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“メディアアカデミー資料, 2003/9/26
ITの利活用による企業競争力向
〜トヨタの事例を引用して〜
黒岩 惠 (skuro@mail.toyota.co.jp)
トヨタ自動車株式会社 ネットワーク事業部主
電子商取引推進協議会(ECOM)企画部会長
e-Japan戦略の新たな展開
・政府のe-Japan戦略は情報インフラの整備からITの利活用
・産業界に取っては、ITの利活用による企業競争力向上へ
日本のIT化施策の沿
IT戦略会議(民間)、IT戦略本部(政府) 2000
e-Japan戦略の策定(2001年1月) 目標:2005年に世界最先端のIT国
・重点は「ネットインフラ、EC,e-Gov, IT人材育成」と「セキュリティ」
e-Japan戦略の見直し、 e-Japan Ⅱ(2003年7月)
・IT利活用による「元気・安心・感動・便利」社会を目指す。
改革推進にあたっての視
・個の視点
・新たな国際展開
・構造改革
・新価値創
・ITを駆使して既存システムの無駄
を排除し、経営資源を有効活用
・我が国の競争力が向上し、経済の
再活性化が可能
・新しい産業や市場を創出
IT活用による活性化、産業競争力向
1.IT化による経済社会の活性化と企業競争力向
1.行政の電子化および情報化社会のインフラ整備
2.産業界のIT化、ハードとソフトの一体化・融合化
3.ITを軸にした新産業、新たなビジネスモデルの創出
2.産業界でのIT化のレベル (3つのIT活用スパイラルの展開)
1.機械化の道具としてのIT
事務処理の自動化、ロボットなど機械のIT化
2.構造改革のためのIT
仕事の仕方、ビジネスプロセスの改革、産業構造の変革
3.人の知力UPのためのIT
人の知力、脳力UPのためのIT化(KMS)
IT化進展の認識
・Old Economyは熱狂、失望を繰返してNew Economyに転換。
・ ITは25年で10,000倍進化(ムーア、メカトーフ、ギルダーの法則)
・人(というコンピュータ)とITのシナジーによる情報処理力向上、
生産性向上、知的資産の創造と再生産が課題
IT化
Old Economy
New Economy
T‐ビジネス
E‐ビジネス
Old EconomyNew Economy
T‐ビジネス E‐ビジネス
熱狂
成長
失望
期待
T (Traditional)- ビジネス
Old Economy New Economy
E (Electronic)- ビジネス
現実
T‐ビジネス
E‐ビジネス
時間軸
自動車産業の変革とトヨタの経営課
1.グローバル競争による企業の合従連衡
2.コンピュータN/Wの中での設計、生産、販売活動
3.新しいビジネスモデル(デルモデルなど)の創出
4.系列を超えたVirtual Enterprise(仮想事業体)へ
5.川上、川下分野への事業領域の拡大、新規事業創
トヨタの経営課
1.環境関連技術開
・燃料電池、ハブリッド車
・リサイクル
2.グローバル競争での生き残り(原価低減活動)
・部品のモジュール化、共通化
・全てのビジネスプロセスでのコラボレーション
・ムダの排除
・ITの徹底的活用
トヨタのビジネス改革とTPS
業務改革への3つのアプローチ
1.全社的TQM (Total Quality Management) 活動
トヨタ生産システム(TPS)を開発やマーケティングへ展開
2.BR(ビジネス・リフォ−ム)プログラム
業務革新(リエンジニアリング)活動
3.情報技術の活用(高度情報化プログラム)
上記の1、2のTQMおよびBR活動を支えるためのIT化
トヨタ生産システム(TPS=Toyota Production System)
トヨタの生産哲学、経営哲学、トヨタのDNAとも言われ
・ジャスト・イン・タイム (JIT=Just-In-Time)
・自働化 (自律した自動化)
ゴー
常にあるべき姿(To Be)を目指し「改善」し続ける
人間集団を創り上げること
ビジョンの共有 “Toyota Way 2001”
・「トヨタの基本理念」の行動指針として2001年に策定
・「人を最大の経営リソース」とするTPSをベースとして策
暗黙知として存在
するトヨタ独自の
思想・価値観・手
真のグローバル
企業への脱
<2本の柱
Continuous
Improvement
知恵と改善
Respect
for People
人間性尊重
トヨタウェイとして
グローバルトヨタで
見える化、情報共有
<5つのキーワード
Challeng
Kaize
Genchi Genbutsu
(現地現物
Respec
Teamwor
トヨタのIT化による業務改革の取り組み
経営戦略と一体化した、全体最適なIT活用による業務改
①開発〜生準(生産準備)〜調達のデジタル
②サプライチェーンの強化・可視化
③顧客視点のマーケティング・バリューチェーン
④グローバルリアルタイムマネジメント
経営戦
④グローバルリアルタイムマネジメン
業務
システム
システム
開発
生準
システム
調達
②サプライチェーンの
強化・見える化
システム
生産
システム
物流
③顧客視点の
マーケティング/バリューチェーン
システム
販売
システム
アフターセールス
システム
①開発〜生準〜調達の
デジタル化
IT活用による新車開発期間の短縮
新車開発リードタイム: 24ヶ月(90年前半)、現在15ヶ月前後
試作
過去
商品企画
製品開発
評価・検討
実物による評価
試作
生産準備
生産
実物
図面
現在
L/O
量産設計
量産設計
商品企画
L/O
シリーズ開発
3Dモデルによるチーム設計仮想評価
生産
製品開発
評価・検討
企画
情報の共有
販売
生産準備
設計
3次元モデル
生産
生産準備
IT活用によるサプライチェーンの改革
・お客様の声(オーダ、売れ筋、新商品)のフィードバック
・お客様のオーダ、部品調達・生産・物流スルーでのIT活用
(1)受注〜納車までのリードタイム短縮と納車日の遵守
・受注車納期:14日
生産計画、需給計画
・販売店の在庫車縮小(BTOへ)
e-Kanbanなど,ITシステム
(2)お客様情報の商品企画への活用
の改善と改革
商品要望
台数予測・売れ筋
オーダ
デリバリー
開発
生産
準備
生産
(調達)
輸送
市場/経済/顧客情報加工
在庫
販売店
お客様
車ビジネスのバリューチェーンの拡大と IT化戦略
トヨタのIT化分野
①
②
③
④
車のインテリゲント化
車と社会の調和(ITS)
情報通信事業
ビジネス革新のIT化
ITS
カード
割賦
車の製造・販売から
カーライフのトータル
サービスプロバイダへ
レンタカー
リース
自動車保険
車ビジネスのバリューチェーンで
新車は25%のみ
トヨタのIT事業領域
新車
25%
情報通信
Valueサービス
Value
U-Car
用品
中古車
付加価値〔万円)/1ユーザ
150
30%
25% , 8%
(デーラー)
37%
100
カスタマイズ
部品
アフターマーケット
アフターマーケット
5
0
0
材料 組立
部品
川上
流通
サービス
川下
トヨタのECサイト ・・・ GAZOO
・GAZOOの展開はトヨタ生産・物流方式の改善活動から展開
・車からECサイト、車ビジネスのバリューチェーンにおける
トヨタのポータルサイト、将来はBTO(Build To Order)販売へ
車関連情報提供からB-CのECサイトへ
新車情報
旅 旅行
中古車情報
車検・点検情報
板金・修理情報
MULTI BOX
音楽
付 自動車部品
金
金融
食 グルメ
保険情報
査定価格情報
www.Gazoo.com
聴
書籍など 読
Celica and...
…
娯楽
遊
ファッション衣
お客様とのインタラクティブな関係
がずぺっと、星占い、など
GAZOO CLUB Forum & Chat
GAZOOと GBOOKの展開イメージ゙
・GAZOO、GBOOK:お客様との双方向情報サービスの実現
・GBOOK: 車とITの融合を具現化→車の新たな価値を創出
・お客様接点の向上によるCRMの強化
GAZOOセンター、GBOOKサービス
ディーラB
製品開発・マーケティング
ライフサービス
Eコマース
カード゙
保有車
統合
顧客情報
ディーラA
自社
管理客
カード 交通情報 お客様
エンター
カーライフ
Eコマース
相談
テイメント
サービス ファイナンス
ITS
車両
販売
メンテ
ナンス
GBOOK
レンタ
リース
ai21
統合ポータルサイト
インターネット・携帯 キオスク端末 車載端末 電話
保険
販売
一般
店舗
カスタマー
ディーラー店舗
レンタリース
店舗
買取店
トヨタのグローバル生産の現状
日本のほか海外24ケ国、41生産会社で生産(160ケ国 販売)
23万台
TMUK
TMMF
SC
IMVT S.A
TFAP
天津
TTME
TTFC 長春
STTS
TMC
TMMP
TPCA
TMMTI IMCL
AAL
TKM
CAPTIN
323万台
四川
TMV
8万台
TSAML
NUMMI
TABC
メキシコ
ティファナ
國瑞
TAB
STM
TMP
T
TKAP
C
TAP
TMT
AVAL ASSB
T&K SB
PTTA
TMMC
BODINE
44万台
TMMI
TMMWV
TMMK
TMMAL
テキサス
113万台
SFA S.A
現在の生産工場
新工場 車輌
ユニット
5万台
TVCA
TBL
TMCA
TA S.A
<2001年実績>
グローバルビジネスへの対応
グローバル化への対応は「ビジネスプロセス、人と組織、IT/IS」
の三位一体の活動、情報と知の共有が重要
IS=情報システム
ビジネスのグローバル化
・自己完結型からグローバルへ
・車両.部品生産、販売、
物流ルートの多拠点化
情報と知の共有
(ビジネス、しくみ、技術)
人と組織のグローバル化
IT/ISのグローバル化
・現地(人)化
・組織のフラット化による
迅速な意思決定
・日本集中から各国設置の
コンピュータ&ネットワーク連携・統合
・データベースのグローバル統合
海外事業体運営の視点と方策
国内工場
日本流(暗黙知)の良さ
資質のあるメンバー
契約社会に即した
OJT中心の育成 人の流動性を考慮
海外事業体
形式知化
・シンプル
・判りやすく
・早く
チーム活動
<海外事業体への対応>
デジタルエンジニアリングの活用
① 脱言語(色、絵、数字)
② ビデオ化(繰り返し見る)
③ 疑似体験(アニメーション)
④ ノウハウ手順書
⑤ 脱言語DB化(簡単検索) ⑥ リアルタイムモニタ(現場の共有)
グローバル・サプライチェーンへの対応
サプライチェーンの質的変化にもトヨタ生産方式(TPS) の基本の遵守
リードタイム・在庫の画期的削減
チェーンの短縮化、スリム化
① 細い物流を太い物流 ② 低頻度から小ロット多頻度、満載
サプライチェーンの整流化
付加価値,種類はできるだけ後工程で作りこむ
供給拠点の多極化:複雑化
世界市場への供給拠点は日本1極
米州
欧州
米州
欧州
日本
日本
アフリカ
豪亜
中近東
アフリカ
商品
新Project のサプライチェーン
欧州
日本 ベネズエラ
ベトナム
アルゼンチン
アルゼンチン
南アフリカ シンガポール
フィリピン
インドネシア
マレーシア
インド タイ
豪亜・中近東
生産部品
主要5生産拠点
商流の中心拠点
TQM活動における IT化の意味
トヨタのTQM (Total Quality Management )活動はTPSの実践を
新車開発、マーケティングへ展開した、技術、生産、販売の活動
TPS = トヨタ生産方式
1.お客様重視
・車(ハード)の提供から、お客様満足(CS)向上への
カーライフサービス(ソフト)の提供へ
トヨタのTQM
・IT化による後工程(お客様)のCS向上
2.絶えざる改善
・人が改善可能なIT化(人とITの共存)
お客様重視
3.全員参加
・実績、評価、プロセスが見えるIT化
調和ある成長
・ビジネスプロセスの可視化
Harmonious Growth
・情報共有環境による
絶えざる改善
全員参加
コラボレーションの促進
改善活動(人)と情報システム
・改善には終わりは無い
・たゆまぬ改善への取組み
改善活動
改善 (人中心)
情報システム(技術中心)
ギャップ
ジャスト・イン・タイムを
追求し、変化への対応容易
1
System
level
1
1
1
2
改善
-Human Oriented
-Activities based on TPS
(Toyota Production System)
2
2
運用が固定化し、変化
への対応困難
イノベーション(改革)
-Technology Oriented
-BPR
-FA / CIM / e-Business
Time
TLSCによるシステム・プロセスの可視化の例
一枚のTLSCの図面で全ての関係者が情報共有可
従
来
TLSCの活用 システム・プロセスの見える化
工程管理
基本構造図
システムブロック図
S
TL
C
工程図
システム範囲
システムの狙い
・・・・・・・・
W
はねだし
電
着
吊上げ
正常
タグ交換
シーラ
床裏
ブース
建 付
シーラ
マグカードを読ませる
建付
車両到着を知る
車両到着を知る
工程制御図
担当者
コンピュータ
機能図
コンベアを
停止させる
書込OK?
NG
OK
続行
マグカード入力を促す
IDタグに
車両情報を書込む
車両番号認識
車両番号検索
車両情報一時保管
現状約300種類
管理者・ユーザ
には理解難
管理者・ユーザを交えた検討
• 生産・物流分野
• 生産・物流分野
情報システムの企画・検討
情報システムの
• 業務プロセス分析・スリム化
企画・検討
TLSC=Total Link System Chart • システムの開発
IDタグ用に車両仕様編集
ナレッジデータベースによる設計
・ナレッジDBによる設計の自動化率向上
・人の考える時間の増大(創造性の発揮)
従来型設計(個人のノウハウによる)
・設計手順のノウハウ(個人)
・設計・生産技術の標準
・製造ノウハウ(図面DR)
・お客様の不具合情報
ナレッジDB設計
・設計、生産の蓄積された
ノウハウの設計ロジック化
情報・知識の共有
・知識、ノウハウの見える化
・暗黙知の形式知化
知識の抽出
知識管理
DB
情報
知識
(暗黙知・形式知
知識
の
の標準化) 活用
の
加工
IT活用による企業競争力向上へ向けて
・オープン化、グローバル化、スピード化の時代への迅速な対応
・「人・組織」と「機械化(IT化)」のシナジーによる生産性向上
改革の方向
・お客様満足(CS)に向けた全体最適なプロセス改革
・プロダクト(商品・サービス)のIT化による新価値の創出
・人・組織と機械(IT化)の協調、共存
・コアコンピタンス、コラボレーション、自律化
人中心の日本的経営
-Process-oriented
-Kaizen
-Collaboration
-Open
-Flexible
技術(IT)中心の欧米的経営
-Technology-oriented
-Innovation
-Creation
-Closed
-Fixed