中性子ラジオグラフィによる生体組織イメージング

2004年 6月 30 日
73・ (1 9)
特集断層映像診断学ー最新の話題
中性子ラジオグラフィによる生体組織イメージング
総説
土屋
佳則 1 ,2) ・ 松林
政仁3) ・ 呉
勤1) ・テ ィテイルイン1)・米山
明男 4)
松村明1) ・ 堀富栄2) ・武田徹1)
1)筑波大学臨床医学系, 2)芝 浦工 業大学
3) 日本原子力研究所東海研究所, 4) 日立製作所基礎研究所
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抄録
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中性子の吸収特性を生かした中性子ラジオグラフイは様々な分野で試みられている。 本研究では中性子ラジオグラフイの生
体組織観察への応用としてウサギ肝臓切片、ウサギ大腿骨の中性子吸収像および CT像撮影を日本原子力研究所の熱、冷
中性子ラジオグラフィ装置により 実施した 。 検出器として中性子イメージングプレート、冷却CCD カメラを使用した 。 肝臓切片
の中性子吸収像では造影剤を用いることなく血管が描出された。 また大腿骨の中性子 CT像では軟音1)組織が観察で きた 。
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Keywords: 中性子ラジオグラフイ, ]RR- 3M , 生体組織, CT
1.
はじめに
中性子ラジオグラフィ 1) は、 1932年に中性子が発見さ
ことや、撮像系の 高性能化等に よ って より広い 分野で
れた3年後に 実験が始まり、以来 X線ラジオグラフィと
応用されるようにな っ てきている 。 ここでは中性子ラ
同様に放射線を用いた非破壊イメージングのひとつと
ジオグラフィの 概略を 示 すとともに、これを生体組織
して発展してきた 。 中性子ラジオグラフィはX線ラジオ
イメ
ジ ングに適用する試みとして、ウサギ肝臓切片
グラフィと異なる情報が得られるためその重要性は高
および大腿骨の撮像を日本原子力研究所の研究用原
い。 特に中性子は金属に対して X線よりもよく透過する
子炉を用いて実 施したので紹介する 9.10)。
性質を持 って いることから X線では困難な 金属容器の
内部を観察できるため 、中性子ラジオグラフィ は 工業
製品の健全性検査や、 金属管 内の流体挙動観察など工
2. 中性子ラジオグラフィ
中性子は陽子とほぼ同じ質量 の 電荷を持たない粒
業 分野で多く利用されている 2.3)。 また、水による散乱
子である 。 電磁波である X線が物質内 電子 と電磁的に
が大きいという性質を利用して植物の水分分布観察が
相互作用を起こし、吸収端を除き質量吸収係数は原子
実 施され4)、 医療分野では歯の観察や 5.6)、中性子吸収の
番号に依存して 重 い元素 ほど吸収が大きいのに対し
大きい 物 質で あるボロンを用いた中性子捕獲療法のた
て、中性子は 主 に原子核と相互作用し、断面積は核種
めの薬剤分布観察も試みられている 7.8)。 さらに中性子
により様々な値をとり、たとえ同位元素 間で、 あ って も 異
CT撮影や、得られた画像の定量 化も進め られている 。
なる値をもつことが知られている 。 強度 10 の中性子
現在国内では数 ヶ所 に中性子ラジオグラフイ装置が
線が厚 さ x の試料に入射したとき種々の散乱、吸収の
あり、 高 い中性子線束が得られる原子炉が利用できる
過程を経て透過す る中性子の強度がI とな っ たとき、
別刷請求先: 〒 305-8575
つ くば市 天王台 1-1-1
筑波大学大学院人間総合科学研究科
TEL:0
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58
土屋佳 則
断層映像研究会雑誌第 31 巻第2号
74・(20)
特集断層映像診断学ー最新の話題
フィには熱中性子 (25-100meV) がよく用いられ、そ
10 と I の関係は次式で表される 。
)
(
れ以外のエネルギーの中性子でもそれぞれの特徴を
唱 EA
I = Ioexp [- Nσ xl
生かしたラジオグラフイ実験が行われている 。 中性子
ここで N は単位体積当たりの原子数、 σ は全断面積
は原子炉、加速器、 RI線源などで得られる 。 このうち
である 。 全断面積 σ は全散乱断面積 σ s と吸収断面積
原子炉では 235U の核分裂反応によりエネルギーが
lOMeV に及ぶ速中性子が発生する 。 発生した中性子は
σ a との和で表される 。
重水などの減速材によってエネルギ
(
2
)
σ=σs+ σs
を失い熱平衡
状態となり、これを原子炉に設置した実験孔より導い
て利用する 。 減速材は冷却材としても機能する 。
中性子吸収断面積はボロン、カドミウム、ガドリニウムな
どで極端に大きな値であり、また水素の散乱断面積も
中性子ラジオグラフイ装置は中性子源、コリメー夕、
大きく、これらの元素が試料に存在すればラジオグラ
シャツ夕、試料台、検出器から構成される( 図 1 ) 。 原子
フイ像では影として識別できる 。一方、鉄、アルミニウム、
炉などの中性子源から発生した中性子はコリメータ
鉛などの金属では比較的吸収が小さく、中性子をより
を通して試料に導かれる 。 像のぼけに関係する開口部
透過させる性質を持つ 。 また、中性子のエネルギ
径とコリメータ長さの比(コリメ
に
タ比, L/D) は l∞
よ っ ても断面積は変化する 。 表1 に中性子全散乱および
以上が望ましいとされる 1)。 検出方法として、 X線フィ
吸収断面積の例を示す 11)。 詳 しい値は BNL325等にま
ルム、トラ ックエッチ法、 CCD カメラ、中性子イメージ
とめられている 。 すなわち中性子ラジオグラフィでは核
ングプレート 12) などが用いられる 。 CCD カメラは CT
種による吸
用の投影画像撮影にも容易に対応可能である 。一 方、
収、散乱の違
中性子イメージングプレートはダイナミックレンジ
いを利用し
が広いなどの利点があり、細かいコントラストの変化
元素記号
全散乱断面積
吸収断面積
0 , (1 0珂羽目n')
σ J, (l O-lM crn 司
を捉えることができる 。 遮蔽が強固であること、試料
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および試料空間の放射化などのため撮影後の待ち時
あり、 X 線ラ
聞が必要で、あることを除けば、 X線ラジオグラフィと
ジオグラフイ
ほぼ同じような環境で実験することが可能で、ある 。
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生体組織は大部分が水であるため、中性子によるイ
得ることが
5.
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3. 中性子による生体組織イメージング
ない情報を
0.
2
30
できる 。 中性
メ
子はエネル
実際に TNRF - 2での熱中性子ラジオグラフイによるマ
ギによっ
ウスの全身像では肺の部分を除いて骨の弁別は困難で
あったとの報告がある 13)。 現状で生体組織の中性子イ
ジングでは強い吸収像となることが予想される 。
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て冷中性子、
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熱中性子、熱
メージングによる観察は薄片試料などが適当と考えら
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外中性子、速
れる 。 そのため本研究では生体試料として厚さlOmm
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中性子などと
程度までのウサギ肝臓切片、骨の撮影から実験を始め
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ることとした 。 動物実験は筑波大学動物実験委員会の
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承認を得て実施した 。
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表 1.
中性子全散乱 、 吸収断面
積 の例 。 吸収断面 積 は波長 1 . 8
A の中性子に対するもの 。
コ リ メータ
( 実験物理学講座22中性子回折
より抜粋)
図1 .
シャツタ
試料
中性子ラ ジ オグラフィ 装置の構成
検出様
2004年6月 30 日
75
(
2
1
)
特集断層映像診断学最新の話題
図2. 熱中性子ラジオクラフィ装置 (TNRF-2)
図3. 冷中性子ラジオグラフィ装置 (CNRF)
3-1 装置
ここで紹介する 実験は大きな中性子線東が得られ
る日本原子力研究所の実験用原子炉JRR - 3Mの炉室、
ガイドホールに設置されている熱、および冷中性子ラ
ジオグ ラフイ装置 (TNRF -2, CNRF) にて 実施した14.15)。
1
JRR - 3Mは熱出力 20MWで、最高3 x1
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/cm2secの
中性子線東 (n /c mtse c)
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言ナすマTすZ
表2. TNRF-2およびCNRFでの中性子線束、照射視野
熱中性子束を発生する 。 また、 TNRF-2、 CNRFの外
観を 図2、 3 に示す。
TNRF - 2 はJRR - 3Mの原子炉水平方向に設置され
対応している 。 また、いずれの装置も 白色光を使用する 。
ている 水平実験孔に設置さ れて おり 、 特'性波長2Åの熱
今回の実験では検出器として冷却 CCD カメラ 16)
中性子 を使用する 。 TNRF-2は原子炉プール、 遮蔽体
(C4880、浜松ホ トニ クス) および中性子イメージング プ
直後 に設置さ れているためラ ジ オグラフ イ 撮影にはイ
レー ト (ND2025、 富士フィ ルム ) を使用した 。 冷却CCD
ンタ ー ロ ック 操作が必要で、ある 。 また外部に 対する速
カ メラは6LiF Z
n
S(Ag) の 蛍光コンパータに より 蛍光
中性子、 y 線のための十分な生体遮蔽が施されている 。
体を発光 さ せ蛍光を撮影することで画像を得て い る 。
TNRF - 2 では角形のダイパ
タが設
CCD は 一 回℃に冷却して使用される 。 冷却CCD カ メラ
置さ れており、コ リ メ ー タ 比は横176、縦153である 。 照射
はCT撮影にも利用される 。 中性子イメ ー ジングプレ ー
ジ、ェン トコリメ
領域は255mm x305mmで、あり大型の試料も撮影可能
である 。
CNRFではJRR - 3M原子炉内に設置されている冷中
トはカセ ッ トに入 れて使用し 、 読み取りにはBAS18∞、
2α氾を用いた 。 ここ でのイメージングプレ ート の読み取
りは50 または 1∞ μmで、ある 。
性子源 (CNS) により熱中性子を液体水素でさらに減速
することで得られる特性波長4Åの冷中性子を使用す
3-2 ウサギ肝臓切片の撮影9)
る 。 中性子は中性子導管で原子炉建屋 に隣接したガイ
生体組織の例としてウサギ肝臓切片を撮影した。 組
ドホールに導かれる 。 CNRFで、の照射領域は 20mm x
織は生理食塩水で潅流した後ホルマリン固定したもの
印刷nで、ある 。 これより大きい試料に対しては試料を水
を様々な厚さにスライス し、これ らについて中性子ラ
平方向に走査することで撮影する 。 TNRF -2、 CNRFで
ジオ グラフィ撮影を 実施 した。 ここでは中性子 イメ ージ
の中性子束、照射視野を 表2 に示す。 TNRF - 2、 CNRF
ングプ レ ー ト を用い 、 露光時間 を熱中性子 ラジオグラ
にはシャツ夕、回転試料台が備 えられており 、 CT撮影に
フィ 2秒、 冷中性子2訴少と し た 。 試料は 、 表面の水分を
7
6
(
2
2
)
断層映像研究会雑誌第31 巻第2号
特集断層映像診断学最新の話題
図 5. 厚さ約 3mm のウサギ肝
臓組織切片.
a: 熱中性子ラ ジ オ グ ラフ ィ
像,
b: 冷中性子ラ ジ オグラ
フィ像,
ィ 像.
c
:x線ラ ジ オグラフ
(
s
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ebar:2mm)
図4. CNRFにおけるイメ ー ジンクプレ ー トを用いた
ウサギ肝臓切片の中性子ラジオグラフィ撮影状況
C
試料が乾燥 しない程度に除去し 、 ポ リビ ニル袋 または
アル ミ箔で包んだうえ、イメー ジングプ レートカセ ッ ト
表面に粘着テープで固定 し、ビーム ライン上にカセッ
トごと立てて設置した 。 図4 に CNRFでの切片撮影状
況を示す。 図5に蜘管を 多く含むうさぎ肝臓正常組織の
a
中性子ラジオグラフ ィ およびX線ラジオグラフィ像を
示す。 試料厚さは約3mmである 。 また、 X線ラ ジ オグラ
b
フイはX線フィルム (1四~ - R, Kod出) を用い、撮影条件
は23k V , 6.3mAs とした 。 中性子ラジオグラフィ像では
造影剤を使用していないにも かかわらず、血管が描出
C
された。 切片は生理食塩水で潅流後ホルマリン固定さ
れており、 生理食塩水、ホルマリンが浸透 した血管と
d
肝臓組織とのわずかな水分量 の 違 いがコ ン トラスト
を発生させたと考えられる 。 X線 ラジオグラフ ィでも
血管 は若干識別 できる が、特に冷中性子ラジオグラフ
e
イではより細かい血管が観測され、今回の撮影ではお
f
よ そ l∞ μm径の細さま で描出できてい る 。 イメ ージ ン
グプ レ ー ト 読み取り分解能にも依存するが、これは中
性子イメ ー ジングプ レ ー トの空間分解能 (およ そωμm)
1η にほぼ匹敵する 。 中性子イメ ー ジングプ レ ー トを用い
たウ サギ肝臓切片の中性子ラジオグラフィではX線 ラ
ジオグラフ ィ に比較してより良好なコントラスト、画質
が得られることを確認している 。 また、がん組織を 含
む切片 で はがん組織周辺部で中性子の透過が少 なく
なる傾向が見られる 。
図 6.
ウ サ ギ大腿骨の中性子ラジオグラフィ投影像.
(
sc
al
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a
r:5mm)
7
7
(
2
3
)
2004年6 月 30 日
特集断層映像診断学ー最新の話題
a
b
C
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図 7.
ウサギ大腿骨の中性子 CT像.
能が求められる 。 また、カル シウム量、水分量 の定量化
3-3
中性子CT撮影
が課題となる 。
中性子CT の例としてウサギ大腿骨の撮影を実施し
た 。 試料はホルマリン固定し、骨以外での中性子の吸
4.
おわりに
収、散乱を避けるため筋肉などをできるだけ除去した 。
ここでは中性子ラジオグラフィの概要と生体組織
およそ 1 時間にわたる撮影中の乾燥を防ぐため、試料
撮影例を紹介した 。 ウサギ肝臓切片では血管を造影剤
をアルミ箔に包んで回転試料台に立てて固定した 。 撮
なしで観察することができ、ウサギ大腿骨の CT撮影
影は TNRF -2 にて冷却CCD カメラを用い、 I ピクセル
では軟部組織が弁別できた 。 すなわち生体組織観察に
が約 50μm となるように設定した 。 像のぼけをできる
対する中性子イメ
だけ避けるため試料は蛍光コンパータに近づけて撮影
できた 。 今後造影剤を用いた組織撮影や、カルシウム
した 。 ここでは 1投影あたりの露光時間を 3秒とし、 1 0
量、水分量の定量化を進めること 等で より広い応用を
ジング利用の可能性を 示すことが
刻みに 1 加投影の撮影により CT像を得た 。 画像再構成
目指したい 。 また、新しい中性子源として大強度陽子
はフィルタ逆投影法 (FBP) による 。 図6 に投影像、 図7
加速器の建設が進められており、中性子イメー ジング
には 図 6 に示した a-f 断面の CT像を示す 。 図 6 に示
の更なる発展が期待できる 。
す骨の長さは約 5cm で、ある 。 投影像では骨で中性子の
透過量が大きいことが伺える 。 CT画像ではカルシウム
謝辞
を多く含み水分が比較的少ないため中性子吸収の少
実験を遂行するうえで日本原子力 研究所安藤均氏、
ない骨表面と、水分を多く含み中性子をより多く吸収
石川 靖志氏、筑波大学 附属病院万本涼子氏、筑波大学
する骨内部が明瞭に区別できている 。 この撮影により、
小林浩三氏よりご協力をいただき、ここに感謝いたし
中性子CT で骨内部の軟部組織の描出が可能であるこ
ます。 材慨は日本原子力研究所協力研究および繁明
とが判明した 。 骨内部の骨梁はこの 実験では観察でき
研究により行われた 。
なかった 。 骨内部の観察のためにはより高い空間分解
7
8
-(
2
4
)
断層映像研究 会雑誌第 31 巻第 2号
特集断層映像診断学一最新の話題
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智 ,中性子に よる 計
測と利用, x. 中性子ラジオグラフィ
勉,板井悠二 ,米山明男,松林政仁,中性子ラジオ
グラフィに よる 生体試料撮像の試み,日本医用画
5.小型サイク
像工学会,
ロトロ ンに よる中性子ラジオグラフィ一国産 ロケ
Radioisotopes, 46, 5
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