ECOVIS info . Issue 3/2012 International Tax, Audit, Accounting and Legal News オランダ 利益移転による節税 中国 外国人フリーランサーへの 課税 オーストリア 新たな不動産税制 ルーマニア 新民法:信託に関する変更 マルク・ロッデル、ECOVISオランダ 「ノルウェーでは育児休暇に関する法律が改正されてきましたが、政治経済状況は今も変 化を遂げています。」 エイナー・ソルリエ、ECOVISノルウェー、オスロ、 ノルウェー ノルウェーの育児休暇 筆者 エイナー・ソルリエ einar.soerlie@ecovis.com ノルウェーでは長年にわたり高額の育児休業手当金 が支払われてきました。民間の被雇用者15万名を代 表して最近行われた団体交渉の結果、新たに子供が 生まれた父親に対しさらなる権利が与えられることに なりました。 新たに子供が生まれた夫婦には計47週間の育児休 暇を取得する権利があり、その期間の給与は年額約 65,000ユーロを限度として全額支給されることが法 律で定められています。そのためには手当の支給期 間に先立つ6カ月間にわたって就労し、年金受給資格 の対象となる所得を得ていることが条件となります。 手当には公的資金が充てられます。 また別の選択肢と して、賃金の全額ではなく80%相当を受け取って休暇 期間を延長することや支給期間の後に無給の休暇を 付けることも可能です。両親は、子供一人につき最長 で3年間の育児休業が認められています。 ただし両親の間での育児休暇の配分にはいくらか制 限があります。出産前の3週間と出産後の6週間は母親 に割り当てられ、 また47週のうち12週は父親に割り当 てられ、いずれも義務化されています。残りの期間は父 親と母親の間で自由に分けることができます。雇用者 は育児休暇の申請を拒否することはできませんが、雇 用者への通知は事前にしなければなりません。 有給の育児休暇のほか、新たに子供が生まれた父親 には2週間の無給休暇が法律で認められています。公 務員には従来この期間についても手当が支給されて いたところ、今回の協定により、交渉を行った団体の 加入者にも同じ資格が与えられることになりました。 現時点では雇用者がこの期間の手当を負担しなけれ ばならず、 この資格がすべての被雇用者に適用される ことになるのではないかという憶測を呼んでいます。 雇用者が法定以上の育児休業手当を負担する傾向 が強まっています。例えば、多くの雇用者が通常賃金 と育児休業手当の差額を支払うことにしています。 母親と父親の間で育児休暇の配分方法を決める権利 については、引き続き政治の場で議論が行われてい ます。 しかし、新たに父親となった者が取得する育児 休暇期間が増え続けており、雇用者は当面、 この傾向 に対応する必要があります。 租税回避の戦略 利益移転による節税 オランダ-アイルランド方式は非常に魅力的だが、 より重要なのは完全に合法という点だ。 筆者 マルク・ロッデル marc.lodder@ecovis.com 共同筆者 デーヴィッド・スパイサー、 ECOVIS BBT ダブリン、 アイルランド david.spicer@ecovis.com 2 Ecovis info 3/2012 オ ラン ダ - アイ ル ランド 方 式に最も適しているのは、 機 器 を 動 か すソフトウェアに 関 する特 許といった知 的 所 有 権 の ロイヤルティによる利 益です。知 的 所 有 権 のロイヤルティを 得て いる企 業 にとって高 税 率 の 国 や 地 域 から低 税 率の国 や 地 域 へと 利 益 を 移 転 することは 、例 えば 食 料 雑 貨 店 や自動 車メーカーよ りも遥 か に た や す い の で す。自 動 車と は 異 なり、ダ ウン ロ ード によるアプリケ ーション は 世 界 のどこからでも販 売 することが できます。アップル は 2 0 1 1 年 に 3 4 2 億ドル の 利 益 を 計 上しまし う。い わゆる「ダブル・アイリッシ ュ」です。 た 。オランダ 財 務 省 の 計 算 によ ると、通 常 の 場 合 で あ れ ばこの 利 益 に対して5 7 億ドル( 1 6 . 7 % )の税 額 が 課 せられるはずです。 し かしオランダ - アイル ランド 方 式 を 活 用した 結 果 、課 税 額 は わ ず か 3 3 億ドル( 9 . 6 % )にとど まり、2 4 億ドル(7 . 1 %)の節 税と なりました 。グ ーグ ル 、フェイス ブック、マイクロソフト、オラクル をはじめ 多くの 多 国 籍 企 業 がオ ランダ - アイルランド方 式 を 利 用しています。 「ダブル・アイリッシュ」方式 「ダブル・アイリッシュ」方 式は米 国の多国籍企業が法人税額を軽 減させるために用 いる租 税 回 避 戦略です。これは法人形態を取る 関連事業体間の支払いを利用し て、EU域内の高税率の国や地域か ら低税率の国や地域へと所得を移 転させることがポイントとなってい ます。 どんな仕組みなのか? まず二切れのパンから始めましょ 典型的な形としては、米国の企業 が、EUにおける知的所有権の利用 「やり方はいたって簡単で、 ダブル・アイリッシュ方式で始めてオランダ方式を加えれば、そ れで課税軽減の準備が整います。 とはいえ適切なサポートが必要です。」 マルク・ロッデル、ECOVIS Lodder & Co International B.V.、ハーグ、オランダ 権を子会社のアイルランド法人に 移転します。多くの場合、 アイルラン ド法人は交換条件として、EUにお いてこうした製品の販売・促進を支 援することに同意します。 このアイ ルランド法人はEUにおいて、移転 を受けた権利の使用により得られ るすべての利益を収受しますが、 その利益が米国に送金されない限 り、そして送金されるまで米国には 納税しません。 このスキームを完成させるには2 つのアイルランド法人が必要なこ とから、 「ダブル・アイリッシュ」方式 と呼ばれています。 第一のアイルランド法人がEU における重要な権利を所有しま す。 この法人は、ケイマン諸島や バミューダなどタックスヘイブン の税務上の居住者です。アイル ランドの税法では、法人は必ず しも設立された場所ではなく、 経営管理の中枢機能が置かれ ている場所において居住者とさ れるため、第一のアイルランド法 人をアイルランドの税務上の居 住者としないことが可能なので す。第一のアイルランド法人は、 アイルランドの税務上の居住者 である第二のアイルランド法人 に権利をライセンスし、相当な 額のロイヤルティや手数料を受 領します。 第二のアイルランド法人はEU においてこの権利を利用するこ とにより所得を得ますが、第一 のアイルランド法人に支払うロ イヤルティや手数料が費用とし て控 除 可 能 なため、その 課 税 所得は低く抑えられ、残余の利 益に対しアイルランドの法人税 (12.5%)が課せられます。第一 のアイルランド法人に支払われ るロイヤルティには課税されま せん。 米国の親会社にとっては、これら 二社のアイルランド法人が適切に 構築されていない場合には課税の 繰り延べが認められず、内国歳入 庁(IRS)の被支配外国法人規制の サブパートFの所得として課税の対 象となる可能性があります。 これを 回避するには第二のアイルランド 法人をタックスヘイブンの税務上 の居住者である第一のアイルラン ド法人の100%子会社とし、その上 で第二のアイルランド法人の事業 体の種類を選択する際に、その所 有者である第一のアイルランド法 人とは別個の事業体とみなされる ように選択します。それにより、二 社のアイルランド法人間の支払い は米国の税務上、考慮の対象から 外れます。 では、単にバミューダに法人を置く のではなくダブル・アイリッシュとす る理由は何でしょうか。それは租税 条約があるためです。EU域内で移 転される金銭には源泉徴収税が課 せられませんが、バミューダのよう に規制のない国に金銭が移転され る場合、所得源泉地国の通常の税 率で源泉徴収が行われます。 しか しアイルランドもバミューダへの移 転に源泉徴収税を課すのではない でしょうか。答はイエスですが、ダ ブル・アイリッシュにオランダのチ ーズをいくらか加えることでこの問 題を解消することができるのです。 「ダッチ・サンドイッチ」方式 ダブル・アイリッシュをダッチ・サン ドイッチに変えるには、第三の子会 社をオランダで設立します。第一の アイルランド法人は、第二のアイル ランド法人に権利を直接ライセン スするのではなくこのオランダ子 会社にライセンスし、 このオランダ 子会社が第二のアイルランド法人 にさらにこの権利をライセンスしま す。 これにより、第二のアイルランド 法人が権利の利用によって得る所 得をオランダにプールすることが 可能になります。そこにどんなメリ ットがあるのでしょうか。 アイルラン ドは源泉徴収税を課しますが、オラ ンダでは第二のアイルランド法人 に移転される金銭にわずかの手数 料しかかかりません(訳注:原文に おいてthe second Irish company とされているが、文脈から 「第一の アイルランド法人」the first Irish companyへの移転を意図している と思われる。)。二社のアイルランド 法人を「パン」 としオランダ法人を「 チーズ」 と考えれば、 これがなぜ「ダ ッチ・サンドイッチ」 と呼ばれるか は一目瞭然です。 こうしたスキ ーム が 非 常 に 複 雑 で、Ecovisの専門家により個別にあ つらえる必要があることは言うまで もありません。 しかし適切に構築さ れた場合には、極めて美味となりま す。 どうぞ召し上がれ。 Ecov i s info 3/2012 3 「中国ではフリーランス業務への課税に関する法令が極めて明確で、摩訶不思議なことは ありません。 とはいえ、事前に十分準備しておくことが重要です。」 ロバート・リプスキー、上海瑞德会計士事務所有限公司、上海、中国 中国におけるフリーランスプロジェクトと課税 制度の抜け穴? 中国での外国人フリーランサーによる納税は多くの要素に左右される。 筆者 ロバート・リプスキー robert.lipsky@ecovis.com フ 事 業 所 得 に区 分され 、受 領 金 額 が社員に提供する医療等に関す 毎 に 比 例 税 率 の 2 0 % で 課 税 さ るい わゆるフリンジ ベネフィット れます。フリーランスプロジェク ( 福 利 厚 生 )が 受 けられ な い 者 トが 総 計 で 2 万 元( 約 2 , 4 0 0 ユ はフリーランサーとされます。 ーロ)を 超 える場 合 には 税 率 が 3 0 %に上 昇します。受 領 額(プロ フリーラン サ ー が 外 国 人である ジェクト金 額 )が 4 , 0 0 0 元 以 上 場 合 、中 国 は 多 数 の 国との 間で の 場 合 は そ の 2 0 % の 控 除 が 認 租 税 条 約 を 締 結して いるた め 、 められ て い ます。また 4 , 0 0 0 元 一 般 的に中 国にお ける外 国 人フ 未満の場合は800元の控除とな リーランサー の 状 況 は か かる条 約 に 左 右 され ま す。外 国 人 フリ 外 国 人 が 中 国でフリーランスプ ります。 ーラン サ ー が 固 定 の 拠 点( オフ ロジェクトを 行うた め の 第 一 歩 は、中 国 企 業 や 外 資 系 企 業 など 中 国 の 税 法 で は 雇 用 所 得( 即 ィス、倉 庫 等 の 施 設 )を有してい 顧 客と契 約を結 ぶことです。フリ ち賃 金 や 給 与 )と個 人 事 業 所 得 る場 合 には、相 手 国( 中 国 )にお ーラン サ ー は そうした 契 約 に基 が 明 確 に 分 けられて います。雇 いて 課 税されるとして いる条 約 づ き、また 顧 客 からの 招 聘 に 応 用 所 得 は 非 独 立 の 立 場での( 即 が 大 半 を 占 めて います。外 国 人 じて、国 外 に いる 間 に 商 用ビ ザ ち、企 業 等 の 組 織 にお いて役 職 フリーランサー の 中 国 滞 在 期 間 を 申 請しな け れ ば なりませ ん 。 にある か 、雇 用されて いる 立 場 が 1 8 3 日に満 たな い 場 合 には 、 個 人 所 得 税 の 対 象とならず、そ の間の所 得は本 国で課 税される ことになります。 リーラン サ ー の 仕 事 に は 開 業 医 、弁 護 士 、技 師 、建 築 家 、歯 科 医 、会 計 士と い った 自 営 業 の ほ か 、科 学 、著 作 、芸 術 、教 育・訓 練 など の 専 門 分 野 にお ける業 務 があります。フリー ランサーまたは 請 負 業 者 は い か なる企 業あるい は 組 織 にも雇 用 されていません。 税 務 当 局 の 関 心 は 課 税 に 限ら れ 、外 国 人 がど のように 中 国 国 内 に( 合 法 的 に )居 住 する か に つ いては 無 関 心であることに注 意 が 必 要です。ただしフリーラン サーが中国で複数の業務に従 事 する場 合 は 、中 国 に合 法 的 に 居 住して いるかどうか が 問 題と なることもあります。 一 般 的 にフリーランサー の 所 得 は 個 人 所 得 税 の 対 象 と なりま す。か かる所 得 は 個 人 事 業 者 の 4 Ecovis info 3/2012 で の )労 働 に対 する個 人 へ の 報 酬です が、個 人 事 業 所 得 は 雇 用 関 係 が 存 在 することなく個 人 が 様々な 技 能 や 労 働を提 供 するこ と によって 生じるものとされ ま す。実 務 的 に は 、税 務 当 局 は 納 税者が業務を行う方法に基づ い てこの 区 分を決 定 する場 合 があ ります。つまり、自 身 の 道 具 や 機 器 を 使 用し、通 常 の 勤 務 時 間 に 作 業 場 に いる必 要 は なく、労 災 保 険 の 対 象 に なって おらず、業 務 の 依 頼 者 で ある 企 業 や 組 織 要 約 すると、外 国 人 フリー ラン サ ー は 中 国で 業 務 を 行うことが でき、納 税 方 法 や 納 税 時 期 につ いても法 令で極めて明 確 に定め られています。とは い え、中 国で 事 業 活 動を行うには慎 重に準 備 することが 肝 要 で す。業 務 や プ ロジェクトが 長 期 に 及 ぶ 場 合 、 中 国 に お ける 外 国 人 駐 在 員 を 対 象とした住 宅 控 除 や 転 居 費 用 控 除を受 けるために雇 用 契 約を 結ぶ方が有利なことがあります。 フリーランサー の 場 合 、こうした 税 務 上 の 優 遇 措 置を受 けること が できませ ん 。また 雇 用 契 約 を 結 んで い れ ば、労 働 許 可 証 や 居 住 許 可 証を 取 得 することも可 能 になります。 「2012年オーストリア安定化法は不動産課税に関して改正点が非常に多く、その 詳細を慎重に確認する必要があります。」 デーヴィッド・グローサー、ECOVIS Austria経営監査・税務相談事務所、 ウィーン、オーストリア オーストリアの不動産 新たな税制 変わらない点もあるものの、変更箇所には注意が必要 売 却 価 格 が 6 0 % 上 昇したものと して 計 算 され ま す。寄 付 また は 相 続 の 場 合 は、取 得 費 用 は 譲 渡 人 から引き継ぎます。 筆者 デーヴィッド・グローサー david.gloser@ecovis.com 不動産所得税(ImmoESt) 不 動 産 譲 渡 所 得 に は 、株 式 の キ ャピ タ ル ゲ イン 課 税 に 合 わ せ て 2 5 % の 源 泉 税 が 課 され ま す。2 5 % の 源 泉 税 を 基 準 にする と、古 い 不 動 産 の 場 合 の 実 効 税 率 は 3 . 5 % 、転 用 の 場 合 の 実 効 税 率 は 1 5 %となります が 、累 進 課 税を選 択することもできます( 逸失利益の場合など)。 2012年安定化法 – 不動産所得税 (ImmoESt)の導入 2 0 1 2 年 オ ーストリア 安 定 化 法 は新たな不動産課税規定を設 けており、ビ ル 建 設 の 場 合 の 仕 入 れ 税 額 控 除 に 関 する 新 規 定 が 導 入され たほ か 、不 動 産 の 譲 渡によるキャピタルゲイン(不 動 産 譲 渡 益 )に対 する課 税 制 度 の 変 更が予 定されています。 不動産譲渡益への課税 従 来、不 動 産(土 地、建 物 及 び 地 権 )の 売 却 による利 益 につ いて は、取 得 後 1 0 年 間 の 所 有 期 間( 製 造 業 にお いて課 税 優 遇 措 置 の 対 象 で ある 支 出 の 場 合 は 最 長 1 5 年まで 延 長される)に譲 渡 が 行 わ れ た 場 合 に課 税され 、通 常 の 累 進 税 率( 最 大 5 0 % )が 適 用されていました。1 0 年(または 1 5 年)の所 有 期 間 が 経 過した後 は、譲 渡によるキャピタルゲイン は非課税でした。 2 0 1 2 年 オ ーストリア 安 定 化 法 で は 、不 動 産 の 譲 渡 による個 人 の利益はその所有期間にかか わらず 課 税 され ま す。この 新 税 制 は 2 0 1 2 年 4 月1日に施 行さ れ 、取 得 費 用と売 却 収 入 の 差 額 を 課 税 標 準と定 めて います。取 得 費 用 には 移 転 税、不 動 産 登 記 料 、公 証 費 用 等 の 費 用 を 加 える こと が 認 められ ま す。従 来 の 税 制とは 異 なり、不 動 産 仲 介 業 者 の費用や外部金融費用は控除 されませ ん 。生 活 上 の 本 拠 や 自 分 で 建 てた 建 物 につ いては 、従 来 同 様に新 税 制でも例 外 扱 いと なります。 結論 2 0 1 2 年 3 月 3 1 日 以 降 、不 動 産 の 非 課 税 譲 渡 は 不 可 能 に なり ました 。この日より、不 動 産 の 譲 渡 によるキャピタル ゲイン に は 2 5 % の 源 泉 税( I m m o E S t )が 課 税 され ます。非 居 住 者 で あって も、オ ースリアの 不 動 産 の 譲 渡 によって 利 益 が 出 た 場 合 は 、こ の 新 不 動 産 所 得 税 が 適 用 され ます。 この新 税 制は最 近 購 入した不 動 産のみならず古 い 不 動 産も対 象 として い ま す。古 い 不 動 産とは 2 0 0 2 年 4月1日以 前に購 入され たものと 定 義 され て おり、旧 税 制であれ ば 非 課 税で売 却 可 能 に なって い るもの で す が 、課 税 特 例 が 適 用 され 、2 0 1 2 年 3 月 3 1 日 以 降 に 売 却 され る 場 合 に 売 却 価 格 が 1 4 % 上 昇したと見な されます。牧 草 用 農 地 から建 物 用 土 地 へ の 転 用( 1 9 8 7 年 1 2 月 3 1 日まで に 行 わ れ たもの )によ り資 産 価 値 が 増 加した 場 合 は 、 Ecov i s info 3/2012 5 「新民法によりルーマニア法は多くの分野で変更が行われました。新民法における新たな 規定には企業の関心を引くものが多数含まれています。」 アンカ・ダスカル、ECOVIS Monica Esterka 法律事務所、 ブカレスト、ルーマニア ルーマニアの新民法 信託(fiducia)に関する変更 昨年発効した新民法により大幅な変更が発生 筆者 アンカ・ダスカル anca.dascalu@ecovis.com 新 民 法 に より 信 託( f i d u c i a )に 関 す る 初 の 規 定 が 実 施 され ま す。f i d u c i a は 英 国 のコモン・ロ ー にお ける 信 託 ( t r u s t )の 概 念と 同 様 の 機 能 を 持 つ もの で 、1 名 また は 複 数 の 委 託 者 が 現 在 ある い は 将 来 の 権 益 を 1 名もしくは 複 数 の 受 託 者 に移 転 するという法 律 関 係 を い い ま す。f i d u c i a は 法 律 ま た は 正 当 性 を 認 めら れ た 契 約 書 に基 づ いて明 示 的 に設 定 す る 必 要 が ありま す。受 託 者とな れるの は 金 融 機 関 、投 資 運 用 会 社 、投 資 会 社 、保 険 会 社・再 保 険 会 社 、公 証 人 、また は 弁 護 士 に限られています。f i d u c i a が 第 三 者 に 対 して 拘 束 力 を 持 つ た めには、動 産 担 保 権 電 子 文 書 局 (E le c t r o ni c A r c h i ve o f Se c u r i t y I n t e r e s t s i n Pe r s onal P r o p e r t y)に登 記しなければな りま せ ん 。ま た 必 要 な 場 合 、土 地 台 帳 へ の 登 記 も 求 めら れ ま す。f i d u c i aまたは f i d u c i a に関 する変 更 事 項 は 、設 定 日あるい は 変 更 日 から1カ月以 内 に管 轄 する 財 務 当 局 に 登 録 が 行 わ れ ない 限り無 効とみなされます。 当 の 条 項 を 廃 止 するしか ありま せんでした。 契 約 当 事 者は制 限 期 間を1 年 未 満または1 0 年 超に設 定すること はできません 。各 種 の 契 約 や 状 況 にお いて当 初 に設 定 可 能 な 制 限 期 間 は 1 年 、2 年 、3 年 また は10年となっています。 新民法では賃貸借契約に関す る 修 正も導 入 され ました 。事 業 f i d u c i a は 委 託 者 が 選 択 する法 用 不 動 産の賃 貸は賃 貸 借の1つ 律 に 準 拠します が 、適 用される のカテゴリーとして 規 則 が 明 確 法 律 が 選 択され な い 場 合 は、最 化されました。賃 貸 期 間、新 規 賃 も関 連 性 の 高 い 国 法 に準 拠しま 貸 へ の 同 意 に お ける 賃 借 人 の す。また新 民 法では、制 限 期 間( 優 先 権 、転 借 人 に対 する退 去 要 訴 訟 の 提 起 が 認 められる期 間 ) 求 や 請 求 に 関 する 規 則 が 設 け に 関 する 以 前 の 規 制 が 大 幅 に られており、こうした 規 則 が( 当 修 正 され ました 。最も重 要 な 変 事者による別段の合意がない限 更 は 、契 約 の 当 事 者 が 、当 該 契 り)住 宅 の み ならず 業 務 用 不 動 約 に関 する訴 訟 手 続きに適 用さ 産の賃貸にも適用されます。 れる制 限 期 間 を 決 められるよう に な ったことで す。以 前 に は 制 当 事 者 は 定 期 賃 貸 契 約と 不 定 限 期 間 は 法 律 によって定 められ 期 賃 貸 契 約 の い ず れ も締 結 可 ており、期 間 を 変 更 するに は 該 能です が 、新 民 法では 賃 貸 期 間 6 Ecovis info 3/2012 を最長49年間と定めています。 賃 貸 期 間 の 満 了した 賃 借 人 が 当 該 不 動 産 につ いて、新 規 の 賃 借 人と の 間 で 合 意 さ れ た 条 件 と同 等 の 内 容で 新 たな 賃 貸 契 約を 締 結 する優 先 権を 持 つこと も、新 民 法で規 定されました。た だし、期 間 満 了となった 賃 貸 契 約にお いて賃 借 人 が 履 行してい な い 責 務 が あった 場 合 は 、か か る優先権は認められません。 当事者は賃貸契 約で明示的に この 優 先 権 を 排 除 することが 可 能で す。新 民 法で は 裁 判 所 の 命 令 によるもの 以 外 、賃 借 人 に 対 し賃 貸 不 動 産 からの 退 去 を 強 要することはできません。そのた め家 主 は自分 の 都 合 によって賃 借 人 を 退 去させることが 以 前よ り難しくなったとい えます。マス ター 契 約 にお ける 賃 借 人 が 賃 料を支 払 わな い 場 合 、家 主 は 転 借 人 に直 接 請 求 することが 認 め られます。そうしたケ ースで は 、 「Ecovisはインドネシア、 メキシコ、ベトナム、セルビアから4社の新規加盟を得 て、欧州、 アメリカ、 アジアにまたがる世界49カ国にプレゼンスを拡大しました。」 カイ・フリードリッヒ・トムゼン、ECOVISインターナショナル、ベルリン、 ドイツ 有 利 なものとなったようです。特 に 対して 課 され て い る 、ル ー マ に、農 業 従 事 者 はこれまで 農 地 ニ ア の 農 地 の 取 得 に 関 す る 法 に 投 資 する に は 地 主 の 事 前 承 的 規 制 は 2 0 1 4 年 に失 効します 認 を 得 な け れ ば なりませんでし が 、この 制 限 の 消 滅 前 で あって 公 証 され た 賃 貸 契 約 や 財 務 当 た が 、新 民 法で はこの 義 務 が 撤 も、こうした 外 国 事 業 体 が ル ー 局 に 登 録 され た 契 約 書 は 執 行 回 され ました 。また 地 主 が 農 業 マ ニア法 に基 づく特 別ビークル 令 状として 位 置 づ けられ ま す。 従 事 者 による 契 約 上 の 義 務 の ( 有 限 責 任 会 社 ま た は 株 式 会 家 主 の 立 場 からは 、契 約 書 を 発 履 行 状 況を 確 認 する権 利もなく 社 等)を設 立し、それを通じて農 地を取得することは可能です。 効させて財 務 当 局 に登 録 するこ なりました。 とにより、公 証・発 効 手 続きに要 する時 間と費 用を大 幅に削 減す い か なる 個 人も企 業も( ル ー マ 新 民 法 によりル ーマニア法 は 多 ニ ア 国 籍 、外 国 籍 居 住 者 、非 居 くの 分 野 で 変 更 が 行 わ れ まし ることができます。 住 者 を 問 わ ず )小 作 農 業 を 行う た 。上 記 は 新 民 法 にお ける新 た 新民法が 施 行された2 0 11年 10 こと が で きま す。現 在 、E U 域 内 な 規 定 の 中 から、企 業 の 関 心 を 月1日をもって、小 作 農 に関 する の 市 民 で ル ー マ ニ ア に 居 住 す 引くと思 わ れるもの の み を いく 法 律 が 廃 止されました 。旧 規 定 る 個 人 の 農 業 従 事 者 に は 農 地 つか取り上げました。 で 新 民 法 に 引 き 継 が れ たも の の 取 得 に対 する制 限 はありませ もある一 方 、新 た な 枠 組 み は 旧 ん 。E U 域 内 の 個 人 の 農 業 従 事 法 による 規 制 の 一 部 を 緩 和し、 者( ル ー マ ニ アの 非 居 住 者 )及 総じて 農 業 従 事 者 にとってより び E U 加 盟 国 で 設 立され た 企 業 転 借 人 はマスター 契 約 にお ける 賃 借 人に支 払うべき金 額を家 主 に直接支 払 わねばなりません。 世界的拡大の継続 インドネシア、 メキシコ、ベトナム及びセルビアの新規 加盟4社は、マルタで開催された国際パートナーカン ファレンスでも自己紹介を行いました。 4 社 の 新 規 加 盟 により、E c o v i s のプレゼンスは 欧 州 、アメリカ、アジ アにまた がる世 界 4 9カ国 に 拡 大しました 。インドネシアの 新 パ ートナ ーで ある EC OVIS I d r i s & Su d i h a r t oは首 都ジャカルタ と、高 成 長 中 の 自 由 貿 易 ゾ ーン でシン ガ ポ ー ル 及 びマレ ーシアの 南 に位 置 するバタムにオフィス を構えています。メキシコのE C OV I S Quibrera S a l d a n a は 、世 界 最 大 級 の 都 市 で 2 , 5 0 0 万 人 の 人 口を 抱えるメキシコシティに2 つ の 事 務 所を 有 しています。セルビアの パ ートナーとなったE C O V IS ConF i d asの本 社はベルグラードにあります。 ベトナムでは、E C OV I S S T T がハノイとホーチミン シ ティにそ れ ぞ れ オフィスを 置 き、業 務 を 開 始し ました。これらの 新 パ ートナーはそれぞ れ 最 大 7 0 名の専 門 家を擁し、監 査、会 計、税 務、法 務 及 び 経 筆者 カイ・フリードリッヒ・トムゼン kay.f.thomsen@ecovis.com 営コンサルティングの分 野で総 合 的サービスを提 供します。なお、最 新 の 加 盟 事 務 所として、米 国イ リノイ州シカゴのE. C. Ort iz & Co . L L P がEco v isの協力パートナーになりました。 Ecov i s info 3/2012 7 About ECOVIS Ecovisはヨーロッパで発足したグローバルコンサルティングファームであり、40カ国を超える国々で3,800人超の人々が業務に携わっています。税 務コンサルティング、会計及び監査、法律相談、経営コンサルティングがEcovisの強み、 コアコンピタンシーです。 国・地域レベルでの個別事情に応じた具体的アドバイスが可能なこと。それぞれの専門領域の枠を超えて、国際的なプロフェッショナルネットワー クの有する幅広い専門知識を、横断的・学際的に活用できること。それらがEcovisの強さの特徴です。 それぞれのEcovisオフィスを通じ、資格をも つバックオフィスの専門家達だけでなく、産業別、国別ノウハウを持つ世界中のEcovisの専門家を活用できます。 この多様な専門知識により、特に国際的取引や投資の分野では、 クライアントの自国での準備から対象国でのサポートまで効果的なサポートを 提供することができます。 Ecovisは主に中堅企業を中心にコンサルティングを行っています。国内でも海外でも、One-Stop-Shop (あらゆるものを取り揃えている)というコ ンセプトで、法律、税務、経営、管理の問題に対してあらゆるサポートをお約束します。 Ecovisという名前は、経済(Economy)とビジョン(Vision)という言葉の組み合わせに由来しており、私たちの国際性、 また将来と成長への焦点を表 現しています。 オフィス所在地:www.ecovis.com/global IMPRINT Publisher . ECOVIS International, Ernst-Reuter-Platz 10, 10587 Berlin, GERMANY, Tel. +49 (0)30-31 00 08 55, Fax +49 (0)30-31 00 08 56 Realization . EditorNetwork Medien GmbH, 80336 München Editorial Department . Kurt Bülow, Denmark; Vanessa Hadinegoro, Netherlands; Andreas Karaolis, Cyprus; Robert McCann, United Kingdom; Dr. Ferdinand Rüchardt, Germany; Carmen Vasile, Romania ECOVIS Info is based on information which we consider to be reliable. Liability may, however, due to the constantly changing laws, not be assumed.
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