情報番号:20062652 テーマ:業務改革に着手する前に入念にシナリオを

情報番号:20062652
テーマ:業務改革に着手する前に入念にシナリオをつくろう
編著者:中小企業診断士 岡 正熙
なぜ業務改革をするのか
「改革」が緊急の課題だ、今やらなければ時代に取り残されてしまう、とい
うことが頻繁に聞かれる時代である。それでは何をするのかと聞くと明確な答
えが返ってくることは少ない。売上やシェアを伸ばして、利益を増やすのだ、
ということはよくいわれる。しかしこんなことは当たり前のことである。会社
であるからには、当然いつでも追求しなければならないことであり、永遠の使
命でもある。
重要なことは、なぜそれが必要かということを会社の構成員すべてが認識し
て、共通の意識を持ってこれに挑戦することである。単純に、今期の売上や利
益が前期と比較して増えた、減ったと喜んだり、嘆いたりしていても何の役に
も立たない。
将来にわたって、長期的に会社が発展していくための力をつけていくことが
業務改革の目的である。
業務改革の目的
会社にはビジョンが必要である。ビジョンは、会社が将来的にこうありたい
という姿を示すものである。この分野では業界第一位ありたい、会社の価値を
どこまで高めたいなど、会社によってさまざまであるが、何らかのビジョンが
あるのが普通である。
ところが、一般の中小企業になると、それが明確でないこともしばしばみら
れる。ともかく、今期または今月の利益が上がっていればそれでよい、という
考え方で経営を続けているところが多いのが実情かもしれない。
それはひとつの考え方として否定はしないが、将来的に安定した基盤を築い
ていこうという会社であれば、こんなことをやっていると環境の変化に振り回
されていずれは破綻してしまうということになる。
ビジョンを実現するためには長期的なものの見方が求められる。
長期的に利益を上げて、計画的にビジョンを達成するということが、会社の
勝ち残りのために欠かせない。そして、そのために会社の実力を向上させるこ
とが欠かせない要因となる。
業務改革は会社の実力をつけるために実施される。
単純に実力をアップせよ、といわれても、さて何をすればよいかというと、
即答はできないかもしれない。売上が増加した、といっても、それで実力が上
がったとは言い切れない。
まず会社の現状を知り、どこで、何をするかということを決めていかなけれ
ばならない。
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(株)経営ソフトリサーチ・レファレンス事業部
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そこで改革のシナリオをどう作るかということが重要になってくる。
業務改革実施のためのステップ
業務改革を実施するに当ってのステップは、おおまかに次のようになる。
ビジョンの策定
会社の進むべき方向を決定
現状調査
内外環境の調査、会社の実力の判定
目標の設定
ビジョンに沿った目標を設定
実施計画
担当部署の決定、計画の作成
誰が、何を、いつまでになどを明確に
計画の実行
担当部署がそれぞれの役割を実行
結果の確認
各担当部署が実施した結果の収集と
総合的なまとめ
フォローアップ
出された結論どおりのことが行われている
ことをフォロー
計画通りできていないことがあれば、いつ
でも原点に戻って見直し、改訂
これらのことをやり遂げるには、統括して管理監督する専任部署をおかなけ
ればならない。例えば、「経営企画部」などの部署が担当することになる。
必要に応じて会議を招集して、計画立案、現状チェック、今後の方向などを
討議する。
場合によっては、プロジェクト・チームとすることも考えられるが、中小企
業では、チームに専任できるだけの人を割くことは難しいことも多い。そこで、
全体をまとめる部署が必要となってくる。
各部署がやっていることは、それぞれちがうので(例えば製造、営業、経理、
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総務など)、調整を取ることがたいへんである。統括担当部署に対しては、相
当の権限を与えなければならない。また自身が強力なリーダーシップを発揮す
ることが求められる。
特に注意する点
このステップ一つ一つを細かく説明していくと、膨大な量になるし、また、
会社によって、内容もそれぞれ違ってくるので、ここではあえて述べない。し
かし、特に注意する点として、つぎの2つを取り上げる。
・現状調査
会社の力を知り、何をするかを知るための手法として、SWOT分析を行う。
自社の強みと弱みを知り、何に対して、どんな対策をとればよいかを決める。
S:強み strength
W:弱み weakness
O:機会 opportunity
T:脅威 threat
考え付くことをすべてメモで書き出して、次のようなスタイルでまとめると
現状が分かってくる。
S:強み
O:機会
W:弱み
T:脅威
例えば、○○に関する技術力はあるが、販売するための人材が少ない。市場
としては、□□業界に大きい需要が見込まれるが、他社からの参入の可能性が
ある、という結論が出たとする。
対策としては、早期に人材育成して、市場を他社よりも早く押えてしまうと
いう方針が出てくる。
・目標の設定
再三いっているように、目的は売上と利益だけではない。ここでは、経営全
般にわたる視点から、会社の力の強化を図らなければならない。
そのために参考になるのが、バランスド・スコアカードという考え方である。
会社の成長の経過を4つの視点からとらえている。ここでは項目のみ示してお
く。くわしいことは別途専門書などで研究して欲しい。
①財務的な効果 文字通り売上や利益に関すること
②学習と成長 従業員の能力向上や満足度
③社内のビジネスプロセス 業務遂行のための効率性の向上
④顧客に対する効果 顧客満足度の向上など
少なくとも、これら4つの面から見れば、会社が伸びているかどうかがわか
ってくる。
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