日本乗員組合連絡会議(日乗連)は、国内航空会社のうち12社の14乗員

ドクターズ・ユニオン ニュース
NO8
2014年3月28日
ドクターズ・ユニオン ニュース NO8
2014年3月28日
2014年3月28日 第8号
発行所 全国医師ユニオン
〒東京都千代田区神田佐久間町2丁目
七番地第6東ビル605
TEL03-5825-6138 FAX03-5825-6139
URL http://union.or.jp
mail dr-union@nifty.com
発行人 植山直人
日本乗員組合連絡会議(日乗連)は、国内航空会社のうち12社の14乗員組合で組織された、航
空機乗員組合の連絡会議です。組織人数は約4400名(2013年現在)で、国際民間航空機関(I
CAO)の恒久的オブザーバーであるIFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会:本部モ
ントリオール)の中では第3位の構成員数です。
乱気流に遭遇し、エンジンなどが大・中破する事故とな
1970年代における日航の「機長管理職制度(機長の自
由な組合活動を禁止する)」という経営からの乗員分裂
攻撃、そうした労使関係を背景とした日航の「連続事故」、
その都度乗員の「過失責任」が追及されるという状況に
師ユニオンは、日本の医師の労働組合を確立する上で日
対する不満、低位な労働条件で設立された日本近距離航
空や南西航空(ともに当時)拡大への危機感、IFAL
乗連から学ぶべき点が数多くあると考えます。
この日の懇談では、勤務医労働実態調査2012に基づき
PAなどの国際活動への積極的な参加を望む声といった
医師の長時間の過重労働が改善していない現状や安全性
背景から、乗員の統一的組織結成の機運が高まりました。
の確保のためには過重労働をなくす必要があるにもかか
また当時、地上職を中心とした産別組織として民航労連
などがすでに存在していましたが、運航乗務員が統一し
わらず、日本ではこのような視点がないことなどを報告。
日乗連からは、LLC(格安運賃の航空会社)の参入が増えて
て運動を実践する組織はまだありませんでした。そこで1
いるが、これらの企業には組合がないこと。航空業界の
978年5月1日、日本航空、全日空、東亜国内航空(当時)
競争の激化でパイロットの勤務状態が悪化していること
懇談後に日乗連執行部の皆さんとの記念撮影
の各乗組によって、「乗員の組織統一(分裂克服)」、
「事故に見舞われた乗員への不当な責任追及からの解放
りましたが、日乗連は南西航空乗員組合(当時)の協力
を得ていち早く現地の調査を行い、この事故が沖縄県南
(真の事故原因究明)」、「乗員の労働条件の統一・向
部を急速に通過中の竜巻に近い低気圧に巻き込まれたた
上」の三本のスローガンを掲げ、日乗連は結成されまし
た。日乗連が結成されたことは、運航乗務員の統一闘争
めの不可抗力によって発生したことを明らかにし、乗員
への不当な責任追及を阻みました。
去る1月28日全国医師ユニオンは日乗連(日本乗員組合
連絡会議)との懇談を行いました。医師とパイロットは
「自分がどこにいて今何時なのかわからなくなる」こと
があるなど安全性が脅かされている問題点が指摘されま
を促しただけではなく、自由な組合活動を制限された日
こうした中、1985年に発生した「日航123便事故」を契
高度な技能と安全に対する重い責任を担う職業としての
した。
航機長らの団結回復、中小航空企業の乗員の労働条件向
機に結成された日本航空機長組合と日航先任航空機関士
共通点があります。これまでにも全国医師ユニオンは日
私たちは今後さらに協力関係を築き、私たちが抱える
上、航空安全の推進、国際活動の充実など多分野で、航
空労働者の運動を強化させる重要な契機となりました。
組合(当時)の加盟によって(1999年)、日乗連は乗員
の統一的運動を進めるという、結成時からの大きな目標
乗連と共同で、「命と安全を守り労働ルールを考えるシ
ンポジウム~いのちⅡ~」を開催するなど協力関係を築
問題を社会に訴えていくために日常的に交流を進めてい
くことを確認しました。
が指摘されました。また労働時間としては合法であるが、
世界各地を連続して飛ぶ場合2泊5日という異常なシフト
舘野洋彰日乗連議長(右から5人目)
が組まれることがあり、時差の関係で常に眠りは浅く
日乗連は、乗務手当保障制度をはじめとする乗員の労
を達成しました。その後も南西航空(現日本トランスオー
いてきました。
働条件の統一的向上をめざして闘うほか、航空事故に見
舞われた乗員の人権擁護のために、科学的な事故調査活
シャン航空)乗員組合や日本近距離航空(当時)乗員組
合をはじめ、新たに設立された乗員組合が相次いで加盟
今回の懇談は、消費者事故調の発足や今後設立される
医療事故調も視野に入れ、安全の確保と事故調査のあり
守る」という特集記事で「手術・診察・当直 32時間以
上の勤務の医師」と「体内時計が合わぬまま飛ぶパイロッ
動の充実をめざして運動を改善・充実させ、さらに再発
しました。これら中小航空企業の乗員を組織化すること
方、また労働組合としての今後の取り組み等での意見交
ト」との表題で医師とパイロットの労働問題が取り上げ
防止のための事故調査と刑事責任追及との分離を求めて
は、大手航空経営者による乗員同士の分断を克服するた
換を目的としたものです。この日は、日乗連の事務所で
られています。
きました。例えば、1982年にいわゆる「日航羽田沖事故」
が発生した後、日本航空と運輸省(当時)航空局は、事
めの第一歩です。乗員も他の労働者と同じように企業ご
とに分断されているのが現状で、まだまだ課題を残して
あるフェニックスビルで日乗連の執行委員会が開催され
る中で、会議の合間に昼食を取りながら懇談が行われま
全国医師ユニオンニュースでは、今号から日乗連の歴
史と活動に関する連載記事を掲載します。(今号8ページ)
故の真の原因である日航の分裂労務政策とこれを黙認し
いますが、日乗連が国内全ての乗員を組織するようにな
した。日乗連の執行委員はパイロットとして世界中を飛
続けた行政の責任を回避するために、産業医と航空身体
り、乗員を組織する国内唯一の労働団体となる日を目指
び回っており、アメリカ・ヨーロッパ・アジア各地から
検査指定医が兼務していた航空身体検査制度を大幅に改
定することによって事故原因究明の幕引きを行いました
し運動を続けていきます。
前日に帰国し会議に臨んでいるメンバーもいました。パ
イロットの組合は日程調整が難しいなかで組合活動を行
(続く)
が、この航空身体検査制度の合理的な改善を実現するた
この懇談の1か月後に、朝日新聞の「命を削って人命を
うという特別な困難を持っています。
めに、日乗連は日航のパイロット、航空機関士とともに
航空局への要請等を旺盛に展開しました。当時、航空身
全国医師ユニオンでは、ニュースの定期発行(当面は
年4回)にともない、賛助購読をしていただける勤務医
体検査の適合・不適合の基準を定めたマニュアルに機械
のサポーター会員を募集しています。また、個人や団
的な大改定を施したために、不合理な乗務中断を強いら
体・医療機関等による一般購読も募集しています。年
れたり、その後の乗務復帰の条件として、不要な手術を
強要されたりする乗員がおびただしく増加したと言われ
会費は1口5000円となっています。
(詳細はホームページでご確認ください。)
ています。また、1984年4月に日本アジア航空(当時)
のDC-8型機が暴風の那覇空港に着陸する際、激しい
日乗連は異なる企業の組合の壁を乗り越えて1978年に
結成された航空機の乗員組合の連絡会議で、4400名の会
員を有しています。パイロットの地位の向上や安全性の
確保などの活動を行い、航空機事故で機長が刑事訴追さ
れた時もフライトレコーダーの解析などで科学的なデー
ターを示し無罪をかちとる上で大きな役割を果たしてい
ます。また、勝訴には至りませんでしたが機長の過労死
報告を行う全国医師ユニオン植山代表と土谷運営委員
裁判にも取り組んだ経験を持っています。私たち全国医
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