2002年5月発行

SEMINAR
セミナー
「メキシコ中小企業振興コース」を実施
メキシコは31州と1連邦区からなる合衆国で面積は日本の5倍強、1億の人口はスペ
イン語国としては最大級である。日本とメキシコは長く友好関係を保ってきた。日本が
開国後、初の平等条約を結んだ相手国はメキシコであるし
(日墨修好通商条約1888
PREX
NOW
年)
、
その後多くの日系移民も渡墨し、今なお15,000人の日系人が暮らしている。
メキシコは北米自由貿易協定(NAFTA)の構成国であり、更にヨーロッパ諸国や中
南米諸国とも自由貿易協定を結んでおり、比較的安価な労働力と、アメリカ合衆国に
国境を接する利点により、外国からの投資が盛んである。しかし投資はアメリカとのア
クセスが比較的良好な北部の州やもともと経済的に進んでいる大都市周辺の地域に
偏り、投資の少ない地域との間に
経済格差が広がり南北問題が存在
する。また、各州の中でも貧富の差
は極めて大きい。身代金目当ての
誘拐事件も年間2,500件以上とい
われるほど多発し、麻薬問題等、貧
114
困がもたらす様々な社会問題が発
生している。
京都府中小企業総合センターを訪問
No.
May
2002
メキシコの中小企業振興に向けての取組みを支援
メキシコでは近年、
広範囲での所得の向上、
失業率の低下、
地域の経済発展の切り札
として、中小企業の振興が注目されている。日本もその動きを積極的に支援し、中小企
財団法人 太平洋人材交流センター
Pacific Resource Exchange Center
contents
page 1 ●セミナー
「メキシコ中小企業振興コース」を実施
page 2∼3 ●セミナー
業振興を中心とした様々な取組みを伝えることになった。今回実施したコースはその
第1回目として、PREXが国際協力事業団(JICA)の委託を受け、企画したものである。
来日したのはメキシコの各州政府や連邦政府の各州支局で地域の中小企業振興を担
当する部長クラスの職員9名。全体4週間の日程のうち、PREXが担当したのは2月12日
から3月1日までの3週間。全員が異なる州からの来訪で、
メキシコ湾岸の南国のフルーツ
が主産品の州から、
メキシコシティーに隣接する比較的進んだ州までバリエーションに富
西アフリカ9カ国が
んだ州が集まった。農産品の加工による高付加価値化や、
伝統工芸品をはじめとする手
自国の中小企業政策を検討
工業の振興など、多様な関心に対応するため、京都・大阪で一般的な中小企業振興に
page 4 ●特集【各国研修員からのメッセージ】
中国 李 学栄(リシュエ ロン)
さん
page 5 ●PREX役員、常任幹事のひとこと
経営雑感
PREX理事長 柴田 稔
page 6 ●PREXだより
ついて学んだほか、第2週目には九州へ移動。別府に滞在しながら大分県各地で一村
一品運動に関わる活動に接し、
その後久留米で地場産業振興の取組みを学んだ。
研修員は、時間の使い方がややおおらかな面があったり、
まとまって行動するよりも自
由に行動することを好み、同行のスタッフが少々ひやりとすることもあった。
しかし何より
事務局ニュース
印象的であったことは、研修員の円満な人柄であった。中には局長クラスの肩書きを持
人の動き
つ研修員もいたが、筆者のような若手スタッフにも常に情のこもった、配慮あふれる態度
で接し、研修員の間も常に和やかで、楽しげな雰囲気を保っていた。おそらくこれが彼
らの良き文化なのであろう。彼らが帰国後も活躍し、
メキシコの発展に力を発揮するよう
祈りたい。
─国際交流2部 課長代理 植田 真哉
お世話になった企業・団体他(訪問順・敬称略、本文中記載分は除く)
龍谷大学経済学部 松岡教授、京都府商工部、京都府中小企業総合センター、大阪商工会議所、大蔵特別経営
指導員、大分県国際交流センター、大分大山町農業協同組合、別府市竹細工伝統産業会館、二階堂酒造、湯布
院町役場、大分県企画文化部、大分スポパーク21、大分県農水産物加工総合指導センター、大分県きのこ研究
指導センター、大分農業文化公園、安心院町役場、久留米地域地場産業振興センター、井上らんたい漆器、栗木
商店、京都産業21、関西TLO、京都リサーチパーク、木田商事
No.114 May 2002 PREX NOW 1
セミナー
西アフリカ9カ国が自国の中小企業政策を検討
MALI
PREXは国際協力事業団(JICA)大阪
NIGER
SENEGAL
国際センターより委託を受け2月18日から
GUINEABISSAU
3月8日までの3週間「仏語圏アフリカ中小
企業政策セミナー」を実施した。対象は西
GUINEA
BURKINA
FASO
COTE
D´IVOIRE
アフリカ9カ国の中小企業政策を担当す
る省庁の幹部行政官と中小企業を経営
BENIN
TOGO
する民間企業、職業団体の幹部職員で計
15名の参加であった。
(国名は地図をご
9カ国は国情も様々だが
参照下さい)
よくみると顔も様々
ているのかと思っていたらフランス語の堪
でも、工業化、市場規模、政情、国民性に
能な大林教授が教えてくれた。
「我々の国
大きな違いや差があることが分かった。し
「このコースは日本から何かを教えると
ではこれがないんだからどうしようもない…
かし逆にそうした「違い」ゆえに違った見
いうものではありません」とは龍谷大学大
と言ってますよ」これとは目下に広がるビ
方ができたり、過去に異なる経験を積んで
林教授による初日のコメント。
「研修員相
ルや道路、つまり整備されたインフラとその
いることで、
意見交換が有効に展開したと
互、
また日本人側と共に考え互いに学び
ための資金のことである。
言える。
もともと話好きな人達ということもあ
日本から教えるのではなく互いに学ぶ場
合う場と期待しています」これは研修員だ
「何をするにも元手がない状態である」
ってか、討論会はいつも活発で(そしてい
けでなく、事務局をも含む日本人側への
「以前あった日本からの基金を再開して
確認でもあった。同教授はアフリカ経済の
貰いたい」
「このコースのフォローアップとし
専門家で、本研修のメイン講師、研修実施
ての会合を象牙海岸で開きたい。JICAに
に先立ってJICAから派遣された事前調
援助してもらえないか?」研修員達は度あ
査団を統括された方でもある。研修カリキ
るごとに自国の財政的問題を口にした。
度よりスタートした新規案件。JICAでも同
ュラム作りはまず事前調査の報告書を基
また民間代表の参加者は研修の合間を
地域に特化した中小企業分野の研修は
にスタートした。
「中小企業政策セミナー」
縫って、自らの仕事や所属団体のための
初の試みとして注目されての第一回目で
と聞くと、
日本の戦後のきめ細かい中小企
情報収集に精を出している。
「うちに投資
あった。最終日には研修員から「国の将
業支援施策を「体系だった優れた例」と紹
してくれるところはないか?」
「助成制度を
来に希望が見えた」との嬉しいコメントも出
介するように思われがちだが、報告書によ
知らないか?」研修の主目的ではないこと
たが、
彼らは今回の成果をどう自国に持ち
ると、
それは意味がないだろうとのこと。西
は理解しつつも必死な姿にはその背後に
帰ってくれるだろうか。
アフリカの現在の中小企業政策環境は過
ある現状が伺えた。
しかし、資金があれば
西アフリカというと地理的な遠さと馴染
去の日本のものと大きく異なる上、行政の
全て解決するわけではないのが更に問題
みの薄さで、日本に出来ることなんてある
制度能力や現在進めている世銀・IMF路
である。
のだろうか? とも思っていたが、本研修を
線の構造調整政策を考えても行政主導で
あった日本の過去の経験がそのまま適用
中小企業環境の違いから
つも時間不足だったが)
「互いに学ぶ場」
として有効に機能していると感じた。
本研修は現地からの要望に基づき今年
担当してみて、今では日本が貢献できる
分野もあるはずだと思う。
また同時にアフリ
できるとは考えにくい。むしろ西アフリカに
西アフリカと日本では確かに相違点が
カの援助には多々議論がある事実も知っ
求められているのは産業構造転換以降の
多く、研修中はそれを感じる場面も多かっ
た。2003年後半には第3回アフリカ開発会
日本の新しい取組みとその成果であろう、
た。中小企業での定義を説明しただけで
議の日本での開催も決まっている。国際
とのことであった。
債務の問題は深刻だが…
も「資本金の額は間違いでは?」
とどよめき
社会の目指す流れにそった、日本ならで
が起こったし、
またセネガルからは「日本に
はの有効な援助とは…? 考えながら今後
は何故フォーマルセクター(正規に登録し
も同地域の行方を見ていきたい。
研修初日の会場はPREXのオフィスが
ている企業)が多いのか?」というような質
あるビルの最上階。大きな窓からは大阪中
問も飛び出した。雑業層が大半で一握り
之島のオフィス街が見渡せて気持ちよか
のフォーマルセクターが高い税金を負って
った。休憩中に研修員が窓際に集まり雑
いるという国情が背景にある。また、日本
談している。
「良い眺めだねぇ」とでも言っ
と参加国間だけでなく、参加各国同志間
2 PREX NOW No.114 May 2002
─国際交流2部 中村 真紀子
SEMINAR
お世話になった企業・団体他
(訪問順・敬称略、本文中記載分は除く)
流通科学大学商学部 高田教授、阪南大学経営情報
学部 大槻教授、龍谷大学経済学部 松岡教授、大阪
市都市型産業振興センター大阪産業創造館あきな
い・えーど、神戸商科大学商経学部 佐竹助教授、産学
共同システム研究所、全国中小企業団体中央会、東京
中小企業投資育成、東京都立産業技術研究所、東京
証券取引所、兵庫県中小企業家同友会 田中代表理
事、アドック神戸、ツインテック、
くつのまちながた神戸、
吹田商工会議所、山岡金属工業、中小企業・ベンチャ
講義中に研修員間の議論が始まることも
家庭用たこ焼き機メーカー山岡金属工業で
ー総合支援センター近畿、
オーテック、
ダイキン工業堺
製作所
参加 9カ国のデータ紹介 ①首都 ②面積(万km2)③人口(万人)④一人当たりGNP(ドル)⑤主要産業 ⑥日本との貿易 ⑦研修員による自国のひとこと
ベナン共和国 BENIN
ブルキナ・ファソ BURKINA FASO
象牙海岸共和国 COTE D'IVOIRE
①ポルト・ノボ
①ワガドゥグ
①ヤムスクロ
②112,622km2
②274,200km2
②322,463km2
③579万人(97年)
③1,260万人(2000年)
③1,421万1千人(97年)
④380ドル(99年)
④240ドル(99年)
④670ドル(99年)
⑤農業(綿花、パームオイル)
、
⑤農業(粟、
とうもろこし、
タロイモ、綿及び牧畜)
⑤農業(コーヒー、
ココア等)
、林業
⑥【輸出】1,312(99年 単位:百万円)
⑥【輸出】1,420(99年 単位:百万円)
サービス業(港湾業)
⑥【輸出】17(99年 単位:百万円)
実綿、採油用の種 【輸入】1,333(99年 単位:百万円)
自動車、鉄鋼板、
モーターサイクル
⑦「民主主義」
ギニア共和国 GUINEA
採油用種、実綿
【輸入】915(99年 単位:百万円)
貨物自動車、鉄鋼板(メッキ)
、
乗用自動車、
タイヤ
コーヒー、
カカオ豆、
ココアペースト
【輸入】7,910(99年 単位:百万円)
貨物自動車、
タイヤ、乗用自動車、鉄鋼板
⑦「工業化の一歩進んだ国」
⑦「誠実・高潔」
ギニア・ビサオ共和国 GUINEA-BISSAU
マリ共和国 MALI
①コナクリ
①ビサオ
①バマコ
②245,857km2
②36,125km2
②1,241,000万km2
③670万人(99年)
③119万人(2000年)
③1,058万人(1999年)
④510ドル(99年)
④160ドル(99年)
④250米ドル(98年)
⑤農業(米、
キャッサバ、
コーヒー、パイナップル)
、
⑤農林水産業(落花生、
カシューナッツ、
エビ、
⑤農業(綿花、落花生、粟、
ソルガム)
、
鉱業(ボーキサイド、
アルミナ、
ダイヤモンド)
⑥【輸出】3.5(2000年 単位:億円)
魚(冷凍・フィレ)
、木材(粗のもの)
【輸入】14.3(2000年 単位:億円)
鉄鋼板(メッキ)
、乗用・自動車、
モーターサイクル
⑦「豊富な天然資源」
ニジェール共和国 NIGER
いか、パーム核等)
⑥【輸出】119(98年 単位:百万円)
、0(99年)
女子用スーツ
【輸入】168.7(00年 単位:百万円)
貨物自動車、乗用車、殺虫剤、バス
⑦「内戦による経済の停滞」
セネガル共和国 SENEGAL
畜、工、鉱業(りん鉱石、岩塩、金)
⑥【輸出】127(00年 単位:万ドル)
実綿、植物性油脂、採油用の種等
【輸入】573(00年 単位:万ドル)
自動車、
モーターサイクル等
⑦「寛容な政策」
トーゴー共和国 TOGO
①ニアメ
①ダカール
①ロメ
②1,267,000km2
②197,161km2
②56,785km2
③979万9千人(97年)
③928.5万人(99年)
③434万5千人(97年)
④190ドル(99年)
④520米ドル(98年)
④310ドル(99年)
⑤農牧業、鉱業
⑤農業(落花生、粟、綿花)
、漁業(まぐろ、
かつお、
⑤農業(カカオ、
コーヒー、綿花)
、
⑥【輸出】35(99年 単位:百万円)
木材等
【輸入】601(99年 単位:百万円)
自動車、鉄、貨物自動車
⑦「畜産物」
えび、
たこ)
、鉱工業(燐鉱石、食品加工)
⑥【輸出】6.70(00年 単位:億円)
水産物、白亜(りん酸含)等
【輸入】38.33(00年 単位:億円)
貨物・乗用自動車、合成繊維、鉄鋼板等
⑦「ホスピタリティ」
鉱業(リン鉱石)
⑥【輸出】8(98年 単位:百万円)
動物、
アクセサリー
【輸入】3,149(98年 単位:百万円)
モーターサイクル、鉄鋼板、合成繊維、
タイヤ
⑦「サービス業」
出典 外務省ホームページ 2001.11.6現在
No.114 May 2002 PREX NOW 3
特集【各国研修員からのメッセージ】
M E S S A G E
F R O M
P R E X
中国
李 学栄(リシュエ ロン)
さん
中国瀋陽市生産力促進センター 常務副主任
2001年度「中国中小企業振興コース」に参加
中之島に足を踏み入れて
昨年6月頃、
私は幸いにも中国からの代表団の一員として、
「中国中小企業振興コース」に参
加した。それによって私は中之島を訪れる機会を得た。
中之島は大阪市北区の土佐堀川の北岸に位置する。右側に大阪国際会議場、
北側に堂島
川、西側にあみだ池筋のある中之島センタービルは空高くそびえたっており、
デザインも美しく、
デザイナーの個性を垣間見ることができる。特に土佐堀の南岸からのながめは大変美しい。
今回の研修では大変大きな収穫があったが特に以下の点について述べておきたい。
1 日本の中小企業の現状と支援施策について系統立てて理解でき、
全面的な知識を得た。
これは自分自身の今後の仕事において、当市(遼寧省瀋陽市)の中小企業支援事業を
さらに効果的に展開するに当たり、
大変重要なものである。
2 日本の中小企業支援は50年あまりの発展の過程を経て、豊富な経験を蓄積しており、当
市と比べるとかなり隔たりがある。早期によりよい中小企業支援体制を確立するために、
日
本の成功の経験を応用したい。
「中小企業基本法」
を制定して、
中小企業支援を法制化、
長期化、
社会化するべきである。
3 日本の中小企業の金融関連の支援のしかたと効果を参考にして、
当市も、
専門の銀行や
信用保証制度等を含む相応の中小企業金融支援体制をうちたてるべきである。ただし、
当市の中小企業は計画経済の条件下で生まれたものもあれば、改革開放後に創業した
ものもあり、国有、集団的性質のものが相当数ある。また、多くの中小企業が業績不振で
ある。そこで具体的な施策を制定する際には実情に応じたものにしなければならない。特
に科学技術型中小企業への支援は軽視できない。
4 生産力促進センターを、中小企業支援の中心的機関としてより完全なものとする。グルー
プの設立支援を強化し、
支援能力とレベルを向上させ、
資質と敬業精神を増強する。政府
は支援体制の確立に資金的な援助を与えるべきであると同時に、中小企業支援機関の
税収に対しても補助政策を制定するべきである。
33日間の外国での研修は、長いような短いような時間であった。価値ある学習に興味は尽き
ず、
内容豊かな生活とPREXの皆さんとの友情は忘れがたい。帰国後、
私の中小企業支援の仕
事の水準は日本に来る前に比べて明らかに向上した。これはすべてPREXのおかげである。今
まさに瀋陽市は春まっただなかであるが、
美しい中之島での思い出を懐かしく思う。
「PREX NOW」では、各国研修参加者の人材育成・国際協力についての意見を特集しています。
読者の皆さんもPREXについて、国際交流について日頃お感じになっていることをご寄稿下さい。
◎宛先/電子メールアドレス:prex@prex-hrd.or.jp FAX:06-6441-2640 総務経理部 部長まで
4 PREX NOW No.114 May 2002
A L U M N I
PREX役員、常任幹事の ひ と こ と
経営雑感
PREX理事長 柴田 稔
東洋紡績株式会社 会長
現在の日本経済は、
デフレ不況の中、
円安、
株安、
債券
また、
コア事業で培った技術をベースとした新たなコア事
安、
また金融不安を克服して早急に経済を立て直すべく、
業の創出を図っている。私の属する繊維産業でも、各社
官民挙げて構造改革に取り組んでいる。従来の仕組み、
は他産業に先駆けて事業構造の変革を進めてきた。繊
やり方が右肩上りの成長・インフレ経済の中での最適を目
維事業の厳しい再構築を進めながら、自社の強みである
指してきたもので、現下の低成長(マイナス成長)、急速な
繊維技術、
高分子技術を生かしてフイルム、機能樹脂、機
変動に対応しえなくなっており、
これを如何に時代に適合
能材、
メディカルなどの新しい事業を成功させている。
したものに組み直すか、
これこそが構造改革の目的であ
ところで、経営のグローバルスタンダード化が進めば進
る。
とりわけ産業の空洞化は深刻である。資源を持たない
むほど、時代対応の事業構造改革、経営革新を進める場
わが国にとって、
21世紀も
「ものづくり」は国の基盤であり、
合に、
日本の経営風土や自社の独自性
(固有技術、
資源)
現状製造業全体の競争力が揺らいでいるのは憂慮すべ
を見失わないことが重要性を増しているのではないだろう
きことといえる。日本経済の活力を維持するためには、多
か。一般的には、将来を見据えた研究開発、現場重視の
くの企業が知的財産権に裏打ちされるような独自の技術
経営、知識やスキルの組織としての共有、企業内教育な
や知恵で新事業を創出して、
高コストを克服して成り立つ
どの日本の企業経営に共通的な特質は、永続的な競争
ような産業構造を早急に実現しなければならない。ベンチ
力の確保のために21世紀に残す部分ではないかと思う。
ャーの育成も重要だが、何より既存企業の構造転換が急
この点は、海外での事業展開にも当てはまる。事業構
がれる。
造転換の過程で、
多くの製造企業は中国やアジアへ生産
企業経営の立場からは、
いかに事業ドメインを時代対
拠点を移しているが、
それぞれの国の事情やその企業に
応型に変革していくかが競争に勝つ条件になる。
しかも、
適合するかどうかを十分に考えた経営、事業運営を行う
時価会計基準に基づく会計制度への変更やITが経営
ことが成功に繋がる条件になっている。
や事業変革の有力なツールとして活用できるようになって
日本の製造企業は、他国より常に先行して新しい技術
きていることも加わり、
そのスピードが加速している。時代
を開発し、人材の育成に注力し、
また日本の経営の強み
対応に遅れると、
かってエクセレントカンパニーといわれた
や企業ごとの独自性の発揮という原点を再認識すること
世界的な企業でも今では姿を消している例があるように、
がますます大切になってきたように思われる。その努力が
生き残りが非常に難しい。
日本の産業の空洞化を食い止め、活性化に繋がることを
わが国の製造業は、選択と集中ということで、
コア事業
期待したい。
への絞り込みと思い切った内容の高度化を進めている。
柴田会長は「関経連アセアン経営研修」でアセアン各国の企業経営者に「21世紀における企業経営」というテーマで講義
No.114 May 2002 PREX NOW 5
NEWS
PREXだより
◎評議員会・理事会を開催 3月25日、27日に2001年度第2回評議員会・理事会を開催し、2002年度の事業計画と収支予算の承認をい
事務局
ニュース
ただきました。なお、役員等の異動は以下のとおりです。
(退任日:2002年3月27日、任期:2002年3月27日∼2003年3月31日、順不同、敬称略)
●理 事 新任:井戸 敏三 兵庫県 知事
矢田 立郎 神戸市 市長
退任:貝原 俊民 兵庫県 前知事
事務局組織 変更のおしらせ
笹山 幸俊 神戸市 前市長
●評議員 退任:新美 雄三 兼松株式会社 前常務取締役
●顧 問 新任:小川 修司 財団法人海外技術者研修協会 理事長
川上 隆朗 国際協力事業団 総裁
退任:伊藤 寛一 財団法人海外技術者研修協会 前理事長
斉藤 邦彦 国際協力事業団 前総裁
国際交流1部と国際交流2部が「国際交流部」になります。
かわらぬご支援、ご協力を宜しくお願いします。
【国際交流1部、国際交流2部】
↓
【国際交流部】
●監 事 新任: 野 泰生 住友生命保険相互会社 会長
退任:浦上 敏臣 住友生命保険相互会社 相談役
甲村 昌二
人の動き
杉山 茂樹
インドネシア長期専門家 株式会社トーメンに帰任 出向期間:1997年3月∼2002年3月1日
東洋紡績株式会社に帰任 出向期間:1997年3月∼2002年2月28日
「インドネシア貿易セクター人材育成計画」
思いがけず5年の長きに渉ってお世話にな
というそれ迄の商社の営業活動とはまったく
りました。その間我々の「貿易セクター人材
異なった世界に入ったものの、当初は支援機
退
任
インドネシア長期専門家
育成計画」を担当いただいた国際交流2部、
関であるPREXとは激しいやりとりの連続でした。その後相互理解
遠隔研修でご支援いただいた国際交流1部、外国暮らしの我々を
も進み、後半は比較的スムーズに行くようになりました。実施段階
細々と支えていただいた総務経理部の各皆様、一丸となったサポ
に入ったプロジェクトの成功のポイントは①専門家の意欲と情熱、
ートのお蔭で無事任期をまっとうすることが出来ました。厚くお礼申
②支援機関の熱意、③受入側の真剣さ、
が挙げられると思います。
し上げます。PREXが厳選の上送り込んで頂いた短期専門家の
いくら計画の内容が良くても実施するのは人間であり、上記の3者
皆様との公私にわたる交流も貴重な思い出となっております。イン
がうまくかみ合うことが重要です。JICAの事業には多くの支援機関
ドネシアの現状を踏まえ、援助される側に立った国際協力のあり方
が協力していますが、PREXほど熱意を持った機関は他にはないの
を真剣に考えておられた短専の方々に敬意を表したいと思います。
ではないかという感がしております。この5年間本当にお世話にな
3月25日付で東洋紡を退職し自由の身となりましたので、PREXの
りました。ご協力・ご支援に感謝しております。
皆様と体験させていただいた国際協力への再度の参加も含め、今
※甲村、杉山両氏は、1997年3月から、JICAの「プロジェクト方式技術協力」に係
後の生き方を考えてみたいと思っています。
わる長期専門家としてインドネシアへ赴任。
本プロジェクトは成功裡に終了した。
宮本 匠
加地 彰浩
国際交流2部 部長代理
伊藤忠商事株式会社に帰任 出向期間:1999年4月∼2002年3月末
国際交流1部
ダイキン工業株式会社に帰任 出向期間:1999年4月∼2002年3月末
PREX研修同窓生の皆様、研修事業でお
この3年間、研修を通じて開発途上国を支
世話になりました関係機関、自治体、大学、企
援する業務に従事してまいりましたが、様々な
業及び講師の皆様、
この3月末をもちまして残
出会いによって、今振り返ると私自身がいろ
念ですがPREXを去り出身の伊藤忠商事に帰任する事となりまし
いろ勉強させてもらったと感じます。また、通信技術を利用した新し
た。PREX在勤の三年間は貴重な経験多く瞬く間に過ぎ去りまし
い研修スタイルに携わることができるなど、大変興味深い日々でし
た。この間、研修を通じ国際協力に多少ともお役に立てたものが
た。国内外の先輩、同僚、並びに研修を通じてお世話になりました
あれば嬉しい限りです。皆様方のご理解、
ご指導と温かいご支援
産官学の関係者の皆様との出逢い・交流は、私の人生において
に本紙面をお借りして改めて心より御礼申し上げます。
のかけがえのない財産となりました。皆様には心より感謝申し上げ
最後に、皆様方の今後の更なるご活躍とご健勝を祈念し、お礼
とお別れのご挨拶と致します。
るともに、
皆様のご多幸と今後のご活躍を祈念いたします。最後に、
現在私の気持ちを表しているある詩人の一節を残します。
「そのと
きの出逢いが 人生を根底から 変えることがある よき出逢いを」
新
任
大塚 迪夫
国際交流部 担当部長(住友電気工業株式会社より出向 出向期間:2002年4月∼2004年3月末)
尾上 暉隆
国際交流部 担当部長(大阪ガス株式会社より出向 出向期間:2002年4月∼2005年3月末)
山下 喜史
国際交流部 部長代理(サントリー株式会社より出向 出向期間:2002年4月∼2005年3月末)
千種 茂俊
国際交流部 課長代理(ダイキン工業株式会社より出向 出向期間:2002年4月∼2005年3月末)
◎編集・発行
財団法人 太平洋人材交流センター
大阪市北区中之島6-2-27 中之島センタービル24階
TEL 06-6441-2650
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専務理事 三田 昌孝
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6 PREX NOW No.114 May 2002