News Letter 11 - 九州大学 韓国研究センター

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2011 Vol.
ニューズレター
九州大学韓国研究センター
Research Center for Korean Studies
C O N T E N T S
11号の発刊にあたって ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
第六回 世界韓国学研究コンソーシアムワークショップ開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
福岡市内教員対象
「韓国理解」
ワークショップ
九州大学韓国研究センター10周年記念行事
第1部:10周年記念セレモニー
第2部:記念シンポジウム
第3部:朝鮮半島をめぐるボーダー研究の最前線 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
帝国
〈日本〉
のコリアン・ディアスポラ ――朝鮮・南洋群島・樺太・満洲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
在外コリアンの
〈国家〉
と
〈民族〉―錯綜するアイデンティティ―
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11
「日韓海峡圏カレッジ」
開設(平成23年度∼)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
韓国研究センターの研究活動一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
刊行物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
11号の発刊にあたって
九州大学韓国研究センターは1998年11月の金鍾泌韓国国務総理の来学が契
機となって、1999年12月に創設(学内設置)
され、2000年1月に開所式を行いまし
た。今年度は10周年を迎え、12月18・19日に記念セレモニーとシンポジウムを開催
いたしました。セレモニーには東京大学と慶応大学の現代韓国研究センター長をそ
れぞれ務める姜尚中教授と小此木政夫教授をはじめとして、国内外の専門家や市
民が参加し、両日の参加者は200名余りに達しました。
韓国研究センターは、創設後、
この10年間の目標を、「日韓地域連携の形成−特に
福岡・釜山間を中心に−」とし、
それを達成するために、世界最先端の韓国研究を歩
九州大学韓国研究センター長
松原 孝俊
むハーバード大学・UCLAなどが擁する韓国研究センターと連携し、11の大学からな
るコンソーシアムを組織しました。
このコンソーシアムでは、優秀な研究者との
「知的対
話」
を通して、次世代の韓国学研究者の育成を図るとともに、様々な優れた研究成果
を生み出してまいりました。
また、
日韓交流の阻害要因の一つといわれている「歴史問題」を解明するために、
主に朝鮮半島からの引揚者研究に取り組み、世界の植民地研究に多くの情報を発
信しました。我が国における植民地研究の高さを示すとともに、人材育成に寄与してき
たところです。
教育面では、本学と釜山大学との間で共通科目をコーディネートし、両大学の大学
院における
「質の保証」
に配慮した
「国境を越えた」高度人材の育成を先駆的に取り
組んできました。
さらに、
日韓の地域経済連携促進の一環として、2006年に両市のオピニオンリーダー
で組織する福岡・釜山フォーラム結成に参画し、
「国境を越えた」地域連携を促進する
数多くの提言を公表してまいりました。
このほか、福岡県や福岡市と連携し、県民の韓国への正しい理解を深めるための
セミナーを開催、福岡市と釜山市とで小学生を対象とした共通教材の開発支援や福
岡市教員のための釜山現地研修事業の実施など、
自治体と連携した地域社会への
貢献も行ってきたところです。
本学が、
グローバル化するアジアの学術のリーダーとして、世界が求める知の創造を
先導していくためにも、韓国研究センターにはさらなる飛躍が求められております。
2011年度は初心にもどって、
日本や世界の韓国研究のひとつのグローバルスタンダー
ドを追求するために、
その第一歩を踏み出してまいります。
当センターは皆さまからのご支援によって運営されてきました。
このご支援に応える
べく、今後もさらなる発展のために努力してまいります。今後とも、倍旧のご支援・ご鞭
撻のほど、
よろしくお願いいたします。
2
シンポジウム報告
世界韓国学研究コンソーシアム開催
第六回 世界韓国学研究コンソーシアムワークショップ開催
世界韓国学研究コンソーシアム
(ハーバード大学・UCLA・
北京大学・ソウル大学校など12大学加盟)によるワークショ
ップは、今年で第六回目を迎える。今回は、6月29日∼7月2
日の日程で、延世大学校にて開催。世界20大学から、24名の
次世代を担う韓国学研究者が集った。
九 州 大 学からは、比 較 社 会 文 化 学 府 の 大 和 裕 美 子 氏が
「Constructing Transnational Memory between
Koreans and Japanese: A Local and Transborder Practice for Memorizing Korean Casualties
of a Coal Mine Accident in Wartime Japan」
と題す
る発表を行った。国を超えた記憶の構築という問題を扱い、世
界の韓国学研究者の関心を引いた。
なお、世界の韓国学の潮流を反映して、今大会では北朝鮮問
題、特に脱北者や六カ国協議を取り扱った研究が数多くみら
れた。
松岡佳奈子
(東京大学)
「ตጄ ਜ਼௴ ஆีዽ શઢ ໵ၡ「ራี
ၴ」―ዽ૑ၡ ራีၴ ႜᅙ઴ ఝีႜᅙၡ ตᅩ઴ ࿨શໜ࿝ ఝ
ዽ ધᅑ」
福岡釜山
フォーラム
ŅႮ၁
(復旦大学)
「၊ၴፂకၡ ෧႖ ෮ጎ࿝ ఝዻ࿥―૑႞ხ
࿦લલႁၡ શ႙࿝໏―」
その一方で、
ソウル大学校の朴泰均教授が指摘されたよう
に、北朝鮮研究は毎年膨大な研究成果が発表され、
それを追う
だけでも大変である。それら研究動向を把握した上で、常に動
き続ける現代政治をいかに描出するのか、そしてまた英語・韓
国語・ロシア語・中国語・日本語の文献をいかに渉猟し分析す
るかは北朝鮮研究の最大の問題点であろう。
本コンソーシアムの事務局である九州大学韓国研究センタ
ーが研究・教育のハブとなって、UCLAやハーバード大学な
どと共に北朝鮮研究チームの結成をリードして欲しいという
声が高くなっている。すでに過去6回のワークショップ参加者
が約200名に達し、その研究者ネットワークは世界有数だか
らである。
3
シンポジウム報告
教員ワークショップ
福岡市内教員対象「韓国理解」
ワークショップ
主催 : 九州大学韓国研究センター
後援 : 福岡市教育委員会
助成 : 韓国国際交流財団
今回のワークショップは、韓国研究の第一線で活躍する専
講義後、受講者から「血の通った交流を子供たちに教えた
門家による講義を通して韓国に対する理解を深めるとともに、
い」
「 韓国理解のためには教員の意識改革が必要」
「 今後は韓
実際に釜山を訪問し、福岡市・釜山市共同副教材である
「もっ
国語も学びたい」
などの意見が聞かれ、異口同音に本プログラ
と知りたい福岡・釜山(ధ ྩધ ཌྷၔ ิຮ-ፎᇿ࿼ᆽ)
(
」小学校
ムの継続を要望された。
6年生用)を使用する釜山側の先生方との意見交換の場を持
釜山側教員との意見交換では、共同副教材活用をめぐる今
つことであった。日程は7月26∼27日が講義(福岡)、28∼
後の展開などだけではなく、不登校・学内暴力・学級崩壊・いじ
29日は現地体験(釜山)
とし、釜山では、教育庁や忠烈小学校
めなど、現実に日韓の教育現場に存在する問題にも活発な議
を訪問した。
論がなされ、
「生徒の気持ちを理解してあげる教師の対応」
が
21世紀はアジアの時代といって過言はないだろう。それゆ
重要だとの意見で一致した。
えアジアで活躍できる次世代リーダー(日韓海峡人)の育成は
ところで今回の福岡市・釜山市共同副教材には、歴史記述は
急務である。そうした理念の下、
アジアに開かれた大学を志向
多くない。それだけに参加者からは朝鮮通信使などだけでな
する九州大学として、まずは福岡市内小中学校の教員ととも
く、
韓国史全般も取り扱って欲しかったという。
確かに手っ取り
に、いかに日韓で共生感覚(競争と協調)を持つ小中学生を教
早い交流のためには歴史問題に目をつぶる方がよいかもしれ
育するかを議論した。
ない。
しかし古川先生の講義で示された日韓両小学生に対す
講師を担当されたのは古川昌彦(福浜小学校)、加峯隆義
るアンケートで、韓国人を好きな日本人がほぼ100%である
(九州経済調査協会)など5名の諸先生方。講義テーマは、
「日
一方、日本人を好きな韓国人がわずか15%であったことを考
韓海峡人」の育成、共同副教材の作成過程と活用法、釜山・福
えると、やはり日韓関係のしこりとして存在しつづけている歴
岡経済交流、
韓国教育の現状、
韓国政治の新たな展開など。
史問題の解決をなおざりにはできない。
4
シンポジウム報告
参加者
氏 名
学 校 名
有 田 一 郎
舞鶴中学校
林 多美子
舞鶴中学校
中 舛 恭 子
当仁中学校
大 和 寿 子
西陵小学校
徳 田 あをい
西陵小学校
佐 藤 克 也
元岡中学校
伊 藤 隆
周船寺小学校
床 田 知 子
能古小学校
土 師 聖 志
和白小学校
田 中 亜 矢
西花畑小学校
石 川 静
西花畑小学校
大 坪 華 子
西花畑小学校
城 田 佳 弘
飯原小学校
古 賀 健太郎
姪浜小学校
川 畑 耕 作
多々良小学校
大 内 威
城南小学校
長 克 洋
飯倉小学校
柳 田 竜太郎
飯倉小学校
溜 和 久
今津小学校
古 川 昌 彦
福浜小学校
山 本 彩 緒
姪北小学校
山 田 由 紀
香椎第三中学校
5
シンポジウム報告
第1部:10周年記念セレモニー
九州大学韓国研究センター10周年記念行事
日 時 : 2010年12月18日(土) 13時∼17時30分
会 場 : 九州大学 箱崎キャンパス 国際ホール
司 会 : 出水 薫(九州大学韓国研究センター兼任教授・法学研究院教授)
開会の辞 : 松原 孝俊(九州大学韓国研究センター長)
歓迎の辞 : 有川 節夫(九州大学総長)
祝 辞 : 金 鍾泌(元韓国国務総理)
金 炳局(韓国国際交流財団理事長)
加藤 重治(文部科学省大臣官房審議官・高等教育局担当)
John Duncan
(UCLA韓国研究センター長/世界韓国研究コンソーシアム代表)
朴 成勲(釜山大学校副学長・対外交流本部長)
6
シンポジウム報告
第2部:記念シンポジウム
東アジアの新しい地域秩序の形成
―日本における韓国研究の視座を求めて―
Keynote speech : 武藤 正敏(在大韓民国日本国特命全権大使)
「東アジアの新しい地域秩序の形成 ―新時代の日韓関係―」
司 会 : 松原 孝俊(九州大学韓国研究センター長)
1.プレゼンテーション:15時∼
姜 尚中(東京大学現代韓国研究センター長)
小此木政夫(慶応大学現代韓国研究センター長)
2.
ディスカッション:16時∼
姜 尚中(東京大学現代韓国研究センター長)
小此木政夫(慶応大学現代韓国研究センター長)
John Duncan(UCLA韓国研究センター長/世界韓国研究コンソーシアム代表)
白 永瑞(延世大学校国学研究院長)
7
シンポジウム報告
第3部:朝鮮半島をめぐるボーダー研究の最前線
九州大学韓国研究センターと
北海道大学スラブ研究センター合同シンポジウム
主 催:九州大学韓国研究センター・北海道大学スラブ
研究センター
「境界研
共 催:北海道大学グローバルCOEプログラム
究の拠点形成」
、九州大学教育研究プログラム・
研究拠点形成プロジェクト
「東アジア戦後史の基礎的研究」
会 場:九州大学箱崎キャンパス国際ホール
セッション1 「サハリンとコリア」
報告:今西 一(小樽商科大学教授)
「樺太・サハリンと朝鮮人」
三木理史(奈良大学准教授)
「北からの朝鮮人移住と樺太」
許 粹烈(忠南大学校教授)
「韓国における強制労働研究の現状」
司会:松原孝俊(九州大学韓国研究センター長)
コメンテーター:
白 永瑞(延世大学校国学研究院長)
崔 吉城(東亜大学教授)
セッション2 「北東アジアの境界・北朝鮮」
報告:三村光弘(環日本海経済研究所主任)
「北東アジアにおける北朝鮮の位置」
倉田秀也(防衛大学校教授)
「北朝鮮と米中関係」
李 鍾奭(元統一部長官)
「北核問題の膠着:背景と展望」
司会:出水 薫(九州大学韓国研究センター
兼任教授・法学研究院教授)
コメンテーター:
岩下明裕(北海道大学スラブ研究センター教授)
8
シンポジウム報告
九州大学韓国研究センターは2000年に韓国国際交流財
産業構造をはじめとして双子のような国だと講演し、姜尚中教
団の助成によって、日本で最初の韓国研究を掲げたセンターと
授が先月23日の北朝鮮による韓国砲撃に関連し、
「今のまま
して発足した。同センターは今年で開設10周年を迎え、12月
では中国、北朝鮮対日本、
アメリカ、韓国という新たな冷戦構造
18、19日に記念行事を福岡市東区の箱崎キャンパス国際ホ
ができかねない」
と発言し、日本と韓国が協力してかつてのドイ
ールで開催した。
ツ統一で西ドイツが果たしたような役割を担ってほしいと述べ
東京大学と慶応大学の現代韓国研究センター長をそれぞれ
た。
これに対して松原教授は、九大・慶大・東大の韓国研究セン
務める姜尚中教授と小此木政夫教授をはじめとして、国内外の
ターが三つ子のように協力して、東アジアの危機を克服できる
専門家や市民が参加した。日韓の地域連携や緊迫する朝鮮半
途を探求していきたいと総括した。
島情勢などについて論議するシンポジウムもあり、両日の参加
19日には朝鮮半島情勢についてより専門的なシンポジウム
者は200名余りに達した。
を、北海道大学スラブ研究センターと合同で開催し、日韓の行
18日の記念セレモニーでは、金鍾泌元国務総理が録音によ
政、防衛問題に詳しい識者が加わって活発な議論を展開した。
り
「この10周年を期して、韓国研究センターが時代の行く末を
李鍾奭元統一部長官は
「現段階で北核膠着局面を打開し、朝鮮
見据え、
世界で活躍する研究者を輩出し、
日韓を基軸とした様々
半島において平和を構築することができる唯一の実効的方法
な問題に挑戦する知識と知恵を創造してほしい」
とエールを送っ
が、6者会談による合意と履行である」
と6者会談の再開を主
た。
九大韓国研究センター長の松原孝俊教授は
「多くのイベント
張し、
注目を集めた。
やセミナーで市民交流を進め、
また研究会を開くことで若手研
最後に松原教授が「福岡、釜山両市をはじめ日韓の市民交流
究者を育成してきた」
と10年間の活動を振り返り、次の10年
はこの10年で大きく進んだ。国境を越えた地域連合の形成に
の目標としては
「東アジア共同体研究を明確に掲げたい」
と述べ
向けた論議を深めたい」
と述べ、2日間の記念行事を結んだ。
た。
世界的研究拠点を目指して邁進してきた韓国研究センターの
第2部の記念シンポジウムでは、小此木教授が日本と韓国は
成果は、東アジアの平和と安定に大きく貢献するであろう。
韓国研究センター研究戦略
目標
「東アジア共同体」研究
2020年
北朝鮮研究
阻害要因:
在外コリアン研究
2010年
2000年
ボーダー
研究
促進要因:
東アジア
共同体
研究
国境を越えた経済連携研究
キャンパスアジア構想
日韓海峡圏カレッジ構想
目標:「日韓地域連携の形成̶福岡・釜山間を中心に」
市民交流研究
「帝国日本」と
植民地研究
阻害要因:
海外からの引揚研究
歴史認識
問題
促進要因:
福岡・釜山
間地域連携
研究
国境を越えた経済連携研究
九大・釜山大学共通科目開設
未来志向の日韓関係
金鐘泌 韓国国務総理(当時)講演会「韓日関係の過去と未来」
9
シンポジウム報告
国際学術ワークショップ
帝国
〈日本〉
のコリアン・ディアスポラ
―朝鮮・南洋群島・樺太・満洲
日 時 : 平成22年10月16日(土) 13時00分∼18時00分
場 所 : 九州大学韓国研究センター (福岡市東区箱崎6−10−1)
近代日本は、琉球・千島・台湾・関東州・南樺太・朝鮮・南洋
諸島・満洲などに勢力を伸ばし、一部は植民地として統治し
た。
このうち、台湾・関東州・南樺太・朝鮮・南洋群島は本州・四
国・九州・千島を含む北海道・琉球・小笠原によって構成され
る
「内地」
とは区別されて
「外地」
となり、異なる法体系の下に置
かれた(樺太は昭和18年に内地に編入)。内地人には内地に
関する戸籍法規によって身分上の本拠を表す地域籍(民族籍)
が内地であると明示され、外地人にはそれぞれの地域の戸籍
法規によって台湾・朝鮮等の外地に本籍を置いていると明示
された。つまり、内地人と外地人の違いは、戸籍法規によって根
拠づけられた地域籍の所属に裏付けられていたのである。
し
かし、
これら民族籍によって厳格に居住が制限されたわけでは
なく、
たとえば朝鮮人は内地人との縁組等で内地籍を取得して
内地人となったり、
また樺太や台湾、遠くは南洋諸島にまで生
活の場を求めて移住した。
こうした前提から、本ワークショッ
プではコリアン・ディアスポラに着目して朝鮮・南洋群島・樺
太・満洲の民族接触や教育、生活、文化の比較研究を行い、帝
国〈日本〉
を再考していくことを目的とした。
●発表者
三田牧(大阪大学・日本学術振興会特別研究員)――南洋群島
天野尚樹
(北海道情報大学)
――樺太
アンドリュー・ホール(九州大学)
――満洲
●コメンテーター
稲葉継雄
(九州大学)
有馬 学
(九州大学名誉教授)
槻木瑞生
(同朋大学名誉教授)
10
シンポジウム報告
『梁三永文庫』開設記念ワークショップ
在外コリアンの
〈国家〉
と
〈民族〉
―錯綜するアイデンティティ―
主 催 : 九州大学韓国研究センター
助 成 : 九州大学P&P(教育研究プログラム研究拠点形成プロジェクト)
日 時 : 2010年11月20日(土) 午後1時から午後5時まで
場 所 : 九州大学韓国研究センター
在外コリアンは、中国朝鮮族、在日朝鮮人、旧ソ連の高麗人
がよく知られており、世界各地に560万人がいるという。
ウズ
ベキスタンのように同国の人口の5%近くを占めるという例
がある一方で、母国から亡命し、他国で肩身の狭い生活を送る
者もいる。
そのようにルーツを朝鮮半島に持ちながら、そことは異なる
場所で〈国民〉
としての地位を占める在外コリアンにとって、
〈国
家〉
とは何か、
〈民族〉
とは何か、
また彼らにとってアイデンティテ
ィとは何か。
グローバル化によって国家という枠組みが変容しつつある
現代において、世界に拡散する在外コリアンの生き方は多くの
ことを示唆するであろう。
●発表者
岡奈津子
(アジア経済研究所)
李 仁子
(東北大学)
宮下良子
(大阪市立大学 都市研究プラザG-COE特別研究員)
●コメンテーター
伊藤亜人
(早稲田大学)
小林知子
(福岡教育大学)
11
日韓海峡圏カレッジ
「日韓海峡圏カレッジ」
開設(平成23年度∼)
本事業の目的は、
「CAMPUS Asia」を実現して日中韓で「キャンパス共有」し教育研究水準の更なる高度化を図るために、日
韓間でパイロットプログラム(日韓海峡圏カレッジ)を実施し、問題点を絞り出して解決策を提案することにある。
日韓版「CAMPUS Asia」を実現するためには、学年暦・単位互換・履修方法・授業時間数・カリキュラム開発・FD開発・言語
など両国間に横たわるさまざまな課題が存在する。それゆえ、九州大学と釜山大学校は、実験的に4週間キャンパスを共有する
教育課程を共同で編成し、単位互換制度を活用するプログラムを実施することで、阻害要因を克服するための有益なデータを収
集する。
本事業は、データを収集・分析して「CAMPUS Asia」構想の実現の途を模索するものであり、従来の交換留学とは異なる。
また、本事業では、交換留学のように特定の専門課程に在籍する学生が自らの意志に基づいて個別に科目選定を行うのではな
く、初年度学生が、
「東アジア共同体ヴィジョンの実現」
(日中韓サミット合意事項)に向けたカリキュラムで編成された科目を履
修し、しかも韓国企業の実状を学んだり、九州大学生・釜山大学生混合のグループによるディベート大会を開催することで、日韓
共通課題の解決に従事する専門家や、幅広い教養、国際感覚に富んだアジアのリーダーとなる人材を養成するものである。これ
は同時に、我が国の成長の原動力である「強い人材」を実現することである。
①国境を越えた日韓大学間連携の促進
本事業を期に、日韓の大学間に「日韓海峡圏カレッジ(キャンパス共有)」が実現することで国境を越えた大学間・研究機関な
どの研究者が有機的に結合されて情報共有が促進されるため、アジア科学技術研究者コミュニティ形成の基盤作りに貢献すると
ともに国際的な頭脳循環に対応する。
②アジアを指導する次世代リーダーの育成と実践的解決
戦後に高度成長を遂げ、世界最先端の技術を生み出す産業国家へと成長した韓国の現状を、情報からではなく自分の目で見て
理解し、その社会構造を把握する。しかもそのフィールドワークを釜山大学校の学生と協力・協議して行うことで、
「東アジア共同
体」に向けたヴィジョンを共有し、アジア各国を意識した思考と行動によって自身の意見をプレゼンスできる人材を育成する。
③国際社会における両国の学術的・社会的プレゼンスの拡大
本事業によって日韓の連携が進捗し、両国が共同してアジアのブロックの一角を占めれば、国際社会における学術的・社会的プ
レゼンスの拡大に貢献することが期待される。
12
日韓海峡圏カレッジ
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韓国研究センターの研究活動一覧
年
日時
活動内容
場所・主催・共催・助成
第50回定例研究会
6月3日
薛盛璟先生
(客員教授)
「<Bጨ 老尊本>ၔ ઴࿨「九雲夢」ၡ
原点系 ቈ༺ቼၨਜ਼?―主題ဉ 素材ਜ਼ ౘ 金剛経઴ 法華経઴ၡ
【会場】九州大学韓国研究センター
相関性ၕ თཉၒച―」
6月10日
6月29日∼7月2日
7月26∼29日
9月4日
10月16日
11月13∼14日
11月20日
第51回定例研究会
松本誠一
(東洋大学 教授)
「ドイツ韓人社会と炭鉱について」
第6回世界韓国学研究コンソーシアムワークショップ
【会場】延世大学校
福岡市内教員対象「韓国理解」
ワークショップ
【主催】九州大学韓国研究センター
【後援】福岡市教育委員会
【助成】韓国国際交流財団
福岡-釜山フォーラム
【主催】九州大学韓国研究センター
国際学術ワークショップ
「帝国〈日本〉のコリアン・ディアスポラ―朝鮮・南洋群島・樺太・満洲」 【会場】九州大学韓国研究センター
国際ワークショップ「台湾・朝鮮から〈帝国〉日本を考える」
『梁三永文庫』開設記念研究会「在外コリアンの〈国家〉
と
〈民族〉
―錯綜するアイデンティティ―」
韓国研究センター10周年記念事業
12月18日
【会場】九州大学韓国研究センター
第1部 10周年記念セレモニー
【会場】台湾 成功大学
【主催】九州大学韓国研究センター
【会場】九州大学韓国研究センター
【主催】九州大学韓国研究センター
【会場】九州大学国際ホール
第2部 記念シンポジウム
第3部 九州大学韓国研究センターと
12月19日
北海道大学スラブ研究センター合同シンポジウム
「朝鮮半島をめぐるボーダー研究の最前線」
2月19日
14
朝鮮王室儀軌研究会
【主催】九州大学韓国研究センター、
北海道大学スラブ研究センター
【共催】北海道大学グローバルCOEプログラム「境界
研究の拠点形成」、九州大学教育研究プログ
ラム・研究拠点形成プロジェクト「東アジア戦
後史の基礎的研究」
【会場】九州大学国際ホール
【主催】九州大学韓国研究センター
【助成】九州大学 P&P
【会場】九州大学韓国研究センター
刊行物
간행물
九州大学韓国研究センター叢書
朝鮮植民地教育政策史の再検討
稲葉継雄 著
A5判 218頁 4,800円(税別)
九州大学出版会 発行
グローバル時代の朝鮮通信使研究
-海峡あれど国境なし-
松原孝俊 編
A5判 304頁 2,800円(税込)
有限会社 花書院 発行
設立10周年記念特集号
15
I
nformation
ご投稿ください!
ニューズレターでは、できるかぎり幅広い広報を行うため、さまざまなコーナーを設け、皆様のご投稿をお待ちしています。
研究紹介
韓国・日韓関係にまつわる領域研究のもとでえられた具体的な研究成果を紹介します。また、韓国研究センターが支援する各種事
業の成果の報告、諸分野の研究方法や研究の背景、内外で発表された優れた研究を紹介するコーナーです。
インタビュー
座談会やインタビューで、研究者の素顔をご紹介したいと思います。
研究ノート
“科学者のひとりごと”
“研究に関して日頃思っていること”
“韓国との出会い”
等々お寄せください。
その他
関連する学会・研究会・シンポジウムの案内、近著紹介、等につきましても掲載いたしますので、随時お知らせください。
センター利用案内
小松町派出所前交差点
線
国道3号
開館時間/10:00∼17:00
北門
九州大学韓国研究センターでは下記のホームページ
URLで事業紹介を行っています。
文系地区
http://rcks.isc.kyushu-u.ac.jp/
博多湾
箱崎
九大前駅
都市
箱崎宮
前駅
高速
1号
九州大学
医学部
韓国研究センター
箱崎駅
吉塚駅
附属図書館
線
本
島
2号
高速
都市
西鉄
福岡駅
崎線
地下鉄箱
千代
中洲川端駅
ランプ
小松門
松原門
九州大学
箱崎地区
馬出九大
病院前駅
天神駅
中門
地下鉄
箱崎九大前駅
児
鹿
JR
理系地区
祇園駅
線
西鉄大牟田
博多駅
線
港
空
鉄
下
地
本 部
福岡空港
正門
■最寄りの交通機関
バスのりば
●JR博多駅→地下鉄中洲川端乗換
(貝塚行)
→箱崎九大前又は貝塚下車
● 福 岡 空 港 →地下鉄中洲川端乗換
(貝塚行)
→箱崎九大前又は貝塚下車
●天神14番のりば No.1、59、61、161の「九大前」行き、
「月見町」行き→九大前下車
●天神郵便局前のりば No.21∼27→九大北門下車
九州大学韓国研究センター News Letter Vol.11
編集発行 九州大学韓国研究センター 2011年3月28日
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