PDF版 - 国立遺伝学研究所

BioResource now !
Vol.(2) 2008
Issue Number 4 February 2008
BioResource now !
ニュースレターのダウンロード先 (PDFファイル)
http://www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/
バイオリソース情報
国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、
毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。
NBRP
SHIGEN
WGR
JGR
注目!リソース No.1 (2)
マウスリソースとノーベル賞 ∼ Part2 ∼
お知らせ
山村研一 熊本大学発生医学研究センター臓器形成分野 教授
http://www.nbrp.jp/
http://www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm
http://www.shigen.nig.ac.jp/wgr/
http://www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp
(詳細はこちらからご覧になれます。http://www.nbrp.jp/index.jsp)
■ 平成20年度NBRP「ゲノム情報等整備プログラム」公募のお知らせ
公募受付期間:2008年3月3日 - 3月7日 17時必着
じょうほう通信 No.29
■ NBRPキックオフシンポジウム
日程:2008年3月10日(月) 10:00 - 17:00
場所:如水会館
Flashの可能性を大きく広げたFlex
■ 第5回 アサガオ研究集会
日程:2008年3月10日(月) 14:00 から3月11日(火) 12:15 まで
場所:岡崎コンファレンスセンター(中会議室)
■ NBRP藻類ワークショップ(凍結保存技術)
日程:2008年3月27日
(木)9:30 - 16:30
場所:独立行政法人国立環境研究所中会議室 / 環境生物保存棟セミナー室
左より、ラット、マウス、かやねずみ
例えは悪いが戦争を行うには何が必要であるかを考えれば、お
のずとリソースの重要性がわかるというものであるが、わが国は
伝統的に華々しい戦闘は好みであるが、後方支援については無
視しがちな民族といえる。 食料や武器弾薬の補給なくして戦争
に勝てるわけはないが、 研究もまた食料や武器弾薬に相当する
リソースがなければ勝てるはずもない。 ゲノムの塩基配列の決
定後、ポストゲノム時代に突入したが、遺伝子やゲ
ノム機能の解析は、
ゲノムの塩基配列の決定ほどは
簡単に進まないことがはっきりしてきている。だか
らこそリソースが必要なのである。
! 注目 リソース No.1(2)
マウスリソースとノーベル賞
∼ Part2 ∼
山村研一 熊本大学発生医学研究センター臓器形成分野 教授
私たちは、相同組換えというよりは、遺伝子トラップ法に焦
点を当て研究を行ってきた。 ES細胞を用いた遺伝子トラップ法
が報告されたのは、遺伝子破壊マウスが最初に報告されたのと
同じ1989年である。 これ以降、遺伝子トラップ法は、遺伝子の
同定のためというよりも、遺伝子破壊マウスを作製する方法とし
て開発が進められることとなった。
なぜなら、相同組換え法では、
労力、経費、時間がかかり、
当時10万個と想定された遺伝子すべ
てについて破壊マウスを作製するのは不可能と考えられたため
である。 たとえば、一つ一つベクターを作製する必要
があること、相同組換えESクローンを取れる確率が悪
いこと、生殖系列への伝達が保障されないからである。
わが国では、残念ながらノックアウトプロジェクトは立ち上
がっておらず、突如現れたiPS細胞に研究をさらわれた格好にな
っている。 しかし、
ノックアウトプロジェクトの重要性は、iPSに
勝るとも劣らないと考えている。ノックアウトプロジェクトは、生
命科学のほとんどの研究者にメリットをもたらすが、iPS細胞は
そうではない。 わが国には、欧米に負けない独自技術があり、
そ
れをもってノックアウトマウスプロジェクトを実施すれば、欧米
に負けるはずがないからである。手前味噌になるが、われわれが
開発した可変型遺伝子トラップ法では、第1段階で遺伝子を完
全破壊し、第2段階で興味ある遺伝子と置換でき、第3段階では
条件的遺伝子破壊ができるようになっている。 欧米でのプロジ
ェクトでは、基本的に条件破壊はできるようになっている。しか
し、遺伝子置換はできるといっているが、 gateway system を
用いて in vitro で遺伝子置換を行い、
その後それを用いて
再び相同組換えを行わねばならない。われわれの場
合は、
Cre-loxP を利用した組換えで遺伝子置換を行
えるので、格段に効率がいいし、手間も省ける。
2002年に IGTC (International gene trap consortium)
が結成され、 我々も参加したが、
このころからカナダとドイツの
グループは遺伝子トラップ法による大規模変異マウスプロジェク
トの開始をもくろんでいたようである。余談になるが、 相同組換
えの推進者は Martin Evans博士の研究室の出身者で、代表が
現在の英国サンガー研究所の所長のAllan Bradly博士である。
また、遺伝子トラップ法の仲間は、
ほとんどJanet Rossant博士
の研究室の同窓生で、代表はEUCOMMの推進者であるドイツ
GSFの Wolfgang Wurst博士やサンガー研究所の Bill Skarnes
博士である。これらを背景に、2006年にEUで大規模
ノックアウトマウスプロジェクトEUCOMMが開始し
たのを皮切りに、現在カナダの NorCOMM、米国の
KOMP、
中国の Chinese COMM が開始し、
日本
円で総額100億円以上の資金が投入されている。 プロジェクト
全体では、相同組換えと遺伝子トラップと併用し、合計56,000
種類のノックアウトESクローン、1200種類程度のマウス系統が
作成される予定である。 基盤研究や応用研究、ひいては産業の
発展にリソースがいかに重要であるかが認識されたうえでのプ
ロジェクトである。
それに対して、
わが国はリソースに対する理解
が不足している。
もう一つは、なんといっても Mus musculus molossinus
に属する日本産野生マウスであるMSM/Ms系統の存在である。
これは、森脇らが長年かかって開発したもので、Mus musculus
domesticus に属している C57BL/6 マウス等とは、約100万
年前ごろに分離している。城石らによれば、ゲノム配列も 0.8%
程度異なっており、 がんに抵抗性である等特徴的な表現型をも
っている。 わが国が誇るマウスリソースであるが、 我々はES細
胞の樹立に成功し、効率よく生殖器布良を作製する方法も確立
した。
このES細胞と可変型遺伝子トラップ法または可変型相同
組換え法を用いれば、欧米にはない独自のリソースを開発するこ
とができる。
次ページへ続く
BioResource now !
Vol.(2) 2008
最後に、意外にご存知の方がおられないので、相同組換えに関
する特許の話を紹介したい。相同組み換えの基本特許を持っている
のは、Le Mouellie博士とBrulet博士が発明者と名を連ねるフラン
スのパスツール研究所であり、そこからのベンチャー企業であるセ
レクティス社が実施権を持っている。
ヨーロッパ、米国、
日本で特許
が成立している。Capecchi博士の特許は、positive-negative
selection法だけであり、米国だけで成立している。
相同組換え法を用いている限り、
ノックアウトマウスの
受託生産であれ、
それを用いての創薬であれ、民間企業
は特許を侵害していることになる。なお、日本で唯一ラ
イセンスを受けているのは、
トランスジェニック社である。
アジア民族は一般的に後方支援を無視するかというとそうで
もないようである。
アジアでのリソース整備が必要と考え、2006年
11月にAsian Mouse Mutagenesis and Resource Association
(AMMRA)(図1)
を立ちあげ、2007年11月には第2回目の会合を
開き、
ミュータジェネシスとリソースの重要性ついて議
論したが、各国の事情についても話を聞くことができ
た。
もちろん各国経済状況が異なるので、
おしなべてリ
ソース整備が進展しているわけではない。 しかし、 こ
とに中国の発展が驚くほどであり、 ミュータジェネシ
スにすでに1億元が投下されているが、
さらに1億元で、合計2億元
(日本円で30億から32億円)
になりそうである。 これとは別に膨大
な施設の建設が進行中で、
日本を凌駕するのは時間の問題である。
1 Biological Resource Center, Singapore
2 National Laboratory Animal Center, Taipei
8
6
7
9
3
4 5
2
3 National Resource Center for Mutant
Mice, Nanjing Univ. Nanjing
AMMRA
ホームページ
4 Shanghai Institute of Biological
Sciences, Shanghai
5 Nanfang Center for Model Organisms,
Shanghai
6 Peking Univ.-BLARC, Beijing Inst. Laboratory
Animal Science, CAMS, PUC, Beijing
7 Bio-Evaluation Center, KRIBB, Daejeon
8 Riken BioResource Center, Tsukuba
9 Center for Animal Resources and Development,
Kumamoto
1
10 分
図1 Members of AMMRA
実用的: Flex は HTMLのテーブルやボタン等、Webアプリケーションに
必須な部品の Flash版(Flashならではの機能も付いています)
を標準で
開発者に提供しています。
Flashは多彩な表現が可能ですが、
ユーザにとっては操作方法がわかりに
くかったりする等のデメリットもありました。
しかしFlexが提供する部品
によって一定の基準が設けられ、Flash は実用的なWebサイトに適用さ
れるようになってきました。
- 29 -
Flashの可能性を大きく広げたFlex
Flash といえばちょっとしたアニメーションや、動画の配信等で使用
されることがほとんどでしたが Flex の登場によって Flash はその可能
性を大きく広げました。
Flashという言葉の指す意味は時と場合によって様々です。
簡単:Flex で Flash コンテンツを作成する
には Flex Builder ( Adobe )というソフトを
使用します。Flex Builder を使用すれば
Flex が提供する部品をドラッグアンドドロップ
(図)
で配置することが可能です。
Flex Builder はトライアル版もありますし、
学生や教育機関は無償提供されますので一度
ダウンロードして Flex による Flash コンテ
ンツ作成を試してみてはいかがでしょうか。
(図)Flex Builder の操作
画面。部品をドラッグアン
Flex Builderでサンプルを作成しましたので
ドドロップで配置できる。
こちらも御覧下さい。 (坂庭 真悟)
・Flashコンテンツ
・Flashコンテンツを作成するためのソフト
・Flashを再生する環境(Flash Player)
・上記をまとめた総称等
Flexは 実用的 なFlash コンテンツを 簡単 に作成する
ための仕組み
(フレームワーク)
です。Flash で作成しても Flex
を使って作成しても最終的には swf という形式のファイルになり Flash
Player で表示されます。
http://www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/n_letter/2008/2/sample.html
研究者へのお願い
バイオリソースを使って研究をしている皆様にお願いがあります。
研究成果を論文として発表する際には、使ったリソースの情報を必ず
Materials & Methods や謝辞などに記載してください。同時に、
リソース
入手元への連絡もお願いいたします。
NBRPでは成果論文の登録サイトを開設しました。
以下のアドレスから簡単に情報を登録することができますのでこちらも是
非ご利用ください。
編集後記
先月に続き山村先生の マウスリソースとノーベル賞 後半
をお届けしました。 広い世界観と先見性と高い技術開発力に裏打ちされ
た熱いメッセージが伝わってきますね。後方支援部隊応援のコメントにも
謝謝。(Y.Y.)
http://rrc.nbrp.jp/
連絡先
次号予告 !
来月のリソース特集は
「細胞性粘菌」です。
〒411-8540 静岡県三島市谷田1111
国立遺伝学研究所
生物遺伝資源情報総合センター
TEL
055-981-6885 (山崎) E-mail brnews@chanko.lab.nig.ac.jp
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