MMRC DISCUSSION PAPER SERIES MMRC-J-9 製品開発の組織能力 ー日本自動車企業の国際競争力ー 神戸大学経済経営研究所 延岡健太郎 東京大学大学院経済学研究科 2004 年 1 月 藤本隆宏 東京大学 COE ものづくり経営研究センター MMRC Discussion Paper No. 9 製品開発の組織能力 ー日本自動車企業の国際競争力ー 神戸大学経済経営研究所 延岡健太郎 東京大学大学院経済学研究科 藤本隆宏 2004 年 1 月 要約:自動車の製品開発の生産性を、日米欧間で国際比較を実施した結果を報告する。本 調査は 1985 年にハーバード大学で始められた。初回の調査では、80 年代のデータが分析 され、その結果として日本企業の優位性が藤本・クラーク(1993)によって詳しく報告された。 その後、1995 年と 2000 年の 2 回にわたり 90 年代以降のデータ収集をおこなった。本稿は、 それら 20 年間にわたるデータを統合的に分析し、重要点を報告するものである。結論として は、80 年代に見られた、開発工数と開発期間で測定した開発生産性における日本企業の優 位性は、2000 年まで持続されていた。日本企業の組織的な統合・擦り合わせ能力は、欧米 企業にとって模倣が困難なのである。根源的な問題のひとつは、欧米ではプロジェクトメン バーの専門化度が高く、職務範囲が狭いことである。この点は、労働市場の制度の問題で あり、個別企業で大きく変えることはできない。これによって、参加メンバー数が多く調整が 複雑となる。またプロダクトマネジャーについても、専門化度の高い欧米では、日本の重量 級プロダクトマネジャーのように製品開発とマーケティング(商品コンセプト)の両方に責任を 持つことは難しい。 1 はじめに 本稿は、自動車の製品開発能力を国際的に比較した実証研究プロジェクト(藤本・クラー ク[1993])のアップデート版の一部を報告する。本研究は、ハーバード大学ビジネススクー ル(HBS)のキム・クラークと藤本隆宏によって 1985 年に開始され、その結果が藤本・ク ラーク[1993]に詳しく報告された。その後、その 2 人に加えて 1995 年には当時 HBS の博士 課程に在籍していたデービット・エリソンが加わりフォローアップ調査が実施された。その 結果は、Ellison の博士論文と HBS のワーキングペーパーである Ellison、Clark, Fujimoto & 1 延岡健太郎、藤本隆宏 Hyun [1995]に発表されている。次に、1999 年から 2000 年にかけて、HBS のステファン・ト ムケと神戸大学の延岡健太郎が加わり第3回目の調査を実施した。本稿はこれらのデータを 統合し、約 20 年間にわたる時系列データを分析した。本稿では、その中でも特に、重要と 思われる点を抜粋して報告する。 藤本・クラーク[1993]の研究によって、自動車の製品開発能力における、日本企業の国際 的な競争優位性が明確にされた。更には、そこで明らかにされた点が、日本企業の国際競争 力を象徴する組織能力として位置づけられた。しかし、近年、日本の製造業の競争力低下が 取りざたされるようになり、日本の強さを象徴していた自動車についても、競争力低下が危 惧された。実際に、1990 年前後から自動車産業に関しても米国ビッグ 3 が高い業績を上げ るようになり、日本企業のグローバルな市場シェアは低下した。 本稿の具体的な目的は次の 2 点である。第一に、自動車製品開発の組織能力に代表される、 日本企業のモノ造りにおける国際的な優位性は消滅したのだろうかという疑問にこたえる ことである。20 年間にわたり継続して、企業の組織能力まで踏み込んだ形で製品開発の競 争力を分析した研究は他にあまり類をみないはずである。結論から言うと、過去 20 年間で、 企業業績では日米欧企業それぞれが浮き沈みを経験してきたが、その勝ち負けとは関係なく、 開発工数と開発期間で測定した日本企業のモノ造りの強みは持続されてきた。第二に、日本 企業の優位性を支える源泉について議論する。その内容については、藤本・クラーク[1993] で詳しく述べられているが、本稿では特に、なぜ欧米企業がそれを模倣し開発生産性で追い つくことができなかったのか議論する。 2 日本企業の自動車製品開発における強み 自動車の製品開発の研究から得られた日本企業の強みに関する理論を一般化し、他の産業 にも応用するためには、その理論が成り立つ条件を明確にする必要がある。そこで、最初に 自動車の製品開発の特徴を簡単に述べたい。特徴としては、次の 2 点が特に重要である。 第一に、自動車は、擦り合わせ型のアーキテクチャを持ち、企業内外において複雑な組織 調整が必要な製品である。一般に、製品アーキテクチャとは、「どのようにして製品を構成 部品に分割し、どうのように製品機能を配分し、それによって必要となる部品間のインター フェースをいかに設計・調整するか」に関する基本的な設計構想のことである。 製品アーキテクチャには、大きく分けて、 「擦り合わせ(インテグラル)型」 、すなわち部 品設計を相互調整し、製品ごとに最適設計しないと製品全体の性能が出ないタイプと、「組 み合わせ(モジュラー)型」すなわち部品・モジュールのインターフェースが何らかの意味 で標準化していて、既存部品を寄せ集めれば多様な製品が出来るタイプとがある(Ulrich 2 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 [1995]、Baldwin and Clark [2000]、藤本・武石・青島 [2001])。自動車は擦り合わせ型アーキ テクチャの典型例である。 第二の特徴としては、製品アーキテクチャが比較的長期間安定していることがあげられる。 また、要素技術および競争環境についても、電子・情報機器などと比較すれば、安定してい るといえる。そのため、自動車の製品開発には、長期的な組織能力の構築が特に重要になる (藤本[1997・2003])。擦り合わせ型の製品アーキテクチャを持つので、企業内・企業間の組 織的な調整・統合を通じて製品を作りこむ組織能力を、長期間にわたり構築することが競争 の鍵を握るのである。逆に、組み合わせ型でアーキテクチャの変化が頻繁に起こる場合には、 最適な部品を世界から探し出し、最適なアーキテクチャをデザインし、それに沿って組み合 わせる組織能力が重要になる。 3 サンプルとデータ修正方法 本研究プロジェクトは約 20 年間継続され、現在までに日本 9 社、欧州 10 社、米国 3 社の 合計 22 企業から 74 プロジェクトのデータが収集された。調査方法としては、質問票調査と 聞き取り調査を組み合わせている。回答者は質問内容により複数にわたる。通常は、プロジ ェクトマネジャーを筆頭に、各設計・開発分野から参画したプロジェクトのコアメンバーが 回答する。回答を受理した後、企業訪問や電子メール、電話などにより不明点を再調査した。 また、集計後はフィードバックのために、回答企業へ訪問し、最終的な不明点の明確化、お よび結果の解釈について意見交換した。 サンプルのプロジェクトが市場に導入されたのは、1980 年から 1998 年の 19 年間にわた る。表1に示しているように、地域別(Japan, US, Europe) 、および 5 年毎で4つの時期別で グループ分けし、本稿の分析は、主にこの合計 12 のグループ別に、比較分析した。 表 1 地域・時期別グループとサンプル数 Period 1 Period 2 Period 3 Period 4 1980-84 1985-89 1990-94 1995-99 Japan 8 4 8 10 30 USA 2 4 5 5 16 Europe 5 6 10 7 28 15 14 23 22 74 合計 注)サンプルの基本データ詳細は付表1を参照 3 合計 延岡健太郎、藤本隆宏 本稿で報告する製品開発能力は、主に開発工数と開発期間に関するものである。まず、開 発期間の定義であるが、コンセプト検討の開始によってプロジェクトが開始されたものとし、 終了は販売開始時期とした。全体の開発期間を必要に応じて開発ステージに分割して分析し た。次に、開発工数には、コンセプト開発、製品基本開発、製品設計、試作・実験などが含 まれる。さらに、細かい条件としては以下の項目によって定義した。 1. 設計や実験の補助者や技能労働者も含まれる。また、マーケティング、財務、品質部門 などもプロジェクト参加者は含める。 2. パワートレイン(エンジンと変速機)の新規開発はプロジェクト固有ではないので、そ の期間や工数は含まない。ただし、エンジンを車両に適合させるための部品(エンジン マウント) 、およびエンジンの小変更は含める。 3. 外部の設計専門会社や部品メーカーで発生した工数は含めないが、それらとの調整のた めに企業内部のプロジェクトメンバーに発生した工数は含める。 次に、開発工数と開発期間を公正に比較するための修正方法を説明する。 ここでは、工数や期間に影響の大きい要因によって修正する。それらは、1)車のクラス、 2)ボディタイプ数、3)新規設計部品率、4)内部設計比率である。まず、車のクラスと しては、一般的に産業内で使われる分類を参考にして、4つのクラスに分類した。それらは、 軽、コンパクト(サブコンパクトを含む)、ミドル(アッパーミドルを含む) 、アッパーであ る。軽は日本企業しか開発していない。クラスによって、価格、サイズおよび仕様や装備内 容が大きく規定されるので、それらの他の要因とは相関関係が強い。そのため、ここではク ラスだけで修正することにする。ボディタイプは、2 ドア、3 ドア、4 ドア、5 ドア、ステー ションワゴンなどのボディタイプ、および外板部品が 80%以上異なるスタイリングを持っ たボディ種類数を合計した指標である。 新規設計部品率は、当該プロジェクトの中で新たに設計された部品の比率である(金額ベ ース)。それ以外の部品は、同じ車種モデルの先代車がすでに使用していた部品をそのまま 残す場合と、他の車種モデルから部品を流用し共有化しているかのいずれかである。最後に、 内部設計比率は、新規設計部品の開発に費やされる時間の中で、自動車企業内部で実施され た比率である。これは 100%内部で設計した部品(貸与図部品と呼ぶ)に費やされた時間と、 部品企業と設計を分担して実施する部品(承認図部品と呼ばれ、仕様決定やラフな設計を自 動車企業で実施し、詳細設計を部品企業で実施する)の中で、企業内部で担当した時間の両 方を合計して比率を求める。 表 2 に開発工数と開発期間を被説明変数、上で説明した要因を説明変数として回帰分析し 4 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 た。開発工数に関しては、それらの説明変数のほとんどすべてが、開発工数の増減に有意な 影響をもたらしていた。特に、軽自動車は他のクラスの車よりも少ない工数で開発できるこ と、ボディタイプ数と新規設計部品が多ければ、多くの工数が必要なことが1%レベルで有 意である。内部設計比率についても、増えれば工数が増えているが、10%強の有意確率でし かない。 一方、開発期間については、内部設計比率が多ければ、長い期間がかかることが有意確率 5%程度で有意であるが、他の要因はいずれも強い影響はなかった。ただし、軽クラスの車 が短期間で開発できること、および新規設計部品が増えると長い開発期間が必要とされるこ とに関しては、10%強の有意確率で弱い相関関係があった。 表2 開発工数とリードタイムの修正のための回帰分析結果 開発工数(対数) 係数 (定数) t 開発期間 有意確率 係数 t 有意確率 12.41 21.27 .000 27.00 2.60 .011 -1.12 -2.85 .006 -10.22 -1.45 .151 クラス 軽 (ダミー) ミドル .16 .91 .369 3.257 1.02 .310 アッパー .21 .73 .469 5.476 1.09 .282 新規設計部品率(%) .01 2.80 .007 .125 1.50 .140 内部設計比率(%) .01 1.56 .124 .182 1.96 .054 ボディタイプ数 .26 .004 1.607 1.03 .306 R2 乗 .318 .156 調整済み R2 乗 .254 .078 注)サンプル基本データの詳細は付表1、相関関係は付表2を参照 4 製品開発力の国際比較:開発工数と開発期間 上で説明した方法によって導き出された各要因に関する回帰係数を使って修正の上、開発 工数と開発期間を比較する。 ここでは、すべての自動車開発プロジェクトが本研究のサンプルとして平均的な内容を持 っていたと仮定して開発工数と開発期間を補正した。平均的な開発内容とは、ここでは1) コンパクト車、2)2 ボディタイプ、3)70%の新規設計部品率、4)70%の内部設計比率、 と規定した。つまり、例えば実際には 3 ボディタイプを開発したプロジェクトであれば、こ 5 延岡健太郎、藤本隆宏 こで規定した標準プロジェクトよりも複雑な開発内容を持っているので、修正済み開発工数 は、実際に必要とした開発工数よりも少ない工数となる。 図1は修正済みの開発工数を比較している。日本企業は平均的に 100 万-150 万時間で開 発できるが、欧米企業は 200 万-350 万時間を必要としている。90 年代の前半(Period 3) まで、米国企業は急速に開発工数を低減させていた。米国企業が、製品開発の効率を向上さ せようと最も本格的に努力をしていた時期である。この期間に、日本企業から多くを学習し た。しかし、90 年代の後半に入ると、再び開発工数は増えている。このパターンについて は、欧州企業に関しても同様に見られる。 これは、特に米国ビッグ 3 は、90 年代の前半から中盤にかけて主に商品戦略のおかげで 業績が好調であったために、効率向上よりも高付加価値の商品開発に力を入れたためだと考 えられる。90 年前後の業績低迷から抜け出し、90 年代中盤になると、自動車の販売業績と 企業の財務業績において、日本企業を凌駕していた。同様に業績好調なために、開発効率よ りも高付加価値商品の開発を優先していたのが、80 年代後半(Period 3)の日本企業である。 その時期には、日本企業も開発工数が増加していた。 図1 修正済開発工数 4000000 時間 3500000 修正済み開発工数 3000000 2500000 USA Europe Japan 2000000 1500000 1000000 500000 0 Period 1 1980-84 Period 2 1985-89 Period 3 1990-94 Period 4 1995-99 欧米企業において Period 4 で開発工数が大幅に増加しているのには、 もう一点理由がある。 それは、近年になり、安全対策(主に衝突安全性)および環境対策の基準が世界的に厳しく なっているので、同じような製品開発においても、かかる負荷はかなり大きくなっている。 これを象徴しているのが試作車の数である。Period 3(23 プロジェクト)と Period 4(22 プ ロジェクト)の全平均を比較すると、83 台から 188 台への倍以上に増加している。その中 6 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 で、欧米企業での増加が多かったのも事実であるが、日本企業が開発工数を Period 4 で増加 させていないのは、実質的には開発生産性が大きく向上していることを意味していると考え る。 次に修正済みの開発期間を比較したものを図2に示している。過去 20 年間、日本企業の 製品開発期間は 45 ヶ月-50 ヶ月を推移しているのに対して、欧米企業は、米国の Period 3 (90-94 年)を除いて、55 ヶ月を超えている。日本企業は、90 年代の後半から、トヨタを中 心として各社が開発期間短縮に集中的に取り組んでいる。第 3 期の 50 ヶ月から第 4 期の 45 ヶ月へ短縮されているのは、その成果が部分的に反映されたことによる。 開発リードタイムは戦略的要因、市場要因やトップの意思決定の問題が影響するために、 自動車の製品開発の組織能力を比較する際には、能力開発工数の方がより直接的な指標であ ると考えられる。例えば、開発リードタイムは市場競争環境や企業の財務状況や労使関係の 変化によって、市場導入を遅らせた場合には、大きく延長される。日本企業では、このよう な状況は皆無に近いが、米国企業では実際に起こる。また、コンセプト検討段階の長短も製 品開発プロジェクトの組織能力というよりも、トップの意思決定の早さに依存する場合も少 なくない。そこで、本稿でも、製品開発工数を組織能力のメイン指標と捕らえ、主に議論し ていきたい。製品開発期間は、開発期間全体の長短よりも、各ステージにブレークダウンし た場合に見られるパターンの違いなどを比較し、製品開発の特長を明確にするために使用す る。 図2 修正済開発期間(コンセプト検討開始から発売まで) 月 60 修正済み開発期間 55 50 USA Europe Japan 45 40 35 30 Period 1 1980-84 Period 2 1985-89 Period 3 1990-94 7 Period 4 1995-99 延岡健太郎、藤本隆宏 5 製品開発生産性に関する日本企業の優位性の分析 自動車は、3 万点以上の部品からなる、擦り合わせ型アーキテクチャの製品であり、高度 な機能を実現させるためには、多数の複雑な問題解決と多大な調整が必要である。組織的に も、当然のごとく複雑になる。プロジェクトや地域によってばらつきは大きいが、最低でも 100 人から、多い場合には 1500 人の社内技術者に加えて、100 社から 700 社程度の外部部品 企業が製品開発に組み込まれる必要がある。 また、技術の側面だけでなく、顧客ニーズも単純ではない。顧客は自動車の基本機能(エ ンジン性能、制動性能、燃費、静粛性、乗り心地など)を判断基準にして、購入するわけで はない。どちらかと言えば、そのような数字では表せない部分が、購買行動に結びついてい る。外観デザインが最も象徴的であるが、その他にも品質感や操縦フィーリングなど、感性 的な評価が重要である。そのような、比較的抽象的な目標達成に向けて、多数の技術者が莫 大な数の複雑な問題解決を実施していく。 このように、製品アーキテクチャが複雑なことに加えて、開発目標において中心的な位置 づけにある顧客ニーズが数量的に表しにくいために、多大な組織的な調整が必要とされるの である。そのため、ミーティングの数は小さいものも入れれば、延べ何千回にも及ぶといわ れている。 問題解決の複雑性を、NVH開発の例で説明する。NVHとは noise, vibration, harshness を意味し、これらを低下させることは、自動車開発では常に最も重要な技術的課題のひとつ である。これに取り組むためには、まず多種多様な分野の技術者が関与する必要がある。つ まり、エンジンや排気系、タイヤ、ボディはもちろんのこと、サスペンションなどシャシー 系、シートやトリムなどの内装系、風きり音に関係する外観デザインなど、非常に広範な技 術の総合力が必要である。加えて、商品性との関連では、単にNVHの数字を低下させれば よいわけではない。例えば、スポーツカーなのか上級セダンなのかによって、許される noise や vibration の種類も異なる。このような条件の中でNVHの目標を達成しようとすれば、多 様な分野の技術者が一緒に試行錯誤しつつ、作りこんでいくしか方法はない。このように複 雑性と多義性が高い場合には、問題解決の方程式や決まったルールは使えない。まさに、様々 な分野の技術者が集まり、組織的に臨機応変に擦り合わせしていくことが求められるのであ る。 このような製品開発の特徴を持っているために、擦り合わせ能力に強みを持つ日本企業が 優位性を持っているのである。この点を実証的に明らかにするために、以下ではいくつかの 側面から、日本企業の優位性の源泉を分析していきたい。 8 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 5-1 プロジェクトメンバー数と専門化度 日本と欧米企業の間にある開発工数の大きな差異は、プロジェクトメンバー数の違いにも 表れている。例えば、Period4 において、フルタイム(80%以上の工数を当該プロジェクト に使用)で、12 ヶ月以上当該プロジェクトを担当したメンバー(フルタイムプロジェクト メンバー)の数は、日本では平均 105 名なのに対して、米国では 424 名、欧州では 348 名に も及ぶ。それ以外のパートタイムで 12 ヶ月以上当該プロジェクトを担当し、メンバー数に ついても、日米欧それぞれ、70 名、594 名、232 名であり、日本企業のプロジェクトは構成 人員が大幅に少ない。 日本企業のプロジェクトメンバー数が少ないのは、技術者の専門化度が低く、職務範囲が 広いことが一因である。この点は、欧米企業が模倣しようとしても困難な部分がある。商品 企画や異なった分野の技術開発・設計、解析など、すべての職務分野は、労働市場の中で明 確に分割されている。特定の企業内だけで、それを崩すのは難しい。米国では製造工場につ いても同様に、日本企業よりも格段に多い職務分類があったが、そのデメリットを解消する ために、かなり減らしてきたと言われている。製品開発の職務分類は、よりプロフェッショ ナルな職務であり労働市場において制度化されているので、工場以上に一企業内で、プロジ ェクトメンバーの職務範囲を広げることは難しいものと考えられる。 5-2 新規設計部品率の影響 新規設計部品が増えると、製品開発の複雑性と多義性は、急激に高まる。比較的単純であ れば、プロジェクトマネジメントの科学的システム(事前のプロジェクト推進計画やチェッ クシステム)を徹底することによって、大きな効果が得られるはずである。しかし、複雑性 がある程度以上に高まると、優れた推進計画とチェックシステムでは不十分である。そこで は、長年にわたり構築された擦り合わせの組織能力が必須となる。組織能力によってのみ、 不確実性が高い中、臨機応変に作りこみを実施することができる。 つまり、組織能力が低い場合には、新規設計部品の多さが開発工数へ与える悪影響の程度 が大きいはずである。逆に、組織能力が高ければ、新規設計部品が多くても、うまく対応す ることができ、開発工数へのペナルティが低いと考えられる。 この点を考慮しつつ、日米欧のそれぞれの企業が、新規設計部品に対して対応できている かを見てみよう。そのために、図3は、新規設計部品率と開発工数の関係をプロットしてい る。日本のプロジェクトは、新規設計部品率が増えても、傾向として開発工数はわずかしか 上昇していないことがわかる。一方で、欧米企業では明らかに、新規設計部品率が増えると 開発工数が大きく増加している。 9 延岡健太郎、藤本隆宏 図3 新規設計部品率と開発工数の関係 時間 7000000 US Europe Japan 6000000 修正前の開発工数 5000000 4000000 3000000 2000000 1000000 0 20% 40% 60% 80% 100% 新規設計部品率 この傾向は、他の要因を考慮しても変わらないことを明らかにするために、表3に各国別 の回帰分析の結果を示している。新規設計部品率が欧米企業では有意(5%レベル)に影響 を与えるが、日本企業では有意に効いていない。 10 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 表3 開発工数(自然対数)の地域別回帰分析 Japan 係数 (定数) t US 有意確率 14.67 係数 t .000 12.143 Europe 有意確率 .000 係数 t 有意確率 13.52 .000 ミクロ -.52 -2.34 .030 - - - - - - ミドル .36 2.40 .026 .359 .73 .481 .-138 -.59 .565 アッパー .12 .43 .672 .085 .16 .876 .428 .76 .454 新規設計部品率 -.00 -.28 .786 .021 2.67 .024 .014 2.31 .031 内部設計比率 -.02 -3.20 .004 .00 .32 .752 .00 .45 .661 ボディタイプ数 .18 2.23 .036 .36 1.85 .094 .11 1.04 .310 クラス R2乗 .643 .620 .279 調整済み R2乗 .541 .430 .107 5-3 内部設計比率の影響 本研究の過去のデータでは、日本企業の開発生産性の高さを説明する要因のひとつとして、 開発の多くの部分を部品企業に任せ、内部設計比率を低くし、社内組織を機敏に保っている ことが報告されていた。この点に焦点をあて、ここでは、内部設計比率と開発生産性の関係 を見ることにしよう。 図4に内部設計比率の推移を示している。前述のとおり、内部設計比率とは表 4 にあるよ うに部品を3つのカテゴリーに分類し計算する。貸与図は、自動車企業が設計し部品企業に 支給するので、100%内部設計である。承認図では、自動車企業が目標性能とスペックを提 供し、設計は主に部品企業で設計される。この場合には、今回のサンプルでは、平均 35.5% を自動車企業が受け持ち、残りの 64.5%は部品企業が分担していた。最後に購入部品は、設 計の 100%を部品企業が担当する。これによって計算された内部設計比率を時系列に示した のが図4である。 欧米企業は内部で多くの部品を開発設計するのが非効率だと認識し、過去 20 年間継続的 に部品企業により多くを任せる方向に転換してきた。日本企業の部品企業管理がベストプラ クティスだと判断し、そこから学習したという側面もある。結果として、表 4 に見られるよ うに、貸与図を減らし承認図を大幅に増やしてきた。例えば、80 年代前半では欧米企業と もに貸与図部品が 80%以上であったが、90 年代後半には欧米企業が 50%、欧州企業が 40% 近くまで、その比率を低下させてきた。逆に、10%台であった承認図部品の比率は 40%ま 11 延岡健太郎、藤本隆宏 で上昇した。それらから計算される内部設計比率は 80%以上のレベルから、60%程度に減 少した。 逆に、日本企業は、貸与図を増やし承認図を減らしたため、内部設計比率は大幅に上昇し た。90 年代の後半に入ると、日本企業と欧米企業との間の差異はほとんど無くなったとい える。日本企業が内部設計比率を増加させた理由については、後で議論する。 表4 内部設計比率の内訳 USA 貸与図 Europe Japan USA 承認図 Europe Japan USA 購入部品 Europe Japan Period 1 85% 80% 34% 14% 17% 57% 2% 4% 9% Period 2 79% 54% 21% 17% 39% 72% 4% 8% 7% Period 3 58% 67% 39% 30% 21% 55% 12% 12% 6% Period 4 50% 42% 54% 39% 39% 43% 8% 20% 3% 図4 内部設計比率 % 100 80 60 USA Europe Japan 40 20 0 Period 1 1980-84 Period 2 1985-89 Period 3 1990-94 内部設計比率=貸与図(%)+(承認図(%)× 0.355) 0.355 は承認図における自動車企業の設計分担割合のサンプル平均 12 Period 4 1995-99 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 次に、内部設計比率の変化が開発生産性にどのような影響があったのか見てみよう。図5 には内部設計比率と開発工数の関係をプロットしている。他の要因を考慮した上での内部設 計比率の統計的な影響は、前掲した表3の地域別回帰分析を参照してほしい。 ここで重要なポイントが 2 点ある。第一に、欧米企業は内部設計比率を低下させてはいる が、開発生産性の向上には結びついていないことである。80 年代の日本企業は内部設計比 率の低さによって開発生産性を高めることができていた。しかし、20 年間のサンプルを総 合的に分析すると、図5からわかるように、内部設計比率が低下すると、開発工数は増加す る傾向にあるように見える。表3では、米国企業、欧州企業それぞれの回帰分析において、 内部設計比率は開発工数に有意な影響をもたらしていない。ただし、図5でわかるように、 米国企業に関しては 70-80%の内部設計比率で、600 万-700 万時間かかっている2つのプ ロジェクトを除けば、明らかに相関関係があるように見える。 第二に前述のように、日本企業は、近年、部品企業に設計を任せることを減らし、内部設 計比率を急速に増加させていることである。更に、表3では、日本企業は内部設計比率が高 い方が開発生産性は高くなっていることが、統計的に有意に実証されている。これは意外な 結果と言えよう。この結果をどのように解釈するのかについて、以下にひとつの仮説を提示 する。 詳細設計を部品企業に任せることのメリットに変化はないはずである。一方で、近年推進 されている大幅な期間短縮を実現するためには、部品設計活動を自動車の製品開発プロジェ クトに、完全に組み込むことが必要になっている。それは、大幅な期間短縮を実現するため には、主要部品はすべて開発プロジェクトの早期に、かなりの程度まで部品設計が完成して いなければならないからである。開発プロジェクトの早期段階では、まだレイアウトも流動 的であり、部品間のインターフェースについても決定されていない場合も少なくない。多く の部品間には強い相互依存性があるために、特にプロジェクトの初期段階では、部品企業単 独で開発できるものではない。つまり、自動車企業および他の部品企業と共同で設計する必 要がある。 これを実現するために、近年、相互依存性の高い部品に関しては、自動車企業とより緊密 に協働するために、部品調達企業を絞り込む傾向にある(延岡[1999])。さらに具体的な施策 としては、90 年代中盤にかけて自動車企業では、ゲストエンジニア(自動車企業に部品企 業から派遣され駐在する技術者)の数を大幅に増加させている。例えば、ある日本自動車企 業には 1600 人以上のゲストエンジニアが駐在し、設計開発に従事している。彼らは部品企 業の技術者であるが、実質的には自動車企業に内部化されている。例えば、デンソーの一部 の技術者は、自動車開発プロジェクトの初期段階から、トヨタの中で、トヨタの技術者と同 13 延岡健太郎、藤本隆宏 様な形でプロジェクトメンバーとして開発に従事している。結果として、部品企業の技術者 が設計したとしても、実質的には自動車企業内部で設計されており、図面に関しても承認図 ではなく貸与図となっている可能性がある。このような理由によって、開発期間の短縮に対 応する形で、貸与図部品が増えていると考えられる。 ここでの議論をまとめてみよう。近年の製品開発では、開発初期段階から、部品設計と自 動車全体の設計との間で、より高い統合性が実現することが求められている。このような状 況下であれば、たとえ日本の自動車企業が部品企業との擦り合わせをうまく実施する能力が 高いといっても、部品企業に設計を任せきるよりも、内部化(または準組織化)する方が、 開発生産性は高まるであろう。ただし、自動車企業の開発組織を大きくすることは、迅速で 柔軟な組織マネジメントの観点からは負の影響が大きいはずである。そこで、詳細設計を部 品企業に任せることは変更しないで、ゲストエンジニア制度によって、部品企業の技術者を、 あたかも内部の技術者のように統合マネジメントする方法が採られているものと考えられ るのである。 このような意味での内部設計比率の上昇であれば、開発生産性にもポジティブな影響を持 つ可能性は高い。内部設計比率の意味が 1990 年代の中盤から変化したとも言える。実際に、 相関を見ると、1980 年代までは内部設計比率と開発工数は有意にネガティブな関係にあっ たが(相関係数-0.50、5%レベルで有意)、90 年代後半に入ると、その関係はポジティブに 転じたのである(相関係数 0.46、5%レベル) 。一般的に言っても、部品企業との並行開発・ 共同開発の必要度合いがある程度を超える場合には、部品開発の内部化または組織的に準組 織的な仕組みが必要となるのかもしれない。ただし、準組織的な仕組みを実現するための方 法として、単なる株式の所有による垂直統合では必ずしも効果が期待できないことは注意す る必要がある。 14 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 図5 内部設計比率と開発工数の関係 時間 7000000 US Europe Japan 6000000 修正前開発工数 5000000 4000000 3000000 2000000 1000000 0 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 内部設計比率 5-4 3D-CAD の導入 日本企業が少ない工数で製品開発ができるのは、開発の初期段階から、部品間の統合性と 製造性を考えながら、個々の部品が開発・設計されているからである。これらを考慮するこ と な く 個 々 の 設 計 が 進 ん で し ま う と 、 後 で 部 品 間 の 統 合 性 や D F M ( Design for manufacturing)に問題が発生し、再設計が必要になる。後工程での問題解決、つまり具体的 には技術者間での再調整の時間や部品の再設計の時間が増えれば増えるほど、全体の開発工 数が増加し、開発生産性は低下することになる。 つまり、できるだけ前工程において、統合・調整の質と量を増やすことができれば(これ をフロントローディングと呼ぶ)、開発工数を減少することができるのである。日本企業が 開発生産性において過去 20 年間常に優位にあるのは、欧米企業よりも常にフロントローデ ィングがうまくできているからである。ただし、同じように日本企業に優位性があるといっ ても、過去 20 年間の間に、フロントローディング化の競争レベルは上昇してきた。1980 年 代までのフロントローディングの優位性のポイントは、最初の試作車ができたときに、どれ だけ部門横断的に迅速な問題解決ができたのかという点である。つまり、日本企業では、最 初の試作車が完成した段階で、関連製品設計者はもちろん、生産技術、テスト・実験、品質 15 延岡健太郎、藤本隆宏 保証や部品企業の技術者までが、協同で効果的に問題解決にあたることができたが、欧米企 業ではそれが徹底できなかった。欧米企業の問題のひとつは、多くの部品については最初の 試作車が完成した後で、部品企業を決定していたことである。1990 年中盤以降では、欧米 企業でも、前述のように多くの部品企業が設計開発も担当しているので、当然最初の試作車 が完成する段階には部品企業も共同問題解決に参加できるようになった。また、コンカレン トエンジニアリングの概念とプラクティスも普及したため、生産技術も開発の初期段階から 参加するようになった。このようにして、1990 年前半には、フロントローディングについ て、欧米企業が日本企業に追いつくかに見えた。 しかし、90 年代中盤にかけて、日本企業はフロントローディングを更に進めた。試作車 ができる前の図面段階で、部門横断的なデザインレビュー(DR)によって統合性のチェッ クを実施するようになった。自動車開発の統合化における問題の多くを占めるのは、部品間 干渉の問題であるが、徹底したDRによって、問題発見が早期化された。ある日本企業の技 術者は、80 年代までは、試作車を作った段階で初めて、干渉の問題が明らかになる場合が 多かったが、90 年中盤にかけて、ほとんどの干渉問題を図面を使ったDRで発見できるよ うになった、と述べている。 試作車がまだない図面段階での問題発見は難しい。すべての関連部品を組み立てた状況を 3 次元で想像しながら干渉がないかをチェックすることになるが、2 次元の図面は非常に複 雑なために、見落としは多くなる。また、生産・実験関係の開発担当者の中には、試作車の チェックであれば長年知識やノウハウを蓄積しているが、図面のチェックには慣れていない メンバーも少なくない。そこで、実物の試作車より前段階での問題解決に重要な役割を果た すと考えられているのが3D-CADである(Baba&Nobeoka[2000])。3D-CADによって、 実物の試作車を製造する前に、3Dデジタルデータを使用したヴァーチャルな試作ができる (デジタルモックアップと呼ばれる)。これを利用すれば、試作車をベースとした場合と同 レベルのチェックが可能になるのである。 日本企業がフロントローディングを欧米企業以上にうまく推進できているのは、3D-C ADを欧米企業以上に有効に使用した結果ではない。実際には、欧米企業の方が3D-CA Dの導入は数年先行していた。表5は、90 年代後半の最終図面に占めるCAD使用実態の データを示している。 米国企業は 100%の部品に関して 3 次元化しているが、日本企業は 49% にしか過ぎない。特に、シャシー部品やエンジン部品など機能系部品は大きく遅れている。 また、同じ 3 次元でも、デジタルモックアップに有効に利用できる surface または solid の使 用が少なく、wire frame が多い。 16 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 表5 CADの使用実態:最終図面に占める比率 全体 Non-CAD 2D 3D Wire frame 3D Surface 3D Solid US 0% 0% 1% 77% 18% Europe 5% 12% 13% 38% 31% Japan 4% 33% 24% 24% 1% インテリア Non-CAD 2D 3D Wire frame 3D Surface 3D Solid US 0% 0% 0% 84% 8% Europe 5% 12% 10% 50% 24% Japan 1% 16% 23% 37% 0% 機能系 Non-CAD 2D 3D Wire frame 3D Surface 3D Solid US 0% 0% 3% 66% 32% Europe 6% 13% 19% 22% 41% Japan 9% 59% 26% 3% 3% 注)サンプルは 95 年以降市場導入されたプロジェクトのみ(プロジェクト数 US;4, Europe;4, Japan;7) 一方で、実際にフロントローディングをうまく実施できているのは日本企業である。ある 日本企業で 90 年代初旬に、試作前の図面段階での、合同デザインレビューを推進したマネ ジャーの話では、2 次元図面でも部屋中の壁面に貼り、各担当者が真剣にチェックすれば、 何とかなったと言うことである。結果的に、図6に示されているように、日本企業は3次元 化が遅れているにもかかわらず、開発工数でみた生産性は欧米企業よりも高くなっている。 早期DRを実施し、フロントローディングを実現するためには、ツールである3D-CAD を導入しているかどうかという問題よりも、組織的に自動車企業と部品企業の関連技術者が 共同で効果的に問題解決に取り組むことができる仕組みこそがより重要だと解釈できる。 また、逆に、フロントローディングを効果的に実施する組織的な仕組みがなければ、3D -CADを導入しても、そのメリットを最大限活用することもできない(藤本・延岡・青島・ 竹田・呉[2002])。欧米企業は、その典型例かもしれない。 一方で、日本企業だけを見ると、7 プロジェクトのサンプルだけなので断定的には言えな いが、3次元化が進んでいるプロジェクトの方が開発生産性が高いように見受けられる。フ ロントローディングの組織能力が備わっていれば、3D-CADをより有効に活用できるこ とを示していると解釈できる。 17 延岡健太郎、藤本隆宏 図6 3 次元CADの使用と開発工数の関係 (万時間) 600 X 500 X 400 X 修正済み 開発工数 300 200 100 Japan X Europe 0 US 0 20 40 60 80 100 (%) 3次元データ比率 (最終図面中) 5-5 開発期間の分析とコンカレントエンジニアリング 最初に述べたように、開発工数のデータの方が、開発期間のデータよりも、製品開発の組 織能力を直接的に反映しているという傾向があるので、本稿では開発工数の分析を中心に進 めてきた。ただし、開発期間についても、中身を個別開発ステージレベルで分析し、そのパ ターンの違いを比較することは重要である。 図7は、開発期間(修正前)を、コンセプト検討開始時期、製品技術開発(プロダクトエ ンジニアリング)開始時期、生産技術開発(プロセスエンジニアリング)開始時期の3つに 分解したものである。製品技術開発は、要素技術の先行開発の開始ではなく、商品(車両) の技術開発が開始されたタイミングである。車両の技術開発は、通常車両レイアウトおよび 主要システムの計画から開始される。生産技術開発の開始時期は、通常設計・製造に最も長 い時間が必要とされボトルネックとなる大型ボディパネル用金型の計画が開始される時期 である。 ここでは簡易化のために、Period 1 と Period 4 を比較してみよう。日本企業に関しては、 全体の開発期間(つまりコンセプト検討開始からの期間)は、40 ヶ月強で短縮されていな いが、生産技術開始時期が 27 ヶ月前から 21 ヶ月前まで遅らされ、生産技術開発期間が短縮 18 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 されているのがわかる。この要因はとして、次の 2 点が考えられる。第一に、デザイン決定 を遅くしていることと関連している。次の図8で説明するが、90 年代に日本企業はデザイ ン決定から市場導入までの期間の短縮を最大の目的としてきた。これは、デザインが自動車 の商品力を決定する非常に大きな要素であるために、なるべく市場導入に近い時期まで最終 決定を遅らせて、なるべく最新の顧客ニーズを取り込みたいからである。デザイン決定から 市場導入の期間を短縮するためには、金型の設計・製造の期間を短縮する必要がある。日本 企業は、藤本・クラーク[1993]でも議論したように、従来から欧米企業よりも短期間で金型 製造ができていたが、近年は更なる短期間化に取り組んできている。最も長い期間を必要と する金型のひとつであるサイドボディパネルの鋳造開始から商品の販売までの期間で比較 すると、日本企業は 16-17 ヶ月で対応できるが、欧米企業意では 24 ヶ月を要する。生産技 術開発の開始時期を遅らせることができているのは、金型製造能力の結果だといえる。 19 延岡健太郎、藤本隆宏 図7 開発ステージ開始時期 Japan 0 10 20 30 40 50 60 70 0 10 20 30 40 50 60 70 0 10 20 30 40 50 60 70 Period 1 Period 2 Period 3 Period 4 US Period 1 Period 2 Period 3 Period 4 Europe Period 1 Period 2 Period 3 Period 4 コンセプト検討開始 製品技術開発開始 生産技術開発開始 第二に、Period 1 と Period 2 では、製品技術開発と生産技術開発がほぼ同時に開始され、 文字通り並行開発(コンカレントエンジニアリング)が顕著であったが、近年では、少なく とも一部の日本企業ではその必要性が多少低下しているといわれている。それは、生産技術 の参加がなくても、製品開発の技術者が生産要件を反映させることができるようになったか らである。これまでの並行開発の経験によって、製品技術者が生産要件を理解したことと、 守るべき生産要件をまとめたマニュアルの整備が進んだからである。 一方で、米国企業のデータを見ると、近年になるにつれて、製品技術開発と生産技術開発 の開始時期が近づき、並行開発が進んでいるように見える。ただし、生産技術の開始時期を 早めることによって、製品技術開発とのオーバーラップを増やしているので、期間短縮には 結びついていない。この点からは、あまり効果的な並行化にはなっていない可能性はある。 図2で見たように、米国企業は、コンセプト検討開始からの修正済み開発期間に関して、 20 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 Period 3 では日本企業よりも短期間で開発していた。図7を見るとその主な理由はコンセプ ト検討期間の短縮化が寄与したようである。エンジニアリング(製品と生産)の期間を比べ ると日米の差は徐々に拡大しているように見える。特に、日本企業は Period 2 から 4 にかけ て、生産技術の期間を急速に短縮してきた。この点では、欧米企業に対して、明らかな優位 性を構築したといえる。 日本企業は特に 1990 年代中盤から大幅な開発期間短縮に取り組んできた。その際に最大 の目的とされたのは、前述のように、デザイン承認からの開発期間の短縮である。図8はデ ザイン承認からの開発期間を 90 年代以降時系列的にプロットしている。この図を見ると、 97 年に 40 ヶ月かかっているひとつのプロジェクトを例外として、90 年代の 10 年間で大幅 に短縮してきていることがわかる。20 ヶ月前後のところに5つのプロジェクトが固まって いるが、その後の聞き取り調査によると、日本の自動車企業はこの後、更に短縮してきてい る。複雑性の低いプロジェクトであれば、デザイン承認後 15 ヶ月前後で開発を終了したプ ロジェクトもいくつか出現している。 図8を見ると、欧州企業においても、デザイン承認をなるべく遅らせる傾向は見受けられ る。ただし、米国企業には当てはまらないようである。欧州企業は、図2では開発期間全体 の短縮は見られなかったが、それよりもデザイン決定を市場導入時期に近づけたいという開 発期間に対する取り組み方向の考え方は、日欧で一致しているものと思われる。 21 延岡健太郎、藤本隆宏 図8 デザイン承認から発売までの開発期間 (月) 60 US Europe Japan 50 開発期間( 修正前) 40 30 20 1990 1992 1994 1996 1998 商品の発売時期(年) 5-6 プロジェクトマネジャーの役割 藤本・クラーク[1993]で日本企業の強みとしてあげられた要因の中で最後に、ここでは重 量級プロジェクトマネジャーについてデータを見てみよう。 部品間および部門間(製品設計と生産技術、実験、購買、マーケティングなど)の調整・ 擦り合わせが重要な自動車の開発をスムーズに推進するためには、プロジェクトマネジャー のリーダーシップが鍵である。そのため、重量級プロジェクトマネジャー(以下、PM)が いる日本企業の開発生産性は高かったのである。 2000 年に実施した最終の調査では、過去と比較してPMの権限や地位がどのように変化 してきたかについても質問した。PMが重量級である条件として質問表の中で提示した項目 は以下のとおりである。 • 地位と発言力:例えば、ボディ設計部長と同格かそれ以上 22 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 • • • • • • • 責任の及ぶ範囲:企画、製品エンジニアリング、販売などすべての関連部門 責任をもつ期間:プロジェクト期間全体に対して責任(コンセプト創出期間も含む) コンセプト創出に対する責任:全面的に責任を持つ 影響力の及ぶ範囲:製品エンジニアリング、マーケティング、製造のすべてに及ぶ 設計部門などに対する影響力の度合:実際に設計をするエンジニアに対して直接の影響 力をもつ 典型的な働き方:オフィスから出て直接にプロジェクトの指揮をとる 部門間の対立への対処の仕方:例えば、車輛コンセプトの実現のためには、自ら部門間 対立に飛び込んで戦うこともある これらの項目を全体的に考えて、1から7のスケールで回答してもらった。その結果は図 9のとおりである。日本企業は、藤本・クラーク[1993]で報告したとおり、1980 年代最初か ら、重量級PMであったと回答している。また、欧米企業では、80 年代前半は軽量級であ った。特に欧州企業ではPMの権限が低い傾向にあったのも、藤本・クラーク[1993]をサポ ートしている。 欧米企業では、過去 20 年間にわたり、一貫してより重量級に近いPMへ改革してきた。 その結果が図9にも顕著にあらわれている。2000 年前後に実施されているプロジェクトに 関しては、欧米企業のPMは、日本企業と同等の権限や影響力の強さと範囲を持っていると いうことである。 図9 プロジェクトマネジャーの重量度合いの変化 プロジェクトマネジャーの重量度 重量級 7.00 6.00 5.00 中量級 US Europe Japan 4.00 3.00 2.00 軽量級 1.00 1980 1990 時期(年) 23 2000 延岡健太郎、藤本隆宏 しかし、個別項目についての結果を分析すると、重要な側面において、欧米のPMは日本 企業とは異なることがわかった。図 10 は、90 年代後半に開発終了したサンプルプロジェク トにおいて、PMがどの程度の責任を持っていたのかを回答してもらったものである。100% とは、PMが全面的に責任を担っていることを意味する。まず、欧米企業においても、技術 開発の鍵を握るレイアウトや性能目標、開発コストおよび技術者間と機能部門間の調整統合 に関しては、日本企業と同様にほぼ 100%責任を担っており、重量級になっていることは確 認できる。 図10 プロジェクトリーダーの責任程度 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% US Europe Japan Manufacturing Cost Development Cost Prototyping Detail Drawings Supplier Selection Component Selection Cross-Functional Coodination Coodination Engineers Performance Target Vehicle Layout Marketing Plan Concept Proposal 一方で、日本のPMと比較して、欧米のPMが重量級になっていないと判断できる点は、 コンセプトプロポーザルとマーケティングプランの項目に象徴されている。つまり、どのよ うな車を開発し、顧客に対してどのような点を訴求していくのかという、商品コンセプトの 中核部分に関する責任に関しては、日本のPMよりも権限や責任が弱いのである。自動車開 発においては、部品間・機能間の統合的な問題解決(内部統合)と同様に、商品コンセプト をプロジェクトメンバーが十分に理解し、市場で顧客が喜ぶ商品の実現(外部統合)を一丸 となって目指すことが重要である。内部統合と外部統合の両方の役割を果たすのが、真の重 24 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 量級PMである。本稿の最初に述べたように、自動車の商品性を決定する要因は複雑でわか りにくい。たとえば、単に数字で表すことのできる機能(例えばエンジン性能や静粛性)を 実現できれば、それと線形的な関係で商品性が高まるわけではない。商品全体が醸し出す雰 囲気や感性に訴える部分が重要なのである。そのような抽象的な商品コンセプトを製品開発 に反映させていくためには、商品コンセプトに責任を持つプロジェクトリーダーの強いリー ダーシップが必要なのである。 なぜ、欧米企業では、日本企業に見られるような重量級PMが重要だと理解しながらも、 商品コンセプトに関しての権限を強化することができないのだろうか。図 10 によると、欧 米企業のPMは、詳細設計(Detail Drawing)については、日本企業よりも強い責任を担って いる。つまり、欧米企業では、PMの権限がいくら強くなってもあくまでも技術の側面が中 心なのである。 米国企業に関して言えば、事業部(Division)を中心としたマーケティング機能が商品コ ンセプトに大きな責任を持っているので、PMにその権限を集中することは難しいという側 面はある。さらには、米国では、労働市場の中でも、製品開発とマーケティングは2つの異 なる職種として独立している。そのため、個別商品開発のリーダーというミドルマネジャー のポジションでは、技術系の商品開発機能と商品コンセプトに責任を持つマーケティング機 能の両方に責任を持つことは難しいと考えられる。 6 おわりに 本稿では、自動車の製品開発における開発生産性の国際比較を、約 20 年間にわたるデー タを使って議論してきた。結論としてはまず、日本企業のモノ造りの競争優位性は全く低下 していないことがわかった。それどころか、1990 年代後半から現在にかけて、欧米企業に 対する国際的な競争力は向上している。本稿のデータは 90 年代末までのプロジェクトをサ ンプルとしたが、その後の聞き取り調査から、日本企業は 2000 年以降更なる生産性向上と 開発期間短縮を進めている。 日本企業の競争力の源泉に関しては、藤本・クラーク[1993]で議論された点が、多くの部 分でそのまま当てはまることが再確認された。つまり、自動車の製品開発は、複雑な擦り合 わせ・作りこみのプロセスが必要であり、組織的な統合・調整能力が鍵となる。それに対応 する組織能力に関して、日本企業は国際的な競争優位性を保ち続けているのである。必要と される擦り合わせの負荷が一段と増加する新規設計部品率の高いプロジェクトでは、日本企 業の開発生産性に関する優位性が一段と高まることによって、日本企業の統合・調整能力の 高さが示唆された。 25 延岡健太郎、藤本隆宏 日本企業の統合能力を支えている組織的な条件として、プロジェクトメンバーの人数を限 定し、プロジェクトのサイズを小さく保つことと、プロジェクトマネジャーが内部統合だけ でなく外部統合にも強いリーダーシップを発揮することが重要である。これらに関しては、 欧米企業が日本企業から学習できていないことがわかった。プロジェクトメンバーの人数を 少なくするためには、開発技術者の職務範囲の広くする必要があるが、制度的に専門性を重 視する欧米の労働市場を考えると、この点を個別の企業が変更することは難しいと考えられ る。プロジェクトマネジャーの責任範囲が限定されてしまうのも、同様な説明が当てはまる のかもしれない。 90 年代の中盤以降、藤本・クラーク[1993]の議論から大きく変化したのが、部品企業の位 置づけと役割であった。80 年代の日本企業の強みの源泉として、部品企業の開発力を活用 するために、設計開発の多くの部分を部品企業に任せることがあげられていた。欧米企業は、 急速にそのプラクティスを取り入れた。しかし、皮肉なことに、90 年代中盤以降、日本企 業が先行する形で、大幅な開発期間短縮、工数削減に取り組み、その結果として、部品開発 が格段に高いレベルで車両開発に統合される必要がでてきた。そのため、開発を部品企業に 任すのは良いとしても、同時に部品開発を車両開発へ強力に統合する仕組みが必要になった。 それを反映して、90 年代中盤以降は、昔ながらの承認図方式では、開発生産性が向上しな いという結果がでた。ここで述べたストーリーは仮説の域をでていないので、この点は、更 なる調査が必要である。 最後に、日本企業の競争力を考える上で、本研究結果が示唆する点を考えてみよう。他の 産業は、自動車製品開発の高い国際競争力から何を学ぶことができるだろうか。 自動車の製品開発における日本企業の組織能力は、国際的な優位性を保ち続けている。そ の根本的な理由のひとつは、自動車の製品アーキテクチャに関して、モジュール化・標準部 品化が進まないからである。近年、一般的な流れとしては、多くの製品において、モジュー ル化の方向に進んでいる。その理由は、モジュール化と相性の良い電子部品が増えているこ とと、開発、製造どちらにおいてもモジュール化したほうが、生産性が上がりコストが下が るので、技術者がモジュール化へ向けた努力をするからである。自動車が例外的なのは、モ ジュール化による生産性向上・コスト低減よりも、モジュール化をしないことによる商品性 向上の方が、付加価値生産性への貢献が高いからである。 他産業の製品でも、同様な製品アーキテクチャ戦略が採れる場合も少なくないはずである。 世の中のトレンドに流されて、安易にモジュール化へ進むのではなく、日本企業の得意な擦 り合わせ能力を顧客価値に結びつける努力がもっと必要であろう。 自動車企業に関しても同様な危惧がある。製品開発の組織能力が高いといっても、自動車 26 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 企業の業績は、顧客の嗜好や流行の変化や為替などのマクロ経済への対応能力など、他の要 因にも影響されるので、日本企業が必ずしもいつも業績が良いわけではない。しかし、他の 要因が大きな影響力を持たない場合には、日本企業は好業績をあげる可能性が高いというこ とは間違いない。問題が起こりえるのは、業績が悪いときに、コスト低減や作りやすさを狙 い過度にモジュール化を進めてしまう場合である。日本企業の強みが発揮できなくなり、取 り返しがつかないことになる。日本企業の強みを最大限活用することが、現在のところは最 適な戦略なのである。 27 延岡健太郎、藤本隆宏 参考文献 青木昌彦・安藤晴彦(2002)『モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質』東洋経済新報社 Baldwin,C.Y. & K.B.Clark (2000) 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(1995) “Product Architecture in the Manufacturing Firm,” Research Policy, 24, pp.419-440. 28 製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力 付表1 サンプル基本データ(すべて修正前) 度数 2 軽 0 5 0 Japan 8 2 US 4 0 6 0 Japan 4 1 US 5 0 10 0 Japan 8 0 US 5 0 7 0 Japan 10 0 合計 74 3 US Period 1 Europe Period 2 Europe Period 3 Europe Period 4 Europe 付表2 クラス 新規設計 内部設計 ボディ 開発工数 開発期間 コンパクト ミドル アッパー 部品率(%) 比率(%) タイプ数 (hours) (months) 0 2 0 68.0 89.3 1.5 4138000 60.0 (45.3) (11.0) (0.7) (4047479) (14.1) 3 2 0 75.6 85.6 2.4 4269000 61.8 (18.0) (7.6) (1.1) (1420847) (6.5) 3 2 1 81.3 54.2 1.9 1007500 41.0 (8.4) (9.4) (0.6) (553586) (5.9) 0 3 1 60.0 84.8 2.0 3147750 62.8 (21.4) (12.2) (0.8) (2069852) (10.7) 1 4 1 64.7 67.3 2.0 2708333 59.7 (11.2) (9.4) (1.5) (1089228) (10.9) 2 1 0 82.5 46.6 3.0 1450000 45.8 (8.8) (6.7) (1.4) (443471) (4.5) 1 3 1 75.2 69.0 1.6 2260600 50.8 (15.9) (13.6) (0.5) (1271563) (3.3) 5 5 0 70.6 74.0 2.5 3475000 58.9 (19.4) (13.9) (1.1) (1252830) (16.4) 3 4 1 73.4 58.7 2.0 1350875 51.0 (21.0) (14.0) (0.5) (403174) (11.6) 0 3 2 82.4 63.7 1.4 3118000 57.7 (7.5) (12.6) (0.5) (1150469) (7.1) 6 1 0 69.2 55.2 2.0 3225286 53.8 (14.1) (18.4) (0.8) (1565823) (3.9) 5 5 0 60.9 69.0 1.7 883900 42.9 (18.1) (10.0) (0.8) (415202) (10.3) 29 35 7 71.6 66.6 2.0 2422503 52.6 (17.3) (15.9) (0.9) (1594504) (11.9) 相関係数 開発工数(ln) 開発期間 新規設計部品率 内部設計比率 ボディタイプ数 開発工数 (ln) 1 0.65 0.27 0.09 0.29 開発期間 1 0.11 0.22 0.04 新規設計 部品率 内部設計 比率 ボディ タイプ数 1 -0.31 0.06 1 -0.11 1 注)太字は 1%レベル、イタリックは5%レベルで有意 29
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