IEEE 802.11ac テストにおける意味

ホワイトペーパー IEEE 802.11ac
テストにおける意味 © 2013 LitePoint, A Teradyne Company. All rights reserved.
目次 802.11acについて........................................................................................................................ 2 802.11ac:概要.............................................................................................................................. 3 市場予測........................................................................................................................................ 6 仕様................................................................................................................................................ 7 用途.............................................................................................................................................. 11 802.11acのテスト....................................................................................................................... 13 終わりに........................................................................................................................................ 14 付録 I:参考資料.......................................................................................................................... 14 付録 II:気になる話...................................................................................................................... 14 IEEE 802.11ac:テストにおける意味
1
802.11acについて 2008 年後半、IEEE 802 規格委員会内に 802.11 – 2007 規格に新しい修正版を作成する目的で新しいタスクグループ (TG) が組織されまし
た。802.11ac として知られる新しい修正版には、既存の無線ローカルエリアネットワーク (WLAN) のデータスループットを向上させるための
メカニズムが組み込まれ、無線ネットワークで有線ネットワークと同等のパフォーマンスを実現できるようにしています。
TGac は、その設立以来、技術の定義において大きな成果を挙げてきました。2011 年 1 月には、同技術のフレームワークとなる仕様がドラ
フト段階に入り、その後複数の修正版を経て現在は D1.1 版となっています。このドラフトは 2012 年末に完成し、2013 年 6 月には認証プロ
グラムが確立され、802.11ac 規格は 2014 年 2 月に承認が予定されています(図 1)。
TGac 設立
ドラフト D 1.0 の
リリース
2008
初の 802.11ac
エンド ユーザー製品
2011
フレームワークが
ドラフトD 0.1に移行
2012
初の 802.11ac
対応チップ出荷
2014 年 2 月に
承認予定
2013
2014
認証プログラムの確立
図 1:802.11ac 修正版の経緯と今後の予定 802.11ac 修正版は 2014 年始めまで公開されませんが、
ドラフト版が用意されているということはチップに対する要件が全体的に確定し
ていることを意味し、チップセット関連企業は、2011 年後半には 802.11ac デバイスのマーケティングを開始することができました。最初
の 802.11ac 対応チップの出荷は 2012 年初旬に始まりました。それ以来、多数のルーター、
アクセス ポイントやドングルが市場に投入さ
れ、2013 年始めには、初の 802.11ac 対応スマートフォンが登場しました。
2015 年までには世界全体で 10 億個以上の IC の出荷が予測されていることから、802.11ac は市場に大きな影響を与えると想定されま
す。802.11ac に関する期待が非常に高い理由は複数あります。
まず、
この技術では初めて 1 Gbpsを超えるデータ転送速度の実現が期待
されるだけでなく、ユーザー環境を向上させる最新機能が組み込まれています。LTE Advanced と同様に、8 x 8 マルチ入出力 (MIMO) を通
じてより多くの空間ストリームを利用し、
より幅広いチャンネル帯域幅(80 MHz チャンネルまで) を実現して、総帯域幅最大 160 MHz まで
のチャンネル集約さえも利用できます。
さらに、802.11acの成功の鍵はこれが進化可能な技術であるということであり、既存の802.11n 修
正版をベースに構築されていきながら目標を達成し、いくつかの重要なパラダイムを突破するということです。
メーカーやユーザーが既
存の WLAN ネットワークや用途(802.11n やその前の修正版を利用するもの)から 802.11ac を使用する環境に比較的簡単に移行できる
ため、
これは大きなメリットとなります。
本書では、802.11ac の策定意図、主な特徴、市場予測について説明します。次に、現在の 802.11ac 物理レイヤー (PHY) や、新しい 802.11ac の
機能によって可能になる複数の用途を見ていきます。
そして最後に、新しい 802.11ac 仕様が研究開発と製造環境の両方において、技術を検
証するために必要なテスト装置の要件にどのように影響するのかを説明していきます。
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ライトポイント・コーポレーションは WiFi エコシ
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IEEE 802.11ac:テストにおける意味
2
802.11ac:概要 策定意図 802.11ac 修正版の目的は、既存の使用環境で大幅に向上したスループットを実現してWiFiユーザー環境を改善し、複数のデータストリー
ムの分配など、6 GHz 未満の周波数帯域に新しい市場セグメントを実現することです。1 Gbpsを超えるデータ転送速度と複数の新機能に
より、802.11ac のスループットや用途固有のパフォーマンスが、既存の有線ネットワークに匹敵するものになることは間違いありません。
超高スループット (VHT:Very High Throughput) としても知られる 802.11ac は、既存の 802.11n 技術を基礎として構築することでこの目
的を達成しています。
これにより、長い間続いている高速データ転送のトレンドを継承し
(図 2)、WiFiネットワーク能力に対してますます増
加する各種用途での需要に対応すると同時に、その最先端において、WiFiが最適な技術チョイスとなり続けることが可能になります。
データ転送速度を向上させるため、802.11ac の TG は一部の必須パラメータに加え、十分な数のオプションパラメータを定義しました。
本技術で実現している柔軟性は、最新の無線技術(LTE を参照)にとっては一般的なものであり、チップセットやデバイスの製造業者は、
特定用途の固有ニーズに合わせて、利用可能なリソースを最大限に活用して製品を定義することができます。具体的に、TGacは以下に
対するオプションパラメータを定義しています。
チャンネル帯域幅 •
変調 •
空間ストリームの数 必 須 パ ラメ ータ( 帯 域 幅 8 0 M H z 、空
間 ストリー ム 1 個 、6 4 Q A M 、符 号 化
率 5/6、ロング ガード インターバル)の
みを利用する802.11ac デバイスでは、
約 293 Mbps のデータ転送が可能です。
オプション パラメータをすべて実装する
デバイス(帯域幅 160 MHz、空間ストリー
ム 8 個、256 QAM、符号化率 5/6、ショー
ト ガード インターバル)では、6 Gbps での
転送が可能になります。 図 2: 802.11ac はWiFi技術の高速データ転送 トレンドを継承 10,000
802.11ac
(4x4、160 MHz)
1,000
最高データ転送速度 (Mbps)
•
802.11n
(4x4、40 MHz)
100
802.11 a(g)
802.11b
10
802.11
1
.1
1995
主な特徴 2000
2005
2010
2015
Year
802.11ac には、スループットの拡大やユーザー環境の改善を可能にするための機能と独自のメカニズムが複数採用されています。 この新しい技術の主な特徴は以下のとおりです。
•
5 GHz の周波数帯域 •
広いチャンネル帯域幅 •
新しい変調符号化方式 (MCS:Modulation and Coding Scheme) •
後方互換共存マルチ空間ストリーム方式のビームフォーミングとマルチユーザーによる MIMO エネルギー効率 IEEE 802.11ac:テストにおける意味
3
5 GHz の周波数帯域 2.4 GHz と 5 GHz の両方の無線周波数帯域で動作する 802.11n とは対照的に、802.11ac デバイスは 5 GHz の無線周波数帯域でしか動作
しません。
この帯域に制限するのは、主に 802.11ac に対するチャンネル帯域幅の要件が広いことが理由です。帯域幅が増加すると、混雑
および断片化している 2.4 GHz 帯域幅では特に、チャンネルレイアウトが難しくなります。比較的広い 5 GHz 帯域幅でも、製造業者は、自
動無線調整機能を使用して利用可能なリソースをうまく利用し、
スペクトルを節約しなければなりません。
広いチャンネル帯域幅 802.11ac には、802.11n と比べて改善されている、必須帯域幅とオプション帯域幅の両方があります。
今日の 802.11n デバイスの多くが対応する 20 MHz と 40 MHz のチャンネル帯域幅に加え、802.11ac のドラフト仕様には、80 MHz の連続
的な必須チャンネル帯域幅が含まれています。
この広い帯域幅の主な利点は、チップセット製造業者側でのコストをほとんど増加させる
ことなく、PHY レートが事実上 802.11n の倍になることです。80 MHz の連続的な帯域幅モードを使用することにより、データ転送速度や
スループットが向上するだけでなく、
システム効率も向上し、データ転送をより高速に行えるため、現在の 802.11n 仕様が対応していない
新しい用途にも対応可能になります。
さらに802.11ac 仕様には、連続または非連続のどちらも可能な 160 MHz チャンネルのオプション帯域幅 (80+80 MHz) が組み込まれ
ています。非連続の場合は周波数スペクトルが 2 つのセグメントで構成され、その各セグメントは、おそらくは周波数が隣接していな
い 802.11ac の 80 MHz チャンネルのうち 2 つを使用して伝送されます。40/80 MHz での伝送と比較すると、160 MHz のPHY 伝送には要件
の複雑性(MIMO の順序、MCS など)が低くなるというメリットがあり、
これによってデバイスはGbpsレベルの無線スループットを達成して
より多くの用途を可能にします。
しかし 5 GHz 帯域では、全世界で160 MHz の帯域幅を利用できるわけではなく、
この機能に対応する機
能の実装はコスト上昇につながることが多いため、802.11ac デバイスではこの機能をオプションにすることになっています。
新しい変調符号化方式 (MCS) 802.11ac では、802.11n OFDM(直交周波数分割多重)変調、インターリーブ、符号化アーキテクチャを使用します。具体的に
は、802.11ac と 802.11n のどちらも BPSK、QPSK、16QAM、64QAM の各変調に対応するデバイスが必要となりますが、802.11n仕様と比較
すると、主に 2 つの違いがあります。
まず802.11ac では、改善されたコンスタレーション(信号点配置)が使えるようになり、具体的には 802.11ac の 80 MHz と 160 MHz の両方の
伝送に使用可能なオプションの 256QAM(3/4 と 5/6 の符号化率)が用意されています。256QAM の利点は、64QAM 伝送よりも 33% 高いス
ループットが実現することです。一方で、このスループット増加により、損失の多い信号環境におけるビットエラーの許容値が低くなるという
デメリットもあります。256QAM 変調は、以下のような理由によって必須モードではなくオプションモードとして追加されました。
•
設計に柔軟性を与える •
高変調を必要としない用途に対する実装コストを低くする •
以下の点で 256QAM モードの厳しい要件に対応できないデバイスにおいて、802.11ac が採用されやすいようにする - EVM(エラー ベクトル マグニチュード)
- SNR(信号対雑音比)
- PAPR(ピーク対平均電力比)
802.11n に対する 2 つ目の違いは、定義される MCS インデックスの数が大きく減少していることです。802.11ac ではシングルユーザー MCS が10個 (0 ~ 9) だけしか定義されておらず、802.11n での MCS インデックス77個よりもずっと少なくなっています。
•
•
802.11n では、シングルユーザーが 1 つのストリームで BPSK 変調信号を受信し、別のストリームで 16QAM 変調信号を受信するなど、
「不均一な」変調に対応するために77 個のMCS インデックスが必要でした。
802.11ac では、均一変調にのみ対応します。TGacは、不均一変調への対応を終了することにしました。
これはこの機能が市場には受け入
れられないことがわかったためです
(これに対応した 802.11n デバイスは実際にごくわずか)
。
また、802.11ac の追加チャンネル帯域幅変
調オプションを考えると、考えられる可能性の数(MCS インデックスの数)は非現実的となります。
IEEE 802.11ac:テストにおける意味
4
後方互換性 802.11ac では、5 GHz 帯域で動作する802.11a と 802.11n のデバイスとの後方互換性が実現しています。
これは以下を意味します。
•
802.11ac は、802.11a や 802.11n に対応するデバイスと相互に動作 •
802.11ac フレーム構造は、802.11a や 802.11n のデバイスとの伝送に対応可能 802.11ac の後方互換性は、802.11n 以上のデータ転送速度を持ちながら既存の WLAN デバイスには対応しない他の革新的な技
術(802.11ad など)と比べて、確実なメリットとなります。後方互換性は市場での受け入れを簡単にし、802.11ac デバイスを既存
の WLAN ネットワークにシームレスに導入できることを確実にします。
共存 TGacにおける重要な作業課題は、5 GHz 帯域で 802.11a や 802.11n を使用する既存ネットワークと共存するメカニズムを設計することで
す。
こういったメカニズムの例としては、
クリアチャンネル評価 (CCA)、チャンネルアクセス公平性、
スキャン、チャンネル選択メカニズムな
どがあります。
また共存メカニズムは、さまざまなチャンネル帯域幅(20/40/80MHz、最大160 MHz) を持つ 802.11ac の相互運用を確実
にする目的でも定義されています。
複数の空間ストリーム 802.11n が 4 個の空間ストリームに対応しているのに対し、802.11ac では最大 8個に対応します。802.11n の場合と同様に、同じ周波数に
おける複数のデータストリームの空間多重化では、独立した空間パスによって実現する特別な自由度を利用してチャンネル容量を効果
的に増加させます。
ストリームはチャンネル通過時に組み合わされ、それを分けて復号することがレシーバーでの処理になります。
この
手法は複雑であるにも関わらず、802.11n デバイスの製造業者は、複数アンテナ間の独立したパスを最大限に使用するための手法を既
に確立しているため、現在ではこの手法を 802.11ac デバイスの製造に効果的に適用できるようになっています。最初の 802.11ac シリコ
ンは、複数の空間ストリームを使用することになると予想されます。
ビームフォーミングとマルチユーザー MIMO 802.11n において、WiFiデバイスの製造業者はビームフォーミングを使用するようになりました。
これは、RF エネルギーを特定方向に集
中させて個々のステーションへの供給を改善する機能です。802.11ac はこの技術に基づいて構築されており、
シングル形式のサウンディ
ングやフィードバックのフォーマットなどが改善されています(802.11nでは複数)。
802.11ac でさらに重要なのは、TGacが802.11n のビームフォーミング機能に基づいて同じチャンネル、複数のアンテナ、空間多重化を使
用して同時に異なる方向で複数のクライアントデバイスと通信できるアクセスポイント (AP) を可能にする、新しいメカニズムを構築した
ことです。たとえば、8個のアンテナがある AP は、物理的に離れている 2 台のステーションに対して同時に 4x4 MIMO を使用できる可能性
があります。一方今日の MIMO デバイスでは、各端末に接続されている複数のアンテナに対し、ポイントツーポイントのアクセスしか実行
できません。
このため、AP は時分割多重によって複数のクライアントに対応しなければなりません。
この高度なメカニズムはマルチユーザー MIMO (MU-MIMO) と呼ばれ、最新の 802.11 規格の効率(スペクトルのメガヘルツ毎に伝送さ
れるメガビット数:Mbps/MHz)向上のためにTGacが現在構想段階においている最も関心の高い改善項目の 1 つです。
MU-MIMO は、Ethernet スイッチ機能の基礎を利用して競合を減らしているとも言えます。つまり、現在一般的な有線 Ethernet ネットワー
クが動作する方法と似た方法で、AP がステーションに専用の帯域幅のある
「スイッチ型」WiFiを提供できるように伝送ビームフォーミン
グ技術を拡大活用しているのです。
MU-MIMOに期待される利点は数多く、魅力的ではありますが、
この技術の正しい利用には、チップセットの設計者や製造業者がクライア
ントの空間意識を向上させ、
また条件がそろった際に複数のクライアントへの伝送機会を利用できる洗練された待ち行列システムが必
要になります。言い換えれば、
システム能力の増加は、
より高価な信号処理機能や複雑性の上昇なしにはありえないということです。
この
ためMU-MIMO(送信デバイスが 1 台、受信デバイスが複数台)は、オプションモードとしてのみ 802.11ac ドラフト仕様に組み込まれてい
ます。
IEEE 802.11ac:テストにおける意味
5
エネルギー効率 この技術の最初の修正版が批准された以降も、マイクロジュール当たりのビット数として表記される 802.11 規格のエネルギー効率が
向上し続けているということはほとんど知られていません。具体的には、図 3 に示すように既存の 802.11n と比べて802.11ac ではエネ
ルギー効率が倍になることが期待されています。
この改善は、他のパラメータすべて
(RF 周波数、電力、帯域幅)を定数とした場合に、伝
送のデータ転送速度を向上させるための各修正版によって導入された複数の改善策によるものです。
この傾向はあまり知られていませんが、エネルギー効率の向上は、小型バッテリーと限られた電力で無線通信を行わなければならない、
増加するWiFi搭載ポータブルデバイスに確実に多くのメリットをもたらします。
1,600
802.11ac
(1x1)
エネルギー効率 (マイクロジュール当たりのビット数)
1,400
図 3: 802.11 の前規格より優れた エネルギー効率を持つ802.11ac 1,200
1,000
800
802.11n
(1x1)
600
400
802.11 a/g
200
0
0
100
200
300
Data Rate (bps)
市場予測 802.11n に対応するワイヤレス デバイスの数は過去数年間で急拡大しており、
この成長は今後も続くものと予想されています。
また、以前
の規格 (802.11a/b/g) を使用していたデバイスに、
より新しい技術が採用されているだけでなく、
これまでこのような機能を搭載していな
かったデバイスにも無線技術がますます導入されるようになっています。
2012 年には、スマートフォン、
タブレット、PC、ルーター/アクセス ポイント、インターネット アクセス デバイス、車載インフォテイメント、
多種多様な家電製品など、14 億台以上の WiFi 搭載デバイスが出荷されました(出典:IDC、HIS、Gartner、2013 年 3 月)。WiFi IC の利用数
は、2013 年には 25% 以上伸び、18 億個以上になると予想されています。
この出荷数のうち、
スマートフォンやタブレットが大部分を占め
ています(58% 以上)。インストール ベースでの「モノのインターネット」デバイス数が 2020 年までに 300 億から 500 億台に拡大し、そのう
ち多くが WiFi 対応となるという推測もあります。
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6
現在のデバイスにおける 802.11n に代わるものとなる 802.11ac 規格は、
これまでの 802.11n を取り巻く状況と同様に、
新しい用途にドアを開
くことによってこの成長に間違いなく大きく貢献します。最初の 802.11ac 対応チップの出荷は 2012 年始めに始まり、
エンドユーザー製品は
同年の第 3 四半期には市場に登場しました。
しかし、実際に802.11ac の影響が感じられるのは恐らく 2014 年以降になるでしょう。2015 年に
は、802.11ac を装備したモバイル機器の出荷台数は 10 億台近くになり
(図 4)
、
その年の WLAN 市場全体のほぼ半数を占めるようになること
が予想されます。
SISO/MIMO 802.11ac 市場全体規模
1000.0
図 4: 802.11ac 対応デバイス出荷台数の 世界市場予測 出荷数 (百万)
800.0
600.0
400.0
200.0
0.0
仕様 2010
2011
2012
2013
2014
2015
Year
既に述べたように802.11ac PHY は、802.11n に使用されている、
よく知られた OFDM PHY をベースにして構築されており、802.11ac の目
標を達成するために複数の重要な修正がなされています。表 1 は、802.11ac と 802.11n の技術仕様を要約したものですが、その説明は
以下に記載します。
この後説明するように、
この違いの中には 802.11ac 対応デバイスの機能確認に必要なテスト装置の要件に大きな影響を及ぼすものが
あります。
このトピックは、本書後半のテーマとなります。
表 1: 802.11ac と 802.11n の技術仕様の比較 技術仕様 802.11n 802.11ac 周波数 2.4、4.9、5 GHz 5 GHz 変調方式 OFDM OFDM チャンネル帯域幅 20, 40 MHz 公称データ転送速度、
シングルストリーム 最大 150 Mbps (1x1、40 MHz) 最大 433 Mbps (1x1、80 MHz) 最大 867 Mbps (1x1、160 MHz) 総公称データ転送速度、 マルチストリーム 最大 600 Mbps (4x4、40 MHz) 最大 1.73 Gbps (4x4、80 MHz) 最大 3.47 Gbps (4x4、160 MHz) 1.5時間の HD をストリーミングする時間 30 分以内 (4x4、40 MHz) 15 分以内 (4x4、80 MHz) スペクトル効率 15 bps/Hz (4x4、40 MHz) 21.665 bps/Hz (4x4、80 MHz) EIRP 22-36 dBm 22-29 dBm 範囲 12-70 m(屋内)
12-35 m(屋内)
壁越し Y Y 見通し外接続 Y Y 世界各国での利用可能性 Y Y 中国では制限あり 20、40、80 MHz (オプションで160 MHz) IEEE 802.11ac:テストにおける意味
7
チャンネル 図 5 は、20 MHz、40 MHz、80 MHz、および連続した 160 MHz のチャンネル帯域幅で動作するための802.11ac デバイスのスペクトラル マ
スク仕様を説明したものです。重要なのは、最も幅の広いチャンネルが 240 MHz という幅広い周波数範囲を占めることです。後述するよ
うに、
このためには製造業者がデバイスのテスト装置を慎重に選定し、デバイスに対してまたはデバイスから 802.11ac 信号を確実に送
受信できるようにする必要があります。
限られたスペクトルの利用可能性と、設計やテストの課題が大きいことを考慮して、160 MHz のチャンネルは現在入手可能な 802.11ac ド
ラフト仕様 (D1.1)では「オプション」
として規定されています。
0 dBr
-20 dBr
-28 dBr
-40 dBr
ƒ1 ƒ2
ƒ3
ƒ4
チャンネル サイズ ƒ1 ƒ2 ƒ3 ƒ4 20 MHz 9 MHz 11 MHz 20 MHz 30 MHz 40 MHz 19 MHz 21 MHz 40 MHz 60 MHz 80 MHz 39 MHz 41 MHz 80 MHz 120 MHz 160 MHz 79 MHz 81 MHz 160 MHz 240 MHz
図 5: 20MHz、
40MHz、
80 MHz、
連続した 160 MHz チャンネルのスペクトラル マスク 連続した 160 MHz チャンネルの他に、TGacでは、隣接しない 2 つの 80 MHz チャンネルを使用する非連続 160 MHz チャンネルもオプショ
ンとして規定しています。チャンネルの適切なスペクトラル マスクの作成には、以下のようなステップが必要です。
1. 80 MHz のスペクトラル マスクを、2 つの 80 MHz セグメント上にそれぞれ配置 2. 2つの 80 MHz チャンネルのマスク両方の値が -20 dBrと -40 dBrの間になる場合、
• 結果のマスク値は、
線形領域における 2 つのマスク値の和 3. どちらのマスクの値も 0 dBrと -20 dBrの間にならない場合、
• 結果のマスク値は、
2 つのマスクのうち値の大きい方 4. それ以外のすべての周波数領域では、
• 結果のマスク値は、
定義されたマスク値に一番近い 2 つの周波数ポイントの間にある dB 領域における線形補間 IEEE 802.11ac:テストにおける意味
8
PSD
0 dBr
図 6 は、2 つの 80 MHz チャンネルの中央
周 波 数 が 1 6 0 M H z で 分 か れる 2 つ
の 80 MHz チャンネルを使用した非連続送
信の伝送スペクトラル マスクの例です。
-20 dBr
-25 dBr
-28 dBr
図 6: 802.11ac の160 MHz 非連続チャンネルの例 -40 dBr
図 7 は、802.11ac の運用における、現在の
スペクトル利用可能性を地域別に表した
ものです。利用可能性はアメリカで一番
高く、80 MHz チャンネルは 5 つ、160 MHz チャンネルは 2 つあります。それに続くの
がヨーロッパと日本で、一番高い周波数
の 80 MHz チャンネルが足りないだけとな
っています。インドおよび中国では、利用
できるスペクトルの空きが少ないため、利
用可能性はほぼ半分となっています。
80
119
121
160
5170
MHz
アメリカ
IEEE チャンネル番号
Freq [MHz]
200
5330
MHz
5490
MHz
5730
MHz
5735
MHz
5835
MHz
149
153
157
161
165
41
20 MHz
40 MHz
80 MHz
160 MHz
5170
MHz
ヨーロッパと
日本
IEEE チャンネル番号
5330
MHz
5490
MHz
5710
MHz
20 MHz
40 MHz
80 MHz*
160 MHz*
5170
MHz
インド
IEEE チャンネル番号
5330
MHz
5735
MHz
5835
MHz
149
153
157
161
165
チャネライゼーション 既 に 述 べ たように 、8 0 2 . 1 1 a c の 利 用
を 5 G H z R F 帯 域 の み に 制 限し た の
は、802.11ac のチャンネル帯域幅要件が
広く、混雑した 2.4 GHz 帯域ではチャンネ
ル レイアウトが難しいことが主な理由で
した。ただし5 GHz のスペクトルにおいて
も、80 MHz と 160 MHz チャンネルの利用
可能性は一部の領域では多少制限されて
います。
39
20 MHz
40 MHz
80 MHz
160 MHz
5170
MHz
中国
IEEE チャンネル番号
5330
MHz
5735
MHz
5835
MHz
149
153
157
161
165
-39
100
104
108
112
116
120
124
128
132
136
140
144
-41
100
104
108
112
116
120
124
128
132
136
140
-80
36
40
44
48
52
56
60
64
-119
36
40
44
48
52
56
60
64
-121
36
40
44
48
52
56
60
64
-160
36
40
44
48
52
56
60
64
-200
20 MHz
40 MHz
図 7: 802.11ac 運用における現在のスペクトル
の利用可能性
(地域市場別)
80 MHz
IEEE 802.11ac:テストにおける意味
9
コンスタレーション マッピング 通信システム内のデータ転送速度やスペクトル効率を向上させる 1 つの手法としては、高次のコンスタレーションに移行し、記号当たり
のビット数をより多く伝送する方法がありますが、
コンスタレーションの平均エネルギーが同じでなければならない場合には信号点同士
が相互に近づくため、
ノイズやその他のデータ破損の影響を受けやすくなります。
最近では、チップの製造技術と処理能力の両方の進歩により、同じ量のデータに対してより少ないチェック ビットを使用する積極的なエ
ラー訂正符号をはじめ、受信信号のさらに微妙な違いに依存する、
より感度の高い符号化技術が使用できるようになりました。
こういっ
た進歩が、802.11ac におけるオプションの 256QAM コンスタレーション マッピングの採用を後押ししました。802.11n 規格で定義されて
いる64QAM コンスタレーション マッピングは、802.11ac デバイスでも必須となります。
16
64
16
64
16
64
16
64 QAMの理想的なコンスタレーション
64
図 8: 802.11ac 規格には、
ノイズや干渉に対す
る耐 久 性を犠 牲 にして、6 4 Q A M(左:各 象 限
に 16 ビット)の配列より早いデータ転送速度と
より高いスペクトル効率が実現する 256QAM (右:各象限に 64 ビット)に対応するオプション
の配列ビット符号化の定義が含まれます。
Ideal 256QAMの理想的なコンスタレーション
MCS 既に述べたように、802.11acにおける MCA の数は 802.11n と比較して大きく減少しています。表 2 は、802.11ac のシングルユーザー MCS インデックスと、
それに対応する変調符号化率を表したものです。
表 2: 802.11ac シングルユーザーの MCS インデックス MCS 変調 符号化率 0
BPSK 1/2 1
QPSK 1/2 2
QPSK 3/4 3
16-QAM 1/2 4
16-QAM 3/4 5
64-QAM 2/3 6
64-QAM 3/4 7
64-QAM 5/6 8
256-QAM 3/4 9
256-QAM 5/6 IEEE 802.11ac:テストにおける意味
10
送信機コンスタレーション エラー 送信機コンスタレーション エラーは、相対的な配列 RMS エラーとして定義され、
まずサブキャリア、周波数セグメント、OFDMフレーム、空間ストリームを平均して
計算されます。最新の 802.11ac ドラフトでは、伝送される信号が、フレーム当た
り 16 個の記号を持つ 19 以上のフレームで構成され、任意のデータが含まれている
と仮定して、表 3 にしたがってこの値が、データ転送速度に依存する値を超えないよ
うに規定しています (送信機のコンスタレーション エラー要件は、信号帯域幅に関
わらず同じ)。
より高い変調、つまり 256QAM モードの導入では、802.11ac 送信機が既存
の 802.11n 送信機に要求されていたよりも大幅に高い精度(低いコンスタレーショ
ン エラー)で動作する必要があります。正確に言えば、オプションの 256QAM を使
用して動作するデバイスにおけるコンスタレーション エラーは、-32 dB となる必要
があります。
この要件は、802.11ac デバイスの設計者や製造業者にとって大きな課
題となるだけでなく、後で説明するように、送信機のパフォーマンスの確認に使用
するテスト装置のパフォーマンスにも明らかな影響を及ぼします。
用途 802.11ac が対応するシングルリンクおよびマルチステーションの機能向上により、
一般的な WLAN 用途におけるパフォーマンスやユーザー環境が改善し、特に以下
の市場分野においては、新しい複数の用途が実現します。
•
アクセス ポイント •
ホーム エンターテイメント •
ポータブル コンピューター •
PC 周辺機器 •
携帯電話 •
モバイル エンターテイメント 表 3: データ転送速度に依存する 802.11ac デバイスの
最大送信機コンスタレーション エラー 変調 符号化率 相対的なコン スタレーション エラー (dB) BPSK 1/2 -5
QPSK 1/2 -10
QPSK 3/4 -13
16-QAM 1/2 -16
16-QAM 3/4 -19
64-QAM 2/3 -22
64-QAM 3/4 -25
64-QAM 5/6 -28
256-QAM 3/4 -30
256-QAM 5/6 -32
アクセス ポイント アクセス ポイント (AP) は、改善された 802.11ac のMIMO 機能を使用して家庭用または業務用の WLAN ネットワーク能力を効果的
に向上させます。改善されたマルチストリーム技術と新しい MU-MIMO 機能により、802.11ac がネットワーク性能を大きく拡大し、ま
た家庭内で使用される多くの各種無線対応デバイスに接続するという AP のニーズに、
より効果的に対応することは間違いありませ
ん。AP は、2012 年後期に市場に出荷される初の MIMO 802.11ac 対応製品の 1 つとなりました。
ホーム エンターテイメント 802.11ac を、テレビ、セットトップボックス、ネットワーク対応ゲーム機で使用することにより、家庭内に設置された複数のクライアント
に、HDTV や HD ビデオの同時ストリーミングなど、各種のコンテンツを配信することができます。
こういったデバイスや用途は、モバイル
機器に見られるようなスペースや電力に関する一般的な制約をあまり受けないため、新たに MIMO 技術(最大 4x4 の MIMO 以上)
で改善
された 802.11ac の最適な用途となります。
モバイル エンターテイメント 802.11ac の向上したデータ転送速度とエネルギー効率は、音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、無線対応のカメラやビデオカメラなど、モバ
イル エンターテイメント デバイスの用途に最適です。802.11ac は、
このようなデバイスにおいて制限されている電力の消費をほとんど増
加させることがないため、デバイスと、パーソナル コンピューター (PC) やタブレットとの間で大きなデータファイルを高速同期したりバッ
クアップしたりすることなどが可能になります。電力消費と物理的なスペースの両方の制限により、
こういったデバイスの第一世代はおそ
らく SISO または 2 x 2 MIMO 802.11ac チップセットのみを使用することになるでしょう。
IEEE 802.11ac:テストにおける意味
11
ポータブル コンピューター PC、
ノートパソコン、スレート、
タブレットなどのポータブル コンピューティング デバイスは、明らかに 802.11ac の理想的な対象となり
ます。
これらのデバイスが対応する無線機器数の増加と、ユーザーによる接続環境の高速化の需要の高まりが、802.11ac 採用の重要
な要素となります。ポータブル コンピューティング デバイスでは、既に述べたように 802.11ac を使用して他の 802.11ac 対応デバイス
との大きなデータファイルの高速同期やバックアップを行ったり、HDビデオやその他のコンテンツのストリーミングを行ったりできる
ようになります。
PC 周辺機器 802.11ac の向上したスループットにより、将来、ポータブル コンピューティング デバイスと周辺機器との有線接続を無線リンクに置き換
えることができるかもしれません。期待される用途としてはたとえば、
ノートパソコンのワイヤレス ディスプレイがあります。
このような用
途に必要な超高速スループットを実現するには、デバイス製造業者がそのデバイスの形状における MIMO 802.11ac 技術の採用に関す
る課題を克服しなければなりません。
携帯電話 携帯電話、特にスマートフォンで802.11ac を使用してモバイル エンターテイメント デバイスやポータブル コンピューティング デバイスと
通信することにより、大きなデータ ファイルの高速同期や、一般的には、高速データ転送に対して拡大するユーザーの需要に対応できま
す。
このようなデバイスでは高スループットが必要となりますが、一般的にはサイズが小さく、電力消費にも制限があるため、802.11ac は
おそらくシングルストリームでのみ導入されることになります。初の 802.11ac 対応スマートフォンは、2013 年始めに発表されました。
代表的な 802.11ac 構成 表 4 は、AP と別の802.11ac 対応ネットワーク クライアント デバイス (STA) との間の 802.11ac 構成を表したものです。
ここでは、PHY リンク
データレートと総データ レートについて、256QAM、符号化率 5/6、
ショート ガード インターバル (400 ns) と仮定しています。
表 4: 802.11ac の構成例
(すべての変調方式は 256QAM、
符号化率 5/6と仮定)
構成 典型的なクライアント (STA) の形状 PHY リンクデータレート 総データレート アンテナが 1 本の AP、 アンテナが 1 本の STA、80MHz 携帯電話、 モバイル エンターテイメント デバイス 433 Mbit/s 433 Mbit/s アンテナが 2 本の AP、 アンテナが 2 本の STA、80MHz タブレット、
ノートパソコン、 ネットワーク対応ゲーム機 867 Mbit/s 867 Mbit/s アンテナが 1 本の AP、 アンテナが 1 本の STA、160MHz 携帯電話、 モバイル エンターテイメント デバイス 867 Mbit/s 867 Mbit/s アンテナが 2 本の AP、 アンテナが 2 本の STA、160MHz タブレット、
ノートパソコン、 ネットワーク対応ゲーム機 1.73 Gbit/s 1.73 Gbit/s アンテナが 4 本の AP、 アンテナが 1 本の STA 4 台、160MHz (MU-MIMO) 携帯電話、 モバイル エンターテイメント デバイス 各 STA に対し867 Mbit/s 3.47 Gbit/s アンテナが 8 本の AP、160MHz (MU-MIMO) • アンテナが 4 本の STA 1 台 • アンテナが 2 本の STA 1 台 • アンテナが 1 本の STA 2 台 テレビ、セットトップボックス、
タブレット、 ノートパソコン、ネットワーク対応ゲーム機、
携帯電話 アンテナが 4 本の STAに対して3.47 Gbit/s アンテナが 2 本の STAに対して1.73 Gbit/s アンテナが 1 本の STAに対して867 Mbit/s 6.93 Gbit/s アンテナが 8 本の AP、 アンテナが 2 本の STA 4 台、160MHz (MU-MIMO) テレビ、セットトップボックス、
タブレット、 ノートパソコン、PC 各 STA に対し1.73 Gbit/s 6.93 Gbit/s IEEE 802.11ac:テストにおける意味
12
802.11ac のテスト 当然のことながら、802.11ac での 802.11n からの重要な変更点は、802.11ac デバイスの設計者や製造業者にとってはいくつかの意味で
チャレンジとなります。空間ストリームが 8 個で帯域幅の広い設計を扱わなければならないだけでなく、重要なテスト課題にも直面する
ことになります。具体的には、最新の 802.11 規格と共に進化できるような十分な柔軟性を持つテスト装置が必要となり、最低でも、新し
い 802.11ac デバイスをテストするために選定するテスト装置には、必ず以下が必要となります。
•
広い VSA/VSG IF 帯域幅 •
802.11ac MIMO改善点への完全対応 •
802.11ac 送信機変調テストにおいて改善された変調精度 VSA/VSG IF 帯域幅 802.11ac では帯域幅が拡大しているため、テストにおいては新しい大きな課題となります。ベクトル信号アナライザーとベクトル信号
ジェネレーター (VSA/VSG) を 1 つのボックス内に組み合わせた多くのテスト装置では、新しい技術の 80 MHz や 160 MHz のチャンネルの
テストに必要な 120 MHz や 240 MHz IF の帯域幅を使用できないため、802.11ac に関しては、
このようなテスト装置の多くが事実上時代
遅れとなります。今日 802.11 テスト用の装置を選ぶ際、デバイス製造業者は、その装置が非常に広い 802.11ac のスペクトル マスクをテス
トできることを確認しなければなりません。
802.11ac MIMO の改善点への対応 802.11ac では、帯域幅だけでなく、MIMO テスト要件も課題となります。適切なMIMO テストには、最大 8 個の空間ストリームとその他複
数の改善点を使用し、既存の 802.11n MIMO システムを上回るパフォーマンスを実現する 802.11ac デバイスの信号に対して、独立した
キャプチャと生成が必要になります。
MIMO のパフォーマンスを特に研究開発環境で正確に確認するためには、802.11acのテスト装置が、新しい 802.11ac MIMO 改善点への
対応をはじめ、最大 8 つの独立した VSA リソースと VSG リソースに対応している必要があります。
改善された VSA/VSG EVM 802.11ac 送信機の変調精度(相対的な配列 RMS エラー)の要件が厳しくなるにしたがって、その送信機をテストするための装置の要件
も厳しくなります。送信機の変調精度は EVM(エラー ベクトル マグニチュード)
で測定し、キャプチャされた信号の歪みが無視できる程度
(理想的にはゼロ)になるVSA およびテスト装置が必要です。VSA によって付加される歪みも EVM で測定されますが、一般的にチップ
セット製造業者では、
シリコンの仕様よりも 10 dB 以上優れたパフォーマンスをテスト装置に期待します。
これは、802.11ac 対応のテスト
装置に関して、VSAのEVM に対する以下のような最大要件を意味します。
デバイスの最大 EVM(256QAM で-32 dB)− 10 dB = -42 dB デバイス製造業者は、
この性能を満たすテスト装置を選択しなければなりません。
IEEE 802.11ac:テストにおける意味
13
終わりに 802.11ac は、WLAN 通信システムにおける大きな進化を意味します。802.11ac デバイスは 802.11n と同様に OFDM 変調原理を利用しま
すが、
より広いチャンネル帯域幅、
より高い変調、
より多くのストリーム、向上した MIMO 技術を使用してスループットを向上させ、
より高速
の新しい用途を可能にします。802.11ac 対応デバイスの設計者や製造業者は、製品を製造するためだけではなく、テスト装置がパフォー
マンスを正確にテストするという、
ますます厳しくなる課題に確実に取り組めるよう、
この新しい技術の要件を理解する必要があります。
802.11ac テストの詳細については、
ライトポイント・コーポレーション (team-jp@litepoint.com) までお問い合わせください。
付録 I:参考資料 802.11ac 文書 •
IEEE P802.11ac/D1.1:修正版 5:6 GHz 未満の帯域における超高スループットに関する改善点 プロジェクト IEEE 802.11acのステータス •
http://www.ieee802.org/11/Reports/tgac_update.htm IEEE 802 プロジェクトの公式タイムライン •
http://www.ieee802.org/11/Reports/802.11_Timelines.htm 付録 II:気になる話 なぜ「ac」なのか? 名前は「ag」
となるはずでしたが、802.11a/g との混同を避けるためにagとはなりませんでした。
IEEE 802.11ac:テストにおける意味
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