大規模自然災害 への備え - 大分県建設技術センター

大分県建設技術センター第12回専門技術研修 資料
大規模自然災害
への備え
話
題
1. 自然災害リスクの高まり
(多発)
社会インフラの
機能継続とその課題
2. 経済、社会の脆弱性の高まり
(私たちの生活が、災害にますますもろくなっる)
3. 災害時物流のリスクマネジメント
写真:日本長距離フェリー協会
平成28年8月10日
A) 社会インフラの機能継続
B) 緊急支援輸送
京都大学防災研究所
産官学共同研究部門
(港湾物流BCP研究分野)
4. まとめ
小 野 憲 司
Email: ono.kenji.5z@kyoto-u.ac.jp
写真:国土交通省東北地方整備局
南海トラフ巨大地震のリスク
平成28年熊本震災の地震動分布
4/14以降の平成28年熊本地震では,同月末までに震度5強以上の地震が11回発生。
震度5強以上の
地震発生回数
期間:4/14~16
日本周辺のプレート運動
面積 km2
5回以上
4回
3回
2回
気象庁・震度データベース*: 4/14~30に発生した地震(震度5強以上で検索した結果)
(構成比)
68
(0.01)
252
(0.05)
1,088
(0.20)
887
(0.17)
1回
3,048
(計)
5,343
(0.57)
南海トラフ
(1.00)
*http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/
震度5強以上の地震発生回数
東海・東南海・南海地震の被害想定
1.建物全壊棟数:約51万3000 ~ 56万8600棟
(阪神・淡路大震災 約24万9000棟)
2.死者数:約2万2000 ~ 2万8300人
(阪神・淡路大震災 6432人)
N
0
30 km
社会防災研究部門熊谷兼太郎准教授作成
5回以上
4回
3回
2回
1回
背景図:ArcGIS Data Collection 詳細地図2015全国版(ESRIジャパン)
【出典】左図:地震調査研究推進本部「海溝型地震の長期評価
の概要」(算定基準日 平成21年1月1日)より作成
右上図:全国地質業協会連合会ウェブサイト
3.経済被害:約53 ~ 81兆円
(阪神・淡路大震災 約13兆円)
(中央防災会議資料による)
9世紀日本の地震・火山災害
3.11以前に発見されていた知見
【北関東地震(M7~7.5)⇒八ヶ岳噴火 (70年間)】
① 現在想定されている東海・東南海・南海3連発地震は、1707年の宝永地震
がモデル。しかし宝永地震は日向灘連動の4連動であった可能性。その場合
の規模はM9、津波高さは、1.5~2倍の5~10m。(文科省研究プロジェクト成
果:2011年4/8日経新聞)
M8.3~8.6の貞観三陸地震(津波)、M8.0 ~8.5の仁
和南海(東海、東南海3連発?)を含む、
M7以上の地震12回、
⑪鳥海山噴火(871年)
② 1361年の正平(康安)地震津波は、宝永地震を上回る内陸4キロまで到達。
(東大地震研調査: 2011年5/3神戸新聞)
火山噴火5回、
が発生。
⑩貞観三陸地震
(869年)
③天長出羽地震(830年)、⑤嘉祥出羽地震(850年)
③ 仙台平野は、千年毎に(弥生時代、800年代にも)海岸線から3~4kmまで
津波で浸水。(東北学院大学調査結果: 2011年5/19神戸新聞)
⑥貞観越中越後地震(863年)
⑰八ヶ岳噴火(888年)
①弘仁9年の北関東地震(818年)
⑭元慶出雲地震(880年)
⑬元慶相模・武蔵地震(878年)
⑦富士山噴火(864~866年)
④承和伊豆地震(841年)
⑧阿蘇山噴火
(864年、867年)
④ 1605年の慶長地震は、南海トラフ沿いの震源域に加えて、沖合の別の震源
域が連動した可能性。その場合の津波高さは、これまでの想定の1.5倍~2
倍。(東大地震研指摘: 2011年5/23朝日新聞)
⑤ 高知県土佐市蟹ヶ池において、2000年前の巨大津波の痕跡(厚さ50cmの
砂の堆積層)発見。 (高知大調査: 2011年5/23日経新聞)
②天長地震(827年)、⑮元慶平安京地震(881年)
⑨貞観播磨・山城地震(868年)
⑥ 1586年の天正大地震で若狭湾においても津波が発生、集落が流され多数
の死者を出した。(敦賀短大による史料調査結果: 2011年5/27朝日新聞)
⑯仁和南海地震(887年)
⑫開聞岳噴火
(874年)
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人口の減少と社会の高齢化
高齢者単独世帯の増加
高齢者単独
世帯類型別世帯数の推移
総人口 (2005年を100)
110
その他単独
1980年 88
100
東京圏
623
1985年 118
90
671
1990年 162
名古屋圏
80
地方圏
70
1995年
全国
大阪圏
180
60
629
240
762
夫婦のみ
712
夫婦と子
728
1517
その他の世帯
706
311
1492
964
1105
ひとり親と子
275
1503
884
1059
465
205
1519
988
386
2010年
521
904
303
2005年
東京圏
1508
777
220
2000年
高齢人口(2005年を100)
446
690
358
1465
1008
654
411
1403
621
451
595
2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
名古屋圏
160
大阪圏
生産年齢人口(2005年を100)
100
地方圏
東京圏
120
80
地方圏
60
全国
140
名古屋圏
全国
2015年
562
1094
2020年
631
2025年
673
2030年
717
2035年
1102
1004
1119
976
1106
783
2040年
1019
882
896
948
856
482
577
1239
501
565
1152
939
1050
1326
507
1070
556
503
983
544
489
900
526
473
503
100
2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
大阪圏
2045年
946
867
2050年
982
805
0
40
1000
819
779
2000
約4割が単独世帯
2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
出典:国土交通省国土計画局作成資料
単独世帯のうち、5割超が高齢者単独世帯
821
745
3000
456
440
478
455
4000
5000
単位:万世帯
出典:国土交通省国土計画局作成資料
災害関連死の年齢構成
津波避難時の高齢者・自力避難困難者のケア
回 答率
避難開始までの時間
60%
37%
高齢者を有する家庭
37%
災害関連死者数(人)
50%
自力避難困難者を
有する家庭
30%
その他の家庭
20%
1,031
800
0%
24%
すぐに
高齢者有り
30分
1時間
自力避難困難者有り
回答率
65歳以上の高齢者
無回答
2時間以上
高齢者・自力避難困難者無し
400
40%
288
200
0
40%
97
1 34
岩手県
30%
自力避難
可能
60%
600
50%
38%
80%
714
避難場所
60%
自力避難
困難
100%
1000
10%
2%
10%
0%
自治体の
決めた避難場所
高齢者有り
近所の高台
近所の親類、
知人宅
自力避難困難者有り
公民館、役場、
学校
決めていない
0
0%
宮城県
福島県
20歳以下
21歳以上65歳以下
66歳以上
20歳以下比率
21歳以上65歳以下比率
66歳以上比率
100%
90%
600
80%
500
70%
60%
400
50%
300
40%
200
30%
20%
100
10%
0%
0
全国計
岩手県
宮城県
~1年半
福島県
茨城県
瓦礫の下敷きになる等の被災者の捜索と救助は、72時間以内
に行うことが重要。
災害関連死者数(人)
700
~1年
31
被災者の捜索・救助活動のターニング・ポイント
災害関連死時期(累計比率)
~6か月
4
データ:東日本大震災における震災関連死の死者数,復興庁,平成24年11月2日
災害関連死の時期
~3か月
2
高齢者・自力避難困難者無し
出典:津波等リスクに対する住民等意識調査(平成24年度),近畿地方整備局和歌山港湾事務所・京都大学防災研究所
~1か月
20%
90
1
20%
62%
1週間以内
年齢別
120%
比率
あ
1200
40%
1年半超
茨城県
1週間以内 ~1か月
全国計
~3か月
岩手県
データ:東日本大震災における震災関連死の死者数,復興庁,平成24年11月2日
~6か月
宮城県
~1年
~1年半
茨城県
1年半超
福島県
(阪神淡路大震災時の記録)
政府による緊急支援物資輸送活動
緊急支援物資の時間経過に従って変化する物資内容
東日本大震災の経験
図 東日本大震災での物資ニーズ変化の概要
緊急支援物資輸送期間: 5週間 (3月17日~4月21日)
動員輸送機関
1. トラック: 1,900
2. 飛行機(自衛隊) : 150
3. ヘリコプター(警察,消防):
5
4. 船舶 (国交省,海保等): 8
区分
調達品目
食料計(食)
食料・
飲料
生活
用品
燃料
実績
26,209,234
パン
9,391,373
即席めん類
2,557,730
おにぎり・もち・
包装米飯
3,501,074
精米
3,357,313
その他(缶詰等)
7,401,744
飲料(本)
7,937,171
トイレット・ペーパー(個)
379,695
毛布(枚)
409,672
おむつ(枚)
395,521
一般薬(箱)
240,314
マスク(枚)
4,380,442
燃料等(リットル)
16,031,000
写真:九州大学星野裕志教授提供
12
資料:「平成23年度サプライチェーンを支える高度な物流システムの構築事業-災害時等における緊急支援物資供給の
効率化事業報告書」(2012年5月、野村総合研究所)
企業サプライチェーンの寸断と経済被害
素材・
中間財
化学品
シリコンウェハ
エレクトロニクス関連
超高純度過酸化水素
国内シェア:約6割停止
世界シェア:約6割(2社
計)被災
極薄電解銅箔
世界シェア:約4割(2社
計)被災
黒鉛(リチウムイオン電
池負極材)
世界シェア:約5割被災
EPDM(エチレン-プロ
ピレン-ジエンゴム)
国内シェア:約2割被災
半導体
人工水晶
世界シェア:10割(3社
計)被災・停止
マイコン
世界シェア:約3割被災
ITOターゲット材
国内シェア:約2割被災
ポリプロピレン
国内シェア:約2割被災
工作機械用NCチップ
世界シェア:約5割停止
液晶パネル(中小型)
世界シェア:約1.5割(2
社計)被災
製品
自動車
産業機械
生産額:約22兆円
従業者数:約86万人
家電エレクトロニクス
生産額:約31兆円
従業者数:約75万人
1台の完成車の生産に対し
て、20,000~30,000 個の部
品類が必要。
【取引先への震災の影響による操業度低下】
影響なし
40.6%
販売先
12.1%
調達先
30.9%
影響あり
59.4%
調達・販売
16.4%
近畿地方整備局アンケート調査
大規模製造業等 合計825事業所の回答
生産額:約57兆円
従業者数:約100万人
自動車部品
完成車製造ライ
ン1工場に対して
400 ~ 500 社の
サプライヤーが自動
車部品を供給。
*経済産業省「サプライチェーンの影響調査」より作成
15
熊本地震による自動車産業等への影響
事業継続マネジメントの概念
事業
活動
水準
BCPの目標:
①機能喪失の最小化
①健全な市民生活の維持
②早期の機能復旧
②速やかな企業競争力の回復
③代替機能の確保
③雇用確保⇒生活再建
復興課程
100%
(通常の水準 )
BCP/BCM有りの場合
(RLO)
市場への復帰
早期機能
回復の効
果
代替港有り
代替港湾機能
確保の効果
最小限の事業
継続機能
レジリエンス
(機能の復元性)
市場からの退場
代替港なし
BCP/BCMなしの場合
注: RLO: 目標機能回復水準(Recover Level Objective )
RTO: 目標機能回復時間(Recover Time Objective)
出典:毎日新聞(ウェブ配信)2016年4月18日
事業継続
ISO22301:
BCMS
BCM
BCP
① 名称:「社会セキュリティ-事業継続マネジメ
ントシステム-要求事項」。
② 目的:経営の意思に沿う形で事業継続能力
を効果的・効率的に維持・向上させるための
枠組みの提供。
③ 対象:あらゆる組織。
BCP:事業継続計画
BCM:事業継続マネジメント
BCMS:事業継続マネジメント・システム
機能回復時
間の短縮
破産・破滅
時間軸
レジリエンス(Resilience)
(Business Continuity)
中断・阻害を引き起こすインシデントが生じた際に、事前
に決められた許容レベルで製品又はサービスの提供を
継続する組織の能力。
R(TO )
頑健性強化の
効果
残存機能
物理学:
外力による歪を跳ね返
す力。
応
力
変
形
復
元
歪
心理学:
極度の不利な状況に直面し
ても正常な平衡状態を維持
することができ能力。
○精神的回復力、
○抵抗力、
○復元力、
○耐久力
脆弱性(vulnerablility)
事業継続の視点
事業継続マネジメントのプロセス
お客さんが大切
1.顧客重視
災害対応・復旧 ⇒ 原状回復・迅速性の視点
被害想定、復旧工法重視。
事業継続マネジメント⇒ 利用者の視点。機能停止に
よって顧客を失わない視点。
誰でもわかる、後でもわかる
2.透明性の確保
サービス停止に対する顧客の許容限度やサービス再開に
必要な資源の分析過程の「可視化・見える化」
誰もが参加できる、したくなる。
3.現場からトップマネジメントまでの広範な参加
現場責任者等 ← 現場の知見・意見の反映
トップマネジメントの決定 ← 経営方針・権限移譲
内閣府事業継続ガイドライン 第3版( 平成25年8月改定)
港湾事業継続マネジメントの分析手順
港湾BCMの基本方針→港湾の特性、
地域における役割、機能継続の優先順位 等
重要機能の特定
機能復旧目標
時間/水準
(RTO/RLO )の
決定
重要機能を構成する重
要な業務活動の抽出
重要な業務活動に必要な
運営資源の抽出
資源の相互依存性抽出
ボトルネック資源の発見
BIAの考え方
1.顧客の受容性の評価:サービスが止まった場合に、ユーザーはいつまで待ってくれるか、
どの程度我慢してくれるか?
脅威の特定・評価
2.資源確保の可能の評価:災害は「ヒト、モノ、カネ、情報が不足すること」何が使えなくなり
そうか、あらかじめ「覚悟」しておくことが重要。
RA (リスク・アセスメント)
②港湾利用者の被
害・復旧過程の推定
→荷主企業等の操業
停止、復旧シナリオ、船
社サービスの回復過程
等の推定
重要機能の決定
港湾機能の脆弱
性評価
→電力等供給系,
港湾施設、ITシステ
ム,要員等の運営
資源の被害シナリオ
の作成
スクリーニングの基準(例)
視点
運営資源の復旧方法の検討
③ リスク対応戦略
需要側アプローチ
RTOと PRT
の比較等
PRT/PRL
再評価
港湾物流に対する脅威の発見
→例えば、リスク・マッピングの手法等
① BIA (ビジネス・インパクト分析)
重要機能の
最大機能停
止時間決定
BIAの考え方と重要機能
供給側アプローチ
資源の復旧予想時間・水準 (PRT/PRL) の推定
リスク対応計画の
作成
BCPとしての成文化
(実施体制、具体の行動計画、訓練、計画
のPDCAサイクル等を含む)
22
・・・・
将来発展性
港湾貨物量、旅客数、企業立地等
の将来の港勢の伸びに悪影響。
A
B
B
‐
国際競争力
近隣港湾や陸上輸送網との競争力
を喪失。
A
B
C
‐
市場シェア
近隣港湾との集荷競争力の喪失。
A
B
C
‐
A
A
C
顧客の信頼性 荷主、船社の信頼性の喪失。
Yes
NO
インパクト又は脅威
対象業務の評価
コンテナ・ターミナ 多目的ターミ 旅客船ターミ
ル運営
ナル運営
ナル運営
‐
総得点
8
5
1
‐
BCPの重要機能としての特定/非特定
特定
非特定
非特定
・・・・
影響度: A=高い [2点], B=普通 [1点], C=低い [0点])
重要機能の停止に対する顧客受忍性の評価
重要機能の内容と運営資源の発見の手法
(IDEF0法によるコンテナターミナルへの船舶の入出港業務のプロセス分析)
入港許可/入港届
コンテナ船
の入港
船舶到着
[目標]
[影響度指標]
中核業務名
コンテナターミナルの運営
[リードタイム]
影響
中(M)
小(L)
接岸・荷役
スケジュール
大(H)
i) 緊急支援物流(ERL)
主な利害関係者
目 標
地元自治体(ERL)
船社及び主要荷主、
港湾立地企業(商業物流)
一時的で回復 著しい信頼性
可能
喪失、回復困難
BCP発動 (日)
施設供用準備 (日)
荷主の他港への移転
一部の貨物流 大規模な移転、
出/回復可能 回復困難
0.5
0.5
影響は無し
/限定的
船社の寄港停止
商業物流
ERL
緊急支援輸送機能の信頼
性
42
6
長期にわたる
一時的で回復
寄港停止、回
可能
復困難
87
BCP発動 (日)
限定的で回復 主要産業が悉く
可能
移転、回復困難
地場産業の操業停止・移転
RLO (%)
75%
50%
100%
施設供用準備 (日)
1
2
港湾機能停止の影響
3日以内
1週間以内
2週間以内
L
M
H
H
H
H
H
7
6
50%
荷主の他港への移転
L
L
L
M
H
H
H
45
42
75%
船社の寄港停止
L
L
L
L
M
M
H
180
177
75%
地場産業の操業停止・
移転
L
L
L
L
M
H
H
90
87
100%
3ヵ月以内
6ヵ月以内
1年以内
MTPD (日)
RTO (日)
航路進入
接岸許可
RLO(%)
インプット
積み付け計画
検数・検量
A3
コンテナ荷
役
回頭泊地、岸壁
タグボート
綱取り
バースウィンドウシス
テム
A4
処理の内容:
出航
A5
航路、回頭泊地
岸壁、タグボート
綱取り
注: IDEF0 法は、業務プロセ
スの記述・モデル化手法の
一つ。米国オクラホマ州空
軍基地の研究チームによっ
て開発されたもの。
アウトプット
No.
運営資源の抽出作業の例
離岸・出港
下流側に伝達され
る処理済みの状態
、モノ、情報等
処理の主体:
処理のた
めの資源
注) ERL: 災害被災地に対する緊急支援物流.
離岸許可
出港届
岸壁
ガントリー・クレーン
ヤード・シャーシ、
ヤード荷役機械
荷役作業員
ターミナルコントロールシス
テム
規則、基準、マニュアル等、又
はそれらに基づく指示、決定等
制御
業務の上流側か
らの要請、モノ、
情報等の流れ
A2
コンテナ埠
頭接岸
(仕事カードを用いたアクティビティの記述)
緊急支援輸送機能の信
頼性
1カ月以内
A1
航路
水先案内, タグボート
ii) 商業物流
RTO (日)
錨地指定
錨泊
錨泊指示
原材料、資機材、情報、労働、
サービス等
平成28年熊本地震時のインフラ被害
業務フロー分析によって、Ⓐ重要機能の流れを確認、Ⓑ直接的に必要な資源を抽
出、Ⓒ間接的に必要な資源を発見。 ワークシートの活用→手順の「見える化」
1.業務フロー分析より得られる情報
2.ワークシート上で発見を目指す情報
①事業活動、
②制御、
③入力、
④出力、
⑤運営資源(事業活動に直接必要な資源)
②
A1 コンテナ船の入港
A2 錨泊
制御
⑥制御機関、
⑦制御機関の活動に必要な資源
⑥
制御機関
⑦
入力
出力
制御に必要な資源
事業活動に直接必要な資源
航路、タグボート、水先案内人、サービスボート、電
検疫済証等交付
出入国報告書提出
入港届
検疫
入管
港湾管理者、港長、
税関
コンテナ船到着
入港
コンテナ船運航ス
ケジュール
検疫職員、入管職員、港湾管理者職員
港湾EDIシステム、SeaNACCSシステム、港長職員、
税関職員、海事官署合同庁舎、 電力、通信
力、通信、燃料油
錨地指定
港長
錨泊地への移動
港長職員、通信
錨地、サービスボート、電力、通信、燃料油
A3 コンテナ船回頭・接 接岸許可
港湾管理者
回頭泊地進入
再入港
接岸
港湾管理者職員、通信、海事官署合同庁舎
回頭泊地、岸壁、タグボート、綱取作業員,
マリンハウス 、電力、通信、燃料油
ターミナルオペレーションセンター、ターミナルオペレーター職員,
検数人、電力、通信
岸壁、エプロン・ふ頭用地、 ガントリークレーン、
船内荷役ギャング、マリンハウス、電力、通信、燃料油
税関職員、入管職員、港湾管理者職員、
港長職員、港湾EDIシステム、SeaNACCSシステム、
航路、回頭泊地、岸壁、タグボート、
綱取作業員、マリンハウス、 水先案内人、
サービスボート、 電力、通信、燃料油
岸
A4 船内荷役
積付計画
検量・検数
ターミナルオペレーター
接岸完了・荷役準 荷役完了
備終了
A5 離岸・出港
出港許可、
出入国報告書提出
出港届
税関、
入管
港湾管理者、港長
離岸・出港準備完 離岸・出港
了
復旧率
100%
90%
運営資源
事業活動
復旧率
100%
海事官署合同庁舎、 電力、通信
90%
80%
80%
70%
70%
60%
60%
50%
50%
40%
40%
30%
30%
20%
20%
10%
10%
0%
4/16
0%
17
18
19
20
21
22
25
26
27
28
29
4/30
月/日
電力 復旧率
ガソリンスタンド 稼働率
コンビニ 稼働率
都市ガス 復旧率
中核SS 稼働率
スーパー 稼働率
注) 電力、都市ガスの復旧率は被災戸数に対する復
旧戸数の比率。また、ガソリンスタンド、中核SS(サー
ビス・ステーション)、コンビニ、スーパーの稼働率は、熊本
県内の店舗数に対する営業店舗数。
0
5
10
15
発災(4/14余震)後経過日数
高速道路
新幹線
20
25
注)復旧率は路線
延長ベース。
注)高速道路の復旧率は、九州自動車道、東九州自動車
道、大分自動車道の全延長に対する復旧延長比率。新幹線
は九州新幹線の全延長に対する復旧延長比率。
災害現場における物流の役割
2.被害の想定(地震)
被害見積もりにおけるコンピューター解析の事例
2.3岸壁の被害想定結果(ユニットロード貨物を取扱う3岸壁)
八戸港八太郎P岸壁:Ro-Ro船バース(耐震改良済)⇒フリップ(FLIP)による岸壁構造の変形解析を実施
物流機能
緊急救援物流
解析結果
使用性・修復性
岸壁法線(前出し)
87cm<100cm
船舶の着岸は可能
エプロン
93cmの段差
⇒応急復旧
視点と役割
課題
被災者の捜索・救助
(Emergency Relief  自衛隊、警察、消防の救援
Logistics:ERL)
要員・機材の展開支援
被災者の救援
 救援物資の輸送・配達
 保険・医療・福利厚生施設
の展開支援
 避難民の輸送 等
エプロンの段差
経済社会の復 復興・市場経済への復帰
旧・復興のため  地域経済復興に向けたサ
プライチェーンの早期復旧
の物流
岸壁の前出し
(法線の凸凹)
地震後の岸壁変位図(変位量2倍誇張)
 地域雇用の確保
(Logistics for
socio-economic
 地域・国家・世界経済への
reconstruction and
インパクトの緩和
development)
注: FLIPは有限要素法による地震時の地盤の液状化及び地盤―構造物相互作用の分析プログラム。
出典:八戸港BCP,青森県県土整備部港湾空港課,平成 25 年 3 月
災害時物流における海の活用のメリット
29
災害時におけるこれまでの海からのアプローチ
主な災害
機 能
①人員・物 人員輸送(支援要員)
資輸送
人員輸送(急患・被災者)
機能
物資輸送
伊豆火山噴火
(S61)
北海道南西沖地震
(H5)
阪神淡路大震災
(H7)
三宅島噴火
(H12)
新潟中越沖地震
(H19)
東日本大震災
(H23)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
②捜索・救助機能
2.フェリー等の船の利点
★ 地震・津波に対する耐性
★ 陸上側の支援(荷役機械、人員、陸上輸送
手段)不要
★ 人員、資機材の同時輸送
★ 自衛隊輸送実績
★ 震災地への快適な居住性の提供:
病院船・お風呂船等
• 交通基盤インフラの早期
復旧
• 商業交通の早期復活
• サプライチェーンのための
BCPの準備
28
1.海上輸送の利点
○ 大量の人員、物資の集中的な輸送が可能
○ 陸上ルート途絶の迂回機能
• ラスト・マイル問題の解決
• 地域コミュニティの孤
立回避
• 交通手段・燃料確保
• 緊急救援物流におけ
る大量輸送
○
○
③医療機能
④消火機能
○
⑤被害者等 被災者
支援機能 支援
給食支援
○
○
給水支援
○
○
宿泊支援
○
○
診療支援
出所)「災害時多目的船に関する検討会・報告書(平成24年3月)」
○
○
支援要員等 宿泊支援
⑦指揮機能(現地対策本部)
○
○
入浴支援
⑥航路・港湾の障害排除機能
○
○
○
○
○
○
○
津波来襲時の沖合い避難
船が運ぶ支援
東日本大震災時の支援物資輸送手段
鉄道
(5トンコンテナ)
1,897.7万食
118個
4,60.2万本
114個
45.8万枚
33個
17.8万kl
トラック
食糧
飲料水
毛布
燃料油
原油
LPG等
その他
使用車両数、
隻数、便数等
海運
航空
0
0
723.3万kl
13.7万kl
3.9万トン
117個
1,927台
252トン
232本
2,277隻
663便
写真:東北地方整備局提供
注)食糧には自衛隊の炊き出しを含む。また飲料水は500mlペットボトル換算。
出典:内閣府資料
出典:海上保安庁ウェブサイト
出典:大規模災害時の船舶の活用等に関する調査検
討会資料,国土交通省
出典:太平洋フェリー(株)提供資料に基づき発表者が作成したもの。
フェリーによる捜索・救援部隊輸送の実績
輸送時の燃料を節約
平成28年熊本地震時のフェリーによる緊急支援輸送
北海道からの移動
着地
発地
小樽
苫小牧
函館
人員、車両、燃料等を
一度に大量に輸送
3月13日苫小牧→青森
自衛隊貸切輸送 第1船
商船三井フェリー
「SFさっぽろ」
代替揚陸拠点
となった港湾
着岸できる岸壁さえあれば
クレーンなしで輸送可能
オフサイト
型の支援
拠点
(上段:輸送人員数、下段:車両台数)
北海道
東北
126
45
6
2
1,453
789
91
36
495
341
2,171
1,213
東北地方
関東地方
北陸地方
中部地方
近畿地方
船内で休息でき、
現地で直ちに活動可能
合計
発地
249
69
3月12日小樽→秋田
緊急輸送第1船
新日本海フェリー
「しらかば」
国土交通省港湾局作成資料に基づく
合計
小樽港
苫小牧港
合計
172
54
77
28
520
349
200
67
1,310
679
249
82
520
349
2,242
1,149
203
73
6
2
1,453
789
300
105
495
341
4,699
2,459
新潟港
仙台塩
釜港
(上段:輸送人員数、下段:車両台数)
関東
近畿
四国
九州
272
208
2262
1054
0
35
四国地方
九州地方
近畿
1,310
679
近畿地方
3月28日苫小牧→仙台
仙台港利用 第1船
太平洋フェリー
「きたかみ」
中部
200
67
関東地方
秋田
北陸
209
69
九州被災地向け輸送
着地
青森
関東
40
0
北海道
大型の貨物や重量物、
危険物も輸送が可能
33
712
362
712
362
3573
1484
3573
1484
0
2
0
2
2534
1297
大洗港
合計
272
208
2262
敦賀港
舞鶴港
0
35
4285
1848
6819
3145
京浜港
名古屋港
凡例
徳島港
オフサイト支援港
北九州港
仙台
オンサイト
の橋頭堡
別府港
震災発生から4ヶ月間で自衛隊、消防、警察等、
人員 約60,500人、車両 約16,600台を緊急輸送
(
定期航路、
臨時便)
代替揚陸港
宮崎港
Copyright © K. ONO
志布志港
被災地橋頭保
港湾の広域ネットワークを活用した被災地への支援物資輸送
支援物資や支援部隊の輸送拠点としての港湾
○震災発生後、港湾管理者を始めとする関係者による速やかな点検、復旧作業により、熊本港、八代
港、大分 港等に支援物資を積載した海上自衛隊の輸送艦や、海上保安庁の巡視船が入港し、支援
物資、支援部隊の 輸送拠点として機能。
【大分港】
○国土交通省配備の大型浚渫兼油回収船、海面清掃兼油回収船、港湾業務艇が、飲料
水や食料などの支援物資を博多港、別府港、大分港へ輸送。
○海洋環境整備船2隻が、4月16日から熊本港で飲料水を提供。熊本市給水車への供給
と併せ、5月2日までに3,500名以上の住民に112,000㍑以上を提供(500mlペットボトルに
換算して、22万4千本相当)
【中国地方整備局】 【四国地方整備局】
おんど2000及びりゅ いしづち及びくるし
ま(4/18到着)
うせい(4/18到着)
【北陸地方整備局】
白山(4/21到着)
別府港
大分港
大分方面の港湾
◎
博多港
熊本方面の港湾
佐伯港
熊本
港
海上自衛隊の輸送艦「しもきた」(4月17日
大分港に入港。呉市から飲料水や毛布、
災害用トイレ、ブルーシートなどを輸送)
【八代港】
【大分港】
【熊本港】
【近畿地方整備局】
はやたま(4/20到着)
福岡県
【由布市】
大分港
【阿蘇市】
【菊陽町】
熊本港
長崎県
三角港
別府港
◎◎
佐賀県
【九州地方整備局】
海輝・海煌:給水(4/16~
5/2)
清龍丸による支援物資輸送
【中部地方整備
大分県
局】
【西原村】
清龍丸(4/20到着)
【南阿蘇村】
【嘉島町】【御船町】
◎
八代港
熊本県
宮崎県
出典:Google Maps
奄美海上保安部の巡視船「あまぎ」( 4月17
日熊本港に入港。給水支援活動等実施)
出典:海上保安庁Facebook、海上自衛隊Facebook及び各種報道から
国土交通省港湾局作成
海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」( 4月17
日八代港に入港。非常用糧食約6万600
0食などを搬入 )
海煌(かいこう)からの飲料水提供
被災地への搬入
鹿児島県
港湾を拠点とした被災地の生活支援(休養・入浴・洗濯)
○八代港で大型フェリー「はくおう」を被災者の休養施設(宿泊・入浴・食事)とし
て提供。(4月23日~5月13日:計1,601名が利用)
○国土交通省配備の大型浚渫兼油回収船「清龍丸」及び「海翔丸」が三角港において
被災者の入浴・洗濯サービスを提供。(4月23日~4月28日:計328名が利用)
「清龍丸」入浴提供(4/23~4/25)
「海翔丸」入浴提供(4/26~4/28)
大型フェリー「はくおう」
休養施設(4/23~)
船内浴室
福岡県
佐賀県
入浴後の様子
大分県
2016年3月に防衛省が「はくおう」を保有する特
別目的会社と10年間の輸送使用契約を締結
長崎県
◎
三角港 ◎
八代港
熊本県
軽食提供
宮崎県
鹿児島県
まとめ
1. 自然災害リスクの高まりに正面から向き合うこと
が必要。(私たちの生活を脅かす地震、津波等の
様々な災害リスクを日頃より常に意識し忘れない、
忘れようとしないことが大切)
2. 経済、社会の脆弱性の高まりは今後も必須。
(世の中が便利になればなるほど、その代償として
私たちの生活は災害に対してますますもろくなる
ことをいつも認識すべき)
3. 被災地におけるヒト、モノの流れは、被災者の生
命と健康を護り、地域の経済を再生。
(まず人間らしい生活を取り戻すこと。次に地域の
経済活動が復活し、生活が再建でき、心の傷が癒
えて、初めて復興)