小さな国の大きな期待 シンガポールとブルネイの教育の特徴 シンガポール事務所 ともに ASEAN 加盟国の中でも国土が狭く人口が少ない国であるシンガポールとブル ネイは、優秀な人材の育成が国家の重要政策であるという共通点を持っています。政府 が教育に力を入れていることも両国の共通点ですが、それぞれ特徴があります。 シンガポールは若いうちから競争を取り入れることで、エリートを育てる教育体制が 有名ですが、能力の多様性を認め、これを伸ばしていく取組にも力を入れています。 「生徒に自信と誇りを持たせ、個々の能力を最大限に引き出す」。これはシンガポール のローカル校で、必ず説明される教育方針のひとつです。学力だけでなく音楽や美術、 スポーツなどの能力も価値のあるものと捉え、各学校とも独自のプログラムを充実させ ています。 ローカル校で実施されているプログラムの例を挙げると「海外の学校と合同で行う自 作自演のミュージカルプログラム」「子どもたちが考えたオリジナルの物語を ICT 技術 によって映像化するビジュアルアートプログラム」 「子どもたちが立てた仮定を実証する ための実験プログラム」などがあり、知識の習得だけに留まらず、子どもたちの興味・ 関心に即したものや体験型の教育をとおして将来、実社会で役立つ力をつけることを目 指しています。政府はこのような個人の能力を引き出し、それを伸ばす学校の取組を高 く評価し、必要に応じて予算や人材を補助しています。 ブルネイも、シンガポールと同様、教育に力を入れており、6 歳から 15 歳までは義 務教育期間となっており無償です。さらに、高等教育に関する各種奨学金制度を充実さ せ、全国民の学力の向上を目指しています。例えば総合大学であるブルネイ・ダルサラ ーム大学では、ブルネイ人学生に対して授業料が無料であるだけでなく、毎月 350 ブ ルネイドル(約 29,000 円 2016.3.16 現在)の奨学金が支給されます。また、海 外の大学に進学する場合も、政府系、企業系、各種団体系の奨学金が提供されています。 ブルネイがシンガポールと違う点は、個々の能力を伸ばすよりも全体の学力を底上げ することです。そのため学力の劣るクラスにはより多くの教員を配置しています。 教育は、競争するものではなく、無償で与えられるものと捉えているため、生徒や教員 に心のゆとりがあり、それがゆったりとした教育現場の雰囲気を形成しています。 両国の教育政策の特徴は異なりますが、国として教育を大切にしていることには変わ りません。 小さな国が国際社会で輝き続けるために、今後も教育に力を入れることでしょう。 (堀江所長補佐 栃木県小山市派遣)
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