海外体験研修報告 土木・環境工学科 3 年 齋藤亮太 1.はじめに 私は

海外体験研修報告
土木・環境工学科 3 年 齋藤亮太
1.はじめに
私は 2015 年 2 月 26 日~3 月 12 日の 15 日間カナダ東部へと海外体
験研修に行ってきた。この研修が、自身の初の海外進出であり、しか
も一人きりでの研修なので、大きな期待と不安を含ませながら研修に
臨んだ。私が訪れた都市は、ナイアガラ・フォールズ、トロント、キ
ングストン、オタワ、モントリオール、ケベック・シティの 6 カ所だ。
これらの都市は、ナイアガラを西の端に、ケベック・シティを東の端
にした全長約 800km のカナダ東部落葉樹林帯一帯とした「メープル
街道」沿いにある。また、メープル街道は別名「ヘリテージ・ハイウ
ェイ(伝承の道)
」と呼ばれ、カナダ建国の史跡をたどることができる。
私がこの海外体験研修に応募した理由は 2 つある。1 つ目の理由は、現在土木事業の国際
競争が激化しているので、自身の目を世界へ向けていきたいと思ったからである。自分は
まだ大学生の身だが、将来土木技術者になることを考えれば、今回の研修をその第一歩と
して海外とはどのようなものなのかを知らなければいけないという思いに駈られたのであ
る。もう 1 つの理由は、語学能力の向上のためである。異国の地に 15 日間身を置き、積極
的に現地の人々と交流して語学能力を向上させたいと考えた。そこでの劇的な向上はあま
り期待していなかったが、少なくとも語学に対する考え方を一新させたいと考えていた。
図1
メープル街道
2.カナダという国
カナダという国は、歴史的に先住民族が居住
する中、外からやってきた英仏両国の植民地連
合体として始まった。その後イギリスからの独
立プロセスが 1867 年から始まり、様々な手続
きと立法を経て 1982 年、主権国家となった。
首都はオタワ。公用語は英語とフランス語。国
土面積は 9,984,670km2 の世界第 2 位。人口は
2010 年の統計によると、 34,127,000 人であり、
人口密度は 3.4 人/km2 だ。
図2
積雪した都市
現在のカナダには、多文化主義政策の下、200 を越える多様な民族が平和に共生し、一つの
モザイク社会を形成している。また、カナダの気候は太平洋側の西海岸沿岸部を除くと、
ほぼ全域が亜寒帯、寒帯に属し非常に寒冷な気候である。私の訪問した時期のカナダ東部
の平均気温は約-5℃前後であり、20cm 以上積雪しているところもよく見られた。
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3.ナイアガラ・フォールズにて
研修 2 日目にナイアガラ・フォールズを訪問した。ナイアガラの滝は、エリー湖からオ
ンタリオ湖に流れるナイアガラ川にあり、カナダのオンタリオ州とアメリカのニューヨー
ク州とを分ける国境になっている。見渡す限りの青空、氷点下の冷気の中、その滝の景観
のすばらしさたるやたとえ幾万のことばがあっても言い表すことはできない。冬のナイア
ガラの滝は、下流の方が氷河と化しており、広大な氷原を形成していた。周辺にある土木
構造物には、カナダとアメリカを結ぶ巨大な鉄橋や豊富な水資源を利用した水力発電所な
どが見られた。ナイアガラの滝で、自然の圧倒的な力を全身をもって感じ取り、土木が自
然とどう向き合っていくべきかを改めて考えさせられた。
また、ナイアガラ・フォールズの一番の魅力はやはり滝にあるが、周辺は観光地化され
ており、そこにも観光客を惹きつける工夫が凝らされていた。たとえば、ナイアガラの滝
を空高くから眺めることのできるタワーや高級ホテル、アトラクション施設、大型カジノ
などが建ち並び、大きなにぎわいを見せていた。
図3
ナイアガラの滝
図4
カナダとアメリカを結ぶレインボー橋
4.トロントにて
トロントは、オンタリオ州の州都にしてカナダ最大の都市である。現在、トロントで暮
らす移民の数は人口の約半数を占めている。私はこの都市を歩いていて、白人、黒人、ア
ジア人などの多様な民族が互いに偏見を持たず、平等に生活していることに驚いた。都市
の中には、チャイナタウンやコリアタウン、リトル・イタリーなどのたくさんのエスニッ
クタウンが存在した。そこでは、世界各国の文化に触れることができた。私は、トロント
という都市に訪問して、多様な文化を互いに尊重し、共生するということがどういうこと
なのかを初めて上っ面の言葉ではなく、本当の意味で理解することができた気がする。
トロントはカナダ経済の商都であり、金融や経済、メディア、教育、観光などの産業基
盤が発達している。図 5 のように、近年建設された高層ビルが建ち並んだ巨大な金融街で
は、人口密度は高く、人々はせわしなく歩いていた。その一方で、住宅街や旧市庁舎、教
会、大学ではビクトリア朝・エドワード朝時代の歴史的な建築物が見られる。石造りのも
のが多く、彫刻の意匠や建築様式など非常に趣があり、荘厳な雰囲気を漂わせていた。
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図6
トロントの金融街
図 7 トロント大学
5.ケベック州ケベック・シティにて
ケベック州はオンタリオ州の右隣にある州で
ある。私の訪問したモントリオールとケベック・
シティはケベック州に属する。カナダの公用語は
英語とフランス語だと説明したが、ケベック州は
フランス語のみを公用語としている。だから、街
ゆく人の会話や看板、標識、レストランのメニュ
ーなどはほとんどフランス語であり、フランス語
を全く勉強していない私は非常に苦労した。私の
知 っ て い る フ ラ ン ス 語 と い え ば 、 bonjour と
merci ぐらいだった。ただ、ホテルの受付や一部
図8
ケベック・シティ旧市街
のレストランのウェイターは英語も話すこともでき、その言語の切り替えの早いバイリン
ガルぶりには舌を巻いた。ここで、私がケベック・シティを訪問したときの話をする。市
内の旧市街はメキシコ以北では現存する唯一の城郭都市となっており、1985 年にユネスコ
の世界遺産に「ケベック旧市街の歴史地区」として登録された。1608 年に設立されており、
北米内で最も古い歴史を持つ都市の一つでもある。アメリカ文化が強い北米で、公用語が
フランス語でかつ人々の生活様式や文化の面でフランス文化が強いという独自性を放って
いる。
ケベック・シティ旧市街についての話をする。街は 1 周するのに 1 時間もかからない程
度の小ささだが、中世の建築物が保存され、道路は微妙に粗さを残した石畳であり、至る
ところで建築の意匠と芸術性の感じることができる。また、厳格さを漂わせた立派な馬が
観光客を乗せた馬車をひいて街中を歩いていている風景も見られた。図 8 の中央に高くそ
びえ立つ建築物は、
「フェアモント・ル・シャトー・フロントナック」と呼ばれるホテルで
あり、街の象徴でもある。1893 年に建設され、フランス式古城を模したデザインは気品に
あふれ、茶色の壁と緑色の屋根のコントラストも見事であった。
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6.カナダの交通について
「交通」に関わることは、土木にとって非常に重要なこ
となので、特に注意して視察した。
私は都市間の移動には、長距離バスを利用した。カナダ
は全長約 8 万 km の道路をもつ国であり、この道路網を利
用した長距離バスが、国内の各都市間を結んでいる。「グ
レイハウンド」や「コーチ・カナダ」、
「オルレアンエクス
プレス」などの様々なバス会社が運行している。
バス路線がある小さな町村でも「バス・ディーポ」と呼ば
図9
バス・ディーポ
れるバスターミナルがあり、チケット売り場や休憩室、カ
フェ、コインロッカーなど、鉄道駅と遜色のない設備が整
っていた。各都市間の移動は 2~3 時間、価格は 25~40 ド
ルくらいだった。バスの利用客は地元の人々が多く、ほぼ
満席になることもあったので、長距離バスはカナダにとっ
て重要な交通機関だと考えられる。
今回、都市間の移動では鉄道を利用することはなかった。
鉄道は、太平洋大陸横断路線や東部諸都市を結ぶ路線を中
心に「VIA」によって運行されているが、便数も少なく日
常的な移動手段ではなく、豪華な客車でのんびり旅をする
のに向いているようだった。ただ、VIA のトロントのユニ
オン駅だけ視察したが、昔の建築物をそのまま保存し 図 10 VIA 鉄道ユニオン駅
ているようで、駅とは思えないほど、建築が美しかった。
7.研修を終えて
15 日間という短い研修だったが、初めての海外での生活はとても密度の濃いものとなっ
た。この研修で考えたことは、海外の人々は異文化、異なる言語で生活していても、結局
人間は人間であるということである。つまり、彼らの持つ喜怒哀楽の感情は、私たち日本
人と変わらないものを持っており、人間の本質的なところは人種や民族が違えど皆同じ根
底を成しているということである。いままで私は、いや、多くの日本人は、外国人に対し
て何かしらの壁を感じていると思う。しかし、今回の研修を通して、私はその壁を小さく
し、世界をより身近なものとして考えられるようになった。
このレポートでは、研修のほんの一部分しか報告できなかったが、実際の研修では、数
え切れないほどの新しい発見や一期一会の出会いがあった。これから私はさらに英語を勉
強し、より高度なレベルの活動を海外で行いたい。
最後に、今回の研修を支えてくださった大学の先生方、丘友の OB の方々、家族、カナ
ダでお世話になった方々の全ての人々に感謝をする。