ACCU国際教育交流事業 2008 年韓国政府日本教職員招へいプログラム 実施報告 ソウル・釜山(プサン) 2008 年 8 月 19 日(火)- 8 月 28 日(木) 財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU) -1- -2- はじめに ユネスコ・アジア文化センター(ACCU:Asia/Pacific Cultural Centre for UNESCO)は、1971 年(昭和 46 年)に設立された財団法人です。以来、ACCUは今日まで、ユネスコの基本方針に沿 って、主としてアジア太平洋地域のユネスコ加盟各国の文化の振興と相互理解の促進に寄与するため、 文化協力、教育協力、人物交流の分野で協力・支援事業を展開してきました。 人物交流事業の一環としてACCUは、2001 年より韓国から初等中等教育教職員を招へいするプロ グラムを実施してきましたが、このプログラムは 2000 年 3 月、戦後の文部大臣として初めて中曽根 弘文文部大臣(当時)が訪韓し、文龍鱗(ムン・ヨンリン)韓国教育部長官(当時)との会談でなされ た招請に基づき、文部科学省の委託を受けて始まったものです。当初は「ACCU・ユネスコ青年交 流信託基金事業」として、2003 年からは「ACCU国際教育交流事業」のもとで、これまで約 650 名 の韓国教職員が日本を訪問し、我が国の教職員との交流を深め、日韓両国間の相互理解と友好の促進 に貢献してきました。 2003 年からは上記プログラムと対をなすものとして、毎年 10 名程度の日本教職員を韓国へ派遣し てきましたが、これら交流事業の成果が韓国政府に高く評価されることとなり、2005 年からは、韓国 ユネスコ国内委員会による招へいプログラムとして参加人数も 20 名へ倍増し、日韓教職員相互交流 が実施されてきました。韓国政府招へいプログラムとして 4 回目となる今回は、招へい人数を 54 名 に拡充し、さらなる交流の発展を目指しました。 2008 年 8 月に実施されたこのプログラムでは、ソウルそして釜山における学校および教育文化施設 訪問を通して、韓国における教育の全体像だけでなく、その多様性について学ぶとともに、韓国の教 職員、生徒・児童との交流を図ることができました。 最後に、このプログラムにご支援とご協力をいただきました韓国ユネスコ国内委員会、韓国教育科 学技術部、文部科学省、秋田県、群馬県、東京都、宮城県気仙沼市、埼玉県さいたま市、兵庫県宝塚 市の各教育委員会、ユネスコ・スクール(ASP)そして訪問先の学校、教育文化施設等、多数の関 係者の皆様に厚く御礼申し上げます。 2009 年 5 月 (財)ユネスコ・アジア文化センター 3 4 目次 はじめに 第Ⅰ章 実施概要 1. 事前オリエンテーション 6 2. 韓国ユネスコ国内委員会オリエンテーション 6 3. 教育交流プログラム: ソウル(全体) 7 4. 教育交流プログラム: 5. Aグループ、及びA・B共通プログラム 8 Bグループ 15 教育交流プログラム:釜山(全体) 18 第Ⅱ章 参加者の報告 Aグループ 20 Bグループ 116 参考資料 1. 実施要項 210 2. 日程 213 3. 参加者リスト 216 4. 写真 220 -3- -4- 第Ⅰ章 実施概要 -5- Ⅰ.実施概要 1.事前オリエンテーション 2008 年 8 月 18 日(月)午後2時 30 分より、ホテルメトロポリタンエドモント1階「クリスタルホー ル」において事前オリエンテーションが開催された。まず、飯田和郎ユネスコ・アジア文化センター(A CCU)理事・総務部長から、今回で韓国政府による4回目の招へいとなる本プログラムの趣旨、AC CUの活動について説明があった。続いて今回の団長となる小澤紀美子・東京学芸大学名誉教授からの あいさつの後、李相鎮(イ・サンジン)駐日本国大韓民国大使館一等書記官が、韓国の教育事情につい て講義を行った。韓国の学校教育機関のシステムの紹介を始め、以下のような項目を含んだ韓国の教育 行政および教育制度の概要についての説明を行った。 ・教育行政と財政 ・学校教育 ・教育課程と教科書の編纂 ・高校平準化政策 ・学校保健と給食 ・教育研究活動 ・教員研修と厚生福祉 ・英才教育と科学技術教育 ・生涯教育 ・国際教育協力および海外在住韓国人のための教育 ・教育の情報化 ・今後の課題(公教育の充実、政権交代の影響等) 講義後の質疑応答では、参加者から、私教育への依存率の推移、一学級数当たり児童数の変化、小学 校における英語教育等について質問があった。休憩をはさみ、ビデオによるACCUの事業紹介の後、 分団長(新井哲夫・群馬大学教育学部付属小学校長および寺木秀一・調布市立布田小学校長)からあい さつがあった。プログラム日程その他の事務連絡等の後、グループごとに分かれ、参加者の自己紹介、 日程および役割分担の確認等を行った。 18 時からは、同ホテル2階「薫風」にて懇談会が開催された。佐藤國雄ACCU理事長の乾杯の発声 後、終始和やかな雰囲気のうちに、全国から集った初対面の参加者が打ち解けていった。韓国で日本文 化紹介として披露する予定のパフォーマンスとして合唱を練習するなどして、参加者間の結びつきが強 められた。 2.韓国ユネスコ国内委員会オリエンテーション 8月 19 日(火)、羽田空港より出発した日本教職員一行は、午後韓国・ソウルに到着した。宿泊ホ テルでもあるソウルロイヤルホテルにおいて、韓国ユネスコ国内委員会(KNCU)によるオリエンテ ーションが実施された。KNCUスタッフから歓迎の意が述べられた後、配付された資料をもとに日程 の詳細について説明が行われた。今回から招へい人数が倍になったため、グループを2つに分けること、 また、1グループにKNCUスタッフ1名、アシスタント(インターン)1名、通訳2名、旅行会社(ロ ッテ観光)ガイド1名がつくこと等が説明され、万全の受入れ体制に韓国側の配慮が伺えた。 -6- 3.教育交流プログラム:ソウル(全体) (1)開会式 8月 20 日(水)、ホテルから程近いKNCUビル内会議室において、李三悦(イ・サムユル)KN CU事務総長の臨席の下、開会式が行われた。李事務総長のあいさつでは、単なる観光目的ではなく、 平和の理念に基づいた教育・文化交流を深める貴重な機会である本プログラムへの招へい人数が倍増さ れ、2倍の喜びを感じるとともに重責も感じていること、また、学校訪問を通じて教員同士で経験を分 かち合い、交流を深めることへの期待が表明された。続いて、日本側を代表しての小澤団長からのあい さつでは、グローバル化が進展し、新しい知性が求められている現在、教員の役割の重要性が増してい ること、そのような中で、欧米とは違ったアジアの知性の追求において、今回の訪問による両国間の交 流を活かしていきたい、またユネスコ・スクール(ASP)や持続発展教育(ESD)について、いろ いろな価値観のぶつかり合いの中からお互いの事業の展開の仕方を学びあっていきたいとの抱負が述 べられた。最後に、KNCUをはじめとする韓国側関係者に謝意が述べられた。 (2)韓国の教育事情等についての講義 開会式に引き続いて、会議室において講義が行われた。 まず、キム・ビョンチャン京畿大学教授から、韓国における教員評価制度の現状と課題について講義 が行われた。1960 年代に確立された教員評価制が、教員の社会的評価の低下、公教育再生の必要性、教 員の専門性と質の向上といった課題により見直しがせまられていること、能力開発を目的とした新たな 評価制度の導入、教員・保護者・生徒の意見を適切に反映した制度構築が課題であること等について説 明があった。 次に、鄭雨倬(チョン・ウタク)KNCU企画室長から、KNCUの事業紹介が行われ、韓国におけ るユネスコ活動について説明を受けた。「万人のための教育(EFA)」や「持続発展教育(ESD)」 の普及、無形文化財の保護、青少年育成においてKNCUが果たしている役割について詳細な説明を受 けた。 昼食の後、成貞姫(ソン・ジョンヒ)延世大学校東西問題研究院研究教授から、韓国の学校における ESDについての講義を受けた。1980 年代に環境教育として導入が始まったが、選択科目のため学生の 履修率が 11~30%程度と低いこと、校長をはじめとする教員のESDに対する認識が低く普及が遅れて いること、ESDが環境教育と同一視され、平和教育、人権教育を含めたより広い概念とするよう見直 しが必要であること、2006 年の第7次国家教育課程の中にESDが含まれ、制度的な基盤ができたので、 学校外のパートナーとの連携が課題であること等、説明を受けた。 休憩をはさみ、徐賢淑(ソ・ヒョンスク)KNCU・ユネスコ・スクール(ASP)担当官から、韓 国のASP事情について、国際理解教育関連事業、ASPネットワークの展開、ASP活動の重点およ び期待される成果を中心に説明を受けた。また、ASP校で実際にASP事業を担当している教員2名 から、学校現場におけるASP事業のプログラムづくり、校長の意識変革、教員研修、生徒の啓蒙、保 護者や地域との連携等について、実践事例が紹介された。日本側参加者からは、継続的なASP事業の ためには、急激に変革するのではなく、少し少しの積み重ねが必要であるとの感想があった。 (3)歓迎レセプション 講義終了後、ソウルロイヤルホテルにおいて、歓迎レセプションが開催された。レセプション会場に は、先の韓国教職員招へいプログラム(2008 年1月~2月)に参加した韓国の教員も招待されており、 -7- 日本側の参加者とともに再会を喜びあった。Aグループが訪問する善隣中学校の生徒によるサムルノリ の演奏の後、李三悦(イ・サムユル)KNCU事務総長から温かい歓迎のあいさつがあり、今回から招 へい人数が倍増された本プログラムをはじめとする日韓相互交流の重要性が強調された。参加者に対し ても、多くの教員や児童生徒と触れ合い、交流を深めてほしいとの期待が寄せられた。日本側からは、 小澤団長が答礼のあいさつに立ち、今回のプログラムを通じて、参加者一人ひとりが自分の目で見て、 韓国の実情について肌で感じたいと思っていること、また、細部にまで行き届いた温かいもてなしに対 する感謝の意が表明された。富義之・駐日韓本国大使館広報文化院副院長の乾杯の発声の後、各テーブ ルにおいて和やかな歓談が行われた。日本側参加者が事前に練習していた「四季の歌」や「故郷の春」 の合唱の後、群馬県を訪問した韓国教員から「ふるさと」の合唱が披露される等、大変和やかな、心の こもった宴となった。両国参加者から、翌日からのプログラムの成功を期待する声が多く寄せられた。 以下は、グループ別報告である。 4. 教育交流プログラム: Aグループ、及びA・B共通プログラム (1)本プログラムに対する事前の期待 Aグループの参加者は、主として次のような項目について、韓国の教育の実情を見聞することを期待 していた。 (教員)・教員の評価制度 (学校)・進学制度 ・総合学習 ・教員の資質向上に向けた取り組み ・学力向上対策 ・課外活動 ・小学校における英語教育 ・韓国伝統文化教育 ・心の教育(LD、ADHDや不登校生徒への対応) (家庭)・家庭と地域と学校の役割分担 ・塾の実態 (2)本プログラムにおけるAグループの活動概要 8月 21 日(木曜日) <清明高等学校訪問> 個別の支援体制に関心が集中 恵まれた施設・設備 清明高等学校は男女共学の公立学校で、ソウル市内から1時間ほどの水原市に位置する。クラスは特 殊学級3クラスを含め 50 クラスあり、学生数は 1785 名、教員数 100 名の学校であった。 「至誠・協同」 を校訓とし、英・数のレベル別授業、ユネスコ・スクールとしての活動、読書・論述指導の強化を目標 -8- に掲げ、個々の学生の特性に応じた指導・支援に努めている学校であった。 はじめに校長室を訪問し、挨拶及び日程について説明を受けた。 その後、4階にある語学室で、学校の現況(校訓「至誠・協同」、学校長の教育方針、教員・職員・ 生徒・施設などの数、学校の特色プロジェクト、教育活動の実績)とユネスコ・スクールとしての活動 紹介があった。 日本の教員からの興味・関心が集まった内容としては、 ①特殊クラスの人数、障害の種別について。 ②レベル別のクラス分けについての方法、能力が劣る生徒に弊害はないのか。 ③入試のシステム。 ④早期卒業にリストアップされる生徒の学習状況。等であった。 その後、2班に分かれて英語(男子生徒)と日本語(女子生徒)の授業見学を行った。英語では、プ ロジェクターを使用しながらの授業であった。やや、生徒が受動的な印象を受けた。日本語の授業では、 杉山先生による「宝塚歌劇」の紹介があった。PCのハプニングがあったが、生徒は興味をもって授業 に参加していた。 授業参観を終えた後、いくつかのグループに分かれ、生徒との懇談会を行った。生徒は日本語がとて も上手で、自分の考えをきちんと話していたのが印象的だった。 教職員食堂で学校給食を食べ、施設見学を行った。科学室や自習室等見せていただいた。教員のリフ レッシュのためのフィットネスルームやゴルフ練習場もあった。一番興味を集めたのは、早期卒業が見 込まれる生徒の時間割表や特別自習室の様子であった。生徒への支援が徹底していることを目の当たり にした。 <水原華城> 水原華城は、正祖王が父の御陵を水原に移すとともに築いた城である。1794 年に着工し、2年9ヵ月 かけて完成した城郭は全長 5.7 ㎞に及び、山から平地にまたがって築城され、敷地内に道路や橋、商店 街を有する城郭都市だった。遷都は果たせなかったものの、町の中心を城壁が囲み壮麗な姿を見せてく れていた。1997 年にはユネスコの世界文化遺産に登録された。 まず、華城行宮を見学した。正祖王が父の墓参りのたびに滞在した場所である。正殿にあたる奉寿堂 は、正祖王の母の還暦の祝宴も行われたそうで、その様子が人形によって復元されていた。「チャング ムの誓い」の撮影も行われたそうだ。宮中文化を垣間見ることができた。 見学の後、水原華城の敷地の中で一番高いという場所に徒歩で登り、そこから城壁見学用の列車(自 動車で牽引)に乗り、徒歩では何時間もかかるような長い城壁を見学した。 その後、韓国の弓道を体験した。本来は 145m 先の的に当てるのだそうだが、大変遠いので、体験で は 40m先の的をねらった。仕方を習った後、個々に5本ずつ矢を放った。体験の後、弓道のプロの方が 矢を射るところを見せてもらったが、すごい迫力だった。 最後は徒歩で城壁の上を歩き、見張り台などを見学した。世界文化遺産に指定された水原華城。天候 に恵まれた中で、韓国の歴史に触れることができた貴重な見学となった。 -9- 8月 22 日(金曜日) <善隣中学校訪問> 創立 100 年を超える公立の伝統校である善隣中 学校を訪問した。校訓は「よく考え、実行し、我慢する」 であるという。 保護者のチマチョゴリを来ての出迎えに感激しながら、校 長の挨拶や教頭による学校紹介を聞いた。その後の生徒から の歓迎のパフォーマンスは、特別学級生徒によるチャイムベ ル演奏に始まり、伝統楽器であるヘグン演奏、伝統舞踊、実 用音楽班5名のバンド演奏があり、歓迎の気持ちが伝わって きた。 教室に移動し、授業参観及び模擬授業を行った。3年2組 保護者の出迎え の英語クラスでは、小島先生による英語「have to~」の活 用の授業、2年6組の日本語クラスでは、中村先生の剣玉と金沢先生の切り絵の授業が行われた。生徒 たちは、楽しそうに授業を受けていた。 また、他の授業、3年生の理科、2年生の体育、1年女子の柔道、1年生の地理等、校舎を案内され ながら見学することができた。 協議会・討論会では、数学の授業について活動から学ぶ場面はあるのかという問いに、授業は主に原 理を学ぶ、活動は裁量の時間でという答えが返ってきた。また、柔道の理念は人格形成であること、日 本語の選択については、2・3年生で選択ということだった。学力不振による不登校生徒などはいない かという質問に対しては、相談室が設置されており、一般生徒も相談できる環境にあることが説明され た。 また、 「我慢する」という校訓の意味については、大人になってから思い通りにいかないこともある、 他人との生活の中で様々な困難に耐えること大切だと話された。そしてそれは深く考えることを通して、 身に付けるようにしていることを話された。さらに、新井分団長より、美術教育について質問があった。 時間を大幅に超過し、熱心に質疑が行われた。 教員用ランチルームでは、私たちの口に合うようにメニューを考えて作っていただいた給食をとても おいしくいただいた。 始めに撮影した写真をお土産にいただいた。雨の中、見送りをしていただき感謝をしながら善隣中学 校を後にした。 <果川中央高等学校訪問> 「自律・創意・勤勉」を教訓とし、学校経営優良校として優れた教育活動を実践している果川中央高 等学校を訪問した。京畿道果川市に位置する、2000 年に開校された新しい学校である。 学校に着いて、学校長の挨拶を受け、新井分団長が挨拶を行った後、果川中央高等学校の概要につい ての説明が行われた。その後、学校施設見学、クラブ活動見学、授業参観となった。 - 10 - まずは、障害児学級の見学を行った。2つの教室で約 10 名の生徒が音楽・美術の活動に取り組んでいた。 続いて、職員室を見学し、図書館へ移動した。約 17,000 の蔵書を有し、すべてコンピュータで管理されているとの ことだった。また、館内には多数のコンピュータが配置さ れており、生徒はそれを用いた学習も可能であることが話 された。各教室にも、大型のテレビがそれぞれ用意され、 PCを接続して行われる授業が多く展開されており、情報 設備の先進的な配備が印象的だった。 日本語で自己紹介 次に自習室を見学した。果川中央高等学校では1日8時 限の授業が用意されているが、多くの生徒は、それ以上の学習を望み、8時限後に補習授業に参加し、 さらに生徒によっては夜 12 時過ぎまで学習しているとの説明を受けた。 その後、授業を参観。日本語の授業では、生徒たちは大きな声の挨拶と四季の歌で迎えてくれた。 懇談会では、韓国の学習時間の多さに伴う健康状態等について話題となった。保護者は、食事等に十 分配慮しているということ、厳しい受験競争の中で親として精一杯できることをしていると話していた。 8月 24 日(月曜日)(A・Bグループ共通プログラム) ソウルから、釜山へ移動。 <梵魚寺> (A・Bグループ共通プログラム) 昼食を梵魚寺でいただいた。梵魚寺での昼食は、貴重な体験となった。4つのお椀にそれぞれ食べる ことのできる分の量をいただくこと、たくわんを使い水で清めてお椀を納めることなど、日本古来の習 慣と大変似ているところを感じながら食事をいただいた。普段の食生活を見直す機会ともなった。その 後、場所を移動して講話をお聞きした。お茶をいただきながら気持ちの落ち着く時間を皆で共有した。 食事、講話の後、梵魚寺を見学した。繊細で華麗な造りになっている寺院であった。梵魚寺という名 前の由来についても説明を受けた。 <ホームビジット> (A・Bグループ共通プログラム) 夜は、各々家庭訪問をした。相手に会うまでは、どんな方だろう、どんな家庭だろうとそれぞれ不安 があったものの、訪問先では話が弾み、韓国の一家庭を知るとてもよい機会となった。 <「ナンタ」鑑賞> (A・Bグループ共通プログラム) 学校訪問を終え、一度ホテルに戻り夕食を済ませた後再び集合し、専用劇場においてミュージカル「ナ ンタ」を鑑賞した。韓国の伝統芸能「サムルノリ」を現代風にアレンジしたコミカルなミュージカルは、 韓国語が分からずとも十分に楽しめる内容となっていた。参加者のうち数名が壇上に呼ばれ劇に加わる 一幕もあり、一行は疲れも忘れて、ダイナミックなパフォーマンスを堪能した。 - 11 - 8月 25 日(火曜日) (A・Bグループ共通プログラム) <牛浦沼> フィールドを歩きながら、ここでは、小学校3年生が多 く訪れ環境学習を進めていることが紹介された。牛浦沼は 生態系を学習するのに適した場所である。その理由として は、様々な生物と対象とを比較しながら学習できる場所で あること、内陸にある一番大きな湿原であることが挙げら れる。牛浦沼は、貴重な遺伝子バンクであり、多くの資源 自然の中で学ぶ小学生 を保っていることがわかった。 生態系の保存地域として指定されて 10 年。 (1997 年7月、環境部から「自然生態系保存地域 Ecological Conservation Area」に指定され、1998 年3月にはラムサール協約 Ramseur Convention に登録されてい る。)湿原は、水の氾濫を防ぎ、タンクの役割を担っていることを話された。湿原は緑のカーペットが しかれたようであり、オニバスが群生し、シラサギの姿も見ることができた。 <牛浦沼生態公園についての説明、伝統工芸体験> (A・Bグループ共通プログラム) 始めにチャンニョン教育庁教育委員シン・ヒョンインさんから説明を受けた。廃校となった場所を活 用し、環境教育を実施しているとのことだった。ハッピーツアー体験や室内教育の実施など、地元の子 どもたち(小学校3年生)を巻き込んだ教育を行う取組について説明された。 「自然からのおくりもの牛浦沼」を視聴し、沼ができた行程や沼の春夏秋冬、そこに生息する動植物 を知ることができた。 説明を受け、国内最大の原始的な生態系を保っている牛浦沼は1つの生命体であるとの認識を深めた。 その後、学生(小学校3年生)が授業を受けている様子を見学した。子どもたちは、チョウに色を塗 り、形を切り取って完成させていた。さらに、飛んでいったチョウへのメッセージを書くことで、自然 に対する思いを表現させるものであった。 説明を受けた部屋に戻り、授業を担当している2人の先生から実践の紹介があった。小学校3年生の 子どもたちの実態を把握し、工夫した教材・教具(さわって、作って、遊ぶ…五感を使って学ぶことが できるもの)を用いて指導できるものとなっていた。子どもたちが作りながら、生態系を知ることので きる教材が多くあった。訪問団からは3名の先生方が質問をしたが、丁寧に答えていただいた。 最後に伝統工芸体験を行った。村や寺の入口に立ててあり門番を意味する「チャンスン」と、鳥が木 にとまっているもので祈願を意味する「ソッテ」を、木のパーツを用 いて説明を受けながら作成することができた。それぞれに表情の違う 作品が仕上がった。 8月 26 日(水曜日) <釜山国際中学校訪問> 未来社会を先導すべき有能な人材の育成を教育目標に掲げ、調和の とれた人格の形成を目指しているという釜山国際中学校を訪問した。 釜山国際中学校は、創立 11 年目で、韓国初の国際中学校であり、男 - 12 - 志はあくまでも高く 女共学で各学年 60 名。2クラスで構成されていた。各学年の3分の1は帰国子女枠で入学するという。 特別目的校として選抜がある中学校であった。また、多数の国々の学校と姉妹校関係にあり、体験重視 の国際理解教育を実践している。体育や芸術科目も尊重しているということであった。 校舎には、“Eyes towards the world”“Hearts full of dreams”の文字が刻まれており、目をひい た。廊下の掲示物等も、ほとんどが韓英の2カ国語で表記されていた。1階ホールや会議室には姉妹校 (中国、日本、モンゴル、コロンビア、ラオス、カザフスタン等)締結の証書や写真が飾られていた。 図書室にて、学校広報のビデオを視聴した。生徒の才能を育み、世界市民として、明日のリーダーの 育成を目指していることが強調されていた。学校長の挨拶、そして、分団長である新井先生の挨拶が行 われた。挨拶の中で、学校訪問やホームビジットの受け入れへの感謝が述べられ、訪問を通して英才教 育の成果や課題、人材育成における経験・実績について学びたいと話された。 続いて、授業参観及び日本文化紹介が行われた。1年生 から3年生までの各クラスの授業を参観することができ た。2年1組のクラスにおいて、眞瀬先生と結城先生によ る折り紙の授業も行われた。 授業参観後、学校施設案内をしていただいた。カフェテ リア、舞踊室、音楽室、美術室、プール、体育館、英語室、 コンピュータ室、職員室等、充実した施設であった。後、 釜山国際中学校の教室をお借りして、小・中・高等学校の 3つのグループに分かれ、韓国の先生方と懇談会が行われ 新井哲夫分団長の挨拶 た。小学校グループには、韓国から4名の先生に参加いた だいた。話題は主に、小学校における英語教育や私教育と 子どもの成長についてであった。短い時間ではあったが、活発に意見交換が行われた。 <グループプログラムレビュー会議> (A・Bグループ共通プログラム) 午後は東州大学アカデミーハウスに場所を移動し、最終日に行われる報告会のため、グループプログ ラムレビュー会議を行った。訪問しての感想や成果等が話し合われた。 8月 27 日(木曜日) (A・Bグループ共通プログラム) <国立慶州博物館、仏国寺> バスで高速道路を通って一路慶州に向かった。慶州は新羅の都として 1000 年の栄華を誇った都市で あり、慶州市は奈良市の姉妹都市でもある。新羅時代からの国宝級美術が多く展示されている国立慶州 博物館、および韓国の代表的な仏教芸術の宝庫であり、ユネスコ世界文化遺産でもある仏国寺を視察し た。 まず、国立慶州博物館では、聖徳大神鐘等野外の展示を見学した後、展示物の 90%が本物(複製でな い)である考古館を見学した。 引き続いて訪れた仏国寺では、大雄殿を中心に鮮やかな色彩の遺跡を見学した。ガイドにより、建造 物が土台の石造部分を除き、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に焼失したことが説明された。参加者にとっては、 - 13 - 両国間の絡み合う歴史、そしてそれにもかかわらず各地で歓迎してくれる韓国の人々について改めて考 える貴重な機会となった。 <報告会及び閉会式> (A・Bグループ共通プログラム) 内容・詳細はP17 参照。 Aグループからは、プログラム全体を総括して以下のような意見・コメントが挙がった。 (3)本プログラムを通じて学んだ(気づいた)こと ・財政支援が豊かであり、施設・設備が充実している。放課後の学習活動支援や学力の低い生徒への対 応などにおいて、予算が潤沢であるという印象を持った。 ・教育活動において、全校挙げての取り組みの様子がうかがえ、先生方のチームワークがよいと思った。 ・キャリア教育・人材育成の面では、受験の準備教育が過熱している印象を持った。だが、日本も同じ 問題を抱えているといえる。韓国では平準化政策により学校内での格差があり、日本では入試によって 学校間の格差がある。韓国は顕在化しているが、日本は潜在化している。日韓ともに人材育成が重要で あるが、それが受験学力にとらわれている。幅広い能力の育成が重要であり、ペーパーテストでは計れ ない能力も重視すべきである。また、ゆとりの必要性を実感した。 ・教育の今後を考えるとき、今までは欧米がモデルであった。しかし、今はそうではない。多くの共通 点を持つ韓国と日本が相互理解し、共通認識を持ち、学びあっていくことが大事である。ゆえに、日韓 交流はますます大事である。 (4)本プログラムの長所および短所(改善に向けての提案) <長所> ・時期については、韓国で授業が行われ、日本が休業中であるこの時期が妥当である。期間について、 10 日間は長からず短からず、適切であった。 ・日韓の教員による意見交換会と日本人教員による授業は、互いに大きな学びの機会となった。 ・ホームビジットでは大きな満足感と達成感を得ることができた。 ・世界遺産や各種施設の訪問は、韓国の文化や歴史を知る上で有効であった。 ・通訳・ガイドが非常に有能であり、日本語も堪能であったことから、研修の大きな助けとなった。 <改善に向けての提案> ・政治的な問題が影響して、小学校への訪問ができなかったのが残念であった。 ・同じ理由で、プログラムがなかなか確定せず、事前の情報が少なかった。授業者は対象となる生徒像 がはっきりせずにとまどったようだ。 ・中身が濃く、日程がびっしり詰まっていた。もう少し時間的なゆとりがほしかった。 (5)日本に帰国後のフォローアップ活動 ・このすばらしい経験を、児童・生徒や同僚に伝える義務と責任を感じた。 ・日々の授業に韓国のことをテーマとして取り上げ、学習に還元していきたい。 ・日本ではASPの活動が限定的にしか行われていない。積極的に活用して拡大していきたい。 - 14 - (6)その他、本プログラムに参加してのコメント・意見 ・個々の思いはそれぞれの報告で延べることにして、AグループとしてはKNCUをはじめ、このプロ グラムにかかわったすべての人に心より感謝したい。 Bグループ報告 A・B共通部分はAグループ報告参照。 8月 21 日(木曜日) <非武装地帯> 8月 21 日(木)午前、Bグループは、非武装地帯(DMZ)を視察した。朝鮮戦争時の捕虜交換の 場となった自由の橋や、南侵のために掘られた第3地下トンネル、京義線の韓国側最北端の都羅山駅等 を訪れ、現代史の中に今も残る分断された朝鮮半島の姿に触れた。韓国側からほど近い開城には韓国企 業が進出し、工業団地が形成されていることについても説明を受ける等、日本側参加者にとっては、最 近の南北関係の変化も感じられる視察となった。 <山マウル高等学校> 同日午後には山マウル高等学校を訪問した。ASP校である同校は、2000 年に開校し、全校生徒が 62 名という小規模校である。まず、尹玲邵(ユン・ヨンソ)校長から学校の概要について説明を受けた。 共生、平和を教育理念とし、平和の種をまく「ピースメーカー」の育成、人と人との共生、人と自然と の共生を目指していること、自然の素材を利用して1棟ごと異なるデザインで建てられていること、太 陽光パネルや地熱発電を利用して、電気や冷暖房をまかなっていること、水を利用しないエコトイレが あること、農作業を通じた自然体験プログラムを実施していること、日本の学校をはじめとする国際交 流プログラムも毎年行っていること等が紹介された。続いて2グループに分かれて校内を回り、上記の 施設の説明を受けるとともに、授業を見学した。日本側参加者(石橋和子・東京都立忍岡高等学校主幹 および畠山道子・気仙沼市立鹿折小学校教諭)からは、女子生徒に対して、着物の着付けが披露され、 希望する生徒が続出した。体育の授業、農作業等を見学した後、職員室において教員同士の意見交換を 行った。日本側参加者からは、授業時数、生徒の教科選択等について質問があった。その後、食堂に集 まり、小グループに分かれて生徒と交流し、生徒の日常生活、関心事等について話を聴くことができた。 最後には、寄宿舎で暮らす生徒たちに出されるものと同じ夕食を体験した。日本側参加者からは、受験 競争の厳しいイメージのある韓国にも、スローライフを実践し、別の生きかたを提案する学校があるこ とに感銘を受けていた。 8月 22 日(金曜日) <ソウル精進学校> 8月 22 日(金)午前、Bグループは、ソウル精進学校を訪問した。同校は、公立ではソウルで最も 古い特殊学校(特別支援学校)であり、改築作業が行われている中での訪問となった。まず、朴海平(パ ク・ヘビョン)校長から、温かい人柄を感じさせる、歓迎のあいさつおよび朴校長が「韓国教職員招へ いプログラム」により日本を訪問した際に覚えた「ふるさと」の披露があり、それに応えて日本側も「故 郷の春」の合唱を披露した。その後、同校の教育について、ビデオによる紹介があった。続いて同校の - 15 - 卒業生による弦楽器演奏が披露された。生徒たちの洗練されたパフォーマンスに、日本側の参加者は感 動するとともに、指導する教員や保護者に対しての賞賛が相次いだ。 学校内を見学した後、会議室において教職員との交流・意見交換の機会が持たれた。日本側からは、 重度の子どもたちの受入れ、学級構成、卒業後の進路について質問するとともに、事前に韓国側から質 問があった日本の特別支援教育事情について発表を行う等、双方が互いの現状について理解を深める機 会となった。朴校長をはじめとする韓国側教員には、学校訪問後の昼食にも同席いただき、さらに交流 を深めた。 <漢陽大学校師範大学附属高等学校> 午後には、漢陽大学校師範大学附属高等学校を訪問した。ソウル、延世、高麗の各大学に続く名門校 である漢陽大学校の附属校である同校においても、校門に日本教職員団を歓迎する大きな横断幕が掲げ られなど、温かい歓迎を受けた。まず、金龍満(キム・ヨンマン)校長から、流暢な日本語による歓迎 のあいさつを受けた後、2グループに分かれて見学を行った。日本側参加者からは、稲生淳・和歌山県 立古座高等学校教頭から、朝鮮通信使等の過去の日韓両国の交流から、将来への示唆を学ぶ必要性につ いて模擬授業が行われ、その後小グループに分かれて生徒たちとのディスカッションを行った。日本語 を学んでいる生徒もおり、日本側参加者も、日本語、英語や韓国語で、生徒からの質問に答える等して 交流を深めた。また、同教科の教員同士で意見交換する機会も設けられ、英語や数学の教員同士で互い の現状を話し合う様子も見られた。その後、金校長の案内により、学校内の施設を見学した。自習室、 食堂、教務室、音楽練習室、物理や化学の専用教室等充実した設備に日本側参加者の多くが感嘆の声を 挙げていた。引き続いて、同校の活動について、ASPネットワークを国際交流事業を中心に映像を使 った紹介が生徒により行われた。パワーポイントを駆使した英語または韓国語による説明は非常に分か りやすく、またその英語の流暢さに大変感銘を受けていた。 釜山プログラム: 8月 26 日(火曜日) <南星女子高等学校・日韓教師懇談会> 8月 26 日(火)午前、Bグループは南星女子高等学校を訪問した。キリスト教精神に基づく私立女 子高校であり、ASP校として 40 年以上ユネスコ活動を行っている同校は、海外の多くの学校と積極 的に交流している。また、李KNCU事務総長も一行に合流し、ともに視察を行った。 まず、セレモニーホールにおいて、歓迎式が行われた。金龍武(キム・ヨンム)校長の歓迎のあいさ つ、李KNCU事務総長の来賓あいさつの後、生徒により、伽耶琴の演奏、テコンドーの模範演技、合 唱、ハンドベル演奏など多様なパフォーマンスが披露された。引き続いて、稲生淳・和歌山県立古座高 等学校教頭から、日韓の交流の歴史についてスピーチを行った。李舜臣をはじめとする海を通じた日韓 の交流史、朝鮮通信使、日韓の差異のとらえ方等についての講演は、韓国教職員および生徒の心をうっ た。 歓迎式終了後、教室に移動し、数学、英語および日本語の授業を見学した。特に日本語の授業では、 石橋和子・東京都立忍岡高等学校主幹および畠山道子・気仙沼市立鹿折小学校教諭から、浴衣の着付け の紹介があった。浴衣のモデルとなりたい希望者が殺到したが、2名の生徒に実際に浴衣を着せ、装飾 等について紹介を行った。 - 16 - 授業見学の後、3グループ(小学校、中学校、高等学校の校種ごと)に分かれ、教員同士の懇談会を 行った。南星女子高等学校の教員(2名)のほか、釜山近隣の小学校(3名)、中学校(3名)から韓 国教員が参集し、受験が加熱する中での知識以外を重視する教育の必要性、規則に関する指導、国際交 流のあり方等、活発な討議が行われた。特に、小学校教員同士の懇談では、今回のプログラムで小学校 を訪問できなかったこともあり、韓国の小学校事情について熱心に質問する日本側参加者が目立った。 <グループプログラムレビュー会合> (A・B共通プログラム) 昼食後、東州大学アカデミーハウスに移動し、グループプログラムレビュー会合が行われた。翌日の 報告会を前に、日本側参加者のみによる意見交換の機会を設け、気づきや発見について共有すること、 および報告会の準備をすることが会議の目的である。 予め提示された報告会発表の形式に基づいて、Bグループからは以下のような意見が挙げられた。 ・ 事前の期待としては、今回の日本側参加者には、ASP校からの参加者が多く、ASP活動が盛 んである韓国の実情を視察すること、およびESD事情について理解すること等が挙げられた。ま た、日韓両国をめぐる事情の中、韓国側がどのように迎えてくれるのか関心があったという参加者 もあった。 ・ 活動概要については、日程順の発表では単調になり、単なる事実の羅列になあってしまうので、 日韓の相違点、共通点を中心にまとめることとした。 ・ 本プログラムから学んだこと、気づいたことについては、私教育(塾)の比重、代案学校(オル タナティブ・スクール)の存在、財政的基盤が日本に比べ安定していること、生徒の語学力を基 盤としたダイナミックな国際交流、特殊学校での重度の障がい児童の受入れ、韓国社会としての 障がい者の受入れ等が挙げられた。 ・ 良かった点としては、生徒との交流、牛浦沼でのフィールドワークの実地体験、緻密なスケジュ ーリング、優秀な通訳、なか日に1日自由行動の日が設けられたこと、日本語資料が用意されて いたこと、バラエティに富む学校訪問、文化体験等が挙げられた。 ・ 改善できる点としては、今回実現できなかった小学校訪問はぜひ日程に含めてほしい、意見交換 の時間をじっくりとって、質疑応答だけでなく、問いかけの応酬により議論を深めていく必要性 が挙げられた。 ・ 今後のフォローアップについては、今回の経験を自分だけのものとせず、児童生徒、同僚教員、 地域と共有するよう努めること、日本国内のASP校のネットワークを広げていくこと、国際交流 は学校単独では難しいので、地域と連携を密にとるとともに、ACCUのような機関を活用してい くこと等が挙げられた。 これらの点は、8月 27 日(水)の報告会において、Bグループの報告として発表された。 - 17 - 5.教育交流プログラム:釜山(全体) (1)報告会、閉会式(全体プログラム) 8月 27 日、慶州視察を終えホテル帰着後、午後4時から、宿泊ホテル内グランド・ボールルームに おいて報告会および閉会式が行われた。李三悦KNCU事務総長のほか、釜山近隣の学校からも、金龍 武・南星女子高等学校長をはじめ多数の韓国教員の参加があった。 まず、第1部は、両グループの報告から開始された。Aグループからは、新井哲夫分団長(群馬大学 教育学部附属小学校長)が報告者、米田謙三・羽衣学園高等学校教諭がパワーポイント作成者、Bグル ープからは、寺木秀一分団長(調布市立布田小学校長)が報告者、白倉隆博・気仙沼市立面瀬小学校教 諭がパワーポイント作成者として、それぞれグループを代表して、グループプログラムレビュー会合の 内容を反映する形で活動報告が行われた。 両グループの報告に引き続き、自由討論となった。板倉直人・神戸市立葺合高等学校教諭から、AS Pネットワークを利用した、日韓共同の英語教育プロジェクトについての提言があった。 引き続いて小澤紀美子団長からあいさつがあり、持続可能性という言葉は 1980 年代から使われてき ているが、これは、人と環境、人と文化、人と人等、互いの関係性の再構築であると思うと述べた。日 韓の「貯金型」の教育ではこれに対応することは難しいのではないか。学力テストにあらわれない部分 の能力開発も必要であり、今回のプログラムから生まれた両国の教員同士の交流を通じて、今後互いに 学びあっていきたいとの期待が表明された。最後に、万全の日程で迎えていただいたKNCUはじめ韓 国側関係者に対する謝辞が述べられた。 来賓の池田洋一・駐釜山日本総領事館領事からは、朝鮮通信使の起点となる等、日韓交流に重要な位 置を占めている釜山の役割について述べられた後、相互理解の更なる拡大のため必要となる人材育成に おいて、教員の役割に期待し、教員間の交流・ネットワークを育てていく必要性が述べられた。 引き続いて第2部に移り、まず、韓国側参加者数名から感想が述べられた後、李三悦KNCU事務総 長からあいさつがあった。冒頭、サプライズとして、李事務総長自ら「故郷の春」をピアノ演奏し、参 加者全員で合唱した後、李事務総長のリクエストにより、大黒澄枝・宝塚市立養護学校教諭の伴奏によ り、「ふるさと」の合唱がこれに続いた。その後、報告会での日本側参加者からの率直な意見に感謝し、 今後のプログラムに反映していきたい旨、また、韓国の学校教育においてもまだ盛んとはいえないES Dをどのように普及させていくかといった課題について述べられた。また、北京五輪での野球を例に挙 げ、韓国にとって日本はいろいろ学びを得てきた特別な国であること、「近くて遠い国」から「近くて 近い国」にするために、互いに交流をさらに深めていく必要があること等が述べられた。 閉会式終了後、ホテル近くの焼肉料理店において、リラックスした雰囲気のもと送別夕食会が行われ た。報告会、閉会式に引き続いて韓国教員も参加し、最後の別れを惜しんだ。 8月 28 日(木)、KNCU関係者および通訳の方々に感謝しつつ、一行は釜山空港から韓国を後に し、帰国の途に着いた。 - 18 - 第Ⅱ章 参加者の報告 - 19 - Ⅱ.参加者の報告 Aグループ 東京学芸大学 名誉教授・東海大学教養学部 特任教授 小澤 紀美子 1.総合所見: (1)今回の韓国訪問についての課題 ソウルオリンピック前から訪韓する多くの機会に恵まれていました。家庭訪問や名所旧跡、伝統的な家屋を保 存した地域、世界文化遺産地域5カ所などの訪問を通して韓国の文化に親近感を持っておりました。また、ここ 数年は韓国環境教育学会と日本環境教育学会では連携を目的として日韓での交流が活発化しておりましたの で、国内を移動する感覚で羽田に集合しました。 昨年6月には、韓国環境教育学会に出席し、「日本の環境教育の動向」について講演し、さらに暮れの 12 月 には韓国ナミ島で開催された「アジア環境教育ネットワーク国際ワークショップ」に参加し、韓国環境連合環境教 育ネットワークや環境教育センターの方々との意見交換し、環境NGO/NPOとの連携をめぐり議論する機会を 得ていました。また今年6月には韓国環境教育学会と日本環境教育学会では相互の学会の発展に資するため に研究・教育の協定書提携にむけて協議してきました。 そのような経緯のもと、団長として以下のような課題を設定しました。 ・ 場面場面での団長としての挨拶を行うこと。 ・ 韓国で今年制定された「環境教育振興法」がどのように韓国の学校での環境教育の推進に影響を与え ているかを探ること。 ・ 韓国のユネスコスクールの視察を通して、日本における持続可能発展教育の可能性を探ること。 (2)全体的な感想など 韓国では環境教育が中学校の選択科目として設定されており、教員養成で環境教育を担当する教員を養成 しているが、中学校での教員採用が少ないという話を何度か訪韓する中で伺っていました。環境教育とESD(E FS)の関係は、国際自然保護連合IUCNでもディベートが行われていて様々な見解が存在している。日韓いず れの国においても、環境破壊の現象が一律の因果関係で起こっているわけではないので、システム論的なアプ ローチや統合的、共感的アプローチなど従来の環境教育の展開を見直していかなければならないという確信を 日韓の違いから見えてきました。 さらに4年前に日韓PISA学力テスト比較研究会(韓国で開催)に出席した際に、厳しい受験システムを伺っ ていましたが、「放課後学校プログラム」のための「読書室」を案内され、選ばれた生徒の写真が部屋の入り口に 貼られているのを見て、その激しさに驚き、受験が「顕在化している」韓国と「潜在化している」日本との違いをあ らためて実感した次第である。 さらに4年前には中学校を訪問した際に、教員の恵まれた待遇、例えばパソコンは一人1台が専用で使えるこ と、女性教員のための休憩所などの設置を知り、日本の教育現場への財政的措置への要求が高まりました。 - 20 - 一方、今回は小学校の訪問がかなわなかったのであるが、昨年6月、ソウル郊外の複式学級の小学校も視察 させていただいていて、受験体制ではないゆったりした学びの実態に触れていましたので、高校の受験体制が 総てではないという目で見る余裕を持って望むことができました。 2.各訪問先について: 清明高等学校(訪問は日程の関係上1校のみでした) 訪問した清明高等学校の校内に「至誠協同」という書が掲げられていたので、校長先生に質問をさせていた だいた。「至誠」は各教科を学び、生徒自身の思索を重ねることで深めていけるが、「協同」の学びはどのように 進めておられるか?と。「1泊2日の校外学習」をしており、そうした経験から学ぶという ことであった。おそらく清 明高等学校では日本語教育や他国の文化を学ぶことを通して「協同」の精神を学んでいるという意味を含んで いたのだと思うのだが、PISAのDeSeCoプロジェクトでのキーコンピテンシーの3領域が示すように、「多様な・ 異質集団で交流する能力」、すなわち「自己と他者の相互関係づくり」や「関係づける」能力の育成に向けて、受 験学力一辺倒の論調をもつ日韓のそれぞれの教育現場に求められているのではないかと強く考えるに至りまし た。 3.最も有意義であった内容: 地球環境問題への広がりは、人間活動が環境へ及ぼす影響を根源的に問うことを求めており、近代文明が問 われていることと私はとらえている。未来が問う課題にどう向き合い、過去に学び、今を学び、未来へのビジョン を共有していく環境への「新しい知性」を磨くこととしてとらえて今回の訪韓に望んだ。 新しい知性としての「環境リテラシー」は世界の人口の半分が都市的居住をしていく現状を踏まえ、地球規模 的な環境問題の被害を受ける人々が「持続可能な生活」を維持していくためにも、日本では公害問題に学び、 解決の糸口としての技術的手段、経済の仕組みの構築、さらに環境教育・環境学習による市民の内発的な発展 力育成という観点から取り組まれるべき課題である、と再考する機会になったと、韓国国内委員会の企画に感謝 申しあげたい。 学校教育関係者のみが環境教育やESDという枠組みで環境に関する意識啓発、環境改善への取り組みを 通して子どもの成長を支援していくのではなく、地域での課題を環境NGO/NPOとともに、環境問題改善に向 けて取り組むことが不可欠であり、自然・文化・経済・社会が相互に関連し、影響し合って各国がそれぞれの自 国の気候風土に根ざした文化を醸成していること、さらに各国の底流にある文化の多様性を織り成していること を再確認していくことが前提として考えていく機会を得たことは有意義な訪韓であった。 4.成果と今後の日韓交流: 以上、述べてきたことが成果といえる。個人としては日本環境教育学会長としてより有効な交流と実践し、日本 の学会会員と韓国の学会会員の交流が促進するよう働きかけていきたいと考えている。 さらにESDという文言が日本において、十分に理解されて使用されているか懸念を持つ。「地域や人を元気 にする学び」と私は称しているが、ESDの概念形成に向けて日本国内での議論を深めていくことが求められて いると考える。 - 21 - おわりに 未来を築く児童・生徒の育成にかかわる教員が日韓両国の教育・文化・歴史を通して(through)学び合う関 係性をしっかりと醸成し、21 世紀に求められる“持続可能な社会づくりにむけた知性”に磨きをかけていくことが 今後の日韓両国の発展に寄与するものと確信した交流の機会でした。このような意義深い機会を与えていただ いた韓国ユネスコ委員会に、重ねて厚く御礼を申しあげます。 群馬大学教育学部附属小学校 校長 新井 哲夫 1.総合所見: (1)開始前における個人として設定した課題・テーマ ①初等中等教育の現状と課題 ②教員養成システム、教員研修システム ③学校管理職養成システム、学校管理職研修システム ④初等中等教育における芸術系教科(特に美術)の現状と課題 ①については、学校訪問や校種別懇談会等を通じて、開始前に期待していたことがかなり達成できた。小学 校を訪問することはできなかったが、小学校教員との懇談の機会を設定していただけたことはたいへんありがた かった。 ②③については、今回のプログラムの主要な目的が初等中等教育の現状把握にあったため、目的そのもの の設定が適切ではなかったと反省している。ユネスコ委員会でのレクチャーで韓国における教員評価の問題に ついて取り上げていただけたことは、たいへんありがたかった。 ④については、限られた時間の中でやりくりをしていただいたことに感謝したい。日本も韓国もやはり技能系 の教科は周辺的な扱いを受けていることはわかっていたので、予想通りという印象であった。 (2)プログラム全体を振り返って」 10 日間という限られた時間の中で、中身の濃いプログラムが組まれていたことを改めて実感している。一つ一 つの見学先、訪問先ではもう少し時間的なゆとりが欲しいと感じたが、今改めて振り返ってみると、凝縮された形 で韓国の教育や歴史・文化を学ぶことができたと感じている。これ以上は、各自がそれぞれに韓国に対する理 解を深めるための努力をすればよいのだと思う。 プログラム全体を振り返って、まず心に浮かぶことは、このプログラムを企画し、運営してくださった日韓のユ ネスコ、ACCUの職員、通訳の方々、政治的な問題によって両国関係がややギクシャクしている中にも関わら ず、私たちを受け入れ、心温まる歓迎をしてくださった韓国の教職員の方々、そしてこのプログラムで出会い、 行を共にした小澤紀美子団長をはじめとする日本の教職員の方々への感謝の念である。 ぜひこの貴重な経験を同僚や児童生徒に伝えると共に、今後の教育活動に生かしてゆきたいと思う。 - 22 - 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① ユネスコ韓国委員会 所 見 韓国におけるユネスコ委員会の活動について理解を深められた。「経験と 教訓を分かち合うこと」が本プログラムの目的であるという事務総長の話、グ ローバル化の時代の中で「新しい知性」を創出することが必要であるとの小 澤団長の指摘が心に残った。 また個人的には、金教授による「韓国における教員評価」の講義が有益で あった。 訪問先② 清明高等学校 「質の向上」「透明公正」「生徒個人の特技・適性」「教職員間のコミュニケー ション」を重視する学校経営方針に共感を覚えた。 また、外国語教育、統一教育、英語特性化等に関する道の指定を受ける など、金清極校長の下教職員が一丸となって教育活動に取り組んでいる印 象を受けた。日本語を学んでいる生徒との懇談会では、生徒の日本語の運 用能力の高さに驚かされると共に、若者らしい素直な態度に好感を抱いた。 訪問先③ 善隣中学校 南日校長、教職員、保護者代表、生徒による熱烈な歓迎を受けた。全校 27 学級の大規模校だが、校長のリーダーシップの下で、教職員、保護者が 一致協力して教育活動に取り組んでいる様子がうかがえた。ユネスコスクー ルとしての活発な活動、他校生も受け入れて行われる放課後学校、情報学 習、そして柔道を通した人格形成の試み等が印象に残った。 訪問先④ 果川中央高等学校 最初に印象づけられたのは施設設備の立派さである。自治体が財政的に 豊かであるためとのことであるが、韓国の教育にかける財政支援の高さを実 感した。サークル活動、および日本語の授業を参観したが、全国的に受験 指導が重視されている中で、音楽、美術、スポーツなどの活動も活発に行わ れている様子がうかがえた。また、学力の低い生徒への対応や生活指導に 関して財政支援があるなど、行政によるバックアップが充実していると感じ た。 訪問先⑤ 釜山国際中学校 国際社会で活躍できる人材の育成を目的に 10 年前に開校した全寮制の 英才学校である。日本には存在しない英才学校がどのようなものか関心があ ったが、選抜試験を経て入学した、各学年2学級、全学年6学級計 180 人の 学力の高い生徒が、恵まれた条件の下で、ゆとりをもって学習しているという 印象を受けた。このような英才教育が公教育の一環として義務教育段階から 行われていることに驚きを感じた。 校種別の日韓教師懇談会は、踏み込んだ情報交換ができ、大変有意義で あった。 - 23 - 訪問先⑥ 文化公演(ナンタ)観覧 ダイナミックな動きとユーモラスなストーリー展開に目も心も奪われ、時間を 忘れるほどであった。老若男女、そして言語の違いにこだわらずに誰でも楽 しめるショーであり、ロングランを続けている理由がよく理解できた。会場に小 学生をつれた家族連れが多かったことも納得できた。 訪問先⑦ 広大な城壁に囲まれた水原華城は、保存管理が行き届いており、大変美し 文化遺跡 かった。遺跡と現在の人々の生活の場とが調和的に併存している点も強く印 ・水原華城 象付けられた。 ・梵魚寺 ・仏国寺 梵魚寺の山門や大雄殿などの建築様式、彩色等が独自の美しさをたたえ ており、たいへん興味深かった。 仏国寺の伽藍の大きさや石造りの階段の美しさ、エンタシス様の列柱など が強く印象に残った。 また、梵魚寺、仏国寺の両伽藍が豊臣秀吉の出兵によって消失したことを 思うとたいへん心が痛んだ。 訪問先⑧ 牛浦沼生態公園 広大な美しい湿地を持つ牛浦沼の生態系の保全に対する人々の取り組み と、それを生かした環境教育の実践に深く心を動かされた。特にこの地を活 用して、地元の小学校3年生全員(45、000 人)に体験学習が行われているこ とはすばらしいと感じた。 訪問先⑨ 国立慶州博物館 車窓に広がる瓦屋根の建物や住宅が街全体に落ち着いた統一感を与え、 古い歴史の街であることを強く感じさせられた。博物館には、多数の美術品 や工芸品、仏像、寺院の復元模型などが展示されており、1000 年にわたっ てこの地を治めた新羅の文化の高さを感じることができた。 訪問先⑩ ホームビジット 藤岡隆史教諭と共に、金井高等学校校長の朴先生のお宅に伺った。飲食 を共にしながら、両国の教育や文化、などについて率直に意見交換を行い、 たいへん有意義な時間を過ごした。 朴先生には、初対面にも関わらず、たいへん心温まるおもてなしをいただ き、心から感謝の意を表したい。人と人との交流の大切さを改めて実感した ひとときだった。 3.最も有意義であった内容: 私にとっては、プログラムすべてが有意義であったが、敢えて順序をつければ、最も有意義だった内容は学 校訪問である。授業の様子や学校の施設・設備などをこの目で実際に見、懇談会などの場で韓国の教職員の 方々と直接情報交換ができたことはたいへん有意義であった。 しかし、改めてプログラム全体を振り返ると、それだけでは今回のプログラムで得られた経験の豊かさを正しく 要約することにはならないと感じる。学校訪問が最も有意義だったことは間違いないとしても、それに加えて、世 界遺産に登録されている史跡をはじめとする文化遺産の見学、オプショナルツアーで訪れた施設での見聞、さ らには自由時間を利用した街の散策など、10 日間にわたるプログラム全体を通して、さまざまな角度から韓国の - 24 - 歴史や文化、社会、教育、そしてたくさんの人々に身近に接する機会が得られたことは、韓国に対する理解を深 め、親近感を高める上できわめて有意義であった。 4.成果: 本プログラムを通して得られた成果は、以下のような点について認識を深められたことである。 (1)韓国に対する理解の促進について 韓国の人々の日本に対する関心に比べ、日本人の韓国に対する関心はたいへん低い。サッカーのワールドカ ップ共催以降多少改善されてきたが、まだまだ不十分である。地理的にも文化的にも近い国である韓国を、教 科の学習や総合的な学習の時間等を通して積極的に取り上げ、相互理解や相互交流を深める必要がある。 (2)日韓両国に共通する教育の課題について 資源の乏しい両国は人材の育成という共通の重要課題を有している。そして教育に関しても類似した課題を抱 えている。人材育成という国家レベルの課題において、高等教育の質的向上が求められるのは当然であるとし ても、すべて子どもたちが将来に対して希望を抱ける社会を築くためには、人材育成を受験準備教育に矮小化 してはならない。「人材育成」の意味を広くとらえること、そして柔軟かつ多様な評価基準に基づいて一人一人の 子どもの特性や能力を適切に見いだし、それぞれの特性・能力に応じた教育機会を提供できるようにすることが 必要である。 また、社会人となった後も、高等教育を含め、必要な教育を再度享受できるような柔軟なシステムを構築する 必要がある。 (3)韓国における「ASP」及び「ESD」に取り組みについて 韓国におけるユネスコ協同学校の活動の様子やESDの試みについて見聞できたこと、そしてその必要性や重 要性を確認できたことは大きな収穫である。抽象的な概念を介するだけではなく、五感を働かせて人やものに関 わる実体験を通じた学習は、個々の知識や技能を関係づけ、結び受ける重要な鍵になると実感した。 5.今後の日韓交流について: (1)考えられる交流の具体例 ①教員の交流について:授業の公開や交流 ・ 相互にそれぞれの利点を学び合うことにより、課題の改善に資する。 ・ それぞれの国の文化や社会について相互に出張授業を行い、日本及び韓国に対する児童の理解を促 進する。 ②児童生徒の交流について:インターネットを通じた学校・学級間交流 ・ 本年3月に告示された改訂学習指導要領で、小学校高学年に「外国語活動」が位置づけられた。インタ ーネット等を通じて、韓国の小学生と交流することで、子どもたちにとって外国語(英語)の学習がきわめ てリアリティをもったものになる。 ・ また、他文化理解の有力な手段ともなる。 - 25 - (2)実施の可能性 ③現時点での実施は、(1)交流に対する教員の必要感の低さ、(2)財政上の問題、(3)教員の日常業務の多 忙さなどの点でむずかしい。しかし、(1)については、今後交流のメリットや学校教育活動全体への波及効果な どについて、教員間で議論を深めることで、意識の転換は可能であろう。(2)(3)については、一つの学校だけ ではどうにもならないことであるが、①が改善できれば、自ずから道は開けると思われる。 6.提案・助言: ・ 参加人数について・・・このような貴重なプログラムはできるだけ多くの教員に体験してもらいたいが、経 費的な問題があるので、可能な範囲で拡大する方向でよい。一グループの人数は、今回の規模でよいと 思う。 ・ 期間について・・・10 日間という期間は、長すぎず短すぎずちょうどよいと思う。 改善点 (1)今回は致し方ない事情があったが、次回はぜひ訪問先に小学校を加えて頂きたい。 (2)同様に、大都市だけでなく、地方の学校なども視察できるとよい。 (3)実施時期については、日本の教職員の参加のしやすさという点で課題があるが、学校訪問に限って言えば、 学期の半ばの訪問が理想的である。 (4)今回は諸般の事情があり致し方ないが、訪問先で授業をすることを考えると、事前に訪問校の教員と十分に 連絡をとれるとよい。 江東区立東雲小学校 副校長 眞瀬 敦子 1.総合所見: 「参加するに当たっての抱負」 ・ 管理職として、経済発展著しい韓国の、教育に対する考え・取り組み・システム等を見聞することによって、 日本の教育問題を改めて見直し、改善のヒントを得、自分自身の学校経営に活かしていきたい。 ・ 特にESDに関しては、国としてどのように考え、現場ではどのように取り組んでいるのか、教員の育成・児 童への指導・保護者や地域との関わり等も含めた実際を視察し、自校の取り組みに活かしたい。 まず、本プログラムに参加させていただいたことを、心よりお礼申し上げます。 今回図らずも竹島問題が起こり、日本・韓国両国のACCUの皆様は直前まで様々な調整をせねばならず、本 当に大変だったことと思います。その中で、これだけ充実したプログラムを組んでくださり、訪問できなかった小 学校の代わりに日韓教師懇談会で、多くの小学校の先生方とお話できる機会を設けてくださいました。 このことでかえって、より多く韓国の方々の温かい心に触れることができたように思います。 どこの学校に行っても、史跡等を訪問しても、実に温かく熱心な方達のもてなしを受けました。そして、教育に対 する真摯な態度を拝見しました。これが何よりの収穫であり、本プログラムの意義だと思います。 私自身初めて日韓の問題を真剣に勉強し、歴史を忘れず、しかし兄弟の国として共に協力し合い、歩んでい くことの大切さを実感することができました。有り難うございました。 - 26 - 「印象に残った意見交換」 東京都の英語教育が一つの曲がり角に来ている今、日韓教師懇談会で伺った小学校の英語教育の実態が 大変強く印象に残っている。 釜山は英語の没入教育をやっているため、中学年週2時間、高学年週3時間の授業の他に、児童は有料で 放課後教育を受けられる。長期休業中も1~3週間の英語キャンプがあり保護者や地域向けのプログラムもある。 1校1名以上のネイティブスピーカーを配置し、6年生で 11 の単語で一つの文章を作れるくらいの力をつけるこ とを狙っている。 これに対応する教師の育成がしっかりしており、元々厳しかった教員資格試験が更にハードになり、TOEIC 800 点以上ないと合格できない。3次まで面接があり、1次面接から英語で行われ、英語の模擬授業も行わなく てはならない。教師向けの没入教育もあり、対応できない年配教師が辞めていくような問題も起きているが、研 修プログラムが充実しており、それを受ける際には後補充が受けられるなど、システムがしっかりしている。 それに比べて、東京では来年から高学年に 35 時間の英語の授業を担任が行うと言いながら、この夏の研修 は各校1名だけ、その教員が学校での研修を担当することになっているが、内容は非常に曖昧である。 他のことでも、韓国のやり方が全てよいとは思わないが、教育を変えようとするとき、きちんとお金と手間暇をか けているところは、日本が大いに見習わなければならないことではないだろうかと思った。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 所 見 李三悦委員長の挨拶から始まったプログラム。ユネスコ韓国委員会が ユネスコ韓国委員会ビル 朝鮮戦争の終わった 54 年に創設され、2000 年にOECDに加盟し、現 開会式・講義・昼食・韓国のユ 在は貧しい国へ手をさしのべる事業に転じているというお話に、日本の ネスコ協同学校について 姿を照らし合わせると共に、韓国の抱える南北問題の大きさを垣間見る 思いがした。 沢山の講義、報告を伺ったが、一番興味深かったのはキム・サンヒョン 教授による教員評価についての講義だった。教員の資質の向上のため に 40 年続いた制度を改革させたとのこと。現在日本で行われている人 事考課と同じ目的だが、更に進んで教員相互や保護者、学生の評価も 取り入れるという。始まったばかりで問題点も多いようだが、是非その成 果を知りたいと思った。また、この話を伺ったことで、その後訪問した学 校の校長の権限の強さがよく理解できた。 昼にいただいた「飲食を通じた環境教育に基づき、有機野菜などを使 った食事」というのも、韓国の伝統を活かし、見た目も味も大変よく、印 象に残った。 - 27 - 訪問先② 4時で授業が終わった後に全員が8時まで補習授業を受け、その後 10 清明高等学校 時まで自習をする。特別生は更にその後夜中まで塾に行くか学校で自 (ユネスコ協同学校) 習を続ける。話には聞いていたものの、実際に指導教育部に貼り出され た特別生の写真とその下に書かれたスケジュールを見て、心底驚いた。 しかし生徒を交えた茶話会で、日本語の上手な特別クラスの二人と話 し、考え方もしっかりしたよい生徒が育っていることを実感した。共学とは いえクラスは男女別で、彼女たちもその方がリラックスできてよいという。 夜中まで学校にいるのでは、そうなるのかもしれない。ただし他の先生 が見たクラスでは、生徒が受動的で、学習内容も知識の伝達のみだっ たという報告もあり、受験のための学習中心による歪みは普通の生徒に 多く現れているのかもしれないとも感じた。 日本語教師が亀井先生という日本人だったため、給食をいただきなが ら色々とざっくばらんな話ができた。生徒の補習は教員が行うため、毎 日帰宅が 10 時過ぎになり、大変な負担であるという。また、韓国人の情 の濃さや同胞意識など、直接日本語で話せるので、細かいニュアンスが 伝わり興味深かった。 訪問先③ 4年前に観光で訪れたことがあったが、チャングムのロケがあったため 水原華城 か、更によく整備されていた。韓国の旗のカラーの赤、青、黄色が芝生 (ユネスコ世界遺産) の緑と空の青に映えて、大変美しかった。 城壁が素晴らしく、ミニ列車に乗って見る城内外の様子、熟練ガイド の説明など、見所が多かった。 名物水原カルビが食べられず、少々残念だった。 訪問先④ 2学期初日でしかも大雨だったにもかかわらず、美しい民族衣装をまと 善隣中学校 った保護者の方々が出迎えてくださり、特殊クラスの生徒によるハンドベ (ユネスコ協同学校) ルの演奏、特活で習ったという1年女子のヘグンの演奏、サイプリという 艶やかな踊り、そして音楽実用班のロックバンドと、まさに学校を挙げて の大歓迎。校長先生自らも男性の民族衣装を召され、給食もわざわざ 日本人の口に合うよう、辛くない味付けにしたという、細やかな心遣いに 感激した。 校訓である「思考・実行・忍耐」について、「深く考え、他人に配慮し、 悔しいことなどちょっと我慢して考えるということが、人間形成に大切な のではないか。大人でも実行が難しいことだからこそ、指導している。 すぐできなくても無理無いことだが、日本を訪問した際、日本の子供は これができていて感銘した」という校長先生の説明に、共感を覚えつ つ、日本の子に今一番足りないことなのではないかと思ってしまう。 訪問先⑤ 果川中央高等学校 男女別の保健室、充実したPC室、コンサートホールになる二つの音 楽室 17,000 冊の蔵書を誇る図書室、映像室、体育館等々、素晴らしい - 28 - (ユネスコ協同学校) 施設に驚いた。果川市は元々総合政府庁舎もある裕福な市である上に ここが学校経営優秀校であるため、3年間毎年4億ウォンの支援が受け られるのだという。また、校長裁量で 20%の教員を採用できるため、生 徒の自習は専門の教員を雇うことができ、善隣高校のような教員の負担 はないとのこと。ユネスコビルで伺った校長の権限についてのお話を思 い出し納得した。 平準化地域ではあるが、進学校で保護者の関心も高く、生徒の質も平 均以上であるという校長先生のお話だったが、学年代表のお母さん方 が参加してくださっている姿にも、それが伺えた。しかし果川市には入 試を行う更にハイレベルな特殊目的校が2校あると聞き驚いた。 ナンタを指導していたり、美術や化学実験の授業も公開してくださった が、それでもやはり熾烈な入試に向けた教育の色合いが強いように感じ た。生徒の心のケアのために学校社会福祉士が常駐する生徒相談室 があり、低学力児のために市からの支援が受けられること、例えば生徒 の喫煙に対しては、教育を行っても聞かない者には保健所で嫌煙針を 打ってもらったりと、清掃などのボランティア活動を行わせるとのこと。具 体的な対応策を伺えたのは興味深かった。 訪問先⑥ 二度目の鑑賞だったが、何度見ても迫力があり楽しかった。 ナンタ 訪問団の仲間が舞台に上げられてパフォーマンスを行ったのも楽しか った。 訪問先⑦ 梵魚寺 釜山へのバス移動はなかなかハードだったが、農村部へと移り変わる 景色を車窓から見ることができ、興味深かった。 この寺も秀吉の焼き討ちにあっている。ユネスコ関係の皆さんは口に 出しては言わないが、韓国の方の日本に対する反感の一因を見た気が する。それにしても私達は知らなすぎたと思うことが随所にある。 梵魚寺での食事体験は、緊張の連続だった。日本の禅寺の食事はこ こから伝わってきたのだということがよく分かったが、沢庵だけでなくキム チで食器を拭うというのが韓国らしくて面白かった。 高僧のお話を伺うことができたのも貴重な体験だったが、禅問答その ままに、お茶をどうぞと勧められ、爽やかなひとときを過ごすことができ た。 - 29 - 訪問先⑧ 呉さんは市内の小学校の英語の先生。小4と中2のお嬢さんがいらっ ホームビジット しゃる。ご主人は出張ということだったが、どうやら恥ずかしがり屋で参加 呉姫淑(オー・ヒス)さん宅 しなかったらしい。 しかしその代わり、中学の教員をしているお姉さん一家四人がいらし てくださり、日本語を専攻している大学生の息子、金ギュビン君が通訳 をしてくれたので、張替先生がお鍋やお玉まで動員しての茶の湯教室 を開いて茶道の心とお手前を伝えたり、話が弾んだ。 ギュビン君に、今まで見てきた学校の話をし、あなたはどうだったのか 聞いたところ、「自分は怠け者で高校も4時で抜け出し、ギターの学校に 通っていたので、良い大学に入れなかった。兵役から帰った後、日本語 をもっと学び日本に留学するため、今はギターもやめて勉強している。 今日もこのあと図書館にバイトに行くが、受験生を監視しながら自分も 勉強している」とのことだった。徴兵制がよいとは思わないが、二十歳頃 に自分の国や自分の人生についてじっくり考える機会がもてることは、 真に成人するために大切なことではないだろうか。 呉さんとは、小学校で忙しく働く女性同士、意気投合した。教師の社会 的地位は高く「お嫁さんにするなら、1番は美人の先生、2番はブスでも 先生、3番はチビでも先生よ」というのには笑ってしまった。(彼女は小柄 でパワフルでチャーミングな女性である)「夕食はピザのデリバリーのこと も結構あるのよ」と言いつつ、釜山市で選ばれてこの秋から半年ニュー ヨークに語学研修に行くのだという。 最後は美しい海雲台の海岸公園にドライブに連れて行っていただき、 実に充実したひとときを過ごすことができた。 訪問先⑨牛浦沼探訪 牛浦沼生態公園 広大な牛浦沼の景色を見ていると、国を超えて、こういった自然を守る ことの大切さを改めて感じる。私有地を買い取って、沼が洪水を抑える 機能を保てるようにしたり、渡り鳥が休めるよう、二毛作をする農家と契 約をして補償金を出し、秋から田を休めるようにしたりするなど、必要な ところにはきちんとお金をかけて、貴重な自然を守っている姿に感心す る。自然観察員の方の豊富な知識と楽しいお話を伺いながらの散策 は、身も心も洗われた。 昌寧地方の3年生は、必ず牛浦沼での自然体験学習をすることにな っているそうで、この日も何組か先生に連れられて来ていた。「(前日の オリンピック野球で)韓国に負けた日本だ」と言われてしまったのには、 苦笑い。 生態教育院で教育庁のシンさん達のお話を伺う。 教育課程への位置づけや環境教育としてどのような単元を組むのか 質問したが、事前・事後の指導はあまり充実していないような印象を受 - 30 - けた。中学や高校になると受験勉強中心で、環境教育に時間が割けな いというのも気になった。しかし少なくともここでの教育内容は、大変よく 工夫されており充実している。教材教具など、すぐにも日本で活用でき そうである。 この 10 月にラムサール総会がここで開かれるそうで、そのために今整 備しているといった感もあるが、それにしても設備投資をし、人的配置な ど、教育にしっかりお金をかける韓国の姿勢はうらやましい。 訪問先⑩釜山国際中学校 創立 11 年目の韓国初の国際中学校。全てが韓英両表示であること、 姉妹提携をしている 26 カ国の学校の表示など、活気にあふれていた。 ここも施設が充実していたが、スポーツ、芸術科目や化学実験など、今 までの学校の中で一番きちんと実践して、全人格的教育を行っているよ うに感じた。 2年1組で、日本文化として折り紙を紹介する授業をさせていただいた が、浦安に住んでいたという生徒が通訳してくれた。ユネスコの通訳の 方が、非常に正確な言葉だったと感心しておられた。男女共学の学級 で、どの生徒も非常に前向きに取り組んでくれ、友達同士楽しそうに教 え合ったりしており、こちらの問いかけにもとてもよい反応を示してくれ た。どの子も、紙の折り方がとてもきちんとしているのが印象的だった。 日韓教師懇談会 小学校訪問が無くなってしまった分楽しみにしていたが、いつまでも 話が尽きないほど充実した時間となった。 英語の没入教育をしている釜山市の取り組みを詳しく伺うことができ た。 ここでも、急進的な取り組みながら、英語教育を充実させるためのプ ログラムや人的配置が充実していることをうらやましく思った。 学力低下問題はやはり韓国でも起きており、「おちこぼれ0学習」が行 われているとのこと。これにもテストが 60 点未満だと放課後学習や大学 生の指導者を迎えることができるシステムができているという。その他、 私教育の問題点など、話は尽きなかった。 訪問先⑪佛国寺 韓国を代表するこの寺も秀吉の焼き討ちにあって大半の建物が焼失し ている。何ということだろうか。 急速に秋めいて爽やかな空気の中、赤とんぼが舞うゆったりした境内 で、日韓の寺の共通点と相違点を堪能した。 - 31 - 訪問先⑫国立慶州博物館 豊かな宝物の数々に、目が釘付けだった。ガイド役の学芸員の方が大 変話上図で、短い時間に興味深いお話を沢山伺うことができた。カタロ グなどをミュージアムショップで買い求める時間がなかったのが残念だ った。 3.最も有意義であった内容: どのプログラムも大変有意義であった。まさに「百聞は一見に如かず」である。が、何と言っても実際に韓国の 教員の方等と直接お話ができたことが最も有意義だった。 韓国の方は本当に情が深い。小学校の先生方との懇談会でも、皆さんが熱心にそして真摯に教育の現状を お話くださった。おそらくこの温かさと情熱をもって子供達の教育をしていらっしゃるのだろう。受験中心の歪みの 中、韓国も日本以上に引きこもりやニートなどがあるようだが、様々な問題に対するエネルギーが日本以上である ように感じ、私達も頑張る元気をいただいたように感じた。 生徒と話したり、授業をさせていただいたりしたのも大変有意義だった。これもエリートの子供達だったのだろう が、頭だけでなく人柄もよく、全人格的にすくすくと育っていることを感じた。きちんと自分の言葉で話せる子を育 てなくてはと、改めて感じた。 ホームビジットでは、お互いに小学校教員であり主婦であることから、国の違いを超えて意気投合したし、大学 生の甥御さんのしっかりした考えには、徴兵制の在り方なども考えさせられた。 このプログラムを通じて、一人一人は小さいけれども、韓国の方との強い絆ができ、それが広まっていくことを感 じた。また、日本人同士でも初めて知り合った方と深い交流ができ、ネットワークができたことは大変有意義であ った。 4.成果: 韓国は教育に本当に力を入れている。熾烈な受験競争、私教育に対応して学校での放課後補習が始まった。 夜中までの勉強は如何なものかと思うが、翻って自国を見るとき、どんな対応策が取られているだろうか。学校の 設備の充実という面でも同様である。勿論私達が訪問したのは全て一流のエリート校であったとは思うが、それ でも教育相談の充実や、教職員向けの施設設備の充実など、普通の学校でも見習うべき点が多々あった。まず は管理職として、自校の施設の充実を図ったり、教育委員会への働きかけを行ったりしていきたい。 ESDに関しては、中学高校の実践発表は素晴らしかったが、小学校の取り組みと実際の授業を見ることができ なかったのは残念であった。しかし牛浦沼の取り組みは大変参考になった。単元としての指導は、本校のやり方 がよいとの自信を深めることができたので、児童の活動の興味付けに、いただいた資料を活用していきたいと考 えている。(他にも沢山あるが、内容が重複するので省略する) 5.今後の日韓交流について: 本校は都内の数少ないユネスコスクールとして、韓国に限らず、様々な国の訪問団を受け入れてきたが、自 分が訪問する立場になって、受け入れることの意義を再確認することができた。 訪問者は普通の公立学校の取り組みを見たいと望んでいる。その意味で本校はまさにうってつけである。普 通であること、様々な問題を抱えて、教員が努力していることを、誇りを持ってお伝えし、共に考えていきたいと - 32 - 思う。その際、もっと時程やカリキュラムが分かる資料を用意する必要があることが分かった。また、見学時間の 配分を、説明1時間・授業見学1時間とし、訪問者に児童の前で授業やお話をしていただく時間を、授業見学と は別枠で1時間取った方が親切であると感じた。そして給食を食べていただくとすれば、4時間は必要であると 思う。 韓国との個人的な交流に関しては、ホームビジットをした際にお世話になった金君が来日する際には、是非 我が家にホームスティさせてあげたいと考えている。その他、視察団員が日本家庭をホームビジットしたいと考え るなら、喜んで我が家を提供します。 6.提案・助言: 今回の訪問で素晴らしい収穫を得ることができた大きな要素の一つに、通訳の質があると思う。Aグループが お世話になったロッテの添乗員パク・ヨンヒさんの知識の豊富さ、日本語のうまさ、バスの中での解説も本当に為 になった。更に素晴らしかったのは通訳のチョン・ムンジュさんである。専門用語を使った長い説明を、同時通訳 で的確に伝えてくださったので、大変分かり易かった。また、課外の時間でも、韓国料理の安くておいしい店を 紹介していただき、食文化を知るよい助けとなった。これからも是非、このお二人のような質の高い通訳の方を お願いしたい。 プログラム実施の時期は、やはり長期休業中が学校への負担が少なくてよいと思う。今回の時期は韓国の学 校が始まるぎりぎりの所だったようだが、実は本校は二学期制になり、25 日から始まっていた。難しいところであ るが、韓国の学校の実際の様子を見られることが第一であると思う。 受け入れ校の都合があるとは思うが、授業を見る時間がもう少しほしい。こちらが日本文化紹介などの授業を させていただくのも楽しいのだが、同じ時間帯なので、参観する時間が無くなってしまい残念だった。 今回本屋を紹介していただき、韓国の教科書を沢山手に入れることができてよかった。ただ資料と共に大変 な重量になってしまったので、ホテルから送った。ホテルに箱が無く、調達するのが大変だった。そんな点も申し 送っておくとよいと思う。 今回ゆったりとしたホテルでゆっくり休めたことは大変有り難かったが、お小遣いまでいただき、一人にかかる 経費は大変なものであったと思う。そこら辺を切りつめて、一人でも多くの中堅教諭を参加させてほしいと願う。 啓明学園初等学校 教諭 結城 しのぶ 1.総合所見: この度は、韓国政府日本教職員招へいプログラムの参加者の一員として、かけがえのない経験をさせていた だくことができました。このプログラムを企画、運営してくださいました皆様に、まずお礼を申し上げます。また、日 本各地から参加された方々と、貴重な経験を共有し、その感想を分かち合うことができ、最初の不安がうそのよう に、楽しく充実した毎日を送ることができました。今回のプログラムに共に参加した皆様にも、感謝を申し上げま す。 私の勤務先は、帰国子女受け入れ校として、国際交流に力を入れている学校です。今年度は、「顔の見える 交流」ということで、教員同士、児童同士の交流がより盛んになればと取り組んできています。そのような中で、こ の機会を与えられましたので、自ら「顔の見える交流」を実践できればという思いで、参加いたしました。また、国 際交流は相手や相手の国を知るだけではなく、それがむしろ自分や自分の国を知ることになるという考えは持っ - 33 - ていましたが、小学生の交流の形について具体的なヒントを得ることができれば、という期待も持っていました。 プログラムのどこを切っても、韓国らしさと韓国の方々の温かさとが伝わってくる素晴らしい内容に、事前の期 待以上の収穫を得ることができました。韓国では、たくさんの日本語の上手な方々に助けられました。学校の中 にも、日本語学習の機会がたくさんあることを知りました。韓国の方々が日本に関心を持っていてくださることが よく分かりました。世界遺産見学や自由時間も含めて、韓国の食、文化、教育、歴史にふれることができ、韓国を 身近に感じられるようになり、韓国のことをもっと知りたいという思いを持つようになりました。また、逆の立場に立 ったときに、自分が「日本」の伝達者として不十分であることを、痛感しました。 特に印象に残ったことは、2つあります。 1つめは、果川中央高校での日本語授業および釜山国際中学校での日本文化の紹介です。果川中央高校 では、日本語のクラスで簡単な日本語の挨拶を実践するということを、担当の先生と打ち合わせていました。実 際には、至らない点が多々ありましたが、生徒の皆さんが温かく迎えてくださり、担当の先生もいつもより生徒の 顔が生き生きしていたという言葉をかけてくださり、とてもありがたかったです。 釜山国際中学校では、知識だけではなく体験を重視するという校長先生の言葉をお聞きすることができ、詰め 込み的な学習だけではなく、芸術科目や体育などの授業を大切にしていることが伝わってきました。バランスの とれた人格を育てるという目標の通り、折り紙を教えた2年生のクラスの生徒たちの様子は、ゲストを迎える姿勢 が身に付いており、好奇心にあふれていました。 2つめは、韓国社会の受験競争の過熱に揺れる思いや疑問を感じている方たちとの出会いです。ホームビジ ットで訪れたご家庭では、米国に5年滞在していたことから韓国の教育を客観的に見ており、お子さんをのびの びと育てたいという思いと、帰国生として出遅れたのではないかという思いに揺れているというお話を伺うことが できました。 韓国の小学校の教員の方とお話をした際には、子供たちは学校でも家庭でも遊ぶ時間はほとんどなく、保護者 会などでは「子供にとって、遊びは大事」ということを訴えて続けているとおっしゃっていました。 どちらも、個人旅行では得られなかった経験・出会いだと思います。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 充実した学校施設・設備を持ち、文系・理系共に力を入れている学校と いう印象を受けました。 自習室が特別クラスの生徒専用にあること、夜中遅くまで勉強しているこ となど、話に聞いていた受験競争の厳しさを目の当たりにしました。生徒数 名と直接話す時間があり、目標を持って努力していること、ただし自由な時 間はないことが分かりました。昼食時には先生とお話しする機会を得て、 受験競争の弊害についても伺うことができました。 - 34 - 訪問先② 善隣中学校 雨の中での訪問となりましたが、校長先生自らが、パジチョゴリに身を包 んで出迎えてくださいました。チマチョゴリの保護者の方による案内、生徒 の出し物による歓迎など、とても心に残りました。 校長先生の、お話に感銘を受けました。1つめは、韓国と日本は、地理・ 歴史・文化的に近い国なので、交流を深めユネスコの精神を高めていきま しょうという内容でした。2つめは、「がまん」の指導について質問された際 の、深く考え他人に配慮しながら行動することを教えている、少し悔しくて もがまんするのが大人になる過程と考えている、相談(ことば)での指導に 努めているというお答えでした。 訪問先③ 果川中央高等学校 保護者の代表の方々の同席からも、歓迎が伝わってきました。廊下です れ違う生徒たちの様子から、人なつこさを感じました。 日本語のクラスで、担当の先生と連携して授業を行いました。先生・生徒 たちが温かく迎えてくださり、日本からの参加者の先生方にも助けていた だき、感謝でした。日本語クラスの様子を見ていたため、他の見学ができ ず残念でした。 私たちが学校を去る時に、たくさんの生徒が歩いているのを見かけ、週に 1回早く下校する日があることが分かりました。 訪問先④ 牛浦沼生態公園および牛浦 環境教育センター 牛浦沼では、思いがけず小学生の校外学習の様子を見ることができ、小 学生の姿にほっとしました。 発展途上の施設およびプログラムということでしたが、保護されている自 然と取り組みに対する熱意が、印象的でした。人も含めて自然と考え、共 生していく姿勢が、心に残りました。 環境教育センターでは、教室の中の子供たちの様子や充実した内容の 作品を見ることができ、興味深かったです。掲示物が美しかったです。 訪問先⑤ 釜山国際中学校 教育理念、実践の様子、生徒の雰囲気、校舎内の掲示物など、どれをと っても学ぶところが多くありました。校長先生の、知識だけではなく体験か ら学ぶことを重視している、最近の日韓関係はまたしても遠ざかっているの は残念だが生徒の未来には交流の可能性がある、というお話に感動しまし た。公立初の国際中学校として、世界を視野に入れ、調和した人格を育ん でいるというお話の通り、全体的に質の高いゆとりを感じました。 3.最も有意義であった内容: プログラム中のどの内容も有意義であったため、1つに決めることはとても難しいと感じています。特に、学校・ 教育施設を訪れ、授業などを見学し、また先生方や生徒の皆さんと交流できたことは、貴重な経験でした。韓国 の教育・文化への理解を深められただけではなく、韓国の方々の温かさにふれることができました。 最も有意義であった内容を、強いて挙げるとすれば、「釜山国際中学校の訪問」です。 ホームビジットでは、釜山国際中学校2年生とご両親に出会うことができました。自然体でとても温かいファミリー でした。中学校生活のこと、将来の夢について、韓国での子育ての悩みなどが話題に上り、学校訪問とは一味 - 35 - ちがった形で、韓国の教育にふれることができたように思います。 釜山国際中学校は、教育理念において、私の勤務先の学校との共通点が多いように思いました。特に、世界 を舞台に活躍する人材の育成を目指し、体験活動を重視している点です。教育理念は、毎日の授業を通して 生徒たちの内に具現化されていくのだと思いますが、それだけではなく学校の施設、掲示物などからも感じ取れ ることがたくさんありました。自分の学校を客観的に見直す視点を与えられました。 折り紙を紹介する授業を通して出会った生徒たちは、初対面の外国からのゲストとのふれ合いを楽しむゆとり のある子供たちでした。世界に通用する人材とは、外国語が流暢に話せることではなく、人に対して関心を持ち、 人と関わる力なのだと改めて感じました。 4.成果: 「顔の見える交流」の実践者として、十分な成果を得ることができました。韓国ユネスコ委員会の方々、ガイドの 方、通訳の方、各訪問先の方々、ソウル・釜山の街で出会った方・・・、たくさんの出会いを通して、韓国の方々 の温かさを感じることができました。ことばで伝え合うことは大切ですし、通訳の方がいてくださったからこそ交流 は深まりましたが、ことばを越えた心のつながりを得たことは、とても貴重な経験でした。様々な国際交流がありま すが、相手のことをもっと知りたいという思う気持ち、自分たちのことを伝えたいと努力することの大切さを、今ま で以上に感じるようになりました。 歓迎晩餐会で、1月にお会いした韓国の先生と、再会することができました。私の勤務先の学校を訪問してく ださったのですが、その時のことをよく覚えていてくださいました。今回の学校訪問では、これまでとは逆の、ゲス トとして迎えられる立場を経験することができました。どの学校の歓迎も素晴らしく、学校紹介や見学と共に、とて も心に残りました。各学校の歓迎の形(横断幕、チマチョゴリ、音楽や踊り、お茶菓子など)、配布された資料、訪 問の内容や時間配分、廊下や教室の掲示物、すれ違う生徒の挨拶など、学校訪問時の見方や感じ方について 知ることができ、今後の参考にしたいと思いました。 韓国の先生方が、語学学習や国際交流、環境教育に熱心に取り組む先生方の様子に、励まされました。また、 保護者の方のお話も伺うことができ、受験競争の過熱に賛成しているわけではないけれど、学ぶことは社会・ 国・自分のためという前向きな受け止め方をし、お子さんの健康を考え睡眠と食事のサポートをしているという内 容に、深くうなずくことができました。韓国の先生方や保護者の方との出会いを通して、子供たちをよりよく育てた いという気持ちは共通していることを感じることができました。 5.今後の日韓交流について: 冒頭にも書きましたが、私の勤務先の学校では、今年度、「顔の見える交流」ということで、教員同士、児童同 士の交流がより盛んになればと取り組んできています。具体的には、1月に私の勤務校を訪問された韓国・済州 島の先生とのつながりから、済州島の小学校との姉妹校締結を準備しているところです。今回のプログラムに参 加させていただいたことにより、姉妹校締結の重要性を確信し、姉妹校締結後の交流の具体的なイメージを持 つことができました。 姉妹校締結後は、教員の訪問を実現し、お互いの歓迎の思いを伝え合うこと、またお互いの学校をよく知るこ とが大切だと思います。今回の経験を通して、教員同士が出会うことにより、教員ならではの喜びや悩みを共有 することができ、人と人としてのつながりを深めることができると思うようになりました。その上で、児童同士が出会 い、遊びや食など子供たちにとって身近な文化を体験することを通して、互いの相違点や共通点を知ることがで - 36 - きるとよいと思います。 現在、私の職場では、それぞれの興味関心からハングル語学習熱が高まり、数名でハングル語講座を続けて います。今後さらに、韓国語や韓国について学ぶ機会を持っていきたいと思います。また、児童に対しても、韓 国について知る授業や、日本を伝えるための授業を展開していきたいと考えています。このようなことが、実際の 交流の場で役立つと思うからです。 6.提案・助言: プログラム期間中にもたびたび話題になっていましたが、今回は諸事情により小学校訪問がかなわず、残念 でした。そのことと関連していると思いますが、学校・教育施設訪問の機会が少なかったように感じました。 学校訪問の機会を増やすだけではなく、1回の学校訪問の中に、授業見学の種類・時間がもう少しあると良か ったです。また、訪問者を迎える立場の方に対して無理な注文かもしれませんが、「普段の授業」「ありのままの 生徒の姿」を見たいと思いました。 今回の事情は理解していますが、日本文化紹介の担当者として、学年・男女・日本語のレベルなどについて直 前まで情報を得ることができず、不安でした。学校に到着した時には、全体の進行が優先になるのは当然です が、クラスの様子を聞く時間がとれると安心できると思います。 前述の内容と矛盾してくるようですが、今回は、地方滞在がカットされ2都市訪問となったことは、心身共に負 担が軽減されて、良かったように思います。移動が長く、滞在先がころころ変わるよりは、2カ所が拠点となり、良 い状態でプログラムに臨むことができました。 今回のプログラムは、韓国の新学期開始後すぐの時期にもかかわらず、日本の夏休みの期間に合わせて企 画してくださったと伺っています。日本側も、帰国後すぐに新学期なので負担がないと言えばうそになりますが、 学期中よりは負担が少なかったと思います。 参加者を2グループに分けたことは妥当だったと思いますが、グループ間の交流を深めることは難しかったで す。 前回の参加者からの申し送りを事前に知ることができ、とても参考になりました。申し送りを元に準備をしたた め、プログラムが始まってから困った点は、ほとんどありませんでした。自分の準備が間に合わなかったのは、英 語版(ハングル版)学校パンフレットと、1月に訪問団を受け入れた際の写真です。短い時間しか話すことのでき なかった小学校の先生方、久々に再会を果たすことのできた先生方に、渡すことができず残念でした。 - 37 - 筑波大学附属中学校 教諭 新井 直志 1.総合所見: 事前の個人テーマ・課題として以下のようなものを掲げた。 (1)韓国における中等教育の教育プログラムの研究 (2)韓国の中学校教員の指導体制及び授業の実態について (3)韓国の中学生及び各家庭における意識や教育事情について (4)理科教育プログラム及び指導技術の研究 (1)(2)について 韓国の教育プログラムと日本の教育過程は、基本的には同じであることが分かった。 小学校から英語教育が行われているが、新課程では日本でも小学校英語指導が始まる。 総合的な学習の時間を中心に、環境教育の実践が行われている。 しかし、韓国では、教員になること自体が難しい実情があり、教員に質もステイタスも高い。さらに、教員評価も改 善が試みられており、国を挙げて教育の質、人材育成に力を注いでいる。 (3)について 国全体が、高学歴を得ることが社会発展の要素であるという意識を持っており、大学入試を中心として、いわゆ る受験戦争が問題視されている。公立学校が英才教育に力を入れており、学校に夜 10 時まで、その後私塾に 通い深夜1時過ぎに帰宅する現状は、外から見ると異常に感じられてしまうが、公教育の補償、国内の治安の良 さ、財政面での教育支援があってこそ実現するものであり、日本の教育界における諸問題の解決のヒントが、韓 国の教育事情に隠されているように感じられた。 (4)について 施設見学、授業参観、教科書の購入なども行ったが、詳しい理解までに至らなかった。今後、深い研究をした い。 ・ プログラムを通して、韓国について今まで見えていなかったものが分かり、充実した時間を過ごせた。何 よりも、自分も含めて、最も近い国である韓国のことを如何に知らないかを思い知った。このことが、国際 交流の問題点の根元であり、日本人の欠点につながっているのかも知れないと感じた。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 最初の訪問校であり、韓国の学校のイメージを持つものとなった。男女 共学の大規模公立学校であるが、男女別習で情報機器を多用した授業 を行っており、生徒、保護者、教師ともに学習活動に大変熱心であること が伺えた。夏休み後2日目の授業であり、短時間の参観であったので、 韓国あるいは清明高校特有の学習指導を理解するまでには至らなかっ た。しかしながら、1500 名を超える生徒個々に配慮し意欲を学習喚起す る学校である印象を受けた。 - 38 - 訪問先② 善隣中学校 公立の伝統校。学校をあげた心のこもった歓迎を受けた。体育授業に 柔道を取り入れ、生徒の人格形成に役立てている。カリキュラムは、第2 外国語以外は日本とよく似ている。理科では3-4-4と日本の新指導要領 の単位数と同じであり、学習指導内容が多く、実験・観察といった活動を 通しての内容理解と言うよりは、教授という形が中心であるような印象を 受けた。コンピュータを活用した特別クラスが設定され、能力別指導にも 手厚くサポートしている。対外交流を積極的に行っている。 訪問先③ 果川中央高等学校 公立の高等学校、創立8年目の新しい学校。奨学制度や教師の研修 制度などが確立しており、学校経営のモデル校ともなっている。教育機 器をはじめ、教育環境整備に力を入れている。生活習慣教育にも力を入 れ、分別、美化の指導もボランティア活動を通して実践している。未来思 考的進路相談活動を行い、一人一人への手厚い指導も感じられた。 保護者の熱心さと教師の研修意欲の高さを感じた。 訪問先④ 釜山国際中学校 公立のインターナショナル校であり、他の公立校と違い入試によって選 抜された生徒が通っている。生徒も教師もプライドを持っていることが伝 わってきた。釜山でのホームビジットを行った生徒の通う学校であり、家 庭も生徒も学校も、学習活動に対する意欲が高く、積極的に様々な試み を取り入れている。多数の外国との姉妹校や、英語を用いた理科授業な ど、国際人の育成を目標にした英才教育を実践している。このような学校 が公立学校であることが日本とは違い、国を挙げた人材育成の方針がは っきりしている。 訪問先⑤ 韓国の歴史、文化、特に戦争や宗教に関する見識を深める研修となっ 水原華城 た。アジア大陸の端にあり、大陸と大洋の重要なつながりとなる場所に位 梵魚寺 置するだけあり、時代によって様々な侵略戦争が行われた。寺社・仏閣 牛浦沼 は日本と共通点もあるが、細かい彫刻の多い日本に対して、派手な色遣 仏国寺 いではあるがシンプルなつくりとなっている。戦争の多かった土地柄で、 慶州博物館 短期間に建設するためか? 3.最も有意義であった内容: 一言で言うと、韓国の方と実際に話を持てたことである。 こういった視察は、様々な学校を訪問して、説明を受け、授業参観で終わってしまうことが多いが、日本の教員 が授業を行ったり、参観授業に対して、意見交換を行ったりする場面が多くあり、感じたこと、疑問に思ったこと をすぐに解決することができた。 時間の設定は十分に配慮されていたが、それでも時間が押してしまったのは、表面に見える活動ではなく、 その人の考え方を知りたい現れである。 - 39 - また、実際に訪問する学校の生徒の家庭に、ホームビジットすることができ、韓国の家庭事情、生活、食文化、 人間性、日本に対する考え方、韓国人の考え方など多くの事柄を知ることができた。実際に訪問するまでは、非 常に不安ではあったが、膝を交えて同じ釜の飯を食うことで、本音・本当の姿が見えてくる。不十分なコミュニケ ーション能力ではあるが、身振り手振りを交え、日本語・英語・韓国語を織り交ぜ、「相手に伝えよう」・「相手を理 解しよう」とすれば、何とか分かる本語・英語・韓国語を織り交ぜ、「相手に伝えよう」・「相手を理解しよう」とすれ ば、何とか分かる。」ということが分かった気がした。 4.成果: 韓国について、ほとんど何も知らないことを改めて実感させられた。 個人のレベルはもちろん、日本全体が韓国のことをどれだけ理解しているだろうか? 日本に最も近い国である韓国の重要性を知らない日本の教育システムの問題性を理解した。 授業の形態、教師の意識や能力、教育事情は日本とは大差がないことが分かった。 反日感情の高い韓国というイメージが強かったが、親日家も多いことが分かった。 良くも悪くも、韓国は日本のことを意識していることが分かった。 日本の教師・生徒はもっと外に目を向け、諸外国を意識した方がよい。欧米ばかりに意識が行きやすいが、ア ジアの一員であること、日本がアジアのリーダーシップを取る意識をもっと強く持つべきであると考えた。 5.今後の日韓交流について: 本校では、今まで多くの国の方々の訪問、授業参観を行ってきたが、実情を見せるだけの意識しかなかった。 積極的に意見を聞き、日本の教育実情の説明活動を行っていきたい。また、現在の教育内容を見直し、韓国を 初めとした近隣諸国の理解活動や教材開発につなげていきたい。 今回訪問した学校との連絡を継続することから、さらに深い理解を図りたい。 その中で、交流活動の可能性が出てきたならば、個人として積極的に協力したい。 今回、韓国の学校での日本人教師の授業も実現したが、飛び込み授業であり、本来の理解を深める活動には 至っていない。 日本や韓国の実情を理解したあとの活動が重要である。くり返し継続した訪問・交流があって、相互理解が深 まり、相互の協力活動ができると考える。 今回、相互に訪問した教員を中心に、再度訪問し、研修機会の可能性を模索したい。 6.提案・助言: 本プログラムの内容を広めて行くには、多くの教員の派遣は必要であるが、一部には一度訪問し実情を理解 している教員あるいは交流を継続している学校の先生が参加していると、日本の教師から見た内実も伝えられる。 今回飛び込み的に行われた授業はパフォーマンスで終わってしまったが、事前に授業の内容を準備し、韓国 教員にも日本の教員にも参考になるような授業が行えるのではないか? また、受け入れ側の負担も大きくなるが、ホームビジットのように、いくつかの学校に分かれて、1日あるいは数 日継続して、学校の日常の教育活動を体験できるようないわゆる研修訪問を行うことはできないだろうか? 外からではなく、中に入って実情を知り、日本人教師としてその学校に対して何か貢献をする場面は設定で - 40 - きないか? 足立区立第四中学校 教諭 勝田 敏行 1.総合所見: 個人として設定したテーマ 「韓国の教育の現状(教育制度・特色ある教育・教員、保護者の思い等)を学び、今後の自身の教育活動に役 立てる。」 具体的な質問 (1)日本では近年地域との連携を図り、子供たちが地域に出て体験学習をする機会が増えているが、韓国では そのような体験学習をどのように実践しているのか。 (2)日本では学力低下が問題となり、脱ゆとり教育が叫ばれているが、韓国での国レベルでの教 育方針はど のようなものか。 (3)日本では不登校生徒の指導に苦慮しているが、韓国での不登校生徒の現状とその対策はどのようなもの か。 (4)日本では英語教育が小学校にも取り入れられるようになるが、韓国の英語教育の現状はどのようなものか。 感想 個人的には韓国は初めてでしたので、学校訪問を始め、世界遺産や演劇まですべてが発見と驚きの連続で した。その中で、事前に設定したテーマ以上に様々なことを学習できました。特に日韓両国とも変革期を迎えて いる教育界で受験等の現実問題を抱えながら、ESDに関わる実践を国や地域、学校で今後どう実現していけ ばよいのかということを痛切に感じました。韓国では国レベル、地域レベル、学校レベルで様々な実践が行われ ています。日本でも気仙沼地方等各地で実践されていることを知りました。こうした活動を自校や地域ではどの ように実践できるかということを課題として投げかけられたような気がします。今すぐ、という訳にはいかないと思 いますが、今回学んだことを大切にし「万人のための教育」を心に秘め教育活動に当たっていきたいと思いまし た。 政治的な問題を抱える中、本プログラムを中止することなく実行していただいたACCUのスタッフの皆さん、 どうもありがとうございました。私たち教員のそれぞれの立場や要望にあったプログラムを作成していただき、大 変感謝しております。このプログラムの作成に当たっては並々ならぬご努力があったのだろうと推察いたします。 また、この報告書を作成するに当たり、昨年度の報告書を再度読ませていただきましたが、そこで提案された要 望が今回のプログラムではほとんど実現されていました。昨年の要望を充分にご検討され組み立てられているこ とがわかり改めて感動いたしました。 また、現地のスタッフの皆様には、常に行動をともにしていただき心強い限りでした。プログラムの進行、通訳、 案内の正確さや熱心さはもとより、常に私たちの健康状態や精神状態を考え細部にわたって優しく心を配って いただき感謝いたしております。よいお仕事をしている方は人にも優しいのだということがよくわかりました。私も 見習わなければいけないと思いました。 とても有意義で充実した 10 日間でした。本当に感謝の念でいっぱいです。今後は微力ではありますが、私も 一教員として襟を正し、今回学ばせていただいたことを忘れずに、ACCUの皆様、ユネスコ委員会等韓国スタ ッフの皆様、韓国教育関係者の皆様に恩返しをしていく所存です。何か協力できることがあれば、いつでも声を - 41 - かけてください。本当にどうもありがとうございました。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① ユネスコ韓国委員会 所 見 1日缶詰となっての研修でしたが、ここでの学習が本プログラムを消化 していく上で大変有意義な事前学習となりました。今後、このプログラム を実施していくうえで、欠かしてはならないものだと思います。 韓国の教育現況の紹介、特に教員評価制度の変容についての講義が 中心でしたが韓国の教育制度の歴史から、特に現在、韓国の教育制度 全般が大きな過渡期であることがよくわかりました。 また、韓国のESDに関する講義では韓国だけではなく地球規模のES Dの意義や現在の活動状況等、本来、日本で学ぶべき内容の講義をし ていただき、自己のESDに関する知識の習得、今後の考え方等大変勉 強になりました。さらに、ASPの事例では韓国の学校での取り組みが具 体的でよくわかり、日本で実践していく上で大変参考になるものでした。 訪問先② 淸明高等学校 最初の訪問校ということで緊張しながらの見学・学習となりました。高等 学校の平準化という話を日本で知り、大変興味を持っていました。様々 なレベルの生徒が入学するということで、体制としては日本の公立中学 校と同様のシステム(能力別クラスの授業、特別支援学級等)が取られて いると感じました。 最も印象に残っているのは自習室です。個別に区切られたスペースで 夜中遅くまで学習できる環境、柱には「努力」「礼節」という言葉と共に 「一流指向」という言葉が貼られており、韓国の受験熱を実感することが できました。また、教員のためのトレーニングジムやゴルフ練習場(生徒 も使う)もあり、勤務時間等でたまるストレスの解消に役立っているにちが いないと推察いたしました。 また、ASPとしての取り組みも紹介していただき、大いに参考になりまし た。 訪問先③ ユネスコ世界遺産のひとつということで楽しみにしておりました。当時の 水原華城 面影をそのままに荘厳な雰囲気を想像しておりましたが、実際はかなり 観光地化されており、町全体がにぎやかで人の数も多く、あちらこちらで 碁を楽しむ集団が見られ、庶民の憩いの場といった様子でした。しかし、 城壁は当時の戦闘の面影を残すものであり当時の王が町全体を守るた め、英知を集結して敵の侵入を防いでいたということがわかりました。 案内人のおじいちゃんの笑顔と楽しい命令口調の日本語、弓を教えて くださった方の厳しくもユーモアを交えた日本語。楽しいひとときでした。 韓国ドラマ「チャングムの誓い」を見ておけば良かったと後悔しました。 - 42 - 訪問先④ 善隣中学校 男女共学(実際は男女別クラス)の公立中学校ということで私自身とて も興味を持って授業参観や協議会に参加させてもらいました。土砂降り の雨の中、丁寧に説明していただいた教職員の皆様を始め、歌や踊り を披露してくれた生徒の皆さん、チマチョゴリで迎えていただいた保護者 の方々、心温まる歓迎に感動いたしました。 校訓の「よく考えて行動し我慢する」という言葉が印象的でしたが、よく 考えてみましたら、日本でも「忍耐」という言葉はよく使われていたと思い ました。しかし、最近は生徒に我慢させる機会が少なくなったと思い、無 性に「忍耐」という言葉を現場で使ってみたくなりました。また、柔道や弓 道を教育課程の中に取り入れ人格形成等に非常に有効であるという話 を聞きました。日本でも武道が必修科目になっていきますが、韓国の取 り組みを手本に進めていくべきであると思いました。 訪問先⑤ 果川中央高等学校 学校経営優秀校ということで、学校施設や周囲の環境ばかりでなく、校 長の人事権、経済的な支援、教員の昇進の際の優遇制度など、すべて において非常に恵まれた学校であると感じました。特に、学校社会福祉 室(カウンセラー室)はとても充実しており、本校の恵まれないカウンセラ ーに話をしたところ、日本のカウンセラー室もぜひそのような形にしてほ しいと言っていました。 授業参観では全体的にレベルの高さを実感できました。日本語の授業 ではアニメを使った教材や壁には日本文化のポスターなどが貼ってあ り、工夫を凝らした授業を展開していました。そこでの結城先生の授業の 場面では、「全体の声は大きいが個人になると声が小さく消極的になっ てしまう」という日本の生徒ととても似ているところもあり、微笑ましく感じま した。 懇談会ではかなり具体的な学校の問題点について質疑応答がなされ ました。中でも放課後の生徒の学習時間に関する応答では、保護者の 方に参加していただけたので、親としての心持ちや実際の家庭での様 子を聞くことができ、大変有意義でした。「『四当五落』という言葉がかつ て日本でも流行ったなぁ」と思いました。 訪問先⑥ 文化公演ナンタ 「ナンタ」とは「ナンダ?」と初日から思っていましたが、漢字で書くと「乱 打」で少し想像でき、果川中央高等学校の選択?クラブ活動?を見て 「なんた(と)なく」わかりかけました。包丁やなべなどを叩きながら、厨房 を舞台に5人で行うパフォーマンスは、単純なストーリーであり、言葉が わからなくても大いに笑い、楽しめるものでした。役者たちの叩く速さ、正 確さは一見の価値があります。伝統的な芸能を現代的にアレンジし、新 しい文化を創っていく韓国パワーの素晴らしさを味わいました。 - 43 - 訪問先⑦ 梵魚寺 禅宗の山寺。伝統と規律を重んじた厳しいお寺なのだろうと思いました が、最初の昼食の食べ方が非常に愉快でした。まさにバイキング発祥の 地はここだということもわかるような気がしました。日本でもたくわんでお 椀を拭くというのはありますが、キムチで拭いたり、拭いた後のお水を飲 んだりと一生経験できないようなことを体験させていただきました。 お話では、おしょうさんの「茶でもいっぱいどうぞ」という言葉がとても心 に残りました。本校では経費削減のためお茶を出さない傾向にあります が、来校者にはやはりお茶やお菓子でもてなすべきだと思いました。お 茶を一杯飲めば心は落ち着きます。それから話し合うことはお互いのコミ ュニケーションをとる上でも大切なことだと思います。 また、おしょうさんが日本の食べ方はとても好ましい食べ方であるとおっ しゃっていました。日本でも食育が導入されますが、伝統的な食事の仕 方を生徒たちに伝えていくことも大切なことであると思いました。 それにしても、豊臣秀吉はなんとひどいことをしたのでしょうか。 訪問先⑧ 牛浦沼 韓国の環境教育(ESD)を実感することができました。日本の尾瀬での 学習を思い出し、あの時もう少し環境教育を意識した取り組みをしてい れば良かったと思いました。 地域の小学校3年生の必修科目としてここでの体験授業を設定するこ とはとても意義深いものであると思います。実際に小学3年生が楽しそう に学んでいる姿を見ることもでき、それを実感できました。ここのモットー である「触れる」「作る」「遊ぶ」教育活動は子供たちにとって心に残る楽 しい活動であり、日本の環境教育を考えていく上でとても重要なキーワ ードでもあると感じました。3年生の皆さんが大人になっても、ここで感じ たことを持ち続けてもらいたいと願います。 ここで作った伝統工芸品は(すみません、名前忘れました)「家内安全」 を祈願して我が家に祭られています。 訪問先⑨ 釜山国際中学校 少数精鋭の英才教育校として、レベルの高さを痛感しました。教育目 標が明確であり、特性を生かしたエリート教育とはこういうものなのだろう と感じました。 日本の公立学校ではまだまだ考えられない英語による理科の授業(賛 否両論があるようですが)など新しい取り組みもみせていただきました。 校種別による教師との懇談会はとても充実したもので今回のプログラム 中、最も韓国の教員の方たちとうち解けた感がありました。学校の理解も 深まり、お互いの指導技術の交流も図れ、悩み等も共感できるものでし た。昼食もご一緒することができ、教務主任の先生と交流が深められ、 別れ際にお互いの健闘を誓い合うように熱く握手を交わせたことが特に 心に響きました。 - 44 - 訪問先⑩ 佛国寺 日本の法隆寺を彷彿させるユネスコ世界文化遺産に心が洗われる思 いでした。ガイドさんに一つ一つの建造物を丁寧に説明していただき、 隠れた意味や建築の工夫など驚きと納得の連続でした。特に、当時から の遺物である三重石塔や多宝塔には、長年の風雪や人災に耐えてきた 歴史の重みを感じました。ここでも、豊臣秀吉の卑劣な行為に胸が痛み ました。 訪問先⑪ 国立慶州博物館 きれいな青空と広大な緑の中に設立された静かな美しい博物館でし た。新羅時代の遺物が多数展示されており、特に国宝「金冠塚金冠」や 「騎馬人物型土器」は当時の人々の生活ぶりを垣間見させてくれるもの でした。次回、韓国を訪れるときがあるならば、私はこの慶州の地を国立 慶州博物館も含めてゆっくり見学したいと考えています。 また、最後の訪問地ということでガイドさんの説明が終了した時には、こ のプログラムの終焉を感じ、感慨深い思いになりました。 3.最も有意義であった内容: すべてのプログラム(休日のソウル観光も含めて)が有意義であったと思いますが、最もと聞かれればやはり 「様々な場所への訪問」であったと思います。 学校訪問では中学校2校、高等学校2校を訪問させていただきましたが、韓国の教育の現状をはじめ、日本 との共通点や相違点なども理解できました。また、ユネスコに関わる場所の訪問では今後、教育者として自分が どういうスタンスで教育に携わっていくべきかということを考えさせられました。 学校訪問では、日本人がもしかすると忘れかけている「忍耐」や「礼節」と言った心の教育や生徒たちの意欲 的な学習(自習)態度。日本語学級では、日本の伝統文化を日本の子供たち以上に学んでいた気がします。日 本の教育に欠けているものを認識できました。 また、高等学校では生徒たちの午前2時までの自習時間に驚かされましたが、日本ではそれを学校が引き受 けていないだけであって、予備校や塾、家庭教師など保護者の経済的な負担で行っているのだと感じました。 「お金持ちしか東大に行かれない。」といわれている日本。韓国ではそうした経済格差による教育格差を学校で 引き受ける制度により日本よりも早く手を打ったのではないかと思いました。ただ、そこには報告会で新井団長 が述べたとおり「単純に良い大学へ行くこと」が目的であるかのような錯覚も存在しています。 これからは、日本も韓国も教育による本当の意味での人材育成とはどういうことなのかを考えていかなければ なりません。そこには、「ある国に追いつけ追い越せ」といったモデルはなく、それぞれの国で新たに、または協 力して考えていく必要があります。 そこでヒントになるのがESDやASPの取り組みだと思います。日本でも新学習指導要領で改めて「生きる力」 の育成が継承されましたが、ESDやASPの取り組みにはその力を育成するための実践が数多く詰まっていま す。牛浦沼では小学生に対する環境教育の一例を拝見させていただきました。ASPでは事例を通し国際理解 や国際交流の方法を学びました。世界遺産への訪問では実際に守っていこうと人類が決めた伝統・文化にふ れることができました。米田先生がおっしゃっていた「グローバルTHINK、カントリーACT」とはまさにこういうこ となのだと実感しました。このような考えを持ち、実際に行動できる人材を育成することが本当の意味での人材 育成だと思いました。 各学校で日々の教育活動の中にこうした活動を取り入れ、子供たちが地球規模で物事を考え、そのために - 45 - は自国で、地域で、こういうことを行うべきだと考えられる「生きる力」(文科省の言っている意味とは異なるかもし れませんが)の育成を図っていかなければならないと思いました。その役割の一端を私たち教師が担っている のだということがよくわかりました。「様々な場所の訪問」を通してそのことに気づかせていただいたことが最も有 意義だったと思います。 4.成果: (1)韓国の教育の現状 これは、事前に自分で設定した課題でした。このことに関しては事前に送られてきた平成 19 年版の文科省の 資料(諸外国の教育の動き 2006 抜粋―韓国―)や東京で行われた事前オリエンテーションで紙面上、机上で 事前学習として学ぶことができました。韓国では事前学習で興味があった「放課後学習」や「雁パパ」、「高校の 平準化」について、実際に具体的に学ぶことができました。また、ユネスコ韓国委員会での講義では教員評価 制度の変化を中心に韓国の教育の歴史や今が転換期に当たっているということがよくわかりました。また、世界 的にも有名な受験熱に関しても学校の体制や教員の考え方、保護者の考え方まで聞かせていただき大変勉強 になりました。 (2)ESDの理解 恥ずかしながら本プログラムに参加するまではESDについては「持続可能な発展のための教育、持続可能 な開発のための教育など日本語訳も難しい」と思いながら、環境教育とほぼ同じものとしてとらえていました。が、 ユネスコ韓国委員会での講義を通しその意味、内容を明確に理解できました。また、実践校の事例を学習した り、牛浦沼を訪問したりすることによって、自校で、もし取り組むのであればこんな実践ができるということまで考 えられるようになりました。 (3)ASPの取組 ESD同様、行く前までは名称さえ知らず、どのような活動を行っているのかということも知りませんでした。行き の飛行機で隣り合わせになりました東雲小学校の真瀬先生から飛行機の中で東雲小学校の取り組みをうかがう ことができ、大変勉強になりました。また、韓国での学校訪問を通してASPとしての活動を聞かせていただいた ので、今後、自校がASPになった場合の参考になりました。 (4)ホームビジットの成果 わずかな時間ではありましたが韓国のご家庭におじゃまさせていただき、実際の生活ぶりを拝見させていた だくことができました。釜山国際中学校の生徒さんのお宅ということで緊張しましたが、おじいさまが日本語に堪 能で(昔日本で暮らしていたそうです。)会話も弾みました。おじいさま、おばあさま、お父様がお医者様で大変 裕福なご家庭であるとわかりました。おじいさまには「食事の仕方」から「韓国の教育について」まで幅広い話題 でお話を伺うことができました。お父様はお医者様でありながらジャズピアニストであったり韓国でも有名な水中 カメラマンであったりと多方面でのご活躍に驚かされるばかりでした。息子さんは中学生でありながら1年間カナ ダに留学し、日常会話が英語でできるということで韓国の英語教育への力の入れ方がわかりました。将来は国 際的に活躍するお医者さんになるのだろうと思いました。お母様はとても美人でお料理が上手で会話はなかな かできませんでしたが優しいお人柄の方でした。キムチ用冷蔵庫は感動でした。 おみやげには日本の手ぬぐい、扇子、Tシャツ、チョコレートなどを持って行きました。ちょうどオリンピックで - 46 - 韓国が野球で優勝した次の日でした。日本を発つ前日にホテルメトロポリタンエドモンドのオリエンテーションの 際に東京ドームが近くにあったので李承燁グッズを買っていきましたがこれが一番の話題となり、しばし野球談 義に花を咲かせ、日本の野球に対する韓国の方の考え方がよくわかりました。 車でかなり長い時間の送り迎えとおそらく1日以上かけての食事の準備に大変恐縮したのとともに心温まる大 歓迎に感謝の気持ちでいっぱいです。後日、釜山国際中学での息子さんとの再会と記念写真撮影にはとても 感動いたしました。 (5)日本各地域の先生方との交流 これは本プログラムの目的とは直接関係はないかもしれませんが、各先生方との対話を通して学ばせていた だいたことが数多くありました。飛行機の中、バスの中(ほとんど寝ていましたが)、見学中の会話、食事の時間 等様々な場所、時間帯で勉強させていただきました。兵庫の職場体験の実態や埼玉の養護学校の実状、秋田 の学校教育の実態、国立付属中の様子、関西・関東の違い、おいしいアワビの店、ソケットの買い方、その他 色々、一つ一つが新鮮ですべてが財産となりました。話をしていただいた先生方、本当にお世話になりましてあ りがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。 5.今後の日韓交流について: 今後、ご所属の機関が韓国の学校・教員・児童生徒との教育交流を行う場合、どのような交流が考えられるか、 また、その実施の可能性についてお書きください。 (1)韓国教員の来校時の交流 2008 年1月に韓国の先生方をお迎えしました。そのときは授業参観・教員との懇談会・生徒との給食交流、体 育館でのセレモニーを企画し行いました。生徒との交流は、給食を教室で生徒と一緒に食べていただき、5校 時に全校生徒で歓迎セレモニーを行いましたが、大変喜んでいただけました。教員同士の懇談会が、通訳を介 することもあり、時間が足りず、お互いに不完全燃焼だった感があります。今回、私も訪問してみてやはり同様の 気持ちを持ちましたので、教員同士の懇談会に多くの時間を取れるよう考えたいと思っています。 (2)授業交流 今回、日本の教員が授業をさせていただきました。どの先生方も準備にかなり時間がかかり、緊張をされてい て大変そうでした。しかし、実際に授業を見させていただくと、韓国の先生や生徒との交流が図れていてとても 楽しそうでした。先生方にとっても、とても良い経験になったと思います。やはり教員ですから授業交流は非常 に有意義だと思います。韓国の先生方にもぜひ、日本の学校で授業をしていただけたら良いと思います。 (3)韓国語による資料の用意 今回、各校で様々な資料をいただきましたが、やはり韓国語で書かれているとほとんど内容がわかりませんで した。今後、自校に韓国の先生方が訪問される機会があれば学校要覧等資料は韓国語版を用意した方が良い と思いました。 (4)生徒同士の交流 今後は是非生徒同士で交流を図るべきだと考えました。すでに姉妹提携をしている学校間ではお互いに訪 - 47 - 問するなど様々な取り組みが行われていることを知りました。本校はASPでもなく姉妹提携をしている地域や学 校でもないので、実現できる可能性はかなり低いのですが、手紙の交換や同じテーマで学習したものを交換す るなどして生徒間の交流も実現していきたいと思います。 6.提案・助言: 50 人の団体であれば、今回のようにA、Bのグループに分けるのはとても良いと思います。あえて、改善という ならば今回のグループで感じましたが、韓国やユネスコについてよく知っている方(実際にASPとして取り組ん でいらっしゃる方等)と私のような韓国が初めてで、ASPやESDについて余りよく知らない方がいました。今後 はそうしたよくご存じのグループと初心者のグループに分けて、初心者のグループには今回のようなプログラム で行っていただき、ASPやESDに積極的に取り組んでいるグループには韓国のASPやESDに積極的な学校 とのフォーラムや授業交流、シンポジウムなどを取り入れてみるのはどうでしょうか。事前の取り組みが大変だと は思いますが、自校の取り組みを情報交換しながら共通のテーマや課題を考えていくと、ワンランク上のプログ ラムになっていくのではないかと思います。初心者への啓発と経験者による教育活動の交流がユネスコの活動 としてもとても有意義であると考えています。 ホームビジット(家庭訪問)ですが、「とても有意義でよかった。」というご意見も多々あると思いますが、これに ついてもあえて提案させていただきます。日韓両国とも、引き受け手を探すのが難しくなってきていると聞きまし た。今回は釜山国際中学校の生徒さんのお宅が多かったと思います。受け入れ先のご家庭では、この日のた めにかなりの準備時間を要していると思います。おじゃまさせていただいた時間は2時間くらいでした。心温まる おもてなしをしていただいてとても感謝していますが、お気の毒で申し訳なかったという気持ちもあります。受け 入れ先を探すことが難しく、ご負担になるようでしたら家庭訪問は無くしてもよいのではないかと思います。代案 は明確なものではありませんが、小グループ(校種別)による教員同士の懇親会等はいかがでしょうか。 秋田県立博物館 副主幹 佐々木 人美 1.総合所見: 今回、私が設定した課題は次のとおりである。 (1)韓国人の日本観、特に秋田に対する印象の把握。 そのことで秋田県立博物館を含めた秋田の観光資源の魅力と改善点とを確認する。当館も外国のメディアから 取材や情報提供を求められることがあるが、そのニーズをきちんと把握して対応しているとはいない。秋田から の日韓定期便の存続が危ぶまれている現在、積極的に秋田をPRするためにも実際のニーズを探りたい。 (2)韓国の生活の中に息づく伝統文化を見聞したい。 ことに鮮やかな色彩の中に込められた陰陽五行説について、食生活や衣料、生活デザイン等にどのように採り 入れられているかを知りたい。 (3)過熱が報道されがちな韓国の大学受験であるが、学校生活の実態と人々の受け止方を知りたい。 また、そこに見られる韓国人の価値観というものも知りたい。 (4)韓国における博物館の実態と、その評価および課題について知りたい。 まず、全体的な感想であるが、日韓両国の関係が良好とはいえないこの時期に、熱烈な歓迎をしていただいた - 48 - ユネスコ韓国委員会と韓国の教職員の方々に、心から御礼を申し上げたい。この事業に対する真摯な思いは、 1分も無駄にしないその受け入れ態勢によく表れていた。また、この事業を支えてくださったACCUの皆さんの 細かな配慮のおかげで、研修という名に恥じない内容で日程を消化できたことに大変感謝している。次に、自ら の課題に関しての所見を述べる。 (1)について、交流の対象が日本および秋田について関心や知識を持っている方々が中心であったため、課 題の設定自体に無理があった。ただし、社交辞令の部分を差し引いたとしても、秋田の観光資源には充分な魅 力があることが確認でき、県の職員として広報をしていく上での方向性は見えた。 (2)について、色彩に関しては徳壽宮や梵魚寺・仏国寺などで「青赤黄白黒」の5色が、それぞれ「木火土金 水」を意味し万物を構成する5つの元素として使われていることを実見できた。寺や宮殿などは、この5つの色を 使った華麗な文様で飾られていて、そこには永遠の繁栄への祈りが込められている。また、チマチョゴリ等に見 られる生命力の象徴つつじ色の広まりも実感した。「NANTA」「JUMP」を鑑賞する機会を得たが、そこには農 楽から生まれたサムルノリの伝統が底流しており、一種パターン化する程に定着していることを実感した。 (3)について、保護者・生徒にとってやむを得ない現実として比較的冷静に受け止められていると感じた。なお、 OECD(経済協力開発機構)の発表によると、日本の 2005 年の教育予算の対国内総生産(GDP)比は 3.4% で、OECD加盟国中最低であるという。韓国も下位で、4.3%という発表であったが、実際に訪問した学校の実 情を見ると、ハード・ソフトともに充実しており、数字を鵜呑みにはできないと思う。一方、教育費の私費負担をみ ると、韓国が1位、日本が3位であり、予算の不足を私費で補っている状況である。もちろん、韓国の私教育(塾) の加熱は望ましいことではないと思うが、抜本的な改善がないかぎりは、必要悪として受け入れられていくのだろ う。 (4)について、自由行動の日を利用して国立民俗博物館を訪問した。特に「韓国人の一生」をテーマとした展示 室は、日本の民俗と対比しつつ興味深く見学することができた。見学中、博物館の職員に声をかけられ、「日本 の博物館職員である」と話したところ、順路の最後まで日本語でガイドしてくれた。展示の内容だけでなく職員の 対応も記憶に残る経験であった。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 最も印象的だったのは、早期卒業を目指す生徒たちへの支援態勢であ った。しかし、日本の公教育では抵抗を感ぜざるを得ないこのような取組を 支えているのは、教育に対する確固たる信念である。こうした観点からする と、学校長の経営方針を「哲学」と翻訳していたのは、まさに的確であると 思う。以前、中国の教育視察を経験したが、小・中・高の各学校が 30 代か ら 40 代の若い校長のリーダーシップのもとに運営されており、訪問団にた った一人で対応していたのを思い出した。 - 49 - 訪問先② 善隣中学校 保護者がチマチョゴリで歓迎してくれた。また、訪問団が帰るまで色々と 世話をしていただいた。サンフランシスコのある小学校で、PTA活動をポ イント化することで半ば義務付けているという話を聞いたことがある。韓国 でも給食の際、保護者が交代で手伝いをするといった情報を得ていたが、 実際に見学して連携の強さを実感した。同時に、学校と保護者が対立の 構図で捉えられることの多い日本の現状を考えさせられた。 訪問先③ 果川中央高等学校 他校でも同様だが、放課後の学習活動の充実ということが、学校の特色 となっているようである。この学校では8時限の授業後、補習授業が用意さ れており、更に深夜に及ぶまで自習を続ける。そのために物的・人的な環 境整備がなされている。懇談会において、保護者から受験競争のへの懸 念も感じながらも、親としてはできるかぎりのことをしてサポートするしかな いことが語られた。また、学校側からは保護者の要望を受けての教育活動 ではあるが、社会全体の問題とする認識も見えた。 訪問先④ 釜山国際中学校 国際人の育成という特別目的学校としての選抜試験を実施している。ま た、帰国子女が多いことも特長である。ここでは、日韓の教師による懇談会 が行われ、非常に有意義であった。高校の部では釜山国際高校の先生方 が、日本側の質問に誠実に答えてくれた。中でも、「韓国の加熱した教育 熱を正しいと思っているわけではない」という言葉が印象に残っている。ま た、「新しい大統領の就任により、教育の方向性が大きく転換される」という 事情も聞くことができた。 訪問先⑤ ホームビジット 釜山国際中学校1年生の CHO WOO HYUN 君宅を訪問した。父親がサムソ ンの日本支社勤務のため、この春まで家族で日本に5年間在住していた。 父親は現在単身赴任であり、母親と中学校3年生の兄が在宅であった。訪 問中に父親から電話が入るなど細かな配慮をいただいた。 主に中学校生活について、日本との違いなども含めて話を聞いた。言葉 の不安がないため、充実した情報交換であった。親子ともに、受験体制は やむを得ないものとして受け入れているようであった。ただ、部活動の時間 がもっとあればよいとの少年らしい希望も話していた。 3.最も有意義であった内容: 韓国ユネスコ委員会ビルにおける講義「韓国における教員評価制の現況と課題」から多くを学ばせていただ いた。 私はかつて、秋田県総合教育センターという教員の研修施設に勤務していたこともあり、教員の研修および資 質向上には大きな関心を持っている。韓国が 40 年以上続けてきた教員評価を変え、パラダイムを画期的に変 化させようとしているダイナミックさに、今後大きく伸びていく可能性を感じた。 従来の 40 年以上続いた教員評価が、昇進のための評価基準であり、序列づけのための相対評価であったの に対し、新しい評価が教員の資質・能力を開発するための資料として用いる絶対評価だという。まさに理屈はそ の通りであるが、実施には大きな抵抗があることと思う。とりわけ、これまでの評価対象が教師と教頭だったのに、 校長も評価の対象となることや、評価者が校長・教頭に加えて、同僚・保護者・生徒が加わることなど、韓国の従 - 50 - 来の教育環境からすると劇的な変化だと思う。 日本でも外部評価の導入や教員免許更新制の導入など、新しい取組がなされようとしているが、正直な実感 としては、内輪、ことに管理職には甘いものに感じてならない。 善し悪しは別として、韓国の教育に関する熱に加えて、教員評価制が改善を加えながらその成果を上げてい けば、教育の面での日韓の格差は埋めがたいものとなるだろう。 謙虚にその実践に注目し学んでいきたい。 4.成果: 事前に設定した課題についての成果は、総合所見に記載したので、ここでは、予期していなかった成果につ いて延べたい。 それは、日韓の交流活動においての温度差を実感したということである。もちろん韓国は熱く、日本はそれより は冷めているということである。決して否定的な意味でいっているのではない。国民性の違いというものもあろう し、どういった背景で実施されている事業であるかも影響しているだろう。しかし、こうした交流活動においては、 相手の意識の実際を理解することがよりよい交流への足がかりになると思う。 私が以前勤務していた高校は韓国の群山市に姉妹校を持ち、交流活動を行っていた。私の家にも生徒が3 回、先生が1回ホームスティした。30 名ほどの生徒や職員が、毎年相互に訪問している。その際、訪問した職員 から韓国側の盛大な歓待に対する戸惑いを感じるという声を耳にした。また、それに対しての日本側の対応は やや腰がひけていたという感じを否めない。 今回の訪問でも、ソウルでの歓迎晩餐会に、以前日本に招聘された教職員が多く参加していらっしゃったこと に驚いた。参加率などの問題ではない。聞くと、片道4時間とか5時間という遠路を駆けつけたとのことである。こ れを我が身に置き換えたとき、果たして秋田から東京まで出向くであろうかというと、これまでであれば「否」であ る。しかし、今回の訪問を終え、こうした交流事業への韓国側の取組と意識を目にして、積極的に参加すべきだ と考えるようになった。 国と国との関係は難しいが、個人と個人との交流はたやすい。一歩を踏み出すことへの躊躇が消えたことが 自分にとっての最大の成果である。 5.今後の日韓交流について: 博物館という組織であるので、姉妹校交流というわけにはいかないが、日韓の交流に、より積極的な貢献をし ていきたい。 秋田県立博物館には、年に 10 組程度、韓国の団体の来館がある。言葉の問題もあるが、これまでは何よりも 韓国からの来館者の期待を把握できていなかったため、対応が不十分だったと反省している。今回のプログラ ムを通して、日韓の文化の類似点と相違点を少しは確認できた。また、韓国の博物館が児童・生徒にどのように 活用されているかも見ることができた。どのような対応がより印象に残るかが理解できてきたので、館長のあいさ つからはじまって見学や体験活動のプログラムをどう組むか、喜ばれるように改善していきたい。 なお、現在は秋田県の事業として中国甘粛省博物館との間で、7ヶ月間にわたる職員の相互交流を実施してい る。韓国との交流もできたらすばらしい。 - 51 - 6.提案・助言: 日本でのオリエンテーションで、韓国の教育事情についてもっと教えていただくと無駄が少ないように思う。も ちろん、参加者個人の学習不足や認識不足もあるが、基本的なことを訪韓時に質問しているようでは時間がも ったいない。例えば、韓国の教育の制度的なものは事前に学んでも、実際に韓国で出会い衝撃を受けるのは、 苛烈な受験競争と私教育の過熱である。こういった実態については、韓国からの留学生を呼んで話してもらうこ とで容易にレディネスが形成されるのではなかろうか。 プログラムを運営する側の事情も察知しながらも、純粋に参加者としての感想をいえば、人員としては 20 名以 内が活動しやすいと思う。それは、団として動きやすいことに加えて、個人個人の参加意識が高まるからである。 10 日間の日程で、役割分担を総勢 50 人以上ですると、ほとんど何をしたのか分からないような役割となることも ある。懇談等でも、時間を気にして周りに遠慮していると、まったく発言せずに終えてしまうこともあろう。交流活 動には自分自身が目に見える形で参加してこそ意義がある。そういった点を考慮すると、参加人数は少ないほ ど効果は大きいのではなかろうか。ただし、成果の総量で考えると、参加者が多いことも重要であるのだから、今 年の実施が様々な要素を考慮した最善を尽くしたものであることは理解している。 通訳を通じての交流活動は思ったよりも時間の制約が大きい。日本での教育に関する研究会のような感覚で 質問を3つぐらい重ねると、それだけで 10 分~15 分も費やしてしまう。結果として、数人の発言で懇談会が時間 切れとなることもあった。得難い貴重な機会なので、質問等については事前に打ち合わせるなどの準備も必要 ではなかろうか。 これまでに何度か海外での教育視察や交流事業に参加しているが、自己負担が無いというのは初めての経験 である。招聘プログラムであり、参加者個人にとってはありがたいことではあるが、研修は教職員の義務の範疇 にあるので、「NANTA」の鑑賞やオプショナルツアー、飲食等、個人にかかる部分は自己負担するのが筋では なかろうか。 秋田県立秋田明徳館高等学校 教諭 佐藤 かおる 1.総合所見: 今回、このプログラムへの参加にあたって設定した自身の課題・テーマは、次の3点でした。 (1)学校視察を通じて、韓国における歴史・地理教育の指導内容や教授方法などについて知りたい。 (2)同じく学校視察を通じて韓国の高校における生活指導や進路指導の現状について知りたい。 (3)ESDやASPの理念や実践について学び、これまでは字面でしか捉えることのなかった「国際理解」を日々 の教育活動の中でいかに具体化していくかを考えたい。 事前に十分な準備もできず、不安だらけのまま韓国へと出発したわけですが、まさに「案ずるより産むが易し」 で、同行の方々に頼りっぱなしではありましたが、とても充実した 10 日間を過ごすことができました。このプログラ ムのおかげで、狭かった自分の世界を少し広げることができました。見た目も中身も小さい私ですが、教育に携 わる者としてこれから何ができるのか、何をなすべきなのかということを考え実践し、子どもたちが自立した大人 になるための手助けをしていきたいと思っています。また、今度こそ韓国語を勉強し、頑張って初級レベルぐら いマスターして、ぶらりとソウルやプサンの街を歩いてみたいと思います。今回のメンバーがソウルやプサンで再 会できたらとても楽しいでしょうね。お世話になった皆様、本当にどうもありがとうございました。 - 52 - 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 授業参観や昼休みの様子から、飾らない普段通りの学校生活の様子を観 察することができて良かったと思います。特別クラスに属する一部の生徒に ついては、一人ひとりの学習スペースが与えられ、深夜まで残って学習に励 むということで、韓国の教育熱の高さを改めて思い知らされました。個人的に は「統一教育」の具体的な内容をもっと深く知りたいと思いました。 訪問先② 善隣中学校 校長先生や保護者の方々が伝統的な民族衣装で出迎えて下さったり、生 徒達が器楽演奏や踊りを披露してくれたりと、手厚い「おもてなし」の心を感 じることができました。学校紹介や質疑応答にかける時間がやや少なくなっ てしまい、生徒の放課後の過ごし方や生活指導の実情について、あまり詳し い話が聞けませんでした。ASPの活動については分かりやすく説明してい ただき、参考になりました。 訪問先③ 果川中央高等学校 2000 年創立という新しい学校で、それだけにさまざまなプロジェクトを実施 して「名品学校」としてのポジションを獲得しようという熱意が伝わってきまし た。学校経営優秀校に指定され、予算が手厚く配分されているということで、 校内の施設設備はかなり立派でした。名門大学に何名も合格しているという 進路実績は、やはりここでも夜遅くまで居残って自学に励むという努力の結 果なのでしょうが、日本側の質問に対する答えとして校長先生が言われた 「長時間の学習が社会問題化している」という言葉には、教員サイドが持つ 率直な思いなのではないか、と感じました。 訪問先④ 小学生を対象とする大規模な環境教育への取り組みを目にして、韓国教育 牛浦沼 界の環境教育に対する意識の高さを実感しました。ただし、受験競争にさら (環境教育事情についての視 される中学生や高校生に対してはどのようなアプローチが試みられるのか、 察) そこは日本とも共通の課題となるのではないかと思いました。 訪問先⑤ 釜山国際中学校 まさに国家的、国際的エリートを養成するべく設立され、施設設備もそれま での視察校の中で最も充実しており、また生徒の授業態度も立派でした。英 才教育に対する投資を惜しまない韓国政府の方針がもっとも顕著に表れて いる学校だと思いました。しかしそこから逆に、「英才」とそうではない子ども 達との間の、いわば「教育格差」はどうなっているのだろうか、将来的にそれ は民主社会の危機につながっていくのではないだろうかという懸念が頭をよ ぎりました。 - 53 - 3.最も有意義であった内容: 最も、というとひとつだけになってしまいますが、とてもそこまで絞りきれないので、3点ほど挙げたいと思います。 (1)学校視察 韓国の学校を視察する中で、普段自分の学校で生徒達を相手に走り回っているときには思いも及ばないような、 日本の教育のあり方や、自分が教師としてできること・為すべきことについてじっくりと考えることができました。 (2)ホームビジット 釜山で訪問したのは、高校で日本語を担当している先生のご一家で、ご主人と奥様、そして二人の小学生のお 子さんという典型的な核家族のご家庭でした。おそらく韓国の都市部における平均的な姿ではないかと思うので すが、奥様の手料理によるもてなしを受けながら、市民の日常生活や子どものしつけなど、幅広い話題であっと いうまに時が経ちました。 (3)「ナンタ」鑑賞 ソウルの専用劇場で、世界的にも有名な舞台を鑑賞することができて本当にラッキーでした。現代的でありなが ら伝統芸能の要素をふんだんに取り入れ、台詞をほとんど使わずにスピーディーな展開でぐいぐいと観客を引 っ張っていく手法は、とても参考になりました。 4.成果: 最初にあげた自身の課題・テーマに即していいますと、(1)については、自分が事前に要望を出していなか ったので歴史の授業を参観する機会がなく、また教員同士の懇談時間が短かったり、さらに「竹島(独島)問題」 もあったりしたため、歴史教育に関する質問も遠慮してしまいました。せっかくの機会だったのにと、今思うと悔 やまれます。今後は自分なりに情報を集めて韓国の歴史教育の実情を知るとともに、自分の授業の中でどのよ うに韓国を取り上げていくかを考え、いろいろと工夫していこうと思います。(2)については、受験に勝ち抜くため の学力向上に心血を注いでいる教育現場の様子を目の当たりにして、「グローバル化」のもたらすものは何なの か、ということを考えさせられました。高学歴化=大学進学率の高さを「光」とするならば、競争が生み出す「影」 の部分もあるはずですが、今回の視察ではその部分は見えてきませんでした。エリートになり得ない子ども達に 対してはどのような教育が保障されているのか、経済格差の拡大が教育格差の拡大を助長しているのではない か、という点がとても気になりました。(3)については、韓国におけるユネスコの活動が活発であり、視察した各校 のASP活動の実践も幅広く、とても勉強になりました。また、「国際理解教育」というものに対して特別に身構え なくとも、普段の教育活動の中でも実践できることがある、ということにも気づくことができました。 5.今後の日韓交流について: 現在私の勤務する学校は単位制の定時制高校で、経済的には低所得層の家庭が多いため、生徒が直接韓 国を訪問して交流するのは現実として困難な状況です(修学旅行も実施しておりません)。しかし可能性として、 インターネットを利用した交流はできるのではないかと思います。まずは私が窓口となって、今回の視察やホー ムビジットでお世話になった先生方から情報を得ながら交流できる学校を探し、教員同士や生徒同士のメール による交流から始めて、将来的には授業における交流にまで発展させていけるかもしれません。 いずれ、狭い日常生活の中で過ごしている生徒達に対して、国際交流の意義や楽しさを伝えるところから始め - 54 - ていきたいと思います。本校には、高校生が社会人とともに学べる「科目履修講座」というものがあって、その中 には「ハングル(初級・中級)講座」も開講されています。また、基本的に自分の興味ある科目を選択できるシス テムになっているので、学校設定科目として教科横断的な「国際理解」のような科目を開講することも可能だと思 います。あるいは総合学習の一分野として設定することもできます。多様なアプローチによって興味・関心を引き 出し、生徒が世界に目を向け、国境を越えた交流をしてみたいという意欲を持てるように努めていきたいと思い ます。そのためにも、国内外のさまざまな取り組みを学び、できることから取り入れていきたいと思いますので、こ れからもよろしくお願い申し上げます。 6.提案・助言: このプログラムはとても充実した内容で、人数増加や期間拡充の必要は感じませんが、個人として「こうだっ たらもっと良かったかも」と感じたことがいくつかありました。あくまで個人的な考えですが、以下の4点ほどを挙げ させていただきます。 (1)せっかく全国各地から集まるのですから、できれば日本を出発する前の事前オリエンテーションにもっと時 間をかけてお互いにさまざまな現場の情報を出し合いながら、日本の教育における課題や将来の展望などにつ いて話し合うことができればより一層有意義な研修になるのではないでしょうか。 (2)今回はA・Bの2グループでしたが、さらにグループを細かく分け(具体的には小・中・高・特別支援の4つ)、 高校教員であればもっぱら高校を視察することにしたほうが、教員の交流や意見交換という面からもより深めるこ とができるのではないでしょうか。今回のようにいろいろな校種を見て回るというのも学校教育の全体像を捉える 上で確かに有意義だとは思いますが、やはり教員や生徒との交流・議論の時間が少なく、少し物足りなさを感じ ました。 (3)訪韓して最初の段階で訪れたユネスコセンターにおける講義はとても勉強になったし、非常に有意義であっ たと思いますが、1日中座りっぱなしというのはきつかったです。すべて講義形式で進むのではなく、例えば間 にワークショップのようなものが入れば気分転換にもなって良いと思うのですが。 (4)後半、釜山に移動してからの日程の中に、本プログラム全体の内容を振り返って考えをまとめるための個人 としての時間がもっとほしかったと思います。 群馬大学教育学部附属幼稚園 教諭 中村 崇 1.総合所見: 私は、幼稚園に勤務しています。今回のプログラムへの参加に際して、事前に設定した課題は、ESDの取組 を勉強し幼稚園の教育に生かせるところはないかということです。 ユネスコ韓国委員会での講義「韓国の学校における持続可能な開発のための教育に関する紹介」の中では、 大変重要な勉強をさせてもらいました。持続可能な開発のための教育と環境教育を同一視するという問題点が - 55 - あるということや、環境と社会と経済がリンクしてこそ、持続可能な開発のための教育が可能になるということが分 かりました。 また、ユネスコ協同学校の中で先進的な取り組みをされている4校の訪問をさせていただいたこと、また文化 的なプログラムも多数用意していただいたこと、常時通訳の方が同行しワイヤレス通信で通訳・説明等を行って くれたこと、たくさんの食事のお世話をしていただいたこと、などなど、どれを思っても、ユネスコ韓国委員会の 方々のお心遣いを大変ありがたく思いました。心より感謝いたします。 たくさんの韓国の教育、そして文化に触れ、改めて私たち日本人のルーツは、ここ韓国にあるということを感じ ました。特に梵魚寺を訪問したとき、伝統工芸体験をしたときに強く感じました。 政治の世界ではできない、このような民間レベルでの両国の交流の重要性を痛感するとともに、このプログラ ムで得た事柄を職場に帰って同僚職員、子どもたちに伝えていこうと考えています。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 2人の高校3年生の生徒と実際に話ができる場を作っていただいたことが印 象に残っています。たいへん日本語が上手な二人で、将来の夢や日本につ いての印象を語ってくれました。授業を見ているだけではなく、このような機 会を作っていただいたことに感謝します。 訪問先② ユネスコ世界文化遺産に登録されている城郭都市 水原華城を見学するこ 水原華城 とができとても幸せに思います。朝鮮王朝第 22 代の王正祖王によって整備 されたそうですが、美しい城壁や立派な門がとても印象的です。 華城行宮の美しい建物、山と平地が一体化した構成、石と煉瓦で工夫され て作られた城壁など、どれも興味深く見ました。 弓道体験をしたり、145m先の的に当てるということを知ったりしたことは、韓 国文化を理解する上でも大変貴重な経験でした。 当地の案内の方は大変親切で楽しく案内していただいたことも大変印象に 残りました。 訪問先③ 善隣中学校 日本文化の紹介ということで、実際に生徒の前に立ち話をさせていただきま した。私は剣玉を紹介しました。本題に入る前に手遊び歌を実演してみまし たが、生徒たちが興味深く、喜んで見てくれたことがとてもうれしかったです。 剣玉の実演の時も韓国の童謡「サントキ」をみんなで歌ってくれました。韓国 の生徒は、盛りたてるのがとても上手だと感じました。 訪問先④ 果川中央高校 日本語の授業で、数人の生徒と自己紹介ゲームをしました。シャイな生徒 が多かったのですが、名刺を出すとはにかみながら受け取ってくれました。 みんな日本語は上手で、もっと自信を持って話してくれればよかったのに、 などと思いましたが、日本の生徒も同じような傾向があるなと感じました。 - 56 - 訪問先⑤ 文化公演観覧(ナンタ) 「ナンタ」について、ガイドブックに載っている記事を少し読んだことがあるく らいで実はあまりよく知りませんでした。そのような私ですが、実際に公演を 見た後では「ナンタ」の大ファンになりました。会場を巻き込む手法、韓国独 特のリズムをいろいろな道具で刻むおもしろさ、迫力ある動作、ギャグ、どれ も私を虜にしました。今度はぜひ自分の子どもたちにも見せてあげたいと思 いました。 訪問先⑥ 梵魚寺 梵魚寺では、お寺の食事をいただいたり、建物を見たり、その説明を聞いた りする中で、日本のルーツを感じることができました。日本文化の多くが仏教 に影響を受けていると思います。私たちが普段、日本のものと思いこんでい るものが、韓国にも多くありました。いや韓国から日本に伝わったものばかり です。そう考えると、本当に文化的なつながり、人の生活のつながりを深く感 じ、韓国と日本の関係をよりよいものにしていきたいと、この梵魚寺で思いま した。 訪問先⑦ 私は、韓国語も英語もうまく話せないので、コミュニケ一ションが上手く図れ 家庭訪問 るか大変不安でした。しかし、従兄の方が忙しい中いらして日本語を話してく ださいましたので、大変心強く思いました。 ご家庭に伺うと、お母様があたたかく迎えてくださり、お子さんと従兄のお兄 さんとお母様に、いろいろ韓国のお話を聞かせていただき有意義な時間を 過ごすことができました。韓国の家庭料理をいただきましたが、これがまたと てもおいしくお代わりまでいただいてしまいました。 伺わせていただいたご家庭のお子さんは、中学校一年生でしたが将来の 夢をしっかり持っていて、その夢に向かって毎日勉強している様子がお話を している中でよく分かりました。自分の考えをしっかり持っていることに驚き、 感動しました。 訪問先⑧ 牛浦沼 絶滅危惧種の動植物が多くこの牛浦沼には残っており、このすばらしい環 境を保全し後世に残していくことが今生きている人たちの責務と考え、様々 な取り組みをされていることに感銘を受けました。自然環境の再生には、そ の土地に昔からある物・その土地にあっている物を育て守っていくことが重 要ですが、外来種の動植物は強い物が多いので環境保全には大変な苦労 があると思いました。日本でも同じですが、環境保全には人々の意識を変え ていかなければならないので、子どもたちの学習も併せて行っている取り組 みには大賛成で子どもたちが各家庭にその意識を持ち帰り逆に大人たちが 育っていくとのだと思いました。 訪問先⑨ 釜山国際中学校 世界のたくさんの国と交流を行っていることにまず驚きました。また子どもた ちがたいへん落ち着いている印象も持ちました。日本の教師が折り紙を紹介 しましたが、生徒たちみんながきちんと正確に折っていく姿にも驚きました。 韓国教師との懇談会 小学校の先生方が、わざわざ私たちのために来てくれましてたいへんあり がたく思いました。 主に小学校での英語の授業に関して意見交換をしました。韓国の小学校 - 57 - の先生は、自分が英語の授業を担当しなくても、英語を話せないと教師の資 格がもらえないという話を聞きました。英語の研修プログラムも多数用意され ているそうです。大変厳しい世界であることを改めて感じました。 訪問先⑩ 佛国寺の建物や石段にこめられた仏教的な考え、当時の人々の願いという 佛国寺 ものが、説明を聞いていてよく分かりました。仏教は、韓国から日本へ伝わっ 国立慶州博物館 たわけですから、自分が知っていることも多いように思っていたのですが、実 際には知らないことが多く、韓国に来て、逆に日本のことをもっとよく勉強す る必要があると強く感じました。 国立慶州博物館では、先史時代のものから多くの展示物があり、大変興味 深く見学しました。とてもすばらしい博物館なので、ゆっくり見たいという思い もありました。 3.最も有意義であった内容: レセプションや韓国教師との懇談会、家庭訪問などで、両国の教育制度や学校の実情、児童生徒の家庭生 活・学校生活など、たくさんのお話ができ情報もいただいたことが、有意義であったと思います。高校生とお話を する時間を作っていただいたことも大変貴重な経験として私の心に残りました。海外の学校を直接見せていただ ける機会もなかなかないように思いますので、とても貴重な経験でしたが、やはり先生方や生徒達と直接話がで きたことがよかったことです。人と人とのふれあいの中で得るものは、書籍やメディアで得るものとは比べものにな らない、生きた熱い思いを頂くことができました。 4.成果: 一番自分自身で感じたことは、外国語でのコミュニケーションの重要性です。韓国語、英語ともに会話が成立 するような力があれば、より多くのことが吸収できたのではないかということを身をもって感じました。 訪問させていただいた各学校では英語、日本語を生徒、先生方がとても上手に使っている様子を見させてい ただき、まさにこの力の重要性を日本に持ち帰らねばと思いました。このプログラムに参加したことをきっかけに、 より韓国のこと深く知りたいと思うようになり、そのために韓国語を勉強していこうと思っています。私自身がその ような姿勢で日常生活を送ることによって、周りにいる子どもや先生方にも少なからず影響を与えていけるので はないかと思っております。 韓国の方々の勉強熱心さ、向上心の強さを実際に感じることができ、たいへんよい経験ができました。 私は幼稚園の教師ですので、自園の幼児に対して「コミュニケーション能力」の育成に力を注ぎたいと思って おります。幼稚園児ですから当然日本語での取り組みになりますが、将来を見通し、自分で考え他人に伝えた り、相手の立場に立って話を聞いたりできる子どもの育成が、今回のプログラムで実際に感じた事柄につながっ ていくのだと思います。 5.今後の日韓交流について: 私は幼稚園勤務ですので、幼稚園で幼児が何を学んでいるのか、教師はなぜこの環境を構成したのか、幼 - 58 - 稚園での生活が小学校以降の教育にどうつながっていくのかなど、解説しながら幼児の遊んでいる様子を見て いただくことが、幼児教育を理解してもらう一番早い方法かと思います。そのような教員の交流が可能かと思いま す。 6.提案・助言: 今回は諸事情により、小学校の訪問が実現しませんでした。それについては、十分理解していますが、今後 のことを考えますと、やはり小学校の訪問を入れてプログラムを構成していただきたいと思います。また、就学前 教育についても、理解を深めるプログラムを希望します。 富岡市立小野小学校 教諭 新井 貴人 1.総合所見: このプログラムに当たり、韓国の教育事情を知ると同時に韓国の文化に触れることによって、より理解を深める こと。学歴社会、受験戦争と言われる韓国教育の流れの中で、学習が遅れがちな子ども達へのサポートについ て、また、日韓の教育が抱える共通課題を発見すること。これらを自己課題として参加させていただいた。 プログラム直前に、諸々の問題がもちあがり訪問できた校数が減ったため、文化財見学の多いプログラムとな り個人的には韓国の文化を知るよい機会が与えられたと考える。特に印象深いのは、梵魚寺での食事である。 修行僧が行う食事を体験したことは、日本においていくつものお寺を見学しているものの初めてで貴重な体験 ができた。また、どこの施設においても解説が丁寧で日本の人に韓国を知って欲しいと言う熱意が感じられた。 各学校の訪問においては、訪問したどの学校でも放課後学校と言われる時間外の学習会が行われており、 韓国の教育に対する姿勢、先生方の情熱を考えると刺激を受けることばかりだった。特に、学校長のもとに教職 員が一枚岩となり教育に当たっているという点では、校長の権限が強いとはいえ学ぶべきところがあると考える。 ホームビジット、韓国の小学校の先生方との意見交換会は、学校訪問の時にはなかなか聞けない情報や意 見を聞くことができ、プログラム開始前に課題としてあげた、日韓の教育における共通課題が見えてくるものであ り、大変素晴らしい時間をいただいたと考える。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 校長はじめ、先生方に温かく迎えられた。施設が充実しているという印象を もった。生徒の3割が自学室を与えられ、遅い生徒は午前2時まで、そこで学 習をするといことには驚いた。 また、生徒との懇談の場を設けていただき、生徒の生の声が聞けたことは、 大変有意義であった。 - 59 - 訪問先② 善隣中学校 学校をあげて大歓迎を受けた。学校に着くと保護者の方々が民族衣装で 迎えてくれた。また、生徒によるチャイムベルの演奏、伝統舞踊、バンド演奏 があり一般公立中学校の温かさを感じた。ここでは、日本から参加した先生 の英語と日本語の授業交換があり、よい交流ができた。 印象に残ったのは、人格形成を目的として、柔道を取り入れ効果を上げて いるということだった。 訪問先③ 果川中央高等学校 2000 年開校という新しい学校でとても施設が充実している。平準化政策地 域のため非選考の高校で、生徒の学力差が大きいのだろうということが、たく さんのクラスを参観させていただき感じとることができた。 また、意見交換会に各学年保護者代表が参加し、親の立場での教育に対 する考えを聞けたことはよかった。 訪問先④ 釜山国際中学校 韓国初の国際中学校で、国際社会で活躍する人材を育成するため選考さ れ生徒が学んでいる。英語が堪能で英語以外の授業も英語で行われてい る。国際中学校のため、体験重視の国際理解、体育や芸術科目などにも力 を入れている。 何よりも感激したのは、ホームビジット先の生徒と再会できたこと。そして、帰 るときも校長の計らいで、その生徒らが見送ってくれたことである。 訪問先⑤ ホームビジット 訪問先である、釜山国際中学校の生徒の家庭におじゃますることができ た。一家で温かく迎えていただいた。夕食には、韓国の料理をテーブル一杯 に出していただいた。釜山ということもあり、焼き魚ごちそうになったが、韓国 で食べた食事で一番おいしかった。 また、学校訪問では得られない韓国のいろいろな情報を得られたことは、 心から迎えていただいた証であり、とても有意義な時間であった。 3.最も有意義であった内容: このプログラムを通して、距離だけでなく、日本文化の故郷という意味からも韓国は本当に近い国であることが 実感できた。学校訪問以外のプログラムが韓国の文化に触れることのできる素晴らしいものであったと考える。 特に、ホームビジットでは食事を介して本音で話ができた事で、学校訪問では大筋でしか回答が返ってこな い質問に対していろいろと教えていただけたことは大変有意義であったと考える。学力差からくる問題や大学に 入学するまでがんばらないと後でやり直しがきかない社会構造になっていることなど聞くこと全てが自分の糧に なった。 - 60 - 4.成果: このプログラムに参加させていただき、韓国の文化に触れることができたことが一つの成果である。いくつもの 文化財を丁寧な解説付きで見学できたことは、見逃してしまうであろう細かなポイントまで見逃さずに見ることが できた。また、言葉の壁を感じながらも自分も相手の方も必死でコミュニケーションを取ろうとすることで生まれた 心の結びつきは、これからも交流を持ちながら大切にしていきたい。 韓国の英語の授業を参観して、ネイティブティーチャーが一人で授業を任されており、かつ、韓国語はほとん ど使わずに授業を進めていた。授業後、ネイティブティーチャーに話を聞くと日本の小学校でも英語を教えてい たとのことであった。そこで、日本と韓国の英語授業の決定的な違いは、日本では英語の授業で日本語を使う ので、子どもは英語の後の日本語を待つ習慣が身についてしまっているとのことだった。その後「私がいる意味 はない。」と続けたが、この言葉は、非常に印象的で、2011 年度から始まる小学校での英語教育に方向性を見 いだすものだった。 5.今後の日韓交流について: 現実的なことを考えた場合、本プログラムに教員同士の交流に加え、児童生徒も参加できれば、さらに交流 に広がり、教員の立場と児童生徒の立場とで情報伝達できるものと考える。そうすることで、学校間での交流も教 師主導ではなく児童生徒が主体となりスムーズな交流ができるのではないかと思う。 具体的な交流とすると、メールを活用しての情報交換、作品や手紙のやりとりなどが考えられる。小さなことか ら始め、それらの交流が深まり、県または市町村単位での交換留学制度などが構築できるとよいと考える。 6.提案・助言: 今回のプログラムに参加させていただき、韓国の文化を目で、耳で、肌で感じることのできる素晴らしいプログ ラムであった。ただ、時間的な制約があり、一校に滞在できる時間が短く、子どもと接する先生方の様子や休み 時間などの子どものようすが見えにくい部分があったので改善できるとよいかと思う。また、プログラムに参加した 先生による授業交流は、他国の児童生徒を肌で感じるには意義があると思われるので、引き続き継続していけ るとよいと考える。 今後さらにたくさんの先生方、また可能であれば児童生徒が日韓の交流に参加できるとよいと考える。そうし た場合、現在一人にかかっている経費を削減するか一部自己負担(自己負担でも参加する価値が大いにある)、 参加人数を増やしていけるとよいのではないかと考える。 今後、本プログラムが継続し「近くて遠い国」という意識を「近くて本当に近い国」という認識が日韓両国にお いて広がっていくよう祈念すると共に、本プログラムに関わったすべての皆様に感謝を申し上げ報告に代えさせ ていただきます。 気仙沼市立松岩小学校 教諭 中谷 泉 1.総合所見: 今回の交流を通して、韓国の子ども達の学習及び生活の様子や先生方の仕事の様子を知ること。また、文化 - 61 - 遺産の視察等を通して韓国の文化について理解を深めることが自分の目標であった。 ユネスコ韓国委員会での「韓国の学校におけるESDやASP」についての講義でこれまで十分に理解してい なかったESDやASPについて理解を深めることができた。また、中学校や高等学校の訪問では、日本と同様に 学力向上を目指した教育が行われていることや外国語教育が進んでいること等を授業の様子や先生方からの 説明で理解することができた。さらに、文化遺産の視察やホームビジット等を通して、韓国の伝統や文化を直接 見たり触れたりしたことで、これまで以上に韓国への興味を持つことができ、国際理解教育等での指導に役立て ていこうという思いが高まった。 今回不運にも訪問前に「竹島問題」が起き、小学校への訪問が中止になったこともあり韓国訪問に不安を感 じていた。しかし、韓国での中学校や高等学校訪問や文化施設の視察、ホームビジット等で出会った方が私た ちを大変温かく迎え入れ、とても親切に接してくださったことでその不安は完全に解消された。韓国の人達の優 しさが忘れられない交流になった。今は、このプログラムを企画してくださった韓国ACCUの方々、各学校の先 生方、そして、生徒や保護者の方々に感謝の気持ちでいっぱいである。 また、団長の小澤紀美子先生やAグールプ分団長の新井哲夫先生はじめ多くの日本の先生方と出会えたこ とを大切にしていきたい。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 学生数 1,785 いう大きな学校である。公立高校であるのに特殊学級が3クラ スあるということに日本との違いを感じた。生徒との懇談する機会はとても良 かった。思っていた以上に日本語が上手であるのに驚いた。また、生徒たち の素直さや真面目さも感じられ好感を持った。水原市では、入試がないこと や優秀な生徒は早く卒業できることなど日本とは違ったシステムになってい ることを知った。 訪問先② 善隣中学校 校舎に入ると、チマチョゴリを着た保護者が出迎えてくれた。また、学校紹 介の会場では、中学生が楽器演奏や踊り、バンド演奏などを披露し、私たち を温かく迎え入れてくれたことに感激した。 2年生クラスで行われた中村先生のけん玉と金沢先生の切り絵の授業に、 生徒たちは、とても興味を持って臨んでいた。教員用のランチルームでいた だいた昼食は、日本人に配慮した辛みを弱めたおいしいものであった。 訪問先③ 果川中央高等学校 2000 年に開校ということで、校舎がとても新しく、PC等の教育機器や特別 教室等、学習環境が充実した学校である。また、廊下の壁には、生徒や教 師が描いた絵が額縁に入れて飾られてあったり、分別用のごみ箱が設置し てあったり落ち着いた雰囲気があった。放課後、夜遅くまで個室で学習に取 り組む熱心な学習態度に驚いた。 家庭の協力があり実現しているようだ。ただ、健康面(肉体・精神)が心配で ある。 訪問先④ 釜山国際中学校 21 世紀のリーダーを育てる教育を進めている学校で、韓国でも優秀な子ど もたちが通っている学校であった。1年生の科学の授業では、日本語で説明 をする生徒がいたが、帰国子女が多く韓国語以外に英語や日本語が話せる 生徒が多い。受験に関わる教科だけでなく、体育や音楽、美術などの学習 - 62 - にも力を入れ、子どもたちに総合的な力を育んでいることがわかった。学級 用の教室以外に多くの教室があった。PCなどの教育機器も充実していた。 室内プールや寮もあり、多くの予算と期待がかけられていることを感じた。 3.最も有意義であった内容: 韓国の学校訪問や文化遺跡の視察等、今回のすべての内容が私にとって有意義であった。 特に「ESDについての講義」では、ESDが今の子どもたち、そして、これから未来に生きる子どもたちにとって 必要不可欠な教育であることを理解できた。 また、「ホームビジット」では、韓国の住宅事情や家庭での生活の様子について体験を通して知ることができた。 短い時間ではあったが、訪問先の家族の方々と心が通じ合えたように思える楽しい時間であった。大変温かい もてなしにも感謝している。 4.成果: (1)中学校・高等学校の訪問 ・ 生徒がとても素直そうな印象を受けた。日本人である私たちに対して笑顔で応対する姿が多く、親近感を持 った。 ・ 教育効果を高めるためにPC等の情報機器や大画面のテレビモニター等の視聴覚機器が多数設備されて いた。 ・ 外国語の学習に熱心に取り組んでおり、英語はもちろんのこと日本語も上手に話せる生徒が多いことがわ かった。 ・ 放課後、夜遅くまで学校で学習に取り組む学校のシステムに驚いた。ただ、夜遅くまで学習することで、健 康面等の問題が出てきているということで、今後、変わっていくことが考えられる。 (2)小学校教師との懇談会 ・ 韓国の小学校での英語教育が日本に比べて進んでいることを知った。ネーティブスピーカー(一校一人)や 英語専科教員の配置など日本に比べて人的面での支援も多いことを知った。また、研究校では、数学や科 学の授業を英語で進めているところもあるとのことであった。英語学習の目標は、6学年で「11 単語で文章を 作れる」ということであった。問題点としては、英語教育がストレスになり教壇を離れていく年配の教師がいる ということがあげられた。 ・ 算数の学習で、テストの結果が 60 点以下の子どもたちでクラスを編成し、大学生を使って補充学習を行っ ている学校があるとのことであった。 ・ 小学校の授業日数は、週5日と週6日を隔週ごとに行っている。また、1時間当たり 40 分の授業時間だそう である。中学校や高等学校同様に、放課後に残って学習を行っている。高学年で2時間程度行っていると のことであった。 (3)ホームビジット ・ 韓国では、高層の住宅に住んでいる家庭が多い。今回私が訪問した。ソンさん一家宅も同様であった。ソン - 63 - さんは、韓国のLGという一流の電気会社にお勤めで、奥さんは大学で美術を教えているという、経済的に 恵まれている家庭であった。お子さんは、釜山国際中学校1年生で寮生活をしながら通うお嬢さん(ナーヨ ンちゃん)と、近所の小学校に通う3年生の息子さん(スーヒョン君)の二人であった。私たちの訪問にあたっ て、別住まいのソンさんの母親が来られていた。奥さんとソンさんの母親との手作りの韓国料理をごちそうに なりながら会話をした。とは言っても、会話は、同行したACCUの木村さんとソンさん、そして、ナーヨンちゃ んの3名が英語で行い、私は、ほとんど聞き役になっていた。ソンさん一家は、以前中国に住んでいたことが あるそうで、帰国子女になるナーヨンちゃんの英語は中学1年生とは思えないほど堪能であった。国際交流 を進めるにあたって改めて英語の大切さを思い知った。 (4)牛浦沼での生態/環境学習 ・ 私が住んでいる宮城県にもラムサール協約に登録されている「伊豆沼」があるので、牛浦沼の観察を興味 深く体験した。セミの鳴き声が聞こえる中散策した。沼の周辺には、日本と同じようなトンボやチョウが飛び交 い、たくさんの植物が育っていた。沼には、オニバスが群生しており、その上でサギなどの鳥が休んでいる のが観察できた。多くの生き物が水辺に平穏に暮らしている様子を見て、このような環境を守っていくことの 大切さを改めて感じた。 ・ 教育センターでは、小学3年生に対する環境教育の様子を見学した。子どもたちは、チョウの絵に思い思い の色を塗っていた。楽しい体験活動を通して、自然に触れさせ、自然の良さや大切さを感じさせたり、気付 かせたりする学習の流れになっていた。韓国を訪問して唯一小学生の学習の様子を見る機会を得た。子ど もたちの生き生きとした活動の様子を見ることができ、日本と韓国の小学生の様子に、変わりがないことを感 じた。また、学習の進め方も日本の生活科の学習に似ていると思った。 (5)気仙沼に来られた先生方との再会 ・ ソウルと釜山滞在中に、今年の1月に気仙沼へ訪問された韓国の先生方と再会できた。特に嬉しかったこと は、我が家がホームビジットを引き受けた際に来られたキム・チョルナム先生が、太白市から片道5時間半も の時間をかけてソウルまで会いに来て下さったことである。今後も何らかの形で交流を続けられたらと思う。 5.今後の日韓交流について: ・ 松岩小学校は、春川市校洞初等学校と姉妹校になってはいるものの、ここ数年はほとんど交流は行ってい ない。現在は、フィリピンのカワヤン小学校と児童が描いた絵画を交換し合う交流が進められている。春川 市校洞初等学校とも同様の交流ができたらと思っている。 ・ 本校での「総合的な学習の時間」に、近隣に住んでいる韓国の方をゲストティーチャーとしてお招きし、韓国 の学校や生活の様子、文化等について紹介してもらう。 ・ 清明高等学校で行われた「生徒との懇談会」や釜山国際中学校での「韓国教師との懇談会」、また、「ホー ムビジット」のような韓国の方々と向き合って直接お話をする機会は、交流の方法としてとても良いと思う。し かし、この場合コミュニケーションの手段としての「言語」がとても重要になる。今回は、通訳の方にお世話に なったが、共通の言語としての「英語」を、教師も児童も身につけていくことが大切であると思った。 ・ 今後ESDを進める中で、お互いの実践紹介をインターネット等を活用し行う。「環境」等、同じテーマであれ ば、お互いに興味・関心を持って、意見交換ができ交流が深まると思う。 - 64 - 6.提案・助言: 基本的には今回のような、教育と文化に触れることのできるプログラムで良いと思う。時期や期間に関しても、 適当であると思う。ただ、時間的にもっと長くして欲しかったり、入れて欲しかったりした内容があったので以下に 記す。 ・ 清明高等学校での生徒との対話の時間は、子どもたちの生の声が聞くことができてとても良かった。対話の 時間がさらに長いと良かったし、他の校種(小学校・中学校)でもあると良いと思う。 ・ 釜山国際中学校での小学校の先生方との対話の時間を十分に取って欲しかった。50 分の予定であったが、 実際には 30 分程度であった。少なくても1時間程度は取って欲しい。また、今回は事情があり実施できなか った地方の学校や小学校の訪問を次回はぜひ実施して欲しい。 ・ 8月 21 日のような、午前中は学校訪問、午後は文化施設の視察といった日程だと、ゆとりを持って活動でき ると思った。 気仙沼市立中井小学校 教諭 小野寺 貴子 1.総合所見: 2008 年1月に韓国教職員の方々に本校を視察していただき、意見交流を持つことができました。今回の参加 にあたっては、さらに韓国の学校教育に対しての理解を深め、韓国の子どもたちや先生方と広く交流をもつこと、 その中で韓国の教育制度を知り、韓国の学校の教育設備等について理解を深めたいという課題をもって参加し ました。さらに、ホームビジット等を通じて、韓国の生活の様子や文化について理解したいという思いもありまし た。 今回、小学校訪問は諸事情により、行うことができませんでしたが、訪問先の各中・高等学校では、必ず「歓 迎」の文字が目に入り、学校全体で受け入れてくれていることに深い感銘を受けました。 このプログラムを通して、韓国ユネスコの取組、教育事情、文化や歴史、一般家庭での生活等、多岐にわたり 触れされていただきました。韓国の教育事情については、学校訪問を通してより深く理解することができました。 学校で夜遅くまで残って学習する生徒が当たり前になっていることに始まる韓国の教育熱の高さにはその是非 はあるものの大変驚きました。また、英語教育に大変力を入れているところが今後参考にしていかなければなら ないところではないかと思いました。小学校の先生方との意見交流会でも英語教育については話題となり、韓国 では3年生からは週1時間、5、6年生は週2時間の英語教育が行われていること、研究指定校は 12 年生の英語 教育について実践を行っているという実情も知ることができました。これから小学校英語に取り組む日本におい ては、教師もしっかりと力をつけていかなければならないと強く感じました。 開会式の中で、本事業は平和と理念を交流する貴著な事業であることや互いの文化の違いを知り、認めるこ とがお互いの関係をより深めるものとなること、交流を通して互いに経験を分かち合おうというお話がありましたが、 今回の訪問では十分に目的にせまることができたのではないかと思いました。さらに、講義の中では、持続可能 発展教育(ESD)についてどのような役割を教師が担うべきであるのか、具体的な学校レベルでの取組につい て話を聞くことができ、今後私たちも研修を深めていかなければならないと思いました。 韓国ユネスコ委員会の方々、各訪問中学校、高等学校、講義を担当してくださった講師の方々、ホームビジ ットを受け入れてくださった家庭の皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。毎日が工夫された素晴らしいプログラ - 65 - ムであったと思います。私にとっては一つ一つが貴重な体験となり、非常に意義深く充実した 10 日間を過ごすこ とができました。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 清明高等学校は、落ち着いた雰囲気の中で、金清極校長先生のもと学校 が運営されていることを感じた。愛と対話、人材の育成を中心に教員 100 名 で 1785 名の生徒の教育に携わっていた。学校として特に学習に力を入れて 取り組んでいる様子を知ることができた。授業では、日本語クラスを参観した が、生徒が熱心に取り組んでいる姿が印象に残った。また、日本語を選択し ている生徒との懇談会も大変有意義で、子供たちと直接話をする機会を設 定していただいた。その高校生が、日本の高校生に対して持っていたイメー ジと実際に自分が日本を訪問して見方が変わったことをしっかりとした日本 語で話す姿に感動した。今、日本の高校生が英語を使ってどの程度自分の 思いを話せるのか考えさせられた。 訪問先② 善隣中学校 善隣中学校の心のこもった歓迎に大変感銘を受けた。特殊学級の子供た ちの演奏を始めとして、伝統楽器の演奏、伝統舞踊、バンド演奏という子供 たちからの歓迎に感銘を受けた。また、保護者の方々が民族衣装であるチ マチョゴリを着て私たちを迎えてくれたこともうれしかった。授業では、子供た ちは真剣に学習に取り組んでいた。教職員の方々と質疑応答の場が設定さ れ、貴重な意見交換を行うことができた。校長先生を始め、先生方がとても 気を配ってくださり本当にありがたいと感じた。「考える(思考)」「行動する(実 行)」「耐える(忍耐)」という教育目標は心に残り、南校長先生の経営方針、 人柄のすばらしさを感じた訪問となった。 訪問先③ 果川中央高等学校 果川中央高等学校は開校 10 年目の学校であり、学習環境が大変充実して いた。教頭先生から学校紹介を受け、学校の概要について知ることができ た。また、学生のサークル活動や授業を参観することができたことは大変有 意義であった。その中で、特殊学級も短い時間であったが参観できた。丁寧 な授業の様子が見て取れた。さらに、日本語の授業では、訪問団の一人で ある結城先生が授業を行う中で、私たちも生徒と簡単なあいさつを交わす場 が設定され、生徒とかかわりをもつことができたことは貴重な経験となった。 訪問先④ 釜山国際中学校 グローバルな人材育成のための教育がなされており、韓国でもトップクラス の学校を訪問できたことをうれしく思った。英才教育の内容を充実させるため の教育課程が組まれていること、様々な海外の学校とも連携し、他国の文化 を知ると同時に自国理解を深めており、素晴らしいと感じた。施設も素晴らし く、至る所に英語での目標が掲げられていた。学年の人数が少なく、韓国で もトップクラスの学校で、充実した学習が行われていることが学校長の話や授 業見学から知ることができた。 その後、教師との懇談会が行われた。小学校は4名の先生方と意見交流 をもつことができた。懇談会では、小学校英語について、学力向上の問題、 - 66 - それに伴う私教育等それぞれの学校での取組の情報交換がなされ、時間が あっという間に過ぎた。短い時間ではあったが、小学校の先生方との懇談会 を設定していただき、貴重な時間を過ごすことができた。懇談会に参加した 先生方のうち、 2名は昨年度のプログラムにおいて気仙沼を訪問した先生方であり、再会で きたこともとてもうれしいものとなった。 訪問先⑤ 牛浦沼、生態/環境学習 韓国最大の自然湿地であり、広々とした湿原には多様な動植物が生息し、 生態系の学習を行うのに最もふさわしい場所、牛浦沼を訪れることができ た。説明を聞きながら、実際の沼の様子を見ることができた。生態系を学び、 自然環境を守っていこうという思いを強くもたせるための授業も見学すること ができた。授業での工夫された教材・教具は大変参考になるものであった。 伝統工芸体験では、韓国の文化の一端に触れながら「チャンスン」と「ソッテ」 を作り、よいお土産にもなった。 3.最も有意義であった内容: 今回、有意義であったと思われる内容はすべてにわたっており、中学校と高等学校の学校訪問、文化遺跡地 (水原果城、梵魚寺、佛国寺、国立慶州博物館)の訪問、文化体験(ナンタ公演)等、一つ一つが素晴らしいも のでした。 その中でも、学校訪問の際の心温まる歓迎には感激しました。やはり、韓国の教育事情や学校の施設・設備 を見学できたことは大変有意義でした。 また、何といってもホームビジットは、韓国の家庭を知る大変よい機会となりました。今回訪問した家庭は、両 親と中学校3年生の息子、小学校6年生の娘の4人家族でした。忙しい中でも、手作りの料理でもてなしてくれ、 一つ一つの料理をとてもおいしくいただくことができました。話題も豊富で、互いの国の情報交換をしながらとて も楽しいひとときを過ごすことができました。韓国の一家庭の考え方、趣味等に直接触れる貴重な機会となりまし た。訪問したご家庭では、日本に興味をもち、日本について様々なことをよく知っているという強い印象を受けま した。ただ、私自身、韓国の文化や芸能について知らないことが多く、もう少し情報収集をしてから今回のプログ ラムに参加すべきだったという反省がありました。それにも増して、自分の語学力を高めたいとの思いも強くしま した。今回、ボランティアでこの訪問を受け入れてくれたこと、終始笑顔で楽しく過ごせたことに心から感謝をして います。 4.成果: 韓国を訪れることは、初めてであり、今回のプログラムを通して、毎日が大変貴重な体験の連続でした。個人 的には、特に学校訪問を通して、韓国の教育の一端に触れ、学ぶべきところが多々ありました。先生方の熱心 な姿勢、学習環境等大変参考になるものであり、学校訪問をメインにプログラムを組んでいただいたことに感謝 しています。学校側の受け入れ体制についても学ぶべき点が多々あり、今後受け入れる際の参考となりました。 今後の教育活動において、見直していきたい点や継続していきたい点が今回の訪問を通して見えてきたことが、 個人的には成果の一つであると感じています。 また、韓国の様々な文化に触れたことで視野が広がり、今後、学校現場において国際理解教育を進めていく - 67 - 上でも自分自身の財産になったと感じています。 5.今後の日韓交流について: 今後、教育交流については、積極的に考えていきたいと感じています。はっきりとした交流相手は決まってい ませんが、本校では、特に国際理解活動に力を入れているので、児童同士互いの国についてメールやテレビ 電話等で情報交換を行い、互いの国の違いやよさに気づいていくような活動を組むことができればと考えていま す。また、教職員同士の意見交換を積極的に進めていけるとよいと考えています。 今後も韓国の教職員の方々が訪問してくださる機会があれば、積極的に受け入れに携わっていきたいと考え ています。 6.提案・助言: 人数、日数とも十分満足できるものでしたが、今後学校訪問においては、小学校についてもぜひ参観したい ということが率直な意見です。また、教職員同士の意見交換の時間を長くし、参加者それぞれの立場での小グ ループで、情報交換ができる場、授業レベルでの話し合いができる場を設定してほしいと思います。 訪問先での滞在について(特に学校においては)、時間的にゆとりが足りないように感じました。受け入れ側 の体制を考えると難しいところもありますが、訪問先でのゆとりあるプログラムを組んでいただけるとありがたいと 思います。 本プログラムは、日韓の教師の意識を高める上でも、今後とも継続してほしいと強く願っています。 気仙沼市教育委員会 副参事兼指導主事 藤村 俊美 1.総合所見: 竹島問題が影響し、小学校教育の実状を十分把握することができませんでしたが、このことを差し引いても余 りある成果があったと私は思います。 私が教育委員会に勤務し、現在最大の関心事である学力向上推進事業や英語教育、情報教育、特別支援 教育などに対し、韓国ではどのような課題があり、どのように取り組まれているのかぜひ参考にさせていただきた いと思い参加いたしました。 8月 26 日に訪問した釜山国際中学校の校長先生は、挨拶でこう述べられました。「韓国は日本を追い越すた めに頑張ってきた。でも今は世界に目を向けている。」このことを言葉を替えて言うならば、「韓国はもう日本を向 いてはいない。」「もう日本を追い越した。」「近所同士、世界に目を向けて行きましょう。」との強いメッセージとも 受け止められるのではないでしょうか。 英語教育を始めとしたグローバル教育や英才教育、施設・設備の充実、そしてESDなど、私たちが参考とす べき事項がたくさんあったプログラムだったと思います。 何よりも、訪問期間中親切丁寧なる対応をしてくださった韓国スタッフの皆様には、心より御礼申し上げます。 疲れている姿を見せずいつも笑顔で声をかけてくださいました。もし逆の立場だったら・・・・・・、そう思うと自分の 普段の態度を振り返りにとても恥ずかしい気持ちになります。 今回の韓国訪問で、私にとって「近くて遠い国」から「近くて親しい国」へと変わりました。このような貴重な体 - 68 - 験をさせていただき、心より御礼申し上げます。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 公立高校でありながら、特殊学級が設置されていることに大変驚きました。 施設・設備ともに、日本の特別支援教育よりはるかに進んでいると感じまし た。 男子学級の授業を参観しましたが、女子学級との違い(学級の雰囲気・授 業を受ける態度・姿勢)を感じました。学校によっては男女混合学級もあると 聞き、男女別にすることの意義をあまり私は感じられませんでした。 訪問先② 善隣中学校 雨の中、全校あげての歓迎ムードを感じ、校長先生の心温まる対応に感激 いたしました。 子どもたちが素直で、挨拶も立派であると感じました。特に、特殊学級のセ レモニーでのハンドベル演奏に心打たれました。 給食が大変美味しかったです。多分、校長先生のお計らいで、日本人向け の特別メニュー(味付け)を出されたのだろうと思います。 訪問先③ 果川中央高等学校 何よりも、施設・設備の充実ぶりに驚きました。コンピュータや図書館の立派 さにも驚きました。 日本にも受験戦争はありますが、公立高校で夜中まで学習支援を行ってい ることに大変な驚きを覚えました。日本では考えられないことです。国民性の 違いを強く感じました。 訪問先④ 釜山国際中学校 公立中学校でありながら、教育の目的を上級校への進学とグローバル化の 2つであると言い切る校長先生がすごいと思いました。 日本の公立中学校では、教育目標に英才教育(有能な人材教育)を前面 に掲げることはありえないことですが、優秀な子どもの才能を伸ばしていくと いう意味ではとても大切なことであり、日本でも大いに参考にすべきだと強く 思いました。 3.最も有意義であった内容: 私にとって、この韓国訪問そのものが大変有意義であったと思っています。中でも、韓国の英語教育やコンピ ュータ教育については、はるかに日本より進んでいると感じました。残念ながら小学校の実状を参観できません でしたが、多分小学校においても同様だと思います。特に、中学校でも高校でも日本語を選択する授業がある ことに驚くとともに、日本語がとても上手な生徒がいることも大変な驚きでした。 4.成果: (1)学校訪問について 英語教育のみならず日本語教育も取り入れ、国際化を目指している韓国の教育事情が大変変よく分かりまし - 69 - た。 個人的には、小学5年生から英語を導入するなどと言わず、小学1年生から、いや幼稚園からでも始めるべきだ と私は思っています。韓国では、1年生からの英語導入を検討していると聞きました。日本も是非見習うべきでだ と思います。 中学校、高校ともに、コンピュータ教育が充実しており、大変羨ましく思いました。 どの教室にも小型のプロジェクターが設置してあり、コンピュータを使用した授業がいつでも実施できる環境に あることは、素晴らしいことです。 (2)文化遺跡地の訪問について 水原華城は大変素晴らしい文化遺産です。ぜひもう一度訪ねてみたい遺跡の一番にあげられます。韓国ドラ マ「チャングムの誓い」のロケ地出会ったことも驚きです。 梵魚寺の鉢盂供養がとても印象に残りました。貴重な体験をさせていただいたと思っております。日本には古く から「もったいない」という言葉がありますが、改めてこの精神の大切さを実感しました。 (3)文化体験及び現場探求プログラムについて ナンタ公演は最高でした。この公演を観覧できただけでも韓国に来た甲斐があります。 私は、長く吹奏楽指導を行っており打楽器を専門としています。このような公演があるとは噂に聞いておりました が、目の当たりにして興奮してしまいました。日本の和太鼓に何かしら物足りなさを感じておりましたが、「まさに これだ。」と感じた瞬間でした。 唯一、小学生との触れ合いができた牛浦沼生態公園での有意義な一日でした。3年生から行う環境学習の一 環として、系統立てられた計画と緻密な指導方針のもと、素晴らしい教材・教具の開発を行い指導していること に感銘しました。 また、伝統工芸体験として「ソッテーとチャンスン作り」がとても楽しかったです。子どものように自分が作った 作品を大事に家に持ち帰り、韓国の思い出として大切に保存しております。 (4) その他 初めての韓国旅行でもありましたので、大きなショルダーバッグを持ってはいったものの毎日大きなバッグを 所持するのは大変だろうと悩んでおりました。ソウルに到着した次の朝、ユネスコ韓国委員会にて開会式を行う 席に、何気なく黒いバッグが置かれていました。韓国ユネスコ委員会の温かいご配慮に大変感激いたしました。 お陰様で、いただいたバッグを毎日持参し、快適な研修を送ることができました。 5.今後の日韓交流について: 今年の1月に韓国教員 30 名を受け入れさせていただいた関係で、気仙沼市教育委員会 として参加することができました。今後学校現場に戻って、韓国の小学校との交流をぜひ推進していきたいと思 います。テレビ会議システムを活用したり、作品交流を通したり、現地に赴くことができなくとも交流の方法は 様々ですので、ぜひ実現させたいと思います。 - 70 - 6.提案・助言: ソウル・釜山ともに立派なホテルで大変申し訳なく思います。もっとグレードの低いホテルでもよいのではない でしょうか。 基本的には今回のようなプログラムに賛成ですが、夜のナンタ公演や家庭訪問のある日の日程は少し厳しか ったように思います。 次回はぜひ、地方の学校や小学校の訪問を実施していただきますようお願いします。 さいたま市立泰平中学校 教諭 小島 佐知子 1.総合所見: 竹島問題で日韓関係とりわけ、韓国世論の対日感情が悪化している最中、ユネスコ委員会の方々の多大 なるお骨折りで、このプログラムが滞りなく実施されましたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。 ソウル・釜山で英字新聞を購読していましたが、ほぼ毎日の様に独島・竹島(10 日間で 7 つの記事)関連の記 事を目にしました。また、中学1年生の英語の教科書には、中学生数名が独島・竹島の絵を持って写っているカ ラー写真が、冒頭のページに掲載されており、日本と韓国の「独島・竹島問題」に対する関心・姿勢の違いを改 めて認識した次第です。 日韓の民間交流の取組の多くが中止・延期されている折、今回の招へいプログラムが実施されましたことは、 大きな意義があると思います。受け入れてくださった8校の教職員の方々の友好・親善への熱意と暖かい歓待 に感謝すると共に、その気持ちに答えるべく、日本でも自分に出来る事を、まず行動に移すことから始めていき たいと考えております。 また、ユネスコ世界遺産の見学をはじめ、伝統文化や伝統料理触れさせていただいたこと、ホームビジットで の現在の韓国の家庭の様子を垣間見る機会を得るなど、貴重な体験を 10 日間という短期間に経験できた事な ど、関係職員の方々のご尽力に頭が下がる思いです。大変お世話になりました。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 生徒との交流 日本語や英語が堪能な生徒1名と2名の訪問団の教師という組み合わせで、 交流できたことはとても有意義なことでした。 私が交流した生徒は英語がとても流暢で、ネイティブ並みの発音と、こなれ た言い回しを使っていました。英語のレベルの高さに驚くと共に、終始、ニコニ コと友好的な態度で接してくれ、先生方のとても行き届いた指導に感銘を受け ました。 学校内の施設見学 韓国では高校での第二外国語に日本語を選択する生徒が一番多いと聞き、嬉 しく思っていましたところ、校庭で男子高校生5~6人が近寄ってきて、日本語 - 71 - で話しかけてきました。素朴で人なつっこく、日本語を使って喜んでいる様子が 微笑ましかったです。一緒に写真撮影もしました。 訪問先② 善隣中学校 配慮の行き届いた歓迎 校長先生が民族衣装を着、保護者もチマチョゴリを着て歓迎してくださる中、校 舎内へ入り、会場では、生徒による演奏・踊りなど工夫を凝らした心のこもった 歓迎ぶりに感激するのみでした。また、私どもが学校を後にするまでの短時間 に、記念写真もプリントして一人ひとりにくださるなど、細かい配慮の行き届いた 歓迎ぶりは、本当にありがたいことだと思いました。 英語の模擬授業実施 中学3年生男子クラスへ、40 分ほど授業をすることができました。35 名のクラス 全員が、笑顔で迎えてくれたため、落ち着いて日本で行うように授業をすること ができました。 英語ですべて指示を出し、主にコミュニケーション活動を中心とした授業でし たが、生徒たちは良く授業に参加していたように思います。インタビュー形式 で、ビンゴを作るゲームでは、ドラえもんの人形やキティちゃんのお箸、はっぴ・ 小物入れなどを景品として準備したところ、自分が獲得した景品を、お互いに 見せ合うなどして、とても喜んでもらい嬉しく思いました。 また日本文化の紹介にもなったかと思います。一人の生徒が日本文化も紹 介して欲しいということを言っていたようですが、英語で日本文化を紹介する授 業でも面白かったかもしれません。 授業をした後の生徒の感想や、韓国の英語科の先生のご意見や普段の授 業の様子などをお聞きする時間が無かったことは、残念に思います。 英語の文通を通して交流 善隣中学校ユネスコクラブの生徒8名と、私が勤務する泰平中学校英語部の生 徒との文通をすることが決まりました。今後、交流を深めていこうと考えておりま す。 訪問先③ 果川中央高等学校 施設・設備が整っている印象を受けました。保健室は、男子用と女子用の入り 口があり、中央に養護教諭のオフィスがありました。また、体育館には車椅子用 のトイレがあり、人権に配慮している様子が伺えました。 熾烈な受験競争について、校長先生が「国家的損失であり、社会的問題とな っている」との率直なご意見を述べておられたのが印象的でした。 訪問先④ 牛浦沼生態公園 広大な敷地を生態公園として保護し、それを地域の小学3年生の学習の場と して活用しているのは素晴しい事だと思います。小学生のうちに、自然に触れ させ、自然を大切にする心を育む教育は大切だと思いました。 - 72 - 訪問先⑤ 釜山国際中学校 海外 26 校と姉妹校提携をしているインターナショナルな雰囲気の学校で、廊 下や教室の掲示も英語でなされているものが多く、日常的に英語に接する機 会に恵まれている印象を受けました。公立の中学校で、寮があり温水プールや 様々な設備が充実しているのに驚かされました。帰国子女の語学力を活かす 工夫や、英語の授業質の高さにも驚かされましたが、今後英語のネイティブス ピーカーによる、数学・理科・社会の授業も計画されているとのことで、今の日 本の公立中学校では考えられないことだと思いました。 小・中・高と学校種別に、韓国の教員の方々と交流する機会を得られ、大変有 意義な時間を過ごすことができました。質問したいことが多く、時間が足りないぐ らいでした。また、昼食を共にした、倫理の先生と英語で交流でき感激しまし た。さらに、理科の先生が夏休みに4週間アメリカで英語研修をして、英語で理 科の授業をするなど、さすが国際中学校だと思いました。 3.最も有意義であった内容: ホームビジット・釜山市 AUM YOUNG NIM さんのお宅 ホテルでの対面では非常に緊張しましたが、韓国ユネスコ委員会のご配慮により、私と同じ中学校の現役英 語教師のお宅を訪問することができ、ありがたいと思っています。 ホテルからご自宅までの 20~30 分の間、日本を訪問した時の話、ソウルへ転勤するために 10 年もかかった 方の話、評価制度のこと等々話題が尽きることはありませんでした。 ご自宅では、小学5年生の息子さんが盲腸の疑いで検査入院中にもかかわらず、ご主人と娘さん(中学2年) にも出迎えていただきました。お忙しい中、たくさんのご馳走を準備していただいた事は、本当にありがたいこで、 ご飯はご主人が炊いてくださったとの事でした。キムチの古漬けをセサミオイルに少し浸し、ご飯と一緒に海苔 で巻いて食べるとおいしいとのご主人の勧めで、5~6個いただいてしまいました。終始なごやかな雰囲気で食 事をした後は、20 畳ぐらいある広いリビングで、歓談しました。この頃になると照れやのご主人と娘さんもかなり打 ち解けて、私たちが持参したお土産をうれしそうに手にしてくださいました。ご主人は私が息子さん用にと持参し た、耳があるドラえもんのチョロQで、嬉しそうに遊ばれていたことなど、飾らないご家庭の様子を垣間見ることが できました。 そして、英語教師同士授業のことや、生徒のこと、教育全般についても交流することができ、たいへん有意義 で充実した時間を持つことができました。 帰りの車には娘さんが、私がお土産にさしあげたショルダーバッグを早速背負って乗り込み、弟さんが入院し ている病院で降りていきました。さりげない心遣いをされるご主人や娘さん、そして AUM YOUNG NIM さんの暖か い歓待ぶりに感激しました。 4.成果: ・ ユネスコスクール(ASPnet)やESD(持続可能な開発のための教育)に関して、お恥ずかしい話ですが、 今まで接する機会がなく知りませんでした。今回の研修で理解深めることができました。ASPnet に参加で きる方途を探っていきたいと考えています。 ・ 韓国の潤沢な教育予算と充実した設備とりわけ各教室にプロジェクターが設置され、教師がパワーポイント - 73 - を使って授業を行い易い環境が整っていること等、うらやましい限りです。本校にも、最新式のプロジェクタ ーが昨年配備されましたが、持ち運ぶ手間が大変なため、あまり活用できていません。韓国並みの活用を はかれるよう、働きかけていきたいと思います。 ・ 韓国の食文化に触れることができ、健康的な食文化が現代でも続いていることを体験することができました。 様々な野菜を食べること、キムチなどの発酵食品を食べることなど、この 10 日間実際に体験してみて、体に 良い食べ物が多いと思いました。 ・ 中学校英語の教科書を購入することができました。本屋で中学1年から中学3年までの教科書を棚に並ん でいるのは全部ざっと目を通しました。(1学年 12 冊ぐらい) 教科書の厚さは、日本の教科書より厚いので すが、内容的には日本とさほど変わらないという印象を受けました。逆に日本では問題集やリスニング教材 等、副教材を教師の裁量で選んでいるのに対し、韓国ではそれらも含まれた教科書になっている点で、使 いづらいのではないかと思いました。今後さらに詳しく分析し、活用していきたいと考えています。 ・ オプショナルツアーで、戦争記念館を見学させていただき、朝鮮戦争の生々しい資料に触れることができま した。想像以上の悲惨さに驚くと共に、この戦争が韓国の人々に与えた影響について考えさせられました。 5.今後の日韓交流について: ・本校英語部と韓国の中学生との文通の実現 現在、善隣中学校ユネスコクラブの生徒8名宛てに、本校英語部の生徒に手紙を書かせているところです。 英語を基本として、お互いの国の言葉も学んだり、日本の品物を送って日本文化の紹介などもさせていこうと考 えています。紹介していただき、有り難うございました。 6.提案・助言: ・ 参加人数については予算の関係もあると思いますが、なるべく多くの先生方が参加できるようになると良いと 思っています。行動単位としては 20 数名にした今回のグループ分けは、良かったと思います。 ・ 期間等に関してですが、今回のお盆明けに出かけ、9月1日の始業式の4日前に帰国という日程は、余裕を 持って参加することができ、授業を自習にすることも・同僚に負担を負わせることもなく、最良だったと思いま す。 ・ プログラムの内容に関しては、文化遺産等の見学を若干減らし、学校訪問を1日1校にしていただいて、現 場の教員との授業検討や交流、生徒との触れ合いの機会をさらに充実させてはどうでしょうか。私は、ソウル の善隣中学校で英語の授業を 40 分間行いましたが、授業をやりっぱなしで終わってしまいました。担当の 英語の先生と授業について話をしたり、お互いの授業実践について交流したり、日韓の英語教育について、 意見交換をする機会が欲しいと思いました。 ・ ユネスコスクール(ASPnet)の宣伝・普及ですが、各学校で行っている総合的な学習の内容と重なってい るものが多くあるように思われます。さいたま市では、市教育研究会の中に、総合的な学習の部会があり、 毎年数校が実践発表を行い、冊子を作っています。そのような各市町村にある研究会に参加の可能性のあ る学校を紹介していただいたり、資料を送ってみてはいかがでしょうか。 - 74 - さいたま市立養護学校 主幹 張替 克美 1.総合所見: ACCUの方々はもとより、韓国ユネスコ国内委員会の方々の事前の調整によって充実した時間を過ごすこと ができました。直前の不安は実際に訪れた各訪問校、ホームビジットの歓待にすっかり吹き飛びました。改めて、 日本と韓国のユネスコ関係者の方々に感謝の意を表します。 さて、本校は、昨年一昨年と訪日団を受け入れている特別支援学校です。今回の訪韓では「大韓民国の障 害のある児童生徒の現状を施設及び教育内容の面から把握し、日本での教育に生かす」ことを自分の課題とし ました。訪日団受け入れの際には、韓国の先生方からはかなり難しい質問が相次ぎ、韓国内の特殊教育に対 する熱意が感じ取れました。今回のプログラムには特殊学校の訪問が企画されており、実際に自分の目で肌で 感じ取れたことで設定した課題の多くは達成されました。中でも、日本の高等学校では法令上は設置可能であ る特別支援学級が、実際に設置されている例は皆無に等しいのが現状ですが、韓国においてはかなりの数が 設置されていることに驚かされました。また、訪問校での先生方との有意義な意見交換から、障害のある児童生 徒に対する両国間の教育の基本的な考え方の、共通点、相違点が明確になりました。 一方、中学校や高等学校の訪問では、「これまで、日本を追い越すために努力をしてきたが、現在は世界を 目指している…」という釜山国際中学校の校長先生のご挨拶のことばに、韓国教育の目指す方向が如実に表 れているように強く感じました。韓国教育基本法第 18 条には「特殊教育」があり、第 19 条には「英才教育」があり ます。この「英才教育」の具体的な指導の場面を直接みることができましたが、「優秀な」少人数のために、これ ほどまでの施設・設備・時間が使われていることに驚くばかりです。 最後に、文化遺産の見学では、豊臣秀吉の罪深さを改めて感じました。あわせて、このようなプログラムにより 両国の教員が交流を深め、真摯に教育が語れるようになること強く望む次第です。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 1700 余名の大規模な学校で、特殊学級も設置されていました。特殊学級を 含む大規模校の学校運営の方法に興味をそそられました。特別に特殊学級 の見学もさせていただきました。 特進クラスがあり、12 時まで学校で勉強しているとのこと。 特に優秀な生徒は午前2時頃まで自習していることにも驚かされました。 廊下に竹島(独島)のポスターがさりげなく貼ってあった。両国の歴史学習 の違いを改めて感じました。 訪問先② 今年から新設されたという肢体不自由児部門について興味深く見学させて ソウル精進特殊学校 いただきました。 担当の先生方は、日本の特別支援教育をよく勉強(参考に)されており、随 所に工夫されている様子が見受けられました。 ただ、脱施設化が先進国の流れではありますが、学校内ですべてを循環さ せようとするような計画で教育が進められているようでしたので、今後の教育 効果について見守っていきたいと感じました。 - 75 - 訪問先③ 前日の清明高等学校以上に、勉強ができる子に対する手厚さが感じられる 漢陽大学校師範大学付属高等 学校でした。私立学校ということもあるのでしょうが。 学校 競争が当たり前で優遇される生徒が試験により年4回変わることがあるとい うお話に、日本では保護者がどういう反応をするか、また、教職員自身もこの ようなことを積極的に取り入れようとするのか考えさせられました。 進学校でない学校や職業高校(実業高校)の様子はどうなのか気になると ころでした。 訪問先④ 釜山国際中学校 「これまで、日本を追い越すために努力をしてきたが、現在は世界を目指し ている…」という校長先生のご挨拶のことばに、韓国教育の目指す方向が如 実に表れているように強く感じました。180 名の生徒のためにこれだけの施設 設備を用意して果たして、教育の効果はいかがなものなのか疑問が残りまし た。 教師懇談会では中学校部会に参加しました。韓国の中学校教育における 各教科の指導内容や指導上の配慮点など日本の教育との相違点が明らか になり有意義な時間を過ごせました。 訪問先⑤ ・水原華城…韓国の「都」の立地について一望できたので、ソウル市街地や 文化遺産視察 他の離宮などのイメージが鮮明になりました。 ・水原華城 ・梵魚寺…韓半島のいたるところに秀吉の影響が及んでいることに大変ショ ・梵魚寺 ックでした。昼食の作法は日本でも禅寺で経験したことはありますが、大まか ・牛浦沼 なところは一緒で、国や宗派によってアレンジの仕方がことなることを知り大 ・仏国寺 変参考になりました。 ・国立慶州博物館 ・牛浦沼…日本と同じように乱開発からどのように自然を守っていくのか両国 の考え方がわかり、日本での環境教育に生かしていきたい。体験学習もおも しろかったです。チャンスンは私の生まれた埼玉県の高麗神社付近にもあり 身近に感じていたもので、由来や意味も具体的にわかり大変有意義でした。 ・仏国寺…これも秀吉の影響で多くの文化財が消失していました。伽藍や安 置されている諸仏など日本のものと比較しながら拝観しました。 ・国立慶州博物館…古代からの遺物をみることができて有意義でした。 3.最も有意義であった内容: 短時間ではありましたが、教職員や生徒と意見交換やお話の時間が設定されて、目の奥のキラキラしたもの がよく伝わってきました。また、ホームビジットでは、かなり深い話もできて、その時間はもっとも有意義な時間で した。 きっと交流授業をされた先生はもっと有意義であったことでしょう。私は、偶然にも飛び入りで生徒とかかわる ことができました。「ことば」ではなく、「こころ」を通わせるということが両国間の距離を近づける最良の方策ではと 強く感じました。 - 76 - 4.成果: (1)韓国の教育、特に「特殊教育」「英才教育」の現状について理解を深めることができた。特殊教育に関して は、日本の特別支援教育を参考にしているところも見受けられ、また、英才教育の対局の教育としてとらえてい るところもあり、参考にしながら勤務校での教育を進めていきたい。 英才教育に関しては、予想以上でした。「加熱した受験戦争」というとらえ方だけでは理解しがたい部分が多くあ り、「英才教育」というくくりでやっと現状を理解できました。日本においては実現可能な教育なのか考えされられ ました。 (2)日本と韓国の歴史について、再認識できた。 2千年に及ぶ両国間の交流の一端を自分の目で確認できたことが収穫でした。また、豊臣秀吉の行った行為に ついての両国の歴史的な位置づけについて改めてショックを受けました。さらに、釜山から対馬が肉眼で確認 できたという事実が強く印象に残っています。 5.今後の日韓交流について: 特別支援学校として、「ACCU国際教育交流事業」の趣旨を生かした活動ができるのかどうか悩んでしまいま す。直接交流は児童生徒の健康状態なども考慮しないといけませんし。 特別支援学校のASPは国内にはまだないとのことですが、日本では「交流及び共同学習」という中で近隣の 学校間で教育交流が実施されています。このあたりをヒントに前向きに検討していきたいと思います。 6.提案・助言: 本プログラムはACCUにおいて緻密に作成されておりこれ以上のものはなかなか難しいのではと思っていま す。ただ、時間的な余裕がもう少しあれば、たとえば、一日2校の訪問、まとめる時間のなさ、等については改善 の余地があるように感じました。 今年は、直前に難しい出来事があり特別であったとは思いますが、安心してプログラムを遂行できたことに感 謝いたします。 宝塚市立養護学校 教諭 大黒 澄枝 1.総合所見: 今回、このプログラムに関わってくださった全ての方々に感謝申し上げます。 私自身、韓国との関わりは長いのですが、今回のように「教育」に限定して韓国を訪れたのは初めてでした。 韓国語の勉強を始めたきっかけは、当時、在日韓国・朝鮮人が多く居住する地域の学校に勤めていたことであ ったのに、韓国の学校を訪問するという機会を自ら作ることに思いが至りませんでした。 参加するに当たり、私なりにいくつかのテーマを設けました。 まず一つには、現在養護学校に勤めていることもあり、韓国における「障害児教育」の実態について、実際に 我が校のような重度の障害を持った子どもたちが、どのような環境で教育を受けているのかを知りたいという強い - 77 - 思いがありました。 次に、長く中学校で音楽を教えていたこともあり、障害を持った子どもたちにとって、音楽が果たす役割はど のようなものか、目の前にいる子どもたちに関する日々の課題を解決するのに、参考となるものを探りたいという こと。 そして最後に、韓国における「音楽教育」の実態を知りたいということでした。 実際には、なかなか課題解決には至りませんでしたが、それ以上に得られたものがあったように思います。 高等学校で「日本語」の授業が取り入れられていることに驚きました。若い世代が歴史を超えて、言葉を通し て他国の文化に触れるというのは、お互いを理解するうえでの最高の手立てだという気がします。 また、訪問させていただいたそれぞれの学校で行われている教育に「韓国のエネルギー」を感じました。日韓 両国で進められている「ASPnet」の活動やESD教育についても、詳しく知る機会になりましたし、韓国のみなら ず、日本国内での先進校にも学ぶべきものが多くあることも知りました。 具体的に、現在の勤務校でできることはどんなことかと考えると、教育内容や実態の違いから、実現可能な分 野が限定される気がしますが、宝塚市全体での何らかの活動に繋がっていけば、と思っています。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 淸明高等学校 所 見 生徒たちの学習意欲の高さと、それに対応する学校側の姿勢に驚きを感じ た。入試がないとのことだったが、そのことと「水準別授業」との関連は強いよ うに思った。また、「早期卒業」があるということにも驚き、対象生徒の学習を 確保するために、読書室(特別自習室)が夜中2時まで開いていることなど、 私の知る限り、日本以上の教育過熱ぶりである。特殊学級の学習内容につ いて、もう少し詳しく知りたかった。杉山先生の「宝塚歌劇紹介」の授業にも、 よく反応していただけに、DVDが観れなかったのは何とも残念だった。 訪問先② ソウル精進学校 学校規模の大きさにびっくりしたが、ソウル市内には特殊学校が 29 校あると いう。また、今年から「肢体不自由児学級」がスタートしたとのこと。当日は休 日にも拘らず、わざわざ登校して授業を見せてくださったことに感謝。放課後 の活動で取り組んだというフルートと管弦楽の演奏は素晴らしかった。重度 のしょうがいを持った子どもたちの教育については、訪問指導を中心に進め られているとのことだった。将来的に「地域と歩む」教育の大切さを考えると、 学校が共生の拠点とならなければ、という思いを新たにした。 訪問先③ 大学受験を念頭においての教育が進められているのは、どこの高校にも共 漢陽大学校師範大学付属高等 通のことであるが、何か学校全体にのびのびとした校風を感じた。稲生先生 学校 の「歴史」の授業を熱心に聴いていた女生徒たちの真剣なまなざし。その後 の班単位での懇談では、予め考えてきた質問に、必死で答えようとする寺木 先生とわたしに、何とか聞き取ろう、理解しようと笑顔を向けてくれたことはと ても嬉しかった。できれば、男生徒の、また男女共学の授業を見たかった。 生徒による学校紹介もよかった。 訪問先④ 釜山国際中学校 わたしにとっては待望の中学校訪問。残念ながら音楽の授業の参観はでき なかったが、施設案内の時に音楽の先生にお会いし、授業内容などについ て交流ができてよかった。もっと時間があれば、多分共通して存在するであ - 78 - ろう悩みなどについても、お話が伺えたかもしれないと、ちょっと残念な気が した。眞瀬先生、結城先生の「折り紙紹介」の授業はとても分かりやすく、生 徒たちも一生懸命に取り組んでいる姿が可愛かった。先生たちとの懇談会 では、具体的な授業の内容についての話が聞けてよかった。 訪問先⑤ 牛浦沼生態公園 一面の湿地帯を見て、そこに生息する動植物の一部を紹介してもらい、と てもゆったりとした気持ちになった。何度も繰り返される洪水の度に、柳の木 を植え続けることに、自然との共存をどう進めていくのか、消してしまうことな く、貴重な生態系を守り続けようという姿勢を見た。子どもたちの「触って・作 って・遊ぶ」プログラムを通して、強いるのではなく子どもたちが感じて、自然 に取り組もうとする姿勢を育てたいという環境教育の原点を見た。教えていた だいて作った「チャンスン」は無事に日本に持ち帰ることができ、今もわたしを 見守ってくれている。 3.最も有意義であった内容: たくさんの施設を見学させていただいたことに改めて感謝いたします。 全てが有意義でしたが、その中でも特に「ホームビジット」を挙げたいと思います。 川窪さんと一緒に、海江高等学校で歴史を教えておられる陳商元(JIN SANG WON)先生のお家にお邪魔しま した。ホテルを出発してすぐに、お勤めの高校があるからと、わざわざ寄ってくださり、校舎内を案内していただ きました。 ご家族は高校で地理の先生をされている全惠璟さん、お母さん、息子さん(次男・中3)の4人でした。長男はソ ウルで大学受験勉強中とのことでした。 夕食の準備をしていただいている間に、お部屋を案内してくださいましたが、ご夫妻のお部屋と、書斎にびっし りの本にびっくり!! 心のこもった夕食をいただき、お母さん手作りの料理についての説明も受けました。 夕食後には川窪さんのピアノに合わせて、「故郷の春」「四季の歌」を一緒に歌いました。 商元さんのテグムや惠璟さんのオカリナなども登場しました。 みんなで記念撮影をして、おうちを後にし、ご夫妻に車でホテルまで送っていただきました。 私たちを迎えていただくために、たくさんの準備をしていただいたことに感謝申し上げます。 わたしは両方の親元を離れて子育てをした経験から、何よりも子どもを持って働く同じ女性として、「お母さん が居られるので、料理などは全てしていただいています」と話してくださった惠璟さんとお母さんの温かい関係を 羨ましく思いました。 本当に心温まる、素敵な時間を過ごせました。 4.成果: 今まで、どちらかというと「民間レベル」での交流を続けてきたわたしにとって、公的な学校訪問や施設見学な どの機会を得て、本当に意味ある経験ができました。 教育に関しては、話に聞いていた「読書室」を実際に見たり、特殊学校の訪問ができ、直接お話を伺えたこと は、韓国の教育事情について知るよい機会となりました。 - 79 - また、日本各地の先生方とお知り合いになり、情報交換や意見交換ができたことも貴重な経験となりました。 韓国・日本両国の生徒たちが、お互いの国の歴史や文化に触れ、「知ること」から交流が始まる。そのきっか けは、意識を持った「大人」が作っていくのではないかと思います。 よく「一人いれば学校が変わる」と言いますが、そういう意味では日韓両国に心強いパートナーを得られたように 思います。 広い視野で世界を見、活動していこうというエネルギーを感じることができました。 5.今後の日韓交流について: わたしが所属する養護学校が韓国の特殊学校との交流をどう進めていくことができるか ・・・児童・生徒に関して、わたしやわたしの学校の教職員が抱える様々な課題をどう克服していくのか、日々悩 みながら取り組んでいます。 実際にもっと重度の障害を持った韓国の児童・生徒の学校での受け入れ状況や訪問指導の実態を知らないと、 交流の具体的な内容を考えることは難しいと思います。 昨年度宝塚に来ていただいた先生方には児童・生徒を見ていただけているので、これからもし訪ねる機会が あり、悩みを共有することができたら、交流のきっかけが見つけられるように思います。 6.提案・助言: ・人数が多くなれば、仕方がないことなのかもしれませんが、今回グループが違ったために訪れることができなか った場所がたくさんありました。それぞれに、有意義な時間を過ごせたと思うのですが、やはり「共有」できなかっ た部分については、残念な思いが残ります。 ・次に、時間的なことです。これも仕方がないと思いつつ書きますが、訪問先の全てに、もう少し時間的な余裕が あればよかったなあと思うのです。 バスでの移動の度に「時間が少なくてすみません」というお話が出ていましたが、もう少しいろいろと自由に見学 できたり、お話が聞ければなおよかったのにと思いました。 ・講義や案内などを通して、とても素晴らしい通訳をしていただけたことに感謝申し上げます。わたし自身、大変 勉強になりました。ありがとうございました。 ・ 微妙な関係を抱えたこの時期だからこそ、予定通りにこのプログラムを実施したいとお考えいただき、実現 に向けて、ご尽力くださった日本・韓国両国の関係者のみなさまに、改めてお礼を申し上げます。 宝塚市立光ガ丘中学校 教諭 前田 祐次 1.総合所見: 今回のプログラムに参加し、私たちをあたたかく迎えてくださった韓国ユネスコ委員会の方々、韓国の各学校 の先生方、そして通訳の方に心から感謝したい。今年1月に宝塚での本校訪問を受け入れたときの状況と較べ - 80 - ると、これほどまでの受け入れ態勢ではなかったことに、反省させられることが多く申し訳なかったと思います。 一番印象に残ったことは、ホームビジットです。訪問先のファミリーは、この3月まで東京に数年間在住されて おり、日本のことについても当然よくご存じでした。お父さんは、単身赴任で東京に残り、中1、中3の兄弟の進 路を気遣っての帰国でした。お母さんと兄弟3人で心温まる歓迎をして頂きました。父親代わりに兄弟2人が気 を配ってくれました。そのおかげで、学校訪問で聞けなかったことを、いっぱい聞くことが出来ました。兄弟2人と も学習に関しては、韓国は学歴社会がはっきりしているから頑張るしかないとのことでした。当然まわりもみんな、 頑張っている状況であり、やらざるをえない本音を語ってくれました。そして将来の夢を語ってくれました。そして 日本の学校で羨ましいことを1つ話してくれました。それは、部活動ができることでした。やはり、やりたいスポー ツがあるとのことでした。会話のほとんどが兄弟の学校の様子、韓国と日本との比較(学校のこと・生活のこと)を 無理のない形でわかりやすく話し合え、とても有意義な時間でした。 次に、韓国の教育現場を視察できたことです。韓国での学校生活がどのように行われているかなど全く知らな い状況での参加でした。授業の様子は勿論ですが、特に教員、生徒、保護者の方とも交流が出来たことが、韓 国の学校を知ることに非常に有益でした。また、日本と較べものにならない教育予算であり、教育施設・設備が 整っていました。教室では情報機器を活用したE-ラーニングの授業がよく行われていました。日本でも同様な 情報機器を活用していきたいものです。 本プログラムは、ホームビジット、韓国の先生、生徒との交流を多く取り入れて頂き、充実したすばらしい体験 になりました。また、日本全国から参加された先生方とも、いろいろな地域の取り組みを語り合え、心のつながり ができたことも有り難かった。 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先① 愛と対話のある学校として、会話中心の英語教育、科学探究など質の高い 清明高等学校 教育がなされていました。どの教科においても視聴覚機器を使いこなされて おり、教材に対して有効な活用をされていました。特に、特別クラスに対する 支援はすばらしいものがあった。個別デスクの様子を拝見し、特別クラス生 徒の手厚い環境には、受験競争のすさまじさを肌で感じました。高校生と話 し合う場があり、生徒の学校生活や学習状況など生の声が聞けて良かった。 訪問先② 小雨の降る中の視察でした。学校に到着し、校舎内に入るとお母さん達のチ 善隣中学校 マチョゴリでの出迎えに感激しました。そして、生徒によるすばらしい演奏や 舞踏などで歓迎されました。柔道の精神が校訓として掲げられており、礼儀 作法を重んじられていました。数学の授業で、2年生のみ習熟度別授業が行 われていました。2クラスを3分割し、能力にあった学習をしていた。苦手グル ープのクラスでは、わかりやすく説明をされており配慮されているシステムで あった。 - 81 - 訪問先③ 1日8時間という授業の多さ、さらにプラス自習勉強と1日のスケジュールに驚 果川中央高等学校 かされました。特別クラスに対する支援も充実していた。校内に大きな禁煙、 禁酒の掲示板があった。このような生活指導については、奉仕活動を行い、 心の浄化につなげるのがねらいでした。平準化政策で、下の生徒をどう引き 上げていくか課題である。英語・数学は学力に応じて3段階に分けており、 補充の救済も行っていた。 訪問先④ 教育目標は、未来国際社会を先導するべき有能な人材育成であり、いたる 釜山国際中学校 所に英文で表示、啓発が行われていた。英語教育に力を入れ、国際人を育 てていきたい学校の熱意が伝わってきました。理科の授業は、英語で行われ ており先進的な取り組みでした。 また、折り紙の交流授業では、生徒は好奇心旺盛で取り組んでいました。日 本では、折り鶴をうまく折れない男子生徒がけっこういますが、男女関係なく 丁寧に折れていたのには、感心しました。 訪問先⑤ 牛浦湿原を眺め、水鳥・植物・魚類など貴重な湿地であることがわかりまし 牛浦湿原 た。小学校3年生を対象に、講習・観察を行うプロジェクトは、すばらしいもの であった。生徒はさわって、作って、遊ぶことで より関心を強くする体験でした。特に、生態系をリサイクル品を使って自然へ のメッセージを出口としているのが印象に残りました。 3.最も有意義であった内容: 韓国の世界遺産等の見学は、歴史の重みを感じるものが多くとても勉強になりました。どれもすばらしい内容 ばかりでしたが、最も有意義であったことは、ホームビジットの訪問です。訪問前は、片言の英語でコミュニケー ションをなんとかこなそうと不安でした。しかし、訪問家庭は、今春まで5年間、家族ごと日本に在住されており、 日本語で普通に話すことが出来ました。韓国の違いについて、ざっくばらんに話し合えたことがとても良かった。 最後に、韓国で、受験競争に立ち向かっている子を目の前にして、励ますことしかでませんでしたが、貴重な体 験となりました。 4.成果: このプログラムが、内容の濃いすばらしい企画でした。学校訪問、ホームビジット、世界遺産歴訪とどれも韓国 をよく知ることにつながりました。 また、清渓川の復元の過程を学び、環境を都心で活かしたプロジェクトに韓国のすばらしさを知りました。持続 可能な開発のための教育とは、学校で完成するものではないこと。講義を受けた内容をいかに広めるかが、今 問われているものと痛感しました。持続可能な開発のための教育を行うことで、より良い環境を作り上げていく一 歩になると確信しました。 5.今後の日韓交流について: 今回の訪問に参加し、どの学校も受け入れが心温まる歓迎でした。特に良かったことは、教師との話し合いが、 - 82 - 小グループでできたこと。生徒との話し合いも、少人数でできたことである。これからも、本プログラムが継続され ることが、日韓関係をより深くつなげていく真の交流であると考えます。 6.提案・助言: 1番気になっていたのは、夜 10 時、12 時まで行っている自律的学習でした。一度、どのように行われているの か見学してみたかった。 日本でもそうなのですが、韓国の授業の中で、生徒の発表がないのが気になりました。今、コミュニケーション のスキルアップが求められています。協同学習が、コミュニケーション力をつけるよい手法ですが、実践されてい る学校があれば視察する価値はある。(協同学習の先進校) 牛浦湿原での小学生3年生でのプログラムは、持続可能な開発のための教育の位置づけとして、大きな役割 を果たしています。受験競争の過熱で、できていないかもしれませんが、中学校、高等学校で継続された学習 があれば参観したかったです。無いのであれば、持続可能な開発のための教育を実践している中学校、高等学 校の訪問が望ましい。 宝塚市立末広小学校 教諭 杉山 香 1.総合所見: 今回、このようなプログラムに参加させていただき、国際教育交流事業を通してたくさんのことを経験し、学ぶ ことができました。本当にありがとうございました。また、この事業を細やかな配慮で進めてくださったACCUの 方々、通訳の方、韓国の方々、そして、一緒に参加した先生方などこの事業に関わってくださったすべての 方々に感謝いたします。 私は、このプログラムに参加するにあたり、まずは自分の目で見て、聞いて、話すことで韓国のありのままを知 ることができたらと思っていました。いいことも悪いこともいろんな面をまずは知る!知ることが理解への第1歩で はないかと思います。旅行や洋上大学などで何度か韓国を訪れたことはあるのですが、今回の訪問ではふだん はなかなか機会のない学校見学やホームビジットができるとあって不安もありましたが楽しみでした。 実際に訪問してみると、学校訪問ではバスが着いたときから帰るまで、とても温かく丁寧な歓迎に大変驚くと同 時に、その心から歓迎してくださっているお気持ちに感激しました。また、私の勤務する小学校にも1月に韓国 の先生方を受け入れたのですが、そのときにこのような歓迎ができてたかな、もっとこんなふうにしたらよかったな と反省し、次の機会にぜひ活かしたいと思いました。 また、ホームビジットでも大変温かく迎えてくださり、短い時間ではありましたが、食事や文化の紹介を通してし だいにお互いに距離が少しずつ縮まっていくのを感じました。もちろん、韓国語をもっと勉強してたらよかったと いう気持ちはありますが、片言の英語やジェスチャーなど、お互いに歩みよろう、相手を理解しよう、という気持ち があれば、そこに言葉はなくても交流はできるのだということを強く感じました。 交流に限らず、どんなことも心で接する・心を大切にすることが私たち人間にとって大切なんだと。 言葉は違っても、心は世界共通なんだと・・・・・・。 そして、これはプログラムが進むにつれて私自身が感じたことですが、韓国の児童・生徒・先生、ホームビジッ - 83 - トの家族の方々、お寺の訪問など、交流するときには「食」「遊び」「趣味」「教育」「昔からの伝統」「衣」「住」「流 行」など必ずといっていいほど「文化」が媒介となり、お互いの文化を交流することで言葉で足りないことを補った り、また、お互いのコミュニケーションをスムーズにする重要な役割を担っています。 学校訪問など、公の交流ももちろん大切であり、とても貴重でありがたい体験です。そして、飲食店で韓国の先 生方と一緒に食事をしたり、ホームビジットで夕食をいただいたりというように、「食」を介することで改まった話で はなく、少人数でテーブルを囲み楽しい雰囲気の中、お互いに会話の中から自然な交流ができ、本音が言えた り聞けたりするのかなと思いました。なので、「食」の役割や大切さを再確認することができたし、公の場とそうで ないときとの交流のどちらもが経験できたのもよかったです。 この 10 日間で学んだこと、感じたことをこれからの国際交流や教育活動のいろいろな場面で活かしていきたい と思っています。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 まず、私たちを歓迎してくれるために大きな横断幕が掲げられてたり、視聴 覚機器を使っての大変丁寧な学校紹介などこの日のためにあらゆる準備を してくださり、とても温かく迎えられ感動した。日本語クラス(女子)で日本の 文化紹介ということで「宝塚歌劇」の紹介をした。全体的におとなしい様子で あったが、宝塚に興味をもってくれたようでうれしかった。生徒たちとの懇談 会では、まず、生徒たちが日本語が上手に話せることに驚いたが、一番驚い たのは、生徒の中には夜中の 12 時や2時頃まで学習したり、高校も放課後 教育といってかなり夜遅くまで、学校でも自習をする生徒が多いということだ った。また、成績優秀者のみ利用できる自習室など設備面の充実と同時に 学歴社会の厳しさも感じた。過酷すぎる生徒たちの生活に驚きと疑問を感じ た。 訪問先② 善隣中学校 雨の中にもかかわらず、校長先生や保護者の方々がチョゴリ姿で出迎えて くれた。生徒たちの踊りや歌、演奏など大変温かい歓迎を受けた。始業式の 次の日だというのに、私たち日本人向けに味付けした給食や日本語での学 校要覧など、この日のためにしてくださったあらゆる面での配慮を感じ、感謝 の気持ちでいっぱいになった。学校の特徴としては、体力面だけではなく精 神面も鍛えるため、「柔道」を教育活動にとりいれていることが印象的であっ た。共学なのに、実際には男女別のクラス編成になっていたり、2、3年生 は、選択授業として日本語も学習できるなど日本との違いを感じた。放課後 教育は、夜 10 時頃まで行われている。一般的に公立の中学校・高校には、 プールはなく運動場もせまい。日本のように部活動も盛んでなく、学力重視 のため図工・美術・音楽・体育などの教科が軽視されているのが残念であ る。 - 84 - 訪問先③ 釜山国際中学校 諸事情により、今回の訪問は小学校訪問がなくなったため、この懇談会は いろいろなことを聞くいい機会になった。小学校では英語教育が盛んで3年 生から始まるそうだ。5・6年にもなると英語が週2時間になる。6年卒業時に 小学校教師との懇談会 は、簡単な会話ならできるくらいに上達しているという。担任とは別に英語担 当の教師がいるそうだ。もうすぐ日本も小学校教育に英語が導入されるが、 カリキュラムの変更だけではなく、韓国のように英語担当など人的配置も配 慮してほしい。また、小学校でも放課後教育はあるそうで、放課後教育+私 教育の児童は全体の 80%にも及ぶ。小学生も忙しい毎日を送っており大変 だなと感じた。この時期の子どもたちは「遊び」の中から学ぶことも多く、「遊 ぶ」ことが子どもたちどうしにとってとても重要な役割を果たすと思われるだけ に、この時期にこの生活を続けていいのか・・・という疑問が残った。 訪問先④ 梵魚寺 大変古い由緒あるお寺で、大きな木魚が印象的だった。昼食は精進料理 を頂いた。お皿の置き方・食事の仕方・挨拶の仕方・後片づけなどの食事の マナー・作法について学んだが、改めて食べられることの幸せや、感謝する 気持ち、そして、命の大切さを感じることができた。和尚さんの講話の「まず は、一杯の茶から・・・」という言葉が心に強く残った。いろいろなことすべてが この一言に凝縮されているように感じた。今、自分自身が忘れかけている何 かを思い出させてくれたような講話だった。 訪問先⑤ ホームビジット 訪問先の家族の方が、大変丁寧にそして温かく迎えてくださり、その一つ ひとつに感動した。みんなで食事をすると、お互いに言葉はわからなくても、 次第にうち解け会話も弾んでいった。 また、訪問先の家族の方々が、日本にも興味をもってくださり歩みよってき てくれる気持ちがとてもうれしかった。日本の「お茶」の作法を伝えると、それ まで少し恥ずかしがっていた他の家族の方も、いつのまにかみんなでテーブ ルを囲みお茶を飲んでいた。文化交流を通して、お互いにコミュニケーショ ンが深まり大変有意義であった。 3.最も有意義であった内容: このプログラムでは、いろいろなところを訪問したり見学したので毎日が有意義であったのですが、特に心に 残ったのは学校訪問とホームビジットです。韓国の中学校・高校訪問では、どこの学校へ行ってもとても丁寧で 温かい歓迎を受けました。また、予想をはるかに超える過酷な学歴社会、過熱する私教育など驚いたり疑問に 感じることが多かったです。しかし、このようにありのままの事実を知ることにより、韓国と日本との違いや同じとこ ろを考えられたし、改めて日本の教育について、自分自身の日々の教育活動についてふり返ったり考えること のできた時間だったように思います。 ホームビジットでは、教育活動にとらわれずに、文化交流をはじめ、食事、遊び、流行、今興味のあることなど を話すことで韓国の方の生活をかいま見ることができました。韓国を知り、理解していくためにとても貴重な体験 でした。 - 85 - 4.成果: 訪問先の学校を知ることにより、日本の教育、そして、宝塚の、自分の勤務校の教育活動についてふり返るこ とができました。学校訪問や先生方との懇談会でお互い語ることで韓国の教育水準の高さや先生方、保護者、 そして、児童・生徒の教育に対する熱意が伝わってきました。また、訪問先の学校で日本の文化を紹介させてい ただいたことで、改めて日本の伝統・日本文化のよさについて再認識するとともに、韓国の芸術鑑賞や建築物 見学によって韓国の文化のよさ・すばらしさについて気づくことができてよかったです。お互いに昔から大切に 受け継がれているものや事柄を知ることで違いだけではなく、お互いの共通点も見えてきました。そうすることで、 理解がさらに深まっていくものと感じています。 先にも述べましたが、韓国の先生方やホームビジット先の家族の方との交流などいろいろな形での交流を通 して、たとえ言葉が通じなくても、心が通い合えば他のもので補えるのだと感じました。これからも教育活動だけ ではなく、自分がかかわる人々に対して、心から向き合い、心で接することのできる人になりたいと思っていま す。 5.今後の日韓交流について: まずは、このプログラムで学んだこと・感じたことをまわりの職員や子どもたちに語り、広めていくことからだと思 います。そして、少しでも多くの人が韓国に対して興味をもってくれたらと思います。昨年度に続き今年度も韓国 の先生方の訪問があるかもしれないので、そのときは、今回の訪問で学んだことを活かして交流していきたいで す。 6.提案・助言: 訪問先の学校が、4つともその地域で能力的に高い学校だったように感じました。もっとごくごく平均的な公立 の学校に訪問できたらと思います。 生徒との懇談会、先生方との懇談会が1回ずつありましたが、あのような少人数のほうが話しやすく本音も語り やすいと思うので、回数を増やすか時間をもう少しのばすと交流が深まると思います。 広島大学附属中高等学校 教諭 笹原 豊造 1.総合所見: 1.設定課題 (1)英語教育の実態 ① 小学校での英語教育の実態を観察し、日本での今後の実践の参考にしたい。 ② 中学校・高等学校での英語教育と日本での英語教育と比較検討したい。 (2)ESDの実践例を観察し、今後の日本での実践に活用したい。 (3)国際理解教育の実践例を観察し、今後の日本での実践に活用したい。 (4)韓国の教師の方々と種々の課題について率直な意見交換をしたい。 (5)韓国の一般家庭の生活を経験し、交流を深めたい。 - 86 - 2.具体的な交流事例 (1)小学校での英語教育は実際に観察することはできなかったが、中学校・高等学校ではすべての訪問先で英 語の授業を参観することができたのは有意義であった。すべての教室にコンピュータとプロジェクターが設備さ れ、英語の授業に有効に活用されていた。例えば、釜山国際高校では目標を明確に掲げ、学校が一丸となっ てその目標達成のために組織されていた。附属の国際中学校では生徒数が 180 人で、徹底した少人数教育が なされていた。韓国の英語教育の特徴は、①徹底した指導、②人的資源と資本を集中、③旺盛な学習意欲で あることが実感されたのは大きな収穫であった。 日本では英語の時間数を削減し、テキストを薄くする方向で進んでいたが、韓国ではその反対の方向性で あった。中学校3年生のテキストの内容と量は、日本の高校1年生と同程度かそれ以上であった。 (2)ESDが積極的に展開されていることが印象的であった。牛浦沼で環境について、熱心にかつ楽しみながら 授業を受けている小学生の姿は印象的であった。 (3)釜山国際高校での取り組みが印象的であった。国際社会でのリーダー育成をめざして、意欲的に様々な行 事を展開され、生徒たちが意欲的に取り組んでいた。意欲が有りかつ能力の高い生徒を徹底的に指導する方 針が随所に感じられて、興味深い訪問であった。教師側にも、将来のリーダーを育てているというプライドが感じ られた。 (4)時間に追われながらであったが、相当に突っ込んだ意見交換ができた。生徒の学習意欲をいかに高めるか に真剣に腐心されている姿は、日本と同様であり共感できた。また、一方で過熱する競争に対する危惧を率直 に表明されている先生方の意見も傾聴に値した。 (5)ホームビジットは貴重な体験であった。釜山国際中学校1年男子生徒のお宅を訪問した。通常の観光では 決して体験できないものであった。母親が生徒と同じ国際中学校の教師であり、教育の問題についていろいろ と意見交換ができた。高層住宅に住んでいることに起因する子供の運動不足の問題や進学問題など、日本の 親と同じ悩みを抱えていた。また、ご主人の軍隊時代の経験など我々には決して窺い知ることのできない貴重な お話であった。祖母の方にも歓迎していただいたが、伝統的な韓国の食事やキムチ作りの苦労など興味深い話 で、楽しい時間を過ごすことができた。日本からの手土産として、東京バナナや日本の四季を紹介したカレンダ ーを持参した。東京バナナは韓国には無い味のお菓子だとして、子供たちには好評であった。 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先① 生徒数 1749 人の男女共学の公立高校である。全員が一致協力して教育目 清明高等学校 標を達成しようとする熱意が感じられた。外国語教育、読書・論述指導の強 (ユネスコ協同学校) 化、英数のレベル別指導、ユネスコ活動(国際理解教育)などが重点目標で ある。とりわけ、外国語学習には相当なエネルギーが注がれている。 能力の高い生徒への深夜にまで及ぶ徹底指導には国の違いを実感した。 English Cafe の 設 置 、 英 語 新 聞 の 発 刊 、 Cheong Myeong Millennium Festival の開催などはすべて英語学習の発展を目指しての工夫である。日 本語を専攻している生徒と交流の機会があった。 - 87 - 彼らの会話能力は短期間の学習にもかかわらず、高度であった。 訪問先② 創立 100 年を超える歴史を誇る、生徒数 930 人の男女共学の公立中学校で 善隣中学校 ある。美しい民族衣装を身にまとっての歓迎には感激した。特別支援学級生 (ユネスコ協同学校) 徒によるチャイムベル演奏での歓迎にも心を動かされた。 中学校3年生の英語授業を参観した。 使用テキストは、日本と比較すると量的にも質的にも高度であった。コンピュ ータを用いての授業であったが、内容が抽象的で高度なため若干名は授業 に参加できていなかった。 別クラスで児島先生がコミュニケーション重視の授業を展開されたが、韓国 ではこの教授法は主流ではないようであった。生徒たちは、嬉々として積極 的に参加していた。 意見交換会では、体育教師より柔道の教育効果が述べられた。日本語は2、 3年生が選択制で学んでいる。給食を食べさせていただいたが、日本風の 味付けであった。これも温かい歓迎の心配りの一つであった。 訪問先③ 京畿道果川市にある 2000 年開校、生徒数 1249 人の清新で活気溢れる公立 果川高等学校 高校であった。特別支援学級を参観したが、施設・人員の点では日本より手 (ユネスコ協同学校) 厚い配慮がなされていた。新設校の利点であろうか、コンピュータ設備は日 本の同程度の公立校よりはるかに充実している。ネイティブスピーカーによる 英語授業を参観した。英語を使用する環境が無いので、なかなか効果を挙 げることができないのは、日本と同様であった。しかし、生徒たちの学習意欲 は旺盛で、8時限の授業終了後も深夜まで学校で、補習を受けたり自習する 実態には感動すると同時に、生徒・保護者の声を聞いてみたいと思った。意 見交換会では、我々から見ると過熱気味の受験体制について、質問が出さ れた。保護者からは、親として最大限、食事や生活習慣に気を配っている。 本人の将来のためには必要であると、この状態を肯定する意見であった。 訪問先④ 韓国最大の自然湿地である。韓国おいても自然の消滅は深刻な問題であ 牛浦沼生態公園 り、この牛浦沼は 1998 年にラムサール条約に登録され、韓国自然保護の象 徴的な存在である。附属施設として廃校を利用した教育施設が建設されて いた。小・中学生を主たる対象として、湿地の生成の歴史、生態系のすばら しさなどを、あらゆる観点から学ぶシステムが整備されていたことには感銘を 受けた。小学生の環境教育授業を参観したが、押し付けでなく楽しく学ぶよ うに工夫されていた。環境教育の拠点としての重要性が伝わってきた。職員 の方々の熱意もすばらしいものであった。今後の発展を期待するとともに、再 度訪問してみたい。 - 88 - 訪問先⑤ 創立 11 年で韓国初の国際高等学校である。教育目標が明確で「21 世紀をリ 釜山国際中学校 ードする国際人の育成」を目指している。(To enble each student to grow into a competent professional in the global world of the 21st century) 学校内の掲示物はすべてが英語表記でなされ、生徒たちが常に 世界を意識するようになっている。学校長のあいさつも巧みな英語でなされ たことには感銘を受けた。高校3年生の英語リーディングの授業を参観した。 教材はアメリカの雑誌で内容も使用英語も相当に高度であったが、ほとんど の生徒たちが理解できていたのは驚きであった。先生方との意見交換会で は、韓国の受験競争に懐疑的な意見が出された。個人の生活を犠牲にしな いと、社会(生徒や保護者)の要求を満たすことができない現状を危惧する 意見があったのは当然であろうか。 3.最も有意義であった内容: (1)教員との意見交換 教員の方々との意見交換は、個人レベルではむつかしいことなのでとても貴重な経験であった。特に、釜山国 際高校では小グループでの意見交換で、参加者がかなり自由に発言でき率直な意見交換ができた。ある日本 語教師は、「過熱する受験競争については危惧している」と発言した。個人生活を犠牲にしなければ、保護者 や社会の要請に応えることはできないとのことであった。このような否定的な意見を聞く機会は、小グループ設 定でなければむつかしいであろう。 (2)学校訪問 当然ではあるが、学校訪問は貴重な体験であった。周到に準備された受け入れ側の努力には頭の下がる思い である。受験競争の一端を見る機会があり、日本の教育を考える良い契機にしたい。 (3)生徒との意見交換 清明高等学校では、日本語を選択している生徒たちとの座談会が設定された。生徒たちの日本語によるコミュ ニケーション能力の高さには驚かされた。生徒たちの日本への関心や知識などを実際に聞く機会であり、とても 印象的であった。この交流を、インターネットを用いての日本の生徒との定期的な交流に発展させるなどすれば、 韓国の生徒にとっても学習の成果を試す良い機会となるではないだろうか。日本の生徒にとっても「近くて遠い 国」が「近くて近い国」になることが期待される。 (4)歴史的遺産訪問 戦争博物館は初めての訪問であった。短時間であったので、まさに駆け足の見学となったのが残念である。し かし、戦争を通して韓国の歴史を概観するには、絶好の施設であると思った。国立慶州博物館は貴重な歴史的 遺物の宝庫であり、それらを通して韓国の歴史を概観するには絶好の施設であった。 (5)ホームビジット 韓国の家庭の実際を体験できた。韓国と日本は、悲惨な歴史を抱えているが、これから一層友好を深めていか なければならない国同士であることは確かである。個人レベルでの友好が将来は大きな平和への原動力となる のであろうと実感した。 - 89 - 4.成果: (1)英語教育について 日本においても小学校英語教育が本格的に開始されようとしている。小学校英語教育に関して、韓国が先進 的である。韓国の生徒たちの英語によるコミュニケーション能力の高さ(選ばれた生徒ではあるが)から考えると、 かなりの成果を挙げていると判断できる。日本での実施には種々の困難点が指摘されているが、まずは果断に 取り組むことが第一であると実感した。教授法、人的資源の確保、投資効率など日本が韓国に学ぶべき点は 多い。 (2)ESDについて 本校(広島大学附属中・高等学校)においても、ESDを本格的に取り組み始めたばかりである。ESD=環境教 育との認識を払拭することは困難ではあるが、韓国での意欲的な取り組みを校内で広め、ESDへの意欲を高め るきっかけとしたい。 (3)国際理解教育について 国際理解教育=英語教育といった偏見を再度見直す良き経験であった。欧米偏重であった国際交流の眼を、 「近くて最も古い友人」である韓国(アジア)に向ける必要を実感した。釜山国際高校がモンゴルとの交流に熱心 に取り組んでいることが印象的であった。欧米に偏するのではなく、まずアジアの国々から交流を深めようとする 姿勢は見習うべきものである。 (4)教師間の交流 教師は同じ課題を抱えていると実感した。英語教育においても、その他の広範な分野においても意見交換がな されれば、もっと教育効果が挙げられると考えられる。この訪問でできたネットワークを利用して、英語教育につ いて積極的に交流していきたい。 (5)韓国の一般の方々との交流 生徒たちにこそ、この体験(ホームビジット)が必要であると感じた。このような草の根レベルの交流こそが、強固 で確かな関係を築く基礎となるに違いない。本校でも海外修学旅行を計画しているが、このような企画をぜひプ ログラムの中に盛り込んでいかなければならない。この確信が得られたのは大きな成果である。 5.今後の日韓交流について: (1)アジアとの交流 本校はユネスコ協同学校としての歴史は長く、国際理解教育や国際交流も活発に行われてきた。しかし、その 交流が欧米諸国に偏重していたことは否めない。国際理解と銘打ちながら、実態 は英語学習の補助的な手段 としてのオーストラリア研修を実施している。これ自体は有意義なことであるが、アジア諸国との交流に本格的に 取り組む必要性を感じた。この訪問で知り合った人々とのつながりを大切にして、日本語を学ぶ韓国の若者に 積極的に日本を発信すると同時に、韓国の生徒たちの考え方を日本の生徒たちに知ってほしい。機会が与えら れるならば、韓国訪問団を積極的に受け入れていきたい。ホームスティとなるとかなりのエネルギーが必要であ るが、ホームビジット形式ならかなりの人数でも対応できる。 (2)若者同士の交流 将来の世界を担う、若者たちの交流が必要である。受け入れるだけでなく、本校の生徒たちにも修学旅行など を利用して、韓国を訪問する機会を経験させたい。その際にはプログラムの中に是非とも学校間交流を実現さ せたい。できれば、将来的には姉妹校へと発展させて、定期的な交流を行いたい。 - 90 - (3)インターネットによる交流 一過性の交流に終わらせるのではなく、情報教育と絡ませて、インターネット回線による定期的な交流も可能で ある。韓国の生徒は日本語学習のために、日本の生徒は英語学習のためにと、かなりの動機付けになるであろ う。 6.提案・助言: 今回のプログラムに対する意見 (1)訪問する学校の種類、数がもう少し多いほうが良い。(竹島(独島)問題があり、かなりの変更があったことが 影響したことは理解できるが。)歴史的遺産訪問を削っても、学校訪問を増やすべきではと考える。 (2)短時間ではあったが教師間の意見交換はかなり行われた。一方で、保護者、生徒との意見交換がもっとあ っても良かったという印象である。また、小グループでの意見交換が望ましい。全体会では、断片的な意見 交換に終わってしまう感は否めない。 (3)学校という場を離れて、韓国の若者たちとの交流の場は設定できないのだろうか。徴兵制や日本に対する 歴史認識など難しい問題と関わってくるが、これらの問題にある程度切り込んでこそ、交流の成果があげら れると考える。特に、大学生との交流を実現してほしい。 (4)バスで団体として移動するのではなく、公共の交通機関を利用しての行動も企画して欲しい。例えば、地下 鉄を利用するなど経験者にとっては取るに足らないことが、韓国初心者にとって貴 重な体験となる。 (5)出発前にもう少し韓国教育に関しての事前学習が必要であった。ユネスコ会館での講義は非常に有益であ ったが、「教員評価制度」以外のテーマについても情報を得たいと思った。事前に参加者の質問を集約し ておいて、それに対して、ある程度文書で回答するといった工夫ができないであろうか。 最後に 貴重な経験を与えていただき、感謝しています。韓国側の歓迎には感動いたしました。もてなしの国を実感 するとともに、大切な友人であるとの認識を深めました。日本側関係者の方々の献身的なご協力に深甚なる敬 意を表したいと思います。 八王子高等学校 教諭 藤岡 隆史 1.総合所見: まずは、今回のプログラムの関係者の皆様に本当に感謝したいと思います。韓国政府、日本政府、韓国ユネ スコ国内委員会の皆様、日本ユネスコ国内委員会の皆様、財団法人ユネスコ・アジア文化センターの皆様、同 行していただいた通訳の方々、韓国の学校関係者、その他、韓国で出会った全ての人に対して、本当に感謝 の気持ちでいっぱいです。財団法人ユネスコ・アジア文化センターからは昨年も声をかけていただきましたが、 生徒が登校している6月の実施のため残念ながらお断りさせていただきました。しかし、今年も声をかけていただ き、2年越しの思いが実現できるようになり、本当にうれしかったです。この訪問では以上の人々の他にも、一緒 に参加した団長の小澤紀美子先生やAグループ分団長の新井哲夫校長先生を始めとする日本の教職員の皆 様との出会いの機会にもなりました。皆様に対しても感謝の気持ちでいっぱいです。いい勉強をさせてもらいま した。ありがとうございました。 今回の訪問前には、韓国の教育状況について知り、それを今後の教育活動でどのように生かしていくのかを - 91 - 考える機会にしたいと思いました。また韓国の高校では第2外国語として日本語を学んでいる生徒がいることは 知っていたので、それのレベルも知ってみたいと思っていました。 韓国の教育状況も日本の教育状況も本質的には変わっていなく、受験勉強が中心になっているということを、 改めて感じる機会となりました。韓国は日本の隣国であるわけですし、似ている部分はやはりたくさんあります。 このプログラムを通じてそのようなことを認識し、もっともっと交流すれば、いろんな問題をお互いに解決できると いうことを認識する機会となりました。 また第2外国語としての日本語ですが、とにかく日本語を分かる韓国人の数と韓国語を分かる日本人の数の バランスが全くとれていないということも再認識する機会となりました。私個人の力では第2外国語の学習として の韓国語学習を日本全体にひろげることはとうてい無理なことですが、身近なところから、韓国語学習を実施し、 長い目でみて(それこそ目先の5年 10 年先ではなく、20 年 50 年先でもいいので)、第2外国語としての韓国語 学習が日本全体に広がっていくことへの、ささやかではありますが力になっていこうと思いました。 印象に残ったこともたくさんありますが、実際に韓国の人と交流する機会であるホームビジットが、本当によかっ たです。金井高校の朴滈焌校長と新井哲夫校長という2人の他校の校長先生と一緒にお酒が飲めたことは、貴 重な体験でした。 今回の経験は、本当に貴重な機会であったので、この経験をぜひいかしていきます。私自身、「日韓の架け橋 の役割になりたい」ことを意識していましたが、今回改めてその思いを強く持つようになりました。そういう思いをさ せてくれたことに本当に感謝しています。ありがとうございました。 2. 各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先① 清明高校に限らずですが、我々に対しての歓迎ぶりに大変驚かされました。 清明高等学校 特殊学級も同じ学校にあるということにも驚かされました。また早期卒業が見 込まれる生徒に対してのシステムがあるところや、学校で午前2時まで勉強 する生徒もいるところも驚かされました。日本語を勉強している生徒との交流 会では、生徒の日本語力が大変高く我々と普通に日本語で会話ができたの には大変驚かされました。おそらく日本では韓国語を話せる生徒はかなり限 られるであろうし、隣国である韓国の言葉に対してもっと勉強すべきではない かと、痛切に感じました。 訪問先② 一番驚いたことは、我々のために、教員だけでなく保護者もチマチョゴリを着 善隣中学校 て、歓迎してくれたことです。もし同じようなことがあってもおそらく日本では 保護者はでてこないと思います。保護者の存在がいわゆるモンスターペアレ ンツとはまったく別で、保護者も一緒に学校を作っているということを強く感じ ました。また清明高校同様に特殊学級があり、チャイムベルの演奏を聞かせ ていただきましたが、いろんな人を受け入れていくという姿勢に感銘を受けま した。人格形成のために柔道を実施しているということにも驚きました。柔道 は日本の国技ではありますが、本校も含めて、時間数が減っています。でも 柔道の精神はきちんと伝えることは大切であるということを考えさせられまし た。 - 92 - 訪問先③ 政府の機関がある果川市にある学校で、周辺は落ち着いた雰囲気があり、 果川中央高等学校 学校もそんな雰囲気がありました。放課後のクラブ活動を見学させていただ きましたが、NANTAなどの指導は本格的でうらやましいと思いました。勉強 をがんばっている生徒やクラブをがんばっている生徒の両方を尊重している のではと感じました。懇談会では保護者の方も参加し、保護者も一緒になっ て学校を作っているのではと思いました。他の2校と同様に特殊学級がありま した。ハード面においてはかなり進んでいて、コンピューターや大型テレビも ありました。おそらくそれをどう生かしていくのかが課題なのかもしれません。 これは日本でも同様なような気がしました。 訪問先④ 入り口から、多数の国の国旗があり、英語の標語が校内の至る所にあり、国 釜山国際中学校 際感覚豊かな人材育成をがんばっていることが感じられました。姉妹校も中 国、日本、モンゴル、コロンビア、ラオス、カザフスタンなどと多岐にわたって おり、写真や証書なども展示されているので、本格的であると感じました。た だ校長先生がおっしゃっていましたが、「一番近いはずの日本との姉妹校が 2校しかなく、もっと交流をすべき」との発言は本当にその通りだと思いまし た。「韓国は今までは日本を追い越すことを目標にしていたが、今は世界を 目指すようになった」との発言もあり、日本人の教員として、大変考えさせら れました。もしかすると今は日本は内向きになっていて、どんどん取り残され てしまうような気がしてきました。そんなことを考えるきっかけになりました。 訪問先⑤ 環境教育に対しては、個人的にも受けたこともなく、訪問前はイメージもわか 牛浦沼 ない状態でしたが、牛浦沼を大切にしようとする気持ちが強く伝わりました。 ESDは、個人のためだけでなく、国家いや全世界にとっても大切であります が、その意識が日本の現状では大変低いとの認識を感じました。(韓国でも そのようでありますが・・・) しかしながら、地域全体で小3全員に対しての環 境教育を行うということは十分見習うべきだと思っています。韓国でもまだ始 まったばかりとのことですが、ぜひ今後の推移も見ていきたいと思います。私 自身にとってESDを意識する本当にいい機会になりました。 訪問先⑥ Aグループの分団長の新井哲夫校長先生と訪問しました。当初は正直なとこ ホームビジット ろ、2人の校長先生それも自分の勤務校ではない学校の校長先生に囲まれ 金井高等学校 ていて緊張しましたが、しばらくして打ち解けて、大変有意義な時間を過ごさ 朴滈焌校長先生宅 せていただきました。教育においては、日本も韓国も同じような状況で同じよ うな悩みをもっていると感じました。時間が足りなくまだまだいろんなことを吸 収したいと思ったところで終了になりましたが、これからもぜひいろんなことを 学んでみたいと痛切に感じました。 3.最も有意義であった内容: あらゆる経験が有意義であったため1つに選ぶことは大変難しいです。 ・ユネスコ韓国委員会での講義…持続可能な開発のための教育(ESD)に関しての、知識がとても浅かったた - 93 - め、この講義を聴いて、もっともっと真剣に考えなくてはならないと感じることができるようになりました。このことは 牛浦沼の見学でもそのように感じました。またユネスコスクールのあり方に関しても、とてもホームページにロゴを いれるなどして、浸透させようとしていることは、とても参考になりました。 ・学校見学…どの学校でも歓迎していただき、特に善隣中学校で保護者も含めての歓迎ぶりには驚き、大変う れしかったです。以前本校でも受入をさせていただきましたが、ここまで歓迎の気持ちを表現できたのか、考え させられました。また受験勉強のために成績優秀者に使用を許可する図書館(自習室)のありかたは考えさせら れました。 ・ホームビジット…私は金井高校の朴校長先生のお宅を分団長の新井哲夫校長先生と共に訪ねました。普通で は経験できないことですが、いい勉強になりました。新井哲夫校長先生が、今回おっしゃっていた「日韓共に人 材育成が実際には受験指導になっている」という言葉が、本当に印象的で、はっとさせられました。こういうこと一 つをとっても今回の訪問は大変貴重な機会になりました。 ・韓国及び日本の先生方との交流…私は異動のない私学に勤務していますので、どうしても人間関係がマンネ リ化してしまい刺激がなくなってしまいますが、今回の訪問で、小沢団長、全国各地の幼稚園から始まって高校 までのそれも校長を始めいろんな立場の先生方、あるいは文部科学省や教育委員会からも人との交流があり、 大変刺激になりました。日本人同士の交流のいい機会でもありましたし、もちろん韓国人との交流ではユネスコ 委員会の孫さんを始めとする人々や訪問した学校の先生方や生徒たちなどとの交流などいろいろとお話が出 来て大変有意義な機会になりました。 4.成果: 今回の訪問で韓国の教育状況がよくわかりました。ただ日本との違いを知るというよりもむしろ日本に近いとい うことを認識する機会になりました。日本と違い、韓国では、校内に夜遅くまで使える自習室があり、中には午前 2時まで使用可能ということは確かに決定的な違いだと思いますが、これも塾が提供している自習室を学校が提 供しているだけということと、時間が韓国では長いということだけで、本質的には何も変わっていないということが よくわかりました。結局、日韓とも人材育成が受験学力の育成になっているということを痛切に感じました。将来 を考えると、受験学力の育成は個人のための学力養成であるため、両国やアジアやひいては世界全体のことを 考えるといいこととは決して思えず、是正する必要があると感じました。そんな中で、牛浦沼での取り組みは今後 も注目していきたいと思います。 本校はユネスコスクールではありますが、ユネスコスクールとして、学校がまとまってといよりも取り組んでいると いうよりも各クラブなどの先生方が個人で活動してそれが主な活動となっています。そのためユネスコスクールの 一つという認識が先生方や生徒からみると薄いので、それを学校全体の活動としてどのように浸透させていくの かを知るいいきっかけになりました。 私の中では非常に認識が薄かったESDに関しても理解をするきっかけになりました。 韓国の先生方との交流もそうですが、日本の先生方からも大いに刺激を受ける機会になりました。先生方もい ろんな種類の学校から来ていて、本校では当たり前のように思っていたことが、そうではないと気づかされる機会 にもなりましたし、いろんな取り組みをしている学校の先生方のお話をうかがって、私も同様にがんばろう、と考 える機会にもなりました。 - 94 - 第2外国語として日本語を勉強している韓国の高校生の語学レベルを知りたかったですが、今回、清明高校の 生徒と会話をする機会に恵まれ、私の予想以上に日本語ができたことには、本当に驚きました。日本の高校生 は基本的に第2外国語を勉強することがなく、おそらく韓国語を勉強している生徒もごくわずかだと思います。隣 国であるので対等に物事を考えていくとなると、もっともっと多くの日本人が韓国語を話せるようになるべきだとあ らためて感じる機会になりました。私自身も多少は韓国語をかじりましたが、もっともっと勉強していきたいと思っ ています。 5.今後の日韓交流について: 過去にも本校では交流をしたことがありますが、今後もぜひ続けていきたいと思っています。同世代どうしでい ろんな会話をし、そこでいろんな発見をすることと思います。今回の交流で、韓国の高校生が日本のアイドルや ドラマのことを良く知っていることに驚きました。そういうことも含めて会話をする機会をぜひ与えたいと思ってい ます。 交流の可能性ですが、学校行事(定期考査など)があるとなかなか難しいですが、そうでないときは是非検討し たいと思います。 6.提案・助言: このプログラム自体は大変有意義であり、特に新しい提案はございません。10 日間という期間は短くも長くも なく、ちょうどいいと思いました。夏休み中の実施のため、10 日間をとることはできましたが、これが日本の学校の ある時期ですと、10 日どころか数日であっても参加は難しいので、このままでいいと思います。 参加人数に関しては、あまり多くなりすぎると、集団としては動きにくくなりますが、今回のように事実上2グルー プが別々に動いていく形であれば、適正な人数であると思います。 あえて言えば、普通の学校(生徒の学力レベルや特別な取り組みをしていない学校)の様子がどうであったの かは知ってみたかったです。 ぜひこのようなプログラムを今後も続けていただくことを切望します。今回参加した先生方の中では比較的私 は若い方だったような気もしますが、教育はこれからもずっと続きますし、そうすると、私より若い世代の先生方も 中心になってがんばっていかなくてはならない時期ももちろん来ます。そういう先生方にもぜひこのようなプログ ラムに参加できる機会があることを望みます。拡充も大切だと思いますが、それ以上にぜひ、今後も末永くこの プログラムが継続し、日韓の架け橋になれる先生方がどんどん増えていくことを切に願います。 大阪府立北淀高等学校 教諭 岡田 真由子 1.総合所見: 「年代・性別問わず積極的にコミュニケーションをする。」というテーマを今回設定した。 今回韓国を訪れるのは6度目であった。これまで何度も行っているのは、韓国の人々の魅力に触れてきたから だと思う。その魅力とは「距離が近い」ということである。たまたま訪れているだけかもしれない日本人の一人に、 - 95 - 彼らは半ば図々しいくらいに世話を焼いてくれた。名前も知らない彼らの心を受け取ったようで、もっとコミュニケ ーションができたらと思っていた。 今回たくさんの新たな出会いがあった。そしてその度魅力を感じた。 例えば、2日目のユネスコ会館での昼食。体調が思わしくなく乗り気でなかった私に、そっと近寄ってきて話し かけてくださった先生がいた。つたない英語で話しているうちにすっかり体調は回復した。若々しくチャーミング でしかも熱い、素敵な友人ができた。 夜の歓迎晩餐会。「故郷の春」「ふるさと」を合唱している時、見守っている韓国側の人々の温かい顔。思わず 涙が出そうになった。日韓問題を緩和するのは目の前の「この人たち」との一期一会の繰り返しなのではないか と感じた。もちろん簡単に口に出してはならないとわかってはいるが、もっと頭を柔かくしたら何とかなる問題がい くつかあるのではないかとも思った。 学校訪問での生徒とのやりとり。はにかみながら日本語で次々通りすがりに話しかけてくる。ちょっと韓国語を 話せば大喜び。自分の学校の生徒と本質的には変わらないなぁと、接していてほほえましかった。 ホームビジット。初めて日本人が来たという家に招かれ、ちょっとドキドキしたり、ハラハラもした。「近くて遠い日 本」この表現を最も感じた場面の一つでもあった。 また、後の成果のページでも述べているが地元の人とのやりとりも大きかった。食堂、コンビニ、スーパー、薬 局…言葉が不自由だからこそ一つ一つのやりとりが今でも鮮明である。 それから通訳の方を始めとする韓国側スタッフの人々の細やかさ。日に日に日本語が上手になってくるソンさ ん。最終日のバスの中で「悲しい気持ちや寂しい気持ちは韓国に置いて帰ってください。」とおっしゃった時、胸 がいっぱいになった。通訳のソンさんの毎日変わるかわいらしい服装。影で支え続け、最後には感極まっていた 大学生のパクさん。 そして 10 日間を共にした「チーム赤」の先生方とのやりとり。子どもみたいな感想だが「楽しかった。」の一言に 尽きる。「関西と関東の感覚の違い」対決。「関西人とは?」論。自力ではどうやっても作ることのできない人脈が たくさんできた。それが嬉しい。 私の6回目の韓国訪問は色濃く脳裏に刻み付けられている。それは人と人との、不器用ではあるが一生懸命 なやりとりの連続だったからだと思う。そのやりとりを持続させること、そこからもっと発展させていくこと、それはお 互いの「あなたが好きです。」という意志表示によって可能になるのだと思う。持続は変化よりずっと難しい。しか し持続が難しいからと放棄してしまうにはもったいないほどのものを多くの人から今回私は受け取ったと思う。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 清明高等学校 所 見 この学校で受けた第一印象は、典型的な韓国の学校だなということである。 上下の差別化ともいうべき早期卒業制度、英・数の水準化授業、特別自習 室など区別がはっきりされている。「韓国の学生はランク付けされることに慣 れている」という発言が心に残ったが、本当にそうなのだろうか?授業見学で は、男女とも受動的だと感じた。視聴覚機器は日本に比べとても充実してい たが、それを教員が使いこなすことができなければ持ち腐れだと思う。生徒 にとって授業が魅力あるものになるため、教員は弛まぬ努力が必要だと学ん だ。 - 96 - 訪問先② 果川中央高等学校 創設されてまだ 10 年と若く、かつ実験校ということで助成金も出ていること から学校の設備が素晴らしかった。その金額も日本ではなかなか考えられな い額で、教育への政府の期待が形に表れているような気がした。生徒が人な つこく臆することなく我々とコミュニケーションを取っていた。教員・保護者と の懇談会では、生徒指導上の懲戒の話や、文化祭の告発企画などなかなか 言いにくいであろう面の話をオープンにしてくださったので、聞いている側と して興味深かった。また保護者の教育への熱意を目の当たりにできた。保護 者の思いと現実のギャップは辛いだろうなと感じた。 訪問先③ 釜山国際中学校 韓国初の国際中学校ということだったが、とにかく少数精鋭のエリートコー スなのだろうなと感じた。学校の至るところに英語教育推進をうかがわせる工 夫がされていたし、授業の中でも韓国語禁止の授業があったり、理科は英語 で行われていたり、とても中学生のレベルとは思えなかった。生徒は礼儀正 しく、授業も熱心に受けていた。校長の「昔は日本に追いつこうと頑張ってい ましたが、今は世界を見ています。」という発言がとても心に残った。この学校 の先生方と行った懇談会で教員の現状も多少理解でき、日本も韓国も教員 の大変さは似通ったものなのだな、と親しみを覚えた。 訪問先④ 以前修学旅行の付き添いで来たことがあったが、その時はゆっくりする時 水原華城 間が全くなかったので、今回再び訪れられて良かった。万里の長城のような 城郭に囲まれ、砲台や軍事指揮所、門などが要所にあり、日本の城の造りと は異なっていたが、高い場所からの一望で、時の権力者の力を見た気がす る。案内をしてくださった方の雰囲気もこの場所を印象深いものにしてくれ た。ここでは韓国弓道などもできて本当にリフレッシュできた。 訪問先⑤ ホームビジット 6人家族の家庭を訪問した。一家の3人が医者で、家政婦さんがいたことか ら、かなり上流家庭なのだろうなと随所で感じた。釜山国際中学校に通うヨン ス君は留学経験もあったので、私が英語が話せればもっと盛り上がるひとと きだっただろうな、と残念だった。おじいさん、おばあさんが朝鮮政策を受け た人だったので、日本語がとても達者だったので、コミュニケーションには困 らなかったが、おばあさんは日本語をあまり話したくなさそうであった。そうい うところで日本の過去の過ちをふと考えさせられる瞬間があった。 3.最も有意義であった内容: 最も有意義であった内容は「教員との懇談会」である。 今回のプログラムでは、途中までは韓国の生徒の実情はよくわかったが、教員の実情はどのようなものかもう一 つイメージしきれなかった。しかし釜山国際中学校での懇談会でそれが充足されたように感じた。 ユネスコ会館での教員の評価制度の講義で、随分以前から評価制度があることを知り驚いた。評価の目的が変 化していることはあるが、プレッシャーはあるだろうなと感じていた。加えて、私教育の過熱により公教育の権威 が失墜していることで、教員に求められる責任も大きいだろうし、学校での自習時間による生徒の在校時間の長 さなど、いろいろ考えるにつけて韓国の教員は大変ではないのかな…と思っていた。 しかし懇談会では、教員の本音がちらっと垣間見えた気がする。教員の抱えている悩みは日本も韓国も同じだ - 97 - なということが感じ取れて何となくほっとした。 また気づいたこととしては、韓国の教員の方々はよくディベートをするなぁ、ということ。一つの質問に対して、そ れぞれが年齢の上下問わず意見を出し、折り合いがつくまで議論する姿は日本ではあまり見かけないので新鮮 だった。 4.成果: 「年代・性別問わず積極的にコミュニケーションをする。」これが最初に設定した課題である。この課題を達成 するための条件として、今回のプログラムは申し分ない環境であったように思う。普段暮らしている場所も違う、 教員であっても校種も違う、年齢も違う、違うところだらけの日本代表メンバーとの初対面。お互いを知ることもま まならぬうちの訪韓。後ろに下がる余地のないこの状況が、かえってよいプレッシャーになったのではないかと 今感じる。 第一に、日本には魅力的な大人がたくさん存在していることを知った。私が勤務する学校にも魅力ある大人 は多くいるが、日々の忙殺でなかなか経験豊富な先生方と話す機会に恵まれない。今回のプログラムで知り合 った先生方の柔軟性に驚いた。知った言葉はすぐ使ってみる、言葉が全て通じなくても物怖じせず、ともすれば どんどんペースに巻き込んでしまうかのような勢いに、私自身も楽しく巻き込まれていた気がする。 第二に、地元の人々との草の根交流の楽しさを改めて感じた。韓国の人の多くは日本の人の距離感より近い ように思う。自分が旅行に来ている外国の人と出会った時に、果たして「あなたは○○人?」と聞くだろうかと問う 場面に何度も出会った。ホテル前のコンビニの店員とのやりとり。「明日日本に帰るんだ。」と告げると、「必ずま た来てね。」と抱きしめられた。屋台での英語韓国語交じりのやりとり。食堂で隣り合わせたおじさんの一生懸命 な話。「ヨーロッパとかアメリカの人と顔かたちは全然違う。だけど韓国と日本の人の顔かたちは全然変わらな い。」果たして本当に正しく言葉が理解され、理解しているのかはわからない。しかし相手の顔や声色、そこに嫌 なものを感じなかった。それだけで十分ではないかと思う。 第三に、このプログラムで様々な韓国の事情を知れた。メディアで韓国の教育過熱の話は聞いていたが、実 際それを目の当たりにするとやはり驚かされた。もし韓国と日本が対立し競争して勝敗をつけなければならない なら、これでは負けるな…と正直思った。そんな思いを抱きながら、各学校を訪問してはため息をついていたの だが、新井副団長の「相違点ばかりを見るのではなく、共通点を見て協力していくことが大切ではないか。」とい う言葉が自分の中で思考を変えるきっかけとなったと思う。物的資源がないからこそ、人的資源を育てることが大 事なのだという考えも一致しているし、だからこそエリートにならねばと受験教育が過熱するという必ずしも正しい と言い切れない方向も一致している。このような視点に気付けたのも大きかった。 またホームビジットの話でもふれたが、お年寄りの方の中には今でも埋めがたい傷が残っていることを肌で感 じた。明るい一家団欒の中、その空気を決して壊さないようにしてはいるが、日本語を話すことを避けるようにし ているおばあさんの横に座っていると、とても複雑な思いでいっぱいになった。自分ではどうすることもできない が、謝るのもおかしいし…だけど謝りたいようなもどかしい気持ちだった。 これからどのような気持ちを持ちながら双方で交流していくべきだろうか。「人」と「人」がわだかまりなくコミュニ - 98 - ケーションできる「環境」、これが必要であると思う。しかしそれは一朝一夕で成り立つものではない。だからこそ、 ESDの概念が当然のように浸透している環境が作られねばならない。私たちは現場でそのような環境作りをい ろいろな活動の中で実践していくことが大切だと気付かされた。 5.今後の日韓交流について: 今後、ご所属の機関が韓国の学校・教員・児童生徒との教育交流を行う場合、どのような交流が考えられるか、 また、その実施の可能性についてお書きください。 本校はASP加盟校であるため、総合学習の時間で国際教育のプログラムがある。具体的には1年次には青年 海外協力隊の方を招き講義をしてもらう。2年次には留学生を招きグループ間で交流してもらう。留学生は中 国・韓国などアジア国籍の方が大半。現状では対生徒の交流になっている。教員間での交流などは今のところ 視野に入ってきていないが、今後ASPで検討してもらえたらと思う。 6.提案・助言: (1)期間 今回の時期は妥当。欲を言えばあと 2、3 日早く出発できれば、帰国してからの慌ただしさは軽減できると思う が…。長さについてもあれくらいが丁度いい。 (2)参加人数 1グループの人数は今回の 25 名はベターだと思う。2グループだと片方の方々とはほとんど交流できないが、 プログラム全体を見通せば、いろいろな学校を見ているということにはなるのでメリットはあるのかな…とも思う。 (3)内容 ・自由研修の日があって良かった。とても気分転換になった。 ・全体に移動時間が多かったが、ソウルの渋滞状況を考えると仕方ないとも思う。ただ、釜山への移動日は他の 交通機関を利用することは不可能だろうか?長時間の移動後の施設見学はせっかくの企画なのに、疲労が勝 ってしまい堪能しきれなかった。 ・AとBの学校の内容に偏りがあるので残念だった。実業系高校や特殊学校も見てみたかった。 ・学校だけでなく、様々な文化施設を訪れられたのは有意義だった。韓国をいろいろな視点で見られた気がす る。 ・今回は突然の事情もあったと思うが、事前情報が不確定な部分が多かったので、もう少し情報があればと思う。 羽衣学園高等学校 教諭 米田 謙三 1.総合所見: このプログラムを準備してくださった韓国ユネスコ国内委員会の方々、迎えてくださった先生方や児童・生徒、 保護者の方々そして日本のACCUのスタッフのみなさん、参加された教職員のみなさまに感謝させていただき ます。 事前に設定していた課題は、2つ。1つは施設面(ハード・ソフトを含む)具体的には、教室の環境や教材、世 - 99 - 界遺産の建築物や町並みからの学び。もう一つは人と人とのつながりからの学びおよびその拡大(ESDの考え や国内参加者とのつながりも含む)。 まず、1つ目の学びです。ソウル、慶州、釜山と訪問させていただき、中学校、高等学校の教育施設を訪問さ せていただく機会も多くあり、韓国の教育視察としては、大変有意義でした。韓国の学校の教育施設は日本の 学校と比べ大変充実していることを改めて感じました。各教室にはLANが来ていて大型の液晶パネル、学習教 材ソフトをどの教員もうまく活用していました。ICT教育の充実を感じました。日本でもこのような取り組みができ るように、韓国で実施しているような研修をさらに充実させる必要を感じました。また、学校訪問の合間にもソウ ル・プサン・キョンジュの世界遺産・ソウル特別観光として清渓川の訪問や「NANTA」などの公演鑑賞やウポ沼 の体験などの文化体験で韓国の素晴らしい文化に触れることもできました。ここでは改めて自国の文化をきちん と教えることの大切さを学びました。 もう1つは人と人とのネットワークの学びです。韓国の先生方は熱心に教育に取り組んでいることを感じました。 児童・生徒との交流を大切にされていることを強く感じました。あわせてそれぞれの学校で、児童・生徒と接する 機会が得られたことは、本当によい経験となりました。またそれぞれの学校の歓迎の仕方にももちろん感銘しまし た。質の高い思いやりのこころをあらためて感じました。以前も感じたのですがさらにパワーアップしているので はと思いました。日本の教員も日ごろから児童・生徒に思いやり・気配り・心遣いの気持ちを持たせたい、自分や 他者を大切にしてほしい、これから社会を担う学力をつけて欲しいという思いや願いを持っています。そのため にもお互いが協力して、教材開発やプロジェクト学習などをさらに進めていくことの必要性を感じました。ASPス クールのネットワークやESDというテーマでの学習はこの一助になるかと思いました。(このあたり韓国の先生も 同様に感じていると思いました。) 結局今回一番印象に残ったことは、結構日本と韓国は「同じ」部分がやはり多いということでした。教育システ ムや生活体系や文化に対する意識など。(もちろん違いもありました。それは後で記述します。)この同じ部分を いかにうまく協同しそして違う部分をいかにお互いに尊重し理解しあい教育者の立場として生徒・児童のために ともに活動できるその一助となるようなプログラムであったと思います。 今後は具体的な内容を考える時期が来ていることも認識しました。また今回のプログラムは勿論、教育現場の訪 問(懇談会での実情の相互理解)や教育政策(研修やESD含む)の理解、ホームビジットによる韓国の生徒や 保護者との直接の交流、そして世界遺産訪問などの文化体験など、本当に多岐にわたった学びができるすばら しいものであったことを補足として最後に付け加えます。 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先①学校 ・生徒から直接生活のことを聞けた。 清明高校 ・日本人教師がいて、熱心に日本語を学習していた。 ・給食を高校の先生と一緒に食べる機会をもてた。 ・評価についてよく取り組んでいた。(透明性) ・国際交流に力を入れていること。(モンゴルなど) ・韓国の教育事情についてのコメントは入れません。 訪問先②学校 ・生徒達の歓迎セレモニー(演奏や踊り)が素晴らしかった。 善隣中学校 ・保護者がチマチョゴリを着て迎えてくれたこと。 ・授業見学で生徒と一緒に話す機会をもてた。 ・給食を中学の先生と一緒に食べる機会をもてた。 - 100 - ・礼儀作法に力を入れていること。 ・カウンセリング部門を設置していること。 訪問先③学校 ・多くの学校の施設を見学できた。 果川中央高校 ・英語のネイティブの先生と韓国の英語教育事情について話せた。 ・保護者からもてなし方やPTAの状況についてもいろいろ聞けた。 ・海外研修の多様性。(モンゴル、カナダ、ヨーロッパなど) ・学校経営優秀高校のしくみを知れたこと。 訪問先④学校 ・国際社会をリードする生徒を育成することを実践している学校であった。 釜山国際中学校 ・海外姉妹校の数も多く、国際色豊かであった。 ・中学段階での複数言語の学習について知れた。 ・生徒達の元気さ、様々な施設を見学できた。 訪問先⑤文化遺跡 世界遺産の城郭都市の規模の大きさを体験できたことと、韓国の生活文化 水原華城 に触れることができた。また途中、弓矢体験をしたりチャングムの誓いの撮影 現場に行ったりと、楽しくまわることができた。ガイドさんのあたたかみもあり、 終始和やかな雰囲気で素晴らしい訪問ができた。 訪問先⑥文化遺跡 テンプルビジットは日本でも最近よく見受けられるがまた違うやり方もあり、参 梵魚寺 考になった。特に昼食の体験・作法が素晴らしく、食の大切さから礼儀などを 学んだ。住職の話もとても参考になった。また寺も歴史があり、ガイドさんが 丁寧に説明してくれたのでよく理解できた。 訪問先⑦文化遺跡 新羅時代のことで知らないことや、深く理解できていなかったことがきちんと 佛国寺・慶州博物館 知ることができた。(仏像のしくみなど)またソウルやプサンと違う文化を感じる ことができてとても参考になった。また今回もガイドさんの丁寧な解説・説明 があり特に博物館では本当にありがたかった。 訪問先⑧文化体験 最初から最後まで全くあきることなく熱中することができた。 ナンタ公演 プレゼン方法の手法を学べました。次から次へと観客をひきつけ盛り上げて いく方法は素晴らしかった。午後からの高校で少しナンタのことを教えてもら っていたので、より親しみを持つことができた。韓国の方のナンタに対する思 いも事前に知っておくとよいことだと思った。とにかく百聞は一見にしかず。 - 101 - 訪問先⑨文化体験 この沼のことは全く知らなかった。ただ、アメリカの学校と水問題で本校も交 牛浦沼 流学習をしているので、学習の進め方が参考になった。生態系の学習や触 って作って遊ぶことの大切さをきちんと伝えていることを感じた。空気もよく快 適な空間でした。 生活に密接する教育をしていることを生徒の作品からも知ることができたし、 実際に作品づくりをさせていただき、それを実感することができた。 訪問先⑩家庭訪問 アメリカに両親とお嬢さん(中2)1人で5年間滞在していたご家族でした。韓 国の教育事情に戸惑いを感じながらもそれに従わねばならない状況につい て、みなさんとじっくり話すことができました。お嬢さんは、大学はまたアメリカ に戻りたいとのことでした。リラックスを忘れないでお互いに頑張ろうねと、食 事のときも、一緒に海岸を散歩したときにも話ました。日本に来たい(ファッシ ョン。お菓子。漫画。音楽)とのことでした。日本のことを良く知っているとも感 じました。会話は3人とも英語が上手で英語を中心に話すことができたので、 言葉のギャップはありませんでした。 3.最も有意義であった内容: 「学校訪問」・・授業参観や教職員の方々との質問・意見交換を通して、韓国の教育に対する取組や教育事情 を詳しく知ることができ、日韓の教育に対する取組の違いや共通点を認識することができたと同時に、日本の教 職員の方の意見も聞き、これからの児童・生徒を教育するにあたってやはり自国を知り、自分を知り、相手を思 いやり、思いをきちんと伝える、世界規模で国際社会に対応できるような活動(ESDやユネスコスクールを含む) の大切さを再認識しました。学習システムや学習環境も結構同じものが多くお互いに共同できることがまだまだ あると感じました。ただ、もちろん思想など違う部分も多く知ることができました。 「ホームビジット」・・実際に訪問させていただいたのでまさに本物の生活に触れることができました。少しの時 間でしたがここでも「同じ」と「違い」を知ることができました。ここでも思いやりの心の育成、過熱教育の実態も知 ることができました。親の権威・尊厳があり、心の教育についてもよく考えていることも感じました。 今回は、上記の内容が有意義であったのですが、東京の韓国の教育事情の説明や韓国の国内委員会での 研修事例やASPの学校事例などがかなり役にたちました。 同じと違いをうまく認識してお互いに認めながらいろいろとできるということを実感できたことが最も有意義で ありました。 ただし、今後の日韓教育に関してこのままでよいわけではないので、やはりこれからどんな教育を実施してい くことが必要なのかを考えなければならない必然性を強く感じたことも成果のひとつとしたいと思います。(PISA 型学力なども参考にして) 4.成果: 「人と人とのネットワークを広げることができました」 学校訪問、ホームビジットを含めた教育関係者や保護者や生徒とのコミュニケーションをとり様々なことを話題 に意見交換ができました。(ディスカッションを含みます・・現地韓国の関係者や生徒とまた日本国内からの参加 者との議論) - 102 - 「学びあいの仕組みを学ぶことができた」 習得・活用・探求の流れの参考になる部分を習得しました。 「学校環境のシステムを知ることができました」 特にICT環境の仕組みやソフトについていろいろと教えていただきました。管理体制やソフト名などを教えてもら いました。 「文化教育の大切さについて再認識しました」 自国の文化の学習の必要性、伝統行事などに関する教育の必要性を感じました。 「ESDを学ぶ意欲・モチベーションの向上の方法を学びました」 韓国国内委員会の方々や韓国のASPの学校からその仕組みやまたそこから広がるESD教育への姿勢を学 ぶことができました。 「日本に対して積極的な姿勢をもっている生徒・児童が予想より多かった。」 日本文化や日本語を含めて、日本に関心を持ってくれいている生徒・児童が多かった。漫画やドラマ・音楽な ど、生活習慣の中にも、日本文化が入っていました。逆に、日本はまだまだ韓国に対する意識が少ないことも感 じました。 「韓国の都市部の発達を直接見ることができた」 ソウルの街がどんどん進化している現状、APECのプサンの会議に参加させていただいたときよりプサンもさら に発展しているということを自分の目で直接感じることができました。、 最後に自分で多くのことを見て、触れて、聞いて、食べて、感じて、学ぶことができました。 改めて自分の教育観ですが「自分なりの発想や創造性、柔軟な思考を働かせながら自己をみつめ切り開く力を もたせる」ことの必要性をみつめなおすことができました。 5.今後の日韓交流について: 個人的にアジアとの交流は特に日本にとって大切なことだと思っています。またその交流は、ただ単なる友達 の枠をこえた平和の文化の創造とESDを中心とした学びあいの交流であると考えています。実際に現在大阪の 3つの高校を中心にこのネットワークを広げているのですが、特に韓国については日本に一番近い国、またいろ いろな意味で一番ネットワークを密にしなければならないところであると考えています。このような教員間の交流 も大切であるし、生徒同士の交流も本当に必要であることをあらためて感じました。両国とも受験勉強に力を入 れている現状を、より良い方向にすすめていくためにも、このような交流が当たり前にできるような環境を作って いくことの必要性を感じました。 そのためにも国内でも文部科学省やACCUがうまくコーディネートしていただき、各地域の取り組みをうまく共 有することも大切であることも、あらためて感じました。学びあいは国内からでも始めていくことが必要です。韓国 のことを知る場が必要であると感じました。具体的には体験型ではない学びあい型のプロジェクトにおいて、IT を活用したりして実施していくことなどが考えられます。 6.提案・助言: (1)日程が今回個人的には参加しやすい日程で良かった。 (2)学校見学はたくさんあった方がいいのですが、教育内容が特化した学校に関しては、希望をうまく聞いて グループを作るとさらにいいのではと思った。また雑談の時間ということで本当に聞きたいことを聞ける時間を - 103 - 設けることもいいのではと感じた。最終日の懇談会はそういう意味でとても良かった。 (3)報告会のための時間をもう少し確保できれば良いのではと感じた。 (4)ホームビジットは本当に良かった。可能なら継続して欲しいと思う。 (5)今回の訪問者のネットワーク作り(ASPの学校のつながり)なども構築していけたらと思う。 (6)事前のオリエンテーションや事前情報はとても役に立った。継続して欲しい。 (7)現地での日本人教員の授業の意図がもう少しわかるようにした方がよいかと感じた。また、現地の学校が 何を求めているのかもポイントであると感じた。 (8)提案ではないのですが、このプログラムを通じてやはり何か必ずではないのですが、授業であるいは実践で こんな活動をしているなどということを共有できるようにしていただけたらと思います。 (教員が、生徒・児童に夢を持たせ、その夢に向かって本物の学び(学びあい)ができることの大切さを理解 させてくれる授業や活動) 神戸市立葺合高等学校 教諭 板倉 直人 1.総合所見: 初恋の相手は韓国人だった。 背の順で並ぶと前から2番目にいたその小さなかわいい子に小学校一年の僕は初めて出会った。 あの頃は土曜日の午後が特に好きだった。午前中で授業を終えた僕らは午後どう遊ぶかを友人らと決めて急 いで家に帰ったものだ。 しかし、あの子は家に帰らなかった。 「ねえ、なんでいつも土曜日帰らないの?」 「だって、私、授業があるから…」 ある教室の窓越しに見える文字は僕には読めなかった、そこでは土曜日の午後授業が行われる。 「あの子、日本人じゃないんだって」、そんな言葉を聞いた日のことはもうあまり覚えていない。 「あぁ、ふうん、じゃあ何かが違うんだね、きっと…」それだけだ。その時、子どもなりの寂しさはたぶん持ち合わせ ていたと思う。目の前の、ほんの近くの場所にさえもう決して届かない気がしていた。 こうして僕が初めて韓国を意識してから 25 年以上がすぎた。学校では韓国について人並みに学んできたつもり だ。なぜあの子があの場所にいたのかも理解できていたように思う。二十歳を越えた頃、韓国人と一年近く同居 もした。あの日感じた距離なんかもう何でもないような、大切にしたくもないようにさえ感じ始めていた。 だから、この研修の前には切実な思いを特に意識していなかった。韓国にはそれほど難しくなく歩み寄れるだろ う、向こうだってそれができるだろうと。仕事上のテーマを持ち合わせてそれをすり合わせれば、それで役目は十 分果たせるだろうと思っていた。その考えは実際に半分ほどは正しかったのだが。 .. ところがいつだって違和感があるのだ。それは、あの日廊下の景色がどこまでも遠のいていったあれに近い何か だ。なぜか人々と話をしている時にやたらとその思いが押し寄せてくる。それは学校で出会う人々だけではなく、 屋台の店主、隣の座席から話しかけてくる人々、どの全ての人からも強く感じる。その喧騒の中で少しずつ気づ - 104 - き始めた。みんな、近づこうと、分かり合おうと、必死で距離を乗り越えようとしていたのだ。初恋の子の本当の名 前すら知ることのできなかったほどのあの距離を、僕は忘れかけていたのだ。子どもの僕にはどうすることもでき なかったが、距離が人に与える不可思議な力を今の僕なら対処できる、それをこの研修は教えてくれた。 3年前の正月、あの子に偶然会った。実家近くの神社にお参りに来ていた彼女にたまたま出会ったのだ。昼に 飲んだせいもあってか、僕はうまく話しかけることができた。ただ、彼女からの答えは「覚えてないわ、あなたのこ とも。」 すっきりと晴れわたった橙色の冬の午後だった。 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先① 韓国の高校で英語を担当されている2人の先生と外国語教育の現況につい 歓迎レセプション てざっくばらんに話をする機会を持つことができた。両国がもつ問題点に数 多くの共通項があり、その認識の中で外国語教育における両国間での新た な構築が可能になるのではないかという話題になった。 また、お互いの言語で歌を贈りあえたことで、言葉だけでは伝えきれない思 いを共有できたと感じる。 訪問先② 人間味のある町だ。片言の韓国語で少し話をすれば、こちらが嬉しくなるほ ソウル・釜山市内 どの笑顔をいつだってみせてくれる。韓国人は日本人を嫌悪しているなんて 誰が言っていたのだろうかと感じるほどに。 だから人で溢れかえる町にもゆとりを覚える。まるでそこには時間が日本より 豊富に準備されているかのようだ。 そして多くの韓国人が日本語を話す事実に驚き、ついには恥ずかしくもな る。逆はどうだ、我々は韓国をどう思ってきたのだろうか。 訪問先③ 誤解を恐れずにいえば、情報機器類のハード面での充実ぶりに比べ、授業 中学・高校訪問 内容等の教師対生徒のソフト面での取り組みには疑問点を感じざるを得な い。 正直、授業に引き込もうとする教師側の工夫があまり感じられず、結果として 授業に向かう生徒たちは圧倒的に受身であり、所構わず寝る生徒の多さ、ま るで注意をしない教師達にはとてつもない違和感を覚えた。 美辞麗句に終始することなく、韓国教育実践における問題点を指摘すること も重要であると考える。 - 105 - 訪問先④ 授業見学の後に行われた懇談会では、現職の先生方の声を聞くことがで 釜山国際中学校 き、大変印象深いものであった。 韓国教員との懇談会 深夜まで続く韓国の学習熱、それに応対せざるを得ない教育現場の状況に ついて、例を挙げれば、当番制で教員は午前0時をまわっても職場を離れら れない、それに対する十分とはいえない手当、この教育社会状況そのものへ 否定的な考え等、忌憚のない多くの意見をうかがうことができた。 訪問先⑤ 食事作法に驚いたのは韓国通の先生方を含め間違いなく参加者全員であ 梵魚寺 ろう。たくあんで食器をぬぐい、器の中で回る薄く濁った水を見ていぶかしく 思う、「この洗い汁を飲めだと?」 そして飲む、全くひどい味だ。しかし気づかなくてはならない、これは洗い汁 ではないのだ、あくまでもいまだ飲み水でもあるということに。その事実にに わかにたどり着くことができないことこそが人々の贅沢、傲慢さを表している。 生活形態と宗教概念との相互作用に気づく機会でもあった。 3.最も有意義であった内容: ここで挙げたいのは学校訪問である。中学と高校それぞれ2つずつ訪問し、韓国で実践されている教育現状 を目の当たりにしたのは極めて刺戟的であった。差異というよりは乖離に近い状況もあり、目を疑う現実があった のも事実だ。社会的な教育事情、問題、それを取り巻く環境等について、しかし知識として知るだけであれば、 それは理解にたどり着くことなく、時にその浅い認識から誤解を生じてしまう。 教育現場に携わる者の声、そこには真の息づかいがある。知識ではなく理解に導くのに十分なほど素直で強く 誠実な思いを感じさせるものだ。そして私は正直に自分を投げかける。ここに交流があるのだ。事象に対して、 人は何を思うか、何をしてきたか、何をしていきたいか、これをお互いが共有しあうこと、これが理解であり、ようや く互いにおける深い認識になりえるのであろう。 4.成果: ベネッセ教育開発教育センターが発表した「東アジア高校英語教育GTEC調査 2006」によれば、英語コミュ ニケーション能力に関して日本と韓国の間に特徴的な差が認められるという結果がでている。リーディングとリス ニング能力において、韓国の生徒が大きく日本を上回っているのだ。 この原因を探るべく、4つの学校の英語教育を参観して英語科教員にも多くの質問を尋ねた。ここで浮かび上が ってきた韓国における英語学習現状は以下の通りである。 ・ 多くの子どもたちが幼少期(3~4歳)から個人的に英語教育を受けている。 ・ コミュニケーション能力育成に向けて、小学校3年生から英語教育が始まる。 ・ 小学生でも英語学習を目的とした英語圏への留学をするものが少なからずいる。 ・ 学校、特に高校における英語教育は主として修能試験(日本におけるセンター試験)を目指した内容にな っている。 ・ 国際間の競争において、韓国語の国際的地位に疑問を感じている。 この中で特に興味深いのは4番目に挙げた「修能試験対応の英語教育」である。実際に見学した英語の授業も - 106 - 積極的なコミュニケーション活動を実践しているというより、情報機器を用いて効率的に試験に対応したリーディ ング能力を高めようとする内容であった。 こうした現状をうかがい知れたことは極めて有益である。次欄で述べるように、今後の日韓関係におけるESD実 践の指針となりうるからだ。 5.今後の日韓交流について: ESDが環境教育と同一視されがちな現状において、外国語教育のESD内での位置づけを考えてみる。「人 が人と作り出す、他者と共存できる環境」を発展させる上で、特に国家・民族とした概念を超えた実践に於いて は、お互いが理解できる共通言語の存在価値が大きくなるだろう。ここにESDと外国語教育の連携を捉えること ができる。 建設的かつ具体的な一例として、日韓両国での外国語教育における協同開発が考えられる。コミュニケーシ ョン能力育成に主眼を置くと講じながら、学校における学習において入試対策に多くの時間を費やす現状、第 二外国語習得における母語の影響、また互いの母語の他にあまり例のない類似性、こうした観点をともに持つ 両国が連携し研究を重ねることで、より効果的な外国語教育の実践が可能になるであろう。 本校は昨年度までSELHiの指定を受け、英語教育の改革に向けた実験的取り組みを研究してきた。ここで 得たデータや問題点を韓国のASP校と共有、さらには韓国での実践をこちらに取り込み調査することで、新た な教授法の獲得につながると考える。 6.提案・助言: ・ 特色のある取り組みを実践している学校への訪問を希望する。 ・ 何を目的として各場所を訪問するのか事前に詳しく伝えてほしい。 ・ 学校内の施設見学時間が長い。授業参観や特殊活動の見学にもっと時間を使いたい。 ・ ソウル滞在の日程がもう少し欲しい。 ・ 会議や報告会では時間を節約するためにできるだけ同時通訳をお願いしたい。 ・ 日程的に忙しい部分もあるが、そんなにきつくはなかった。たくさんの内容を盛り込んでくれたことに感謝し たい。 海田町立海田東小学校 校長 金沢 緑 1.総合所見: 平成 12 年に、広島大学大学院教授(元文部省教科調査官)角屋重樹先生を団長とする調査団の一員として 中国を訪問し、日本と中国の理科教育向上のための交換プログラムに参加し、物理・化学優先の科学教育に驚 いた経験がある。その後、中国側からも日本への教育視察が行われ、自然科学系理化教育にシフトしてバラン スのとれた学習指導要領が生まれた。そのときに感じた改革のスピード感と、韓国を訪問して第7次教育計画の まっただ中にある現在の教育改革のスピード感が似通っていると感じた。国家プロジェクトとして位置付き、莫大 な予算が投入されていることに強い感銘を受けた。 また、平成 18 年にはタイのプーケットに6年生児童 10 名を引率して日本における環境教育の取り組み発表を - 107 - 英語で行わせた経験から、小学生であっても環境に関わる学びの手法は変わらず、多様な生物調査において は交流ポイントが多いことを実感しており、内容によっては小学生であっても英語での共同学習が可能であると 考えている。 今回の訪問における個人のテーマ (1)韓国の科学教育の教育課程と日本の教育課程との共通点と差異点。 (2)EEに英語教育を加えてESDへと発展していけるのではないかという仮説検証 (3)韓国教員のESDにおける人材育成 についてである。 印象に残った事例としては、韓国における平準化教育政策のもたらす学力向上の一端を家庭教育が補ってい るという点である。韓国における「学力」のとらえ方が日本おそれと似通っていることも印象に残ったが、社会に おいての受け取り方は全く逆で、PISA調査の上位国にランクされるという学力をつけるための教育が盛んであ る。 特に科学教育においては、立派な設備を持つ生物教室、物理教室、科学教室が整備されてはいるが実験器 具等は十分ではなく、むしろ習得した科学的事実を用いて論述する形式の授業中心のようであり、体験をもとに 考えさせる日本の教育との隔たりを感じた。しかし、教育全般にかける情熱と、時間数、教員の努力、生徒のひ たむきさ、かいま見える保護者の努力には感服した。 短時間の訪問で十分理解することはかなわなかったが、教育課程に幅があり、進学に必要な科目を重点的 に学ばせるよう編成されているようであった。生徒のニーズにあったようにも感じられるが、社会生活を営む上で 偏りが出る傾向はすでに日本においても同様の社会現象が見られ、共通の教育課題であるとの感を持った。日 本ではゆとり教育に批判が強いが、ゆとりの中に自主的に学ぶ生徒の姿が理想であろうと感じた。 印象に残っているのは、牛浦沼での自然観察である。あれだけの豊かな自然学習プログラムが各学校一度き りというのは残念である。繰り返し関わり、生態系や生物の多様性を学ぶ児童・生徒を育成できるだけの教育資 源であると感じた。教育のために更なる活用計画、創意工夫があるともっとよいと思われた。 また、各地での歴史を学ぶ機会に恵まれ、韓国の文化の一端に触れる機会を与えていただいたことは、教育 の背景を知る上で有効であった。そのような歴史的景勝地でも児童の遊ぶ姿はあまり見られなかったが、出会っ た児童は行儀がよく、明るく感じの良い子どもたちであった。 今回のプログラムは綿密に計画されており、豊かな体験をさせていただいた。真に私たちを思いやり、真心を 込めてもてなしていただいたことに深く感謝している。 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先① 初めて訪れた学校であったため、高校に給食があるという事実に驚かされ 清明高等学校 た。また、公立高校であるのに補充の授業や希望者への夜の授業、自習室 などか完備されておりここまで学習に取り組む体制を築き上げている様子に 日本との違いを感じた。なかでも日本語を学んだ生徒との懇談では、生徒の 語学力の高さに驚いた。応対してくれた生徒は、男子も女子も率直で検挙と いう印象を持った。日本への大学進学を果たしているなど教育効果が現れ ていた。また、レベル別学習でも男女別クラスであると聞きお国柄を感じた。 - 108 - 訪問先② 善隣中学校では校長先生が民族衣装で迎えてくださり、保護者の皆様も美 善隣中学校 しい衣装に身を包んでの格調高い接待を受けた。生徒は礼儀正しく、まじめ な態度で授業を受けており、基本的生活習慣や心の教育に重点を置いてい るという説明の通りであった。生徒が披露してくれた伝統楽器演奏や美しい 踊り、バンド演奏などは教育の幅の広さを感じさせた。2年生のクラスで中村 先生のけん玉と私の切り紙遊びの紹介の授業では、生徒たちは、興味津々 でじっと手元を見つめていた。日本の伝統文化を紹介でき、生徒と直にふれ あう体験は私にとっても新鮮で、国は違っても授業づくりにおいての根幹は 同じと感じることができた。韓国では科学優秀校という表彰に価値があるとい うこともわかった。国策として科学技術推進に力を注いでいるところは日本も 同じであるが、顕彰制度でのばしていくという姿勢は異なっている。 訪問先③ 学校経営優秀校であるという誇りと自信に満ちた学校であった。教員の 20 パ 果川中央高等学校 ーセントは校長の裁量で採用できることや年間数億の特別支援金を受けて いるという事情に驚いた。果川中央高校ではよりよい学校作りによりよい人材 をという理念の下、高いランクの先生はよい待遇が得られる制度であった。科 学発明コンクールや数学オリンピアードで優秀な成績を上げる生徒を輩出し ている学校らしい雰囲気にあふれていた。保護者は生徒の健康管理や安全 に心を砕き、学校を信頼して夜遅くまで行われる補習授業や自主学習の効 果を確信していた。そのような支えがあってか、授業参観させていただいた 教室や廊下を行き来する生徒からは日本語での挨拶や明るい声かけ、手を 振るなどの積極的なアプローチがあり、受験競争に疲れた様子が感じられな いところに学校経営が実効性のあるものだと理解し感心した。教師懇談会で は保護者代表も同席され、生徒の教育に大きな役割を担っているという自負 が感じられた。 訪問先④ 牛浦沼生態公園 牛浦沼は歴史的には河川の氾濫による水害が起こされる場所ではある が、ラムサール湿地保護条約の登録地で、韓国最大の湿地であることを鑑 みて地域の農業振興との折り合いをつけて現在も保護政策が続いている。 本校は川の学習を進めており、多様な生物の生態調査と指標生物による環 境調査を行っているので、この豊かな自然のどの部分をどのように教育に位 置づけているのかについて興味を持って見学した。 我が国では主に校区などの身近な自然に繰り返し関わり、調査や研究を 進めているが、韓国では年に1度すべての学校が牛浦沼を見学できる体制 づくりが行われており、配置されている指導員も教員経験のある人であった。 今後は牛浦沼の生態と校区の自然とを比較して調査するなどの活動を継続 的に行うことができたら、思い出や管理してくれている人に感謝するだけでな く、自分たちが行動する主体として育つことができるだろう。 訪問先⑤ 釜山国際中学校はこれまで訪問した学校の中でも最高レベルの学校である 釜山国際中学校 との印象を受けた。中学・高校が同一敷地内にあり寄宿舎制度のせいか、生 徒の自由度も高く、私服制服の生徒が入り交じって授業を受けていた。化学 の授業を参観したが、英語表記の分厚い科学の教科書で学んでいた。参観 - 109 - した授業は数学的な要素の強い授業で計算による数値変換であった。説明 は韓国語で行われていたが、問題文は英語で出され、生徒は理解している 様子で問題に取り組んでいた。論述の授業も参観したが、ネイティブの教師 が英語で行っており、レベルの高さは日本の高等学校並みであった。21 世 紀のリーダーを育てる教育を進めている学校で、平準化ではなく入試によっ て選抜された生徒が学んでいるトップクラスの学校であった。韓国の教育政 策が第6次から第7次に移り変わると同時に勉学に重点が置かれる体制にな ったとの説明を受けた。帰国子女枠もあり英語、日本語、中国語など多言語 を学び、まさに国際人としての教育がなされていた。しかし、勉強にだけ偏る のではなく、体育や音楽、美術などの学習にも力を入れており、充実したカリ キュラムの中でのびのびとなんでいるという印象であっ た。 3.最も有意義であった内容: 私はAグループに参加したが、訪問した学校数が4校と多かったことが、韓国の教育事情を理解する最も有 効なプログラムであった。中でも直接生徒と話しあった清明高等学校日本語の授業をさせていただいた善隣中 学校、日本を訪れた先生方との懇談会を持っていただいた釜山国際中学校の各学校のプログラムが有意義で あった。 教師の人材育成についても、釜山では年間 50 人もの先生を半年間、アメリカへ語学留学させて力量を高め、 TOEICの得点によって給与体系があがるなどの施策も実施されており、教師の力量アップに国を挙げて関わ っていることを伺うことができた。 4.成果: 私がテーマとして掲げた3点について述べる。 (1)韓国の科学教育の教育課程と日本の教育課程との共通点と差異点。 今回は小学校の訪問ができなかったので、私の勤務する小学校のと比較は難しいが、中学校・高校とも、公立 学校の平準化がなされていることが大きなちがいであった。韓国の公立学校においては平準化によって学力 差の大きな生徒を同時に受け入れるため、生徒指導上の問題点があるとのことであったが、「落ちこぼれゼロ政 策」によって補修を義務づけたり、さらに学びたい生徒には私教育と呼ばれる塾での学習より安価に自主学習 スペースを提供し、担任が指導するなどきめ細かい指導が行われていた。日本においてもきめ細やかな指導 は各学校で行われており、生徒の学力向上に資するところがある。 さらに教育課程においては、日本が今回の学習指導要領の改訂で学習時間の増加に踏み切ったこと、履 修科目を増やしたことが特徴としてあげられるが、韓国でも第7次教育改革において学力向上をうたい、多額の 財政措置を講じ手いることが上げられる。このように個別の施策については、財政措置を前面に出す韓国と、 現体制において教育現場での意識改革を前面に出す日本との間に隔たりはあるが、双方とも、未来を担う児 童生徒の育成には学校の資質向上と教員の力量アップが欠かせないとの共通認識があることは共通点である と感じ、今後とも機会があれば比較研究を行っていきたいと考えている。 - 110 - (2)EEに英語教育を加えてESDへと発展していけるのではないかという仮説の検証 韓国におけるEEは明確に見取ることはできなかったが、環境教育よりも国際理解教育に重点が置かれてお り、モンゴル、中国、日本、カナダの学校との姉妹校庭家など積極的に行われ ており、各国語の習得がなされ ており、ESDには語学教育は是非とも必要であるとの感を強めた。今後は韓国においても牛浦沼などを生かし た環境教育のプログラムが構築されるとより国際交流がしやすくなると思われる。 (3)韓国教員のESDにおける人材育成 (2)に述べた理由により、韓国では教員の語学力にも期待がされており、語学留学や待遇面での優遇措置 などが教師の力量アップに一役買っていた。 訪問したそれぞれの学校では、学力向上に一番力を注いでいるようであったが、訪問校での教員との懇談 では、教師の熱意、努力、勤務体制、服務管理などを通じて生徒の全人的な発達を促すためにはどのような指 導がよいかを話し合い、協力し合って指導している様子が伺え、日本と同じかそれ以上の人材育成がなされて いることがわかった。 今後、国際理解教育と環境教育を融合させ、更なる人材育成を行うには同じ課題を持つ他校との協力関係を 緊密にして地域協同などの学校経営が必要であろう。 5.今後の日韓交流について: 今後、ご所属の機関が韓国の学校・教員・児童生徒との教育交流を行う場合、どのような交流が考えられ るか、また、その実施の可能性についてお書きください。 (1)環境を通した取り組み交流 本校は広島県の南西部に位置する人口3万人程度の小さな町の小学校であるが、一級河川・瀬野川が学 校のすぐそばを流れているという、環境教育に適した立地条件に恵まれている。それらを生かし、環境教育 に重点を置いた総合的な学習の時間「水と緑のカリキュラム開発」を通して児童の論理的思考力を育てる研 究を推進している。全児童が、1年間を通じて川へ調査にいき、季節の変化と気温、水温、地温と天候とを関 連づけたり、その要因を探ったりしてデータをとり、地域の直面している環境問題(汚染、エネルギー、大気に 関する研究、温室効果、持続可能な開発など)を検討し解決の手段を考えるとともに、自分が果たすべき役 割を考える。地域が直面している汚染、エネルギー、水質の変化、生き物の分布と環境の変化との関係につ いては韓国も開発との関係で同様の課題があるので、協同して調査研究する取り組みが考えられる。 (2) 共通課題を共通言語で研究推進するプロジェクトチームを立ち上げる 調査の中で、持続可能な環境への取り組みについて、解決の手段を考え、児童相互や地域・保護者への 啓発を行うとともに、自分たちが学んだ科学的な考えが将来に果たす役割を考え、韓国と日本の共通言語で ある英語を用いて論述する。5・6年生においては、ASPnet を活用して、世界中の学校と環境データで交流 し、情報や体験を分かち合うことができる。機会があれば、地球規模の諸問題にコミットできるような地域の自 然川の調査活動をまとめ、持続発展可能な環境教育であることを発表し、交流を通じて新たなプロジェクトを 開発、発展させることが可能になるのではないか。日本では5年生から英語活動を行うよう指導要領に定めた ので、2003 年度からは小学校レベルでの交流も可能であろう。ASPnet に参加することによって、各校の地 域のデータが地球環境イメージの一助となったり、児童・生徒が多様なデータを活用して環境を多面的に考 - 111 - 察したり、同じような環境条件での他校の実践を共有化したりする中で環境についての興味・関心が一層高 まることが期待できる。これらのプロジェクトを学校間交流を盛んにする方向で進めることが望ましい。 6.提案・助言: ・次回は小学校の訪問を是非実現していただき、姉妹校提携を行いたい。 ・授業参観と、先生方による意見交流会は有効であったのでこれも継続プログラムとしてほしい。 ・訪問地が複数であったが、学校訪問はソウル中心であった。釜山近郊でも学校を見学させていただきたかっ た。 ・期間は夏休みの期間中が適当である、韓国の学校が始まっている8月末か、7月終わりが適当である。訪問 日程は半年くらい前に決まっていると参加しやすい。 文部科学省 初等中等教育局国際教育課 川窪 百合子 1.総合所見: 本プログラムに参加させていただき、日本及び韓国の多くの方々に出会えたことに感謝申し上げたい。私たち が充実した日々を過ごせたのは、本プログラムを企画・運営し、きめ細やかな心遣いをしてくだった韓国ユネスコ 委員会の皆様はじめ、財団法人アジア・ユネスコ文化センター(ACCU)の皆様、通訳をしてくださった皆様の お蔭だと思う。また、訪問した先々で韓国の皆様に温かく迎え入れていただいたことに、心からの感謝を申し上 げたい。 以下に、全体的な感想を述べる。 プログラム開始前、私は下記の2つの課題を設定した。 一つは、韓国の教育政策について、特に国際理解教育や「持続可能な開発のための教育」(以下、「ESD」と 表記)に関する韓国政府の施策や各学校の授業実践等について学ぶことで、それらの教育を受けた児童生徒 の感想や活動等があれば知りたいと考えた。二つ目は、韓国の文化、社会、人々への理解を深めるとともに、韓 国で出会う方に日本に親しみを持っていただけるよう努めることとした。 本プログラムを終えてみて、上記の点について様々な知見を与えていただいたと思う。例えば、ユネスコ韓国 委員会で受けた講義では、韓国の教育の現状やESDに関する韓国政府の施策、ユネスコ韓国委員会の事業 等について知ることができた。また、学校訪問では、ユネスコスクールとしての国際交流事業等の取組について 伺うことができた。印象に残っているのは、釜山国際中学校の教育方針及び教育活動である。釜山国際中学校 では、グローバルに活躍できる人材の育成を目指し、世界 26 カ国と姉妹校提携をするとともに、外国語教育や 芸術科目・体育、実体験からの学びに重点を置いている。受験競争の激しい韓国において知識詰め込み型の 教育に偏ることなく、国際交流や心身の育成を大切にしていらっしゃる点に感銘を受けた。 韓国の人々、社会、文化については、文化遺産の見学やホームビジットを通して理解を深めることができたと 思う。訪問した先々で韓国の文化について大変詳しく解説していただいたので、日本との共通点や相違点など を知ることができ、興味深かった。また、ホームビジットで訪問したお宅の方に大変温かく迎え入れていただき、 韓国の人々のもてなしの心に触れることができた。 本プログラムでは、韓国の教育の現状やESDに関する取組について学ぶとともに、より良い教育を目指してい - 112 - らっしゃる韓国及び日本の先生方のお話しを伺うことができた。本プログラムで得たものを、教育の充実に繋げ ていくとともに、日韓交流が更に発展していくよう協力させていただきたいと思う。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 韓国ユネスコ国内委員会 所 見 韓国における持続可能発展教育についての講義を受け、韓国においてE SDが学校に取り入れられた背景や実践事例、今後の課題に関する理解を 深めることができた。 昼食に有機栽培の素材で作られたお料理をいただいた後、屋上にある環 境に配慮した庭を見せていただいた。食物と環境、職場と環境など、環境に ついて考える素地が身近にあるということは、ESDの事業を実施・普及する 職員にとって、素晴らしい環境だと思う。 訪問先② 清明高等学校 一般の生徒は夜 10 時まで、トップクラスの生徒は深夜 12 時~2時まで学 校で自習をするとのことで、進路相談室に、トップクラスの生徒の顔写真と自 習時間がリストアップされていた。また、自習室の部屋の入口には「一流指 向」と書かれた紙が掲示されており、受験競争の過熱ぶりを痛感した。 生徒との懇談会には、日本語が得意な生徒が参加してくれた。日々の生 活について聞いたところ、家族で食事ができるのは朝食のみとのことで、 日々の家族団欒の時間が少なく、学校中心の生活を送っている様子だっ た。 訪問先③ 善隣中学校 保護者の方がチマチョゴリを着て出迎えてくださり、特別支援学級の生徒 による楽器演奏や、他の生徒による、韓国の伝統的な楽器演奏、舞踊、バン ド演奏等、学校全体で日韓教職員交流を盛り上げてくださった。生徒は夜 10 時まで自習をしているが、受験勉強だけでなく、音楽や舞踊で感性を育 み、柔道で礼儀作法を学ぶ等、心の育成にも配慮していた。また、教育目標 に「忍耐」とあるが、その意味は、「深く考えて、他人を配慮しながら行動する とき、そのために自分がつらい思いをするかもしれない。そのことに耐えるこ とだ」とのお話を校長先生から伺い、生徒に対する深い愛情を感じた。 訪問先④ 果川中央高等学校 教職員の方と保護者の方が出迎えてくださった。生徒は、学校で自習し、 夜 12 時に帰宅する生活を送っている。英語、数学はレベル別に教えてお り、学力の低い生徒には、市の支援で補習が行われているとのことだった。 日本語の授業では、漫画のコマをバラバラに切り離したものを用いて、コ マの順番を考える課題に取り組んでいた。漫画の内容は、外国人の生徒が 日本の学校に編入学する登校第一日目の様子が描かれていた。日本の漫 画文化や、日本の学校生活に触れながら、生徒が楽しんで日本語を学習で きる点が、非常に工夫されていると思った。 訪問先⑤ 釜山国際中学校 有名大学進学のための知識詰め込み型の教育ではなく、グローバルに活 躍できる人材の育成や各々の才能を伸ばすこと、実体験から学ぶことに重 点を置き、文化や体育も大事にしながら、国際性のあるバランスの良い人材 - 113 - 育成を行っていた。特筆すべき点は、日本、中国、モンゴル、メキシコ、コロ ンビア、ラオス等 26 カ国の学校と姉妹校提携を締結しており、各学年3分の 1は帰国生が在籍していること、ネイティブスピーカーによる英語の授業や、 英語と韓国語による理科の授業等、外国語教育に力を入れていることであ る。生徒も生き生きとしており、こちらの質問にはっきり明るく答えてくれて、 外国人に対して心を開く姿勢が育っているのが感じられた。 3.最も有意義であった内容: 韓国におけるESDの取組を知る上で最も有意義だった内容は、ユネスコ韓国委員会で伺った講義と学校訪 問だった。 講義では、韓国の教育政策について、特に「ESD」に関する韓国政府の施策やユネスコスクール(ASP)事業、 ユネスコスクールの具体的な取組等について学ぶことができた。 ユネスコ韓国委員会では、ユネスコスクールの関係者から成るASPnet を創設し、模範活動の表彰やASPnet 総会の開催、ASPnet 地域協議会の運営等を行い、関係者の連携を促していると伺った。 ESDを普及する上 で、このようなネットワークの構築は大変重要だと思う。 また、2005 年にASPに登録し、2008 年から本格的な活動を始めたブンサン女子高校では、従来の教育活動 を活かしながら、ESDを取り入れることに段階的に慣れていくようにしたと伺った。日本において、ユネスコ学校 を普及する上で、このような取組は参考になると思った。 学校訪問では、授業参観や教職員、保護者、生徒との交流・意見交換を通して、心の育成や実体験からの学 び、国際交流等を大切にしていらっしゃることを知り、受験競争が過熱している状況下でのユネスコスクールとし ての取組を理解することができた。 4.成果: 学校訪問では、トップクラスの生徒は深夜 12 時~2時まで勉強すると伺い、受験競争の厳しさを目の当たりに したが、ユネスコスクールとしての国際交流事業等の取組みについて伺い、私はESDの重要性を確信した。 受験勉強は、時に知識詰め込み型の学習に偏ることもあるが、一方、ESDは広い視野から考え行動する力を養 うものである。世界が今どのような状況にあるのか、社会がどのような問題を抱えているのかを知り、考えることに より、他者、地域、そして、世界に向けて目が開かれていくことが期待できる。また、ESDを学ぶことは、生徒にと って、自分の行動や生き方を見直し、自分が何のために勉強するのか、その根本を見直す契機になるかもしれ ない。知識を習得し、広い視野から考えることの両方が大切だと思うが、受験競争が熾烈な状況にあるからこそ、 ESDで広い視野を養うことが重要だと思う。 8月 20 日のソン・ジョンヒ教授の講義で、ESDは、ジェンダー、人権、環境、教育、平和、経済を含む包括的な 概念だというお話しがあったが、地域に重点を置きながら総合的に考えてグローバルな問題の解決に貢献でき る人材を育成する上で、ESDは大きな役割を果たすものだと思う。 5.今後の日韓交流について: 当省の職員が本プログラムに引き続き参加させていただくことや、韓国の教職員の方が来日された時に交流 - 114 - すること等が考えられ、実現可能性は高いと思う。 6.提案・助言: 素晴らしいプログラムを用意していただいた韓国委員会の皆様、ACCUの皆様に心からの感謝を申し上げた い。 改善点について強いて申し上げるならば、韓国の教職員だけでなく児童生徒とESDについて話をする時間 があると良いと思った。また、世界遺産や、牛浦沼、国立慶州博物館の視察をし、韓国の文化・環境・歴史につ いて実体験から学んだが、この体験を視察しただけで終わりにしてしまうのでなく、実体験からの学びをESDに どのように繋げていくか、参加者間で話し合う時間があると良いと思った。 - 115 - Bグループ 調布市立布田小学校 校長 寺木 秀一 1.総合所見: (1) 今回の韓国訪問についての課題 1985 年に、文部省(当時)の教科調査官奥井智久先生を団長とする調査団(私的な構成)の一員として韓国を 訪問した。その際、韓国における低学年の統合教科の制度およびその実際と課題について具体的に授業観察を もとに見聞することができた。そこで得た知見は、私自身も作成協力者として参加をした生活科の創出を含めた新 しい学習指導要領の策定に少なからず寄与したものであると考える。 このような経験をもとに私は次のような課題を設定した。 ①韓国の小・中・高等学校におけるESDの構想とその実現のための施策のあり方を実際の授業、教材をもとに探 究をする ②韓国における環境教育、とくに自然保護体験活動の先進事例に学ぶ ③校長としてESDを推進する学校経営のための方策、経営方針について直接韓国の校長かお伺いする (2)全体的な感想 教育全体、特に中等教育において「学力伸張」を主眼とした教育指導、学校経営がなされていることが伺えた。 我が国においても近い将来あるいはもうすでにその兆しがあるのかもしれない。いわゆる名門校を訪れたために その印象がさらに強かった。 国が重点化して進めているという「放課後学校プログラム」は我が国の遊びや交流を中心とした「放課後子どもプ ラン」とは異なり、学習支援を主体としたものであった。夏季休業中の特殊学校(特別支援学校)での同クラブの授 業参観でもそのようなことを伺うことができた。 ASPnet としての活動は、国際交流事業が際だって盛んである印象をうけた。その背景として高校生、中学生の 語学力、特に英語活用能力があることがわかった。また高校での参観した高校では選択科目として日本語が設定 されていたことも印象的なことであった。 (3)印象に残った具体的案交流、意見交換 牛浦沼での自然観察に参加をして、部分的エネルギーはあるが、日本の生態系とこの牛浦沼の生態系の類似 点や相違点、および湿原の保護活動について、私の日本での自然保護活動と関連させて自然解説(インタープリ テーション)を通して交流ができたことは一番の成果であった。 訪問校である南星女子高等学校の金 龍武校長先生様のお宅へホームビジットをさせていただいて、奥様とも ども歓迎をいただいたことは特に印象に残っている。校長職として、自分の学校について絶大な自信と誇りをもっ て語られる姿に、私自身我が身を振り返り、新たな決意をもった。 - 116 - 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① サンマウル高等学校 所 見 山をあらわす韓国の古来のことばがなくなり中国語のサンを用いたということ である。山村の「代案学校」は韓国の中等教育の両極の片極をになう学校で ある。校長先生の「木と石と土でできた」と言われる校舎は平屋建てで教室ご との別棟、農業科を専門としているわけではないのに、本格的な農業を教育 活動の取り入れ食料は自給している。まさにESDを地でいく学校であった。 一方、太陽光発電、地熱の利用、最新スペックのコンピュータなどハイテクの 設備もよく田園の風景にとけ込んでいた。 訪問先② ソウル精進学校 精進とは我が国では「こつこつとまじめに努力をする」という意味があると冒 頭の挨拶で申し上げた。公立の特殊学校として小学部から高等部まで在校 していた。夏季休業中であったが卒業生の継続指導としての音楽指導の成 果を見せていただいた。障害のある生徒の特異な才能を引き出すという特別 支援教育の方向性が伺えた。重度、重複といわれる障害のある生徒の姿が みられなかったこと、我が国のような通常学級での障害のある児童・生徒の統 合教育について詳しく聞く機会がなかったことは心残りである。 訪問先③ 教室で授業を観察した後、グループに別れて5名の高校生(女子クラス、ひ 漢陽大学校師範大学 とりは日本語を勉強中でコミニュニケーターの役割を果たす)と懇談をした。 附属高等学校 日本の教師は2名。将来何になりたいかという質問には教師、エンジニアなど があった。日本側へは高校生も受験勉強は大変かという質問も。後半は日本 のアイドルグループでは「嵐」の某(名前は失念)が好きだというような話。「東 方神起」は知っているというのは日本側の教師。階上の「読書室」は全校生徒 の中の選ばれた3割が午後 10 時まで自習することができる学習ブース。主要 教科の教員が質問を受けるために待機する別室がある。激しい受験競争の なかにあって屈託のない生徒の笑顔が印象的であった。 訪問先④ 牛浦沼生態公園 牛浦沼はラムサール湿地保護条約の登録地で、韓国最大の湿地である。 事前に韓国の環境教育について環境教育学会で交流したこともあり、私自 身もボランティアで湿地のインタープリター(自然解説員)をしていることもあ り、特に興味・関心をもって参加をした。我が国の中緯度の長野県や福島県 などと極めて似た生態系で、維管束植物に限ればおそらく 90%の同一種が 発見できると推測できる。オニバスとその上に(これは日本では希な状態)に アオサギとダイサギが多くみられた。日本ではすに絶滅したトキが何年に一 度は飛来するという。この点では動物の生物多様性ではかなり高いということ ができる。 - 117 - 訪問先⑤ どこの学校でもそうであったが、星南女子高等学校も鮮やかな色彩の歓迎の 南星女子高等学校 横断幕が用意されていた。歓迎の言葉が日本語で書かれた幕が壇上にある 講堂で訪問団を始め韓国の小中高等学校の教師。韓国UNESCO委員会 関係者席が用意されてあった 日本語を独学で学んだとい女子高生の国際交流事業の紹介、テコンドーの 演技、音楽の発表などで歓迎をうけた。 その後の英語、日本語、数学の授業はどの生徒もまじめな学習意欲に燃え た授業態度であった。 最後に地域の小学校の教員との意見交流会。3名の先生が学校の概要等 について説明されたが、いずれも小学校低学年からの英語教育について熱 心に取り組んでいることが報告された。またACCPについてはあらかじめテ ーマを定めた交流することが必要であるとうい意見が日韓双方から出され た。 3.最も有意義であった内容: プレゼンテーションや講演は言語の隔たりがあり、意志の疎通は必ずしも十分ではなかったが、それに比べて 直接、生徒、教員と接し、語り合う機会があったことはきわめて有意義であった。 全体では難しい内容でも、なぜか少人数であると韓国語、日本語、そして英語の入り交じった会話でコミュニケ ーションが成立した。それは学校を訪問して設定された時間の時ばかりでなく懇親会や食事の場面などでも同様 であった。 牛浦沼では「自然」という「言語」でのインタープリテーションが行われ、自然環境保護、生物多様性の保護など について共通の認識を、もつことができた。つづいて参加をした。韓国伝統の工芸品のクラフト体験も同様であ る。 4.成果: (1)環境教育(EE)と持続可能発展教育(ESD)については、従来はEE=ESDとほぼ同義にとらえられていたが、 韓国では環境と経済(Economy)と社会(Society)を統合的にアプローチすることによりESDとして教育があるとい う立場である。 社会は複合的に絡まった問題がありその解決を図るESD教育をすすめることにより社会を変化させる力や社会を 転換させる力を身に付けさせることができるということである。 当初訪問する予定であった統営市は小学校2校、中学校が国の指定を受けてESD教育における先行実践を行 っている。報告事例では子どもは「地球村の構成員としての責任をもち」地域的な問題をとして国際社会に貢献す ることができるようにする。 知識結果中心の教育から価値中心の授業への転換を図る必要がある。このことはユネスコ事務総長の李三悦 (Samuel LEE)氏が「豊かな人間性を培う教育」への転換が必要であるとい言われたことと軌を一にするものであ る。 (2)韓国おける環境教育は小学校 30.6%、中学校 11.8%。高等学校 30.6%が科目として採用されているという。 - 118 - 担当者はこの低い採用率を以下のような原因としている。 ・ 学校校長たちの必要感が低い ・ 教師も必要性を感じていない ・ 社会的な認識が低い ・ 講師(指導者)が不足している ・ 環境教育の専門教師の採用が少ない 我が国での環境教育の現状もほぼ同様である。またESD教育のなかで自然環境教育がしめる比率も多くはない ものと思われる。ただし7日に訪れた牛浦沼生態公園では、小学生が定期的に訪れ牛浦沼の生態観察ばかりで なく、自然環境保護、生物多様性などについて学習するプログラムが用意されていた。そのテキストは 450 ページ にもなる大作である。一部いただいてきたので翻訳を行い、活用する予定である。 (3)本校ユネスコスクールとして認定を受けた後は、どのような活動をすることになるのでは、という期待と不安があ り、韓国におけるESDの実態を実際に見学したり、関係者の方からお伺いをして校長としての学校経営の立場か ら方策、経営方針について直接韓国の校長にお伺いすることとした。 韓国におけるESDはASPnet(我が国ではユネスコスクール)の一環として実施されているが、その奥は特に高等 学校ではCCAP(国際理解教育)として実施されていることが多い。 そこで校長のイニシアティブが求められている。海外での生徒同士の交流にも校長が自ら引率をしている実例 も多くあった。また生徒の語学や特技などについて全面的に信頼をして、賞賛する姿勢も学ぶべきことであった。 ESDに限ったことでではないが、校長が自ら率先することが大切であることを学んだ。 当然管理職としての相当の語学力、特に英語は必要である。 5.今後の日韓交流について: 本校は都市近郊の中規模の小学校(児童数 460 人)である。これまで外国の教師をまとまって受け入れた経験 はないが、本校の特色ある教育活動と関連していくつかの可能性は見いだすことができる (1)本校が進めているESD、とりわけエネルギー教育の授業公開 (2)学校に隣接した広い水田での米作りを通して、「田んぼの学校」を開催する(児童、教員ともに参加) (3)日韓ワールドカップでキャンプ地として利用されたスタジアム(味の素スタジアム)が近いので、その賛助を得 てサッカー教室を開催(PTA会長がサッカー協会事務局長) (4)課外活動で実施している琴と尺八の演奏と韓国の児童、教職員との共演 (5)韓国でも今後推進される「放課後子どもプラン」の実態について公開 6.提案・助言: ・ 今回は事情により実現できなかったことであるが、小学校の訪問と児童・教員との交流は是非とも実現してい ただきたい。その際あらかじめテーマを決め準備を行い教師同士で意見交換をする時間を多く確保するよう にしたい。 ・ 国の施策などについて、教育部の担当者から直接レクチャーをいただくこともできればよい。 ・ 訪問地は大都市のソウルとプサンだけであったが、地方都市にも訪れる機会があればよかった。(観光等では あまり訪れる機会は少ない) - 119 - ・ 仏教体験(梵魚寺)を我が国でも同様の、あるいはそれ以上の体験ができると思われる。仏国寺、についても 同じことであるが、建立物については歴史的価値はそう高くはないと思われるので、他の施設に代替えできる ものならしたほうが良いと思われる。 渋谷区立鳩森小学校 教諭 前河 英臣 1.総合所見: 私が、韓国政府日本教職員招聘プログラム参加前に個人として設定した課題は、韓国の学校教育について実 際に見学したり、韓国の教職員の方々・児童生徒と交流することで学んだりする、ということでした。具体的には、 小学校での英語教育の現況や、韓国の情報教育の現況。そして、メディア等でも話題になっている、社会的に関 心が高まっている進学熱について知りたいと思っていました。 実際に本プログラムでは、残念ながら韓国の小学校を訪問することはできませんでしたが、バラエティに富んだ スケジュールで、高等学校や特殊学校、代案学校と幅広く教育現場を見学させて頂き、実際の教育の様子を見 学したり、韓国の先生方から直接お話を伺う機会があったりと多くのことを学ぶことができました。 各訪問先で感じたことは、どの学校や施設においても歓迎の掲示や横断幕、先生方、生徒さん達の出迎えな ど、本当に心温まる歓迎をうけたことです。また、どこの学校においても、積極的にコミュニケーションを取ろうとし てくださり、なかには日本語で話しかけてくださった方もいたことは本当にうれしかったです。訪問させて頂いた学 校の先生方の中には、日本政府韓国教職員招聘プログラムで日本にいらした先生や、プライベートで日本にいら っしゃった経験がある方もたくさんいらっしゃったので、会話も弾みやすかったように思います。 プログラムの内容で、個人的に大変勉強になったのは、まずESDやASPについての講義です。私は本プログ ラムに参加する以前はESDやASPについて、ほとんど知識がありませんでした。しかし、講義を受け、具体的な 実践事例等を挙げて説明してくださったので、わかりやすく学ぶことができました。そして、この講義を受けたこと で、私自身が日本に帰ってからも、継続してESDやASPについては学び続けていかなければならないと強く感じ ることができました。この講義のなかで、パワーポイントを日本語で作成してくださったのは大変ありがたかったで す。 また、プログラムには、学校訪問意外に牛浦沼の探訪や梵魚寺や仏国寺などの文化遺産の見学、文化公演観 覧「ナンタ」と、様々な韓国文化に触れることができ、日本と韓国の共通点や相違点(韓国の独自の文化)につい て知るとともに、両国の歴史に関しても実際に触れることで学ぶことがたくさんありました。 今回のプログラムに参加させて頂いたことをきっかけに、日本でも韓国での経験を様々な機会で生かしていくと ともに、もっと日本の歴史や韓国という国について深く学んでいきたいと思うようになりました。このプログラムの為 にご尽力頂いた全ての方々に感謝申し上げたいと思います。 - 120 - 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① DMZ安保・平和見学 所 見 日本史、世界史の中での朝鮮戦争として、ある程度知識としてはもっていま したが、DMZを見学し、いろいろな説明を受けることで、朝鮮戦争(南北戦 争)は、韓国・北朝鮮の人々の中では昔の出来事ではなく、今現在も続いて いる、ということを強く感じることができました。また、韓国と北朝鮮の人々の南 北統一に対するつよい希望についても感じることができました。 訪問先② サンマウル高等学校訪問 韓国最初の学校訪問は、サンマウル高等学校でした。ここは、ユネスコ協同 学校であり、韓国では代案学校と呼ばれていて、体験的な学習(農業を中心 とした)を重視している学校でした。この学校では、生徒さんと交流する時間 を設けて頂き、韓国の学生の声を直接聞くことができたのがとても有意義でし た。 また、代案学校というのは、日本にも似たような学校がありますが、受験戦 争の厳しい韓国の中で、別の選択肢として国や自治体の支援の基に運営さ れているのだと感じました。 訪問先③ 牛浦沼という、韓国最大の湿原地帯の探訪では、特別に保護された自然の 牛浦沼の探訪 様子をゆっくりと観察することができました。私は、日本でも湿原は訪れたこと 伝統工芸体験 がなかったので、様々な植物や蓮についての説明を受け、勉強になりまし た。日本でもよく見かける植物もたくさんあり、改めて日本と韓国が近い国で あるのだと感じました。 伝統工芸体験では、日本の鳥居の基になったと言われる竹や材木を使っ た工芸体験ができ、とても有意義でした。 訪問先④ 私が訪問させて頂いたのは、小学校の先生のお姉さんのお宅でした。日本 ホームビジット 語もお上手な方だったので、韓国の小学校の様子についてたくさんのことを (KIM SUN HEE 先生宅) お話することができました。特に、韓国での小学校英語教育についての話は とても興味深いものでした。 お宅では、大変心温まる歓迎をうけ、本当に楽しい時間を過ごすことができ ました。お姉さんの子供二人と、剣玉や折り紙などの遊びを通して、触れ合 えたことも本当に良い思い出になりました。 訪問先⑤ 佛国寺 ユネスコ世界遺産に登録されているお寺ということで、訪問前から楽しみに していました。説明では、とても長い歴史のあるお寺ですが、秀吉の朝鮮出 兵によって消失した歴史的背景についても学ぶことができました。 お寺の建築様式は梵魚寺の見学と同様で、日本の仏閣の様子と同じように 感じましたが、説明にあったように、曲線と直線の違いなど、とても興味深く見 学することができました。 - 121 - 3.最も有意義であった内容: たくさんのプログラムの中で、一番有意義というのは決めがたいのですが、やはり、ホームビジットが印象に強く 残っています。韓国の家庭を訪問させて頂き、心温まる歓迎とアットホームな環境の中で、韓国の人たちの生活に ついて、韓国の教育事情について、日本という国に対してどのような印象をもっているかなど、たくさんの内容につ いて意見交換することができました。特に、韓国の小学校を訪問する機会がなかったので、小学校の先生をされ ている方のお宅を訪問させて頂き、小学校教育についてたくさんの話を伺うことができたことは、とてもありがたか ったです。そして、そのお宅のお子さん二人が小学生だったこともあり、剣玉、折り紙などの日本の遊びを通してコ ミュニケーションを取ることができ、楽しい時間を過ごすことができました。 同様に、南星女子高等学校の日韓教師懇談会でも、韓国の小学校の先生3名が来て下さり、お勤めされてい る学校の様子や、韓国の小学校で行われている海外交流の様子などについてお話を伺うことができ、勉強になり ました。 4.成果: 私は、今回のプログラムに参加して、ESDやASPについて初めて深く知る事ができました。今回のプログラム はきっかけだと受け止め、今後の研修等を通じて私自身がより深く勉強していきたいと思いました。また、自分の 学校においても今後ESDを進めていくためには何が必要なのか、どのような教育をすることができるのか、考える きっかけになりました。そして、このプログラムに参加することで、韓国と日本の歴史について改めて学ぶと共に、 両国の文化がとても似ていると感じることができました。もちろん、お互いの文化には違いもありますが、距離だけ でなく文化においても近い国なのだと思うことは、国際交流においてとても大切なことだと思いました。 5.今後の日韓交流について: 私の学校は、今年1月に韓国の教職員の方々がいらっしゃいましたが、今回のプログラムで私自身が感じたよう に、精一杯の歓迎をして迎えると共に、授業の参観する機会をつくったり、日本と韓国の教員同士で懇談する機 会を多くとったり、韓国の先生方と子どもたちが触れ合う機会を設けるなど、自分が韓国の学校を訪問したときに 有意義だったことを、同じように感じてもらえるようにしたいと思います。 6.提案・助言: 評価会のグループ報告でもありましたが、今回のプログラムの緻密なスケジューリングや、心温まる歓迎、そして、 ほぼ全日にわたり同時通訳などで丁寧に解説してくださった通訳の方、ガイドの方に感謝の気持ちでいっぱいで す。 今後のプログラムについての提案としては、やはりスケジュールの中で、各学校での質疑応答以外に、韓国の 先生方や生徒さんとコミュニケーションを取る機会がもっとたくさんあれば良いと思いました。 - 122 - 青山学院中等部 養護教諭 深石 純子 1.総合所見: 私は、養護教諭なので、韓国の生徒の心の問題などについて、実際に養護教諭の先生や保健室を訪問さ せて頂くことで、学べればと思っていた。 ホームビジットや保健室を訪問した時に、直接養護教諭の先生にお会いし、短い時間だったが、お話を伺う ことができ、よかったと思う。その中で、養護教諭の役割や生徒が抱える問題などは、日韓で大きな差はないこと がわかった。 見学した DMZ や焚魚寺、仏国寺なども強く印象に残っている。学校訪問などの合間に、こういう見学箇所が 入っていたプログラムの作り方はよかった。 韓国の文化にふれ、人にふれという 10 日間だった。ぜひ、多くの先生方にこのプログラムを体験して頂きた いと思った。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 韓国ユネスコ国内委員会 訪問先② 山マウル高等学校 所 見 私教育の過熱により、韓国教員の危機感が増したというお話を伺いなが ら、韓国教員の仕事に対する誇りを感じた。 日本以上の受験戦争の中で、自給自足、地球に優しい自然の生活を理 念に、このような学校を作った校長先生以下、先生方に頭の下がる思いがし た。 日本の私立学校でも、昨今の教育熱の高まりの中で受験教育に重点をお くのか、人格教育に重点をおくのか、選択に迫られている。私たちはこれから もっと、自分の学校の理念を明確にし、それを貫くことが大切だと思った。 山マウルの先生が「ここは教師も生徒も家族のようだ」と言っていたが、生 徒さんも大変のびのびしていて、日本の生徒もうらやましく思うだろうなあと思 った。 訪問先③ 果川中央高等学校 私たち日本の教員は、夜中まで勉強している生徒の心と体の健康を心配 し、そのような質問をしたが、PTA 会長さんは「学生が勉強するのは当たり 前」や「勉強するための健康」と応じられた。 - 123 - 訪問先④ 非武装地帯(DMZ) 北朝鮮が韓国の大統領府をねらって掘ったと言われる第 3 トン ネルも北朝鮮との境界線まで行って見ることができた。ここでは、 多くの韓国の訓練兵とすれ違った。私たち日本人の団体だとわか ると「コンニチワ」等と片言の日本語で挨拶をしてくれた。軍服等着 ていると物々しいが、一人一人は普通の青年である。20 歳以上の 青年が 2 年間兵役につく、これがこの国の現実なのだと思った。 韓国最北端の駅、トラ山駅を見学した。この駅の改札前には「ここは最後の 駅ではなく、北へ向かう最初の駅です」という大きな看板が掲げられている。 今は終わりの駅だが、いつか南北統一がなされた時、この線路の向こうまで 列車が行き来する日が来るのだろう。 訪問先⑤ 焚魚寺 焚魚寺の高僧から、お話を伺った。昔、弟子が師匠のお坊さんに「この悩 み、苦しみから解放されるにはどうしたらいいのでしょう?」と教えを請うたこと がある。「それなら、その悩み、苦しみを私の目の前に見せなさい」と言われ て絶句する弟子に、師はこう説いたという。「探しても見つからないものは、も ともとないもの。苦しみはもともと存在しないのにあると思って生きている。つ まり、人の苦しみ、悩みは思いこみから始まる」この思い込みを少しでも変え る(視点を変える)するために、宗教があるのかもしれないと思った。 プログラムもちょうど、半分を過ぎた所だったので、このようなお 坊さんのお話に心が洗われた。 私がこのお坊さんのお話で、最も感動したのは「心の汚れのない 人は、常に幸せで、生きる喜びを知っている」という言葉である。「汚れた心の 人は、外からのゆさぶりによってまた汚れる。これは、(水が入った器に例え て)汚れが沈殿して上が澄んだとしても、その器を外からゆさぶると、また沈ん でいた汚れが浮かび上がってくることと同じだ」と、説いている。幸せが心の 汚れのない所からくるということを知った。 こちらのお寺で、仏像の前で額を床につけて何度もお参りをして いる女の人たちを見た。日本の「お百度参り」のように、百回行なう と願いが叶うらしい。ガイドさんの話だと「あれは皆、受験生を持つ オモニ(母)が、子どものためにやっている。受験生本人は勉強で 忙しいから」とのこと。一心不乱にお参りをするオモニの姿を見て、 ここでも教育熱の高さを感じた。 - 124 - 3.最も有意義であった内容: ホームビジットはもちろんのこと、学校訪問による生徒や教員との交流である。ホームビジットで韓国の 実際のご家庭を、学校訪問で学校現場を見せて頂けたのは、大変有意義だったと思う。 ホームビジットでお伺いしたお宅では、日本での滞在経験があり、日本の現在放映中のドラマをインタ ーネットで見ていた。日本でも韓国ドラマを見ることができるが、こういう所からも、韓国と日本は「本当に 近い国」なのだとあらためて思った。ハルモニ(おばあさん)と先生が作って下さった料理を皆で囲み、昔 の日本の家庭を思い出した。 もっと広い意味でいったら、全国各地の先生方と交流できたことも、有意義であった。釜山の空港で別 れ際に「このプログラムに参加していなければ絶対、会えなかったね」等と話していたが、やはり人間対人 間の、顔の見える交流にかなうものはないと思った。 国際交流という言葉を聞くと、何か特別なことをしなければいけないように思いがちだが、「相手を理解 しようとする心」が最高にして最良のおもてなしなのかもしれないと思った。これは、外国の方に対してだ けでなく、日本人同士にも言えることで、人と人とがつながることの大切さを教えられた。 4.成果: 最初に設定した生徒の心の問題については、養護教諭の先生に直接お話を伺うことができた。韓国 ユネスコ国内委員会による韓国の教育現状を聞き、「勉強するのは学生として当たり前」という保護者の 方のお話を聞き、日本も少し前はこれに近い状態だったのではないかと思った。 5.今後の日韓交流について: 韓国ユネスコ国内委員会が行なった講義の中で、昨年9月に東アジア地域の歴史和解に向けた国際 フォーラムを韓国が発起国として行なったという話があり、大変感銘を受けた。と同時に、きっと韓国の人 は様々な問題などについて他国と話したいのではないかと思った。 今回の研修中、フリーの日に韓国の友人と会って、ソウルの街中で食事をした時だった。彼女が「韓国人 は食事中、よくしゃべるでしょ?」というので、店を見渡してみると、女の子同士の友人がハングルはよくわ からないが、なにやら延々と話していた。食事の後、街中を歩いていると、何かスローガンを掲げた団体 に出会った。彼女の話だと、こういうことは韓国ではよくあることらしい。 たとえ、意見が違っても、とにかくお互い語り合うこと、こういうことを韓国の人は求めているのではない かと思った。どんなこともお互い納得がいくまで話し合う、そういう姿勢を私たち日本人は求められている のかもしれないと思った。訪問した学校の歓迎ぶりに、これから迎える側としてどうしたら喜んで頂けるか、 教えられたような気がした。 6.提案・助言: 韓国ユネスコ国内委員会の皆様、日本ユネスコの皆様、通訳、ガイドの方々、ご自身もお疲れの所、心 配りして頂き、大変有意義な研修となった。 1つ1つの学校をもう少し時間をかけてゆっくり見たかった という気持ちもあります。 - 125 - 筑波大学附属中学校 教諭 山口 泰宏 1.総合所見: 密度の高い充実したプログラムであった。本プログラムに参加するにあたっては、なによりも韓国の学 校訪問とそこでの生徒たちとの交流に期待していた。日本の中学生・高校生・大学生の学力低下や意欲 低下が問題視される昨今、隣国の教育環境を見聞し、そこでの教師・生徒の取り組みからあらためて自 分たちがおかれている環境を見直してみたいと考えていた。そういう点から見ても、さまざまな校種、さま ざまな環境の学校を見学できて、ありがたかった。 また、直前の竹島の問題などもあって、日韓両国の主催側のご苦労に心より感謝いたします 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 山マウル高等学校 所 見 環境・施設の恵まれていることに関して、驚きを禁じ得なかった。こうし た理念にもとづく教育は日本国内にも見られないことはないが、それら の多くは小規模な私学やフリースクールなどであって、決して財政的に も、社会的な認知の度合いでも主流たり得るものではない。 後日見聞することになる、進学を強く意識した教育とは違った一面を 見ることができて良かった。生徒たちの涼やかな表情が印象的であっ た。 訪問先② 果川中央高等学校 ここでも学校財政の豊かさを感じた。いくつかの学校を見学する中で、 「現校長先生の着任から何年間でこれこれの改革を行いました」というよ うな紹介を受けたが、そうした環境整備や教育目標の設定に関して、学 校長の権限の強さが印象的であった。0時から 24 時までの開放施設の あり方には、日本との意識の違いに驚いた。 訪問先③ 南星女子高等学校 どの学校へおじゃましても、「(韓国側からの)学校概要の説明」-「授 業参観」-「(日本側からの)質疑と応答」と、とかく交流の形態が一方通 行になりがちであったが、こちらを訪問した際にはおたがいに共通のテ ーマで意見交換が期待できそうで、楽しみにしていた。自分は日本の学 校教育における「受験対応の授業」から「新しい学力観」への転換の歴 史を概略告げて韓国側の先生方の意見や感想を求めた。もう少し踏み 込んで議論したいテーマだった。もう少し時間が欲しかったというのが率 直な感想である。 訪問先④ 善隣中学校 生徒の明るく、素直な表情が大変に印象的であった。また保護者によ る受け入れ態勢なども行き届いていて、ホスピタリティ一杯の気持ちの 良い訪問であった。 - 126 - 訪問先⑤ DMZ訪問 高速道路で1時間、漢江でつながったソウルのすぐ先に、1つの民族 が敵対する前線があることが、実感できた。毎日の地理の授業で、地図 帳を用いて見ていた「線」ではあったが、現地の意外なほどののどかさ に休戦合意以来 50 年以上の年月が過ぎていることをあらためて理解し た。この境界線が消えてなくなる日はそう遠くないはずだと感じた。 3.最も有意義であった内容: 自分の勤務校はユネスコの活動をしているわけではないし、環境教育等に特に力を入れているわけで もないので、今回の研修において何に重きをおいて見聞すべきかと迷うところも少なからずあった。しかし、 なんと言っても韓国の生徒たちと会えたことがすばらしい経験となった。そしてまた、過熱気味とも思える 受験制度の実態と、韓国の先生方一人一人の教育への思いを知ることができたことも良い経験であっ た。 ある韓国側の先生が「個人的には今の受験制度のあり方には疑問を感じているが、家庭の要望に応 えないわけにはいかない」という意味のことを述べていたのが印象的であった。そこには、生徒にとっての 幸せを真剣に考えないではいられないという、日本にも韓国にも共通する教師の特性が現れていた。 同じ意味では、最終日、空港までのバスの中で韓国ユネスコのSeoさんが、われわれを指して「Nature Teacher」(聞き取り間違っていたら申し訳ありません)と評してくれたことが大変うれしかった。どこの国に も共通する教師魂を分かり合えたことが一番の成果であった。 4.成果: 日本においては「新しい学力観」の議論以降、「教授」と「学習」との関係を真剣に見直し、改善してき たと信じている。教員が「教授」することと生徒が「学習」することとの間には、無条件の接続性があるわけ ではない。すなわち、「教授」することは「学習」成立の必要十分条件ではありえない。いわゆる学力低下 といった議論はそうした取り組みを根本から見落としていて、客観性に欠けるものと思っている。にもかか わらず、情勢は圧倒的に学力低下論に傾いている。 今、韓国の公教育の実態を知るに至って、あらためて日本の教育が抱えている強みと弱みとがよく見 えてきた。韓国の社会がこの先の数年、十数年の間にどの様に変化していくのか注意深く見て、日本の 教育実践の合わせ鏡としていきたい。 5.今後の日韓交流について: 自分の勤務校は東京都内の交通至便なところに位置しており、いつでもどのような形でも交流を実施 することができる。大学附属の中・高等学校という立場にあることから、単に一人一人の教員の教育実践 にとどまらず、日本全国の中等教育の概観を説明できる人材もいる。まだ、個人的な意見で、職場の理 解が得られているわけではないが、本校の取り組みをご覧いただくだけでなく、韓国側の教員と教育全 般にわたる意見交換ができるといい。 - 127 - 6. 提案・助言: 今回はソウルとプサンの2都市にゆっくりと滞在してじっくりと研修が行われたが、このスタイルはとても 良かったと思う。もちろん韓国国内のさまざまな地域を見てみたかった気持ちもあるが、この日数の中で 充実したプログラムを考えるならば、移動時間を少なくした今回のスタイルが最適と思う。 ソウルの自由行動日に安重根義士記念館を見学し、プサンではわがままを言って一人別行動をとっ て、近代史資料館を見学した。日本との関わりの上で避けて通れない時代のことを、きちんと学ぶ時間が あっても良かったのでは。 東京都立忍岡高等学校 主幹教諭 石橋 和子 1.総合所見: 今回ユネスコの国際交流事業で、教育交流訪問団の一員として韓国を訪問することができたことは、こ の上ない喜びであり、私の教員生活にとって大きな成果となり、自分自身を高めることができた。事前設定 の自己の目標達成以外にも大きなものが収穫ができた。 私は韓国が人づくりを国策として重視している現状を認識した。それは教育科学部が推進する「頭脳韓国 21」ばかりでなく、若者の全員が徴兵制度を経験し、規則正しい生活、自身のことは自分でできる人間づく りを実施していることに由来するものであると考えている。また韓国の教育制度、内容をはじめ教育の現状 について、書物や講話、インターネットから得た情報以上の貴重なものを交流体験により習得した。 事前オリエンテーションでの駐日本国大韓民国 李相鎮一等書記官の講演、また日本ユネスコ委員会 から提供された文部科学省の「諸外国の教育事情」は近年の韓国の教育事情を理解するのに十分なもの でした。教育科学部の提唱している「頭脳韓国 21」は人を育てることが国造りの基本であり国策として重点 が置かれている。そのため教育予算の教育費への配分割合が高く、教員人数、施設設備の充実等教育 環境を整備している。 韓国ユネスコ委員会が企画したプログラムは緻密で、発見、感動の連続でした。10 日間のうち、ASPは 韓国ではユネスコ協同学校というが、校種の異なる4校を訪問し、学校教育目標や教育理念を始め、特色 ある教育内容の説明、施設設備の見学、高校生及び教員との交流、ESD持続可能な開発のための教育 の視察、ホームビジット、ユネスコ世界遺産見学にナンタ公演が織り交ぜてあり、楽しく多くのものを吸収し た充実の日々でした。 山マウル高等学校、南星女子高等学校、ホームビジットでは日本から持参した伝統的衣装である浴衣 の着付けを披露し、文化交流に役立った。大好評で、モデルに女生徒の応募者が多く、浴衣着装体験は 23 名と全員の希望を叶えることができなかったのが残念なことでした。ホームビジットでは孫の浴衣姿を見 てから、祖母の笑顔が見られ心が開かれたようであり、人と人との触れあい体験の意義を再認識した。 韓国の食文化研究では梵魚寺で、禅宗精進料理の食事作法を体験し、大広間で全員が一堂に会して の昼食会では、食事供給当番を行いながら、緊張しつつも貴重な体験ができました。プルコギ、焼き肉、キ ムチ、韓定食におけるミッパチャンの数々、本場の韓国料理の刺激的な味や家族的な食事の雰囲気では 交流が深まり、忘れられないものとなった。 日韓国際教育交流の企画運営に携わった文部科学省、日本ユネスコ委員会、大韓民国政府教育科学 - 128 - 部、韓国ユネスコ委員会の関係者のご尽力があってこそ、実現した今回の教育交流でした。昨年の2倍の 人数を受け入れてくださったことは両国の友好関係が深まっていることの証明であり、今後も多くの日本の 教育関係者が訪問参加できることを願っている。 今回の教育交流での研修成果は本校教育へはもちろん、東京都の家庭科教育、今後の様々な場面で その成果を発揮し、教育を通じた両国の友好関係の絆を深めるために努めることで、感謝の意を尽くして いきたいと考えている。大変お世話になり心から感謝している。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 山マウル高等学校 所 見 山里に寄宿舎をもち、地熱や太陽熱でエネルギーを供給する仕組 みが整い、農業を中心とした生活体験をするなかで、生徒 62 名は生 きる意義を実感できるカリキュラムで自然との共生教育実践高校の 視察である。健康、食物生産、環境について学び、生態系連鎖の中 での人間の存在価値を知らせる学校である。 文化交流の一環として日本から持参した浴衣の着付けを和服の話 と共に紹介したところ、女子生徒たちは日本の服飾文化に大いに興 味を示した。浴衣の着付けは3名の生徒に行ったが、友人の浴衣姿 に歓声が上がり、驚嘆や憧憬を素直に表現し、輝いた目をしていたの が印象的であった。希望者全員に着付けができなかったのが、心残り であった。写真撮影では自然な笑顔が見られ、通訳を通しての会話 ではあったが、着物、京都などの日本語にはすばやい反応が見られ た。言葉は充分に通じなくても感動する心、共感する心のふれあいは でき、お互いに忘れない時となった。 教員及び高校生との交流では、高校3年男子、高校1年女子と、 寄宿舎生活、学校生活、学習、友人関係、趣味などを話し、韓国高 校生気質の一端を知り、日本の高校生との比較ができた。 訪問先② ソウル精進特殊学校 こちらは 1000 坪の広大な敷地に、幼稚部、小学校、中学校、高校、 専攻コースまで完備した総合学校で、各種訓練室の施設設備が充分 に整備され恵まれた学校である。生活基礎訓練、社会適応訓練、潜在 能力開発、基礎体力訓練、心理行動適応訓練、肥満解消のためのトレ ーニング室は充実していた。音楽教育に重点をおき、卒業生による 楽器演奏は見事なものであった。国及び地方公共団体による教育に かける予算は多額ではないかと、想像された。朴校長が「ふるさと」 を日本語で独唱すると日本訪問団は「故郷の春」をハングル語で返歌 して、親善が深まった。 - 129 - 訪問先③ 22 時までの放課後学校のための自習室が 70 名収容できる状態で 漢陽大学校師範大学附属 整備されていたこと、生徒は自主的に学習を行い、質問があるときに 高等学校 先生に教えを乞う体制があること、3 ヶ月に 1 度試験があり成績が低 いと他の生徒と入れ替わるので、競争心をあおりながら、学習効果を 高める実践をしていた。 家庭科クラスの高校 2 年女子との対話では日本語が通じるのがう れしい様子で絶え間なくいろいろな話をした。パソコンを使った国 語の授業参観でしたが、生徒はとても明るく、一斉に美声で音読して いたのは見事でした。私語をしてはいませんでしたが、異なる画面を 見て学習している生徒もいたようでした。生徒の興味をひく授業展 開の難しさはどの国でも同じであると実感した。 訪問先④ 南星女子高等学校 釜山では進学率の高い高校として有名であり、ほとんどが大学へ 進学し、ソウル、釜山大学などトップレベル大学への進学は約 100 名 で、卒業生の 3~4割である。校門のところから講堂まで、生徒達が 一列に並んで出迎えてくだったのには一同恐縮し、感動しました。規 律指導についての質問には特に何もしていないが、規律が守れる生 徒が入学してくると言う話でした。 教育費への国及び地方公共団体からの支援は多く、公立私立を問 わず援助があるようであった。教員評価制度に対する質問には日本 の現状を説明した。導入については検討中であるということでした。 祝う会では学校長挨拶、生徒による学校概要説明、ユネスコ協同学校 としてのASPネット活動、海外交流システムの説明の他、生徒達に よる出し物があり、テコンドウ、ハンドベル、合唱、韓国琴の演技演 奏は見事なものでした。 日本語クラスで、着物の説明と浴衣の着付け実演はこちらの学校 でも大好評であった。モデルの希望者には7,8 名の挙手があり、廊 下には先生方も大勢見学者がいるなかでの日本文化紹介でした。 3.最も有意義であった内容: 韓国の教育現況を理解できたこと。 高等学校を訪問して、教育内容、教育環境をじっくり視察及び交流できたこと。 家庭を訪問し、家庭生活、家庭料理などの見聞でき、家族との親睦が図れたこと。 牛浦沼の散策でESD教育の一端が理解できたこと。 4.成果: 私が本プログラムで目標にしていたことは - 130 - (1)韓国の教育制度及び教育の現況について見聞し、体験し、理解を深めること (2)韓国の教員及び生徒と対話を通じて交流すること (3)韓国の伝統的料理を食し、理解を深めること (4)韓国の家庭を訪問し、家庭生活や家族と交流し、親睦を深めること、であった。 韓国の教育制度及び教育の現況については、事前に日本ユネスコ委員会から送られていた文部科学 省の「諸外国の教育事情」や書物での情報、さらに事前のオリエンテーションでの駐日本国大韓民国大使 館 李一等書記官の講義で、その概要について学ぶことができた。また第2日目の韓国ユネスコ委員会主 催の講義によりさらに理解が深まった上での学校教育の現状視察となった。 韓国は教育科学部が「頭脳韓国 21」を進め、教育に力を入れている。日本と同じ6・3・3制で、大学へ の進学希望は高い。塾よりも学校の施設設備を活用した「放課後学校」によって、受験勉強をし、レベルの 高い大学への進学をめざしている。 韓国の学校では教員評価の導入について検討している高校がある。韓国の高校生は日本の高校生と 似ているところがあり、民族による違いはない。 韓国の食文化研究では伝統的料理のうち、韓国定食、焼肉、プルコギ、ミッパチャンの本場の味を食す る機会となり、韓国料理に対する理解と興味が深まった。 ホームビジットでは祖母、両親、娘の4人家族の家庭で父親が南星女子高等学校の教員であったが、温 かい家族の様子が伝わってきた。日本文化紹介、日本の学校紹介を行なった。 5.今後の日韓の交流について: 日本に訪問団が来ることがあれば積極的に検討する。 6.提案・助言: 今回は昨年よりも2倍の人数の受け入れがあったそうですが、来年度はさらに多い人数を受け入れてく ださるように要望したい。 実施時期は8月下旬であれば、夏季休業中であるため職場における他の教員への迷惑が少なくてすむ ので、この時期がのぞましく、期間は今回と同様に 10 日くらいが交流を深めるのに適当であると考えてい る。 秋田県立養護学校天王みどり学園 教諭 田中 紀和 1.総合所見: 本プログラムへの参加にあたり、以下の目標を設定しました。 ・ 自分の教育実践及び所属校の取り組みに新たなヒントを得る。 ・ 日本人としての自分を見つめ、一人の人間として思考や行動の幅を広げる。 ・ 参加者及び韓国で出会った方々との交流を深め、事業終了後にもつながるような関係作りをする。 1月に韓国の先生方が学校訪問にいらした縁で今回のプログラムに参加させていただきました。恥ずか しながらASPnet、ESDのいずれの知識も乏しい状態でしたが、団長の小澤紀美子先生はじめ日本から - 131 - 参加された先生方、文部科学省、ACCUの方々、韓国ユネスコ委員会の皆さんはじめ、スタッフの皆さん に支えられ、有意義な 10 日間になりましたことをまず感謝申し上げます。 本プログラムを終えて自分が一番変わったと感じるのは、韓国や韓国の皆さんが大変身近な存在になっ たことです。歓迎レセプションで自分の学校を訪問された先生方とお会いした時には、一緒に校舎の写真 を見たり、秋田の食べ物などについて話したりしました。高校生との交流やホームビジットでは、学校の様 子や勉強のこと以外に両国のテレビドラマについても話題となり、お互いによく知っていることが分かりまし た。先生方との懇談では、ADHDの生徒への対応などが話題になりました。会話の内容が日本にいるとき とほとんど変わらなかったこともあり、二国間の距離を感じることは全くありませんでした。 韓国では、教育予算が一般会計予算の約2割を占め、「教育格差の解消」に向けた施策に有効に活用 されていることが印象に残りました。また、教師の授業の質の向上に特化した教員評価制度を知り、「公教 育に対する信頼回復」に向けた真摯な取り組みに感銘を受けました。統営RCEのバックアップによる統営 市の研究学校のESDの取り組みでは、狭い教室内の授業だけでなく、学校を拠点として地域に働きかけ る関係作りができており、社会作りが最終目的であるという理念が今後韓国内に広がっていく可能性を感じ ました。地域へ働きかけることで学校や児童生徒が社会参加できるように自分も努めていきたいと思いまし た。 視察させていただいた4校では、いずれの学校でも温かく迎えていただきました。山マウル高のエネルギ ー自立・生態建築、ソウル精進学校の素晴らしい施設設備を活かした得意適正教育強化、漢陽大学校師 範大付属高、南星女子高のASPnet活動等、特色ある取り組みを学ぶことができました。反面、いずれも 大都会の学校であるため、秋田のような地方都市の学校についても見聞を広げたかったという思いも残り ました。 その他のプログラムでは、物や過去を大切にしつつ未来へ向かう韓国に触れることができました。DMZ では、第3トンネルを見つけた過去、両国の皆さんが働く開城工業団地、「北側に行く最初の駅」である未 来に向かう都羅山駅。佛国寺では、壬辰倭乱の火事の跡、庇の長さや仏をのぞく石塔などの創建期の緻 密な建築の跡の保存。国立慶州博物館では、新羅千年の名文化財の保存と復元。牛浦沼の保存と新し い生態系の構築。梵魚寺では水の一滴、米の一粒も無駄にしない食事の作法。など本プログラムの全て が、過去の文化財や自然を現在に生かす他未来に残す、人と文化、人と人、人と地球のつながりを重視 するESDの理解につながる内容だったと感じています。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 山マウル高等学校 所 見 読書教育、特技適正教育、生態農業教育及び環境教育などエリート教育 とは一線を画した特色ある学校運営がなされていました。生徒と直接触れ 合う中で、農業を通じての豊かな人間性の育みや自分がこの学校への進 学を選択した事への高い自尊心が感じとることができました。 - 132 - 訪問先② ソウル精進学校 卒業生の管弦楽演奏を見て、生徒たちの無限な可能性に気付かされまし た。得意適性教育、放課後学校を始めとした多様な教育活動の成果である と共に、朗らかで親しみのある校長先生を始め、先生方の人間性によるもの と感じました。夏季休業中であるため、通常の授業の様子を見ることができ なかったのは残念でしたが、運動機能訓練室を始めとした施設設備が有効 に活用されていることは、卒業生の様子から十分に感じとることができまし た。 訪問先③ 学生と懇談する機会に恵まれました。始めははにかみながらも日本語でし 漢陽大学校師範大学附属 っかりと受け答えをすることができる様子に感銘を受けるとともに、漢陽模擬 高等学校 UN会議を始めとしたASPnet活動による他文化理解の積み重ねを感じと ることができました。成績上位者のみ利用できる読書室など、明確な競争原 理が働いているにも関わらず、生徒の純粋でまっすぐに育っているのもその 成果と思われます。大変なもてなしを受けましたが、先生方との懇談会に十 分な時間が取れず残念でした。 訪問先④ 南星女子高等学校 「(難しい問題があったとしても)日韓は近い国だから前に進むしかない」 「愛されたいと生まれてきた」。校長先生の話や生徒の重唱の中に印象に残 る言葉が多々ありました。日本語の授業では、ビデオや着物の着付けを見 る際の目がとても輝いており、その自然な姿に対馬や下関との交流の深まり が感じられました。懇談会に出席してくださった先生方が、その後の昼食に 同席してくださり、ADHDについて日本と同じように悩んでいるとの話を伺う ことができたことも貴重な体験となりました。 訪問先⑤ 訪問先のSHIN先生は、中学校の養護教諭。家族で以前神戸に居住した ホームビジット ことがあり、旦那さん、高校生の息子さん、中学生の娘さんも日本語でコミュ SHIN SOOK HWA 氏 ニケーションをとることができました。家には、お父様、お母様も一緒に住ん でおられた。滞在中は韓国の家庭料理でもてなして頂き、日本での生活の こと、韓国の不登校生のこと、ソウルと釜山の物価の違いなどを伺うことがで き、日本との共通点の多さに驚かされました。 3.最も有意義であった内容: 本プログラムの全てがいずれも得難い経験でしたが、あえて選ぶとすれば、ホームビジット、学校訪問で の生徒との懇談、歓迎レセプションや昼食を交えての韓国の先生方との懇談です。自分自身、韓国語、英 語とも十分でないために日本語での会話となりましたが、何よりも直接の交流ができたことを嬉しく思いまし た。韓国の皆さんがインターネットを通じて日本のドラマや情報などをリアルタイムで取り入れていることを 知り、二国間に時間的な距離もほとんどないことを実感しました。 4.成果: ソウル精進学校卒業生の管弦楽演奏を拝見し、自校の生徒にもこれまで取り組んでない分野に無限の - 133 - 可能性があるのではないかと考えさせられました。 また、日本出発前は、韓国の異文化に触れ、日本人としての自分を見つめたいと考えていましたが、日本 と生態系が同一であり、街の景色もほとんど変わらないことに驚きました。韓国の教員や生徒と直接交流を する機会に恵まれ、その中で、むしろ日本との共通点を多く見つけることができたような気がします。 さらに、日本全国の先生方との交流を深めることができました。小中高の先生方との出会いはもちろんの こと、特別支援学校における作業学習や他校の取り組みなど身近なヒントをいただくこともできました。この 大きな財産を今後も活かしていきたいと思います。 5.今後の日韓交流について: 1月に韓国の先生方をお迎えした時には、数名ずつクラスに分かれて授業に参加して頂き、自分の学 年では、一緒に双六を楽しみました。お迎えする前には、韓国語のあいさつを覚えたり、カード作りなどで 普段見慣れないハングル文字に親しんだりするなど有意義な時間を持つことができました。 生徒同士の交流については、インターネットを通じての交流は可能かと思われますが、特別支援学校の性 格上、より直接的な交流が臨まれます。今後、学年の事情によっては、修学旅行で韓国を訪問することも 可能だと思われます。韓国側の修学旅行の受け入れについては学校種問わず大歓迎です。 また、教師間では、障害児の教育についてお互いに情報を共有し共同で研究することも可能かもしれま せん。ただしそのためには、日本側の英語力を伸ばさなければならないことを今回の訪韓で痛感しました。 6.提案・助言: 予定された全てのプログラムが、滞りなく行われたことは素晴らしいことでしたが、特に学校訪問では後 半の懇談会に十分な時間を取れなくなることが多かったように思います。先生方とは、その後の食事会な どで御一緒して話をすることができましたが、残念な感じがしました。 ソウル、釜山とも大変グレードの高いホテルに滞在させて頂きました。自分は快適に過ごした後に申し上 げづらいところですが、ホテルのグレードを下げることで、その分の予算を参加人数増に生かすことはでき ないでしょうか。また、事前オリエンテーションのプレゼン資料は事前にお送り頂き、各自学習した上で、東 京発、大阪発に分かれ出発し、ソウルで合流してからオリエンテーションをすることで時間もより有効に使え るかもしれません。 また、自分自身、1月に韓国の先生方が来校したことで本プログラムに参加させていただきましたがAS Pnet 活動に普段から親しんでいる学校と違い、それまでこのプログラムのことは存じ上げませんでした。こ の素晴らしいプログラムの経験を他の先生方に伝えていくことが、参加させて頂いた者の役割と思っていま す。 秋田県立横手清陵学院高等学校 研修・国際部主任 糯田 昭博 1. 総合所見: 今回のプログラムの参加に当たっては、韓国は教育に熱心な国であるということがメディアでは取り上 - 134 - げられているので、その実情をしっかり見てみたいと考えていた。また、英語教育のシステムや、日本語 の外国語としての重要さなどを知りたいと思っていた。また、語学教員として、韓国語にできるだけ親しみ たいとも考えていた。 韓国の教育に関しては、学校視察で多くのことを学ばせていただき、今回設定した課題の多くをクリア できたように思われる。すべての学校において、生徒の学校生活、学力の充実のために、学校、教師が 熱心に取り組んでいる姿を目の当たりにすることができた。学力伸長のための設備や学校で遅くまで学 習する生徒、またその後も塾に通うという熱の入れようは、やはり過熱気味と呼ばざるを得ないと感じた。 日本語の授業も選択科目として履修されており、その位置づけも定着しているようであった。韓国語に関 しては、事前に文字の成り立ちなどは勉強したが、十分とは言えず、残念な思いをする場面が多かった。 印象に残った交流としては、高校生との交流で本当に素朴な質問を交換し合った時間があった。現代 の韓国の高校生がどんなことに興味を持っているのか、日本についてどんな情報を知りたがっているの かがほんの少しではあるが、聞く機会を持てたことは有意義であったと思う。また、ホームビジットで英語 や絵を描きながら苦労してコミュニケーションをとり合ったことも、よい思い出である。また、サンマウル高 校のようなスタイルの学校を訪問し、このようなゆったりとした環境やカリキュラムを準備した設置者の理念 にすばらしさを感じることができ、印象に残った。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① サンマウル高等学校 所 見 1学年 20 名、山間の静かな環境でゆったりと学校生活を送っている姿 に接し、教師と生徒の一体感を感じた。伝統的な建物の外観とは違っ て、きちんとした設備が備わっていることに、韓国の教育にかける熱意を 感じることができた。環境と共生すること、さらには人と共生することを教 育目標に掲げていたが、まさにそれを実現しようと進んでいる学校であ った。 訪問先② 特殊学校の訪問は初めてであったが、生徒の明るさにまず感銘を受け ソウル精進学校 た。また、広い敷地と充実した設備が生徒、教師の活動を支えていると 感じた。課外活動で練習を積んだ管弦楽の演奏を披露していただいた が、先生方の指導のたまものと感心した。 授業では、調理実習や、ジムでの体育づくり、管弦楽の練習などを見 せてもらったが、保護者の方も参加して、よりよい学校作りをしようとする 姿が印象的だった。 - 135 - 訪問先③ 授業参観では歴史の授業を参観したが、本グループの先生による講 漢陽大学校師範大学 義を熱心に聞いていた姿に好感が持てた。その後、生徒と交流する時 附属高等学校 間があり、用意していた質問を次々として、日本に対する関心の高さを 感じた。学校紹介では多くの国との国際交流の様子が紹介され、それ をプレゼンテーションした生徒の高い英語力にも驚かされた。また、高 い教育目標を掲げ継続していこうとする意欲に圧倒された。 訪問先④ 南星女子高等学校 校門から校舎まで生徒が並んで出迎えてくれた。歓迎式は様々な活 動が紹介され、内容の充実していたものであった。日本語での学校紹 介は努力の跡がうかがえた。合唱、テコンドーの授業参観では、普段の 授業が見られたように感じたが、レベルは高いものであった。先生方と の交流では身近な話題について意見を聞くことができた。 訪問先⑤ 文化的な施設訪問は歴史的なものから現代のものまでバランスのとれ DMZ たもので、大変興味深かった。韓国仏教を知ることのできた 仏国寺 仏国寺、朝鮮半島の厳しい現実を知らされるDMZ、環境問題について 清流川記念館 考えさせられた牛甫沼、清流川記念館。韓国のさまざまな面を見ること 牛甫沼 ができ、印象に残った。 3.最も有意義であった内容: 今回のプログラムでは、様々な種類の学校を訪問することができ、その中で生徒や教職員と交流でき たことが、最も有意義であった。サンマウル高校では、学校生活に関してきさくに話し合える時間が持て、 この学校での生活を生徒が本当に楽しんでいることが感じられた。 ソウル精進学校では、卒業生の管楽器演奏や、在校生の授業参観など、普段の学習の成果、取り組み がひしひしと感じられて、大変感動した。特殊教育のもつ難しさを、教師間交流の時間で話された数々の 話題から実感できた。漢陽大学校師範大学附属高校や南星女子高校では、学力伸長にかける職員や 保護者の熱心さ、国際交流に積極的に取り組む姿勢を感じられた。その中でも、活発に活動する生徒の 姿が印象的であった。日本への興味・関心もあり、聞きたいこと、知りたいことがたくさんあったと思われた。 国家間の微妙な関係を全く感じさせない交流の時間であった。 4.成果: 韓国の教育事情を詳しく知るという課題については、ユネスコからの説明や資料、講義、また、訪問校 での学校紹介や交流の中から、多くのことを学ぶことができた。過熱気味の受験への対策や日本語教育 の現状などを確認することができた。英語教育に関しては、早い時期からの取り組みが日本より進んでお り、そのことが高校の上位校で見た生徒たちの優れた英語力につながっていると感じた。国際交流につ いても、積極的に行われている事例を知ることができ、今後も発展していく様子がうかがえた。全体にど - 136 - の学校、事業もダイナミックな取り組みをしており、韓国の国家自体の意気込みも感じることができた。 韓国語を学ぶということに関してはこの期間ではほんの少ししか身に付けることができなかったが、す でにある程度の会話のできる先生方を目にして、今後も継続して韓国語に触れていきたいと考えている。 5.今後の日韓交流について: 現在本校では、韓国のジョンバル高校との姉妹校交流を行っている。7月にジョンバル高校生が本校 を訪問し、12 月に本校生がジョンバル高校を訪問するという形で交流している。今後もこの事業を継続し ていくことが大切であると考えている。現在の交流は、互いの学校紹介や、生徒の活動紹介を行っている 場合が多いが、今後は身近なテーマについてのディスカッションなども考えていく時期に来ているのでは ないかと考える。教員間の意見交換の場も同様に設定して、共通と思われる課題(例えば語学習得、受 験勉強など)について、それぞれの立場から話し合いを持って、情報や認識を共有しあえたらと思う。 6.提案・助言: 大変バラエティに富んだすばらしいプログラムであったので、しいて希望することとしては訪問先の先 生方や生徒との交流の時間がもう少し取れることです。この点から、スケジュールを考えていくと滞在期間 を1日ほど延長するかなどの改善が必要と思われます。参加人数は、グループ分けをして行動することで、 増やせるのではないかと考えられます。全員が同じものを体験することも望ましいと思いますが、できるだ け多くの人にこの体験を共有してほしいと思うので、グループ別の行動でもよいと思います。 群馬大学教育学部付属特別支援学校 教務主任補佐 石原 隆志 1.総合所見: <テーマ>韓国の特別支援教育の現状と課題を探る ~学校訪問と現職教員との懇談を通して~ ソウル精進特殊学校では、日本の特別支援学校では見かけないランニングマシンや加圧式トレーニン グマシン、曲にあわせて体を動かすゲーム機などを配置した部屋があった。調理室では、巻き寿司をつく っていた。エデュケアークラス(午後6時までのクラス)では、生徒たちが楽器の演奏練習をしているところ を参観した。学校が夏期休業中であったため、普段の生徒の学習している様子は分からなかったが、教 室配置や掲示物等から、日本の学校とほぼ同じであると感じた。この学校は、知的障害のある子どもを教 育する学校であったが、今年度から肢体不自由のある子どもも教育することになった。多様な障害を受け 入れる特別支援学校となりつつあり、これも日本と同様であると感じた。ただ、医療的ケアが必要な子ども に対しては、学校に配置されている医者はないため、そのような子たちは訪問教育の対象となっている。 週2回、3時間ずつの教育を受けているという。 韓国教員との懇談会では、安樂中學校の金修自校長先生から一般の中学校における特別支援教育 についての話が聞けた。学級の中では、ADHDの子が目立っていて、学校内では、特別支援学級担当 - 137 - 者が担任を支援している。校内体制は、生徒指導が中心であり、校内暴力への対処が最優先課題で、 次いでいじめ等の問題、その次が発達障害のある子への対応という話であった。日本では、特別支援教 育コーディネーターが学校の中心となり、校内委員会を組織して、支援の充実を図っていることを伝え た。 漢陽大学校師範大学附属高等学校では、高校生たちと話す機会があった。事前に私たちに対する質 問を用意してくれていたようで、あっという間に時間が過ぎた。始めは、たどたどしい日本語でメモしたこと を質問していたが、日本のドラマや人気歌手の話題で大いに盛り上がった。私たちも韓国語で質問を返 したかったが、それができず、英語でのやりとりとなってしまったことに申し訳ない気持ちになった。ただ、 高校生たちの真っ直ぐな気持ちと屈託のない表情は、とても印象に残った。教育目標が対称的なサンマ ウル高等学校の生徒たちも、とても素直で表情の明るい子たちばかりだった。 今回の訪問では、種々の学校や文化施設等を数多く訪問したが、懇談会でのやりとりや高校生たちと の触れ合いが特に印象に残った。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① DMZ(非武装地帯) 所 見 ソウルからわずか 52 ㎞の地点にある第3地下トンネル。発見された地下トン ネルの中で最も大きい規模で、墨で塗られたトンネルの壁面からは、当時の 東西冷戦の緊張感が伝わってくる。まだ 10 代と見られる訓練兵が何十人もこ のトンネルを歩いていた。ドラサン駅では、「北へ向かう最初の駅」という表示 を見た。韓国民が北との合併を熱望していることが見て取れた。 訪問先② 「新しい学校を創りたい人が集まって実現した学校が本校です」と、目を輝 サンマウル高等学校 かせながら話した教頭先生の表情がとても印象に残った。生態系を考慮した (ユネスコ共同学校) 建築物、太陽エネルギーを利用した設備、全寮制で小人数指導等、まさに (対案学校) 時代の先端を行く「山村学校」であった。また、直に生徒たちとふれ合う中 で、教育目標の一つである「平和の種をまく人」がこのような環境の中で育っ ているのだと実感した。 訪問先③ ソウル精進特殊学校 歓迎式では、卒業生たちが、フルートやバイオリン、チェロの演奏で迎えて くれた。卒業生たちは、日中の仕事が終わった後、学校に集まって練習して いるということであった。卒業しても仲間に会える、先生に会える場があること は、なんと心強いことだろう。また、共働きの家庭のために生徒たちが6時ま で活動できる環境(エデュケアークラス)があった。学校全体としての取組が、 利用者主体であることが、明確であり、とても参考になった。 訪問先④ ASPnet の活動の様子を高校生たちが発表した。きっと何回も練習を重ね 漢陽大学校師範大学附高等学 たことだろうが、流暢な英語で、堂々とした態度での発表は、実に見事であっ 校 た。学年上位 70 名のための図書室、夕食も食べることができる食堂、職員の (ユネスコ共同学校) 勤務態勢等、全てが生徒の学習を保障するものであった。生徒たちとの懇談 では、日本のドラマや人気グループのことが話題となった。規律ある授業態 度から一変した生徒たちの明るい表情に、少しほっとした。 - 138 - 訪問先⑤ 文化公演「ナンタ」 ナンタはノンバーバルパフォーマンスで、私たちにとって最適なミュージカ ルであった。韓国伝統音楽のサムルノリのリズムを巧みに取り入れたもので、 観ているだけで、体が動いてしまいそうであった。手が滑ってあの包丁が客 席に飛んできたらどうしようと少し不安にもなったが、野菜を四方八方に飛ば しながらの包丁さばきは実に見事で、痛快であった。知的障害のある子ども や耳の不自由な子どもたちにも十分楽しめるものである。 訪問先⑥ 梵魚寺 僧侶の方々と一緒に昼食をとった。食事の仕方を教わりながらであったの で、1時間以上かかった。器の扱い方、盛りつけ方、食べ方、片付け方等を 教わったが、私たちが教わった以上に細かい作法があるようであった。僧侶 たちは、唐辛子の一粒も残さないということだが、私たちにはできなかった。 その後、住職からお話をいただいたが、「人間の心はもともと青空のようなも の」という言葉が、ずしんと私の心に響いた。 訪問先⑦ 牛浦沼 牛浦沼は、韓国で最も大きく、残り少ない低湿地の自然沼である。白鷺がと まっていた「オニバス」が自生している沼は韓国でも2カ所しかないという。現 在は、この沼を残す運動、湿地の環境保全に努めているのだという。オニバ スにとまっている白鷺は、以前は夏にしか観られなかったそうであるが、今で は1年中観られることから、地球の温暖化現象が伺えるとの話であった。「生 態教育院」で環境を学ぶ子どもたちはとても生き生きと活動していた。 訪問先⑧ 歓迎会の中で、生徒たちの発表の場があった。学力の高い生徒たちが集ま 南星女子校等学校 っていることはよく分かっていたが、伽椰琴やテコンドー、合唱、ハンドベル (ユネスコ共同学校) 等、課外活動で努力している生徒たちにも活躍の場が用意されていた。英 語、日本語、数学の授業を参観したが、いずれも大型スクリーンを使用する などの工夫が見られた。日本語の授業では、同年代の日本の女子高生の姿 を追った教材で、言語学習とともに、生活習慣の違いなどにも触れていた。 訪問先⑨ 国立慶州博物館 この博物館では、考古館、美術館、雁鴨池館の3つの常設館を中心に先史 時代から統一新羅までの文化遺産が 3000 点以上展示されていた。展示物 は、ほとんどが本物で、中には歴史の資料集で見たことのあるものもあり、感 動した。また、野外展示場の聖徳大王神鐘の大きさや製造方法に感心した。 訪問先⑩ 仏国寺 境内から中の建築物までを詳しく見学した。1593 年の文禄・慶長の役で、 いくつかの石造物だけを残して沢山の収蔵宝物と木造建築物が消失したと いう。日本国民として、このような事実を直視し、韓国民の気持ちを推し量る ことをしなければならないと強く思う。建築様式等を見て回りながら、新羅人 の建築の技術、芸術性の高さに感服した。 3.最も有意義であった内容: 韓国の教育事情について - 139 - ・韓国教育現況について 「韓国における教員評価制度の現状と課題」についての講義は、実に興味深いものであった。40 年間続 いた教員評価制度を、なぜ新たなものに変えようとしたのかを内的要因と外的要因とに分け、分かりやす く説明していただいた。教育を重要課題としている韓国政府の具体的政策を表したものだと理解できた。 また、既存の教員評価と新しい教員評価を目的、対象、評価者、要素、結果等から比較して述べられて いたことも、教員評価制度を知る上で分かりやすかった。教師一人ひとりが、この新しい制度を利用し、 自己啓発に努め、授業のスキルアップにつなげていくことを期待するのと同時に、日本でも、このような制 度をうまく利用すべきであると考える。 ・韓国の学校におけるESD(持続可能な開発のための教育)について まずは、環境教育を充実発展させることが重要であると感じた。幼稚園。小学校、中学校、高等学校と、 それぞれが環境教育の計画を立てるのではなく、幼少期から青年期までを通した計画を立案することが ESDの一歩なのだと考える。そして、それを実践し、評価することで足らないものが見えてくるはずである。 それが外部機関であり、地域資源であろう。学校では、校長がリーダーシップを発揮し、教員を先導しな がら、地域を巻き込んで子どもを育成することが大切である。 4.成果: 本プログラムへの参加で、学校訪問と現職教員との懇談を通して韓国の特別支援教育の現状と課題 を探ろうとした。特にソウル精進特殊学校の訪問では、施設設備の面、教職員の仕事内容、生徒たちの 教育課程等を知りたいと思った。その全てを知ることはできなかったが、訪問や懇談を通して、韓国の特 別支援教育の現状を垣間見ることができた。学校の施設設備では、新たに受け入れた肢体不自由の子 どものための教室が新設され、環境も整いつつあるようだった。広い廊下や充実した教材・教具の整った 特別教室、明るい教室等、ハード面の充実ぶりに感心した。教職員たちは、学校の特色ある教育活動に 誇りと自信を持っていた。管弦楽演奏活動や学芸発表指導など、子どもたちの輝く姿を思い描いて日々 の指導にあたっていることが分かった。現職教員との懇談の中では、特別支援教育への期待と不安をう かがった。中学校の校長先生から、通常の学級にいる例えばADHDの子どもに対して、特別支援教育 専門の教師が支援することになっているが、支援が必要な教室にいつもいることができないので、十分に 対応できていないのが現状であるようだ。教職員の仕事内容や生徒たちの教育課程については、知るこ とができなかったが、それは今後の課題としたい。 予期せぬ成果として、自分の韓国に対する意識が変化したことである。一度も訪れたことのない韓国 に強く惹かれるようになったのは、「隣国」だからであろうか。出会った人がみんな優しい人たちだったか らであろうか。韓国語がほとんど分からないこと、両国の歴史をきちんと押さえていないこと等、韓国を訪 問した一人の日本人として自分を恥ずかしく思った。自分の課題を克服して、再度、韓国を訪れたいと思 った。 5.今後の日韓交流について: ・ 運動まつりでの交流 - 140 - ・ ふようまつり(学校祭)での交流 ・ 楽器を使った学習での交流 ・ 陶芸作品作りやキャンドル作り ・ 農作物の収穫 ・ 水遊び、雪遊び ・ もちつき大会での交流 本校への訪問であれば交流は可能である。こちらからの訪問は難しい。 6.提案・助言: 様々な校種、地域を訪問し、それぞれの学校の課題や取り組みを知ることができるとよい。 期間延長等で時間に余裕があるなら、学校訪問を多くするのではなく、教員同士の意見交換や、スポー ツ交流、レクリエーション大会などを行うなど、楽しい時間を共有できるとよい。 渋川市立古巻小学校 教頭 栗原 均 1. 総合所見: はじめに、国際理解交流事業の「韓国政府日本教職員招へいプログラム」というすばらしい事業に参 加させていただいたことに、ACCUはじめ関係の方々に厚く感謝申し上げます。私は、韓国訪問にあた り ・ 韓国の学校や教育施設を訪問することで、韓国の教育のよさを知り、自校の学校運営に役立てた い。 ・ 韓国の先生方と交流や情報交換を行い、両国のネットワークを広めたい。 ・ 韓国の文化や伝統、生活について見聞を広めたい。 以上のような抱負を持ち参加させていただきました。 実際に韓国を訪問し、「百聞は一見にしかず」という言葉のとおりでした。それまでは、韓国の教育事 情や文化について資料や文献、インターネットで多少は知ることができていましたが、実際に五感で体験 するすべてが新鮮であり有意義で充実感のある研修をさせていただきました。そして、訪問・視察のそれ ぞれで素晴らしい出会いや再会と発見があり、心に残るたくさんの感動をいただきました。 学校訪問では、特別支援学校と高等学校を訪問させていただき、教職員や生徒達の熱烈な歓迎を受 けるとともに、子どもたちの「こんにちは」の日本語を聞き、「アンニョンハセヨ」を返していました。特別支 援学校では、先生方の熱心な指導が校長先生の話や校内見学から伝わってきました。また、施設設備 が充実しており、日本の学校とは比べものにならないと感じ、教育を充実させるためには行政からの支援 が必要だと思いました。 高等学校では、激しい受験体制の中で日本以上に努力している生徒の様子がわかるとともに、山村 の学校では、じっくり自分の生き方を考えている高校生に会えて安心しました。 韓国の先生方との交流では、日本訪問の際、前任校に訪れた校長先生や小学校の先生方と再会し、 情報交換を行い更に交流が深まりました。今後は、両国のネットワークを広げ学校運営にも取り込んでい - 141 - ければと考えています。 文化施設の視察では、韓国の歴史や日本との関係及び文化の様子が理解でき、特に、世界遺産(佛 国寺)や国立慶州博物館は興味深い研修が行えました。 このプログラムには、両国の教育、文化や歴史を理解し、教育や文化で密接に関係を構築し、両国の 発展に寄与することが期待されています。私たち参加者は、今後、この研修を通して、自校の教育に何 ができるか。前向きな姿勢を持って取り組んでいかなければならないと思います。この研修の成果をより 多くの先生方や地域社会に啓蒙していくとともに、日韓両国の友好促進のために、さらに交流活動が発 展できるよう協力していきたいと考えています。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① サンマウル高等学校 所 見 ソウルから車で2時間ほど離れた山村にあるサンマウル高等学校は、 自然の中に調和し溶け込んでいた。生徒数は 60 人ほどであり、小規模 校であったが、教育目標の「自然を愛する人」「平和の種をまく人」「知 恵と学ぶことを分ける人」を具現化するために、農業実習を始めとする 実践的環境教育を行っていた。 生徒は、自然体験学習等を通しながら、都会の受験のせわしさから離 れ、自分自身のよさや可能性を発見し、自分のこれからの生き方につい てじっくり考えていた。 訪問先② ソウル精進学校 21 年前に開校した韓国で初めての公立特殊学校であり歴史がある。 肢体不自由学級からスタートしたが、現在では幼・小・中・高等部があり 300 人余りの児童生徒がいる。教職員は 120 程でありきめ細かな指導を 行っている。 校内施設見学を行ったが、体力トレーニング室、遊戯室、機能訓練の ためのゲーム機室、室内プールなど施設設備が充実しているのには大 変おどろいた。また、初等部には保護者用の部屋があり、保護者との協 力体制も整っている。 訪問先③ 男女共学の私立高校であり、学年 400 人余り在籍している。学校の施 漢陽大学校師範大学付属高 設設備は大変充実しており、国からたくさんの補助金があるとのことであ 等学校 った。また、韓国の過熱した大学受験を反映して、学年で 70 番以内で あると図書室で午後 10 時まで学習することができ、教員も待機して対応 しているとのことであった。 外国との交流活動も活発で、インド、トルコ、マレーシア、ブラジル、ア メリカ、カメルーンなどと交流し異文化理解の機会となっている。 - 142 - 訪問先④ 南星女子高等学校 学校に到着すると、女子高生徒から熱烈な歓迎を受けた。キリスト教 系の学校ということで、生徒の身だしなみはきちんとしていた。歓迎式で の学校説明は、独学で日本語を勉強したという生徒の説明であり、すば らしい日本語だったので大変驚いた。教育目標「愛・真理・自立」のもと 国際理解教育と読書及び統合論述教育に重点を置いていた。 外国語の選択授業では、日本語を選択する生徒が多く、日本語の授 業のレベルが高く、日常会話等は話すことができていた。浴衣の着付け では、大変喜ばれた。 国際交流も活発でモンゴルやオーストラリアの学校と姉妹提携を結び 相互訪問を行っている。 訪問先⑤ DMZ(非武装地帯) 北朝鮮と韓国の軍事境界線(北緯 38 度線)から南北それぞれ2km の 非武装地帯の第一印象は、兵士の警備状況からの緊張感であった。特 に、第三トンネルはソウルまで 52km の地点であり、韓国侵入の明らかな 証拠であり、東西冷戦の生々しさを肌で感じた。 また、韓国最北端のドラサン駅の見学では、将来、開城、平壌、新義 州を経て大陸へ繋がる鉄のシルクロードの中枢的な役割を果たす駅で あり、一日も早く両国の統一が図れればと強く願った。 3.最も有意義であった内容: 学校教育現場で日々、携わっている者として、学校訪問は大変有意義なものでした。以前、中学校勤 務の時、中学生の海外派遣事業の引率としてオーストラリアを訪問し、高等学校の授業等を参観させて もらいました。その時、日本とオーストラリアの教育事情の違いについて理解することができました。今回、 韓国の学校を訪問できるということで、韓国の教育に対する取組や教育事情を知ることができ、日本には ない取組をしていることに多くの刺激を受けました。日韓の教育の違いや共通点を感じながら、次世代を 担う子どもたちの教育にあたって、どの学校も真剣に考え実践していることがわかりました。 また、人との出会いは感動的でした。08 年1月に韓国の先生方が渋川市立北橘中学校を訪問され、 その中のヤン先生やバク校長に再び韓国でお会いできたことは、大変嬉しく思いました。この出会いが、 これからの両国の教育ネットワークになっていけば、さらに友好的な関係が築けていけると確信していま す。これからも、交流を続けていきたいと思いました。 ホームビジットは、見る、聞くことから、そして会話する機会を得られたことで、身近な韓国の家庭に触 れることができました。わずかな時間であったが、衣食住に接し日本と韓国の文化の違いや共通的な事 について知ることができ大変有意義な時間でありました。 4.成果: 韓国の教育水準の高さを知るとともに、教育に財政的な面でバックアップが整っていることが分かりま した。日本においても、教育を充実させるためには、施設設備等を充実させていく必要があると感じまし - 143 - た。しかし、日本と韓国では社会事情や子どもの実態、親の考えがもちろん異なるが、これからの国を担 う世代を育てるために、確かな学力や基本的な生活習慣そして豊かな心を身に付けさせための教育活 動が展開されていることは共通していることがわかりました。 韓国の教育事情を視察・研修できたことは、自校の学校運営や教育活動を行う上で、もう一度見直し たり、改善したりするきっかけとなりました。そして、教育に対する視野がさらに広がったように思いました。 5.今後の日韓交流について: 自校は、公立の小学校であり、そのため、学校独自で韓国の学校と教職員や児童の交流活動を行う ことは大変難しいと考えています。行政サイドからの協力体制がないと実現できないと思います。しかし、 現実的には児童の作品(絵画や作文)交流が考えられます。また、総合的な学習の時間を活用して「国 際理解教育」の一つとして、「外国の文化や生活を知ろう」を取り上げ、韓国についても調べ学習をしたり、 日韓両国の児童たちによるメール交換を通して交流ができれば素晴らしいと考えています。 6.提案・助言: 今回の研修日程を計画された韓国ユネスコ委員会の方は、大変苦労されたと思います。そのご苦労に 感謝申し上げます。今回のプログラムでは次の点について感じましたので述べさせていただきます。 ・ 25 人程度の班編制はよかったと思う。しかし、今回、小学校の教員として参加したが、私たちの班は 高等学校と特別支援学校の訪問であった。小学校、中学校は参観できず大変残念に思った。それ ぞれの校種で参加しているので、最低ひとつは、同じ校種の学校を訪問できるように計画していただ ければ有り難い。 ・ 時間的に余裕のない日があった。いろいろたくさん視察等を計画され、感謝しているが自己研修の 時間を多く確保していただけると有り難い。 ・ 韓国の教職員との懇談の時間がたいへん短かった。両国の教職員が膝を交えて交流する機会は、 なかなかないので、是非、時間的な確保をお願いしたい。 ・ これからのプログラムにも世界遺産や文化施設等の見学は入れて欲しいと思います。 気仙沼市立鹿折小学校 教諭 畠山 道子 1.総合所見: ・ 韓国の教育について理解を深めるとともに、教職員、児童、生徒との交流を図る。 ・ 韓国における小学校英語教育とそれに関連した国際交流について学ぶ。 本プログラムに参加させていただき、日韓両国の多くの方々と貴重な出会いをし、また、訪れた場所で は大きな感動を与えられ、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。学校訪問、文化遺跡地の訪 問、文化体験、ホームビジットなど、多角的に韓国の文化、教育にふれることができ、充実した毎日を過 - 144 - ごさせていただいたことに深く感謝いたします。 本校では、「伝える目的をもった英語活動」を目指し、全校で英語活動に取り組み、これまでにアメリカ の小学校や留学生との交流を深めてきました。こうした校内での取り組みや英語の本格的な導入という 点から、韓国での英語教育や国際理解教育がどのように進められているのか、また今回のASPの加盟 にともない、韓国ではどのようなASPの活動が行われているのかなど、本プログラムへ興味をもって参加 させていただきました。 学校訪問では、どの学校でも私たちの訪問のために心を込めた準備をし、あたたかく迎えていただき、 韓国の教育に対する関心の高さと、熱意ある取り組みの様子をじかに見ることができました。英語教育が 3年生から始められており、交流した高校生たちの語学力のすばらしさからも、その積み重ねと成果が感 じられました。また、国際交流活動も積極的に行われるとともに、韓国内のユネスコ共同学校でのネットワ ークづくりに努めていることも、これからの参考になることばかりでした。韓国の先生方や生徒との心温ま る交流活動を通して、韓国の教育について理解するとともに、迎え入れていただいた方々の姿から、国 際交流をする上での大切な心遣いについても学ぶことができました。 文化、遺跡地の訪問では、冷戦、同族間の戦争の痛みを肌で感じたDMZ、そして韓国と日本との歴 史的な関わりの深い仏閣など、改めて韓国を知り、そして日本との関わりについても考える機会になりま した。また、牛浦沼では、環境教育と結びついた取り組みにもふれることができました。本プログラムを通 して、韓国の教育について理解するとともに、わたしにとっての平和、環境を学ぶとても有意義な機会に もなりました。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 山マウル高等学校 所 見 訪問学校紹介の資料を読み、「平和の種をまく人」という教育目標等か ら、対案学校に興味を持って訪問させていただいた。建物や生徒たち の活動が生態農業をもとにし、またエネルギーも自立した生活全般に環 境教育がなされているなど、その特色ある教育にじかにふれることがで きた。世の中が進学のためにあわただしく過ごしている中、人や自然と ゆったりと関わり、自分を見つめる時間がもてることは、生徒たちにとっ て意義深いことだと感じた。 訪問先② ソウル精進学校 夏休み中にもかかわらず、訪問を歓迎していただき、ありがたい気持ち になった。校長先生の「ふるさと」の歌、校内の掲示物等、あたたかな、 和やかな学校の雰囲気が感じられた。卒業生の演奏もすばらしく、在学 中の指導が息づいていると感じた。放課後の活動や外部交流活動等、 様々な活動が工夫して行われており、子供たち一人一人が大切にされ て、いろいろな場面で活躍する機会が作られていると思った。屋内プー ルやトレーニングルームなど、施設も充実しており、生徒の活動をより広 げるよりよい環境作りがなされていた。 - 145 - 訪問先③ 教育に対する熱意と教育水準の高さが感じられた。読書室で夜まで学 漢陽大学師範大学付属高等 校で勉強する生徒がいること、しかもその席を得るには試験で上位の成 学校 績を取らなければならないこと等、韓国の進学に対する強い熱意が感じ られた。授業を受けていた生徒たちは、パソコンを活用しながら、真剣 に落ち着いて学習に取り組んでいた。 私たちとの話し合いの時間には、生徒たちは、日本語や英語で話しか け、積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿が印象的であった。 訪問先④ 南星女子高等学校 バスを降りたところから校門まで、生徒たちが並び、あたたかい出迎え をしてくれた。海の見える眺望のよい学校であった。校内の様子や生徒 たちの清々しいようすから、学習のみならず生活全般においてよりよい 指導がなされていると感じた。授業では、どの教室でも落ち着いて授業 が行われており、日本語の授業を興味深く参観させていただいた。生徒 たちが、日本に強く興味関心をよせ、一生懸命学習する姿を目のあたり にし、嬉しい気持ちになった。 訪問先⑤ DMZ(非武装地帯) 朝鮮戦争からの分断の悲しみ、同族間の戦争の痛みを身近に感じた 訪問であった。特に第3地下トンネルでは、実際にそのトンネルをくぐっ て地下を歩き、冷戦の生々しさを肌で感じた。 都羅山駅では構内に入ったが、何とも言い難い気持ちになった。大陸 につながる鉄のシルクロードとして、早く南北交流の駅になってほしいと 願う。改めて戦争の悲しみ、平和の大切さを考える機会になった。 訪問先⑥ 牛浦沼、牛浦沼公園 広々とした湿地、沼にオムニバスが水面に葉を広げている美しい景観 を見ることができた。また湿地に調和した野鳥の姿も見ることができ、環 境が守られていると思った。散策中に湿地で学習する児童に出会った がとても楽しそうであった。地域の3年生が環境教育の一環として活動し ているとのことであるが、小さい頃からこうした活動をすることにより、環 境への興味関心が高まり、自然について考えていこうとする土台ができ 上がると思った。 3.最も有意義であった内容: 一つ一つが有意義なものでしたが、特に学校訪問をして、授業を参観したり、先生方、生徒と交流をし たりした時間が、とても意義深いものでした。学んだ英語や日本を使って、積極的に交流しようとする生徒 の姿が印象的で、お互いに有意義な時間になったと思います。 また、ホームビジットでは、はじめは緊張していたものの、笑顔いっぱいであたたかく迎えていただき、 ここでもお互いの学校の様子を話したり、文化の様子を話したり、時の立つのも忘れるほど、楽しく充実し た時間になりました。交流する機会を得て、お互いの国や教育について理解し合うとともに、自分の国の よさやすばらしさについても、改めて考えるよい機会になりました。 - 146 - ネットワークづくりの第一歩は、私たちがお互いを知り、よりよい関係を築くことから始まることを実感しま した。 4.成果: 韓国の教育、文化について、実際に見て聞いて、分かったこと、感じたことがたくさんあり、貴重な経験 をさせていただきました。学校訪問や懇談会を通じて、韓国の教育への熱心さや国の文化や環境を大切 にしていることが伝わり、韓国の教育について学ぶことができました。 興味のあった英語教育については、小学校を訪問できなかったことから、その学習の様子を見ることが できなかったものの、小学校教諭との懇談会やホームビジットで、英語教育や国際交流について話す機 会をもつことができました。特に、ホームビジットでは、小学校教諭や小学校での英語教諭と話すことがで き、現状について情報交換することができました。小学校3年生から英語教育をはじめてすでに 10 年が 経過しており、すでに低学年への導入を考えた研究が進められていることを知り驚かされました。また、そ の教育のために、教員がしっかり研修を積み重ねるという話を聞き、教育を支える体制が整っていること にも感心しました。 また本プログラムを通じて、韓国教員との交流をはじめ、平和教育、環境教育との関連ある地の訪問な ど、わたし自身がESDをじかに学ぶ機会になりました。 5.今後の日韓交流について: 韓国の先生方との交流を通して、考えを深めたり心を通わせたりする楽しさをわたし自身が感じたよう に、子供たちにもぜひ他国の文化を知り、交流を深める楽しさを味わわせたいと考えます。私が経験した ことを、児童や先生方に伝え広げるとともに、このプログラムを機会に韓国の学校と交流の機会を設けて いけたらと思います。現在本校はASPに申請中ですが、今後加盟と共に、ASPについて理解を深め、 ネットワークづくりに努めていきたいと思います。 6.提案・助言: 小学校の訪問ができなかったことが、とても残念に思われました。小学校の様子を見て、実際に児童と ふれ合う体験をすることが、韓国の教育をより理解する上でも、今後の交流活動の推進においても必要 なことだと思います。様々な事情があり難しいことかもしれませんが、ぜひ、小学校の訪問をプログラムの 中に組み入れられることを望みます。 今回は、小学校の先生方との懇談会を持っていただき、有意義な時間になりましたが、さらに、ゆっくり 情報交換ができる時間のゆとりがあるとよいと思われました。また、先生方のみならず、児童、生徒との話 し合いの時間をもつことは、教員にも生徒にもよい交流の機会になるので、今後もプログラムの中に組み 入れてほしいと願います。 - 147 - 気仙沼市立面瀬小学校 教諭 白倉 隆博 1.総合所見: 「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、いかにメディアが発達しましても、自分の目で見て肌 で感じるのが一番の国際理解だと考え、今回のプログラムに参加させていただきました。 韓国は、日本にとって「文化の大恩人の国」です。稲作、青銅器、鉄器、土木技術、灌漑技術、さらに 漢字や医学も韓国から伝えられたものです。今回の教育・文化交流で、少しでもその大恩に対して感謝 を伝え、深い友情を作りたいと思いました。 今回のプログラムで、一番印象に残ったことは、訪問する学校の全てで、歓迎の横断幕や、生徒たち が拍手で出迎えて下さったりと、心からの歓迎を受けたことです。お会いした全ての先生方が笑顔で、礼 儀正しく私たちを受け入れてくださったことに感動しました。果たして今年の1月に韓国の先生方をお迎 えしたとき、私自身の振る舞いや、自分たちの学校の受け入れはどうであっただろうかと正直反省をしま した。 また、漢陽大学校師範大学附属高等学校では、生徒たちとのミニ懇談会を設けていただき、「今、一 番興味のあること」や「食文化のこと」、「日本で今一番流行している音楽」など、お互いにたどたどしい言 葉ではありましたが、楽しく交流できたことはとても有意義でした。 さらに、学校訪問・文化施設見学の合間に見た、「ナンタ」の文化講演観覧は、心と体にひとときの安 らぎを与えてくれました。以前宮城県仙台市での公演があり、その時は残念ながら見ることができなかっ たので、さらに感激しました。 今回のプログラムから招へい人数の関係でA・B二つのグループでの活動となり、それぞれの訪問先 が違い、どのような活動をしていたのか分からなかったのですが、最後の報告会でお互いのグループの 情報が共有できたことは大変に良かったと思いました。その際に、拙いながらも、Bグループのプレゼンテ ーションを作らせていただいたことは、良い思い出になりました。作成に当たっては、同じグループの 方々からたくさんのアドバイスをいただき、少しでも良いものを作って見ていただこうという意気込みを感じ ました。 様々な障害があった中で行われた今回のプログラムでしたが、ユネスコ韓国委員会の方々の緻密な スケジュールにより、大変充実した素晴らしい体験をさせていただきました。多くの関係の皆様に厚くお 礼申し上げます。 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先① ・パワーポイントによる説明は大変分かりやすかった。わざわざ日本語で 韓国ユネスコ国内委員会 作成していただき、大変嬉しく思った。 ・ユネスコ国内委員会の歴史、現在のご活躍の様子を知ることができ、 貴団体の今後ますますのご活躍を期待する。 - 148 - 訪問先② ・日本などの教職員を迎えるのは初めてとおっしゃっていたが、校長先 サンマウル高等学校 生自らプレゼンテーションをしてくださるなど、私たちの受け入れを精一 杯行ってくださったことに感謝の思いで一杯である。 ・私には高校2年生の息子がおり、たまたま体育の授業を見学させてい ただいた中で、同じような年代の生徒たちとふれ合う機会があり、とても 嬉しく思った。 訪問先③ ・校長先生の歓迎の挨拶の中で「ふるさと」の歌が歌われた。我々の緊 ソウル精進学校 張をほぐしてくださった心配りに感謝する。私も音楽を専攻に学んでき たが、国や言葉を越え、友情を結ぶことが出来る音楽の力を改めて感じ た。 ・卒業をされた生徒が演奏を披露してくれたが、フルートの演奏が特に 素晴らしかった。 ・ハンディキャップがあっても、何とかして子どもたちを自立させるという 先生方の熱意が十分に感じられた訪問であった。 訪問先④ ・生徒たちが私たち訪問に向け、日本語で質問を準備していたことに誠 漢陽大学校師範大学附属高 意を感じた。私自身も必死に答えようとしている姿が自分でもおかしかっ 等学校 た。女子生徒が笑い、手をたたき合って喜んでいる姿が嬉しかった。貴 重な体験をさせていただいた。 ・高校2年生の素晴らしい英語でのプレゼンテーションを聞き、教育の 質の高さを感じた。 ・校長先生をはじめ諸先生方が、私たちを迎えてくださるための準備に 心を配ってくださっていることに感謝したい。 訪問先⑤ ・バスから降りると、玄関までの道に生徒たちが1列に並び、拍手で我々 南星女子高等学校 を迎えてくれた。 ・歓迎レセプションでは、生徒が日本語での学校紹介を行った。この生 徒は独学で日本語をマスターしたことを知り、大変驚いた。 ・生徒たちによるアトラクションも、心温まる内容で大変感動した。 ・日本語、英語、数学の授業を参観させていただいたが、生徒が大変熱 心に学ぶ姿が見られた。どの教室にも大型のモニターとパソコンがあり、 設備面の充実も感じられた。 3.最も有意義であった内容: もっとも有意義であった内容は、「ホームビジット」です。正直申しますと、ソウルから釜山に移動する 間も、「果たして言葉が通じるかどうか」「何を話せばいいのか」など、不安だらけでした。(ご一緒した先生 も同じような事を話していらっしゃいました。) 釜山国際中学校3年生のクー君のご家庭にお邪魔をしました。お父様と一緒に来ていた彼とホテルで 会い、勢いよく韓国語で「初めまして」と挨拶をしました。そこまでは良かったのですが、この後が続きませ - 149 - んでした。なかなか目を合わせることができず、しばしの沈黙。それでも片言の英語で、何とかコミュニケ ーションを図ろうと必死でした。 ご自宅に着く前に、海の見える非常に美しい展望台に案内してくださり、少しずつ心も体もうち解けてい きました。 ご自宅では、お母様とクー君の妹さん(中学1年)が出迎えてくれました。夕食時と言うことで、テーブル 一杯に並べられた、お母様の手料理をご馳走になりました。大変美味しくいただき、「マシッソヨ(おいし いです)」を何回も言う私がよほどおかしかったのでしょう。お互いの顔にようやく笑顔が見られました。 食事の後、子どもたちの部屋を見せてくださいました。たまたま妹さんの部屋にピアノがありましたので、 感謝の気持ちを込めて、1曲演奏させてもらいました。後日、クー君とメールを交換した際に「あなたの、 ピアノの演奏が忘れられません。」と書いてあったことに、深い感動を覚えました。 わずか数時間の交流でしたが、ホテルに送っていただき、「いざ別れ」となると、本当につらい気持ちにな りました。それだけ充実した時間であったという証拠にほかなりません。 ユネスコの関係の皆様はじめ、受け入れてくださったクー君のご家族に心より感謝申し上げます。 4.成果: 今回のプログラムに参加させていただき、得られた成果は、大きく2つあります。 1つ目は、コミュニケーションを図るための言葉の大切さを強く感じたことです。私自身の韓国語は挨拶 がやっとのレベル。それを補うために必要だったのが「英語」でした。果たして、自分自身の英語力はどう だったか。正直、大変恥ずかしい限りでした。(ホームビジットの時に痛感しました) 小学校の先生方との懇談会の折りに、韓国でも英語教育が盛んに行われていることを伺いました。研究 指定を受けている小学校では、低学年から本格的に英語教育に取り組んでいるとのこと。単なる知識だ けでなく、コミュニケーションツールとしての英語教育を充実させていく、と自信をもって話されていました。 日本でも学習指導要領の改定に伴い、今後ますます重要になってきます。そのことをふまえ、現場でしっ かりと計画を立て指導していきたいと思います。 2つ目は、人と人との交流の大切さということです。本プログラムが始まる前に竹島(獨島)問題が日韓 両国の間で起こり、他に団体では、予定されていた数多くの交流が取りやめになった事実を知りました。 政治レベルではいろいろな問題があるかもしれませんが、それ以上に民間レベルでの人的交流はとても 重要であると感じます。 事実、今回私たちを受け入れて下さった学校では、「よく来て下さいました。大歓迎いたします。今日 は、大いに語り合いましょう。」と胸襟を広げ、温かく和やかな雰囲気でした。短時間ではありましたが、こ ちらの質問にも誠意を持ってお答えいただき、韓国の方々の優しいお人柄にもふれることができました。 今後も機会があれば韓国の先生方との対話を通して、お互いの良いところを認め合い、両国の発展に 努めていけるよう、もっと自分自身が力を付けていきたいと思いました。 5.今後の日韓交流について: 現在、ASPに申請を行っております。今後正式に加盟することができましたら、活動の一環として、韓 国のASP加盟校との交流ができればと思います。その際には、インターネット回線を使ってのテレビ会議 - 150 - ができると思います。お互いの学校での取り組みを紹介したり、テーマを設けて、そのことについて意見 交換をするなど、可能性は大きいと思います。時差がないことも条件として良いと思います。 6.提案・助言: 今回は諸般の事情により、小学校の学校訪問ができませんでした。今後は、日韓両国の話し合いが 持たれ、良い方向に進むことを信じております。その上で、全ての校種の学校訪問が可能になれば大変 嬉しいと思います。また、通訳を介する話し合いの場合、どうしても倍の時間がかかりますので、意見交 換会などの時間は2時間位を設定していただければ良いと感じました。 気仙沼市立中井小学校 教頭 及川 幸彦 1.総合所見: 今年1月に、気仙沼市教育委員会の担当者として、「ACCU韓国教職員招へいプログラム 2007/2008」で 32 名の韓国の教職員を気仙沼市に受け入れた。その際に、韓国の教職員の高い研修意 欲と教育哲学に触れることができ、大きな感銘を受けるとともに、韓国の教育事情に大きな関心を抱い た。 今回、韓国政府からの招へいにより韓国の訪問が実現し、同国の教育現場や教育事情を視察する機 会を得られたことは、大変光栄なことであり、自身にとって韓国の教育理解をとおした国際的視野の育成 にこの上のない研修機会であった。改めて、韓国政府及び韓国ユネスコ国内委員会、ACCUをはじめと する各関係各位に心より感謝を申し上げたい。 今回のプログラムを通じて、特に、自身が、気仙沼地域及び国内、海外との連携で推進してきた「持続 可能な開発のための教育(ESD)」について、韓国の取組を視察するとともに、相互の情報交換を促進し、 ESDを通じた日韓の交流や連携を図ることができればと思った。また、現在、所属する中井小学校をは じめ、気仙沼市内の 14 の小中学校が申請中であるユネスコ協同学校(ASP)についても、取組の進んで いる韓国のASP参加校の取組を視察し、今後の我が校の取組の参考にしたいと考えた。 実際に、訪問してみて、このような難しい両国関係の中で、今回の招聘プログラムが実施され、参加 できたこと自体を高く評価したいと思う。今回のプログラムの内容としては、教育、文化、政治・経済、自然 がバランスよく盛り込まれており、充実した研修プログラム及びスケジュールで、全体的に、韓国理解を深 められたと思う。また、宿泊等の施設面も大変すばらしく、訪問校をはじめとする受け入れ先でも心温まる もてなしをいただいた。 小学校の訪問や地域プログラム(統栄市訪問)の見直し等もあり、事前の希望を実現できない部分も あったが、当時の状況の中では、最善のプログラムであったと思う。プログラムをコーディネートしていた だいた韓国ユネスコ国内委員会及び訪問校、視察先、そして、ホストファミリー等関係者に心からの感謝 を申し上げたい。 - 151 - 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 山マウル高等学校 所 見 山間の静かな環境の中に佇む、山マウル高等学校は、韓国では、珍 しいオールタナティブスクールとして、豊かな自然の中で体験学習を重 視し、生態系を意識した教育を取り入れていた。学歴社会で受験競争 が過熱する韓国の教育、とりわけ、高校で、このようなゆっくりとした時間 の流れの中でのびのびと感性や探究心を培う教育が行われていること に、驚きと同時に深い感銘を受けた。教師も当校の教育理念に共感し、 誇りと情熱を持って教育に取り組んでいることが伝わってきた。私立であ るにもかかわらず、学校の予算のほとんどは、仁川市の教育委員会が 支出しているということで、財政的な保障もされた上で、独自の教育理 念を掲げ、韓国の教育に一石を投じているように思えた。 訪問先② ソウル精進学校 雨の中、訪問団を歓迎する大段幕に迎えられながらの訪問であった。 韓国で初の特殊学校ということで、その規模の大きさと設備のすばらし さに驚いた。生徒の肥満解消のためにジムに各種機材が設置され、ま た、日常生活の指導を行うために、キッチンなど家庭の部屋を丸ごと再 現するという徹底ぶりであった。当時、国家のモデルとして設立されたと いうことが納得できる。校長先生のリーダーシップもとに各先生方の教 育熱が感じられ、雰囲気のよい学校であった。 訪問先③ 漢陽大学校師範大学附属高 等学校 韓国ナンバー4の大学の附属高校ということで、各種の充実した授業 やコースが設定されていた。 特に目を見張ったのは、案内役とASPの活動を発表した女子生徒の 英語力の高さである。海外への留学経験はないとのことであったが、案 内でもプレゼンテーションでも、母国語のように自由自在に英語を操っ ていたのには、舌を巻いた。また、ASPの活動でも、インドネシアなどア ジアを中心に海外へ幾度も派遣され、数多くの研修やフォーラム等に 参加し、海外の生徒と交流を重ねている様子が報告され、まさしく未来 のコスモポリタンとして育成されているようであった。 訪問先④ 南星女子高等学校 釜山港見下ろす高台に位置する南星女子高等学校では、たくさんの 女子学生が私たちの到着を出迎えてくれた。南星女子高等学校は、76 年の歴史のあるキリスト教の私立女子校で、これまで 32、000 名の卒業 生を輩出している。1966 年から 40 年間ユネスコ協同学校として活動を 続け、現在ユネスコ部には、現在 32 名が所属しているという事であっ た。歓迎セレモニーでは、生徒たちが、琴、合唱、テコンドー、ハンドベ ル等で、温かく歓迎してくれた。校長先生の韓国と日本は「近くて近い 国」、だから、このような「厳しい時期であるが、近い国であるから前に進 んでいくしかない。」という言葉と、生徒たちが歌った「愛されたいと生ま れてきた。今、その愛受けている」という歌の歌詞が、深く胸にしみ入っ - 152 - た。 訪問先⑤ 歴史授業やテレビで見聞きしていた 38 度線の南北朝鮮の分断の現実 Demilitarizes Zoon を、実際に目の当たりにして、過去及び現在の韓国のおかれている状 (DMZ) 況を肌で感じることができた。特に、第3トンネルに象徴される今なお続 く南北の「緊張」と、トラサン駅でみた南北を結ぶ「融和」の列車のコント ラストが印象的であった。現在の北朝鮮と韓国の一見相反するような関 係が如実に現れているようで、深く考えさせられた。日本による植民地 からの解放を目前にしながら、大国の主義主張に翻弄され、朝鮮民族と いう同じ民族・同胞でありながら、闘争と対立、そして分断という不幸な 歴史を歩んだこと。その後の対話の努力によってと融合、そして統一の 歴史へと歩み出すという人々の悲願を改めて認識させられた。DMZ越 しに北朝鮮の山々を眺望しながら、韓国の人々が一日にも早く自由に 行き来できる日が来ることを願った。 訪問先⑥ 梵魚寺 仏教は、インドから中国、そして朝鮮を経て日本に伝えられたといわれ るが、梵魚寺を訪れ見聞きするなかで、そのルートの一経路を実感する ことができた。日本にも禅宗の寺が多いが、寺院の造りや修行、食事の 作法などに多くの共通点があった。もちろん、微妙な相違も数多くある が、住職が仰ったように、作法や方法の差違よりも「心の悟り」が大切 で、それは、日韓や宗派を問わず仏教の懐の深さを物語っているように 思えた。 訪問先⑦ 佛国寺、 国立慶州博物館 慶州は新羅の都として、繁栄したということだが、国立慶州博物館に収 蔵されている新羅時代の副葬品などは、大変すばらしいものであった。 黄金の冠や馬具、曲玉など、往時の新羅王朝の隆盛が偲ばれる。 また、佛国寺は、世界遺産に指定される韓国でも有数の文化財であ り、新羅王朝時代に創建されたということである。大伽藍は、奈良の法隆 寺や東大寺も連想させるが、石垣の土台の上に極彩色で彫刻や装飾 の施された建物がならび、仏塔も石塔であるなど、日本の伽藍とは趣を 異にしていて大変、興味深かった。同じ仏教寺院でも、その国、土地の 風土によって、造りや様式が醸成されていくものと思った。周囲の木々も 美しく、紅葉の時期には一層鮮やかさをますものと思う。創建当時は、 境内に池が配置され寺院から水が流れ落ちていたというが、往時の美 しさは想像を超えていたに違いない。この貴重な文化遺産も、1593 年 の豊臣秀吉の文禄・慶長の役で、石垣を残して、破壊されたという。日 本人として申し訳ない気持ちになるとともに、紛争がもたらす文化への 災禍を思わずにいられない。今後の世界遺産教育の中にもこの視点を 入れることの重要さを感じた。 訪問先⑧ 牛浦沼、 生態教育院/環境学習 今回の研修で唯一の自然系の研修で、ラムサール条約に登録されて いる「牛浦沼」のフィールドトリップと生態教育院の訪問だったが、宮城 - 153 - 県にもラムサール条約湿地が2カ所有るので、それと対比しながら観察 できて、興味深かった。牛浦沼は、1998 年にラムサール条約湿地に登 録された韓国では、数少ない多様な生態系を見ることができる湿地であ る。生態教育院は、小学校をリフォームして教育院として活用する全国 で唯一の公立(国立)生態教育院である。3年生対象とする「ラムサール 条約ハッピィーツアー」(3時間:1時間半講義、1時間半フィールド学 習)などを企画し年間 4、2000 人が訪れ環境教育を受けるということであ り、今後は全学年に拡大するという。 湿地での活動としては、様々動植物の生態系の観察活動(望遠鏡で 同植物を観察)を行い、また、小学生向けビデオを作成し、①湿地の成 り立ち、②動植物の生息状況、③動植物・昆虫・魚類の生態と季節変化 (オニバス、鴨、ガン、白鳥などの渡り鳥)など学ばせ、国内最大の原始 的な自然を残す牛浦沼の湿原そのものが生命であり牛浦沼は自然史 博物館であるということを実感させ、豊かな生態系を残すため湿原の保 全の必要性させるということであった。また、①「沼にはどのような生き物 がいるか」、②「生命の土地、湿地への出会い」というガイドブックを作成 し、教師やボランティアにも教育を行っている。 午後には、生態教育院も訪問し、湿地を利用した環境教育について 説明と体験ができて、環境教育を基軸とするESDを推進している自分 にとってとても興味深かった。特に、3年を対象とした環境学習では、 「触れて、つくって、遊ぶ、使う活動」ということで、リサイクル(新聞紙)使 って帽子を作ったり、セロハンに水生生物を書いて 生息分布を表現し たりする活動や、タオギ(朱鷺)のつがいを中国からもらい、ウポ沼に復 活させる計画、個々にパズルをつくり、みんなで力を合わせて完成さ せ、自然界での役割の重要さを認識させる学習など、実際の観察や造 形などの体験に基づいた学習が展開されていた。これらは、水辺環境 を素材に環境学習のカリキュラムを開発・実践してきた、気仙沼の取組 と共通する部分もあるとともに、アクティビティーとして参考になるものも 数多くあった。 3.最も有意義であった内容: 国連大学のESD/RCEで交流があり、2005 年に、統栄市長とともに、気仙沼市のESD/RCEの活動 を視察に訪れた延世大学の Jung-Hee Sung 教授から韓国のESDについて講義を受けた。久しぶりにお 会いし、統栄市を中心に、韓国でもESDが進展していることを聞くことができて大変嬉しかった。 韓国も、日本と同じようにESDの必要性に対する教師及び保護者の認識は高くなく、その推進は難し い面があるようだが、韓国では、統栄市とユネスコ、延世大学が中心となり私たち気仙沼の取組と同じよう に公教育(学校教育)、非公的教育(博物館やNPO、産業界、行政等)とのネットワークと構築したり、教 - 154 - 師のためのESDのガイドブックを作成したりしながら、ESDの地域モデルづくりを進めていることに深く感 銘を受けた。 特に、学校の授業の中でのESDの推進として、(1)社会や環境ついての理解、(2)生態系・生命倫 理、(3)参加を引き出す、(4)地球市民として育成という段階的なESDの資質能力の育成や、統栄市の 地域性を考慮して、①海の環境、②地域の文化・伝統、③地域と国際的な価値観を重視したプログラム 作りは、私たちのめざす方向性と軌を同じくするものであり、今後ともESDの実践と推進システム作りを通 して、気仙沼と統栄市と日韓のESDの交流を図って行ければ幸いである。 ただ、今回、諸般の事情により、統栄市の学校を訪問し、その実践を生で視察できる機会に恵まれな かったが、今後何らかの機会を模索して、上記の交流を促進できればと願っている。 4.成果: 今回の招聘プログラムに参加して、韓国訪問が初めての私にとっては、この 10 日間の研修で、様々な 分野・角度から韓国に対する認識を深めることができ、これまでの韓国に対する固定観念を大きく転換を 図る大きな契機ともなった。明治の文明開化以降、日本は「脱亜入欧」を掲げ、欧米を中心とする国際関 係を重視してきたが、自分自身も、国際理解・国際連携は、米国や豪州など、英語圏に偏っていたように 思う。今回、私にとって韓国は、「近くて遠い国」が「近くて近い国」に変わった 10 日間であった。 具体的な個人的な成果として次のことがあげられる。 (1)韓国の経済発展や都市と農村の格差、南北朝鮮関係など政治的な背景、生活様式等を実際に自 分の目で見て感じられたこと。特に、山間部まで広がる高層マンション群には、驚かされた。 (2)韓国の学歴社会に向けた学校教育における受験学力を養成するための取組のすさまじさを実感し た。そのシステムの徹底ぶりと競争の激しさが、教育のみならず社会全体に広がっている。日本でも「学 力向上」が叫ばれているが、本当の「学力」とは何か。そのための教育とは、どうあるべきか。改めて考え させられるとともに、韓国にとってもESDの学びの必要性を感じた。 (3) 韓国の歴史や伝統、文化が自分の思っていた以上に、日本との結びつきが強いことを実感した。ま た、逆に、日本の文化や技術や生活様式が、韓国社会に与える影響の大きさも認識した。 (4)学校を訪問して、教師の教育にかける情熱や真摯な指導、そして、生徒たちの笑顔と屈託のなさが 印象に残った。学校教育において、教師と生徒の信頼関係が基盤であることは、国が違っても共通であ ることを再認識させられた。 (5)韓国においては、ASPやCCAPを通して、海外の学校や生徒ダイナミックに国際交流していることに 目を見張らされた。また、自分が携わった気仙沼市面瀬小学校のESDの取組を参考に、着手した統栄 市のESDの取組が着実に成果を上げていることを聞き、嬉しい思いであった。 5.今後の日韓交流について: 学校に帰って、子供たちと教員に今回の体験を共有することはもちろんである。気仙沼市は、2005 年 より国連大学からESDの地域拠点RCEとして認定され、日本ユネスコ国内委員会からもその取組につ いて高く評価されている。また、市内、16 の小中高校がASPの申請を行っており、新たな段階を迎えよう - 155 - としている。私の所属校もASPの申請をしているとともに、文部科学省から新学習指導要領の実施に向 けて「小学校における英語活動等国際理解活動」の指定を受けており、これらの国際レベル、地域レベ ル、学校レベルの取組を融合させたESDを推進したいと思っている。具体的には、英語教育をコミュニケ ーションの手段として活用し、韓国の学校と交流しながら 地域の自然や文化を素材にしたESDの国際 交流プログラムができればと思っている。 6.提案・助言: 今回のプログラムの日韓の教職員の交流を促進するものであるが、メインテーマは、ESD及びASPで あったと思う。ASPについてはASPnet 参加校を数校訪問し、その取組について説明を受け視察できた が、ESDに関しては、初日の講義以外は、学校視察等であまり話題に出ず、見えない部分が多かったと いう声があった。確かに、訪問した学校、交流した韓国教員からは、ASPとCCAPの言葉は聞かれても、 ESDと言葉をほとんど聞くことはなかった。これは、韓国の教育界及び教員のESDに対する認知度が低 いことに起因すると思われる。(日本側にも同じことが言えるが) しかしながら、このことは、韓国の学校で、ESDが実践されていないということを意味するものではない ASPnet やCCAPを通した国際交流や多文化共生プログラムもESDの一つのアプローチあるし、特殊 教育や山マウル高校の自然体験に基づく生態系の学習もESD的なアプローチである。 ただ、韓国の教職員が、自分たちのESDの取組として意識していないように思える。 また、このとことは、今回のプログラムの内容を見ても言える。8日間の訪問や研修内容が、一見ばらば らで網羅的に思われるが、実は、DMZはまさしく平和教育の、牛浦沼は環境教育の、慶州の仏国寺や 国立博物館は、世界遺産の優れたフィールドである。 ESD(Education for Sustainable Development)は、「持続可能な社会=未来の構築」のための教 育であり、その担い手を育成する挑戦である。すなわち「目的」の教育であって、何をやるかという固定さ れた「内容や学問分野」の教育ではない。国際理解教育、環境教育、平和教育、世界遺産教育は、「持 続可能な未来の担い手」を育成という頂上をめざすための、アプローチである。 このような視点に立って、韓国の学校教育や今回の研究プログラムを捉え直し、体系化して、参加する 日本教員と訪問校の韓国教員で、その方向性を共有すれば、今回の研修プログラムや韓国の教育との 交流が、一層輝きを増し、ユネスコの精神を教育実践で実現するプログラムとして意味づけられるものと 考える。 気仙沼市教育委員会 課長補佐兼指導主事 淺野 亮 1.総合所見: (1)課題・テーマ ①PISA型学力の育成に向けて、韓国における学力向上政策及び各学校における具体的な指導内容・ 方法がどのように展開されているか、その成果と課題について ②韓国における「持続発展教育(ESD)」について、地域や専門機関との連携を図った体験・探求型指 - 156 - 導プログラムが、学校教育において具体的にどのように展開されているか、その成果と課題について ③地球的な視野に立ち、国際感覚を豊かにするために、韓国において国際的コミュニケーション能力を 高めるための英語教育(外国語教育)及びASPnet ワーク活動が、学校教育において具体的にどのよう に展開されているか、その成果と課題について ④発達障害等を含め、障害のある児童生徒のニーズに応じた個別的・組織的・継続的な特別支援教育 が、韓国においてどのように展開されているのか、その成果と課題について (2)総合所見 はじめに、ACCU国際教育交流事「韓国政府日本教職員招へいプログラム」という素晴らしいプログ ラムに、日本国内代表の一員として参加させていただきましたことに厚く御礼申し上げます。特に、ACC U企画課長の木村さん、企画課の藤田さん、韓国ユネスコ国内委員会の李三悦事務総長、宋宗珍さん、 徐賢淑さん、通訳の方々、観光ガイドの方々など多くの関係機関の方々には、プログラム遂行に対する きめ細やかな御配慮や御説明、御案内をいただきましたこと、また訪問させていただいた学校や施設・家 庭において韓国の方々の心温まる親切で丁寧な歓待を受けましたことに心より感謝申し上げます。 私にとっては初めての韓国訪問でしたが、普通の観光旅行ではとうてい知り得ることのできない学校 や各種教育関係機関を訪問させていただき、それぞれの施設設備や経営内容・授業について見聞し、 各校の教師・生徒と意見交換する機会を得られたことは、教育に携わる者として韓国の教育事情を知り、 日本での日々の教育実践に生かす上での貴重な経験となりました。 さらに、DMZ(非武装中立地帯)や都羅山駅の視察では、今日まで続く世界史上最も長い東西冷戦 の緊張と対立の現状を体感でき、梵魚寺や仏国寺、慶州博物館の訪問では、新羅時代から続く文化遺 産を見聞し、壬辰倭乱という日本の侵略の爪痕を目の当たりにする機会が得られたことで、韓国の教育 の背景であり真髄とも言える思想と理念、歴史と文化等の一端を知ることができ、一日一日と韓国という 隣国への認識が深まっていくことを実感できました。 今回訪問させていただいたサンマウル高等学校、漢陽大学校師範大学付属高等学校、ソウル精進学 校、南星女子高等学校では、素晴らしい歓迎の垂れ幕が掲げられ、教師・生徒が列を成しての出迎えや 茶菓子による心温まる接待、学校概要説明資料の丁寧な準備、生徒たちによる見事なアトラクション等、 私たちの訪問を心から歓迎していただいているという気持ちが痛いほど伝わってきました。 韓国の教育事情を学ぶ中で、昨今の韓国は、有名大学進学を目指す受験学力の育成を目的とした かつての日本の知識偏重による貯金型学力を理想とした学歴社会の構図を成しており、塾の過熱等全 人教育の面からは弊害となる課題も顕在化してきていることを知りました。国としての教育施策の枠組み そのものについては日本と大きな違いはないものの、学校教育に対する国民の関心や政府・自治体の 熱意は強く、教育を施す側(行政・教師)も受ける側(児童生徒)も意識のレベルが日本より高く、視野も 広く、徹底されているように感じました。 今回訪問させていただいた学校がいずれも高水準の学校であったことは確かではありますが、特に、 国際的コミュニケーションツールとして不可欠な外国語教育が必須科目(英語)と選択科目(日本語、中 国語等)として必要時数が確保され、中・高校生の外国語習得能力、応用技能もトータル的に日本を大 きく上回っていることを痛感しました。 - 157 - また、ASPnet ワークを活用した海外の連携校とのダイナミックかつアクティブな国際交流実践、地球 的視野に立った高校生相互によるユネスコ共同プロジェクト(EARTH)の取組、対案学校として寄宿舎 生活を通して人・自然との対話を重視した自給自足型の環境農業学習の実践、障害のある生徒の潜在 能力を見いだし伸ばす取組等、学校と地域、専門機関、行政が一体となって豊かな国際感覚と望ましい 環境・人権倫理を育む素晴らしい教育が展開されていることに感銘を受けました。 実際、生徒たちと懇談した際に、自分のビジョンを明確に力強く語ることができる高校生の姿に、韓国 の教育の確かさを感じました。「世界の一翼を担い、韓国を誇る」人材を育成・輩出するため、公教育、非 公教育(私学)を問わず同等に財政支援する韓国政府の確固たる決意と態勢に、日本も学ぶべき点があ ると強く感じました。 牛浦沼湿原生態学習センターや山マウル高等学校等、ESDに向けた特色ある取組を行っている施 設の視察を通し、今後の日本での実践のために大変参考になる点も多くありましたが、事情により韓国の 小学校、特にESD/RCEとして発展的に実践し、気仙沼市と交流の深い統営市を訪問できなかったこ とを残念に思います。 最後に、ホームビジットの際に、心づくしの手料理で温かくおもてなしいただいた金鍾哲さん御家族に 心より御礼申し上げます、高校生の2人のお嬢さんも交え、将来の夢や進路についても和やかに語り合 ったことが、忘れられない思い出となりました。今回のプログラムで出会った方々との絆を大事にし、微力 ながら、今後日韓相互の教育交流の橋渡し役となり、その務めを果たしていくことこそがお世話になった 方々への御恩返しになると考えます。本当にありがとうございました。 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先①学校訪問 ・ 外 国 文 化 の 理 解 と 外 国 語 実 力 の 向 上 を 目 指 し た C C A P ( Cross ・ サンマウル高等学校 Cultural Awareness Programme)や世界市民意識を高め、行動参加能 ・ ソウル精進学校 力を育む EARTH(Earlier Awareness of Resouce(RCEs)、 Terrane、 ・ 漢陽大学校師範大学付 Health)等ASPnet を積極的・効果的に活用したマレーシアやモンゴル 属高等学校 等外国の高校生とのダイナミックな交流がとても参考になった。 南星女子高等学校 ・水準別教育課程や生徒の自学意識を高める放課後(夜間)学習の実 ・ 践等、学歴伸張及び特性教育を推進するための国家の財政支援や教 師の姿勢(熱意)の素晴らしさに感服した。 ・少人数による寄宿舎体制による望ましい人間関係構築力の育成、自 然環境に易しい有機農法を生かした勤労体験学習の実践等、対案学 校の理念と取組に感心した。 ・各学校とも韓国の伝統文化を大切にしながら、「創意・建学・共生」をキ ーコンセプトに世界市民の一人として韓国に誇りを持つ人間教育、個の 能力を伸張し地域社会に還元できる人的資源を創造する教育を展開 する姿勢が貫かれていることに感心した。 - 158 - 訪問先②機関訪問 ・韓国ユネスコ国内委員会では、韓国における教員評価制度の転換、 持続発展教育(ESD)に対する韓国の取組、学歴重視の英才教育の実 ・ 韓国ユネスコ国内委員会 践、ASP先進校の実践事例紹介等について、資料をもとに説明があっ ・ 牛浦湿原生態学習センタ たが、財政支援を含めた国家建設・人材育成に対する韓国政府の明確 ー(牛浦沼) な理念と強い意思を感じた。 ・1998 年にラムサール協約に加入し、多様な原生生物が生息し生態研 究調査及び環境教育の貴重な場ともなっている牛浦沼を散策し、宮城 県仙台広域RCE圏にある伊豆沼や蕪栗沼におけるESDへの取組と共 通した取組が実践されていると感じた。牛浦湿原生態学習センターで は、小学3年生を対象とした環境教育プログラムの一端を資料と指導場 面の見聞を通して説明いただいたが、学校の教育課程とのつながりや フィールドワークによる調査・観察体験、自然保護活動等への行動参加 のあり方等、持続発展教育(ESD)に向けた具体的なアクティブ・プログ ラム開発と充実が今後の課題であると感じた。 訪問先③ ・朝鮮半島の分断の歴史を語る上で避けては通れない米ソ冷戦と南北 文化遺跡・施設訪問 戦争について、すでに過去のことであるとは言え、実際には今日も続い ており、韓国国民にとっての民族的課題であることを実感した。第3トン ・ DMZ(非武装地帯) ネルの見学や都羅山展望台から見た北朝鮮領土、都羅山駅でまさに ・ 国立慶州博物館 一日3本しか通過しない列車に遭遇したときの異様な興奮等、新たな韓 ・ 梵魚寺 国の一面を知ることとができ、世界平和・地球平和の実現を理念とする ・ 仏国寺 ESDの真髄に迫る思いがした。軍事境界線をはさんだ南北2km の非武 装地帯が自然の生態系が豊かに保たれてきたことは皮肉なことのように も思えた。 ・新羅の首都であった古都・慶州の文化遺産を 10 万点以上所蔵する国 立慶州博物館を訪れた。広大な敷地の中には頭部が陥落した多数の 仏像が点在し、また考古館内部には先史時代から統一新羅までの美術 工芸品や金冠、冠飾り、馬飾り等、当時の栄華を物語る品々が展示さ れていた。韓国の力強い新羅文化を知り、今の教育にも脈々と受け継 がれているようにも思えた。 ・釜山最古の歴史をもつ韓国禅宗の総本山「梵魚寺」では、儒教社会 における仏教の歴史について見聞を深め、鉢盂供養(パルコギャン)と いう精進料理を実際の礼法に則って食する貴重な体験ができたことは 有意義であった。 ・新羅王朝の栄華をしのぶ韓国最大の仏教建築「仏国寺」を訪れ、秀吉 の侵略による焼失の痕跡の痛々しさと再建後の優美な美しさを備えた 新羅時代の伝統建築を堪能できた。 - 159 - 訪問先④ 文化体験 ・話には聞いていたものの、まさに百聞は一見にしかずのごとく、エネル ・ ギッシュな公演に時間の経つのも忘れ、大興奮した。韓国の伝統的な 文化公演 「NANTA(ナンタ)」 ・ サムルノリの軽快かつ独特なリズムにのせて、ハードな乱打とダンス、観 伝統工芸体験 衆をも巻き込み、笑いのツボを押さえたコミカルな仕掛け等、2時間程の 「チャムスン(人形)」 公演に引き込まれた。世界 27 カ国、212 の都市で公演されているNAN TA(ナンタ)であるが、今回のプログラムにおいて本場韓国で観ることが できたことは感無量である。 ・牛浦湿原生態学習センターにおいて、人々の無病息災を祈る思いが 込められた木造り人形「チャムスン」の制作体験をさせていただいた。地 域の豊かな生態系を象徴するかのように間伐材を利用し、独特な表情 をした木の精霊と小枝にとまる小鳥を表現したユニークな伝統工芸品で あり、韓国訪問の思い出の一品とすることができた。 訪問先⑤ ホームビジット ・大阪教育大学附属高等学校池田校舎の桑原義照先生と共に金鍾哲 金鍾哲 さんのお宅を訪問させていただいた。金さんは、かつて大阪大学大学 (キム・ジョンチョル Kim 院基礎工学研究科の博士課程を修了された研究者で、現在は地元の Jong-Cheol)さんの 中学校の数学の教師をされているが、韓国教育庁の方々とのつながり 自宅訪問 も深く、アメリカやロシア、中国、日本等を訪れながら、現在は韓国の教 科書の編成や教育プログラムの提唱等、主要な教育施策に携わってい る方である。ホームビジットの際には、日韓の学校教育が抱える課題や 進むべき方向性、子育て問題、日韓の友好関係樹立のために自分た ちができること等について和やかにかつ熱く語り合うことができた。奥様 の心がこもったおいしい手料理をご馳走になり、盃を傾けながら有意義 な一時を過ごした。高校生の2人の娘さんも加わり、かつて小学生時代 日本に滞在した1年間に築かれた親友との絆が今も続いていることが掲 載された日本の新聞記事を拝見し感激した。今回の出会いを大切に育 みたいと願う。 3.最も有意義であった内容: 今回の研修プログラム全てが有意義であり、どれかに限定することは難しいところですが、9日間の韓国 訪問で特に有意義だったことを揚げるとすれば次の3つであると言えます。 (1) 学校訪問 (ASP校としての先進的取組、創意ある学校経営、授業参観、教師や生徒との情報交換) 学校教育に携わる立場として、やはり学校訪問を通して見聞できたことが最も有意義であったと思いま す。3校の高等学校と1校の特別支援学校を訪問させていただきましたが、いずれの学校においても韓 国の授業の実際を参観でき、各校における学校教育目標(理念)や人材資源として育むべき資質と能力 の内容と指導法、そのための創意ある教育課程の編成、熱意ある教師の姿勢、学ぶ目的を明確にし明る - 160 - く素直で、主体的でひたむきに学習に取り組む生徒たちの姿に多くの刺激を受けました。特に、言語・社 会系コース、数学・科学系コース、芸術系コースの中から自分の将来を見据えたビジョンを抱きつつ、国 際的な視野を広げ、コミュニケーションツール(language for Interpret)として外国語能力を高め活 用できている生徒の姿には、感嘆の域を通り越し、日本人として危機感すら覚えました。 特に、国際的なかかわりが不可欠となっている今日、グローバルな知性と感性を育むためのEARTH ( Earlier Awareness of Resource( R C E s) 、 Terrane 、 Health ) や C C A P ( Cross Cultural Awareness Programme)の交流事業を積極的に推進している個々の教師の熱意と創意・運営能力、学 校間・教師間のチームワークと韓国ユネスコ国内委員会や大学等専門機関とのネットワークの盤石性と 発展性に、国をあげて「人的資源」を育成するために国家予算の約 20%を教育費に充て、世界に誇れる 人間を輩出しようとする韓国の戦略すら感じることができました。 さらに、訪問した学校の教員以外にも、短時間ながらも今回訪問することができなかった小学校や中 学校の教員との意見交換会が持てたことは、日韓両国の教育に対する取組の共通点や相違点を確認し 合いながら、次世代を担う児童生徒を教育するにあたって何が大切か、教育に携わる者としてどうあるべ きかを考えるよい機会となりました。漢陽大学校師範大学付属高等学校で、直接高校生と対話し彼女ら の考えを直接聞く機会が得られたことも大きな価値がありました。 (2)ホームビジット (韓国の家庭・家族との出会い、心のコミュニケーション、相互理解の架け橋) 今回のプログラムにおいて、不安感を抱いたことの一つがホームビジットでした。対話上必要となる言 語のことも心配でしたが、どのような職業の方で、どのような考えを持っておられるのか、家庭(家族)の雰 囲気はどうか等、日本を出発する前のお土産選びの段階から気になっていたことでもありました。 ところが、いざ蓋を開けてみると、この度私たちを受け入れてくださった金鍾哲(Kim Jong-choel)さんは、 かつて日本に滞在された経験もある日本語が堪能な方で、しかも同職の教育者。ご本人はもとより奥様、 2人の高校生の娘さんも大変気さくな御家族で、あっという間に不安な気持ちは吹き飛んでしまいまし た。 何と言っても酒が入ることでお互いにリラックスして、片言の韓国語や日本語、英語をミックスしながら 楽しく和やかな一時を満喫することができました。熱く教育談義を交わしたこと、娘さんの日本の親友との 絆が日本の新聞記事に掲載されたこと、娘さんが2人とも将来の職業を見据えて努力していること等、表 面的な話題だけでなく、個人的な話題にまで踏み込んだ会話が自然とできていたこと等、心と心の交流 が実現できたことをうれしく思っています。 ホームビジットの2日後にも、金さんから連絡をいただき、大阪の桑原先生と3人で楽しく飲み、食べ、カラ オケを歌ったことは良き思い出となりました。金さん御家族とは、今回の出会いをきっかけに、個人的に今 後も連絡を取り合い、長くお付き合いをさせていただきたいと願っております。 (2) プログラム参加者の相互交流 (韓国ユネスコ国内委員会担当者、ACCU企画担当者、各県参加教員等とのネットワーク) 今回有意義であったことの一つは、何と言っても全国各地からこのプログラムに参加した先生方と出 会い、様々な情報交換ができたこと、さらに、この充実したプログラムを企画し、その円滑な遂行に御尽 力いただいた韓国ユネスコ国内委員会のスタッフの方々、そして昨年度来気仙沼のESD推進に多大な 御支援とアドバイスをいただいているACCU企画課のスタッフの方々、さらに通訳の方々、観光ガイドの - 161 - 方々等と、言葉を超えた心のコミュニケーションができたこと、さらにはESD及びASPとしての今後の実 践につながる人的ネットワークを築き、発展させていくための土台作りができたことであると思います。この 出会いを互いの実践に生かし、強固なものにしていければと考えています。 4.成果: 韓国の教育事情について、視察を通して直接韓国の教育の先進性と課題について学んだり、日本の教 育の良さと改善すべき点について見直したりできる貴重な経験をさせていただいたことが最も大きな成果 ですが、韓国の教育が予想以上に多義にわたって推進されていることに驚きました。個人としての研修テ ーマに関する成果については、前項までにも詳しく述べましたが、今回のプログラムの成果として次の5 点に集約できます。 学校訪問や教育機関、文化施設等への訪問や説明を通して韓国の教育事情についての認識を深める とともに、日本の教育のあり方を見直し、それぞれのよさと改善すべき点を確認することができたこと。 (1)ASP(ユネスコスクール)ネットワークを生かした韓国の先進的・特徴的な国際交流活動の取組につ いて知り、今後の実践において参考となる具体的な事例に出会えたこと。 (2)韓国における持続発展教育(ESD)の現状を知り、国レベル、地域レベル、学校レベルでの推進体 制と具体的な実践事例について理解を深めることができたこと。 (3)文化遺跡や施設訪問及びホームビジット等を通して、韓国の歴史的背景と生活文化の一端につい ての認識を深めることができたこと。 (4)KNCU及びACCU担当者、プログラム参加教員との人的ネットワークの基盤を構築できたこと。 5.今後の日韓交流について: 気仙沼市では、2002 年に気仙沼市立面瀬小学校が日米教育委員会日本フルブライトメモリアル基金 (JFMF)マスターティーチャープログラム(MTP)に選抜されたのを契機に、教員の相互訪問やインター ネットでの交流を通して、グローバルな視点から生活科及び総合的な学習の時間を中心に日米協同の 環境学習プログラムを開発し実践してきました。さらに、2005 年からは、この日米共同の国際環境教育の 取組に、面瀬中学校と気仙沼高等学校が参加した小・中・高校が連携した取組へと発展し、その成果は 地域の他の学校及び他地域へも波及しています。 また、2004 年には、それまでの面瀬小学校を核とする気仙沼市の環境教育の実践をベースに、それ を支援する宮城教育大学と気仙沼市教育委員会との連携がスタートしました。 これらの取組が評価され、2005 年には、世界レベルで「国連・持続可能な開発のための教育」(ESD)を 推進するために、国連大学が提唱する「国連・持続可能な開発のための教育に関する地域の拠点」(RC E)に、世界7カ所の最初の1つに仙台市・旧田尻町とともに「仙台広域圏」として認定されました。さらに、 気仙沼市では、モデル地域としてESDの一層の推進を図るべく、「気仙沼市ESD/RCE推進委員会」を 設立し、地域のネットワークを構築し、その地域力を生かしながら、より広範な協力体制のもとで地域と密 着したESDを推進しています。 - 162 - このことから、昨年度の1月に「ACCU日本政府韓国教職員招へいプログラム」として、韓国の小学校 教員約 30 名が来市し、気仙沼市及び市内小学校でのESDの取組について視察されました。現在、韓 国内では唯一のRCE地域としてESDを推進している統営市の実践は、面瀬小学校をモデルにしたとさ れています。 1月の韓国教員による日本(気仙沼市)訪問、今回の日本教員による韓国訪問を一つの契機とし、気 仙沼市立小・中・高校と韓国(例えば統営市)の小・中・高校との連携をスタートさせ、教員の相互訪問や インターネットによる児童生徒の学習交流等、グローバルな視点での日韓共同によるESD・環境教育プ ログラムの開発と実践を実現させ、東アジア圏域におけるESD推進の牽引役となればと考えています。 そのためにも、今回の韓国訪問によって築かれた日韓ネットワークをさらに強固なもの、将来につながる ものとしていきたいと考えています。 6.提案・助言: 今回のプログラムにおいては、充実した内容での企画と、日々オンタイムでプログラムを遂行していただ いたことに深く感謝していますが、さらによいプログラムにしていくために、次の3点について御検討いた だければ幸いです。 (1)今回の学校訪問では、特にBグループの訪問校種が高等学校3校と特別支援学校1校であったので、 できれば小・中学校のいずれかを含め、バランスのよい校種設定にしていただければと思います。また、 今回の訪問校がいずれも高水準レベルの学校及び顕著な学校運営をされている学校であったことから、 一般の学校の様子も視察できる機会を設定していただければと思います。 (2)今回の訪問校は、ユネスコスクール(ASP)として、グローバルな視点から先進的な他国文化理解教 育、外国語教育を展開されており大いに参考になる点がありましたが、サンマウル高等学校に加えてES Dを推進している小・中学校についても視察できる機会を設定していただければと思います。 (3) 今回の学校訪問では、教師や生徒との懇談会の場が設定されていましたが、短時間でのあわただ しい意見交換となってしまった点が否定できません。訪問学校または施設の数を多少減らしてもかま いませんので、じっくりと韓国の教員・生徒と話し合える時間(1時間程度)を設定していただければ と思います。 さいたま市立泰平小学校 教諭 岩崎 弓子 1.総合所見: 今回の韓国政府日本教職員招へいプログラムに参加させていただき、本当にありがとうございました。 多くの関係者の方々が、プログラムの計画から実際の運営まできめ細かく配慮しご苦労いただきましたお かげで、大変に貴重な体験をさせていただきました。韓国の文化、教育、自然などバラエティに富んだ内 容で、バランスよく見学・体験できる素晴らしいプログラムだったと思います。 - 163 - なかでも感銘を受けたのは、特色ある教育実践をしておられる各学校見学でした。自然を愛し、自立 する人間を育てることを目指すサンマウル高等学校。高度な教育で、世界に羽ばたく優秀な人材育成を 目指す漢陽大付属高等学校や南星女子高等学校。障害に負けず、一人ひとりの可能性を伸ばす教育 を実践するソウル精進学校。どの学校見学でも、先生方や生徒の皆さんの温かい歓迎をいただき、様々 な教育活動や学校施設の詳細な説明を受け、私としても実り多く思い出深い経験となりました。 本プログラムに臨むにあたり事前に設定した私個人のテーマとしては、日本以外の国の学校現場を実 際に見学して、教員としての見聞を広めたいということでした。その目標はある程度達成されたと思います。 ある程度といいますのは、今回残念ながら小学校訪問が実現しなかったこと、Bグループには中学校訪 問の計画がなかったことからです。ですが、韓国の教育水準の高さを感じられた進学校と、自然とふれあ いながらスローライフの教育を展開する代案学校という、両極端ともいえる高校見学を通じて、教育の在 り方について真剣に考える機会となりました。もっとじっくり考えて自分なりの考えをまとめていきたいと思 います。 DMZの訪問やホームビジットなど、通常の観光旅行ではなかなか実現できないプログラムの印象も大 変に強いものがありました。北朝鮮は日本人にとっても不気味で何をするかわからない国というイメージ がありますが、国境を接している韓国にとっては有事を想定して常に備えていなければならない相手国、 しかも同じ民族として南北統一を目指しているという一口では表せない複雑な関係の国なのでしょう。そ の現場に一瞬でも触れることができたのは私にとって大きな意味のある体験となりました。ホームビジット では、訪問先のご家庭から温かいもてなしを受け、大変に楽しい印象的な一夜を過ごすことができたこと を本当に感謝しております。実は、日本と韓国との間に持ち上がった竹島問題について認識や理解が不 十分で、ただただ不安を感じながらあまり事前の準備もしないうちに日本出発の日を迎えてしまいまし た。 ですが、そのような不安はユネスコ韓国委員会の皆様の温かい歓迎の笑顔で初日に解消されました。 また、ご用意いただいたホテルやバス、食事などが素晴らしいものでしたし、アシスタントや通訳・ガイドの 方々のおかげで慣れない韓国の旅も何一つ不自由なこともなく過ごすことができました。ありがとうござい ました。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① DMZ(非武装中立地帯) 所 見 北朝鮮の南侵用第3地下トンネルでは、暗く冷たい水が滴り落ちる地 下トンネルに言葉もなくしてしまうほどの衝撃を受けました。韓国と北朝 鮮がたどってきた悲しくも恐ろしい現実が目の前にあり、未だに現在進 行形であることが感じられたのです。一方でこれを掘っていた北朝鮮兵 士たちの心情はどんなものだったのだろうと想像してみましたが、私など にわかるはずもありません。 明るい日差しの中に出てきてほっとしつつ、次に都羅展望台から 38 度 線の向こうに広がる北朝鮮の地を自分の目で確かに見ることができまし た。ジオラマを棒で指し示しながら日本語で説明してくれた若い兵士 - 164 - や、第3トンネルの中をぞろぞろと歩いていた大勢の幼さが残るほどの 若い兵士たちの姿に、韓国の徴兵制度についてもいろいろ考えさせら れました。 韓国最北端の駅である都羅山駅はまた、大陸へと至る最初の駅である という説明を受け、折しも入構してきた列車に早期の南北統一を願わず にいられない気持ちになりました。平和を願う気持ちを日本の子どもた ちにも伝えていきたいです。 訪問先② サンマウル高等学校 農村地帯の明るい色の煉瓦の壁の平屋の建物が並ぶ一角に到着し、 そこがサンマウル高等学校であることがわかったときたいへんびっくりし ました。 あたたかみのある丸太小屋のような食堂に通されて教育理念や教育カ リキュラムについて説明を受けたり、実際の校内見学では農業体験の授 業や教室・寄宿舎・エコトイレの見学をしたりして、学歴社会一辺倒だと ばかり思っていた韓国教育を見直しました。確固たる信念を持って、独 自の教育に取り組んでいる学校もあるのだなと感心しました。 生徒たちは生き生きと表情豊かで大変楽しそうに様々な活動に取り組 んでいましたし、食堂に戻ってから生徒たちとの親しい交流の時間も設 定され、学校のことや将来の夢についての質問に明るく答える生徒たち と楽しい時間を過ごすことができました。夕食も食堂で学校給食をいた だき、心温まる学校訪問となりました。 訪問先③ ソウル精進学校 校長先生が最初のご挨拶で「ふるさと」を歌ってくださったときには、う れしくて胸が熱くなりました。いろいろな行事や学習活動、各団体との交 流の様子などのスライド写真はどの子の顔もきらきらして、生きている喜 びを感じながら日々を過ごしているんだなと思いました。私が以前勤め ていた養護学校はどの児童も障害が大変重く、医療や養護・訓練が重 要でした。それに比べると走ったり、会話をしたり、楽器を演奏したりでき るので障害は軽いのでしょうが、各自生きる力を身に付けて卒業後も生 活を豊かにしていってほしいと思いました。 訪問先④ 素晴らしい教育実践や施設の数々を見せていただき、この環境でしっ 漢陽大学校師範大学 かり勉強し自分の力を信じて伸ばしていこうとする生徒たちが大変輝い 付属高等学校 ていました。どの生徒も優秀で人柄も優れているのでしょう。何人かの女 子生徒と交流を持ちましたが、言葉以外にも何とかコミュニケーションを とろうとにこやかに接してくれて、折り紙細工を一緒に作って楽しい時間 となりました。ただ自習室の説明には、そんなに長時間勉強して厳しい 競争に身を置いて、人間的な心の成長などに問題は出ないのだろうか と少し心配になりました。 - 165 - 訪問先⑤ 梵魚寺 韓国の禅宗総本山というお話を聞いて大変身の引き締まる思いがし ておりましたが、お坊様の食事の作法は修行の一つであり、日々の糧を ありがたくいただいて何事にも感謝しつつ物事への執着を捨て去って いくというようなお話が興味深かったです。美しいお寺の建物、お祀りし てある仏様の一つひとつを丁寧に説明してくださり、ほんの少しですが 仏教の心に触れた気がしました。 訪問先⑥ 牛浦沼 広大な湿地帯を展望台から見下ろしたとき、この自然がこれからも大 切に守られていくといいなと心から思いました。世界的にも貴重なオニ バスを始めとする水草群、美しく優雅な水鳥たち、数多くの水生昆虫た ちのことを、子どもたちが身近に感じられるように教育し自然を愛する心 を育てていくのは素晴らしいことだと思います。また、伝統工芸体験とし て、チャムスンとソッテ作りは大変楽しく興味深く、いい記念となりまし た。 訪問先⑦ 南星女子高等学校 校門を入るとたくさんの女子生徒が拍手で迎えてくれ、また、ホームビ ジット先の具先生にも再びお会いできてうれしく温かい思いがしました。 キリスト教系のミッションスクールということで、いかにも品の良い優しげ な生徒たちが一生懸命歓迎の演技をしてくれたり、真剣に授業に取り組 んだりしている様子に感心しました。 数学、英語、日本語の授業は静かに熱心に進められておりましたが、 浴衣の着付け実演が始まるとうれしそうに笑いさざめく姿は、大変かわ いらしかったです。 訪問先⑧ 国立慶州博物館・佛国寺 慶州博物館では、貴重な遺物の数々を興味深く見学しました。石器 時代から青銅器時代にかけての土器は、日本のものとよく似ているのに 文様がやはりどこか違う、不思議な感じがしました。馬具や金冠の美しさ に思わず息をのみました。 佛国寺では、美しい新羅や朝鮮時代の建築物が豊臣秀吉の朝鮮出 兵でほとんど焼失してしまったこと、復元された伽藍一つひとつに深い 意味のあることなどを教えていただいて、木々に囲まれ涼やかな風が吹 き渡る境内を大変楽しく散策することができました。美しく聡明なガイド の方に厚くお礼を申し上げます。 3.最も有意義であった内容: 各学校及び文化遺産等の見学など有意義な内容がぎっしりと詰まっていたプログラムの中で最も有意 義であった内容を選ぶことは難しいですが、やはりホームビジットで韓国の一般のご家庭にお邪魔させて いただいたことが大変印象に残り貴重な体験だったと思います。言葉も通じないし、手土産にどんなもの を持っていったらよいだろうかなどととりとめもないことで心配しておりましたが、満面の笑みで「アンニョン ハセヨ」とご挨拶いただいたときに不安は消えました。手作りの家庭料理をご馳走になり、お互いの家族 - 166 - の写真を見せ合ったり、折り紙でこまを作ったりして大変楽しい交流の時間を持つことができました。しか し実をいいますと、そのお宅のお嬢さんの日本語がお上手だったのです。大変ほっとしたことを白状いた します。 4.成果: 初めての韓国訪問ということもあり、韓国という国に対して漠然とした不安を抱えていましたが、実際に 訪れてみて非常に良い印象を持ちました。ユネスコ韓国の方々を始め、ガイドや通訳の皆さん、各訪問 先の方々皆さんがとても親切で温かい心で迎えてくれているのを感じたからです。 日本と韓国の歴史については感情的にも割り切れないこともあるでしょうし、今まさに竹島という大きな 問題も持ち上がっています。ですが、相互理解とはこうして直接会って語り合うことが第一歩なんだなと思 いました。私の場合は、自分の目で見て、耳で聞いて、心で感じて、「韓国を知ろう」という思いでこのプロ グラムに参加しましたので、入り口の段階ではほぼ達成できたと思っています。 また、改めて韓国の教育水準の高さを知るとともに、代案学校と呼ばれる学校の存在を知ることもでき ました。韓国の文化や自然についても触れることができました。今後も韓国についての様々な情報を集 め勉強し、勤務校の同僚教員や児童たちにもこの体験を伝え広げていきたいと思います。 5.今後の日韓交流について: 今回、お恥ずかしいことにASPnetおよびESDという言葉の意味さえよく知らないままこのプログラム に参加させていただきました。さらに研修を積んでどのような取り組みが実現可能なのか考えていきたい と思います。現段階では、全くわかりません。 個人的には、今回のプログラムに参加した内容を児童にもわかりやすい形にまとめ、廊下掲示等で紹 介していきたいです。担任している低学年児童にはもう少し易しい内容で、例えば韓国の食べ物や言 葉・文化について折にふれて紹介していきたいと思っております。 6.提案・助言: ・ 韓国における一般的な公立の小・中学校や幼稚園の見学なども実現できると良かったと思います。 日韓の大きな問題がありますが、ぜひユネスコの理念である世界平和を実現すべく両国がより一層 親しく交流できればよいと思います。 ・ 日本側教員の語学力に大きな問題があるとは思いますが、韓国の学校の教職員との意見交換の時 間をもう少し長くとっていただきたかったです。 ・ レポートをまとめたり、いただいた資料などを整理したりする時間がもう少し取れると良かったと思いま す。また、帰国してからグループ報告書提出というのはなかなか大変です。一部の参加者だけに大 きな負担がかかるのもおかしい感じがします。滞在期間中に何とか提出できるように時間的な余裕が ほしかったです。 ・ ご用意いただいたホテルのグレードが高かったので費用がかかりすぎたのではないでしょうか。お招 きいただいた立場ですが申し訳ない気がしております。相部屋というのは日本人同士でも気詰まりな - 167 - ことがあるので、一人部屋というのは大変ありがたかったのですが。 ・ 日本においての事前のオリエンテーションが前日午後でしたので、準備や内容についての不安があ りました。日本各地からの参加で致し方ないことなのだと思いますが、もう少し早い時期に実施できな いものでしょうか。 最後に繰り返しになりますが、今回の韓国政府日本教職員招へいプログラムに参加させていただき、 本当にありがとうございました。一生懸命に見たり、聞いたり、感じたりしてきたことを今後の教育活動に生 かしていきたいと思います。 宝塚市南ひばりガ丘中学校 教諭 本田 芳孝 1. 総合所見: テーマ ・ 韓国の教育事情に触れる。 それも中学校、高校、公立、私立、共学、別学と様々な学校を訪問する。 ・ 家庭訪問で実際に韓国の家庭事情に触れる。 外からでは見えない韓国の家庭を訪問して、互いの文化の違いを交流したい。 ・ 韓国の歴史、文化に触れる。 古くから日本が多くの影響を受けた韓国の歴史・文化に学ぶ。 日本以上に受験戦争の厳しい韓国で山マウル高校(代案学校)に出会いました。学校の施設、授業 スタイルなどその教育理念に大いに心を打たれました。日本ではともすれば、落ちこぼれの烙印を押され かねない教育課程にも関わらず、単なる受験学力でなく生きる力を育む新しい<教育の在り方>を示し ていました。 そして、生徒も教員も何よりも行政までもがその理念を理解し自信を持って推進している様子に感動を 覚えました。日本にもそういった方向を目指した学校もなくはないのですが、まず経営が成り立たないし、 将来にも不安を残すし、何よりも行政の理解が全く得られていないのが現状です。ただ、それ以外の多く の学校でも子どもたちの素直な姿に接することが出来ほっとしました。 家庭訪問では、釜山の高校の先生の実家をお邪魔させて頂きました。それこそお膳の脚が折れんば かりの料理がテーブルに並べられ、焼酎を酌み交わしながらお父様と話が弾みました。小学校3年で解 放を迎えられ、63 年が経過しているにも拘らず食後の桃を食べているとき「桃太郎さん」を習ったことをか たことの日本語で語られました。 今回出会った文化では何と言っても「ナンタ(乱打)」でした。純粋のサムルノリ、プンムル、モ、など古 - 168 - 典は鑑賞してきたのですが、そんな古典をベースにした公演に出会えて感動しました。特に演出の素晴 らしさもさることながら、言葉がわからなくても誰にでも理解できる構成がすごかったです。世界中に「ナン タ」が受け入れられている理由がうなずけました。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① DMZ 所 見 都羅山へは、去年も4人の先生方を案内したところです。数年前からソ ウル駅から個人でも行けることを知り、今回で3度目でした。それまでも、 烏頭山の展望台からもまた、東海からも「北朝鮮」を望む場所を訪れた ことがあるのですが、何度訪れても思うのは、分断の現実を我々日本人 がどう受け止めるのかだと思っています。ほんの少しでも、日本の責任 に思いをはせる必要性を感じずにはいられないのです。 訪問先② 山マウル高等学校 とにかく、教育理念に大賛成です。日本も韓国と同様受験体制、点数 主義がはびこり、教育とはおよそかけ離れた学校状況が蔓延している 中、山マウル高校を訪問し、ここに真の教育を見た気がしました。 訪問先③ 善隣中学校 新学期はじまって2日目にも拘わらず、今年1月に学校を訪問された 時とは雲泥の差の歓迎ぶりでした。とにかく、保護者、先生方、生徒あ げてのもてなしに感動しました。生徒たちの出し物も最高でした。それ に、給食の味付けに至るまでの心遣いが本当に韓国的でした。何しろ あのトッポッキが全然辛くないのです。勿論赤くも無く。 訪問先④ 果川中央高等学校 公立の高校ということで、どうしても日本と比較してしまうのですが、結 構人懐っこい生徒もいたり、少しホットしました。共学でしかも、男女同室 での授業にも何故か感激しました(善隣中学校は男女別クラスだったの で)。 ただ、過度の受験戦争は日本同様大変な様子でした。 訪問先⑤ 梵魚寺 ソウルにある曹渓寺には何度か行ったことがあるのですが、日本のお 寺にはない韓国の人たちの信仰に対する熱心さに驚かされたものでし た。今回も、日曜だということもあってか、子どもを連れた家族連れが多 く見られました。びっくりしたのは、新学期になって学校に行ってみると、 私の学校の生徒(昨年にも「こども朝鮮通信使 2007」で釜山に)が、26 日から 28 日にかけて釜山に滞在し、宿泊はこの梵魚寺にテンプル・ス テイしたそうです。 - 169 - 訪問先⑥ 牛浦沼 生態環境学習 身近にある生態系を地域の子ども、さらには一般市民に広げようと最 大限に有効利用されている様子が素晴らしいです。環境学習(広い意 味で平和学習)では命の大切さを学ぶのだと思っています。そして、そ のような学習には言葉はいらないのでしょう。実際に命に触れることで、 人の中に平和の種が蒔かれているのですから。大変参考になりました。 訪問先⑦ 南星女子高等学校 ソウルの学校と同様、最大限のもてなしでした。頂いた「学校教育計画 書」の最後に、学生・教師・保護者対象のアンケートがあり、興味深く読 ませて頂きました。ただ、このアンケートの結果をどのように活用されるの かお聞きしたかったです。聞きにくい設問(特に学生に、例えば教師へ の理想像、いじめ、喫煙の体験など)もあったのですが、大切な試みだ と思いました。 3.最も有意義であった内容: 学校訪問に尽きます。特に新学期が始まったばかりにも拘わらず快く授業を公開して頂き、さらには懇 談会で学校の様子などを余すととこなくお話頂き、互いに胸襟を開けたことが最も素晴らしい経験でした。 あと、成果にも書いているのですが、釜山での家庭訪問も有意義でした。こちらは、先生の実家にお招き 頂き、ご両親からのお話が楽しい時間を過ごすことができました。 4.成果: 第一に韓国の教育事情について、中学校・高校・公立・私立・共学・別学などの多様な学校を訪問す ることで日本との差異、それも良さも今一つなところなどについて比較することができました。特に素晴ら しいと感じたのが、小学校からの使える英語教育と学校設備の充実です。日本ではまだまだM・B・C (口・教科書・チョーク)教育が全聖の中、教育機器がどの教室でも使用されているのに驚かされました。 第二に、やはり生徒たちとの交流です。山マウル高校生(江華島)、善隣中学生、果川中央高校生(ソウ ル)、南星女子高校生(釜山)たちの、中でもいつ寝てるのかと思われるような高校生たちの屈託のない 笑顔に出会えてほっとしました。第三に、釜山での家庭訪問です。実際に家庭に訪問できしかも解放前 に日本語での授業を経験された(国民学校3年まで)お父様といろいろお話ができました。何よりも心暖ま るもてなしが嬉しかったです。 5.今後の日韓交流について: これまでも、毎年夏休み(3月から韓国は新学期ですので授業参観が可能)や夏休み(8日間と比較的 長く滞在が可能)に生徒や先生たちや普通の人たちを案内してきました。 どうしてか、それは、ホントに実際にその国を訪れること、そして自分の目で見ること、食べること、歩い てみること、人に出会い、しゃべることがまさに「百聞は一見にしかず」だと思っているからです。そうするこ - 170 - とで、裸の韓国に会えるのです。勿論そんな中、ある小学校の校庭で「伊藤博文!」と叫んだ中学生がい ました(1997 年夏、木蒲にて)。彼は、あとでこんなことを言いました。「まだまだ日本人は嫌われているの ですね」。 また、ある高校の音楽の時間に「独島は我らの領土」といった歌を聞かされたこともありました(2005 年 春、城南市の城―女子高校にて)。 でも、真の日本と韓国の交流なんて我々日本人にとってそこから出発するしかあり得ないのです。うわ べだけのきれいごとで済ませるほど、単純ではないのです。独島問題、慰安婦問題、靖国神社参拝問 題・教科書問題はじめ過去の未清算な問題のすべてがのしかかってくるのです。そう考えるから、一人で も多くの日本人が訪韓して欲しいものだと思っています。 6.提案・助言: 様々な参加者の要求を 100%満たすことは不可能だと思っています。 ただ、今回参加して感じたことは、宿泊のホテルが豪華過ぎだと思いました。気持ちよく過ごしてもらいた いという韓国ユネスコ国内委員会のご好意は十分にわかるのです。それに、単なる観光客として、であれ ばどんな豪華なホテルに泊まろうがそれは自由だと思いますが、我々の趣旨を考えればあまりにも豪華 な宿舎の利用は間違っているのではないでしょうか。それと、今回の滞在地がソウルと釜山の2箇所だっ たのですが、是非とも地方を候補に入れてください。別にどこでも良いのです、ソウルや釜山といった大 都市だけでなくそれ以外の土地にも触れることでよりその国の理解につながると思うからです。 宝塚市立中山五月台幼稚園 教諭 長野 寿子 1.総合所見: 昨年度、1月 30 日に韓国教職員や韓国ユネスコ関係者の方々が、本園を訪問され、本園の教育に ついて熱心に耳を傾けてくださったり、取り組みや教育内容について多角的に質問をしたりされました。 また、園児と遊んだり、本園の遊び場である、裏山に一緒に登ったりと楽しいかかわりをいっぱいしました。 その時の先生達の表情は豊かで、子どもに温かく寄り添ってくださいましたので、子ども達はすくに心を 開いて触れ合っていくことができました。お互いに言葉は通じなくとも、目と目、手と手、心と心が触れ合う ことで、思いは通じ合うのだと感動しました。 このことがきっかけとなり、是非、韓国の学校や幼稚園の教育の現状や成果や課題、施設等々につい て学びたいと興味や関心をもち、本プログラムに参加することになりました。残念ながら、幼稚園は夏休 み中で見学の機会はありませんでしたが、養護学校、高等学校の訪問や教師との触れ合いは、有意義 な体験でした。また、このプログラムに参加して、出会ったすべての方々の温かさ、やさしさ、きめ細やか な心遣いに触れ、感動と感謝でいっぱいです。 最初に見学した、非武装地帯はとても衝撃的でした。同じ国でありながら、軍事分界線が敷かれてい ることに、胸が締め付けられるような思いはぬぐいきれません。第三地下トンネル映像館内の展示写真で、 鉄条網を握り締め、遣る瀬無い、悲痛な表情をしている老人の写真が目に焼きついて、今もなお心から 離れません。韓国の人たちが、「都羅山駅は、韓国最終駅ではなく、未来に向かう出発駅である」と願っ - 171 - ているとガイドさん説明を聞き、一日も早く、その日が来ることを祈願しました。 韓国の教育はとても熱心で、政府も人材育成に力をいれており、教育費の占める割合が大きいという 印象がある中、サンマウル高等学校の生態農業教育及び、環境教育には、感動すると共に、本園の教 育理念と共通するところがあり、共感しました。食堂での夕食は、学校で収穫した物が食材として調理さ れていたので、生徒や先生、ボランティアの方々の愛情と食べ物の大切さをしみじみと感じ、感謝して頂 きました。 精進学校は、ソウル市初の公立養護学校で、在校生一人一人の障害に添ったきめ細やかな指導と卒 業生への社会支援が充実していることが、印象的です。漢陽大学校師範大学付属高等学校では、成績 重視で、生徒は、夜遅くまで学校で勉学に励んでいると、校長先生から自主勉強教室を案内していただ きました。しかし、出会った生徒達は、疲れを見せず、明るく、清楚で学ぶ意欲のようなものを醸し出して いるのには驚きました。南星女子高等学校では、校門から校舎まで生徒が並んで笑顔と拍手で出迎えて くれたのには、胸が熱くなりました。3年生が模擬テスト中にも関わらず、公開して頂いたのには頭が下が りました。そのような中での、授業の様子は教える喜び、学ぶ楽しさが教室・学校内に広がっているように 感じました。どの学校へ行っても、日本の学校、生徒とついつい比較して見学しまうと同時に日本の生徒 にも見て、感じてももらいたいと、強く思いました。 学校以外の文化施設や韓国最大の湿地帯、牛浦の見学は、得がたい体験です。10 日間の学びは、 生涯の中でも味わったことのない、驚きと、感動と、喜びと感謝の日々でした。過激なスケジュールでした が、緻密な計画と心配りに、頭が下がりました。そして、人への心からの接し方を学ばせていただいた思 いです。 2. 各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 山マウル高等学校 所 見 京畿湾上に位置する島の中の、自然豊かな山の学校を訪れ、宝塚 北部とよく似た風景に何か心休まる気がした。自然体験、労作を通 して、自然を愛する子どもの育成に力点をおき、実践されている様 子を見て感動した。生徒は共同生活をしているためか、みな、仲良 しで、支え合っているのがよく分かりました。先生は親代わりで、 62 人の兄弟と親子の大家族のような温かい雰囲気が学校内や寄宿 舎から漂っていた。学力重視の学校に比べて、とても人間味溢れて 心豊かに育っているように感じた。生徒との交流では、夢や希望が 聞けたり、持参していた園児の折り紙作品を手渡したりと有意義な 触れ合いが出来ました。この学校には、自分の意思で入学してきた 子どもが殆どだった。 訪問先② ソウル精進特殊学校 朴校長先生の歓迎挨拶の中で「故郷」をきれいな日本語で 3 番ま で歌われた。心から温かく出迎えてくださっていることが伝わり、 胸が熱くなった。また、夏休み中で校舎が工事中という中での授業 見学、職員との意見交換等は、教師や保護者の理解がないと実現で きない。校長先生の並々ならないご尽力の賜物と強く感じた。 - 172 - さらに、卒業生による管弦楽演奏は、障害のある人の演奏とは思 えない、美しい音色であった。経営の重点に、障害克服意思函養及 び能力伸長を掲げて実践されているだけあって、フルートを演奏し ていた卒業生は、各地で演奏会を開くほどの腕前である。秋には、 大阪でコンサートを開く予定である。授業は、一人一人の発達や障 害の程度に合った決め細やかな教育がなされ、施設も近代マシーン が設置され充実している。また施設の一部は、地域の子ども達にも 開放されている。地域密着型の養護学校であると感じた。 国語の授業を参観したが、男女共学にも関わらず、女生徒のみが 訪問先③ 受けていた。単元は、「美学」で美しさを言葉や色で表現したり、 漢陽大学校師範大学附属高 美しい女性像についてパソコンの映像を活用して学んだりしてい 等学校 た。先生の指導方法もメリハリがあり、生徒が楽しんで授業を受け ているように感じられた。授業態度が大変真面目である。 教育課程重点学校の特徴として、夜の 10 時まで自主勉強をして いる。自主勉強室には個人の机があり、成績順に並んでいる。教師 も生徒の質問に対応できるように、自主室横に、待機室が設けられ ている。驚いたことに、食堂では、教師も生徒も夕食が食べられる ようになっている。また、音楽にも力を入れていて、個人レッスン 室が設置され、ピアノや声楽が学校で自由に練習でき、生徒のいろ いろな特性が発揮できる学校であると感じた。2008 年から ASPn et協同学校として、数々の活動に力を入れている。 訪問先④ 生徒が駐車場から学校までの間整列して、笑顔で出迎えてくれたの 南星女子高等学校 には感激した。歓迎レセプションでは、校長先生の挨拶の後、生徒 が、独学で学んだという流暢な日本語で、学校紹介や国際理解教育 の紹介をしてくれた。生徒の歓迎公演の中で、日本語で重唱してく れた歌詞「あなたは、愛されるために生まれたいと願い生まれてき た。今もその愛を受けている」という美しい声でうたってくれた歌 詞が今も心に響いている。式典終了後に、和歌山県立古座高等学校 稲生教頭先生の日韓関係の歴史と訪韓感想を交えた講話は、参加者 全員が共感すると内容で、先生のお人柄を感じられる素晴しい話だ った。参加していた生徒も大拍手を送っていたのが印象的だった。 その後の授業参観は、3 年生が模試試験中にも関わらず、他の学年 を参観する。受け入れの心の広さと教師や保護者の理解に敬服し た。どの教室からも笑い声が上がり、楽しく授業が展開されていた。 外国語として日本語を学んでいる授業を参観し、驚くと共に、嬉し い気持ちになった。 - 173 - ⑤ 牛浦沼生態公園 生態学習館 韓国最大の湿地帯、自然生態系の宝庫とあって素晴しい湿原を見 学できて、童心に返ったような気分でボランティアの説明を聞き逃 さないようにと聞き入った。ここに生息する殆どの植物や生き物 は、日本でも見られるもので、幼い時から慣れ親しんできたものば かりであった。歴史や文化、教育だけでなく、自然生態系も気候も 日本とよく似ていることに驚くと共に、親近感をもてた。時々、日 本に居るような錯覚さえ覚えた。 さらに、学習館では、小学校 3 年生を中心に、さらに詳しく、自 然環境教育が熱心に繰り広げられている見学や学習の取り組みに ついて学ぶことができた。昌寧市上げて、環境保全と教育に力を入 れていることがよく分かった。 また、伝統工芸「チャンスン・ソッテ」魔除け作りは、とても楽 しい時間だった。 3.最も有意義であった内容: (1)このプログラムに参加できたことが最も有意義であり幸せに感じた 出発前は、10 日間健康で無事に最期まで研修やプログラムに参加できるか大変不安でした。全ての日 程を無事終えられ、このプログラムの内容の濃さ、緻密な計画と細やかな準備や心遣いに感謝の気持ち でいっぱいです。韓国政府や韓国ユネスコ委員会のスタッフの方々や日本政府、文科省、日本ユネスコ スタッフの方々に厚くお礼申し上げます。 見るもの聞くもの触れるもの全てが新鮮で、驚きと感動でした。 このプログラムに参加していなければ、一生涯知り得ないことだろうと思うと心震える喜びの 10 日間でし た。 (2)「百聞は一見しかず」を身もって知ったこと 何事においても、実際に自分の目で、耳で、肌で感じてこそ、自分のものとなり、学びとなることを実感し ました。概念や憶測で判断したり価値を付けたりしていた自分に気付かせてもらいました。韓国の学校教 育や施設、文化や歴史施設等々ほんの一端しか学べていないと思いますが、自分の目や五感で体感で きたこと。そして、韓国に対してとても親近感がもてたことが有意義な経験でした。 (3)感謝の気持ちをもって触れ合うことの大切さを身をもって学べたこと 韓国や日本各地の先生と出会い、知り合いになれたこと。そして、プログラムを通じて挨拶や会話を交わ した人たちの心に触れ、人間って素晴しい、温かいと常に感じられたことです。 また、いろいろな方と接し、自分を見つめ直すよい機会にもなりました。 4.成果: (1)非武装地帯や第三トンネル内を見学できたこと 戦争の悲惨さや今もなお停戦状態が続いている情況を目の当たりにし、平和や国家間の相互理解の難 - 174 - しさや大切さを考えさせられました。自分が日常生活の中で、平和に対して鈍感になっており、感謝の気 持ちを忘れていたことに気付かせてもらったことです。 (2)韓国の各学校を参観し、先生や生徒と交流できたこと 韓国の教育や施設等に触れ、理解を深めることができたことは貴重な体験です。 韓国の語学教育や情報教育への取り組みは素晴しいと思いました。日本の教育の良い所や課題も知る 機会となりました。さらに、韓国の先生や生徒から、教育の実態や内容について、生の声が聞けたこと。 また、日本の先生が韓国の生徒に文化や伝承遊びの授業をされてことは大変有意義であったと思いま す。この様な交流がこのプログラムのねらいではないでしょうか。互いが理解し合う、大切な手段だと思い ます。 (3)牛浦湿原を探索し、豊かな自然に触れられたこと 国や市を挙げて、環境保全や自然環境について学び合い、高め合おうとされている姿勢と愛情は日本 においても学ぶべき点が多くあると思います。また、ここで生息する植物や生き物が日本と共通点があり、 つながりがあることに感動しました。 (4)ホームビジットを体験したこと 韓国の家庭生活にも触れさせていただける機会を設けてもらったこと、快く受け入れていただいた家庭 に感謝すると共に、心のこもったおもてなしに感動しました。 5.今後の日韓交流について: 幼児期は人間形成の基礎を築く大切な時期です。なんでも吸収する感受性と感性をもっています。幼 い時から、いろいろな国の人とかかわったり文化に触れたりする体験は大切なことだと思います。 韓国の伝承遊びや歌、リズム遊びを教えてもらったり、挨拶や自己紹介等の簡単な言葉を知ったりす るような機会があれば取り入れたい。 教師同士の幼児教育の情報交換や意見交換等の機会があれば生かしていきたい。 6.提案・助言: 今回のプログラムは、過去の交流実績や課題等を取り入れられ、よく練られた内容であると思いました。 期間内にいろいろな視野から学ぶことは、多少のハードスケジュールになっても致し方ないと思います。 とても充実した、細やかな心遣いがされた研修でした。ただ、強いて挙げるなら、韓国の先生達ともう 少し、じっくりと1つのテーマに沿って意見交換をしてみたいと思います。答えを1つに導き出すのではな く、互いの違いや、共通点を見出していくこと。互いに気付き合い、学び合うこと。それが両国の子どもの 幸せにつながっていくのではないかと感じます。 - 175 - 宝塚市教育委員会 人権教育課 指導主事 平山 審 1.総合所見: まずはじめに、日本の教職員を代表する本プログラムに参加させていただいたことを厚くお礼申し上 げます。ACCUの方、ユネスコ韓国委員会の方、通訳の方等の多くの関係機関の方によるプログラム遂 行に対する緻密な計画や細やかに配慮のおかげで、大変充実した日々を送ることができました。観光旅 行では知り得ない各種教育機関に訪問させていただき、教育内容や設備を見聞し、教師や生徒との交 流する機会を与えていただいたことに感謝の気持ちでいっぱいです。今まで知らなかったことばかりで、 見るもの、聴くもの、体験することすべて自分の勉強となり、人生の大きな糧となりました。 宝塚市において、在日外国人の7割は韓国・朝鮮の方たちです。その歴史的背景において、強制連 行や徴用という形で連れて来られた悲しい事実があります。今もなお本名が名乗れず、通称名でしか生 きていけない人がいます。また、入居差別の現実があります。人権文化を構築していくためには、国は関 係なく人として、自分を大切にすると共に相手も大切にすることが大事です。今回のプログラムを通して、 韓国人も日本人も同じであり、お互いの国の文化等の違いを認め合い、共に生きていくことが大事だと強 く思いました。私にとって、韓国はけっして“近くて遠い国”ではなく、“近くて近い国”になったと思います。 これからは、両国がもっとお互いを深く知り合い、交流を深めるために、歴史を避けるのではなく、膝をつ き合わせ共に考え、共に話し合い、未来を切り開いていく必要があります。 個人としては、出発するまでに、ASP(ユネスコスクール)、ESD(持続可能な開発のための教育)につ いてもっと深く学んでおくべきだったこと、語学学習(英語・韓国語)をもっとしておく必要があったと後悔 しています。また、今回、幼稚園・小学校の訪問がなかったことや、Bグループでは、中学校の訪問がな かったことが悔やまれます。最後の学校訪問の行き先をAとBと反対にしていただければ、Bグループも 中学校にも行けたのではないでしょうか。時間が許せば、韓国における心の教育や人権教育の取組を詳 しく教えていただきたかったです。 この訪問で学んだことを多くの方に伝える等、研修成果を日本の教育活動に活かせるようにしてい きたいです。ぜひ機会があれば、再びいろいろな学校を訪問して、直接に教職員や児童生徒たちともっ と交流を深めていきたいです。このプログラムに多くの日本の教職員が経験されることを期待していま す。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 山マウル高等学校 所 見 学校の教育理念は、自然・平和・共生である。生徒 60 人が、自然の 中で伸び伸びと活動しており、受験科目一辺倒の教育と対極にあるモ デル校であると思った。ASP活動として、生態産業・生態トイレ運動に 取り組んでいる。しかし、町で育った生徒には、そのトイレは利用しにく いという。教員・生徒と直接に会話できたことはよかった。 - 176 - 訪問先② ソウルで初めてできた公立特殊学校である。学校の理念は、信頼・愛・ ソウル精進特殊学校 希望である。基本生活機能向上、基礎学習能力伸張、社会適応訓練 のための施設・設備が充実していることに驚いた。一年間の行事を映像 で紹介してくれたので、生徒の活動の様子がよくわかった。卒業生の管 弦楽演奏は、印象に残るすばらしいものであった。質疑・応答の時間が 十分に取れなかったのが残念である。 訪問先③ ASP活動が大変盛んである。例えば、模擬UN会議開催(環境会議)を 漢陽大学校師範大学 始めとして、マレーシアの学校との交流、CCAP活動、ユネスコクラスを 附属高等学校 活用した国際交流の促進等に取り組んでいる。国際感覚を養うため第 二外国語が盛んであり、大学進学率も高い。学生と直接話ができる機 会があってよかった。女子学生の興味・関心は、主に芸能とファッション である。日本もさほど変わらないと思った。 訪問先④ 学校前で生徒が等間隔で並び、迎えてくれたことに感激した。 南星女子高等学校 プレゼンテーションをしてくれた学生は、独学(日本のテレビのみ)で日 本語を学び、とても流著に話すので驚いた。 行った時は、ちょうど日本語の授業をしていた。映像を使って、一日の なかでの簡単なあいさつ(おはよう・こんにちは等)を学んでいた。生徒 にとっては、英語より難しいそうである。 ASP活動として、モンゴルの姉妹学校訪問やモンゴル移住女性支援等 の取組の話が聞けなかったのが残念であった。 訪問先⑤ 釜山から車で 40 分の所に金さんの家がある。少しでも会話がはずむよう ホームビジット にと、近くに住む日本語が話せる祖父も来てくれた。60 年前に、2年間 名古屋に住んでおられた。おかげで、コミュニケーションが何とか取るこ とができた。食卓には、食べきれないほどのご馳走と、おまけにのどに 骨が詰らないようにと魚の骨まで取っていただいた。2人の子供は、中 学3男子と高校1女子である。子どものことを中心に話が盛り上がった。 とても有意義な時間を過ごせた。 訪問先⑥ 1300 年前に建てられるが、豊臣秀吉によって焼かれる。その蛮行をど 梵魚寺 れだけの日本人が知っているのだろうか。創建当時の残っているのは、 三層の石塔のみである。多くの僧が、心のけがれをなくすためにここで 修行している。禅寺での食事の取り方を学んだ。少しの食材も無駄にせ ず、感謝していただく大切さがよくわかった。 - 177 - 訪問先⑦ 世界遺産に登録されている韓国を代表する名刹。韓国の子供たちは、 仏国寺 修学旅行や遠足で必ず一度は訪れる。751 年に創建。しかし、またもや 豊臣秀吉によって焼かれてしまう。その時の政治的情勢がどうであれ、 歴史ある建造物を破壊してしまう行為に対して、とても恥ずかしく、申し 訳ない気持ちでいっぱいになった。韓国の人々が怒るのは当然であ る。両国間の歴史にしっかりと向き合う必要がある。 訪問先⑧ 朝鮮戦争の後、いつでもまた攻められるように密かに4つの南侵用のト 非武装中立地帯 ンネルを掘っていた。特に第3トンネルは、1時間に3万人の兵力が移 (DMZ) 動できる。その事実は、今も北朝鮮は認めていない。冷戦のなまなまし い現場に背筋が凍りつく思いがする。一日も早く朝鮮半島が統一され、 平和が訪れることを切に願っている。 トラ山駅は終着駅ではなく、北朝鮮への出発の駅であるという、韓国の 人々の統一への強い願いを感じた。 訪問先⑨ 牛浦沼 韓国で最も大きな自然大陸湿地であり、1998 年にラムサール条約に 登録される。面積は、約 70 万坪。生態系の宝庫で、多様な生物が生息 している。1日かけて、その生態等を学んだ。しかし、その存在を韓国の 人はあまり知らないようである。地元の小学3年生は必ず訪れ、環境学 習を行う。ちょうどその授業を見ることができてよかった。来年度から、全 学年に広げる予定である。どのようなカリキュラムになるのか関心があ る。体験学習として、間伐材を使ったネイチャークラフト「ソップ(鳥)とチ ャンスン(門番)」を作る。守ってほしいことをチャンスンに書く。 訪問先⑩ 国立慶州博物館 新羅時代(千年)の華麗な仏教美術に関するものを展示している。“聖 徳大王神鐘”は、韓国で1番大きい釣り鐘である。重さは 17 トンもある。 昔は、除夜の鐘として 33 回ついていた。子ども博物館学校の文化教育 プログラムについて、さらに知りたかった。時間は短かったが、自由に見 学できたことは良かった。 訪問先⑪ 芸術鑑賞「NANTA」 27 カ国 11、000 回以上の公演を通じて、390 万人の観客を動員してい る。台詞がなくてもとても分かりやすい劇である。情熱的なサムルノリのリ ズムを使った叩きは確かに圧巻である。しかし、食べ物の粗末に扱うこと には抵抗を感じた。梵魚寺の僧が観たら、何て言うだろうか。食材に感 謝していただきたいものである。 - 178 - 3.最も有意義であった内容: 教育に携わる者としては、やはり学校訪問が最も有意義であった。韓国の教育事情やその取組につ いて学ぶことができたことは大きな収穫である。韓国の教育施策は、予算もしっかりつけ国家をあげて人 材を育成しようとしている。はたして日本の国は、そこまで力を入れているのだろうか。韓国の教職員や保 護者の方たちの教育に対する思いはかなり熱く、びしびしと日本側に伝わってきた。 日本の教育しか知らなかった私にとって、両国の教育施策の共通点や相違点が少しずつ見えてきた。 日本の教育がすべてではないと改めて思った。お互いの信頼関係を深め、効果のあった施策はどんど ん取り入れていきたいものである。 4.成果: ・ 韓国の教育の現状や施策を直に聴き・見ることができた。今の教育課題解決への方向性が少し見出 せた。 ・ 今後ACCUの方を始めとして、文部科学省の方、日本の教職員の方、韓国の教職員の方とのネット ワークを構築することができる。これからいろんな面で情報交換を通して交流していきたい。 ・ 韓国の自然や文化に対しての理解が深まった。 ・ DMZ・戦争記念館の視察を通して、戦争の悲惨さやおろかさ、世界平和の尊さを改めて強く意識す ることができた。 ・ どの国の人もすべて平等かつ対等であり、お互いの違いを認め合い、共に生きていくことが大切だと 強く認識できた。まだまだ日本において、韓国・朝鮮の方への差別意識が残っている現状を恥ずか しく思い、払拭しなければならないと思った。 ・ より深く相手を知り交流するためには、確かな語学力(英語・韓国語)が必要であると痛切に感じた。 5.今後の日韓交流について: ・ 今後もこのプログラムを通じて、引き続き韓国の教職員を招聘していく。 ・ 市または学校どうしが姉妹提携を結ぶ等して、児童生徒と教員が互いに訪問しあう。日頃は、 テレビ電話やメールで交流し合うこともできるのでは。ただし経費をどうするかが問題となる。また、教 師間の連絡調整も不可欠である。 ・ 授業(総合的な学習・社会等)の中で、お隣の国・韓国について一層取り上げていく。特に、過去に 日本が行ってきた歴史の蛮行を素直に認めていく必要がある。 6.提案・助言: ・ヤフーのメーリングリストについて ヤフーのメーリングリストを使って、重要事項を伝達することはふさわしくないと思います。なぜなら、私の 勤める市役所では、セキュリティーによって最初の2~3通のメールを除いて、その後、すべて排除されて いました。そのことは後になってわかったことですが、そのときはわかりませんでした。当然ながら、グルー プメールは7月以降ありませんでした。しかし、一方ACCUの職員からのメールは届いていたので、その - 179 - メールの情報だけが頼りでした。 竹島問題もあり、このプログラムそのものが実地されるのか、されないのかもわからず気をもんでいました。 ACCUに電話をすると、そのことはただ今検討しているとのことでした。出発の5日前になって、初めてグ ループメールが届いていないことがわかり、急遽自宅のパソコンのアドレスに変え、メールを送ってもらい ました。すると、なんとその間に 50 通以上も届いており唖然としました。届いていないときは、知らせてほ しいと言われたのですが、どうすれば届いていないことに気づくのでしょうか。 ・自由研修の日はオプションツアーに参加するのか、特殊学校の代りにAグループと共に中学校に行き たいのかという大切な用件も知らされずに、締め切りはすでに終わってしまっていました。また、報告がな いことは参加しないと決めてしまうのもいかがなものでしょうか。大切な用件は、必ず直接本人に確認を取 るようにしてほしいです。 以上のことより、ヤフーメールはセキュリティーによってはねられることがあり、そのために全員が見ている とも限らないことが起こりうることを知っていただきたいです。大切な用件・情報は必ず個人に直接に伝え るようにして、念のためにその確認もお願いしたいです。 ・日韓教師同士の交流について 今回、竹島問題で小学校訪問がなくなり、唯一小学校の教員と情報交換等ができるのがこの懇談会でし た。しかし、午前のプログラムが伸びたおかげでほとんど時間がなく、中途半端に終わってしまいました。 個人としては、昼食の時間を短くしてでも交流の時間をたっぷりと取ってほしかったです。形だけの交流 はいらないです。日韓の教師がざっくばらんにひざを交えて話し合うことで、心と心を通い合わすことがで き、お互いを理解できるのではないでしょうか。そこで、いろいろと情報交換等をすることが望ましいと思 います。この時間は特にゆとりを持って、プログラムを組んでほしかったです。 ・上記以外の交流について 今回、52 人と去年の倍の人数が日本から参加できたことはよいのですが、AとBグループの交流もあれ ば、さらに日本の教師同士の交流がさらに図れたと思います。また、韓国の方とも交流しやすいように、ど の食事の席においても配慮してもらえばよかったです。何も言わなければ、どうしても知っている人たち でかたまりがちになるからです。 例)韓国ユネスコ委員会の方たちとの食事会 ・日本からの発言について 個々個人の感想を聞かれたことに対して述べるのはいいのですが、例えば「日本ではどう考えています か?」という韓国からの公の場での質問に対して、個人的な意見を国の代表の意見であるかのように言っ てしまうと、誤解されるのではと思う場面がありました。参加者全体への適切な事前学習の必要性を感じ ました。 大竹市立栗谷小学校 教諭 宮本章夫 1.総合所見: 今回、実際に韓国を訪問し、街を歩き、韓国ユネスコ国内委員会で担当者の方の話を聞き、韓国も日 - 180 - 本と同じように急速な発展を遂げた国であるということがよく分かった。 ・ 韓国と日本の教育事情は、程度の差はあるものの何を見ても非常によく似ていると思う。 ・ 韓国における教員評価は、日本にとって指針となるものであると思う。 ・ 韓国におけるESD教育の必要性と実情も日本と共通している。 現在、韓国では高層マンションに住む家庭が増加しており、「村文化」から「アパート文化」に変化してき た結果、人々の繋がりが乏しくなってきている。そこで、それを補う役割を学校に期待されているということ である。 ESD教育を推進する学校は、EIU(国際理解教育)、ESDの理念を理解し、個人ではなく組織で取り 組めないと、推進役として取組んでいる教師が異動した後、活動を続けることができなくなってしまう。「ユ ネスコ的な考え方(マインド)を段階的に浸透させていく」という説明にも納得できた。また、熱意のある報 告に元気をもらった。 訪問先として、漢陽大学校師範大学付属高等学校、南星女子高等学校、ソウル精進学校など充実し た教育環境・設備に思わずため息が出てしまった。「対案学校」として位置づけられたサンマウル高等学 校では有機農法による農作業など自然との共存を掲げながらも、巨大な太陽光発電のパネルに象徴さ れた先進技術の導入など、これまた設備面の充実には驚かされた。また、これだけの設備を持つ学校で ありながらも、学費の9割以上を国が補助し、国立・公立・私立いずれの学校においても保護者が支払う 学費には差がないということであった。 日本と韓国の教育に対する基本的な考えや方向性は、共通していると思うが、資金面においても日本 が韓国と同じように教育をバックアップできれば、教育力も格段に上がってくるのではないかと思った。 もう一点、感じたことは、「言葉の重要性」である。韓国語ができれば、それにこしたことはなかったが、 せめて英語がもっとできたなら、より気持ちのこもった交流ができたのではなかっただろうか。「英語による コミュニケーション能力を私自身が努力し高めていかなければならない」と、今回改めてそう思った。今回 のプログラムでは限られた日数の中で、でき得る限りの視察、体験をさせていただいた。緻密な計画と準 備、そして、相手を思いやり、行く先々で真心を込めてもてなしていただいた。最近の厳しい情勢である にも関わらず、苦心して都合を調整し、私たちを受け入れてくださったことに、感謝の気持ちでいっぱい である。ありがとうございました。 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先① 軍服を着た兵士が多数おり、「ここは特別な場所である」ということがすぐ DMZ(非武装地帯) に理解できた。トラサン展望台では、ビデオや写真撮影をする観光客に 対して、軍服を着た若者が厳しいチェックの目を光らせていた。北朝鮮 が極秘に進めていた韓国への進入通路である「第三トンネル」の見学で は、日本語による紹介ビデオ、資料館、そしてトンネルへ向かうトロッコ 列車と、至れり尽くせりであった。しかし、観光地的な要素もあり、日本人 としては少々複雑な思いもした。 - 181 - 訪問先② サンマウル高等学校は名前の通り「サンマウル(山村)」にある小規模校 サンマウル高等学校(ユネス であると聞いていた。しかし、バス到着後、私の目に飛び込んできたの コスクール、対案学校) は校舎の横に設置されている巨大な太陽光発電のパネルであった。天 然素材で作られ、それぞれ特徴的な形をした味のある建物が並んでい た。校舎の中は、地熱を利用した空調設備が整っていた。60名の生徒 全員が寄宿舎生活を送りながら、年間を通して農業体験も行いながら 全員が家族のように仲良く生活していた。学校について説明を受け、校 舎・施設の見学をした後、生徒(1年生の女子と3年生の男子)と話をす ることができた。2人とも初対面の大人(しかも日本人)である私に対し て、ものおじすることなく、しっかりと自分の言葉で受け答えをしていた。 生徒が自らこの学校の教育理念を理解した上で、この学校を選んで入 学している。それでこそASP校としての教育効果を十分に果たせる学 校であると感じた。 訪問先③ ソウル精進学校(特殊学校)の訪問では、その教育設備の充実ぶりに驚 ソウル精進学校(特殊学校) かされた。卒業生を含めた生徒による楽器演奏(フルート、バイオリン、 チェロ)は本当に素晴しかった。先生方の努力、保護者の協力、そして 国のバックアップが障害を持つ児童・生徒の成長を支えているのだと思 った。 訪問先④ 漢陽大学校師範大学付属高等学校は 2010 年に「世界トップクラスのレ 漢陽大学校師範大学付属高 ベルの高校になる。」という「HY Hight-Five 2010」計画を掲げる大規 等学校(ユネスコスクール) 模進学校であった。惜しみなく用意された教育施設、成績上位者のみ が使用することを許された図書室(学習室)など「すごい」の一言であっ た。海外の高校との交流や国連模擬授業などのプレゼンテーションを 見て、ASP校としての教育実践もしっかり行っていることがよく分かっ た。 訪問先⑤ 生徒によるプレゼン紹介、カヤグム、テコンドー、歌、そしてハンドベル 南星女子高等学校(ユネスコ 演奏など、一見して真面目に努力する質の高い生徒たちであることが スクール) 分かった。稲生先生による日本と朝鮮の関わりの歴史についてのプレ ゼンはとても分かりやすく、韓国の方には勿論、自分にとってもよいもの を見せていただけたと思う。授業参観では、日本語、数学、英語の授業 を参観した。日本語授業では、石橋先生による着物の着付けなど、生 徒にとってもよい機会となったと思う。教師との懇談会では、小学校グル ープで話をした。「教師」という仕事に自信と誇りを持って取り組んでお られる様子が伺えた。 - 182 - 3.最も有意義であった内容: ホームビジットでは、地元高校の音楽教師であるファンさん、校長先生のペクさん、そして通訳をしてく ださった日本語教師のキンさんの案内で、地元でも評判の韓国料理をコース形式でご馳走になった。そ の後、ファンさんと同じ高層マンションに住むファンさんのご親戚であるキムさん一家のお宅に招待され、 お茶のもてなしを受けた。私たちにおいしいお茶を飲んでもらおうと、ファンさんはとっておきの湯のみセ ットを持ってこられ、ペクさんは遠方から取り寄せたおいしい水を持ってこられていた。話が盛り上がった ところで、キムさんの長女で現在アメリカに留学中のキム・へジンさんが、素晴しいカヤグムの演奏を披露 してくれた。その音色はとても胸を打つものがあった。私たちに、「よい時間を過ごしてもらいたい」という 気持ちがとてもよく伝わってきた。本当に嬉しく、時間があっという間に過ぎてしまった。この素敵なひとと きのことを私は決して忘れないだろう。 4.成果: 今回のプログラムで、個人的に得られた最大の成果は、「韓国」という国に対する親近感が非常に高ま ったことである。当たり前ではあるが、それなしでは何も始まらないと思う。 行ってみて初めて実感したこと。時差もない。気候も同じ。顔の形も服のファッションも同じ、距離も一番 近く、安くいつでも行ける交通手段も整っている。にも関わらず、自分にとって、これまで行ったことのある 外国の中でに韓国がなかったのは何故だろうか。それは、今までの自分の意識の中で韓国の存在が「近 い国」ではなかったからではないだろうか。 しかし、今回それがなくなった。いつでも行ける近くの町のような感覚になった。 また、牛捕沼(湿原)見学の際、「生態教育院」で小学生の授業を参観することができてよかった。触っ て・作って遊ぶことが大好きな子どもたちの興味・関心を引き出す取組みをしていることがよく分かった。 これらの学習は栗谷小学校で取り組んでいる「栗谷児童館・小学校・中学校合同授業(生活科・総合的 な学習)」や「栗谷みどりの少年団活動」にも取り入れていける内容であると思った。よい勉強をさせてもら った。まずは今回のプログラムで見聞したことを学校内において、児童、保護者、教職員に伝えたいと思 う。そして、近いうちに再び韓国に行ってみたいと思う。今回のプログラムに参加して本当によかった。 5.今後の日韓交流について: (1)総合的な学習における、愛鳥活動(環境保護活動)を通した交流 (2)総合的な学習における、小・中学校合同授業における交流 (3)総合的な学習における、田植え・稲刈り体験 (4)総合的な学習における、英語活動など ・実施の可能性については、こちらから韓国に行くことは難しい。 ・小・中学校合同による交流については、小・中学校間での調整が必要である。 - 183 - 6.提案・助言: (1)現地の児童・生徒・教職員との意見交換の時間を確保してほしい。 (2)同じ都道府県内で一緒に活動連携がしやすい学校同士から教職員を招聘する。 (事後の関わり、連携がとりやすいため) 奈良女子大学付属中等教育学校 教諭 北尾 悟 1.総合所見: 本プログラム参加にあたり、個人的に設定したテーマは、次の2点である。 (1)現在の日本では、公立・私立といった設置主体により、学校のあり方や教育の内容に大きな違いが 見られる。この点が韓国ではどのようになっているのか、また日本以上に激しいといわれる韓国の受験 制度がどのような状況にあり、どんな課題や打開の方法が探られているのか。 (2)本校はユネスコスクールに指定されており、次期教育課程の議論にあたってもこの点がS・I(School Identity)の一つの焦点となっている。では、韓国のユネスコスクールにおいては、どのような具体的 な取り組みがなされているのか。 今回政治状況に制約され、学校交流が限定されたなかで実施せざるを得なかった点は残念だが、上 記2点に関して一定の成果を得ることができた。 その意味において、本プログラムの優れた点は次の2点であった。 (1)学校交流において、大学受験を第一とする学校を設定された一方で、日本のフリースクールに近い 「山マウル高校」や特別支援学校にあたる「ソウル精進学校」が設定されたことにより、韓国の教育制度 をより多様な角度から見ることができた。 (2)学校交流のみが設定されただけでなく、DMZ、梵魚寺、ナンタなどの見学といった文化・社会理解 に結びつくプログラムが設定されていたため、深まった韓国認識を持つことができた。 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先① ①韓国教員評価制度の現状・・・・教員評価は近年日本でも注目されて ユネスコ韓国委員会 いるが、実態は校長教頭による教員の評価や給与とのリンクなどに議論 の焦点が集中しており、そのために形骸化している部分もある。韓国に おける評価制度は、これから本格化するということで不透明な部分もあ るが、内在的。本質的な方向をめざしているということに深く共感した。 ②韓国ユネスコ協同学校の具体的事例の二例目の報告にとても共感し た。特に「新プロジェクトでなく、従来の活動をユネスコ理念のもとにどう 統合していくか」という視点は、現在の本校の現状(多くの日本の学校も - 184 - そうだと思うが)を考えたときにとても重要であると感じた。 訪問先② 山マウル高校 受験でなく、環境共生を理念とする私学のフリースクールという印象を 持ったが、公立とほぼ同額の補助金を受けていること、さらに希望者が 多く3倍近い競争率を持っているということに驚いた。その意味は以下の 2点。 ①受験体制が蔓延しているかにおもっていた韓国において、こうした学 校が存在し、しかも多くのニーズがあるということ。 ②日本では類似のこうしたスクールが経営が厳しい状況にあるが、私学 に対しても十分な助成が行われることにより、こうした学校が十分に成立 していること。 訪問先③ ソウル精進学校 日本での「養護学校」ないし「特別支援学校」にあたるが、施設の充実 ぶりに驚いた。なかでもアスレチックやゲーム機を利用して体力維持・増 進を図っていることは発見であった。ただこうした学校が「特殊」(ソウル 市内で 29 校あると聞いたが)なのかどうか、そうした全体的な状況につ いてほとんど質問する時間がなかったのは残念であった。 訪問先④ 模擬国連の実施やアジア諸国との交流など国際交流に力を入れてい 漢陽大学校師範大学附属高 るということが多くの行事からわかった。生徒の英語力もリーダーとして 等学校 活躍している一部の生徒はとても高かった。また生徒たちの雰囲気も日 本の一般的な高校生を真面目にしたような感じでとても親近感を持っ た。ただ、受験競争は日本以上のものがあるようで、夜 10 時まで自習室 で学習するというのは驚きであり、山マウル高校の生徒の様子とのギャッ プを思い起こした。 生徒たちと直接交流して感じたのは、国際交流プログラムに積極的に 取り組んでいる生徒からその他の生徒たちにどのようにしてその交流の 成果が広げられているかということである。日本の私学においても一部 の生徒が「学校の広告塔」になるという傾向が見られるが、こうした生徒 たちが得たものをどうやって他の生徒たちに広げるかが大きな課題であ る。今後ASPnet に加盟する学校にとっても(既に加盟している学校は もちろん)、この課題は重いのではないだろか。そんなことを感じた。 訪問先⑤ 南星女子高等学校 典型的な受験校であり、授業もそうした明確な目標のもとに実施されて いる。ただ、各教室にプロジェクターが配置されるなど設備面が日本以 上に充実している。教員に聞いたところ、10 年位前から授業改革が広が り、現在は生徒による発表学習や視聴覚教材を積極的に導入する授業 が広まってきたらしい。一方で、ユネスコクラブを設けるなど国際交流に も積極的にとりくんでいる。キリスト教系の学校であることも関係している のだろう。同様の受験校だが、漢陽大学付属に比べると、まじめでシャ イな生徒が多いように感じた。 生徒は各机上にうず高く教科書類を積み上げ、また横にも教科書・副 - 185 - 教材をいれたケースを置くなど、膨大な学習量を象徴するようであった。 数学の先生に聞くと、かなりの予習をしなければついていくのは困難だ ろうとのことでした。 3.最も有意義であった内容: (1)山マウル高校や漢陽大学付属での生徒との直接交流である。他項と重複するが、頭髪などの指導 への反発(少しだが)や日本文化への憧れ、また自分なりの生き方へのこだわりなど、それぞれの生徒た ちの生の声がきけてとてもよかった。 (2)授業風景の見学と韓国教員との交流。時間的に限定されていたが、日本語、英語、数学など授業見 学をでき、韓国での授業の雰囲気を感じ取ることができた。イメージとしては、日本での 20 年前の授業風 景に近いか?また、韓国の歴史教員と昼食時に話ができたが、歴史教育のあり方も 10 年前を境に変化 しはじめ、単純な講義式でなく、視聴覚教材の使用や発表授業の導入などが試みられているとのことで あった。この点も日本と類似した点である。 4.成果: (1)まず、韓国が自分にとっての身近な国のひとつとなったことである。事前にハングル語の学習に少し 取り組んでいたこともあり、交流会はもちろん、町の散策において、なじんだ生活ができた。韓国は 10 年 ぶり2度目の訪問であったが、今回は「旅行者」というより「生活者」としての視点で、韓国を感じ取ることが できた。具体的には、さまざまな消費文化の浸透である。なかでも、コンビニエンスストアーの爆発的な拡 大と店舗の夜間営業の拡大である。こうした変化を背景に、平日夜でも遅くまで多くの人が街角にあふれ ていた。もちろんこれは、大都市圏だからということもあるだろうが、10 年前に訪問したときと比べても、日 本同様大量消費、夜型社会への変化を感じた。 また、ホームビジットを通じてより詳しく感じたが、マンション住まいの多さである。韓国において一軒家を 持つことはかなり困難であり、生徒の多くもおそらくこうしたマンションで生活しているのだろう。 (2)韓国の教育制度=受験競争という平板なイメージが、山マウルや特殊学校の訪問により、大きく変化 した。その教育環境の充実度は予想以上であり、日本以上に多くの教育投資を行いつづけている韓国 教育の深さを感じられた。また、韓国においては公私立への政府の補助は同程度であり、ヨーロッパの 国々と同様の特徴をもっていることにも驚いた。教育の多様性を積極的に国が保障するという考え方は、 現在の日本社会においても示唆を与えるものだった(もちろん学習内容はかなりの等質性を保とうとして いるが)。 一方で、受験競争の状況は日本以上に深刻であり、10 時まで学校の自習室で学習したのちに塾へ通う という壮絶な例も紹介された。また教育費をまかなうために、母子と離れ父親が単身で働き続けるという家 族関係の変化も報告された。しかし、こうした状況下にありながら、少なくとも訪問した学校の生徒たちの 表情はいずれも生き生きとしていた。個人的に話したところでは、ファッションや髪型の自由化を望む声も - 186 - 若干あったが、全体としては生活指導上の問題はあまり極端な形では表面化していない。それがなぜな のか。日本において急速に失われつつある価値観やモラルがまだ残存しているためなのか、それとも宗 教的な背景など社会的な倫理観の違いなのか、この点も日本の教育の今後を考えるうえで、深めてみた い課題である。 (3)ユネスコスクールやESDについては、山マウルの環境共生や南星女子の国際交流のあり方などが 参考になったが、具体的なとりくみのレベルではあまり知見を得ることはできなかった。むしろ、重要なの は「新しいことを一からスタートするのではなく、今までの教育活動をユネスコスクールやESDの理念のも とに再発見、再構造化する」という韓国ASP校の先生の発言であった。日本のユネスコスクールも今後参 考となる発言である。 5.今後の日韓交流について: (1)勤務校においては、「環境学」「世界学」などの総合学習プログラムが実施されており、グローバルク ラスルーム(GCと呼称)などの国際交流プログラムもある。しかし、こうした活動相互がどのような関連を持 っているのかについては、生徒・教員ともに広く共有できる説明は不十分であった。また、現在の地球的 な課題とどのような関連があるのかを生徒たちに積極的に示す面でも課題があった。しかし、昨年度ユネ スコスクールに認定されたことにより、こうした諸活動を統合する軸ができたといえる。今後は、ESDの理 念で学校の諸活動を統合するなかで、国際交流プログラムのひとつとして、韓国との交流を構想できるだ ろう。 (2)(1)で提示したプログラムは、9月以降本格的な論議に入る。その際には、本校と韓国ASP校という1 対1の交流ではなく、東南アジアや台湾なども結ぶ「ASPアジアネットワークプロジェクト(仮)として実現 することが大切だろう。また、ESDにかかわる共通の探究テーマを持ち合い、交流する必要もあるだろう (発達段階の考慮も必要だが)。 6.提案・助言: (1)人員拡充が今後もなされていくだろうが、韓国に対する渡航経験の浅いメンバー(はじめて~3回ぐ らい)をまず配置すべきである。経験豊かな人も確かに重要だが、互いに「とまどい」「学びあう」関係を交 流団としては重要視したほうがよい。 (2)自分が経験したあとで言いにくいが、やはり全体的にお金がかかりすぎている。ホテルは中級のビジ ネスで十分(日本語や英語が通じにくいのもまた「経験」)だし、日本で一度集まる必要はまったくない(東 京でのプログラムと韓国初日のプログラムには重複が多い)。 (3)A、Bチームの分割は人数上仕方ないと思うが、ほとんど交流がなかった。プログラムの中日あたりで 交流できる時間を設けたらよかったかも。 - 187 - (4)スケジュールがかなりタイト。特に学校訪問以外のスケジュールは精選可能。むしろ数日は、午前学 校訪問、午後あるテーマ(文化、歴史、伝統産業などなど)にもとづく自由研修にして、最終日に全員が 各人ごとのテーマにもとづく報告会をすれば、まじめで多彩なメンバーが多いので、より深まりのあるプロ グラムになるのではないか。 いろいろ書きましたが、もちろん全体としてはとても楽しく有意義なプログラムであり、ACCUの方々の周 到な準備とご配慮には感謝するばかりです。ありがとうございました。 広島大学附属中・高等学校 中学校 副校長 河野 芳文 1.総合所見: 今回の韓国政府日本教職員招聘プログラムに参加させていただいたことに対し、改めて感謝申し上 げたい。当初は、このプログラムの趣旨も十分理解せず、漠然とした思いで隣国である韓国の歴史や文 化あるいはユネスコの活動を事前に調べねばと予備知識獲得を目指すのみであった。 実際には、私の専門は数学であることから、今回の訪問では韓国の中等教育段階ではどのような数学 教育が行われているのか、それを実際に見聞して日本の数学教育の現状と比較し、何らかの形でその 成果を日本のあるいは広島の数学教育に反映したいとの思いで参加した。さらに、本校が平成 15 年度 以来文部科学省指定のスーパーサイエンスハイスクール校(SSH)であることから、理数方面における優 れた人材育成のための知見を得たい、そのために韓国での英才教育について知る、とくにその理数教 育における理念や実践とその成果について学びたいとの思いがあった。同時に、SSHの取り組みの柱 にESDを謳っていることから、韓国のESDの現状やASPについても学びたいとの思いがあった。こうし た関心から、韓国の科学高校で科学分野での英才教育がどのように行われているのか、あるいはESD の実際についてその情報や実践上のノウハウを得たいとの思いを抱いて参加した。 しかし、竹島問題に関わる両国間の緊張もあったため、当初の計画が変更される形となった。それによ る影響が大きかったのか、さほどの問題はなかったのか、私には知る由もないが、少なくとも私個人として は実際に韓国社会の教育や文化の実態に触れ、韓国の人々と直接触れ合うことを通して多くの知見を 得るとともに、韓国は文化や文化遺産を大切にし教育を重視する近い国であり、互いの交流を通じて高 め合うことのできる大切な隣国との認識をするに至っている。 以下において、幾つかの印象に残った事例等について述べてみたいと思う。 まずは、初日からの韓国側スタッフによる歓待ぶりに驚いたが、20 日の写真撮影から始まる講義や報 告は私の関心の所在も関係して、密度の濃い内容であったと満足できるものであった。特に、県や市に 遅れて導入を検討中の教員評価制について韓国でどのような検討がなされ、どのような意義あるいは課 題を有するかが深く考察されていて大いに得るものがあった。続くESDあるいはASPについての講義・ 説明や実践報告もそれに関わってきた方々の実践の重みがあり、自分の理解や今後を考える上での示 唆を得ることができた。 続いて、幾つかの学校訪問とホームビジットであるが、様々な形での歓待を受けたことに感動するとと もに、韓国での家庭生活の様子を垣間見ることができた。また、中学校、高等学校の教育環境の良さと 厳しい競争の中での生徒の爽やかさに驚くとともに、韓国でも日本が抱える多くの問題と共通するものを - 188 - 抱えている事実を知った。こうした訪問から韓国の教育状況一般を判断することはできないが、厳しい状 況の中で教育の現状に課題を感じながらも子供たちを精一杯育てようとする先生方の意欲を感じ取るこ とができた。 最後に、韓国の文化遺産や記念館あるいは清渓川や牛捕沼を訪ねての体験、自由行動を通して、韓 国の文化や人々の生活およびその自然に直に触れる機会をもつことができ、文献や耳学問では得られ ない学びができたことは私自身の大きな収穫であったと思う。 こうした成果は、韓国のユネスコのスタッフやACCUの方がたのご苦労に負うところが大きいと改めて 感じるが、それだけに私自身のコミュニケーション能力のなさが悔やまれる。英語なり韓国語なりに対する 準備ができていればもっと多くを学び得たであろうと思う。しかし、ともに参加した日本の先生方の多くと 親しくでき、よい知己を得られたことは大きな収穫であったと思っている。 2.各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 所 見 山間にあるサンマウル高校は、外見を含めて個性豊かで小規模な学 サンマウル高等学校 校である。教育方針も“自然を愛する人”“種をまく人”“知恵と学ぶことを (ユネスコスクール) 分ける人”とあるように、農業体験を重視し、自然との共生を謳った人間 性を尊重する独自性のある教育を行っている。給食にはそこで得られた 白菜やジャガイモを利用したり、太陽光発電を利用するなどの工夫を し、授業も平屋の比較的小さな教室で行うもので、環境との共存に配慮 したユニークなものであった。給食の後、生徒の皆さんと話し合ったが、 彼らは親と相談した上で自分に相応しい学校と判断してこの学校を選 んだのであり、それぞれの将来についてのしっかりした考えに基づく自 身の決断によるものであるとの発言が印象深かった。 訪問先② 学校に着くとすぐ、チマチョゴリ姿の保護者を含めてので盛大な迎え 善隣中学校 があり、学校紹介も生徒による演技や楽器演奏を盛り込んだ歓待振りで (ユネスコスクール) あった。その後、教室を回り数学の授業を拝見したが、習熟度別編成で 生徒の実態に応じた展開がなされ、数学史などをも取り込んで生徒の 興味を引き出そうと工夫されたものが印象的であった。しかし、これは中 学2年生の2クラスを三分したものであり、この学年に限定して行われる ものである。また、体育においては柔道が取り入れられていたが、これ は柔道が礼儀や作法を重んじるもので、生徒指導上も有益であるとの 考え方によるものであり、成果も上がっているとのことであった。 - 189 - 訪問先③ 2000 年開校の新しい大規模校で、教育機器や特別教室、IT環境等に 果川中央高等学校(ユネスコ も恵まれた充実した学校である。韓国の厳しい受験環境の中にあって、 クラスあり) 多くの生徒の生き生きした様子を見たのは驚きでもあったが、生徒の絵 画等多くの作品を掲示して生徒を支援しようとする学校の姿勢が見えて 好感がもてた。特に印象に残ったのは、放課後における生徒の自主学 習への配慮であり、夜 12 時前後まで自習室が利用できるようになってい ることに驚かされた。学校をあげての体制で実績を上げるよう努力して いるが、国の平準化政策との兼ね合いで、補充授業にも力を入れてい るとの話しであった。 訪問先④ 南星女子高等学校でも、多くの生徒による歓迎を受け、歓迎の横断幕 南星女子高等学校(ユネスコ がかけられた中での開会行事が行われた。その中で、韓国ユネスコ委 スクール) 員会の事務局長、校長による挨拶の後、独学で日本語を学習した生徒 による学校紹介があり、その堪能振りに驚かされた。また、生徒によるテ コンドーの演武や音楽も素晴らしかった。この後、英語、日本語、数学 の授業があり、数学の授業を参観したが、ITを利用した説明と意欲的に 問題に取り組む生徒の姿が印象的であった。さらに続いて、教師による 懇談会がもたれたが、学校の実績とともに生徒の進路指導に意欲的な 教師像が印象に残った。 訪問先⑤ 牛浦沼 牛浦沼はラムサール湿地保護条約の登録湿原で、オニバスやウキク サを初めとする様々な水性植物が繁茂しており、そこに飛来するアオサ ギ、シラサギ、水鳥等の貴重な生息地である。その周辺を散策する中で 感じたことは、そこに生息する植物には日本のものとほぼ類似しており、 湿原の存在が大量の水を蓄えるダムの働きや乾季・雨季の水分調節の 役割を果たしていることである。そうした湿原の役割を知るにつれて、 我々はこのような湿原の保護に意識的に努めなければならないと感じ た。この後は、牛浦沼生態公園内の建物で環境教育の講義を聴き、鳥 を象徴する人形作りの体験をした。 3.最も有意義であった内容: 最も有意義であった内容は人によって異なりうるだろうが、プログラムの内容はいずれも有益であった ことをまずもって評価しておくべきであろうと思う。 しかし、その中でも私にとって最も有意義であったのは、韓国の教育を実際に見聞し、人々の生活の 実際に触れること等を通して、自分なりに韓国の教育や文化・生活の実態を肌で感じ取ることができたこ とである。この点に関し、我々は韓国ユネスコの皆さんのプログラム作成に関わるご苦労に感謝しなけれ ばならないと思う。韓国に関する書籍や韓国を訪問した経験を有する者から聞く話も有益ではあるが、実 際に自分で体験することに勝る学びはないであろう。その意味で、サンマウル高等学校を始め、実際に 多くの学校を視察しその様子を身をもって学べたこと、ホームビジットを通して韓国の家庭の生活の一端 - 190 - を垣間見ることができたことは貴重な体験であった。 さらに、自由行動の日が設定されたことも有意義である。こちらの心掛け次第で、韓国の町の佇まいや そこで暮らす人々の平生の様子が観察できるからであり、その意味で、自分の足を使って広い範囲を散 策できたことは有意義であったと思われる。 これに加えて、ユネスコ韓国委員会ビルでの講義も有意義であったと思う。これには、私が本学の教員 評価の委員をしていて来年度からの教員評価の実施案作成に取り組んでいること、スーパーサイエンス ハイスクール指定のテーマにESDを謳っていることもあるであろう。ある意味では概論であったろうが、遭 遇した現実の問題にも触れながらの講義であり、大いに得るところがあったと受けとめている。ASPにつ いても、その概要とともに2つの学校における実践報告があり、より身近なものと受けとめることができたし、 取り組みの方向を知ることができたと考えている。 4.成果: いくつかの成果があるが、まずは韓国の教育の実態や文化あるいは人々の生活ぶりの一端を実際の 体験を通して知り得たことであろう。今回のプログラムを通して、韓国を肌で実感することができたことは、 何物にも代え難い貴重なものである。そして、こうして学んだことの多くが隣国である韓国を我々にとって 身近な国とし、共に歩むべき良きパートナーであるとの認識に導いてくれたことを評価しなければならな い。 また、多くの学校を訪問して感じたことは、生徒が先生を信頼している姿であり、清々しい生徒の表情で ある。そこで感じたことは、先生方の教育にかける意気込みであり、その姿勢が生徒への安心感や充足 感をもたらしていると感じることができた。そうした点に学ぶことも多いが、こうした受けとめは韓国における 教育の重要性への自覚と教職に関わる者への尊敬の念や待遇面での措置があってのことでもあろう。数 学教育という面から言えば、授業のなかでIT機器が有効に活用されていること、習熟度に応じた生徒へ の興味付けとともに彼らが数学に意欲的に取り組むための様々な工夫等学ぶべき事柄がある。また、使 用している教科書のレベルも高く、かつての日本の現代化時代を彷彿とさせるものがあるにも関わらず、 理解の遅れた生徒への手厚い補充指導がなされ、成果をあげているとのことであった。 我々はこうした韓国における数学教育の実態に学ぶ必要があるのではないかと思われる。授業後の 先生の話によれば、韓国においても理数離れの問題は現実のものとなり始めており、他の学校の実態を も踏まえた上で問題点を検討し、日韓で共同研究するなどして早急に対応する必要があるのではないか とのご意見であった。科学学校を含めた英才教育の面については、十分な状況把握ができなかったため、 帰国後において韓国の先生とメールを通じての情報交換を行いつつ、連携を深めていくことになってい る。 最後に、牛浦沼での「生態教育院」での体験は、小学生対象の授業参観やESDの小学生版が中 心ではあったが、中・高等学校での実践のヒントとなるものもあり、多くの実践事例は中・高等学校での実 践プログラムを組む上での参考になると考えている。 - 191 - 5.今後の日韓交流について: 今回のプログラムにおける 8/20 の講義はその要点を押さえた良いものであったと思うが、個人的には このような内容のものが間を空けて後半日あるいは1日くらいあっても良いのではないかと思う。 しかし、講義での知見以上に実際を体験することの意義が大きいとも感じたため、今回のプログラム程 度の学校訪問、ホームビジット、自由行動は今後も継続する必要があると考える。可能なら、各グループ を3~4人の小グループに分けて、それぞれの主題をもっての自由行動、散策があれば面白いかと思う。 私は、ある社会科の先生と南大門の周辺を実際に散策したり、清渓川を静かに散策したが、それは良い 体験になったと思っている。 また、今回のプログラムには、日本の教員がESDの実践やASPについて報告する場面はなかったが、 双方の国が実践発表を行ったうえで比較検討する場面があっても面白いかと思われる。あるいは、今回 の実践報告の後での情報交換の時間の確保でも良いかと考える。(訪問するとともに、招待される学校の 先生であれば不要になるでしょうが。) 6.提案・助言: 今回のプログラムに参加させていただいて、時期、期間、プログラムの内容について適切であり、充実 したものであると実感した。したがって、とくに申し上げることはないと思っている。しかし、細かな点で、幾 つか申し上げるとすれば、次のような点が挙げられるかと思われる。 一つは、今回のプログラムで韓国の生徒さんとの直接の話し合いや懇談会での先生方との話し合い が極めて有意義であったので、拡充の可能性があればもう少し時間を確保していただけると有り難いと思 う。自由時間についても事前に検討しておれば、韓国を理解するうえで大いに活用可能であろうと実感し たので、ご検討いただきたいと思う。 今後、学校間での交流を行うとすれば、韓国の学校が日本を訪問するにせよ、日本の学校が韓国を訪 問するにせよ、費用面での課題が大きいため、インターネット等を活用した交流を進めることを考えなけ ればならないのではないかと思われる。 様々な校種の教員が参加する中で、日によってグループを変更していただくなどのご配慮を頂いたこ とは大変有り難いことであった。今回の竹島問題のようなことがなければこのような慌しい対応は必要でな かったかもしれないが、有り難いと感じつつも申し訳ない思いであった。グループを校種別にという発想も あるが、グループに様々な校種の先生がいることのメリットも大きいとの判断があったのであろう。 また、訪問地についても様々な地域の学校を見学する機械があればよいと考える。 大阪教育大学附属高等学校池田校舎 教諭 桑原 義照 1.総合所見: はじめに竹島問題で本プログラムの実施が困難であるにもかかわらず、強い意志で本プログラムのコー ディネートと実施を進められた韓国ユネスコ委員会(KNCU)並びに受け入れを承諾いただいた各学校 - 192 - の関係者の方々に深く感謝の意を表します。本プログラムは、韓国と日本の教員がじかにふれ合い交流 することに意義を持ちます。また、韓国の生徒や教員やそのほか多くの人々と心の交流を持つことが大 切です。この意味で本プログラムは、国と国との交流と異なり、人と人という最下層からの交流を目指した ものです。これこそ、平和への“草の根の交流”ではないでしょうか。両国にとってこの難しい時期に韓国 の学校や教育関係者と心温まる交流が実現できたことは、大きな成果であると思います。 さて、勤務校の附属池田は、ASP校であり、国際教育やESDに力を注いでいます。このため、今回の プログラムでは、個人として次の課題を設定しました。まず、韓国のASP校の実態やESDがどのように行 われているかつぶさに見て勤務校との相違点や類似点を明確にすること。さらに、日本と韓国との教育の 現状を韓国の教員と共有し、学び合うことです。勤務校では、学び合うことや知識を共有することを生徒 に指導しています。今回のプログラムでは、日頃指導していることを自ら実践することになりました。 今回の訪問でまず実感したのは、韓国の国民の教育に関する関心の高さです。そのため、政治は教 育に力を注ぎ、教員は社会的に高い地位にあります。また、教育機関への投資も大変なもので施設の立 派さにも驚きました。どのように教育の予算が使われるのかにも関心がありました。初めに訪れた山マウル 高等学校について、学校情報を見ると私学であり、生徒数 62 名、教員数 14 名という規模でした。だから 経営的に成り立つのか疑問を持ちました。訪問してみて、韓国では、私学でも公立学校でも国からの援 助に変わりがないことを知りました。優れた教育ビジョンにお金がつくシステムでした。 次に、驚いたのは、韓国の教育に占める塾の存在の大きさです。とにかく、街中で見かけるのは、塾、 塾、塾…です。大変塾が多い。高校生は、大学受験のため 10 夜時頃まで勉強します。ホームビジットさ せていただいたご家庭でも高校3年生のお嬢さんが 10 時からさらに塾に出かけるため、お母様が送って 行かれるのを目の当たりにしました。成績が優秀な学生は、学校の自習室で 10 時まで勉強する。自習室 に入りきれない一般の生徒は、塾で勉強するようです。塾の学費も日本より高いように思いました。高等 学校でも有名大学への進学が大きな教育目標になっています。今回訪れた高等学校のいくつかでも大 学合格が教育目標の第一義的なものであると臆面もなく話されていました。日本においても大学受験は 大きな関心ですが、大学予備校に負うところが大きく、日本の高等学校とは、温度差があるように思いま す。それから韓国の生徒はよく勉強すると思います。また、生徒は、素直で明るい印象でした。訪問先の 学校では、大変すばらしい教育の現状を見ました。 最後にホームビジット先で韓国の兵役の義務の話を聞きました。大学在学中に兵役の2年間があり、そ の後大学に戻って就職のため再び勉強に励むとのことです。兵役があることも教育環境に影響している ように思われました。 今回のプログラムで学ぶということを改めて考えさせられた様に思います。書物やインターネットやニュ ースを通じての学びとは、まったく異なる学びを経験しました。それは、現場に出かけ、直接見聞し、人と 出会い、心の交流を通じて、情報を共有し合い、コミュニケーションを取り、互いに学びあう経験です。こ のような機会を戴いたことに改めて感謝いたします。韓国は、風土も人も日本とよく似ていました。だから、 韓国の事情は、日本の事情を考える上で最も参考になるはずです。このプログラムから始まる人とのつな がりを大切にして、これからも学び続けたいと思います。 - 193 - 2.各訪問先について: 訪問機関名 所 見 訪問先① 38 度線を初めて自分の目で見ました。北側から掘られたトンネルの見学 DMZ は、戦争の生々しさを思わせます。また、韓国企業が北側の工業団地 に進出し、そこに通う韓国の労働者がいる事実を知りました。軍事境界 線とは、単純に互いを分ける線ではなく、目的により行き来ができる複雑 な線でした。 ここを訪れて最も感じることは、韓国の人々の朝鮮半島の統一への強い 願いです。21 世紀のアジアの安定・平和につながる大切な願いです。 その思いに共感するとともに、統一実現へ向けての希望を持つことがで きました。 訪問先② 大阪の能勢のような自然の中にある学校です。周りは山で、田や畑に囲 サンマウル高等学校 まれて1階建ての建物があります。教育理念は、自然・平和・共生であ り、平和の種をまく人(peace maker)の育成を目指しています。大学入 試の勉強だけでない高校です。ただ、大半の生徒は、大学に進学しま す。学校に到着したとき、懐かしいものを感じました。さらに校内に招か れて、食堂に案内され、生徒ながらに授業を受けるように座りました。土 の壁、じかに座り込める木の床。大変心地よい空間だったことが印象的 でした。太陽パネルや地熱を利用した空調も心地よさに一役買っていた と思われました。生徒たちは、素直で明るい。二人の男子生徒に将来の 希望を聞くと、一人は教員を志望、一人はパン職人を希望していまし た。また、体育の授業でマッサージの実習を見学する機会がありました が、生徒たちが見学していた我々教員の肩を揉んでくれたことも思い出 となりました。どの生徒も日本人である我々を嫌がらず、受け入れてくれ ました。我々を先生として敬意をもって接してくれているように感じまし た。 訪問先③ ソウルで初めての公立養護学校です。トレーニングルームに多数のトレ ソウル精進学校 ーニングマシンが並んでいたり、手先を訓練するためにゲーム機が設置 されていたりと施設面が充実していることが印象的でした。また、生徒3 人に1人の教員が配置されるなど教員数も十分なものです。校長先生 が、日本の唄“ふるさと”を歌って歓迎の意を示されました。我々は、“故 郷の春”を韓国語で歌って気持ちを伝えました。また、歓迎行事として 卒業生による小さなコンサートを開いていただきました。すべて在学中 の指導の賜物でした。フルートを演奏したイーヨンスク君は、10 月に大 阪で公演すると聞きました。また、施設見学の際、生徒が海苔巻きを作 る作業を見ました。これは、親が留守でも食事を作ることができるように するためのカリキュラムです。生徒3人に2人の教員がついていることに - 194 - も驚きました。 訪問先④ レベルの高い進学校です。施設は日本の高等学校に比べて充実して 漢陽大学校師範大学 います。生徒との懇談の場を作っていただき、5、6人の生徒の班に 附属高等学校 我々訪問団の教員が一人ずつ入って交流できたことがもっとも印象に 残りました。生徒は、英語や日本語で次々といろいろな質問をし、心を 通わせようとしてくれました。生徒たちの細かい心遣いを感じました。将 来の夢もしっかり持っており、立派な生徒たちでした。また、我々訪問団 の一員である稲生淳先生が韓国と日本の歴史問題に踏み込んで講義 をされましたが、過去に学び、未来をさぐる意義あるものでした。 訪問先⑤ 講堂には、両国の国旗が飾られ、心遣いをうれしく思いました。南星女 南星女子高等学校 子高等学校は、大学受験に特化した高等学校です。学校側の説明で は、“ランクの高い大学への合格が重要”とのことです。数学の授業を見 学しましたが、難易度のある問題を教員が次々に解説して進めていまし た。こんなに早く進んで、生徒はついていけるのかと心配な程ですが、 塾が授業の補完をしてくれるようです。また、歓迎会では、2年生のパク チューヒさんが、すばらしい日本語で資料の説明をしてくれました。日本 語は、独学と聞いて驚きました。生徒たちは、カヤグンの演奏、テコンド ーの形、日本語の歌詞による合唱、ハンドベルの演奏で歓迎の意を表 してくれました。これらは、学習活動で忙しい中、我々のために準備して くれたものだと思いました。最後に教員との意見交換の機会が用意され ていましたが、20 分ほどしか時間がなく、不十分に終わりました。 3. 最も有意義であった内容: 学校訪問の際、生徒や教員との交流の時間が大変興味深いものでした。じかに、人と接することが、現 地に行く最大のメリットではないでしょうか。韓国の教員から生の声が聞きたいですし、両国の教育の現 状を共有して、こちらからも意見を発信できることは、すばらしいことです。 今回の訪問では、山マウル高等学校で校長先生に身近にお話いただくことができましたし、精進特殊 学校では、教員間の質疑応答の時間を持つことができました。南星女子高等学校でも短い時間でしたが、 教員との交流会が設定されていました。これらを通じて、韓国の教育の現状を知ることができたと思いま す。 また、生徒たちとの交流会は、教員にとって楽しいものです。こうして生徒たちと話しているときが、教員 として力を発揮できるときです。韓国でも日本でも変わらない教員の本分で動くことができます。そして生 徒たちから学ぶことが大きいと思います。形にならないことであっても、情報量が多いのです。たとえば、 漢陽高等学校では、生徒たちの細やかな心遣いを知ることができましたし、日本の生徒との違いや類似 - 195 - 点も感覚的に捉えることができました。 4. 成果: 韓国の教育や韓国そのものを実際に視て、そこに生活する人々を通して知ることができました。さらに 教員や生徒たちと微笑みや言葉をかわしてお互いに学び合えたことは大きな成果でした。教育機関、文 化施設、自然の遺産を訪れて韓国の教育システムや教育の現状、さらに教育観、学校観、学習観を知り、 日本の教育について再認識することになりました。特に、塾や学校の夜間補習の現状に驚きました。また、 韓国の文化や自然にも興味が深まりました。一方、韓国のESDについては、十分に知ることができませ んでした。本プログラムを通して、韓国と日本との間にある問題を再考し、韓国の人々とともに学びあう決 意を新たにしました。 5. 今後の日韓交流について: 大阪教育大学附属高等学校では、サンダン高等学校と交流をしています。2007 年5月には、韓国から 生徒8名と教員2名を迎えました。球技大会のプログラムでは、韓国の生徒にも参加してもらってサッカー やバレーボールを楽しみました。また、別の日のプログラムでは、本校の生徒 30 名ほどとともに京都を観 光しました。2008 年8月には、本校より生徒8名と教員2名からなる訪問団を組織し、サンダン高等学校を 訪問する計画がありましたが、竹島問題のため実現しませんでした。しかし、近く実施できると信じていま す。 また、2008 年 11 月には、大阪で高校生国際会議を文科省主催で実施することができました。これは、 日本では、初めての試みです。韓国からも生徒たちが訪れ、2007 年に本校を訪れた生徒や教員にも会 うことができました。本校の生徒たちも会議の進行に役割を果たしました。 ASP校として本校が行ってきた教育交流は、韓国の訪問団を迎える場合、授業への参加、学校行事 への参加、歓迎会の挙行、日本の文化に触れていただくため京都・奈良などの観光、これらを通して生 徒同士の交流や教員間の交流を深めるものです。将来は、共通のテーマ、たとえばESDで学んだ事柄 についての討論会を行うことでより深い交流ができると考えています。 6.提案・助言: 今回のプログラムで受け入れていただいた教育機関には、大変感謝しております。また、韓国ユネスコ 委員会の細やかなプログラムの構成にも敬意を表したいと存じます。今回、慶州でのESDの現状が見れ なかったのは、残念でしたが、竹島問題のため仕方がないことでした。プログラムの内容では、韓国の生 徒や教員とじかに交流できる場や時間を増やせたら、交流の内容も深くなるのではないかという感想を持 ちました。帰国後考えたことですが、教員同士テーマを決めて討論すれば、もっと交流を深められたかも しれないと思いました。テーマがなくても時間さえあれば、同じ教鞭をとる者として共通の問題が浮かび 上がってくるのではないかとも考えています。ただ今回は竹島問題のために討論会には、デリケートな問 題があったかもしれません。 - 196 - 和歌山県立古座高等学校 教頭 稲生 淳 1. 総合所見: 本校は、昨年末、ユネスコスクールに登録された。この度のプログラム参加は、ユネスコスクールの活 動が盛んな韓国を視察することにより、本校の世界遺産教育の充実に役立てたいと考えた。また、国内 のユネスコスクールとのネットワークについても構築したいと考えている。 今回の韓国訪問に際しては、竹島問題により多くの日韓交流が頓挫する中にあって、プログラムの一 部変更もあったが、「このような時期だからこそ両国の交流が必要である」との確かなコンセプトのもと計画 を実行した韓国ユネスコ国内委員会とACCUの見識に心から感謝している。 役割分担で、両国の歴史についてのスピーチをすることになったが、両国関係が難しい時だからこそ 朝鮮通信使に学ぶ必要があると思い、テーマを「朝鮮通信使に学ぶ国際交流」とした。朝鮮通信使は、 信義を通わす相手として互いに認めあうことからスタートしたもので、江戸時代における過去の国際交流 というだけでなく、最も近い隣国とそこに住む民族を理解し共生の道をさぐる上で大きな示唆を与えてく れていると思う。 本プログラムでは、地域や校種等の異なる4つの学校訪問、DMZ視察では韓国の置かれた現状把握、 慶州国立博物館・仏国寺など韓国の歴史・文化学習、さらに牛浦湿原フィールドワークでは環境問題、 ナンタ鑑賞では現代韓国芸術について学んだ。また、ホームビジットでは韓国の一般家庭を体験するな ど、中身が大変充実しており、その成果は極めて大きい。自らの教育観や人生観が変わるほどのインパ クトがあったと感じている。 このように思えるのも、本プログラムを企画・運営し、その遂行に対して細やかな気配りをいただいた韓 国ユネスコ国内委員会とACCUの方々のおかげであり、感謝申し上げる。 2. 各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① DMZ 所 見 ソウルから 50 キロあまりの近距離にあるDMZを見学。北朝鮮が韓国侵 入のために構築したトンネル内の見学をはじめ、国境ラインを挟んで北 朝鮮の町を遠くに見ることができた。 トラサン駅は韓国最終の駅ではなく平壌に向けてのスタート地点であ るというバスガイドさんの解説に、早くその時期が来ることを祈る思いで あった。ソウルの賑やかな近代文明の陰に緊迫した韓国の現状を垣間 見ることができた。 - 197 - 訪問先② サンマウル高等学校 日本の山村のような風景のなかに、土壁と木で造られた平屋の校舎が たち、農業体験など一般的な高校のイメージとは異なるその姿に驚い た。どのような生徒が、何の目的で、この山村の小さな高校に学んでい るのかと思った。 しかし、校長先生の教育理念「自然、平和、共生」に基づいた教育方 針についての説明を聞き、教育内容がESDそのものであると思った。 訪問先③ まず、学校の建築、施設・設備が素晴らしく充実していることに驚い 漢陽大学校師範大学付属高 た。ソウルでも有名な進学校であり、選抜された 70 名の生徒について 等学校 は、午後 10 時まで自習机を与えられ、教職員による支援体制が確立さ れているなど、受験競争の激し韓国の教育事情について知ることができ た。 「朝鮮通信使に学ぶ国際交流」と題した授業を行ったが、韓国と日本 は信義を通わす相手として、未来に向かって共生することの重要性を理 解させることを「ねらい」とした。 訪問先④ 南星女子高等学校 高校生や教職員が校門に並んで笑顔で迎えてくれた。日本語の授業 を参観したが、先生が浴衣の着付けモデルの希望をとった際、モデル に選ばれた生徒の喜んだ顔、反対に選ばれなかった生徒の残念がる 様子など、何とも高校生らしくほほえましかった。プサンの名門校で、相 当烈しい受験勉強を強いられているにもかかわらず、その屈託のない 笑顔にさわやかな印象を持った。基本的には、日本の真面目な女子高 校生たちと同じであった。 歓迎会のあと、前回の授業テーマ「朝鮮通信使に学ぶ国際交流」に加 え、今回初めての韓国を訪問して感じた事などについてスピーチした が、教職員や生徒たちから好評をいただき、無事大任を終え胸をなで 下ろした。 訪問先⑤ 国立博物館・仏国寺 新羅の都慶州は、あちこちに古都の風情が漂う大変趣のあるところ で、ふと奈良の明日香にいるような気分になった。国立慶州博物館で は、新羅時代の王冠や土器などを見ることができた。 また、仏国寺は、世界遺産に登録されるなど大変立派なお寺で、瓦屋 根と土壁のコントラストが初秋の青空に映え、とても美しかった。この歴 史的建造物が秀吉の侵略でことごとく灰燼に帰したことに対し、秀吉の 蛮行に怒りがこみ上げてきた。 3.最も有意義であった内容: ホームビジットでは申校長先生宅に、ACCUの藤田さんと訪問した。申先生は中学校の歴史の先生 で奥様は日本語の先生であった。土産に持参した和歌山の地酒「羅生門」を見て、申先生はすぐに芥川 龍之介と言った。芥川の他にも、川端康成や太宰治、三島由紀夫などの小説もよく読んでおり、「なぜ、 - 198 - 小説家は自殺する人が多いのか」などと質問され、答えに困るほど日本のことを良く勉強していることに 驚いた。申先生とは、同じ管理職として学校経営上の悩みや、若い教員の指導などについても話す機会 を得て大変有意義であった。 4.成果: 初めて訪れた韓国。髪や目の色など、姿形は日本人と全く変わらず、文化的にも似ている点が多いに もかかわらず、何かが少し違った。そのため、最初は少し戸惑ったが、かすかな違和感も日がたつにつ れ新たな発見に変わり、だんだん韓国の魅力に惹かれていった。韓国は、ヨーロッパなどとは違い、町並 みや田園風景も日本とよく似ており、なぜか郷愁を感じる。しかしながら、目に入る文字はハングルで聞こ えてくる言葉は韓国語のため、これらをまったく理解できない私にとっては何だか不思議な国に迷い込ん だような気がした。 今回のプログラムでは多くの韓国の人々に出会った。訪問した学校の校長先生をはじめ、教職員や多く の生徒たち、バスガイドや通訳、スタッフの方々、韓国ユネスコ国内委員会の徐賢淑さんたち。こうした人 たちと、毎日、行動を共にする中で、韓国の人々の温かい気配りに感謝すると同時に、いつしか日本人と 韓国人といった国籍の違いすら感じなくなっていた。このたびの韓国訪問は、わずか 10 日間ではあった が、お互い心に温かいものが通い合うかけがえのない友人を当地で得られたような気がする。彼らが住 む国と、絶対に争ってはいけない。日本と韓国は、地理的にも歴史的にも最も親しい隣国として、未来永 劫、友好関係を維持していかなければならないと思った。 5.今後の日韓交流について: 本校は、今年度より、修学旅行の行き先を韓国とした。韓国を通して、人権、平和、国際理解などに ついて学習するためである。今年度は、2泊3日の予定でソウルを訪問するが、オイルの高騰により、来 年度以降の行き先については未定である。将来、継続的に韓国への修学旅行が可能となれば、本校生 徒と韓国の高校生の交流を計画実施し、極めて有意義な交流プログラムとすることができると考えてい る。 6.提案・ご助言: 参加人は、今回のように 50 人2グループ編成が良いと思う。人数を増やすことによって密度が薄くな ってはいけない。今回も、Aグループの人たちとは余り交流できなかった。国内のネットワーク構築も大切 である。また、8月後半 10 日間という日程も、学校の現状を考えれば妥当と考える。 奈良教育大学教育学部附属中学校 教諭 八尋 薫子 1. 総合所見: (1)開始前の個人テーマ - 199 - 「ESDの理念に基づく学校づくり」を勤務校での研究テーマとしているため、韓国の持続可能な開発 のための教育(ESD)の日本との共通点や相違点を知り、それを推し進めるための方向をつかみたい、 また、今後とも互いに学びあえるつながりを得たいと考えて参加させていただきました。 (2)全体的感想 プログラムを振り返り、まず「このようなときだからこそ草の根の交流を大事にしたい」と、きめ細かいご 配慮のもと内容豊かな研修を実施してくださったKNCUの皆様、訪問先の皆様、ACCUの皆様に心か ら感謝申し上げます。 最初に、東京で駐日大使館教育官からの教育事情概要説明があり、韓国での初日にKNCUビルで 講義を受けたのは、現地訪問のためのよい事前学習となりました。現地では、公立の中学校・高等学校、 私立の対案学校・女子高校と、性格の異なる学校を訪問できたことが、まず勉強になりました。学校以外 の訪問先も、韓国への見方を新たにし韓国をより身近にするものでした。ユネスコスタッフ、先生方、生徒 たち、通訳の方などと、直にお話できたのも、このプログラムのおかげでした。多数の先生方が各場面 に、勤務の合間を縫っておいでくださったことにも、お礼を申し上げたいと思います。 (3)印象に残った意見交換 善隣中学校の質疑での中学の日本語教育のお話、山マウル高等学校での生徒との直接交流、果川 高等学校での放課後学習についての質疑、南星女子高等学校での懇談会での日韓がたどった方向の 違いについて等、興味深い話題の交流が各校でありました。ここでは、全日程を振り返りつつ今後への 方向を示された、最終日の報告会・閉会式でのお話を引用してみます。 ・ 受験の準備教育が過熱化している印象を持ったが、平準化でさまざまな生徒が集まる韓国は顕在 型、輪切りになっている日本は潜行型だと言える。日韓とも人材育成、能力の開発は大切な目標。能 力の開発は、受験に偏らずもう少し広く見つめる必要がある。(Aグループ報告より) ・ ESDとは、人と人・人と自然・人と地域・人と地球の関係の再構築と考えている。貯金型の学力で良 いのか。学力テストだけでははかれない能力をどうつけて行くかが課題。(団長総評より) ・ OECDのテストで両国は受験科目においてトップクラスであるが、幅広い人間教育においても上位 を占めることができるのか懸念する。ESDは環境問題に偏るものではない。言語・体育・芸術的側面 などからもっと幅広い課題についてすべての教師が悩んで解決しなければならない。(ユネスコ韓国 事務総長より) 研修の最後に、国境を越えた広い視野で現在の教育を考える基本的な視点を示していただきまし た。 - 200 - 2. 各訪問先について: 訪問機関名 訪問先① 所 見 2000 年に開校した1学年 20 人前後という小規模の対案学校。自然豊 山マウル高等学校 かな丘に一見学校らしくない木造棟がいくつも立ち並ぶ。学歴重視の (ユネスコスクール 私立)生 風潮に同調せず、自然豊かな環境で、農業など労働の価値に触れ、異 徒数 63 年齢集団の寄宿舎生活を行い、人と人のつきあいやつながりも学んで ユネスコクラス有 いる。自然エネルギーや有機栽培のように、環境も重視している。 まさに「持続可能な発展のための教育」の実験であり実践である。「人」 が「人らしく」育つための教育環境を追求したとき、このような高等学校も あり得るのかと感銘を受けた。ただ、進路決定において、短期的には不 利な面も生じてきそうだが、それをどのように乗り越えているのかも知り たいと感じた。 訪問先② 学期早々の授業公開なのに、生徒の演奏や芸能、保護者の美しい服 善隣中学校 装、給食体験などで、配慮に満ちた心のこもる歓迎をしていただいた。 (ユネスコスクール 公立) 生徒たちの落ち着いた学習ぶりや、明るい表情に接することができた。 生徒数:930 ユネスコクラス有 日本語と中国語が中学段階から選択教科に入っている。語学重視は 日本の比ではない。 ユネスコ協同学校加入は 07 年だが、マレーシア訪問(校長・担当教 師・生徒代表)、生徒サムルノリ公演、教師の研修、世代間交流、お年 寄りとの交流、脱北者とイムジン河見学、伝統文化を理解するための教 育、日本訪問など多様な取り組みをしているとのこと。 放課後学校が運営されている。地域の大学と連携し、大学生が入ると いうことである。 訪問先③ 果川中央高等学校 (ユネスコスクール 公立) 生徒数:1249 ユネスコクラス有 2000 年開校。各クラスの大型テレビ、パソコン、広い自習室、高い体 育館やシャワー室など、施設設備の充実ぶりに驚く。 特色ある活動としては、ボランテア・文化祭・2年生修学旅行・海外体 験学習(カナダ・モンゴル・日本他)など。 訪問団のために時間割を変更して、部活(乱打・軽音楽)も見せてく ださる。訪問の様子の映像記録を生徒が担当していた。 平準化により在籍生徒の学力差が大きいので、教科によっては上中 下の、自分の合う授業を選ばせるという。8校時には補充授業(自費で 負担させる)上位クラスの特別クラス、夕食後進化クラスがある。 平日は、放課後も学校で長時間の学習をしている。夕食後 10 時まで 「自己指導学習」。さらに「学院」で 12 時まで勉強する生徒もいるという。 保護者もそれを支持しているように見えた。 - 201 - 訪問先④ ユネスコクラスの生徒たちが中心となり、熱い歓迎をしてくれた。心洗 南星女子高等学校 われる生徒たちの演奏、歌声であった。代表生徒の日本語スピーチは (ユネスコスクール 私立) 見事で、ユネスコクラスの生徒たちに、積極的に国際交流に加わる意欲 生徒数:1214 が育っていることが伝わった。 ユネスコクラス有 学校説明からは、ダイナミックに国際交流をされている印象を受けた。 36 クラスのうち、ユネスコクラスは3クラス(12 名×3学年=36 名)。本校 はASPのなかでも積極的な学校で、南北交流で北にも行ったことを、K NCU事務総長が紹介された。 英語・数学・日本語の授業が公開された。授業の様子は、日本と似てい る。日本語の授業はNHKの日本語番組が利用されていた。 日本訪問団からの歴史の授業(稲生先生)、浴衣の着付け(石橋先生) は生徒たちの心にも届いたように感じた。 訪問先⑤ 1.講義 ユネスコ韓国委員会 1)KNCUの紹介 設立の理念と活動が紹介された。それほど多くないスタッフによって、E SD、識字教育ASPnet、その他幅広い取り組みを、企画・運営されて いた。 2)韓国教育現況の紹介(教員評価) 韓国の教員評価の理念の転換(人事資料から教師の能力開発へ、外 在的理由による評価から教師自体のやりがいという本質的理由へ)を、 具体的に説明された。教師の力量形成が前面に出されている。同僚の 評価、校長の環境整備義務、研修制度の充実が重視されていることも 分かった。 3)韓国の学校における持続可能な開発のための教育 環境教育が選択科目扱いで選択されにくい、環境教育担当教師が不 足している、ESDとなると概念そのものが理解されにくく、教師の認識が 低い、との一般校の現状のなかで、この国でもEDSに取り組まれようとし ている。 4)韓国のユネスコ協同学校の事業 ネットワークづくり、新しい実験と情報提供、国際教育推進といったASP の重点方向は韓国の特色が出ていると思われる。EARSEは興味深 い。 2.屋上庭園散策と有機農産物による昼食 *屋上はビオトープ 3.最も有意義であった内容: (1)学校訪問 ASPでの、最大限の受け入れに頭が下がりました。生徒の姿勢から、開かれた精神・他文化への積極 - 202 - 性を感じました。日本語をなめらかに話す生徒や、堪能でなくても日本語のあいさつを試みる生徒に出 会うと、外国語や外国人に抵抗をもたない環境づくりをしていることの大切さも感じました。韓国の歌や芸 能で歓迎してくれた生徒たちからは、伝えたい自国の文化を身につけていることが、若者に自信と喜びを もたらすことを思いました。 おそらく典型的な韓国中学校・高等学校(善隣中・果川高)と、対案学校(山マウル高)の両者を訪問 できたことは、とても刺激的でした。長時間学習して学歴社会を突破する学力を身につけようとする若者 と、自然や人としっかり関わりながら体を使いのびのびと生き方を身につけようとする若者。それを支える 双方の先生方の努力の方向の違いに、考えさせられました。 (2)家庭訪問 オンドル付き煉瓦づくりの家屋で、担当先生の高齢のご両親を交えて歓談させていただきました。お 母様には、海の幸山の幸の家庭料理をふるまっていただき、お父様からは、ご先祖のお話や小3まで習 った日本語のお話をお聞きしました。先生からは、高校の先生の勤務の様子などについてお聞きできま した。愛情あふれるご家族のなかで、伝統的なたたずまいにふれつつ交流できたことは、本当に貴重な 体験となりました。 4.成果: (1)日韓の教育の違いにふれ課題を再認識する 最初の大使館教育官からお聞きした概要で印象に残ったことは次の諸点です。 97 年に初等教育で英語導入(3・4年週1時、5・6年週2時) / 04 年に中学校の無償義務教育全国実施 完了 / 74 年から高校平準化政策により学校選択権を与えず学校群内に配置されるが例外(外国語高 校・科学高校)がある / 教科書は国定・検定・認定の三種 / 学校給食は 92 年からほとんどの小・中・高 で実施 / 2000 年英才教育振興法(全学生の 0.3%対象) / 教育財政GDP対比 4.3% / 今後の課題 として「公教育の充実化」(信頼性の危機 私教育の蔓延)がある 予算の裏付けのもと、日本では躊躇されるような思い切った施策も実施されているようです。 現地の学校を訪問し、中学校・高校であたりまえのようになっている放課後教育からも、韓国の教育熱 を実感しました。公教育ですべての生徒の学習環境を整えようとしている点は、日本より手厚い制度と言 えるのかも知れません。ただ、9時 10 時まで学校に拘束することで生徒・教員・保護者の家庭生活やゆと りを損なわないか気になりました。平準化政策と英才教育の存在とは、生徒を学力で輪切りにしないとい う理念と国際的競争力で勝る人材育成という現実の間を揺れているようにも見えました。そして、現在の 教育熱の方向に疑問を提示する対案学校の存在は、韓国の教育観が単純ではなく、別の道を支持する 保護者層が存在することも示していました。 日本では、「新しい学力観」賛美から「学力低下」危惧へと揺れ動いたこの 10 年の教育の総括が、真 摯になされたとは言い切れません。子どもたちにとって本当によい教育とはどんなものか。韓国の教育熱 のどの点を学び、どんな「学力」をこそつけるべく、どんな制度を求めていくべきか。基本的な課題が改め て浮かび上がり、ESD精神に基づく教育課程を自校でどうつくるか、という原点に立たされたように感じま - 203 - した。 (2)韓国のESDの一端にふれる 個人的課題として、韓国のESDのカリキュラム上の位置づけや特色ある実践、国際理解教育・平和教 育・世界遺産教育の具体的取り組みや成功の要因あるいは困難について知りたいと考えていました。 けれども、学校訪問で1テーマについて深めることは困難であったこと、トンヨ市の訪問が中止されたこと などから、ESD先進校のお話を現場で聞くことはできませんでした。ただし、国際理解教育については、 各ASPで意識的に取り組まれていることがよくわかりました。生徒によるアジアを中心とした外国の学校 訪問が中学校・高等学校で普通に行われているようであることに驚きました。 ただ、日韓ともESDが一般には盛んでないと言い切ってよいか、疑問が残ります。ESDのなかの国際 理解教育を、善隣中学校では「開発活動」と「教科科目」を通じて行っており、「教科科目」ではテーマとし てとり扱っているとのことでした。平和教育・世界遺産教育などは、研修日程の中であまり話題に上りませ んでしたが、顕在化しないだけかもしれません。丁寧に掘り起こせば多様な観点からも、ESDにつながる テーマが、各学校の各教科・行事などで学習されているに違いないという気がします。ESDについては、 斬新な取り組みだけにとらわれず、現在行っている教科や教科外の優れた取り組みにも光をあてて交流 することも大切だと思われました。 なお、ASP校を訪問しながら、次のような点については詳細に尋ねることができませんでした。 ・ 学校全体の取り組みと、ユネスコクラスの取り組み ・ ユネスコクラスとそうでないクラスのカリキュラム上の違い ・ 一般授業・各教科で行われているESDと、特別活動や行事で行われるESD ・ ASP担当教師、ユネスコクラス担当教師の役割と努力 今後も交流できるならば、韓国のASPに学びたい事柄です。 (3)日韓友好を担う若い人々の育成を考える 国際理解教育のなかでも、今回訪れた日韓の友好を担う若者の育成について考えさせられました。 国際人の育成というとき語学力が注目されやすく、それも大切です。事実、韓国では英語をはじめとする 語学教育が重視されていました。 しかしさらに必要なのは、伝えたい何かを持っていることでしょう。自国の文化や伝統もその一つです。そ れも韓国で実践され、訪問団に伝統芸能などを披露してくれました。また、学校訪問とは無関係で現場 にも遭遇していませんが、平日遅くまで学習している韓国の若者が、週末には街で政治的な訴えをして いる様子でした。日本では、自国の文化に限らず、ぜひ見せたい、聞いてほしいという内容を持たせ、そ れを表現する意欲を育てているかということを、省みさせられました。 そしてもう一つ、日本の若者が自国の負の側面も含めた歴史をきちんと学んでいなければ、日韓の友 好を担えないのではないかという思いが募りました。秀吉の朝鮮侵略(壬辰倭乱)だけでも許し難いはず で、ましてや、植民地時代への怒りは簡単に消えるはずがありません。加害者側が「過去の不幸にこだわ るな、未来を見よう」と口にすることは不誠実でしょう。教室の生徒達には、自国の行った事実を知ったう えで誠実に率直に語れる力をもってもらいたい、と感じました。 - 204 - (4)韓国の多様な側面に触れ、生徒レベルの交流の可能性に気づく 学校以外の見学・訪問も大変意義深いものでした。DMZでは、日本にいては気づかない重い状況、 同じ民族が敵対する複雑な関係を実感しました。梵魚寺では、日本と源流を同じくする禅 の教えに出会 い、奈良の姉妹都市慶州の仏国寺では建築のすばらしさだけでなく復興に尽くした人々の思いにも触れ ました。韓国最大の自然大陸湿原である牛浦湿原では、オニバス・サギなど、豊かな生物を目にしつつ 散策し、「ウッポ生態教育院」では、環境学習拠点をつくろうとする意志と努力を知りました。ナンタ公演 は、韓国の伝統的な芸能に根ざしつつ軽々と国境を越える楽しく独創的な演劇でした。 厳選された文化体験によって、韓国の奥行きを知り、韓国がより身近で親しみ深い国になりました。そ して、日本の生徒たちが修学旅行の形で現地に行けなかったとしても、もし日韓の生徒間交流の機会が あれば、その糸口となるテーマが豊かにあることに気づきました。歴史・文化・自然、どんな切り口からも 日本と共通の要素と異質な要素があり、互いの新鮮な出会いが生まれるでしょう。 5.今後の日韓交流について: (1)教員による特色ある活動の紹介と関連するテーマの相互交流 勤務校では「沖縄修学旅行」「平和のつどい」を通した平和学習、奈良めぐりを通した「世界遺産学習」な どを実施しています。これらを外国の先生方に紹介して、意見交流するとともに、外国ではどのような取り 組みがあるかを紹介していただくような交流は、実現可能かと思います。 (2)生徒による韓国の先生方への日本文化紹介 クラス内で、いくつかのグループに分かれて、外国から来られた先生方や生徒さんに、「奈良の・・」「日本 の・・」について簡単な紹介や実演を行う交流もできそうです。ただし、年間計画への位置づけがないの で、急に実施することは難しいかもしれません。(国語科・総合的な学習の時間など) (3)生徒どうしの手紙やEメールでの交流 高校の日本語クラスの学生さんと日本の中学生の日本語による交流も考えられます。ただ、高校生の方 だと、日本語で文通していただくのはまだ難しいかも知れません。またこれも、現時点では年間計画への 位置づけがありません。(国語科 総合的な学習の時間など) 6.提案・助言: (1)複数の学校を訪問する場合、学校によっては、テーマを絞り込んだ説明を受けたり相互交流をしたり するのもよいのではないでしょうか。ESD・ASP・国際理解教育など、特色ある取り組みについて掘り下 げたお話を聞ければいいと思います。相互交流という意味では、訪問側も一方的に聞くのではなく、その テーマについての情報提供を準備していってもよいかもしれません。 (2)訪問する側と受け入れる側が「お客様ともてなす側」でなく「ともに学校現場を持つ仲間」という関係 で、例えば教科書・教材・教具を用いて意見交換できるような場を持つことは難しいでしょうか。(通訳の - 205 - 問題が、まず予想されますが。) 受け入れ校にそれほど負担がかからず、一方で受け入れ校の一般の 先生方にとってもメリットがあるプログラムになれば、交流の裾野が広がるかと思います。 文部科学省大臣官房国際課 浦田 晴香 1.総合所見: 私は今回の研修を通じて、韓国における教育現場の現状と課題を把握すること、また、今回の交流プ ログラムに参加している日本の教職員の方々との意見交換を通じて日本の学校現場における現状と課 題を把握することを目標として設定した。 まず、韓国の教育事情については、韓国ユネスコ国内委員会における講義及び実際の学校現場の見 学によって理解を深めることができた。特に学校現場の見学は、実際に学校の設備を見学し、先生方や 生徒達との交流することによって、その現状を肌で感じることが出来、非常に有意義であった。 山マウル高等学校は、山間部に位置する小規模な寄宿舎制の学校で、有機農業等の生態的プログラ ムを教育に取り入れ、自然・平和との共生を教育理念に掲げている学校であった。卒業生の殆どは大学 に進学するが、いわゆるトップレベルの大学でいい企業に就職するよりは農業を専攻する等自分の特技 を活かすような生徒が多いということであった。生徒達は皆生き生きとした目をしており、素直でのびのび と育っている印象をもった。また、太陽光発電や、エコトイレ等、実際に環境に配慮した生活環境も印象 的であった。 ソウル精進学校は、公立の特殊学校であったが、プール、ジム、教室等の設備よさには驚いた。また、 本校卒業生達の素晴らしい楽器演奏は、非常に印象的であった。先生方、保護者の努力のもとで障害 を持つ子供達の個性を生かした教育が施されていると実感した。 最後に漢陽大学校師範大学附属高等学校は、学校設備も充実し、生徒達も夜中の 10 時まで自習室 で勉強する、トップレベルの進学校であった。見学した国語の授業もインターネットを駆使した、ハイレベ ルな授業であり、生徒達は皆熱心に勉学に励んでいた。日本語、英語でコミュニケーションをとれる生徒 も多く、語学教育のレベルの高さに驚いた。 以上の違った種類の学校を視察することによって、韓国の教育現場を様々な角度から見ることが出来、 韓国の教育の現状を理解するのに役立ったと感じる。 次に、研修中、日本の学校の教員の方々と意見交換できたことは、普段学校現場になかなか出向くこ とが出来ない自分にとって非常に有意義であった。最近では家庭での教育能力が低下し、学校への負 担が過大になっていること、いわゆるモンスターペアレンツといわれる保護者への対応の困難さ、部活動 等で殆ど休みのとれない先生方の勤務状況等様々な課題があることを認識することができた。一方で、 生徒達と真剣に向き合い、生徒達の将来のために一生懸命に接している様子を聞き、教育の重要性を 改めて痛感した。 立場は違うものの、日本の子ども達の教育を担う仕事をしている自分も、今後課題を受け止めつつ、日 本の教育をよりよくするためにどうすれば良いか考えながら、日々仕事をしていきたいと考えている。 - 206 - 2.各訪問先について: 訪問機関 訪問先① 非武装中立地帯(DMZ) 所 見 北朝鮮との間の緊張関係が続く中、DMZには軍人が配置され、厳重 な警備体制が敷かれていた。一方、北朝鮮が南進していたというトンネ ルを公開し、観光客に公開している等、未だ南北間の融和が図られて いないにもかかわらずこのような場所を観光地化している韓国の様子に は非常に驚いた。 訪問先② 山マウル高等学校 ソウルから二時間程度の距離に位置する、山間部の小規模な寄宿舎 学校であった。太陽光発電、エコトイレ等、環境に配慮した設備を利用 し、授業においても有機農業を取り入れる、平和・自然との共生を理念 とした学校であった。2000 年度に開校した新しい学校で、山間部ではあ るが、インターネット設備等設備も完備した学校であった。生徒達は皆 のびのびとしており、無邪気な笑顔が印象的であった。 訪問先③ ソウル精進学校 公立の特殊学校で、プール、ジム、教室等の設備の良さに驚いた。校 長先生の挨拶では、以前に日本に来た際に学んだという日本語での 「ふるさと」の歌が披露され、異文化交流の大切さを実感した。また、本 校の卒業生がフルート、バイオリン、チェロを用いて演奏を披露し、その 演奏の素晴らしさが非常に印象的であった。特にフルート奏者の青年 は際だっており、障害を抱えているとは思えない演奏であった。国の支 援のもと、先生、保護者が協力して、障害を持つ児童の教育に力を注 いでいることがよく分かった。 訪問先④ 学校設備も充実し、生徒達の真夜中まで熱心に勉強する、韓国でもト 漢陽大学校師範大学附属高 ップレベルの進学校であった。上位 70 名にのみ与えられる特別自習室 等学校 があり、生徒達は真夜中まで懸命に自習勉強していた。我々に学校紹 介のプレゼンをしてくれた女学生を始め、英語でのコミュニケーション能 力が日本に比べはるかにに高いと感じた。ただ、多くの生徒達は「いい 大学に入学するために勉強している」と述べており、大学に入ることが目 標化されていて、真の勉学の目的を見失っているのではないかと懸念さ れた。 3.最も有意義であった内容: 本プログラムで最も有意義であったのは、学校現場の視察であった。 私はBグループで山マウル高等学校、ソウル精進学校、漢陽大学校師範大学附属高等学校の3校を視 察したが、それぞれ山間部の小規模寄宿舎学校、公立特殊学校、大規模進学校という違った種類の学 校で、韓国の教育現場を違った角度から理解することに非常に役立った。今まで韓国の学校制度につ いて詳しく勉強する機会がなかったが、学校設備の見学、生徒、先生方との交流を通じて韓国の教育現 - 207 - 場を肌で感じることができた。特に生徒との交流は非常に有意義で、生徒達が臆することなく、一生懸命 英語でコミュニケーションをとろうと努力する姿が非常に印象的であった。また、視察した二つの高校での 生徒達は、日本の高校生より幼い印象で、あどけない笑顔と、日本からの先生達に対する好奇心を持っ てコミュニケーションをとろうとしている様子が心に残っている。 4.成果: 私は、(1)韓国の教育事情の把握と、(2)日本の教育事情の把握を2つの目標として設定したが、韓 国の学校現場の視察を通じて、また、日本から参加している先生方との意見交換を通じて、今までよりも 日本及び韓国の教育現場の現状や課題について理解を深めることが出来たと考えている。 韓国の教育現場の現状については、例えば受験競争の激しさ等、日韓両国で共通する点も多いと感 じた。特に漢陽大学校師範大学附属高等学校を視察した際には、上位 70 名に与えられる特別自習室 の存在や、毎日深夜まで自習室で勉強しているという話を聞き、日本以上に受験熱が高いことに驚いた。 また、韓国では特に語学教育に力を入れており、交流した生徒の多くも、英語でコミュニケーションをとる ことができた。日本でも、英語教育を行っていく上で、韓国の取り組みは参考になるかと思う。 また、日本の学校現場の現状についても、昔と違って保護者との関係が難しくなっていること、教師に 与えられる仕事量が多いこと等、色々な問題を把握することができた。 今後、日本の教育行政を行っていく上で、他国と比較する視点や、現場を見る視点を活かしていきた いと考えている。 5.今後の日韓交流について: 本プログラムのような、日韓交流事業は非常に大事だと考える。 今回の交流の中で、実際に韓国に行って、直に韓国の人々と触れあることによって、韓国人のあたたか さや韓国文化のすばらしさ等、文献からだけでは知り得ないことをたくさん学ぶことが出来たと思う。日韓 両国の間には、歴史的にも難しい問題があるが、このような草の根の交流を続けることによって、人々の 間に相互理解をもたらし、ひいては国同士の関係改善にもつながるのではないかと考える。 また、地理的にも文化的にも近い韓国との教育現場の交流は、日本の教育と比較することで、日本の 教育をよりよいものにするためにも、有意義であると考える。 6.提案・助言: ・ 学校現場の視察では、生徒達との交流の時間をより多く確保できればよいと思う。 ・ 韓国の教育事情の全体的な説明が事前にあればよりよいと思う。例えば、韓国の一般的な学校、特 殊学校の現状と課題について総論的に講義があればよいと思う。 - 208 - 参考資料 - 209 - 1.実施要項 韓国政府日本教職員招へいプログラム 実施要項 1. 背景 2000 年3月、戦後の文部大臣として初めて、中曽根弘文文部大臣(当時)が訪韓し、文龍鱗(ムン・ ヨンリン)韓国教育部長官(当時)との会談でなされた招請に基づき、文部科学省の委託を受け、 (財) ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)は、2001 年より韓国から初等中等教育教職員を招へい するプログラムを実施してきた。当初は「ACCU・ユネスコ青年交流信託基金事業」として、2003 年からは「ACCU国際教育交流事業」のもとで、これまで約 650 名の韓国教職員が日本を訪問し、 我が国の教職員との交流を深め、日韓両国間の相互理解と友好の促進に貢献してきた。 2003 年からは上記プログラムと対をなすものとして、毎年 10 名程度の日本教職員を韓国へ派遣し てきたが、これら交流事業の成果が韓国政府に高く評価されることとなり、2005 年からは、韓国ユ ネスコ国内委員会による招へいプログラムとして参加人数も 20 名へ倍増し、日韓教職員相互交流が 実施されてきた。韓国政府招へいプログラムとして3回目となる今回は、2007 年の招へいプログラ ムに団長として参加した文龍鱗(ムン・ヨンリン)元韓国教育部長官からの招請により、中曽根元文 部大臣を団長として、招へい人数を 26 名に拡充し、さらなる交流の発展を目指すこととなった。 2. 主催 韓国ユネスコ国内委員会、日本ユネスコ国内委員会、 (財)ユネスコ・アジア文化センター 3. 目的 (1) 韓国の初等中等教育における教育制度および教育課題への理解を広範囲にわたって深める。 (2) 教育経験と情報を交換する機会を提供し、日本および韓国教職員のネットワーク構築に寄与す る。 (3) 韓国の文化に直に触れる機会を提供する。 4. 活動内容 (1) 韓国の最新の教育政策・現状の理解 (2) 韓国の教職員と、教育経験の意見交換 (3) 視察・交流を通じた、韓国の教育・文化の特色の理解 5. 日程概要 2007 年6月 9日(土) 事前オリエンテーションおよび懇談会(東京) 2007 年6月 10 日(日)~16 日(土) 教育交流活動(ソウル・釜山(プサン)ほか) 2007 年6月 17 日(日) 帰国(羽田空港または関西空港) - 210 - 6. 参加者 (1) 団長:中曽根弘文 参議院議員 (2) 副団長:相良憲昭 京都ノートルダム女子大学学長、ACCU評議員 (3) 東京都教育委員会が推薦する教員3名 (4) 2006/07 年韓国教職員招へいプログラム受入れ3道県(北海道、奈良県、鹿児島県)教育委 員会が推薦する教職員各4名 (5) 2006/07 年韓国教職員招へいプログラム受入れ2市(兵庫県宝塚市、埼玉県さいたま市)教 育委員会が推薦する教職員各3名 (6) 日本ユネスコ国内委員会が推薦するユネスコ協同学校(ASP)等の教員2名 なお、日本ユネスコ国内委員会およびACCUから職員各1~2名が随行予定。 上記の各学校および各都道県教育委員会は、ACCUから送付されるデータシート(Participant’s Data Sheet)により 2007 年4月 27 日(金)までに、ACCUに参加者を推薦すること。 7. 参加資格 (1) 所属する学校等から推薦を受けた、初等中等教育教職員(教育行政職員を含む)であること。 (2)韓国教職員との交流に積極的であること。 (3)健康で、プログラムの全日程に参加が可能であること。 なお、 「国際理解教育」または「持続可能な開発のための教育」 (ESD)1㊟ に関連した諸活動に 携わっているものが望ましい。 8. 評価と報告 (1)派遣期間中 ・評価票記入(日本語)(韓国ユネスコ国内委員会による編集の後、最終報告書へ掲載予定) ・韓国教員を交えての評価会(6月 16 日予定)への出席・発表。 (2)帰国後 2007 年7月2日(月)までに、プログラム参加の報告をACCUに日本語で提出する。 1注)国連では 2005 年からの 10 年を「持続可能な開発のための教育のための 10 年」 (ESD: Education for Sustainable Development) と定め、ユネスコをリードエージェンシーとして環境・開発・多文化共生・福祉・人権・平和・ジェンダーなどの社会的な課題に教育 を通して取り組んでいる。 - 211 - 9. 旅費等諸経費 (1) 韓国ユネスコ国内委員会が下記について負担する。 ・往復航空運賃:日本と韓国の国際空港間のエコノミークラス航空券。 ・韓国滞在中の宿泊費 ・韓国滞在中の食費:公式行事のない日の夕食については、 参加者が日当から支出することとする。 ・日当:1日当たり 20,000 ウォン(約 2,500 円)を6月 10 日から 16 日の7日間分。 ・韓国内の移動に係る経費。 (2) ACCUが下記について負担する。 ・日本国内交通費:事前オリエンテーション日の東京までの交通費、および、帰国日の到着空港(羽 田空港または関西空港)からの国内交通費の定額。なお、集合場所の都内ホテルから羽田空港 までは、ACCUが準備するバスにて移動する。 ・滞在費:6月9日の宿泊が必要な参加者についての日当及び宿泊費の定額。17 日の日当の定額。 (3) 海外旅行損害保険について 各参加者は、プログラム期間中の万一の事故に備え、出発前に必ず各自の責任において、海外旅行 損害保険 (Overseas Traveler’s Personal Accident Insurance Policy) に加入しておくこと。 10. 通訳 プログラム期間中は日本語と韓国語間の通訳が行われる予定。 11. このプログラムに関する照会先 (財)ユネスコ・アジア文化センター 企画課 (担当:藤田・中島) 〒162-8484 東京都新宿区袋町6番地 日本出版会館 TEL: 03-3269-4498 FAX: 03-3269-4510 E-MAIL: planning@accu.or.jp - 212 - 2.日程 (2008 年8月 19 日-8月 28 日) 8月 18 日 (月) 14:30 事前オリエンテーション (於 ホテルメトロポリタンエドモント) 18:00 懇談会(夕食会) 【泊】東京(参加者の一部は、ホテルエドモント) 8月 19 日 (火) 9:00 ホテル発 12:05 羽田空港発(KE2708) 14:20 金浦空港(ソウル)着 16:20 ホテル(ソウルロイヤルホテル)着 17:30-18:30 オリエンテーション (於 ソウルロイヤルホテル 2 階「ロイヤル・ボールルーム」) 18:30-20:00 夕食 【泊】ソウル(ソウルロイヤルホテル) 8月 20 日 (水) 9:00 ホテル発 9:00- 9:40 開会式(於 韓国ユネスコ国内委員会(KNCU)会議室) 記念団体写真撮影(グループ別) 9:40-11:00 講義1 韓国における教員評価制度の現況と課題 11:20-12:00 ユネスコ韓国国内委員会についての紹介 12:00-13:30 昼食 13:30-15:00 講義2 韓国の学校における持続発展教育 15:20-15:50 韓国のユネスコ・スクール(ASP)についての紹介 15:50-16:20 ユネスコ・スクール教員による実践例発表 16:20-16:40 質疑応答 17:00 ホテル着 18:30-20:30 歓迎レセプション (於 ソウルロイヤルホテル 3 階「グランドボールルーム」) 【泊】ソウル(ソウルロイヤルホテル) 8月 21 日 (木) <Aグループ> 9:00 10:00-13:00 13:30-15:30 17:00 <Bグループ> 8:00 9:00-12:00 12:00-13:00 15:00-17:00 ホテル発 清明高等学校(ASP)訪問(給食交流) 水原華城(ユネスコ世界遺産)視察 ホテル着 ホテル発 非武装中立地帯(DMZ)視察 昼食 山マウル高等学校(ASP)訪問 - 213 - 17:40-18:30 20:00 夕食(給食交流) ホテル着 【泊】ソウル(ソウルロイヤルホテル) 8月 22 日 (金) <Aグループ> 8:30 ホテル発 9:00-13:00 善隣中学校(ASP)訪問(給食交流) 14:00-16:30 果川中央高等学校(ASP)訪問 17:30 ホテル着 19:00 ホテル発 20:00-21:30 文化公演「ナンタ」鑑賞 22:00 ホテル着 <Bグループ> 9:00 10:00-12:00 12:00-14:00 14:00-16:30 17:00 19:00 20:00-21:30 22:00 8月 23 日 ホテル発 ソウル精進特殊学校訪問 昼食 漢陽大学校師範大学附属高等学校(ASP)訪問 ホテル着 ホテル発 文化公演「ナンタ」鑑賞 ホテル着 【泊】ソウル(ソウルロイヤルホテル) (土) 自主研修 (9:00-14:30) (オプショナル・ツアー) 【泊】ソウル(ソウルロイヤルホテル) 8月 24 日 (日) 7:40 12:00-13:00 13:00-16:00 16:30 17:30- ホテル発(チェックアウト)、釜山へ 昼食 梵魚寺視察(鉢盂供養含む) ホテル着 ホームビジット 【泊】釜山(ノボテルアンバサダー) 8月 25 日 (月) 8:30 10:00-12:00 12:00-13:00 13:00-15:30 17:00 ホテル発 牛浦沼視察(環境教育事情について) 昼食 牛浦沼生態公園の視察及び伝統工芸体験 ホテル着 【泊】釜山(ノボテルアンバサダー) 8月 26 日 (火) <Aグループ> 8:30 9:30-12:00 ホテル発 釜山国際中学校(ASP)訪問 - 214 - 12:10-13:10 14:00-16:00 16:00<Bグループ> 8:50 9:40-12:20 12:30-13:30 14:00-16:00 16:008月 27 日 (水) <Aグループ> 8:00 9:30-10:30 11:00-12:00 12:20-13:20 15:00 16:00-18:00 18:20-19:30 <Bグループ> 7:50 9:30-10:30 11:00-12:00 12:20-13:20 15:00 16:00-18:00 18:20-19:30 8月 28 日 7:50 10:40 11:00 韓国教員との懇談会 昼食 プログラムレビュー会合(於 東州大学アカデミーハウス) 自由時間 ホテル発 南星女子高等学校(ASP)訪問 韓国教員との懇談会 昼食 プログラムレビュー会合(於 東州大学アカデミーハウス) 自由時間 【泊】釜山(ノボテルアンバサダー) ホテル発、慶州へ 仏国寺(ユネスコ世界遺産)視察 国立慶州博物館視察 昼食 ホテル着 報告会および閉会式 (於 ノボテルアンバサダー5 階「グランドボールルームA」) 送別夕食会 【泊】釜山(ノボテルアンバサダー) ホテル発、慶州へ 国立慶州博物館視察 仏国寺(ユネスコ世界遺産)視察 昼食 ホテル着 報告会および閉会式 (於 ノボテルアンバサダー5 階「グランドボールルームA」) 送別夕食会 【泊】釜山(ノボテルアンバサダー) (木) ホテル発(チェックアウト)、空港へ 空港発、成田空港へ(KE713、12:40 成田着) 空港発、関西空港へ(KE731、12:20 関空着) - 215 - 3.参加者リスト (Aグループ) 名前 A-1 小澤 紀美子 A-2 新井 哲夫 A-3 眞瀨 敦子 A-4 結城 しのぶ A-5 新井 直志 A-6 勝田 敏行 A-7 佐々木 人美 A-8 佐藤 かおる A-9 中村 崇 A-10 新井 貴人 A-11 中谷 泉 A-12 小野寺 よみがな こざわ きみこ 団長 あらい 群馬大学教育学部附属小学校 てつお Mr ARAI Tetsuo ませ あつこ Ms MASE Atsuko ゆうき しのぶ Ms YUKI Shinobu あらい なおし Mr ARAI Naoshi かつた としゆき Mr KATSUTA Toshiyuki ささき ひとみ Mr SASAKI Hitomi さとう かおる Ms SATO Kaoru たかし Mr NAKAMURA Takashi あらい たかと Mr ARAI Takato なかたに いずみ Mr NAKATANI Izumi A-13 藤村 俊美 A-14 小島 佐知子 A-15 張替 克美 東京学芸大学 Ms KOZAWA Kimiko なかむら 貴子 所属 おのでら たかこ Ms ONODERA Takako ふじむら としみ Mr FUJIMURA Toshimi こじま さちこ Ms KOJIMA Sachiko はりかえ かつみ Mr HARIKAE Katsumi 分団長 役職 名誉教授 校長 江東区立東雲小学校(ASP) 副校長 啓明学園初等学校 教諭 筑波大学附属中学校 教諭 足立区立第四中学校 主幹 秋田県立博物館 副主幹 秋田県立秋田明徳館高等学校 教諭 群馬大学教育学部附属幼稚園 教諭 富岡市立小野小学校 教諭 気仙沼市立松岩小学校(ASP 申請) 教諭 気仙沼市立中井小学校(ASP 申請) 教諭 気仙沼市教育委員会 副参事兼 指導主事 さいたま市立泰平中学校 教諭 さいたま市立養護学校 主幹 - 216 - A-16 大黒 澄枝 A-17 前田 裕次 A-18 杉山 香 A-19 笹原 豊造 A-20 藤岡 隆史 A-21 岡田 真由子 A-22 米田 謙三 A-23 板倉 直人 A-24 金沢 緑 A-25 川窪 百合子 A-26 木村 正継 だいこく すみえ Ms DAIKOKU Sumie まえだ ゆうじ Mr MAEDA Yuji すぎやま かおり Ms SUGIYAMA Kaori ささはら とよぞう Mr SASAHARA Toyozo ふじおか たかし Mr FUJIOKA Takashi おかだ まゆこ Ms OKADA Mayuko よねだ けんぞう Mr YONEDA Kenzo いたくら Mr なおと ITAKURA Naoto かなざわ みどり Ms KANAZAWA Midori かわくぼ ゆりこ Ms KAWAKUBO Yuriko きむら まさつぐ Mr KIMURA Masatsugu 宝塚市立養護学校 教諭 宝塚市立光ガ丘中学校 教諭 宝塚市立末広小学校 教諭 広島大学附属中高等学校(ASP) 教諭 八王子高等学校(ASP) 教諭 大阪府立北淀高等学校(ASP) 教諭 羽衣学園高等学校(ASP) 教諭 神戸市立葺合高等学校(ASP) 教諭 海田町立海田東小学校(ASP申請) 校長 文部科学省 ACCU - 217 - 初等中等教育 局国際教育課 企画課長 (Bグループ) 名前 B-1 寺木 秀一 B-2 前河 英臣 B-3 深石 純子 B-4 山口 泰宏 B-5 石橋 和子 B-6 田中 紀和 B-7 糯田 昭博 B-8 石原 隆志 B-9 茂木 弘明 B-10 栗原 均 よみがな てらき しゅういち 道子 調布市立布田小学校(ASP申請) Mr TERAKI Shuichi まえかわ 分団長 ひでおみ Mr MAEKAWA Hideomi ふかいし じゅんこ Ms FUKAISHI Junko やまぐち やすひろ Mr YAMAGUCHI Yasuhiro いしばし かずこ Ms ISHIBASHI Kazuko たなか のりかず Mr TANAKA Norikazu もちだ あきひろ Mr MOCHIDA Akihiro いしはら たかし Mr ISHIHARA Takashi もてき ひろあき Mr MOTEKI Hiroaki くりはら ひとし Mr KURIHARA Hitoshi はたけやま B-11 畠山 所属 Ms 役職 校長 渋谷区立鳩森小学校 教諭 青山学院中等部 教諭 筑波大学附属中学校 教諭 東京都立忍岡高等学校 主幹 秋田県立養護学校 教諭 天王みどり学園 秋田県立横手清陵学院高等学校 教諭 群馬大学教育学部附属特別支援学校 教諭 富岡市立東中学校 教諭 渋川市立古巻小学校 教頭 気仙沼市立鹿折小学校(ASP 申請) 教諭 気仙沼市立面瀬小学校(ASP 申請) 教諭 気仙沼市立中井小学校(ASP 申請) 教頭 みちこ HATAKEYAMA Michiko B-12 白倉 隆博 B-13 及川 幸彦 B-14 淺野 亮 B-15 岩崎 弓子 しらくら たかひろ Mr SHIRAKURA Takahiro おいかわ ゆきひこ Mr OIKAWA Yukihiko あさの りょう 気仙沼市教育委員会 Mr ASANO Ryo いわさき ゆみこ さいたま市立泰平小学校 Ms IWASAKI Yumiko - 218 - 課長補佐兼 指導主事 教諭 B-16 本田 芳孝 B-17 長野 寿子 B-18 平山 審 B-19 宮本 章夫 B-20 北尾 悟 B-21 河野 芳文 B-22 桑原 義照 B-23 稲生 淳 B-24 八尋 薫子 B-25 浦田 晴香 B-26 藤田 良彦 ほんだ よしたか Mr HONDA Yoshitaka ながの ひさこ Ms NAGANO Hisako ひらやま しん Mr HIRAYAMA Shin みやもと あきお Mr MIYAMOTO Akio きたお さとる よしてる じゅん しげこ 大竹市立栗谷小学校(ASP) 教諭 (ASP) 奈良教育大学附属中学校(ASP申 Ms YAHIRO Shigeko 請) はるか 文部科学省 Ms URATA Haruka ふじた 指導主事 和歌山県立古座高等学校(ASP) Mr INABU Jun うらた 宝塚市教育委員会 大阪教育大学附属高等学校池田校舎 Mr KUWABARA Yoshiteru やひろ 園長 広島大学附属中高等学校(ASP) Mr KONO Yoshifumi いなぶ 宝塚市立中山五月台幼稚園 P) よしふみ くわばら 教諭 奈良女子大学附属中等教育学校(AS Mr KITAO Satoru こうの 宝塚市立南ひばりガ丘中学校 よしひこ ACCU Mr FUJITA Yoshihiko - 219 - 教諭 副校長 教諭 教頭 教諭 大臣官房 国際課 企画課 4.写真 KNCU オリエンテーション(08.8.20) 歓迎レセプション (08.8.20) KNCU オリエンテーション(08.8.20) 歓迎レセプション (08.8.20) 歓迎レセプション (08.8.20) 清明高等学校 (08.8.21) - 220 - 水原華城 (08.8.21) 果川中央高等学校 (08.8.22) 清渓川記念館 (08.8.23) 梵魚寺(08.8.24) ホームビジット (08.8.24) ホームビジット (08.8.24) - 221 - 牛浦沼 (08.8.25) 伝統工芸体験 (08.8.25) 伝統工芸体験 (08.8.25) 釜山国際中学校 (08.8.26) 釜山国際中学校 (08.8.26) 日韓教員懇談会 - 222 - (08.8.26) ACCU国際教育交流事業 2007/08 年韓国政府日本教職員招へいプログラム 実施報告 2009 年 5 月 30 日 編集・発行 財団法人ユネスコ・アジア文化センター 〒162-8484 東京都新宿区袋町 6 番地 日本出版会館内 電話 (03)3269-4498 Email URL planning@accu.or.jp http://www.accu.or.jp Printed in Japan by Hokuetsu Co., Ltd. [100] © Asia/Pacific Cultural Centre for UNESCO 2009 - 223 -
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