身体表現性障害

身体表現性障害について
精神科・心療内科 福原 香織
身体表現性障害とは
疼痛や吐き気、めまいなど、一般身体疾患を示唆
する身体症状が存在してはいるが、一般身体疾患、
物質の直接的な作用、またはパニック障害など他
の精神疾患によって説明できない、または完全に
説明することができない状態に対してつけられる
診断名である。
米国精神医学会の操作的診断基準であるDSM-Ⅳより抜粋
どんな病気でしょうか
• 30代以前に発症することが多く、女性に多い
• 身体的異常や検査結果がないにもかかわらず、
長い期間、身体的症状を訴える
• 症状は変化することもあり、環境によって変動が
みられる
• さまざまな医療機関をわたりあるく
• 原因は心理社会的な要因が関係しているが、要
因を一つに特定することはできないことが多い
• 症状による苦痛は確実に加わっており、詐病や
仮病とは異なる
種類(DSM-Ⅳによる)
• 身体化障害:身体症状
• 転換性障害:随意運動機能と感覚機能の
障害、ストレスが先行しやすい
• 疼痛性障害:重篤な痛みの訴え
• 心気症:重病にかかっているという考えや
恐怖感
• 身体醜形性障害:外見に重大な欠陥があると
思い込み著しく心配する
症状と診断
• 痛み
• 胃腸症状
• 神経的症状など
• 身体的な病気が存在しないことが前提
→ 身体科の受診や検査などは必要です
→ 丁寧な応対や診察、検査をお願いします
対応方法
• 患者の強い治療欲求による問題を軽くするた
めには、患者に対応する医師を1人に集約し、
検査などの患者の欲求に部分的に応じながら、
信頼関係を結び、身体の症状に精神科的な理
由があることを患者が気づくようにし、患者が
進んで精神科を受診するようにしていく。
• 身体的な問題はないということを理解してもらう
→苦痛を感じている患者さんはそのことを
理解するのに時間がかかります
身体表現性障害と
誤りやすい身体疾患
• 多彩な症状が時間の経過とともに消長を繰り
返すような疾患
• 一般的なスクリーニング検査では異常が発見
されにくい疾患
• 不定愁訴
心気症と
紛らわしい身体疾患
疾患名
鑑別に有効な検査
多系統に障害を
生じる疾患
全身性エリテマトーデス
抗核抗体など
神経系疾患
多発性硬化症、脳腫瘍
頭部CT
内分泌疾患
甲状腺機能亢進症や低下症、 ホルモン定量
副甲状腺機能亢進症
発作性疾患
不整脈、狭心症
てんかん
急性間欠性ポルフィリン症
褐色細胞腫
インスリノーマ
Holter心電図、負荷心電図
脳波
尿中PBG定量
尿中カテコラミン
腹部CT
血糖値、血中インスリン値
中田潤子、笠原敏彦:心気症・身体化障害. 最新精神医学3:199-206(1998)より
救急受診患者における
精神科疾患患者数
299/3877名(7.7%)