組合せ最適化 - 理論とアルゴリズム 2.5 平面性 (pp. 41 - 49) 本日のお品書き 1. 平面的グラフの定義 2. オイラー (Euler) の公式 (a) ジョルダンの閉曲線定理 (定理 2.30) (b) オイラーの公式 (命題 2.31, 定理 2.32) (c) 平面的グラフの辺の数と平面的グラフでないグラフ (系 2.33, 系 2.34) 3. クラトウスキー (Kuratowski) の定理 (定理 2.39) (a) マイナーの定義 (b) 補題 2.36 Tutte の車輪定理 (Tutte’s wheel theorem) の心 (c) クラトウスキーの定理 (3-連結平面的グラフの場合 → 3-連結でない場合) 1. 平面的グラフの定義 注意:本節では,無向グラフについて扱う. 定義 2.28 • 単純ジョルダン曲線 (simple Jordan curve): 単射連続関数 ϕ : [0, 1] → R2 の像.また,ϕ(0) と ϕ(1) を両端点と呼ぶ. • 閉ジョルダン曲線 (closed Jordan curve): ϕ(0) = ϕ(1),かつ任意の 0 ≤ τ < τ 0 < 1 で ϕ(τ ) 6= ϕ(τ 0 ) となる連続関数からなる ϕ : [0, 1] → R2 の像. • 折れ線 (polygonal arc): 有限個の直線分 (区間) からなる単純ジョルダン曲線. • 多角形 (polygon): 有限個の直線分からなる閉ジョルダン曲線. • 連結領域 (connected region): ある同値関係のもとでの同値類 J を有限個の直線分の和集合とし,R = R2 \ J とする. R の 2 点 p, q が R の内部のみを通る折れ線 で結べるとき,そしてそのときのみ,p と q は関係がある,とする関係. 定義 2.29 単射写像 ψ : V (G) → R2 と各辺 e = {x, y} ∈ E(G) に対応する両端点が ψ(x), ψ(y) である折れ 線 Je の集合を考える.このとき,どの辺 e でも ( (Je \ {ψ(x), ψ(y)}) ∩ {ψ(v) : v ∈ V (G)} ∪ ∪ ) J e0 = ∅ e0 ∈E(G)\{e} が成り立つとき,Φ = (ψ, {Je : e ∈ E(G)} をグラフ G の平面埋め込み (planar embedding) という.グラ フが平面埋め込みを持つとき,平面的 (planar) であるという. 関数と折れ線の集合の組 Φ = (ψ, {Je : e ∈ E(G)} をグラフ G の平面埋め込みとする.平面から点と折 ( ) ∪ れ線をすべて除去した領域 R := R2 \ {ψ(v) : v ∈ V (G) ∪ e∈E(G) Je } は Φ の面 (face) と呼ばれる連結 な開領域に分割される. 1 2. オイラーの公式 定理 2.30 (ジョルダンの閉曲線定理: Thomassen, 1981) J を直線分の集合とし,R = R2 \ J とする. • J が多角形のとき,R はちょうど二つの連結領域に分割され,かつ領域はいずれも J を境界に持つ. • J が折れ線のとき,R は 1 つしか連結領域を持たない. 定義 外面 (outer face): 平面埋め込みされた平面的グラフの面のうち非有界のもの 命題 2.31 グラフ G を 2-連結な平面的グラフとし,平面埋め込み Φ = (ψ, {Je : e ∈ E(G)} をもつとする. • どの面も境界は閉路となり,どの辺もちょうど二つの面の境界上にある. • 面の数は |E(G)| − |V (G)| + 2 である. 定理 2.32(Euler 1758, Legendre 1794) 任意の連結な平面的グラフ G と任意の平面埋め込み Φ = (ψ, {Je : e ∈ E(G)} に対して,面の数 r は |E(G)| − |V (G)| + 2 である(式 r = |E(G)| − |V (G)| + 2 をオイラーの 公式と呼ぶ). 定義 グラフ G の内周 (girth): G の閉路の長さの最小値. 系 2.33 k • G が 2-連結単純平面的グラフ,かつ,G の内周が k =⇒ |E(G)| ≤ (n − 2) k−2 . • G が 3 点以上の単純平面的グラフ =⇒ |E(G)| ≤ 3n − 6. 系 2.34 K5 と K3,3 はどちらも平面的グラフではない. 3. Kuratowski の定理 定義 2.35 G と H を無向グラフとする.H のある部分グラフ H 0 と H 0 の点集合の連結な部分集合への分 ˙ k が存在して,H 0 の各 V1 , . . . , Vk をそれぞれ 1 点に縮約すると G に同型なグラフ 割 V (H 0 ) = V1 ∪˙ . . . ∪V になるとき,G は H のマイナー (minor) であるという. 言い換え:H から 3 つの操作:点を除去する,辺を除去する,辺を縮約する,を繰り返し施して G が得ら れるとき,G を H のマイナーであるという. 補題 2.36 (Tutte の車輪定理の心) (Tutte 1961, Thomassen 1980) 5 点以上の 3-連結グラフ G は,G/e が 3-連結となるような辺 e を含む. 定理 2.37 (Kuratowski 1930, Wagner 1937) 3-連結グラフ G が平面的である.⇐⇒ G が K5 と K3,3 のど ちらもマイナーとして含まない. 補題 2.38 (Thomassen 1980) G は 3-連結でない 5 点以上のグラフであり,K5 と K3,3 のいずれもマイナー として含まないとする.すると,新しい辺 e = v, w を加えたグラフ G + e が K5 と K3,3 のいずれもマイ ナーとして含まないようなある隣接しない 2 点 v, w ∈ V (G) が存在する. 定理 2.39 (Kuratowski 1930, Wagner 1937) 無向グラフ G が平面的である.⇐⇒ G が K5 と K3,3 のどち らもマイナーとして含まない. 定理 2.40 (Hopcroft and Tarjan 1974) 与えられたグラフに対して,平面的かどうか判定し,平面的なら ばその平面埋め込みを与える線形時間アルゴリズムが存在する. 2
© Copyright 2025 Paperzz