火口の中をのぞき込む - 計測エンジニアリングシステム

火口の中をのぞき込む
記 DR. SVEN FRIEDEL(COMSOL Multiphysics GMBH)
一般に火山の噴火は、予測不可能なものと見なされてい
方 程 式 ) を 使 って 表 現 できますが、プロセス間の
ますが、そうみなされる理由の1つには、火山があまり
相 互 作 用 が 複 雑 であ るということ だ け が 、適 切
にも複雑なものであるということがあります。しかし、
な 数 学 的 表 現 を 見 い だ す ことを 困 難 なもの に
このような ますます多くの人々に脅威を与えているこれら
しているです。C OM S OL Mu lt iphy sic sを使った
圧倒的な自然現象も基本的には、物理および化学的な
強力なシミュレーションにより、火山学者は火山プロ
プ ロセ スの 結 果として もたらされ るもので す。
セスへのより深い洞察を得て、さらに正確な予測を可能
原 理 的 に は 、こ れ ら の プ ロ セ ス は P D E ( 偏 微 分
にする段階へ一歩近づくことができます。
Sven Friedel氏が、つい最近の2001年に噴火した中部ジャワにあるメラピ
火山の火口付近にセンサを設置しています。これらのセンサにより電場
が計測され、COMSOLモデルの検証を可能にするデータを得ることが
できます。
ライプツィヒ大学(Univ. of Leipzig)、チューリッヒ工科大学
できるものでなければなりません。最後に、計算を現実的な
(ETH Zurich)、およびパリ地球物理研究所(IPG Paris)の科学者
3Dモデルで実行する必要があります。こうした要求が研究者
グループが火山活動を調べ、観測し、最終的に噴火の危機
達の目をCOMSOL Multiphysicsに向けさせたのです。
を予測するために、火山内の電磁場に関する情報を用いる
方法について研究しています。彼らは、多孔質岩石内のガスと
研究者達がたどり着いたCOMSOLモデルは、流れと電磁場
水の流れが引き起こす電位に焦点を当てています。科学者
間の相互作用の背後にあるプロセスを研究者達が調べる
達は、これらの流れが火山構造の変化の影響を受けやすい
ことが できる最初の モデルです。以前は、地下で何が
指標 すなわち機械的変化また場合によっては噴火のかなり
起こっているのか、また火山がどうしてそのように活動した
前に現れてくる指標と言えるのではないかと考えています。
のかということについて具体的に理解することができない
電場の変化を観測することで研究者達は、その変化の原因
ままでいました。ところが今では、より容易にwhat-if分析を
である流れがどれであるかを推論し、それによって火山内部
実行し、火山内部で発生する多くの物理プロセスを結合する
の活動に関する情報を得たいと思っています。
現実の3D地形図を使ってモデルを作成することができます。
私たちは結合された流体とそれが作る電流、結果として
電場測定値を解析し調査方法を最適化するには、根底に
生じる磁場、それらに関するシミュレーションを初めて
あるプロセスの数値シミュレーションが必要になります。適切
実行することができました。これは、3つが緊密に結合した
なシミュレーションツールに対する要求は厳しいものです。
(threefold-coupled)問題を、火山の複雑な3D標高モデル
先ずツールにはマルチフィジックス機能 すなわち複数の非
で表現したものです。
線形物理作用を連成する機能がなければなりません。次に
そのソフトウェアは、研究者達が標準PDEを新しい項で展開
メラピ(Merapi)火山のCOMSOL 3Dモデルでは、裂け目へ浸透する水が、
電圧および磁場の特定パターンの発生原因となっています。科学者達
は、火山活動や火山のプロセスを推論し、噴火の危機に対する予測精度
を向上させるために、このモデルを使っています。
シミュレーションは多くの仮定や簡素化に基づいているもの
ですが、それでもより複雑で、より現実的なモデルへの方向性
を示します。火山システムには化学反応だけでなく、熱輸送、
物質輸送、相変化をも含む、相互結合された物理プロセスが
多数含まれています。この動電シミュレーションの次の課題
は、熱収支を考慮に入れることです。熱水対流セルや、水と
蒸気の多相流の影響をも含む、より現実的な流体システム
がもたらされることになります。
火山の研究および観測に関する最後の課題は、場の測定
値を取得し、これら新しいタイプの電磁場ベース火山モデル
をサポートすることです。ここでもまたシミュレーション計算
が、センサシステムの最適化に相当寄与することになります。
Sven Friedels氏(左)ライプツィヒ大学のCarsten Rücker氏(中央)Thorsten
Winger氏(右)と連 続監視ステーションおよびその無線 遠隔計 測
装置に電力を供給する太陽電池について調べています。
注記: この記事は当時COMSOLスイス支店の支店長であるSven Friedel博士の研究に基づくものであり、記事の一部はGerman
magazine Physik Journal(3/2004、Nr. 11、62~63ページ)に掲載されたものです。また、Friedel博士の基本的な解説
は、COMSOLの地質環境モジュールとともに提供されるモデルライブラリに含まれています。興味を持たれた方は、
c o m s o l @ k e s c o . c o . j p 宛 にC O M S O L M u l t i p h y s i c s 評 価 版 請 求 の 電 子メールを 送 ってください。
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「火山系には化学反応だけでなく、熱輸送、物質輸送、相変化をも
含む、相互連成した物理プロセスが多数含まれています。」
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