米国大企業に身を任すアフリカ

ミレニアムチャレンジする米企業:大企業に身を任すアフリカ
2010年1月シードリング誌(グレイン)より
訳
山本義行
「ミレニアムチャレンジ公社( MCC)の相手側アフリカ諸国はビジネスを開放
しております。」
MCC 総務部長、大使、ジョンデニロビッチ
2008 年 6 月
ヨーロッパ列強がアフリカを侵略した時、私有財産
という自分たち特有の制度を持ち込みました。そし
て、これらの制度をもとに、この侵入者は地域社会
の所有物である土地を収奪したやり方を、正当化し、
保証し、簡略化するために、法律を制定したのです。
しかし、これらの法律はヨーロッパ人の農場やプラ
ンテーションの垣根を越えてまで、適用されたり、
考慮されることはほとんどありませんでした。
マダガスカル農民と写る、MCC 社の旧総務部長、ジ
ョンダニロビッチ(中央右)
独立後も、欧米の法律は理屈上では適用可能なまま残っていることが多く、ア
フリカの諸国は、これを最後の手立てにして所有者となるとともに、自国領土
という土地の独占的な所有者になっていることが多いのです。しかし、彼らは、
実際には、これらの土地を管理する能力はありませんでした。従って、アフリ
カでは田舎の土地の大半は、植民地時代を通して今日に至るまで地域社会の慣
習的な土地の権利に委ねられたままなのです。1
これらの慣習的権利は、複雑なことが多くめったに変更されません。これらは
地方政治とともに変化し時間の経過に伴って、都市化や、移住、森林伐採や土
地の細分化などの新しい圧力に順応しながら進化してきました。これらは競合
する可能性がある様々な権利と義務に基づいていると同時に、農業、漁業、畜
産に関する地元慣習全体にとって欠かせない部分を形成しています。この数年
来、これらの土地管理制度は公式集団の一部周辺化の試みの対象となっていま
すが、今ではこれまでにない非難の的となっています。2
アフリカは世界の食糧生産(バイオ燃料)の新天地となっています。相変わら
ずアフリカ農地をより多く世界市場につなげることのできるインフラ開発に数
十億ドルが動員されています。投資家はさらに数 10 億ドルをこの問題の市場向
けの農業生産用土地を手中にするため動員しています。少しずつ明らかになっ
てきているこれらのことを少しでも知るには、パーム油世界最大のメーカーが
リベリアに計画したパーム油の巨大なプランテーションや、モザンビークの広
大な地帯をブラジルタイプの大豆プランテーションに変えることを目的とする
日本とブラジルの協力プロジェクトを知るだけで良く分かります。3こういった
世界の将来構想にはアフリカの数百万の小規模生産者の居場所はもはや残って
いません。また、往年の植民地大国のように、この新しい波にのる侵略者はこ
れらの土地接収の正当化と促進を行うための法律や行政機構を必要としていま
す。
___________________________________
1 GRETの人類学者(フランス)、フィリップラヴィーンデルヴルによると、「農
地に欠かせないのは地元の方針と手続に応じて管理することにある。」Cf. フ
ィリップラヴィーンデルヴル、「伝統から近代への移行:最近の挑戦と進
歩」 http://www.landcoalition.org/pdf/wbtdelvf.pdf)
2農民団体ROPPAの 2008 年 4 月 13 日のワガドゥグにおける家族農場の土地保有
保全に関する地域ワークショップ後でのメンバーのプラットフォーム宣
言: http://www.roppa.info/IMG/pdf/Declaration_roppa_atelier_french.pdf
3"「アフリカの農業生産増を奨励するアフリカ開発JICAモデル」、日本国際協
力機構、 2010 年 3 月 17 日 http://farmlandgrab.org/11756、「リベリア:交
渉GOL、16 億米国$で交渉するゴールデンVeroleum社」 リベリアオブザーバ 、
2010 年 1 月 12 日 http://farmlandgrab.org/10208
世界銀行、USAID(国際開発米国機関)と1部のその他の国際機関ならびに外国
人出資者は、既に 10 年以上にわたり、基金を設立して、確実にこれを克服する
べく尽力しています。何らかの微妙な違いを出して彼らの進め方をどのように
ごまかそうとしても無駄であって、これらの機関が唯一共通の目的に据えてい
るのはすべて自分たちの土地プログラムなのです。つまり、これらのアフリカ
地域において私有財産権をベースにして、外国人投資家がターゲットにする土
地のマーケット創出が目的なのです。外国人投資家のアフリカ農地取得促進を
究極の目標として、法律の書き直し、権利の登録、衛星による地図製作と地籍
図システムの利用のために、コンサルタントチームが大陸全体に絶えず送り込
まれています。このアフリカ土地資源に関して熱に浮かされたラッシュの真最
中に、利権を守る大企業自身の分け前の取得を確保するため、一部の当事者が
さらに勢いづいています。アフリカの土地を狙う米国投資家にとっては、その
規模で他のあらゆるものを凌ぐプログラムがあります。それは米国政府による
ミレニアムチャレンジ公社(MCC)のプログラムなのです。マリ、ガーナ、モザ
ンビーク、ベナンで実験されたその土地プロジェクトがはっきり示すように、
MCC は、アフリカ農地の商用化と米国農業ビジネスへの開放において重要な役割
を果たしています。
表1
土地改革を含むコンパクトにつきMCCと契約した 国
国
MCCとのコンパクト日付
マダカスカル
2004
ニカラグア
2005
ベナン、ガーナ、マリ
2006
レソト、モンゴル、モザンビーク
2007
ブルキナファソ
2008
訳者
注)コンパクト(Compact)とは、コミュニティ・ガバナンス(Community Governance)を
行政とボランタリー・コミュニティ・セクターが協力して行うために締結する「協約」(あるいは「覚書」
のこと。)
新しい形の構造調整
米国ブッシュ大統領の最初の任期(2001-2005)終盤の項、ブッシュ大統領は外
国政府への人道援助の監督のため新しい組織の設置を提案したのです。彼は、
政府プログラムではなく USAID とは別の民間企業の形により近い何らかの組織
を望んでいたのです。この組織は、その然るべき社長と議会に報告しながらも
外務大臣と経済金融大臣そして米通商代表ならびに USAID 長官からなる取締役
会を有しつつ、民間部門の 4 人の代表も含むというものです。
MCC なるべきものが米国議会により 2004 年 1 月に設立されました。MCC の政策
はお愛想が無く構造調整プログラムに似ています。MCC は大規模な予算を使って
います(議会はオバマ政権下で、2010 年には+ 26%に増やしています)。お金
は MCC が受入れ候補として考える国への貸付ではなく、国を引き付けるために
ぶらさげる上等なニンジンの形の補助金で支払われています。しかし、この資
金調達の候補国になるためだけでさえも、その国はまず MCC のテストに合格し
なくてはなりません。このテストは「経済自由主義を奨励する」などの基準を
考慮すると同時に、世界銀行、ヘリテージ財団と国際通貨基金(IMF)のような
新自由主義体制から取れる指数類をベースとしています。ある国が十分な得点
を得られない場合には、小規模金額の獲得資格を与える「閾値」(プレコンパ
クト)段階にまで MCC によって引き上げられることがあるため、これによって、
MCC が正式な参加資格を手に入れるために必要と見なしている構造改革の実行
が可能となります。
一旦すべての支障を乗り越えた国は、次の段階に
移り、MCC と詳細を詰めて、MCC の資金提供の対象
とする 4、5 件のプロジェクトを指定する「コンパ
クト」契約を結ぶことができます。ほとんどの場
合、米国のコンサルタントチームが当該国に派遣
されて、コンパクトの提案を外国人投資家に対し
てその国の開放に最も適切な分野に向けて方向付
けしながら、練り上げていく中でその政府を指導
します。コンパクトが承認されると、お金の払い
込みが始まります。
2008 年リベリアでのジョージ W ブッシュ(写真:AP/チャ―ルスダラパック)
当該政府がワシントンに不快な方向に舵を取る場合にはいつでも資金は急に底
を突く可能性があります。例えば、ニカラグアに提供された資金はサンディニ
エスタが政権に選出された時中断されました。対照的に、MCCの資金はホンジュ
ラスで 2009 年の違法クーデター後にも継続されました。4
政府がコンパクトに署名するとき、資金を受け取る政府は、資金管理を担当す
る組織を設立する必要があります。それは、通常、ミレニアムチャレンジアカ
ウント( MCA)であって、適当な取締役を使って指定大臣の監督の下に匿名で
操作されます。コンパクトは、通常、5 年間継続すると定期的に評価の対象とな
ります。次の資金調達の区切りが正式認可されるまでには、厳しい目標が毎年
ほぼ達成される必要があります。「セネガルの拠点農村」の土地問題に関する
アドバイザーのヴィンセントバッセリは、MCC の機能の仕方を見て、これを、過
去の体験を考慮せずに、プロジェクトを極めて厳格にイデオロギー的に追求し
てローリングする「マシン」に例えています。
現在までの MCC コンパクトのほとんどはアフリカ諸国で調印されていることか
ら考えて、これらが現在、外国人投資家にとり非常に魅力的な分野の農業に集
中しているのは驚くべきことではありません。MCC 総予算のほぼ半分の 68 億ド
ルが、MC が「市場に基づく食料安全保障のためのソリューション」と呼ぶもの
をサポートするために使用されています。これらのコンパクトは果物輸出やコ
トヌー、ベナンといった港のような国際市場へのアクセスを容易にする交通イ
ンフラ建設の下請業者認証などのプロジェクトに融資を行っています。アフリ
カのコンパクトには農業の側面がほぼ常にあってこれが中心となっており、こ
れらの農業プロジェクトは国によって異なるものの、MCC の第1目的は、どんな
プロジェクトであっても、土地を民営化してその投資家が利益を得ることがで
きる取引可能な商品に仕立てることにあります。
マダガスカルの第1ステップ
2004 年に、マダガスカルは MCC とコンパクトに調印した最初の国となりました。
マークラヴァルマナナ政府は完全に MCC に合わせて、外国人投資家に国を開放
する熱意を示していました。当初は、 MCC とマダガスカル政府は、コンパクト
が農業分野への投資の増額に重点をおく必要があると同時に、その結果、それ
に必要となる権利証書の拡張プロジェクトを含める必要があることで合意して
いました。しかし、土地の地方分権化管理とその証明書割り当て(非有価証券)
に都合のよい国としての土地改革の進展は、すでに MCC の到着前に始まってい
たのです。コンパクトの別の側面から外国からの投資を促進してアグロビジネ
スを発展させる目的は保持されていたにもかかわらず、幹部は MCA の説得に成
功し、マダガスカルにこの進展を勢いづけさせたのです。しかし、政府は土地
国家プログラムの枠内で何千ものマダガスカル農民への国土証明書の割り当て
のために MCC 資金を利用する一方で、外国人投資家に同じ土地の販売を行って
いたことが明らかになって、その時に、すべてが明るみになって矛盾が結局は
爆発することになったのです。
マダガスカルの人々は、国際メディアを介して、自分たちの政府が韓国の大宇
ロジスティクス社に 130 万 ha の土地の使用権を割り当てていた一方で、数千 ha
に及ぶ別の契約をインドバルン社と交渉中であった農業工業化プロジェクトに
も関連するこの 2 つ契約のことを知って驚愕しました。
バルン社は、自分たちの土地を会社の自由に使うことを受け入れていた農民た
ちにしか証明書を配給しないようこの土地プログラムをその望み通りの地域ま
で拡張するよう要求していた一方で、大宇との契約には証明書がすでにMCCプロ
グラムによって割り当てられていた土地が含まれていたのです! 5
____________________________________________
4アレクサンダーメイン、ジェイクジョンストン、「ミレニアムチャレンジコー
ポレーションと経済制裁:ホンジュラスとその他の国との比較」 経済政策研究
センター、論点概要、 2009 年 8
月 http://www.cepr.net/documents/publications/mcc-sanctions-2009-08.pd
f
5アンドレTeyssier 、ランドリーRamarojohn、リボ Andrianirina Ratsialonana 、
「国際アグリビジネスのための土地?マダガスカル土地政策のジレン
マ」 EchoGéo、第 11 号、2010 年 2 月、 http://farmlandgrab.org/11420
実際に、政府は既に約 3 百万haの農地を外国人投資家に引き渡ししていたか、
引き渡すかの寸前であった。これらの取引は、投資に関する新法の枠内で 2008
年に政府により設定された最大 99 年間にも及ぶ場合もある長期リースの手法を
利用した上で出資者からも支持されて行われていた。 6
ラヴァルマナナ大統領政府と MCA -マダガスカルプログラムは、大宇との契約に
対する当然の住民の怒りに味方を得たクーデターとともに、2009 年 3 月には手
痛い最後を見ることになった。MCC は、ただちにコンパクトと土地国家プログラ
ムの融資を取り消しました。MCC がある国家プログラムをその土地プロジェクト
の一つに位置付けさせたのはこれが最初で最後のことでした。
マリ:MCCの拠点
マリでのプログラムは土地事業と MCC の目的についてさらに明確な例を提供し
てくれます。ミレニアムチャレンジアカウントマリ( MCA マリ)はマリの国内
で、かつ恐らくは西アフリカでも最大の灌漑プロジェクトであるニジェール公
社内の公社自身の地域を収用しました。MCA マリは、その自由になる約 20,000ha
を、基準外の準地域として開発してその独自の土地管理制度を確立しつつあり
ます。
マリ政府ニジェール公社はニジェール公社区画内の土地配分と灌漑用水の規制
を受け持つ唯一の政府機関です。農家は灌漑水の手数料を事務所に支払うこと
によって土地への出入り権利を取得します。しかし、予定では、 MCAマリの区
域内では、まだ灌漑されていない土地が灌漑されて小区画に分割されて、これ
らの土地が個々の権利証と一緒に人々に販売されることになっています。2010
年からスタートする第 1 期中には、6,000haの土地が灌漑されて 5haの区画に分
割される予定です。これらの区画の権利証は、最初に、この地域に住んでいて
そこに残りたい小規模農家の人々に、次いで、そこにやって来て定住したい小
規模農家の人々に割り当てられます。誰もがMCAから権利証を購入する必要があ
ります。しかし、本プロジェクトのために、現在そこに住んでいて引っ越しし
なくてはならない家族は、5haの内 2haを「無料」で受け取ります。第 2 期では、
2011 年に 5000haの灌漑の追加が含まれ、それらの土地は 10haの区画に分割され
ます。最終の第3期では、2012 年にさらに 5,000haの灌漑が計画され 30ha、70
区画ならびに、各 30ha以上の大規模な 30 区画に分割される予定となっていま
す。7
MCAは区画を分割して販売する計画ですが、権利証の所有者は、20 年での償還
を想定した借金を完全には返済しない限り、個々の権利証としての所有権がMCA
により設立された特別な機関に預けられたままとなります。8
農民の地方組織SexagonにはMCAマリが収用した地域の多くのメンバーがいま
す。9 その指導者の一人ファリリーボリーは、地元住民には相談がなかったし実
は、このプロジェクトには反対であったと明言しました。 「みんな農業を始め
たいという要求なんて全く持たない牧師たちなのです。 」とボリー氏は説明し
ています。「彼らは自分たちから取り上げられる土地についてMCAに一銭も払わ
ないだろうし、立ち退きを余儀なくされる可能性がとても大きいのです。 」
___________________________________
6ドイツODA、「マダガスカルの土地における外国直接投資(FDI)」 2009 年 12
月
7ミレニアムチャレンジコーポレーションマリ、「 Alatona農業システム開発プ
ロジェクト」:ファイナルレポート、 CDM作成、 2007 年 7 月
8同上。
9ニジェール公社( SEXAGON )の小農民組合は、1996 年に設立されました。こ
れは、当該地域の 12,000 戸以上の農家を代表しています。
MCCはこの地域の農業を再構築する意図を明確にしています。アメリカのある企
業が、 「現代」農業をプロジェクトに参加するマリの人々に教育するために乗
り込んできましたが、その会社は農民に初年度向けの種子やその他土壌投入剤
の最初のロット提供のためにアグラ(アフリカ緑の革命連合)と協同で業務を
行います(枠内記事1参照)。彼らはじっとしていると、小規模生産者が借金
を背負うとともに、恐らくはいずれその土地を第2、第3期プロジェクトの一
環としてやってくるさらに大規模な生産者や企業に売却することになってしま
う危険性が非常に濃厚でしょう。こうして外国人投資家に大きな扉が完全に開
かれて、プログラムの最終報告は、第3波、つまり 30ha以上の区画を利用する
第3波の投資家に国籍の条件を押しつけることがないようにその回避に気を配
っているのです。マリ市民である必要はないのです。10
実際、ニジェール公社は、すでに外国
人投資家の対象としてとても人気があ
り、リビアは 10 万ha、中国の投資家は
6000ha以上取得しています。サウジア
ラビアの投資家は 5 万から 10 万haの間
を目論んでいます。西アフリカ経済通
貨同盟( UEMOA )11の地域事務所の新
構想 は、11,000haの面積につき CMAの
プロジェクトに似たような措置を真似
ています。
ニジェール公社の玉ねぎ畑での Sexagon の事務局長、ファリリーボーリー、写真提供 飢餓 SOS
もう 1 つの地域組織、西アフリカ諸国経済共同体( ECOWAS)12では 10 万ha以上
におよぶ半官半民の提携プロジェクトがうわさにのぼっています。一方、地元
の農家は、1 家族につき 1ha以上の獲得に限りない苦労をしていると同時に、ニ
ジェール公社内の灌漑がすべて唯一の同一水源に依存しているため、水へのア
クセス競争が激化しています。 13
この状況に鑑みて、 Sexagonは 、その家族経営農場に土地と水への十分なアク
セスを提供して国の食料主権を確保するという別の将来構想に思い入れしてい
ます。組合は、およそ 3haを各家族経営農場に割り当てる長期リースに基づいた
制度を要求しています。このような制度は土地市場の発展を妨げるものであっ
て、 この考えにはSexagonは反対をしています。14
___________________________________
10ミレニアムチャレンジコーポレーションマリ、 Alatona農業システム開発プ
ロジェクト:最終報告書、 CDM作成、2007 年 7 月。
11西アフリカ経済通貨同盟( WAEMU ) 。
12英語:西アフリカ経済共同体(ECOWAS) 。
13アフター(AGTER)、
「大規模な土地所有権の適正化と集中化、マリのケース」、
2010 年 1 月: http://farmlandgrab.org/10462、シャンタルラヴィーン、 「マ
リ:土地ラッシュ」国土に関する 1 時間ルポルタージュビデオ、ラジオカナダ、
2010 年 3 月 12 日 http://farmlandgrab.org/11739、ビアカンペシーナ、マリの
米生産地のリビアによる土地収奪、2009 年 9 月 10
日、http://farmlandgrab.org/7483
14詳細については「マリ- ニジェール公社、農民運動は、アグリビジネスを押
し戻せるか?」飢餓SOSを参照のこと。農業動力学 、 20 号、2009 年 4 月。
従って、MCA-マリとの紛争は、ニジェール公社の小規模生産者にとって悪化す
る一途でしかないのです。 MCC はその地域が地域全体の転換をベースに利用さ
れることを望んでいますが、Sexagon はそれを阻止することを決めているのです。
ボリーにとっては、「MCC プロジェクトは失敗する運命にあります。我々は最終
的には自分たちの土地を取り戻すのです。」
ガーナ:米アグリビジネスにとってかつてないチャンス
ガーナにおける MCC の土地プロジェクトはマリのそれに良く似ています。ガー
ナとのコンパクトは、国の園芸輸出を発展させると同時に、特にパイナップル
生産への外国投資割合を増やすことを明確にめざしています。しかし、パイナ
ップル市場を支配する大企業は、大きな利益が確保できない国には投資しない
ことを露呈しました。大企業にとって、土地行政の変更は、絶対的な優先事項
なのです。そして、MCC コンパクトは、まさにこの目標を達成するものとして考
えられています。
マリにおける場合と同様に、土地の構成単位は、中央政府が特別な地位を与え
た地域内の最初のパイロットプロジェクトを中心にして拡がっています。この
パイロット区域は、首都アクラ近くのAwutu Efutu Senyaの農村地区に位置して
おり、パイナップルの生産に特化しています。その筋に詳しい新聞の見込み通
り、政府は 2007 年 9 月に署名し、プロジェクトでは、地図を作製するとともに
地帯の境界を区切るために衛星技術の利用を開始したのです。15地域住民の協力
を確保するため彼らを教育し、かつ意識を高めるため、あるコンサルタントが
採用された。次いで、MCCとコンパクトの実施を担当するガーナにあるミレニア
ム開発局(MiDA)が適切なタイミングは今だと思った時に、農業大臣は、この
地区がガーナの農村地域で初めての「権利証の強制登録地域」であると宣言し
たのです。
ボックス記事 1:MMCとアフリカの緑の革命連合(アグラ )
2008 年 6 月に MCC とアグラはアフリカでの協力の枠組みを確立する覚書に署名
しました。契約に基づき、両パートナーは以下の通り決定しました:
・経済成長への障壁を除去するために個々の国の食料や農業制度に関する一定
の政策や規制を変更するため共通の評価と勧告を行うこと
・一定の地理上や特定の地域に関して制度の実施計画を調整すること
・取組努力の調整のため定期的に連絡を取り合うこと
MCC とアグラもいくつかの特定のプロジェクトなどに協力している:
・ガーナ種子政策の改革。
・マダガスカルにおける米の生産と流通。
・ニジェール公社の MCA―マリプロジェクトの農民への種子や普及サ
ービスの提供。
・ガーナ、モザンビーク、タンザニア、ウガンダの農家への融資のため、
スタンダードチャータード銀行とともに 100 万米ドルの基金提供
このときから、MiDA は「実施段階」に移ったのです。すなわち、この地区は、
詳細調査の対象となり、土地と権利が識別され、地図に組み込まれ、対立する
要求は別のコンサルタントチームの後援の下に紛争解決の「代替システム」に
よって管理されて、権利が登録されて、流通するのです。 2009 年 9 月には、最
初の 100 件の土地権利証が一括して割り当てられました。一方で、MiDA は特別
なサービスも準備して情報を提供しながら見込みのある投資家のために土地価
値の評価を行っています。
地元住民は、このプロジェクトを要請した覚えは無い。人々は権利証を要求し
た覚えもない。しかし、彼らは地域のパイナップルプランテーションの拡張を
非常に心配していると同時に、食品の地元生産や土地へのアクセスに関して起
こりそうな結果について警戒をしています。17
____________________________________________
15ミレニアム開発機構と国土農林鉱山省間の実施実体協定、 2007 年 9 月 18 日
16
MiDAによる支援を受けた大臣を介して、パイロット登録地区としてAwutu
Senyaを宣言するための法律が、1914 年に議会として所有権登録に関するPNDC
法 152 節とともに採択された。PNDC法 153 の 5 節が、登録地区としての地域の
宣言の権限を、所有権の割り当てがこうして境界を区切られた地域内で行える
法的手段を通じて、大臣に付与している。
17
例えばGNA、「貧困削減終結に関するワークショップ」を参照のこ
と、 GhanaWeb、2003 年、12 月 21
日: http://www.ghanaweb.com/GhanaHomePage//regional/artikel.php?ID=48
673 。
これらの心配のためエリートと外国人投資家は心配でならなく、パイナップル
栽培のための土地を狙って色目を使うと同時に、自分の利益を妨げる慣習的権
利の実務を地元の人々に全く任せたくないのです。
Awutu Efutu Senya のMCCプロジェクトは、輸出のため地域のパイナップル生産
拡大を目指すさらに巨大なMCCプログラムの一部となっています。MCC資金は、
その地区と空港と港とを結ぶ道路の改善のため、収穫後用の缶詰工場などの施
設建設のため、港の改善、投資奨励策と拡張プログラムの整備、灌漑設備の提
供に加えて、安全な飲料水へのアクセス、また、メーカーがEurepGAP認証を得
ることができるための必須基準の促進のために使用されています。18 5 年前に
は、 MCCは、小規模生産者と地元の企業がこのプログラムの恩恵を受けられる
と主張することができたかもしれませんが、現在ではガーナのパイナップル産
業は完全に少数の外国企業によって支配されているのです。
18 EurepGAPは、役に立つ農業実践(あるいはGAP)を受け合うと思われる国際
的に認められた一連の農業基準です。名前が 2007 年にGLOBALGAPに変更されま
した。ガーナのコンパクトの提案によると、水質を改善する主な目的は園芸製
品を処理できるようにすることにあります。飲料水への人々のアクセスは「間
接的な恩恵」としてしか記載されていません。
ボックス記事 2:大企業にとりゴールドの形での収穫
ガーナのパイナップル産業は、21 世紀の早い時期に大企業がアフリカを向くよ
うになって、政治問題でコートジボワールからの供給が混乱した時に、欧州へ
の輸出の二次的産地として勃興しました。ガーナからヨーロッパへのパイナッ
プルの輸出は 2000 年の約 2 万トンから 2004 年には約 5 万トンになって急増を
遂げました。コスタリカで起こったこととは異なって、この生産は少数多国籍
企業に属するかまたは依存した大規模なプランテ―ションに完全に独占支配さ
れていたわけではありませんでした。ガーナの生産者と中規模商人らが、国の
パイナップル輸出の大きなシェア部分を提供していました。1
しかし、2005 にはガーナの欧州市場は崩壊してしまいました。何の予兆もなく、
ドールとデルモントなどのパイナップルの多国籍企業の圧力団体から影響を受
けたヨーロッパ小売業者は、ガーナからのスウィートカイエン種を受け入れず
に、MD2品種( "ゴールデン"として知られた)だけを購入することを一方的に
決めました。彼らは、また、自分たちのサプライヤーから EurepGAP 認定をより
執拗に求めるようになりました。ガーナのパイナップルの生産者と輸出者にと
って、この急激な方向変化であった EurepGAP 認証には、より高価でかつより新
しい施設を必要とする MD2品種は、彼らには法外なことであり、対処すること
ができませんでした。従って彼らは、止めざるを得なく、大規模な外国企業に
とって代わられるしかなかったのです。
2004 年には、ガーナのパイナップル輸出業者は 65 社を数えていました。今日、
ガーナパイナップル輸出のほとんどすべての市場は 2 つの企業の手にあります。
すなわち、3 社の主要下請け企業が調達を行うドール/フルーツ会社とスイスの
HPW サービスです。2 フルーツ会社は、
フランスに本社をおくと同時にその 40%
をドールが所有する企業で、ガーナで 2003 年に地元のパイナップル農園を買収
して営業を開始しました。当初の 150ha から 2006 年には 600ha に増やすと同時
に、ガーナで買収したと認めているパイナップルを作るため、さらに 3000ha の
プランテーションの開発を目論んでいます。この会社はガーナでバナナも栽培
し、推定では当国のバナナの輸出の 88%、生パイナップル(すべて MD2 品種)
の輸出の 40%を握っています。
同社は、{フリーゾーン}の地位を有しており、これが所得への免税を含めて
インセンティブ手段や保護といったあらゆる種類の権利を同社に付与していま
す。3 その他の多国籍企業がこれらの歩みに追随することを積極的に準備してい
ます:チキータは直接 MCC を相手に仕事を行って、ガーナのパイナップル産業
に、より簡単に参入しようとしています。4
ニルスフォールド「ガーナの多年生作物部門の国家間業務委託慣行」農
業変化ジャーナル 、Vol 8 、Mo.1 、 2008 年 1 月、P 94〜122
2. ピーターイエガー、 「ガーナ輸出園芸クラスター戦略概観調査」世界銀
行、ガーナ共和国食糧農業省並びに欧州連合全 ACP 諸国農産品プログラ
ム向けに準備されたもの。2008 年。
3. Cf http://www.gfzb.com.gh/
4. MCC年次報告書、
2008 年: http://pdf.usaid.gov/pdf_docs/PCAAB908.pdf
1.
住民に対抗する法の行使:モザンビークの場合
モザンビークと他のアフリカ諸国の耕地を対象にしたイギリスの投資ファンド、
エマージャントアセットマネジメントの総務部長、スーザンペイン曰く、「当
社の最初の仕事は、土地そのものを利用してお金を稼ぐことになるだろう、、、
当社は何も栽培をしないという馬鹿げた決定を行うかもしれないが、それでも
やはり次の 10 年間はお金を稼ぐことになると思います。」 19
MCCが別の一大土地プロジェクトを抱えているここモザンビークでは、外国から
の土地への投資ブームが起きてまさにとんでもないほどの土地ラッシュが活発
となっています。世界銀行は最近 18 カ月の免許需要は 13 百万haに関係してい
ると推定していて、そのうちの 100 万ha以上が契約の対象となっています。20
1997 年のモザンビーク土地法により創設されて、国により厳しく管理されてい
ることになっている土地の使用と開発の権利(DUAT) 21、は、実際には透明性
や監督の気遣いもなされずにすべての希望者に割り当てが行われています。
DUAT は、これらの投資家が開発計画を満たし実行するという条件で、国家が地
域社会あるいは投資家(外国人であれ地元の人であれ)に永久に割り当てた土
地の長期免許(もう 50 年の期間の更新オプション付きの 50 年)の形です。こ
の法律によれば、また、土地を自由に好ましく利用し、地域社会とのパートナ
ーシップを構築することを確実にするよう、投資家は、地元の人と相談する義
務を負っています。地域社会に付与されたこの保護の形が 1997 年の法律に書き
こまれることを人々は戦うことによって確保したのです。しかし、免許は、今
までにも増して地元エリートと外国人投資家に、人々の同意なしに付与されて
います。
MCC は DUAT がたとえ所有権のことをまともに表現していないとしても DUAT とは
矛盾しません。モザンビークの土地法改革に長い経験を持つ世界銀行も、また、
商業地の市場を確立するための努力が遭遇する大きな抵抗を前提にすれば、そ
れでも当面は期待できるだけましであると腹を決めたようでもあります。
MCC のジョリンサンジャック Sanjak によると、
我々は政府と協動することによって、リース契約満了や譲渡プロセスの効率化
の確保に努めています。...モザンビークでは、我々は事業に乗り出すために土
地を求める顧客と協働する弁護士たちと非常に興味深い議論を行いました。
彼らは、取得予定の土地が保証されかつ公式に認められた使用権を享受するか
どうかを見極め出来ないうちに、情報を求めて急がなくてはならなかったため、
自分たちの顧客の初期費用は 60 〜90%程度高いかもしれないと述べていまし
た。22
言い換えれば、 MCCは、DUATと財産権の間の差がさらに開くほどまでに国を治
める国の法律、規制並びに制度を変更しようとしています。もっと具体的には、
MCCは、自社株式の大半を譲渡して、投資家がそのDUATをより簡単に譲渡(すな
わち、売却する)したり、企業がそのDUATを譲渡するのを支援するのを目的に、
土地法規則(土地法の規制)の2つの条文(第 15 条、16 条)を対象にしていて、
これにより制度内に外国人投資家の気を大きく引く論理の飛躍に知恵を絞って
組み込もうとしているのです。MCCは、また、最初の 50 年後に免許を自動的に
更新できるように別の条文( 第 18 条 )も修正を望んでいます。23
______________________________________________________________________
19 Cf ロンドンのAgriPods会議でのスーザンペインのプレゼンテ―ション、
2010 年、2 月、http://farmlandgrab.org/11247
20世界銀行のクラウスデイニンガーによるプレゼンテーション、「"土地収奪国際社会の反応」、2009 年 7 月 16 日: http://farmlandgrab.org/6293
21略称ポルトガル語での略称「Direito de Uso e Aproveitamento de Terra 」。
22「誰も話さない住宅危機:土地所有の安全と貧困削減」ミレニアムチャレン
ジ公社公共組織福祉活動会合からの転写、 2008 年 11 月 13
日: http://www.mcc.gov/mcc/bm.doc/transcript-111308-habitat-landtenur
e.pdf
23Chemonics 、 「モザンビーク総合役務契約、土地保有役務最終報告書、MCC
向けに作成、2006 年 10
月 http://69.147.245.78/en/index.php?option=com_docman&task=doc_downlo
ad&gid=40&Itemid=10
制度を変更するため、MCCはかなり特殊な戦略を実施しています:それは特定の
地域から始めてそこから攻めるのです。 こうしてMCA-モザンビークはインフラ
プロジェクトやアグリビジネスが農地に関する投資家の関心をたきつけている
北部モザンビークの 12 か所の「優先地区」内に「ホットスポット」と称するも
のがあることをつきとめたのです。24 彼らは、今、「民間セクターの利用のた
めに」DUATを登録しながら次には合法化するこれら「ホットスポット」の境界
線と地図を作り上げている最中なのです。25
______________________________________________________________________
24モザンビークとのコンパクトのための土地に関するMCCの準備資料から:"「こ
の土地保有に関する不確実性や紛争によって困ったことにならないよう計画さ
れた投資に関する(土地の)需要の増に迅速に対応する能力が重要なのです。] 。
Chemonics、「モザンビーク総合役務契約、土地保有役務、最終報告書」、MCC
向けに作成、2006 年 10
月 http://69.147.245.78/en/index.php?option=com_docman&task=doc_downlo
ad&gid=40&Itemid=10
25モザンビークに関するその後の計画とMCC評価によれば、「DUATにより民間セ
クターの正式利用に供される農村部の土地面積」は土地保有役務プロジェクト
の主要な指標の一つで
す。 http://www.mcc.gov/mcc/bm.doc/mozambique-mande-plan-14april09_app
roved-2.pdf
地図と然るべき位置づけの DUAT ならびにデータが国の土地台帳に登録される
と、 MCA は関連地域において利用できる土地に関して定期的に更新される情報
を投資家に提供して、地域社会あるいは MCA から DUAT が割り当てられた人たち
の土地を取得するために彼らの手助けをするよう仕向けられた業務を行うこと
になるのです。
「この財産権配分のプロセスでは、農民たちは経済的に困るとすぐ自分たちの
土地を売ると同時に、最も影響を受けるのは女性たちなのです。」と、モザン
ビーク農民連合 UNAC の農民、レオポルド Nhampossa ジアマンチノは不安に思っ
ています。
「地元生産者は現状起きていることになんか全く満足していません。
私たちは、土地は共通財産として考えるのです。」
ベナン農場にはウォールストリートの閃きしかありません。
MCC は、コンパクトの土地問題の一面に関するモザンビーク政府提案の推進のた
め、Chemonics 社と国際土地システムの 2 社の米国企業を雇いました。マリでは、
土地に関するコンパクトの部門の企画構想を書いた別の米国企業の CDM です。
MCC の土地プログラムの企画と実施の過程において、どの場面にも、私たちは、
USAID のプログラムを通じて米国企業のために土地の準備を行うあらゆる経験
の豊富な米国企業の関与を知ります。べナンでは、米国の1企業が MCC のプロ
グラムの枠内で、国土政策の展開においてさえも采配をふるうのです。
ベナンと共に MCCC コンパクトは、新土地法制定のベースに資すると思われる白
書を受け入れて、コトヌー港の開発に向けられるその多額の補助金の資金配分
についての条件づくりを行っています。このコンパクトでは、この新しい枠組
みが類似した運命にあるもの、つまりは、「慣習的で、かつ行政的な土地管理
から市場と所有権の登録制度に徐々に移行させる」ことが明らかにはっきりし
ています。すべてが予定通り進むことを確実にするために、MCA-ベナンはスチ
ュワートインターナショナル社を白書の編集監督のために来させました。
白書は、最近、完成しました。内部からその過程を観察できたベナンのコンサ
ルタントは、調査は外国人投資家とアグロビジネスに都合がよい方向に大きく
傾斜していたことをグレインに告白しました。反対の声は封じられて、結局は、
白書は、それでも 2007 年の国土法では極めて明確に認められていた慣習的権利
の慣行から完全に離れて、国内で合意可能な土地構成に関する唯一の制度は所
有権であるという原則から逸脱しています。「どこにでも所有権を行使させる
ことを目的とする白書では、ベナンの社会的、経済的背景に対応していな輸入
されたモデルが提案されています。」と「農民共働」組織は説明しています。
「これでは多国籍企業および他の金融機関に白紙委任状を与えるようなもので
す。」
白書が法律に書き換えられている間にも、 MCA-ベナンは、すでにいくつかの地
区で土地に関する所有権の行使を義務付けつつあります。ガーナやモザンビー
クにように、MCC は、地図と境界を定めて、所有権を登録してかつ民間投資家に
土地購入を容易にするために、世界銀行やその他の出資者により監督されてい
た最近の土地所有改革により生じた空き地を利用しています。このプログラム
では、「農村土地所有計画(PFR)」を介して土地所有の権利をその地域内の地
域社会に集団的に特定させた上で定めさせる 2007 年のベナンの土地所有法律の
条項をねじ曲げて解釈しています。PFR は、例えば、食料安全保障、雇用、両性
間の平等そして環境の問題を考慮しながら、地区自治体に土地へのアクセス問
題を解決させて、権利と責任の配分方法を改善できるようにする、「農民協働」
のような組織にとっては非常に関心のある機構なのです。
しかし、MCAの対象地区の PFRでは、市場で売買可能な土地を私的所有権区画に
分割する土地台帳作業が日課となっています。また、白書では、このやり方を
国全体ですっかり一般化する意図が見え見えになっています。26
アグリビジネスの外国人投資家は、MCCプログラムに大喜びしています。アグロ
ビジネスのFludor社のCEO、フランスの実業家ローランドリブは、全国にこのプ
ログラムを拡大したいのです。「みんなが発展を望めば迅速に投資が出来ると
同時に、ベナンの国土の各部分に所有者がいなくてはならず、土地の権利証を
通じて証明できなくてはならないのです。」と、彼は主張します。「各県境界
にある各市町村内に、誰もが出来るだけ迅速に土地権利証を処分できるように
所有者を移動させる組織的な有機体がなくては
困ります。」 27
ベナンの小規模農家自身は、彼の熱意を共有す
ることはありません。「私たちの分析では、と、
「農民共働」のネストールマイヌはと説明しま
す、「MCA-ベナンは投資家に白紙委任状を持た
せる手段なのです。各地域、各土地の所有者、
その名前、場所、面積、その畑の平面図などに
関してもすべてのデータが数値化されているの
で、ニューヨークからでも、どの投資家もOuesse
ou a Djidjaの土地の所有者を特定できるので
す。」 28
実は、この種の取引に関して投資家の増大する
関心とこれらを意のままに実現する論理上の手
段を有するという事実との間には、この種の効
果が加わることが認められます。例えば、ガーナでは、アメリカの信託保険会
社ファーストアメリカンともう1社のアメリカ企業、インターナショナルラン
ドシステムが、クリントングローバルイニシアチブのパイロットイニシアチブ
とマイクロクレジットの米国版銀行「オポチューニティインターナショナル」
の生みの親なのです。このイニシアティブは、アクラのスラム街の衛星地図の
作成さえも意図しています。29 その後、オポチューニティインターナショナル
は、ローン担保として利用できる弁護士アシスタントの形の資格を取得させる
よう住民を支援します。これは土地所有権市場創造のために多国籍投資会社と
結び付いた国際的な銀行の恩恵を利用して動かして政府をかわす良い方法なの
です。30プロモーターが現在ガーナの地方にそのプロジェクトを導入しようとし
ています。
___________________________________
26フォルカー・スタム、 「社会研究と開発政策:西アフリカ土地保有問題への
2 種のアプローチ」 、 アフリカスペクトラム、 44 巻 、第 2 号 、2009 年、29
~52 頁 。
27Kokouvi Eklou 、 「ローランドRiboux:「土地問題はベナンにとり根本的問
題である。」、 2009 年 11 月 9
日: http://www.ebeninois.com/interview_r13.html
28 H.アガーテAssankponアライン、 「ベナン。国内や外国人投資家による土地
への商業的圧力」 2009 年、12 月 9
日: http://www.oecd.org/dataoecd/12/12/44174152.pdf
29ピーターラブリー、インターナショナルランドシステムズ社。 「ガーナプロ
ジェクトがGISベースの権利証登録と貧困軽減のためのマイクロファイナンス
にテコ入れする。」 ArcNews、 2008 年
秋: http://en.landsystems.com/downloads/Ghana_GIS_Land_Titling.pdf
30飛躍的に伸びている貧乏国でマイクロクレジット貸出計画に基づく信用債権
保証向けの市場が存在することに注目することが重要です。これらの投資媒体
を販売中の企業には、ブルーオーチャード(www.blueorchard.com)そして
Symbiotics (www.symbiotics.ch/)があります。オポチューニティインターナ
ショナルは、積極的にこれら 2 つの企業
(http://www.opportunity.net/About/Distinctives/investment_capital/を参
照)と協力しあっています。
同時に、世界中の農地に殺到する投資家やビジネスリーダーは、取得する土地
を識別するために既に衛星技術を使用しているのです。一部の米国とヨーロッ
パのベンチャーキャピタルファンドが所有するアルゼンチン企業エルテハール
は、つぎのように語っています。
購入またはリースの見込みのある区画を評価するために、私たちは土地の品質
と生産性についての最初の評価をするために前もって衛星画像と気象データを
利用します。農業生産に利用できる地形と割合を見極めながら、洪水、病気あ
るいは干ばつのリスク、さらには例えば、土壌品質や生産性を評価しながら正
確な所有権に関する地図を作成しようとしています 。 31
ボックス記事 3:米国サブプライム危機の輸出方法
ベナンの人々は、MCA-ベナンのために、国の土地政策の再編成を牛耳る企業の
スチュワートインターナナショナルが、多国籍大企業の一つであり、アフリカ
の土地商品化に直接の利害関係を有していることを殆ど知りません。1 この会社
は実は米国最大の不動産保険住宅ローン銀行の 1 社であって、この数年来、世
界の他勢をしり目に非常に積極的な拡張政策を実行してきたのです。土地や不
動産分野でのベナンにおけるように、この企業がいかに躍進していようとも、
政府への助言は、企業の国際部門にとっては二次的活動に過ぎません。2 スチ
ュワートインターナショナルは、また、土地の台帳と登録のシステムが必要と
する技術を売りたがっていますが、活動の中核は不動産保険の販売なのです。
不動産保険は長い間あまり知られず、米国の不動産市場に限られた商品でした
が、世界的な産業になろうとしています。発展途上国の不動産を購入したい外
国人投資家は、所有あるいはその所有の権利に関わる紛争に直面した場合に、
その投資を保護する不動産保険を欲しがります。そこで、スチュワートは、メ
キシコで エジッド 土地に投資するアメリカ人向けに特別な不動産保険を販売し
ています。メキシコの先住民コミュニティの集団所有であって、国土法の変更
により、最近になって、外部の投資家の取得に開放された土地問題に過ぎない
です。頻繁に生ずる貧しい国々の不動産保険の場合と同様に、エジッド 土地向
け不動産保険の条件は米国の法律に依拠していて、メキシコのそれには依拠し
ていないのです。3
いずれにしても非常に多いのは、不動産保険を求めるのは個人ではなく住宅ロ
ーンの貸し手なのです。昨年のサブプライム危機では、米国銀行とその他の住
宅ローン機関がどのようにしてその抵当証券をパッケージ化してそれを「保証
抵当権証券(CMO)」名のもとで証券として販売しているかが暴露されました。
これは第二次抵当市場と呼ばれます。この数年来、不動産業界は、世界中でこ
の種の市場を開発しようとしています。しかし、これらの市場は、CMOの買い手
がこれらのリスクのある住宅ローンパッケージに大きな信頼を寄せるように、
土地が私有所有権不動産証書によって管理されていて、これらの証書は不動産
保険により保証されている国でしか作成できていません。スチュワートと他の
不動産保険会社は実は、住宅ローンポートフォリオをまるまるカバーする不動
産保険全体を銀行に差し出します。「スチュワートは、住宅ローンの貸し手に
奉仕していて、私たちは金融業界が発展途上にある任意の国で住宅ローンの二
次市場の確立を保証しかつ確立ができるよう、ポートフォリオ一式を評価し保
証しています。」とスチュワートは言っています。4
これから、米国のサブプライム危機を作り出しながらも利益を獲得する悪徳な
輩が、同じシナリオをさらに南部の国々やアフリカでも繰り返す恐れがどれほ
どあるかが容易に想像できることになります。その潜在的儲けは膨大です。開
発途上国の 45~75%の間の富が土地と不動産から生じて、この富は大部分が世
界資本の手付かずのままの状態になっています。5 スチュワートと他のアメリカ
の不動産保険会社は、銀行や金融機関とともに、MCCを利用して「世界不動産市
場」を創設して、この種の市場を開設しようとする計画にとって無くてならぬ
部分を形成しているのです。
「MCCはこれらのイニシアティブと同期をとって民間セクターと協力する考え
方に非常に関心を寄せていて、所有権につながる司法改革の実施を支援できる
のです。」と、MCCのジョリンサンジャックは「米国土地権利証協会」の最近の
会議時に主張しています。「究極の目標は、よりグローバルな市場につながる
ようになることです。」6
1. スチュワートインターナショナルウェブサイ
ト: http://www.stewart.com/
2. スチュワートは、グルジア、ハンガリー、メキシコ、モルドバ、セント
ルシア、セルビア、スロバキア、トリニダードトバゴそしてウクライナ
で所有権登録と私有化プロジェクトを実施している。
3. ミッチクリークモア、スチュワートインターナショナル- メキシコ課、
「メキシコの土地に関する不動産保険の米国標準」 不動産ビジネスアリ
ゾナジャーナル、2005 年 5
月: http://www.pacificboutiqueproperties.com/ドキュメント/アメリ
カの%% 20Standards 20Aricle.pdf
4. ケビンKnaiチェスター、 「国の不動産市場開発のグローバル化- 現在の
展望」 MIT、2004 年 6
月: http://dspace.mit.edu/bitstream/handle/1721.1/17858/5660759
6.pdf?sequence=1
5. アーメッドガラル及びオマールラッザーズ、 「土地と不動産市場の改
革」、世界銀行政策研究論文、2616
6. http://www.alta.org/press/release.cfm?newsID=7336
MCCを閉め出そう
MCCは際限のない膨張を経験しており、毎年新しい国とコンパクトを締結してい
ます。長いリストにつらねられたアフリカやその他の国が、MCC資金の対象にな
ることを待っています。しかし、これは家族経営農家にとり良いニュースでは
ありません。 MCCのプログラムは小規模農家への支援は何も持ち合わせていま
せん。彼らには、工業化農業のためあるいは投機のためでさえでも、むしろ小
規模農家にその土地を売却するようプッシュして、肥沃な農地をだれにも負け
ない価格で収奪できる投資家に道を開く傾向があります。32 おまけに、MCCプロ
グラムは大企業による土地の収奪に味方することをめざしていると同時に、国
家と国際的な機関からなる常に長蛇のリストからなる巨大なプロジェクトの構
成要素の 1 つにしか過ぎないのです。
その結果、貧しい人たちによって準備がなされていることは、すべて、現在、
地元住民のため持続可能な方法により食糧生産に利用されている土地の大部分
が、豊かなエリートや外人投資家の手に渡る可能性があることのためなのです。
彼らが投機目的の土地をただ妨害せずに放っておくと、土壌は新しい所有者が
輸出向けの農産品の生産のために利用するのです。その賭け金は途方もありま
せん、そのくせ、多くのアフリカ政府は、未だに、投資家に十分理解して貰っ
て自国民の土地を売るために何に知恵を絞れば良いか分からずにいます。現実
的にはどこのアフリカ政府の首長も世界中における実際の土地収奪に憤慨する
だけの勇気を持ち合わせていませんでした。MCC あるいは他の出資者に毒された
贈り物を軽蔑した政府はほんのわずかでしかありません。
しかし、それでは土地にいる人々の行動は止まりません。アフリカで最近の 2、
3 年間に締結されたほとんどの土地買収は、ここ当分はまだ書類上の契約でしか
ありません。契約が公になったところや、あるいは投資家が現実に土地に入り
込もうとした時には、エチオピアやマダカスカルに始まってマリやケニアに渡
って地元の激しい抵抗に出会いました(Ochalla とのインタビューやエンドルイ
ス人に関する記事を参照)。そして、地元の人々は、これらの契約のことを耳
にするにつれて、抵抗が拡大し運動が連合しています。
多国籍機関(これには国連とその人権機関を含めて)や世界銀行や国際金融公
社(IFC)のように直接的にからむ集団の役割に関する批判の圧力は、今日、開発
援助国のプログラムと彼らが土地ラッシュの中で果たす役割にも影響するとい
う大変な時代なのです。
MCC は後に続く被害の可能性をある程度象徴的に物語っています。これは私たち
が一緒になって被害を止めるために動かなければならない理由を物語るもので
もあります。
___________________________________
31
http://www.eltejar.com/en/secciones/agricultural-land_44.php&sub=0
32ゾウ県内のDjidja地区自治体の最近の土地収奪に関する「農民連携」の調査
によると、ベナンでは、2008 年と 2009 年の間に当該地域で外国人による土地買
収の驚くべき増加が認められた。30 件の買収書類の中に、組合は投資家が実際
にその土地を利用しているケースを1件だけ認めた。Cf.「農民連携」、「最終
報告書-Djidja土地所有に関するアンケートミッション:土地収奪」、 2009 年
12 月。
補足読本:
「新たな土地所有者、 - 海外農地レースの先頭を走る投資会社」、グレイン、
逆流へ、 2009 年 10 月 http://www.grain.org/articles/?id=56
食糧危機と金融危機真最中の農地大幅下落。グレインレポート、2008 年、10
月、 http://www.grain.org/briefings/?id=213
農地奪取:世界の食糧危機と土地収奪。このブログには主に、外国農地の購入
やリースに関するニュース記事、基本食糧供給の確保やごく単純に利益を上げ
ることを目的とする作戦が含まれています。
その目的は、話題に関して起きていることや調査していることを追い求める人
たち、特に社会運動、NGOやジャーナリストの活動家へのリソースの提供にあり
ます。ブログは、現在、グレインにより管理されていますが、誰でも記事を発
表したり、ブログの改善を行うことができます。:
http://farmlandgrab.org/
シナジーペイザン 、MCA-ベナンの白書に関する評論読物:土地所有政策と行政
に関する研究- 「土地へのアクセスプロジェクト」、 2009 年 11 月 26 日。 、
コピーを入手するにはこちらまで: synergiepays@yahoo.fr
ワガドゥグでの家族経営農場の土地保有の確保に関する地域ワークショップ後
のROPPAの農民団体のメンバーの綱領宣言、2008 年 4 月 13
日: http://www.roppa.info/IMG/pdf/Declaration_roppa_atelier_french.pdf
農村ハブのウェブサイトには、アフリカ、特に西アフリカの土地問題に関する
多くの選り抜きの資料やニュース記事が含まれています。
http://www.hubrural.org/spip.php?rubrique15
ミレニアムチャレンジコーポレーションのウェブサイ
ト: http://www.mcc.gov/