第 6回 われらが編集長は剣道6段、正しくは6段弱、稽古はあまいが道具はだいすき。ぶらり立ち寄った 武道具店で、進化する道具と改良開発の苦心などを聞く。お店が説く道具の上手な選びかた買いかた。 せて常に進化し続けなければおいていかれてしまい 代表取締役社長の川辺尚彦さんから明快な回答が得 流であるが、なぜアルファベット表記にしたのか。 さ れ て い る「 ALL JAPAN PITCH 」ブランドの剣 道具である。剣道具は、漢字表記のネーミングが主 大会出場経験者から少年剣士まで幅広い年代で愛用 愛用するようになったのが「 ALL JAPAN PITCH 」 と名づけられた剣道具である。いまや全日本選手権 この全日本武道具が開発・製造し、世界の剣士が とびこんできた。 かれた、大型ショッピングセンターのような看板が ら車を走らせていくと「全日本武道具」と大きく書 なければお客様に説明もできませんし、説得力もあ にしています。自分たちが使い、納得がいく商品で したい、試合にでたいと思うものを商品化するよう 高いもの、最終的には従業員がこれを使って稽古が 「自分たちでモニターして使いやすいもの、強度が の秘密である。 験の豊富さが、常に進化する「 ALL JAPAN PITCH 」 ベルの大会経験者が勤務している。従業員の剣道経 手権大会、世界剣道選手権大会出場者などトップレ 選手権、国体、丸目蔵人顕彰全日本剣道七段選抜選 んのこと、インターハイ、全日本学生、全日本女子 ま す。 そ の と き は 一 人 で も 多 く の 選 手 が『 たいです。2015年の世界大会は東京で開催され 私がわかる武道具・剣道の知識をもっと世界に広め の皆様に剣道の素晴らしさを伝えたいと思います。 「海外の皆様の気持ちになって販売し、同時に世界 ー 氏 は、 川 辺 さ ん の「 ALL JAPAN PITCH 」の海 外展開にかける夢に共感、スタッフに加わった。 たしている。もともとカメラマンだったフィッシャ 3回出場、全英剣道選手権大会団体・個人優勝を果 ャー氏はイギリス代表として世界剣道選手権大会に 海外営業部・部長をつとめるアンディ・フィッシ めいただくようにすることも大切と考えています」 ALL りません。当社の商品すべてを自分たちで使い、開 実施している。そこで使用した防具に問題があれば、 抱負を語った。 られた。 くと思います。海外のお客様にも安心してお買い求 「うちはメーカーですので、お客様のニーズに合わ 」を製作するにあたり、 「だれ 「 ALL JAPAN PITCH もが使いやすく、すぐに使え、美しいこと」をコン セプトとした。全日本武道具の従業員 ます。海外の剣道愛好家は今後、ますます増えてい 〒861 ‐ 0142 熊本県熊本市北区植木町鐙田1037 TEL096-288-4949 FAX096-288-4948 E-mail info@zennihonbudougu.com HP http://zennihonbudougu.com 発した商品だから結果が表れるのだと思います」 と、漢字表記では日本語がわからない剣士には理解 自社工場で工夫・研究をくり返すことができるのも、 不定期ではあるが、1週間に数回、社員稽古会を できません。世界で通用するブランドに育てたかっ 全日本武道具の強みと言えよう。 を広めたいという気持ちがまずありました。となる たので、アルファベット表記にしました」 142 2014.1 KENDOJIDAI 全日本武道具 世界の剣士が愛用中 武道王国火の国熊本で本社をかまえる全日本武道 分、ショールームを兼ねた店舗は約500 具。本社は、熊本市の中心部から国道3号線を北上 して約 パーセントは剣道経験者である。高段者はもちろ 30 「世界中の剣士に使っていただきたい、日本の剣道 坪。おそらく日本最大の敷地面積であろう。市内か 株式会社全日本武道具 数人のうち ALL JAPAN PITCH 使いやすく、 すぐに使えて美しい ぶらり ・ 武道具店 20 』を着けてもらえることが、現在の JAPAN PITCH 目標です」とフィッシャー氏は流ちょうな日本語で 80 編集長の ぶ・ら・り ● 武・道・具・ 店 ALL JAPAN PITCH は少年剣士から全日本選手権大会出場クラスまで、幅広い年代に支持されている 販売実績1万セットを突破した ALL JAPAN PITCH 143 KENDOJIDAI 2014.1 年 月に、全日本武道具は球磨郡あさぎり てくださっていることに感 アイディアをかたちに あさぎり町に球磨工場を設立 日本の匠の技を残したい 平成 故郷への愛着は人一倍強い。 立が実現した。川辺さんは球磨郡多良木町の出身、 を提供していきたいと考えています。実際、球磨工 お客様のための商品を開発し、常に進化する武道具 かたちにすることができます。お客様に合った商品、 客様のアイディアをすぐに ます」 き、だから海外でも高品質の武道具が提供できてい ですので、日本工場からの技術伝達もスムーズにで 謝しかないのですが、それ 「当社のメイン工場移動にともない、あさぎり町の 場ではお客様の目の前で剣道具をつくることもして 町に球磨工場を設立した。廃校の跡地を利用し、あ 皆様には最高のご協力をいただくことができました。 現在、日本国内で武道具を製造している工場は全 故郷の地で工場が開けたことを誇りに思うとともに、 限に生かし、新しい技を常に研究しています。技術 業をしています。工場では、先人の匠の技術を最大 「ここでは工場長をはじめ全国でも有名な職人が作 剣道具の開発・研究機関である。 術を継承し、守られています。それゆえ、球磨工場 は、当社以外の人が入ることは限りなく少なく、技 で工場を運営しています。当社の海外メイン工場で 「我々全日本武道具の海外工場では独自のシステム ある。 具を生産するのが中国をはじめとする海外の工場で だが、球磨工場で開発したノウハウを生かして武道 全日本武道具の頭脳・心臓といえるのが球磨工場 国内に工場を持つ会社として大変さや苦労、技術継 おられます。これは日本に残す匠の技です。我々も 社になりましたが、どこも素晴らしい技術を持って しいです。日本に工場を構えておられる会社様は数 とですが、日本の武道具製造技術はとにかく素晴ら ろいろあると思います。ただ、確信として言えるこ くなったこと、賃金や敷地確保の問題など要因はい 「とても残念な現実なのですが、技術継承者が少な 日本武道具の球磨工場を含め、数件しかない。 は立ち止まることはできません。常に進化させるこ 球磨工場は単に剣道具を製造するだけではなく、 とが必要です。それができるのが当社の最大の強み 承の難しさを少なからず経験していますが、これか らも、この匠の技を継承し、次世代、次々世代と途 切れることなく、この技術を切磋琢磨し、継承しあ 年以上の実績があり、 従業員も工場創業当時から働いている熟練者です。 えたらと思っています。それが武道具の発展、剣道 提携している工場は創業から との完全な連携で商品を製造することができます。 工場長の後藤昌さんは熊本刑務所の技官として刑 現在、従業員は200名前後で製造しています。海 界の発展につながるのではないでしょうか」 年以上のキャ リアを持つ大ベテランである。 外工場で指導していしている職人はベテランばかり 務所剣道具の製作を指導してきた。 「剣道具師として神様のような存在の方が力を貸し 40 20 と考えています」 たら最高です」 います」 川辺尚彦 株式会社全日本武道具代表取締役 球磨郡という地域を世界各国の方々に知ってもらえ ゆえ社員のアイディア、お 12 さぎり町の協力のもと、念願だった武道具工場の設 24 144 2014.1 KENDOJIDAI ぶ・ら・り ● 武・道・具・ 店 熊本県球磨郡あさぎり町に新設した球磨工場 店舗面積500坪の本社・展示場で働くスタッフとともに 145 KENDOJIDAI 2014.1
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