日本基準トピックス 2008年11月28日 第63号 企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」及び企業 会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用 指針」の公表 ■ 主旨 2008年11月28日に企業会計基準委員会から、企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」及び 企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」が公表されました。 2008年6月の公開草案からは大きな変更もなく、最終公表となりました。時価の注記を求める「賃貸等不動産」には、投資不動産 に区分される不動産、将来の使用が見込まれていない遊休不動産、賃貸されている不動産などが含まれます。 注記内容としては、賃貸等不動産の概要や貸借対照表計上額とその期中変動、当期末における時価及びその算定方法、そし て損益が挙げられています。 【適用時期】 2010年3 月31 日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用する。ただし、当該事業年度以前の事業年度の期首か ら適用することを妨げない。 原文については、企業会計基準委員会のウェブサイトをご覧ください。 http://www.asb.or.jp/html/documents/docs/fudosan-kaiji/ ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------【主な内容】 1. 背景 2002 年 8 月に企業会計審議会から公表された「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」では、投資不動産につ いては、時価の変動をそのまま損益に算入せず、他の有形固定資産と同様に取得原価基準による会計処理を行うことが適当である とされており、(減損意見書 六 1)。また、そのような投資不動産の時価の注記に関しては、その要否や投資不動産の範囲も含め今 後の検討課題とされていました(減損意見書 六 2)。 しかし、「棚卸資産の評価に関する会計基準」の適用により、トレーディング目的で保有する棚卸資産について時価評価が求められ たこと、また、金融商品の時価の注記対象を拡大したことを踏まえ、一定の不動産については、事実上、事業投資と考えられるもので も、その時価を開示することが投資情報として一定の意義があるという意見があること、さらに、国際財務報告基準が原価評価の場 合に時価を注記することとしていることとのコンバージェンスを図る観点から、賃貸等不動産に該当する場合には、時価の注記を行う こととしたものです。 2.適用範囲 本基準等は、賃貸等不動産を保有する企業に適用されます。 連結財務諸表において賃貸等不動産の時価等の開示を行っている場合には、個別財務諸表での開示は必要ありません。 PricewaterhouseCoopers 1/3 3.賃貸等不動産とは (1)賃貸等不動産の対象 「賃貸等不動産」とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的とし て保有されている不動産をいう。したがって、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産 には含まれません。 賃貸等不動産には、次の不動産が含まれるとしています。 賃貸等不動産に該当するもの (1) 貸借対照表において投資不動産として区分されている不動 産 (2) 将来の使用が見込まれていない遊休不動産 (3) 上記以外で賃貸されている不動産 賃貸用不動産が含まれる科目等の例 (1) 「有形固定資産」に計上されている土地、建物(建物附属設 備を含む。)構築物及び建設仮勘定 (2) 「無形固定資産」に計上されている借地権 (3) 「投資その他の資産」に計上されている投資不動産 なお、賃貸等不動産には、将来において賃貸等不動産として使 用される予定で開発中の不動産や継続して賃貸等不動産として 使用される予定で再開発中の不動産も含まれる。 注)ファイナンス・リース取引に該当する不動産については、貸手において賃貸等不動産には該当せず、借手において当該不動産が、 棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産 (会計基準第 4 項(2))に該当する場合には、賃貸等不動産となる。 (2)部分的に貸等不動産として使用される不動産 物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている部分と賃貸等不動産として使用される部分で構成される不動産 について、賃貸等不動産として使用される部分は、賃貸等不動産に含めます。 当該部分を区分するにあたっては、管理会計上の区分方法その他の合理的な方法を用いることになります。 3.開示内容 (1)注記内容 賃貸等不動産を保有している場合は、次の事項を注記します。 ただし、賃貸等不動産の総額に重要性が乏しい場合は注記を省略することができるとされています。 ①賃貸等不動産の概要 ② 賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動 ③ 賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法 ④ 賃貸等不動産に関する損益 (2)重要性の判定 賃貸等不動産を保有している場合において、賃貸等不動産の総額に重要性が乏しいときは注記を省略することができます(会計基 準第 8 項ただし書き)。 当該賃貸等不動産の総額に重要性が乏しいかどうかは、賃貸等不動産の貸借対照表日における時価を基礎とした金額と当該時価 を基礎とした総資産の金額との比較をもって判断することになります。 3.賃貸等不動産の当期末における時価 (1)観察可能な市場価格に基づく価額 賃貸等不動産の当期末における時価とは、通常、観察可能な市場価格に基づく価額をいい、市場価格が観察できない場合には合 理的に算定された価額をいいます(会計基準第 4 項(1))。 (2)合理的に算定された価額 賃貸等不動産に関する合理的に算定された価額は、「不動産鑑定評価基準」(国土交通省)による方法又は類似の方法に基づいて 算定するとしています。 PricewaterhouseCoopers 2/3 なお、契約により取り決められた一定の売却予定価額がある場合は、合理的に算定された価額として当該売却予定価額を用いること になります。 (3)取得時の価額又は直近の原則的な時価 第三者からの取得時(※)又は直近の原則的な時価算定を行った時から、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えら れる指標に重要な変動が生じていない場合には、当該評価額や指標を用いて調整した金額をもって当期末における時価とみなすこ とができます。 さらに、その変動が軽微であるときには、取得時の価額又は直近の原則的な時価算定による価額をもって当期末の時価とみなすこと ができるとされています。 ※連結財務諸表上、連結子会社の保有する賃貸等不動産については当該連結子会社の支配獲得時を含む (4)重要性が乏しい場合 開示対象となる賃貸等不動産のうち重要性が乏しいものについては、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる 指標に基づく価額等を時価とみなすことができるとされています。 (参考) [開示例1] 賃貸等不動産を一括して注記する場合 当社及び一部の子会社では、東京都その他の地域において、賃貸用のオフィスビル(土地を含む。)を有しております。平成 XX 年 3 月期における当該賃貸等不動産に関する賃貸損益は xxx 百万円(賃貸収益は営業外収益に、主な賃貸費用は営業外費用に計上)、 減損損失は xxx 百万円(特別損失に計上)であります。 また、当該賃貸等不動産の連結貸借対照表計上額、当期増減額及び時価は、次のとおりであります。 (単位:百万円) 連結貸借対照表計上額 当期末の時価 前期末残高 当期増減額 当期末残高 xxx xxx xxx xxx 注 1) 連結貸借対照表計上額は、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額であります。 (注 2) 当期増減額のうち、主な増加額は不動産取得(xxx 百万円)であり、主な減少額は減損損失(xxx 百万円)であります。 (注 3) 当期末の時価は、主として「不動産鑑定評価基準」に基づいて自社で算定した金額(指標等を用いて調整を行ったものを含 む。)であります。 お問い合わせ: あらた監査法人(ブランド&コミュニケーションズ) 東京都千代田区丸の内1丁目5番1号 新丸の内ビルディング32階(〒100-6532) 電話: 03-6858-0179(直通) メールアドレス: aaratapr@jp.pwc.com あらた監査法人は、世界 153 カ国に 155,000 人のスタッフを擁するプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のメンバーファームです。PwC の メンバーファームとして、会計および監査において PwC の手法に完全に準拠した国際的なベストプラクティスを採用し、PwC のグローバル•ネット ワークで培われた経験、専門知識、リソースを最大限に活用し、日本において国内企業および国際企業に対して、国際水準の高品質な監査を提 供していきます。 © 2009 PricewaterhouseCoopers Aarata. All rights reserved. “PricewaterhouseCoopers” refers to PricewaterhouseCoopers Aarata or, as the context requires, the PricewaterhouseCoopers global network or other member firms of the network, each of which is a separate and independent legal entity. PricewaterhouseCoopers 3/3
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