日産のBEST Program - RED HAT OPENEYE

Success story for your business
Red Hat K.K. EDITORIAL 2011
オープンソースの 新 時 代 を 築く、サクセスストーリー
OPEN EYE
04
vol.
2011 WINTER
INDEX
ユーザー事例 Success Story
トップインタビュー
トッ
ンタビュー
日産自動車株式会社 執行役員 CIO
グローバル情報システム本部 本部長
ユーザー事例 Success Story
行徳 セルソ氏
共通
共通プラ
ットフォー
ォームにR
RedHatを採用し
ビジネス戦略の迅速な展開を実現
Red Hat Forum 2010
レッドハットフォーラム 2010 開催レポート
大和証券グループの統合基盤を支えているのは
大和証券グループの統合基盤
を支えているのは
RedHatEnterpriseLinuxとコンサルティング
ユーザー事例 Success Story
日産自動車株式会社
誰もが次の革新を
確信できた1日。
株式会社大和総研
株式会社デュオシステムズ
全国で自治体クラウドを体験できる
利用実証環境をR
利用実証環境を
Red HatのKVM
VMで構築
構築
クラウド時代の主役はオープンソース
ユーザー事例
事例
投資額に対し 倍のIT導入効果を実現した
投資額に対し2倍の
日産のBEST Program戦略と
戦略とは?
は?
日産自動車
トップインタビュー
ITの最適投資が4つの軸
Tの最適投資が4つの軸から見えてくる、
から見えてくる、
必見のサクセスストーリーがここに
Success Story
日産自動車株式会社 執行役員
CIO グローバル情報システム本部 本部長
行徳 セルソ 氏
Enterprise Architecture
ウェア、ミドルウェアなどを含
日産自動車株式会社の驚異的な V 字回復を実現し、世界中の脚光を浴びた社長兼
は文字通り、プロセスの標準
めた I T プラットフォームを自
最高経営責任者(CEO)
カルロス・ゴーン氏。カリスマ経営者は IT に何を求めたのか?
化、システムの標準化などエ
由に選 択できるように変えま
執行役員 CIO グローバル情報システム本部 本部長 行徳 セルソ氏にお聞きしました。
ンタープライズ・アー キ テク
した。2011 年 4 月からはシン
チャの手法を用いて日産が所
グルベンダーからマルチベン
有していた資産をできるだけ
ダーへと本格的に移行する予
活 用しながら、I T インフラの
定です。
― CIO の就任にあたり与え
は IS( IT インフラサービス)の
られたミッションは?
可視化、つまり投資に対する
Simplificat ionという4つの
可視化を行うことです。同時に
Technology Simplification
効果がどれだけあがっている
コン セ プトを 頭 文 字 にし た
アプリケーションのポートフォ
は、メインフレームや UNIX、
「 私 が C IO に就任したのは
Sourcing, Technology
か を 明 確 にすることでした 。 BEST Program を立ち上げ、 リオなど、今までアウトソーシ
Windows が混在し、複雑化し
2 0 0 4 年 5 月で す が 、当 時 、 そ の た め に 、B u s i n e s s
改革に取り組みました。
ングしていたものをインハウ
ていたシステムをシンプルに
カルロス・ゴーンCEOから与え
Alignment, Enterprise
B u s i n e s s A l i g n m e n t は、 ス化してノウハウを蓄 積する
変えること。ここではオープン
られた大きなミッションの 1 つ
Architecture, Selective
IT投資に対するリターン(ROI) 狙いもあります。
ソースなどを活 用してプラッ
をコミットメントする
Selective sourcing は特
トフォームを 共 通 化していく
こと。IS 部門と業務部
定 のベンダーにロックインさ
方針です。
門との 間でコンセン
れることなくマル チベンダー
今後もさらに改革を進めて
サスをとりながら、シ
に切り替えること。そのために
いきますが、この5年間でも投
ステムにかかるコスト
どうやってベンダーとつきあっ
資への対価を明確化できるよ
を可 視 化し、その 成
ていくかなど、新たなシステム
うになっており、既に100円の
果を明確に測れるよ
の導入や調達のプロセスも標
投資に対して200 円の効果が
うにしました。
準化し、ソフトウェアやハード
出ています」。
オープンソースを活用することで、
プラットフォームの共通化を推進。
Success story for your business
事例
ユーザー事例
Success Story
日産自動車
共通プラットフォーム
日産・ルノーを含めた全世界の
RedHatを採用し、
を採用し、
共通プラットフォ
共通
ォームにR
ビジネス戦略の迅速な展開を実現。
プラットフォームを共通化かつオープン化することにより、
投資の最大化とスピード化を実現。
日産自動車株式会社は全世界に拠点を持ち、ルノー・日産アライアンスによる独自のビジネスモデルを推進されて
います。IS部門ではBEST Programのもと、そうしたグローバル戦略を支えるITインフラとして日本はもちろん、
アメリカ、
ヨーロッパ、アジアなどで共通して活用することで高い相乗効果を得るための基盤を構築されています。しかし、複数
の異なるシステムを活用されていたためCP(Common Platform)1、CP2と名付け、段階的な導入を図ったとのこと。
その目的と具体的手法およびRed Hatのソリューションを選んだ理由について行徳氏、さらにはグローバル情報シス
テム本部 ITインフラサービス部(兼)ISアーキテクチャー部 チーフITアーキテクト 木附 敏氏にお話を伺いました。
きます。オープンソースソフトウェア
(OSS)を活用す
背景
日産、ルノー全世界のプラットフォームを
共通化するためにオープン化を志向
行徳氏は、BEST Program を具現化する共通プ
ラットフォーム(Common Platform)について次の
ように語ります。
「BEST Program の中で核になるのはオープン化
ることでそうした展開が容易になります」。
ンダー化という面では Windows だけでは弱いのと、
既存の UNIX ベースのアプリケーションの移行先プ
ラットフォームとして、OSSであるLinuxも取り込んだ
CP2に第2弾として取り組みました」。
システム課題
メインフレーム、UNIX、Windowsサーバ
混在によるITの不透明化と複雑化
Red Hat( Linux&JBoss)を選んだ決め手
世界中での実績とサポート体制、
Linuxとミドルウェアの相乗効果
共通プラットフォームを導入する前の日産自動車
です。しかしオープン化は手段であって目的ではあ
の IT インフラは、異なるOS やハードウェアが混在し
りません。目的は投資に対していかに高い効果を得
ており、複雑がゆえに効果が見えにくいものでした。
オープン化においてRed Hat が選ばれた決め手は
られるか。そしてそれが会社の成長戦略につながる
そんな状況を木附氏は次のように評します。
どこにあったのでしょうか?木附氏にお聞きしました。
ことが重要です。
「そのころは様々な IT ベンダーが、我々のデータ
「当初は、他社から提供されているLinuxを利用する計
日産やルノー、全世界のプラットフォームを共通
センターにいろいろなテクノロジーを持ち込んでさ
画でいました。
しかし、
グローバルでのサポート体制な
化および標準化すれば、システムの統合、さらには
んざんインフラを複雑化した挙句、
『日産さんの環
どがRed Hatの方が強いこと、
さらに全世界でのシェア
日産とルノーの戦略をシェアして活用することがで
境は複雑化しています、統合化してシンプルにしま
が圧倒的に大きくて実績もあり、我々自身が一部で
しょう』と言ってくるお かしな 状 況 だった の で す
Red Hatの製品を既に活用して、その強みを実感して
(笑)」。それがOSS による共通プラットフォームのス
タートとなったのです。
いたことから、
最終的にRed Hatを選択しました」
。
更に、アプリケーションサーバもJBossへと移行す
ることになったと言 います。
「 当 時 は 、商 用アプリ
ケーションサーバ(WebSphere)を標準として活用
システム課題を解決する要件
UNIXサーバからIAサーバへの移行による
ガバナンスの強化とマルチベンダーへの移行
していたのですが、OS に歩調を合わせてアプリケー
ションサーバの OSS 化も検討しました。OSとの親和
性 は 高 い のは 当 然 のこと、商 用アプリケーション
共通プラットフォームの構築は段階を追って進め
サーバになんら引けをとらないことが確認できたの
られたと言います。その経緯を木附氏に伺いました。
で、切り替える決断をしました」
( 木附氏)。
「共通プラットフォームを実現する第一弾である
CP1 においては、Windowsプラットフォームを物理
的に統合しました。新規アプリケーションについて
は UNIXを極力排除してIA サーバへと移行したので
す。それはサーバのベンダーロックインを解消し、組
Celso GUIOTOKO
Red Hat( Linux&JBoss)のメリット1
サーバのリプレイスにおいてUNIX環境と
比較して約1/10にまでコストを圧縮
織的なガバナンスを効かせる意図がありました。し
Red Hat への切り替えはコスト的にも大きな効果
かし、エンタープライズ・アーキテクチャやマルチベ
を生んだと言います。
標準化、共通化へのステップ
01
背景
02
システム課題
03
システム課題を
解決する要件
04
Red Hat(Linux&JBoss)
を選んだ決め手
日産・ルノー、全世界の
プラットフォームを共通化する
ためにオープン化を志向
メインフレーム、UNIX、
Windowsサーバ混在による
ITの不透明化と複雑化
UNIXサーバからIAサーバへの
移行によるガバナンスの強化と
マルチベンダーへの移行
世界中での実績と
サポート体制、Linuxと
ミドルウェアの相乗効果
・日本、欧米、
アジアで活用できる
共通プラットフォーム
・ITの標準化による投資効果の
向上と効率化
・ブラックボックス化されたシステム
・異なるOSが複雑に混在した
ITインフラ
・UNIXサーバを極力減らし、
マルチベンダーへ
・組織的なガバナンスを強化
・世界各国での豊富な導入実績
・OSSのトータルソリューション
2 OPEN EYE
Red Hat K.K. EDITORIAL 2011
▼ グローバル共通プラットフォーム
(Common Platform )
コンセプト
従来(部分最適化)
現在(全体最適化)
インフラ設計、開発、運用などの
オペレーションをプロジェクトごとに実施
すべてのインフラ設計と構築をIT部門が
トータルにコントロール
Infra Design
By Project
Infra Design
Infra Dev.
By Project
Infra Dev.
Infra Ope.
By Project
Infra Ope.
By Infra Team
APP
APP
APP
APP
M/W
M/W
M/W
DB
DB
DB
H/W
H/W
H/W
APP
APP
Loosely
Add
Coupled
日産自動車株式会社
グローバル情報システム本部
ITインフラサービス部(兼)ISアーキテクチャー部
チーフITアーキテクト
Common middleware
Common DB
Common Server & Storage
木附 敏
「Linux だけでなくJBoss を含めたトータルな導入
証環境、本番システムへの移行段階においても全く
に踏み切ったのは、コスト面も大きな理由の 1 つで
不安がなかったと言います。
す。2009 年の春に当時活用していたUNIXと商用ア
「今回の移行においてはストレージ環境もリプレ
プリケーションサーバ(WebSphere)の環境が老朽
イスしたため、レスポンスのパフォーマンスは単純
化し、リプレイスを検討したのですが既存のシステム
比較できません。しかし信頼性においては UNIXと
最後に行徳氏、木附氏に今後展望や Red Hat に
をマイグレーションする場合とRed Hat Enterprise
同等かそれ以上だと思います。共通プラットフォー
期待することをお聞きしました。
Linux+JBoss にリプレイスする場合を比較しても同
ムにすることでスケールアウトしやすいシステムに
「Red Hat にはロードマップを我々ユーザ企業や
今後の展望
常に選択肢を2つ以上
常に選択肢を2つ
以上持てるような環境で、
持てるような環境で、
フレームワークをグローバルで共有化
等かそれ以下だったのです。
なっていることもその理由の1つです。さらにリソー
各ベンダーがビジョンや戦略を共有できるようにし
もちろん新たなアプリケーションを追加する予定も
スも有効活用できます。移行後はサーバの台数を
て欲しいと思います。また今後クラウドなどの環境が
あったので、そうしたコストも考慮しました。単純な比
70%以上減らせました。これはサーバ運用の効率
進化していくにつれ 、より有効に戦略やリソースを
較 はできませんが 、U N I X での 試 算と比 較して約
化 および 省 力 化 にもつ な がります 」。また 、エコ
シェアできるようなインフラを整備したいです。タイ
1/10くらいにはなっていると思います。他にもOSSの
カーに注目が集まる中、自動車業界の開発競争も
ムtoマーケットでどんどん新しいサービスが登場して
アプリケーションサーバはありますが、ほとんどの場
激しくなっています。そのためにはスピードが要求
くれば、
ビジネスの選択肢が広がります」
(行徳氏)。
合サポートが弱い、もしくは全く受けられないので信
されます。
「今後、共通プラットフォームはハイパーバイザーや
頼性という意味で大きな差がありました」
(木附氏)。
「従来の環境ではサーバの調達に時間がかかっ
DBなどのオープンソース化も視野にいれつつ、SOA、
CIOという立場から行徳氏も証言を続けます。
ていました。共通プラットフォームにより、そのリー
BRMSといった最新技術も取り込んだ CP3 へと進化し
「Red Hat 製品は、ライセンスではなくサブスクリ
ドタイムを大きく短縮できました。現在、BOM(部品
ていきます。我々は常に2つ以上の選択肢を持ちなが
プションに対してお金を支払うので、我々ユーザ企
表)を起点にしたエンジニアリング系のアプリケー
ら、マルチベンダーのメリットを享受しつつ、ベンダー
業としても合理的な投資と言えます」。
ションと経 理 系 の アプリケ ーション を R e d H a t
ロックインを極力排除していきたいと思います。
Enterprise Linux+JBossのシステムで稼働させて
また、インフラだけでなくアプリケーションの作り
おり、今後は基本的に共通プラットフォーム以外で
方=フレームワークについてもオープンソースのメ
アプリケーションを構築することは考えていません。
リットを生かしつつグローバルに標準化を進めてい
全体で800有余のアプリケーションが動いています
きたいと考えています。
木 附 氏 はシステム構 築 にお ける R e d H a t のサ
が、そのリプレイスや新しいアプリケーションを構
クラウド化が進めば、我々が日本でリソースを提
ポートも大きかったと言います。
築する場合においても、共通プラットフォームのメ
供して全世界の拠点で活用するといったことも視野
リットを活かし、展開のスピードを迅速化できます」
に入ってきます。個人的な見解ですが、今の状況は
Red Hat( Linux&JBoss)のメリット2
経験豊富なスタッフがシステム構築をサポート
「UNIX からLinux 環境への移行においては慎重
に検証を行いました。その過程でも Red Hat のス
一昔前に IT ベンダーが各企業のデータセンターを
(木附氏)。
タッフが支援してくれました。我々が想定していた問
「IT は、それぞれに役割が違います。我々はニー
複雑化させていたことを、舞台をクラウドに変えて同
題点、想定していなかった問題点、それぞれについ
ズにあわせた 31 のプロセスを定義してシステム構
じことをやろうとしているようにも見えてしまいます。
て常に的確なアドバイスをもらいました。時には直
築の手法を定め、必要に応じてスケールアップでき
そういったことに陥らない様に、KVM や Deltacloud
接、時にはSIベンダーの裏から支えてくれました」。
るように標準化、共通化を推進しています。その展
といった OSS を推進している Red Hat がクラウドを
開 のスピードも 3 D デジタル 化された開 発 環 境で
リードして欲しいと思っています。」
( 木附氏)。
1/2、調達システムにおいて1/3 短縮されています。
「日産自動車は、HV、EV など環境に配慮した自動
今まで9ヶ月かかっていたような工程も6ヶ月以下に
車に注力しています。そしてこれからは、自動車向け
短縮されるのです。さらに、日産のシステムをルノー
にサービスを提供するIT インフラも求められる時代
Red Hat( Linux&JBoss)のメリット3
高い信頼性のもと、
アプリケーションの
迅速な展開と運用の効率化を実現
05
氏
でリユ ースできる、ルノー のシステムを日 産でリ
になってきます。我々はそうした分野もふまえた上で、
Linux への移行に対し、信頼性の面で不安を抱く
ユースできるようになり、開発の短縮化とともに投
お客様により良い製品やサービスを提供するための
企業や技術者もいます。しかし、木附氏によると検
資効率の向上を両立できます」
( 行徳氏)。
プラットフォームを開発していきます」
(行徳氏)。
Red Hat(Linux&JBoss)
のメリット1
06
Red Hat(Linux&JBoss)
のメリット2
07
Red Hat(Linux&JBoss)
のメリット3
08
今後の展望
サーバのリプレイスにおいて
UNIX環境と比較して
約1/10にまでコストを圧縮
経験豊富なスタッフが
システム構築をサポート
高い信頼性のもと、
アプリケーションの迅速な
展開と運用の効率化を実現
常に選択肢を2つ以上持てる
環境で、
フレームワークを
グローバルで共有化
・マイグレーションよりも低コスト
・ITの調達やシステム構築時間の短縮
・検証から構築にいたるまで、
的確なアドバイスによる
システム構築支援
・UNIXと変わらない信頼性の実現
・システム開発と運用の迅速化と
負担軽減
・共通のフレームワークを全世界に展開
・クラウドによる新たなシステム、
サービスの実現
OPEN EYE 3
Success story for your business
ユーザー事例
事例
大和証券グループの統合基盤
Success Story
を支えているのは、
「インターナルクラウ
インターナルクラウド」を支えているの
大和総研
共通プラットフォーム
とコンサル
サルティング。
Redd Ha
Re
Hatt Enterpris
Enterprise
e Linu
Linuxとコ
大和証券グループのITインフラを支える大和総研。
サイロ化から統合基盤への移行にオープンソースを活用。
株式会社大和総研には、経済、金融・資本市場等に関するクオリティの高い調査・分析、提言活動を行
う
「リサーチ部門」、経営戦略、事業評価、人事制度等について真に有効な情報提供・提案を行う
「コンサ
ルティング部門」、大和証券グループの IT 戦略を強力に支援し、大和証券グループのサービスを支えて
いる
「システム部門」があります。今回は大和証券グループの ITインフラを統括するグループシステム企
画部長 田中 宏太郎氏に、証券市場をリードする大和証券グループのITがどのような進化を遂げてきた
のか、Red Hatをはじめとするオープンソース
(OSS)
をどのように活用されているのかをお聞きします。
テムと呼ばれるステップを踏んで進化してきました。
が、そこでも課題が生まれました。
IT の進化という視点で見ると、通信の発展が拠点間
UNIXも本来、オープンな OSとして誕生していたは
の距離を縮め、コンピュータの進化が人間ではでき
ずなのですが、OSがBSD系とシステムV系に分かれ、
証券・金融は常にITの先進事例を切り拓いてきた
ない量と速度の処理を可能にしたと思います。導入
メーカーも陣営が分かれてしまった結果、差異が発
業界と言えます。そこにフォーカスを当てると、メイ
当時でいえば、支店と本店との距離と時間を超える
生し、今も統一されていません。これにより同じミドル
ンフレーム→UNIX→Linux、部分最適化→全体最
ために、また機関投資家からの大量の注文を迅速に
ウェアやアプリケーションでもそれぞれのハードウェ
適化など、現代へと続くITの本質が見えてきます。大
処理するため等に、ITを利用したのです。その後、大
ア・OS向けのXXXX for A社、XXXX for B社というよ
和証券、大和総研の歩みはまさにその縮図ではな
和証券は、業界初の信金口座と連携して投資信託
うにバージョンが増えてしまい、同じUNIX 系 OS のは
いでしょうか。前身の大和コンピューターサービス時
を自動買付するサービス等、IT の活用によって、新
ずなのにハードウェアが変われば互換性がないとい
代から、この分野に関わってきた田中氏の知見から
商品・新サービスを次々と実現してきました」。
う状況が生まれてしまったのです。それとともに、ある
人の手による証券取引のIT化
メインフレームによる大容量、効率処理へ
それを探ります。
「当社は 1989 年に大和コンピューターサービス、
大和システムサービス、大和証券経済研究所が合併
アプリケーションに強いSIベンダーX社はA社のUNIX
メインフレームからUNIXへ。
そこで見えた課題とは?
して誕生しましたが、その後 2008 年 10 月に持ち株
が得意、別のアプリケーションに強い SI ベンダーY 社
は B 社の UNIX が得意といった縦割り構造が生まれ、
ユーザ企業のシステムもシステム構築を委託するSI
会社の誕生を機にIT 部門も再編されました。私はそ
しかしIT化にも弱点がありました。
の中で大和証券グループのサービスにはなくては
「第三次オンラインシステムまでは、主な処理はメ
ならないグループ各社の情報システムの、企画・構
インフレーム(大型汎用機)で行われてきました。し
ベンダー毎にサイロ化されていったわけです」。
UNIXによりサイロ化されたインフラ。
それを解決するためにLinuxが候補に
築から運用、保守までを担っている、大和総研のシ
かし当時、経済活動の活発化や国民の金融資産の
ステム部門に属しています。
増加に伴い、証券市場において機関投資家の存在
証券業界はITの導入が比較的早い業界だったと思
感が大きくなる
『機関化現象』が顕著になっていまし
サイロ化は何が問題だったでしょうか。
います。古くは紙に書かれた注文伝票をもとに、証券
た。投資信託、年金基金、生命保険などの機関投資
「ミドルウェアやアプリケーションごとに異 なる
取引所内で『場立ち』
と呼ばれる人たちが手サインを
家との取引が急増し、いわゆるトレーディングの巧拙
UNIXを導入しても、投資に見あった効果が出ている
駆使して、取引したい銘柄・単価・数量の伝達を行っ
が証券会社の収益に大きな影響を与えていたので
うちは良いのですが、複数種類の異なる UNIX を導
ていました。
また売買成立後の精算事務も手作業でし
す。そのため、1988 年頃、トレーディングサポートシ
入すると、処理方式や製品が異なり、構築や運用に
た。しかし取引が拡大するにつれ、手作業では立ちゆ
ステムを第三次オンラインシステムと並行して構築
関してもそれぞれのスキルセットを持った人材を用
かなくなりました。1955 年、UNIVAC-120というコン
しようとなったのですが、メインフレームが苦手とし
意しなければなりません。UNIX上で動くミドルウェア
ピュータが東京証券取引所に設置されましたが、これ
た、一斉同報(ブロードキャスト)、マルチウィンドウ、
やアプリケーションとその組み合わせまでを加える
が日本初のコンピュータと言われており、この導入を
GUI の機能が欲しかったため、UNIX ワークステー
と、さらに多くのスキルセットが必要となります。この
機に、業界全体のIT化が一気に進んでいったのです。
ションを採用しました。これをきっかけに、いわゆる
ように、異なるサイロが複数存在すると、高コストな
証券業界の IT 化は、第一次オンラインシステム、
UNIX のクライアント・サーバ型システムの新規導入
体質になってしまうのです。そのような状況を改善す
第二次オンラインシステム、第三次オンラインシス
や旧システムからの置き換えが進んでいったのです
るには、複雑化したシステムをシンプルにするほかな
メインフレーム導入から
Red Hat Enterprise Linuxによる
標準化への流れ
4 OPEN EYE
01
02
人の手による証券取引のIT化
メインフレームによる大容量、効率処理へ
UNIX導入による
システムの多様性の確保
・電話による支店から本店・証券取引所への
受発注処理のオンライン化
・投資信託の自動買付等の新サービスの実現
・トレーディングサポートシステムをきっかけに
クライアント・サーバ型システムが普及
・メーカー毎に異なるUNIXにより
システムのサイロ化という課題も
Red Hat K.K. EDITORIAL 2011
▼ インターナルクラウドの基本的ポリシー
論理サーバ
自社作成
アプリケーション
アプリケーション
サービス層
Web/AP
ミドルウェア
OS
パッケージ製品
DBMS
Red Hat Enterprise Linux
ファイル転送
Windows 2008
…
Windows 2003
分離
サーバ仮想化
vmware
XenServer
Hyper-V
KVM
仮想化層
PAN Manager(egenera)
インフラ仮想化
分離
インフラ層
物理サーバ
A社
B社
C社
ストレージ
D社
E社
F社
ネットワーク
G社
H社
I社
株式会社大和総研
グループシステム企画部長
田中 宏太郎
氏
く、そのために選んだのがLinuxだったのです。
ストリビュータとしてRed Hat に優位性と魅力を感じ
していくことになるので、最初の『型』が肝心です。そ
もちろんUNIXからの移行に当たっては、OSだけを
たのです。ユーザ会の立上げが早かったのも、そのよ
こで Linux の標準パラメータの設定等に Red Hat の
考慮していたわけではありません。当時普及し始め
うな姿勢の表れと言っていいのではないでしょうか」。
コンサルティングサービスを利用したのですが、対応
た IA 系ブレードサーバへ移行、統合することも視野
に入 れた結 果 、L i n u x の 採 用を決 定したのです。
Linux の本格活用を 2003 年頃より検討し、OLAP の
情報系・分析系システムを2005 年に稼働させ、その
には大変満足しています。こちらからの質問に対して
サイロ化から統合基盤「インターナルクラウド」へ。 回答のサイクルが速く、何よりRed Hat の技術者は
それを支えたのがRed Hatのコンサルティング ソースの中身を確認して対応ができるので、内容が
的確でした。
実績をふまえて 2007 年から基幹系の OLTP 処理に
大和総研では UNIX サーバからIA 系ブレードサー
UNIX や商用ソフトのベンダーの中には、日本法
利用、
と段階的に導入してきました。当社専務執行役
バへの移行を一歩進め、グループ共通のプラット
人ではソースを見られないケースも多く、その場合、
員の鈴木が、先進的な IT の導入に積極的だったこと
フォームとして活用できる
『インターナルクラウド』を
逐一アメリカに確認してから回答が返ってくるため
もあり、他社に先駆けてLinuxのノウハウを手に入れ
構築しています。標準のOSには、Red Hat Enterprise
タイムラグが生じていました。国内でソースが見ら
ることができたと思います」。
Linux が採用され、Red Hat のコンサルティングをは
れることは単純に回答のスピードだけでなく、安心
じめとするソリューションが役立ったといいます。
感の差にもつながります」。
数あるLinuxの中で、
Red Hatを選択。
その理由は、実績とオープンを推進する姿勢
「前述のブレードサーバとLinux の採用等により、
「Linux の導入に当たって Red Hat を選んだ理由
期化が可能となりました。しかし、2008 年初頭、標
は、ワールドワイドでの実績に加えてOSSに取り組む
準 化を徹 底していく従 来の方 針を継 続するのか、
「ともするとベンダーは、囲い込みに走りがちになり
姿勢が大きかったと思います。
いっそ標準化されたプラットフォームを提供する方
ます。しかし考えてみて下さい。自由に出入りできるお
当時、対抗するLinuxとして他に有力なブランドも
式に転換した方が良いのかが議論の的になってい
店なら、抵抗なく入り、良ければ常連になると思いま
ありましたが、一部の大企業が主体となっていること
ました。従来の場合、標準化したルール通りに選定
すが、入ったら買うまで出られないと思わせるお店に
機器調達(サーバーブレード)期間の短縮、OS設定・
クラウド技術の標準化も視野に入れ、
今後もオープン・ベンダーフリーを追求
処理方式の統一(標準化)によるインフラ提供の早
が懸念としてありました。UNIXの歴史がそうであった
機器の調達や構築・導入が行われているかどうかを
は簡単に入る気になりません。入ってみてそこそこ良
ように、独自の方言(互換性のない仕様)が出てくる
チェックする必要がありましたし、また同じ選定製品
ければ(笑)わざわざ別の店には行かないものです。
危険性を感じたのです。しかも民間企業の買収競争
を使ってもそれを用いた構築工程は、会社全体とし
囲い込みは、本来、運用・保守サービスや魅力ある提
や、知的財産権をめぐる法的な争いもありました。
て見た場合、重複した工数になります。これらを考え
案等の付加価値で行うものであって、乗り換え困難な
つまりオープンソースを掲げながらもユーザから
ると、今後は標準化されたプラットフォームを提供す
見ると、オープンさを感じられない部分があったの
べきではないかという結論になりました。サイロに
オープンであること、ベンダーフリーであることが重
です。一般製品に例えると、ビデオのベータとVHSの
分断されていたシステムを統合化された基盤に移
要なのです。大和総研が新日鉄ソリューションズ、
ようなものだと思います。視聴できる映画(のテー
行・集約し、新たなシステムもその統合基盤上に導
プ)がハードの仕様で異なったり、テープ価格が異
入することにしたのです。
なったり…というのはあくまでもメーカー側の都合
当時、
クラウドという言葉が普及し始めていました
を立ち上げたのも、ユーザとしてオープンであり続
であって、ユーザにとっては何のメリットもありませ
が、我々はプライベートクラウドを作ろうと思って始
けたいという考えからです。
ん。実際にベータはVHSに淘汰され、DVDの次世代
めたものでなく、この議論の前からあったブレード
標準化においては各種レイヤー毎に常に 2∼3 の
規格もブルーレイに統一されていきました。
サーバの導入等を含め、標準化の流れの中で自然
選択肢を持ち続けたいと思っていますので、オープ
ITも同様にメーカー・ベンダー主体でなく、利用者
とこの形になったのです。
ンソースのミドルウェアの J B o s s や 仮 想 化 技 術の
であるユーザ主体とならなければいけないと考えて
『インターナルクラウド』の O S には 、R e d H a t
KVM も期待しています。またクラウドにおいては、
います。そうした視点に立つと、利用者の立場を代弁
Enterprise Linux を標準として採用しました。クラウ
オープンで相互運用性を提供する、Deltacloudのよ
してくれる、オープンであることを維持してくれるディ
ドにおいては、仮想マシンをテンプレート化して増や
うな取り組みにも大変注目しています」。
ハードル を設けることで行うものではありません。
パナソニック電工インフォメーションシステムズと
『アライアンスクラウド』
(クラウド技術の標準化同盟)
03
04
05
システムのサイロ化を解決するために
選ばれたのはRed Hat Enterprise Linux
Red Hatのコンサルティングとともに
標準化されたプラットフォームを構築
システムの標準化をさらに推進し
今後もオープン・ベンダーフリーを追求
・Red Hat Enterprise Linuxを導入することにより、
複雑さをシンプルに
・顧客側の視点でOSSを維持する
Red Hatを選択
・標準化において不可欠な情報を迅速に提供
・日本法人でソースを確認できる強みを発揮
・標準プラットフォームにより調達・構築を迅速化
・複数の選択肢を維持し、
オープン・ベンダーフリーを追求
OPEN EYE 5
Success story for your business
全国の地方公共団体が
ユーザー事例
事例
Success Story
自治体クラウドを体験できる
デュオシステムズ
自治体クラウド
利用実証環境をRe
Red
d HatのKVMで構築 。
民間企業はもちろん、行政機関のIT構築支援を行う
株式会社デュオシステムズ
株式会社デュオシステムズは、業務・システム最適化に関するコンサルティングサービスを中核に、ITガバナンス構築支援、プロジェクトマネジメント支援、
IT人材育成支援等の総合的なコンサルティングサービスを提供。顧客のパートナーとして組織のIT戦略の実現と推進を強力にバックアップされています。
しかも、デュオシステムズでは民間企業はもちろん自治体のシステムも受注され、そのノウハウを相互にフィードバックされています。今回は、総務省
から受託された地方自治体のクラウド化推進のための実証実験(PMO)について、専務取締役 伊藤 元規氏にお話を伺いました。
自治体におけるクラウド活用を推進する
「自治体クラウド開発実証事業」
とは?
フラ構築にも利用しようとする構想です。実際に総
システムを共同利用することで、今まで別々に構築
務省では、2011 年度からの実運用を視野に「自治
してきた各システムを同一のシステム上で実現す
体クラウド開発実証事業」に取り組み、地方公共団
ることもできます。これにより自治体間でアプリケー
民間企業の IT 化が高度化し続けているように、
体の情報システムをデータセンターに集約。市町
ションの割り勘効果が出て初期投資の抑制はもち
行政分野における業務の電子化も進展してきまし
村がこれを共同利用することにより、情報システム
ろん運用コストも削減できます。
た。しかし民間企業ではマニュアルの周知やトレー
の効率的な構築と運用を実現するための実証実験
さらにクラウドの効果は、コストだけにとどまりま
ニングができますが、行政サービスとなるとそうは
を行っています。
せん。小さな市や町では IT 導入・運用の専門家や
いきません。誰もが世代やスキルの差を感じること
この事業は、これから電子自治体に実証実験の
業務に精通した専門家を確保するのが困難な面が
なく、簡単に利用できなければならないのです。も
成果を日本全国に展開していくため、参加されてい
あります。自治体クラウドを構築して共同利用すれ
ちろん、
コストも重要です。
る地方公共団体をはじめとする多くの方の協力を
ば業 務の標 準 化 やノウハウの共 有にもつながり、
自治体クラウドは、まさしくコスト削減を目的に、
通じて多岐にわたる実証実験のメニューが設定さ
職員の負担を軽減しつつ、さらなる効率化を推進
最近、通信事業者や企業で積極的に活用されてい
れています。その PMOとして選ばれたのが、デュオ
できます」。
るクラウドコンピューティングを電子自治体のイン
システムズです。伊藤氏はこの試みの目的と意義に
ついて、次のように語ります。
「 電 子自治 体という観 点 から見ると行 政 業 務を
自治体におけるクラウド利用を体験できる
実証環境を京都府と徳島県間で構築
行うシステムと市 民 向 けのサービスに大 別されま
すが、今回は主に行政業務のコスト削減を目的に
自治体クラウド開発実証事業は、大きくデータセ
しています。また、クラウドは IaaS/PaaS/SaaS の 3
ンター機能実証、データセンター間接続実証、アプ
階層で構成されていますが、自治体クラウドにおい
リケーション接続実証の 3 つに分類され、複数の利
ては SaaS、つまりアプリケーションの標準化・共通
用実証が行われています。各実証事業によって参
化がメインとなっています」。
加する地方公共団体が異なりますが全 6 道府県 78
市町村が参加しています。
コスト削減だけではない、
クラウド活用
により自治体にもたらされるメリットとは
伊藤氏はこのプロジェクトの PMOとして、全国各
地の担当者様とのミーティングを重ね、開発実証事
業を推進されてきました。
株式会社デュオシステムズ
専務取締役
伊藤 元規 氏
自治体クラウドの
主な開発実証項目
6 OPEN EYE
さらに伊藤氏は、自治体クラウドがもたらす効果
「この自治体クラウド開発実証事業は 2011 年 4
について、
こう続けます。
月からの本 番 運 用を視 野に入 れて実 施しました。
「地方自治体、公共団体に目を向けると税収の落
そのため 、実 際 に自治 体 や 公 共 団 体 の 業 務 に携
ち込みなどにより、以前のように IT コストをかけら
わる現 場 の 人 に加 わってもらい 、さまざまな 調 整
れないという現実があります。そこに仮想化技術が
を行いました。その 1 つが徳島県と京都府で共同
登場し、クラウド利用の機運が高まってきたことが
利用する文書管理システムです。京都府のデータ
今回の開発実証事業につながりました。自治体ク
センター内にある実証システムを徳島県の自治体
ラウドを構築すれば、複数の自治体および団体で
が 利 用 することで、ハ ードウェアの 共 有 や 業 務 の
01
02
事務共通化運用実証
仮想化効果実証
・市町村で業務アプリケーション及び
業務サービスを共同利用
・仮想化等の技術により障害発生時の
切換えを検証
・業務を見直し、同一情報システムに
合わせて業務を実施
・仮想化等の技術によるサーバ数の削減を検証
・仮想化によるリソースの有効活用
Red Hat K.K. EDITORIAL 2011
▼ 自治体クラウド開発実証事業体制
総務省
総合行政ネットワーク
運営協議会
自治体クラウド
PMO
APPLIC
自治体クラウド
開発実証団体
実証実験
参加市区町村
標準化、運用の省力化などによるコスト削減効果
喜茂別町
沼田町
むかわ町
新得町
別海町
京極町
共和町
仁木町
奈井江町
佐呂間町
安平町
えりも町
鹿追町
自治体クラウド・
共同アウトソーシング推進協議会
標準仕様書
作成事業者
自治体クラウド部会
京都府
北海道
恵庭市
当別町
森町
三笠市
深川市
清水町
妹背牛町
秩父別町
北竜町
島牧村
蘭越町
ニセコ町
留寿都村
LASDEC
更別村
浜中町
中標津町
(以上29団体)
福知山市
舞鶴市
綾部市
宇治市
宮津市
亀岡市
城陽市
向日市
長岡京市
八幡市
京田辺市
京丹後市
南丹市
徳島県
木津川市
大山崎町
久御山町
井手町
宇治田原町
笠置町
和束町
精華町
南山城村
京丹波町
伊根町
与謝野町
(以上25団体)
徳島市
三好市
吉野川市
上板町
上勝町
勝浦町
阿南市
美波町
(以上8団体)
佐賀県
武雄市
鹿島市
嬉野市
大町町
江北町
白石町
(以上6団体)
大分県
宮崎県
日田市
杵築市
宇佐市
臼杵市
由布市
延岡市
日向市
串間市
門川町
綾町
(以上5団体)
(以上5団体)
各自治体の庁内にある端末からLGWAN 経由で文
てしまい、別のクラウドへ移行したくても移行でき
が 見 込めます。何より、離 れた場 所 にあるサーバ
書管理クラウドを利用を開始できます。自治体クラ
ない事態を招いてしまいます。
やアプリケーションを利 用することにより、システ
ウドを推進していくために今後もできるだけ要望に
OSS は仕様が公開されているのでベンダーロッ
ムの 存 在を 意 識 せ ず に I T をサービスとして利 用
応え、数 多くの自治 体 が 参 加できる環 境を整えて
クインの心配もないですし、システム連携をさせる
できるクラウドコンピューティング の 価 値 を 実 感
いきたいと思っています。
際にも大きな不安はありません。そうした観点で見
することができます。具 体 的 なシステム 概 要と利
このシステムのベースには、Red Hat Enterprise
ても、今後クラウドの構築においては、自ずと OSS
用形態は、徳島県下にある 4 市の文書管理システ
L i n u xと K V M(カーネルベースの仮 想 化 技 術 )を
が必然の選択肢となるでしょう」。
ムを京都府のクラウド内に設置。それぞれの業務
採用しています。Red Hat を選んだ理由は、大規
担当者が LGWAN(総合行政ネットワーク)経由で
模システム分野での Linux の導入・運用実績が多
アクセスして活用しています。実運用を想定し、自
く、信頼性が高かったこと。オープンソースの仮想
治体ごと必要とされる要件を満たすシステムを構
化 技 術を持っていたことが 挙 げられます。自治 体
築した上で実 証を開 始しました。実 際に利 用して
で 活 用 するシステムです から、何よりも信 頼 性と
OSSを採用することは競争原理を残し、
地元の雇用創出にもつながる
「自治 体クラウドは 公 共 性 の 高 いシステムなの
いる業務担当者様からも、機能も十分でパフォー
安 全 性 が 重 要 に なりま す。シス テム の セ キュリ
で、競 争 原 理を残す必 要 があります。特 定のベン
マンスなどの問題を感じることなく業務が行え、ク
ティ、サポート体 制などを含めた総 合 力で判 断し
ダーだけでなく、誰もがその競争に参加できなけ
ラウドが 実 運 用 にも対 応できることが 実 証されて
ました」。
ればならないのです。OSS の場合、仕様が公開され
います」。
ているので誰もがその技術を学ぶことができ、シス
Red Hatのコンサルティング、
サポートにより、 テムやアプリケーションの開発にも参加可能です。
これにより、地元の企業や技術者が容易に自治体
Red Hatのオープンなソリューションにより、
実証用システムの構築もスムーズに
クラウドの開発や運用に携わることができるので、
全国で参加可能な利用実証環境を構築
「全国利用実証のシステム構築においては、Red
地域雇用の創出にもつながります。
日本全国への普及が望まれる自治体クラウドを
Hat のコンサルティングサービスやサポートが大変
また、自治体クラウドで培った技術やノウハウを
より多くの自治体が体感できるよう、デュオシステ
役に立ちました。当然、我々の側にも技術者がいる
民間に還元できるのもオープンソースの大きなメ
ムズが提供しているのが 文書管理クラウドの「全
のですが、システム構築に際して悩んだり、分から
リットのひとつです。公共的な業務を担う自治体で
国利用実証」です。
これは、当初の開発実証事業に
な い 部 分 が あったときに 的 確 なアドバ イス や サ
開発されたシステムを、地元の企業に役立てられ
参加していない自治体でも容易にクラウドの利用
ポートが受けられました。
れば地域のコミュニティを活性化させ、産業の振興
にも貢献できるはずです。
実 証 を 行 えるよう設 置され たクラウドコンピュー
ティング環境です。
「この全国利用実証ではクラウド上に構築された
システムに対し、参 加 する団 体ごとに独自のパラ
メータを設定できるようになっています。それぞれ
さらに、この開発実証事業を進めるにあたり、ク
クラウド活用が新たなベンダーロックインに
ならないよう、Red HatやOSSの役割に期待
ラウドという枠 組 みを活 用 することで業 務 やシス
「今回の全国実証に Red Hat のソリューションを
ています。
テムの見 直しを加 速する効 果 があることも実 感し
の文書管理業務の方式にあわせて、文書管理シス
採用した理由には、実績や技術だけではありませ
2011年4月から本稼働が予定されていますが、
テムのパターンを選択し、各自治体に合ったクラウ
ん。クラウド活用における課題と期待という2 つの
今後、各自治体のみなさまにシステムを積極的に
ドで実証事業に参加できるのです。
ポイントにおいても、OSS がキーになると考えたか
活 用していただき、そこから生まれた声を改 善に
参加の際には、自治体によって異なる文書分類
らです。クラウドは数多くのベンダーから提供され
活 かし、オープンソースの理 念のように価 値を共
や職員情報の登録、共同利用におけるデータの独
ています が 、独自の 技 術を活 用しているソリュー
有できる自治 体クラウドを提 供していきたいと考
立性、セキュリティの確認などを行います。その後、
ションを選ぶと、結果としてベンダーロックインされ
えています」。
03
04
05
LGWAN性能実証
市町村バックアップ実証
データセンター間バックアップ実証
・LGWAN経由でのシステム活用の性能検証
・災害時の業務に必要なデータの
市町村バックアップ
・行政業務を止めさせない
システム環境の検証
・災害時、必要最小限の業務が継続
できるかどうかを検証
・別地域の都道府県間での
データバックアップによるBCP検証
・LGWANを通じた大容量データの
バックアップ検証
OPEN EYE 7
Success story for your business
Red Hat
Forum 2010
Red Hat K.K. EDITORIAL 2011
レッドハットフォーラム 2010 開催レポート
Linuxとオープンソースの次の革新がここから始まる
クラウド時代の主役はオープンソース
転用できる。
去る2010 年 11 月 17 日(水)、東京・品川にて
「レッドハット フォーラム
・商用製品のアップグ
2010」が開催されました。米 Red Hat からも仮想化やクラウド事業のキー
レード費用とOSS に
マンがスピーカーとして来日。Red Hat Enterprise Linux 6(RHEL6)を
置き換える費用はあ
中心に、今後 Red Hat のソリューションが ITインフラやクラウドをどのよう
まり変わらず、単純に
に変えていくのかなどをご紹介しました。500名近くの方が参加され、14社
既存の製品をそのま
のスポンサー企業のご協力を得て、盛況のうちに幕を閉じました。
ま使い続けたほうが
い いということは 言
クラウド環境ではLinuxが主役に
中心的な役割を担われています。NTT
えない。
データは、基盤事業本部において、シス
・市販の製品はメーカーやベンダーの
冒頭、代表取締役 廣川裕司より成
テムインテグレーションにおけるOSSの
保証があっても壊れないわけではな
フラが異なる点は、さまざまなビジネス
長を続けるRed Hatのビジネス、そして
活用を推進されて
い。自分たちが中身を見て確認した
モデルを動かさなければならないこと
今後のビジョンが語られました。世界
います。お二人は
方が安全な場合もある。
です。そこに求められるのはユーティリ
的な不況の中でも順調に売上を伸ば
桔梗原氏の「なぜ
また、遠藤氏か
ティ化だけでなく、リソースの抽象化や
しているRed Hat Enterprise Linux は
今オープンソース
らは OSS の選定に
シンプルで 高 速 化され たアプリケー
サーバの台数ベースもシェアを拡大し、 なのか? オープン
お いては 技 術 開
ションとプロビジョニング(事前準備・
道や電気などの公共サービスとIT イン
クラウド環境では Linux が Windows
ソース へ の 期 待
発のためのコミュ
調達)などです。そして何より重要なの
を凌ぐ勢いです。また、これからのキー
は?」
という問いに
ニティが安定して
は、オープンな APIを活用することによ
テクノロジーであるKVMに関しては「仮
答える形で知見を
株式会社大和総研
専務執行役員
いるか、積極的に
り、任意のクラウド間を自由に行き来で
想化のユーティリティを別に購入する
語られました。
鈴木 孝一 氏
開 発 が 行 わ れて
きる、あるいは乗り換えられるポータビ
株式会社NTTデータ
執行役員
基盤システム事業本部長
リティを維持する
遠藤 宏 氏
なければクラウド
ことは、TCP/IP の
いるか 見 極 めの
パッケージを別に
代 前 に戻るの に
導入・保守コストだけではない、
ポイントという貴
OSSのメリット。
リソースは
重な意見が述べ
標準化して
「使い切る」
ことが大事。 られました。それ
等しい」
と語り、今
懇談で挙げられた要素は以下の通り
に続き鈴木氏は「みなさんもオープン
ベンダーロックイ
後もRed HatはOS
です。
ソースのコミュニティに参加して盛り立
ンが繰り返されて
購入していた一時
【OSSを選んだキッカケ】
・分散システムにおいて部分的に利用
されていなかったシステムやリソース
でいくことが 示さ
廣川 裕司
を「使い切る」ための標準化ツールと
れました。
してOSSを採用。
基調講演は、日経 BP 社 コンピュー
タ・ネットワーク局長 桔梗原 富夫氏、 ・マルチベンダーとなったとき、ブラック
ボックスだと障害時の切り分けなどが
株式会社大和総研 専務執行役員 鈴木
難しい部分がある。オープンソースな
孝一氏、株式会社NTTデータ 執行役員
ら中身が見えるので、どこが悪いかを
基 盤システム事 業 本 部 長 遠 藤 宏 氏
論理的に突き止めて対応しやすい。
の対 談 形 式で実
施 。クラウド時 代 【OSSの主なメリット】
の主役『オープン ・ライセンス費や保守費用で 2 ∼3 割は
コストダウンできる。
ソース』の 活 用と
題し 、 国 際 競 争 ・個別にサーバを立てて検証し、テスト
環境や本番環境を立ち上げると最短
に 勝 ち 抜 くた め
で 3ヶ月はかかる。それが 10 個あると
に、今 、企 業 がと
日経BP社
人件費だけで3億円くらいになる。
るべきアクション
コンピュータ・ネットワーク局長
OSSでシステムを標準化すれば、サー
について語られま
桔梗原 富夫 氏
ビスインまでの時間を短縮できるの
した。
で、そのために必要な人件費を削減
大和総研はオープンソース(OSS)に
できる。さらに別システムで使わなく
よる分散システムの標準化に取り組ま
なったリソースを新しいサービスに
れ、Red Hat のユーザー会においても
の標準技術として
仮想化に取り組ん
レッドハット株式会社
代表取締役社長
ことです。それ が
という名のもとに
てください。そうすれば、もっとすごいこ
しまいます。
フォー
とができる(=OSS 本来の可能性が広
ラムでは、本来有
がる)
と思います」。
るべきクラウドの
「リソースが標準化されれば、企業に
基盤を構築するた
とって本当に必要なところにIT投資・人
めの取り組みである Red Hat Cloud
Red Hat, Inc.
Senior Cloud Product Manager,
Gordon Haff
材を向けることができるのではないか」 Foundations、Deltacloud API を紹
と企業 IT 部門でのこれからの OSS 活用
介されました。
のあり方が話され、対談の幕を閉じた。
Gordon Haffとともに来日した Brian
ユーティリティ化だけで
終わらせない、Red Hatの
クラウドコンピューティング。
ベートクラウドやパブリッククラウドの構
フォーラムでは、米Red Hatから来日
もたらす価値、さらにはデスクトップ仮
した開発責任者やエバンジェリストが
想化を含めた将来性や可能性について
さまざまな視点で RHEL、KVM、クラウ
語り、Rob Cardwell は使い慣れた標準
Che は、クラウドへのステップとプライ
築に何が必要なのかを解説。Nick Carr
はRHEL6のスケーラビリティ、可用性が
ドのビジョンやロードマップを示しなが
技術でアプリケーションを開発し、どこ
ら、今後の可能性について語りました。
のクラウドにも配備を可能にする Red
クラウドのエバンジェリストである
Hat PaaSのロードマップを紹介した。
Gordon Haffは、クラウドを水道や電気
「本当に優れた技術はオープンソー
のユーティリティサービスと比較しなが
スにより加速する」。4トラック、7 時間
ら、クラウド成功のカギは堅牢な基盤と
近くにわたり行われた本フォーラムは、
ポータビリティにあると説きました。水
それを確認するに十分な内容でした。
◎ レッドハットの製品、
サービスに関するお問い合わせはこちらまで >>> セールス オペレーションセンター ☎ 0120-266-086(携帯電話からは ☎ 03-5798-8510) e-mail: sales-jp@redhat.com
〔受付時間/平日 9:30∼18:00〕
OPEN EYE Vol.04
2011年 2月 発行
発行:レッドハット株式会社
東京都渋谷区恵比寿 4-1-18
tel:03(5798)8500