C
・( 数 人 が ) 生 活 す る の が 大 変 な 所 。
・電気や水道もない所。
・険しい山ばかりで、車は通れないので、移動は全部歩くしかない所。
・生活が楽でないので、学校にも行けずに、家の手伝いをしている子どもたち
も多い。
T
・この写真からも、いろいろなことがわかりますね。
・今日の話に出てくるドラカという村は、ネパールの中でも山岳地帯にありま
す 。( 写 真 を 示 し な が ら 確 認 を す る )
・幼 い 子 ど も ま で が 、ト ウ モ ロ コ シ の 葉 を 重 そ う に 運 ん で い ま す ね 。こ う し て 、
家族の生活を支えているのですね。
C
・( 数 人 が ) 裸 足 だ 。
資料の条件や情況を確認する
T
・そうです。山を裸足で歩いて移動するのです。今日の話に出てくるチェトリ
君も、親元を離れて、働きながら学校に通っています。もちろん、毎日、裸
足の生活です。
T
・( ビ ー ル 瓶 を 見 せ な が ら ) こ れ を 見 て く だ さ い 。
C
・( 数 人 が ) ビ ー ル ?
T
・そう、ビールです。ネパールでは「イスタル」と呼ばれています。
・山の絵が、ラベルに描いてあるでしょう。
C
・ヒマラヤ?
T
・その通り。それくらい高価だということです。ビール1ダース分のお金があ
ったら、首都のカトマンズ(地図で示しながら)までバスで行って帰って来
られるぐらいだそうです。
・資料は一度読んでいると思いますが、私がもう一度読んでみます。
・ こ の 話 を 書 い た 人 は 、( 短 冊 を 出 し な が ら )「 私 」 で す 。
・( 短 冊 を 出 し な が ら )
「 私 」は 、ド ラ カ 村 に「 撮 影 の 仕 事 で 滞 在 」し て い ま す 。
・「 私 」 の チ ェ ト リ 君 に 対 す る 思 い を 感 じ 取 り な が ら 、 聞 い て く だ さ い 。
教師が範読する
T:
範読
C:
資料に線を引きながら、範読を聞く。
感想をもとに話合いの柱立てをする
T
・みんなで話し合ってみたいところを、発表してください。
C1
・ 3 日 目 の 深 夜 、 彼 の 声 を 聞 い た と き 、「 私 」 は 何 を 考 え た の か 。
T
・同じだという人はいますか。
C
・( 挙 手 )
T
・ずいぶんたくさんいますね。ここは大切なところですね。
C2
・チェトリ君が、べそをかきながら、その破片を全部出して、つり銭を出して
見せたところです。
T
・ な る ほ ど 。( べ そ を か い て い る チ ェ ト リ の 絵 を 貼 る 。)
C3
・あんないい子の一生を狂わしたと思った
のはなぜか。
T
・(C3のつぶやきを受け止め、短冊を貼る。)
C4
・似 た よ う な と こ ろ で す が 、
「 私 」は 歯 ぎ し
りをするほど後悔したとは、どういうこ
とか。
T
・( う な ず く )
・
( つ ぶ や き を 聞 い て )C5 さ ん ど う で す か 。
C5
・3本しかチャリコットにビールがなかったので、山を4つも越した所へ行っ
たところです。
T
・ねー、すごいよね。
C6
・4本買ってきてくれと言われたのに、5本のビールを買ってきた。
T
・うーん。そうでした。みんなの意見を、ちょっと整理してみますよ。
・( 話 合 い の 柱 を 整 理 し て 、 板 書 す る 。)
・
「 私 」は 、持 っ て く る こ と が で き な か っ た ビ ー ル を 飲 み た か っ た ん だ よ ね 。
(短
冊 を 貼 る 。)
・ここも話し合ってみましょう。
〈 ① の 場 面 〉 ビールを買ってきたチェトリ君を拍手で迎えたときの私の気持ちを考える
T
・「 私 」 は 、 一 番 飲 み た い は ず の ビ ー ル を 置 い て 来 ま し た 。 村 の 少 年 チ ェ ト リ 君
に 4 本 買 っ て 来 て と 言 っ た ら 、C6 さ ん が 気 付 い た と お り 、5 本 買 っ て 来 ま し
た ね 。「 私 」 は 、 こ の チ ェ ト リ 君 の こ と を ど の よ う に 思 っ た で し ょ う か ?
C1
・なんで5本なんだと思った。
C2
・素直ないい子だなあ。気が利くな。
C3
・4本と頼んだのに、5本買って来てくれるなんて、なんていい子なんだ。
T
・「 私 」 は 、 チ ェ ト リ 君 に 、 ど ん な 思 い を 抱 い た で し ょ う 。
C1
・もし、お金が余ったら、自分の小遣いにすることだってできたのに・・・。
C2
・自分だったら、5本買えるから買ってくるなんて、考えないかもしれない。
T
・ そ ん な チ ェ ト リ 君 な の で 、 つ い つ い あ て に し て 、「 私 」 は 、 ま た 、 頼 ん だ ね 。
でも、二回目は・・・。そう、帰ってこなかったんだ。
〈 ② の 場 面 〉チェトリ君が2回目にビールを買いに行って帰ってこない時の私の気持ちを考える
T
・二 回 目 は な か な か 帰 っ て こ な い の で 、村 の 人 に 相 談 し て み た ら 、
「 逃 げ た ん よ 。」
と 、 み ん な に 言 わ れ 、 C4 さ ん が 言 っ て く れ た と こ ろ で す が 、 歯 ぎ し り す る ほ
ど 後 悔 し た 。と 、あ り ま す が 、ど ん な 思 い が 心 の 中 に わ い て き た の で し ょ う 。
C
・( つ ぶ や き ) ち ょ っ と 難 し い な ぁ 。
T
・そうだね。では、近くの人と少し話し合ってみましょう。
( 机 間 指 導 を し な が ら 、 個 別 に 語 り か け 聞 き 取 る 。)
T:
机間指導
(つぶやきを聞きながら聞き返し、思考を深める)
C1:も し 、 事 故 に で も あ っ て い た ら 大 変 だ 。
C1”: 遠 い か ら 無 理 だ と 頼 む の を 止 め れ ば よ か っ
た 。自 分 の こ と ば か り で 、買 い に 行 く 人 の 身 に
なってなかった。
C2:お 金 が あ っ た ら 、 逃 げ ち ゃ う よ 。
C2”:大 金 を 子 ど も に 渡 し た の は ま ず か っ た 。お 金 を
渡 さ な け れ ば 、あ の 子 は い い 子 の ま ま で い ら れ
たのに。
C3:逃 げ な い よ 。 あ の 子 は 5 本 も 買 っ て き て く れ た
んだよ。
C3”:い ま ま で 見 た こ と も な い お 金 を 手 に し た ら 、人
間 の 心 は 揺 ら ぐ の か な 。で も 、信 じ た い 気 持 ち
が大きいと思うよ。
T
・「 私 」 は 、 チ ェ ト リ 君 に 首 都 ま で 行 け る ほ ど の 大 金 を 渡 し て し ま い ま し た 。
C1
・だまされたんだよ。帰ってこないよ。
C2
・自分の欲のせいで、あんないい子の一生をこんなにしてしまったという責任
感と後悔が、歯ぎしりするほどの後悔になったのだと思う。
T
・( 板 書 ) 自 分 の 欲 、 責 任 感 、 後 悔 。
・自分の欲とC2 さんは言っていますが、どうですか。
C3
・あの子が逃げるはずがないけれど、事故にあっているのではないか。
C4
・もっと冷静に考えればよかった。
C5
・お金を渡すときに、もっと考えればよかった。
T
・お金を渡すときにね。冷静にね。
・ あ ん な い い 子 。( 強 調 し て 板 書 す る 。)
C6
・ちゃんと帰って来てほしい。
〈 ③ の 場 面 〉 3日目の深夜、チェトリ君が立っていた姿を見た時の私の気持ちを考える
T
・ そ ん な 中 で 、 3 日 目 の 深 夜 。( 短 冊 を 貼 る )
・ ド ア を ノ ッ ク す る 音 が 聞 こ え て 、( 泥 ま み れ で 、 ヨ レ ヨ レ の 格 好 の チ ェ ト リ 君
の場面絵を見せながら)チェトリ君がやっと帰ってきました。
・「 私 」 は 、 そ の 姿 を 見 て 涙 が 流 れ ま し た 。 そ の 訳 を 考 え ま し ょ う 。
C1
・「 人 を 信 じ る こ と は 大 切 だ 」 と 、 心 の 底 か ら 思 っ た 。
C2
・チェトリ君が、逃げてしまったと考えていた自分が悲しい。
C3
・なんでこんなにいい子を信じてあげられなかったのだろう。
C4
・ちょっと違う方向から考えてみたのですが、なんで私のために、そこまでし
てビールを買ってきてくれたのか。
T
・なるほど。なんでだろう。
C1
・チェトリ君は正直者だからです。
C2
・チェトリ君は自分にできることを精一杯やった。やりたかったんだと思う。
C3
・ そ ん な チ ェ ト リ 君 を 、 自 分 は 村 人 と 同 じ よ う に 「 逃 げ た ん じ ゃ な い か 。」 と 疑
ったのだから、疲れ果てたチェトリ君を見たら、後悔とか反省とかで自然に
涙が出ちゃうと思う。
T
・ C 3 さ ん の 思 い 、 考 え が 伝 わ っ て き ま し た ね 。「 私 」 は 、 チ ェ ト リ 君 か ら 何 を
教わったのでしょう。
C1
・チェトリ君は、私のために善意を尽くしてくれた。
C2
・何日かけても、頼まれたことをやり遂げること。
主人公に託してチェトリ君への手紙を書くことにより「誠実」に生きることの大切さを考えさせる
T
・「 私 」 は 、 た く さ ん の 思 い が こ み 上 げ て 、 涙 で 言 葉 が 出 な く な り ま し た ね 。 そ
の思いを、チェトリ君への手紙として書いてみましょう。
・ ( ワ ー ク シ ー ト を 配 布 す る 。)
T: 机 間 指 導
( 机 間 指 導 を し な が ら 、 個 別 に 指 導 す る 。)
C1:何 を 書 い た ら い い の ?
T : 「 チ ェ ト リ 君 か ら 、 こ ん な こ と を 教 わ っ た よ 。」 と 語 り か け る よ う に 書 い て ご ら ん 。
C1”:頼 ま れ た こ と は 最 後 ま で や り 通 す と か 。 人 を 信 じ る と か か な 。
T
C1
・ で は 、 友 だ ち の 考 え を 聞 い て み ま し ょ う 。 C1 さ ん お 願 い し ま す 。
・あ の 時 チ ェ ト リ 君 は 、自 分 が 飲 む わ け で も な い の に 峠 を 4 つ も 越 え て 、ぼ く 達
のために重たいビールを買ってきてくれたね。本当にありがとう。帰ってき
て く れ た 君 の 姿 を 見 て 、感 激 し て い ま す 。こ こ ま で し な く て も よ か っ た の に 、
みんなが言うように、あのお金でお父さんやお母さんに会いに行けばよかっ
たのに。3日もかかっても、責任を果たそうと必死に帰ってきた君の姿に心
をうたれ、私は涙が止まりません。
T
・そ こ ま で 考 え ら れ た C 1 さ ん の 心 も 素 敵 だ ね 。
ありがとう。では、続いて、C2さんお願い
します。
C2
・こ の 前 は 、あ ん な こ と を 頼 ん で し ま っ て ご め
んなさい。君は本当にいい子ですね。その君
を私は疑ってしまいました。その自分が許せ
ません。君がいい子だということは、5本の
ビールを買ってきてくれた時も、また買って
こようか?と言ってくれた時も、よく分かっ
ていたのに、私は君を信じ切れなかった。情けないです。君が大人の私に教
えてくれた「真面目さや一生懸命やり遂げること、約束を守ること」は、い
つまでも忘れません。
T
・C2さんの発表を聞きながら、私も涙がこみあげてきました。チェトリ君は
すごいね。C2さん、素敵な手紙を聞かせてくれてありがとう。続いてC3
さ ん に も お 願 い し ま す 。 C3 さ ん は 、「 あ の と き の 味 は 、 今 で も 忘 れ ま せ ん 。」
の言葉が心に響いたようですよ。
C3
・こ の 間 は 、2 回 も ビ ー ル を 遠 く ま で 買 い に 行 っ て く れ て あ り が と う 。あ の ビ ー
ルの味は忘れられません。特に君が3日もかかって私の所まで運んできてく
れた時のビールは格別でした。君が私のために、私の単なる欲望のために、
あんなに一生懸命、応えてくれたこと。君のその気持ちがうれしくて、涙と
一緒に飲み込んだあの時のビールは、とても苦かったです。そして、君の気
持ちのようにとても温かかったです。本当にありがとう。
T
・なるほど。まるで、ビールの味を知っているかのような、実感がこもった手
紙 で す ね 。( 生 徒 の 笑 い ) C3 さ ん 、 あ り が と う 。 で は 、 も う 一 人 、 C4 さ ん に
も聞いてみたいです。お願いします。
C4
・私は君から「人間の素晴らしさ」を教えてもらったような気がします。今の
私たちが忘れかけていた「人のために」に気付かされました。自分のことよ
りも、相手の人のことを考えて、ビールが飲みたいという私のために、全力
で 尽 く し て く れ ま し た 。 君 の 生 き 方 に 私 の 心 は 動 か さ れ ま し た 。 そ し て 、「 人
間 の 素 晴 ら し さ 」「 人 の た め に 、 人 の 心 は 強 く な る こ と 」 を 改 め て 、 考 え さ せ
られました。
(つぶやき)
C
・やっぱり、人を信頼しなくちゃいけないなあ。
T
・ C 4 さ ん は 、「 人 間 の 素 晴 ら し さ 」 っ て 書 い て い ま す 。 人 間 に と っ て 、 大 切 な
のは、何だろうね。
C1
・責任をもって、一生懸命取り組むことだと思います。
C2
・最後まで、あきらめないで頑張ることだと思います。
C3
・人のためになることを、何も考えずに、自分のできる精一杯の力でやること
だと思います。
雪舟の説話を用いて、ねらいについてまとめる
T
・ 今 、 み ん な が 気 付 い て る そ の 心 を 、「 誠 実 」 と い い ま す 。
・誠実であることは、人間としての誇りだと思います。
・チェトリ君は、誠実ですね。だから、私たちの心を動かすのですね。
・( 雪 舟 の 言 葉 を 黒 板 に 貼 る 。) 一 に 誠 実 、 二 に 誠 実 、 三 に 誠 実 。 誠 実 を 忘 れ る
と処世も人生も誤る。
・ 雪 舟 の 話 で す 。( 雪 舟 の 話 を 配 布 す る 。)
・雪舟が中国にいたとき、五重塔の絵をかきました。日本に帰ってくると、五
重塔があると思っていた寺に、五重塔がないのです。ないものを描いたら、
嘘になってしまうと悩み、雪舟は、意を決して五重塔を建てることにしたの
です。それから、大変な思いをして、ついに五重塔を建立したのです。誠実
ということは、人間の尊い宝なのです。
・今 日 は 、み ん な で「 誠 実 」と い う こ と を じ っ く り 話 し 合 え た よ う に 思 い ま す 。
( 生 徒 は「 振 り 返 り カ ー ド 」に 、本 時 の 学 び を 自 分 の 言 葉 で ま と め て 、授 業 を 終 え た 。)