イスラム金融のポストBRICs 「MEDUSA」 - So-net

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BRICs経済研究所レポート:M EDUSA経済
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融の
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可能
能性
2008年 1 月 10日 ( 木 )
B R I Cs 経 済 研 究所 代 表 門 倉 貴 史
E-mail: postbrics@yahoo.co.jp
∼要
旨∼
■ 原 油 価 格 の 高 騰 が 続 く な か 、 産 油 国 が オ イ ル マ ネ ーの 流 入 で 潤 っ て い る 。 最 近 で は 、 U A E の ア
ブ ダ ビ 投 資 庁 が サ ブ プ ラ イ ム 問 題 で 巨 額 の損 失 を 出 し た 米 国 の シ テ ィ ・ グ ル ー プ に 75億 ド ル の 出 資
を決定する など 、オイルマ ネーが先進国 に還流する 流れも出て くる ようになっ た。産油国の世界 の
金融市場へ の影 響力は、巨 額のオイルマ ネーを通じ て今後さら に拡 大してこよ う。そこで注目さ れ
るの が、 イス ラ ム教 徒の 多い 産 油国 で発 達し た 「 イ ス ラ ム 金 融 」 で あ る。
■BRIC s経 済研究所で は、「イスラ ム金融」の有力グルー プと して、「M EDUSA」 (メ デ
ューサ)という コンセプ トを提 唱したい 。「ME DUSA 」は、マレーシ ア(M)、エジプト
(E)、U AE (アラブ首 長国連邦)の ドバイ首長 国(DU) 、サ ウジアラビ ア(SA)の4カ 国
の英 語の 頭文 字 をつ なげ たも の で、 ギリ シャ 神 話に 出 てく る 怪 物 の 名 前か らと っ て い る。
■「MED US A」を構成 する 4カ国は 、①「イス ラム金融」が深 く浸透して いる②ファンダメ ン
タルズ(経 済の 基礎的諸条 件)が良好で ある③政情 が比較的安 定し ているとい った特徴を備えて お
り、 今後 の高 い 経済 成長 ・金 融 マ ー ケッ トの 拡 大 が 期 待 さ れ る 。
■各国経済の概 況をみると 、東南アジア のマレーシ アは、イス ラム 債券(スク ーク)の最大の発 行
市場となっ てい る。一方、 エジプトは、 アフリカ大 陸では最大 のイ スラム金融 国家だ。各種の天 然
資源に恵ま れた エジプトは 、原油や天然ガスの輸出 によって高 い経 済成長を実 現している。最近 で
は、外国資 本の 受け入れにも積極的で各 種の規制緩 和を進めて いる 。ドバイで は金融セクターの 発
展が著しい 。か つて中東の 金融の中心は バーレーン であったが 、い まではドバ イがバーレーンに 変
わる新 しい金融セン ターとなりつ つある。サウ ジアラビアは世界最 大の産油国で 、湾岸協力会 議
(GCC) の加 盟国でもある。サウジア ラビアは原 油輸出によって 稼ぎ出した 巨額のオイルマネ ー
を利 用し て、 観 光産 業や 金融 産 業な ど原 油以 外 の 産 業 の 育 成 を 図 っ て いる 。
■「MED US A」を構成 する 4つの国 はイスラム 教の国家な ので、産児制限 をしておらず、今 後
も中長期の 経済 成長に必要 な労働力の増 加が期待で きる。また 4カ 国は、イス ラム金融という独 自
の金融シス テム で相互につながっており 、オイルマ ネーを背景 に相 互補完的に 発展していくこと が
予想される 。サ ブプライムローン問題の 深刻化によ って米国を 中心 とした先進 諸国では、先行き 経
済 の 減 速 懸 念 が 強 ま っ て い る が 、 米 国 の サ ブ プ ラ イ ム問 題 の 影 響 を 受 け づ ら い と い う 点 で も 、 「 M
ED US A」 は 有望 なグ ルー プと い える だろ う 。
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( ポ ス ト B R I C s 「 ME D U S A 」 (メ デュ ー サ ) と は ? )
原 油 価 格 の 高 騰 が続 く な か 、 産 油 国 が オ イルマ ネ ーの 流 入 で 潤 っ て い る 。 最近 で は 、 UA E ( ア ラ
ブ 首 長 国 連 邦) のア ブ ダ ビ 投 資庁 が サ ブ プライ ム 問 題 で 巨 額の 損 失 を 出 した 米 国 の シ ティ・ グ ル ー プ
に 75億 ド ル の 出 資 を 決 定 す るな ど 、 オ イ ルマネ ー が 先 進 国 に 還流 す る 流 れも 出 て く る ように な っ た 。
産 油 国 の 世 界 の 金融 市 場 へ の 影 響 力 は 、 巨額の オ イ ル マ ネ ー を 通 じ て 今 後 さら に 拡 大 してこ よ う 。
そ こ で 注 目 さ れ るの が 、 イ スラ ム 教 徒 の 多い産 油 国で 発 達 し た 「 イ ス ラ ム金 融 」 で あ る。
「 イ ス ラ ム 金 融 」は 、 イ ス ラ ム の 教 え ( コーラ ン) に 基 づ い た 利 子 の な い金融 取 引 の こと だ 。 近 代
的 な 「 イ ス ラ ム金融 」 は 、 1975年 に ド バ イ で始 ま っ た と 言 わ れ、 そ の 歴 史は 決 し て 古 くはな い 。 し か
し 、 近 年 、 「 イ スラ ム 金 融 」は 年 率 15% 程 度の 急 ス ピ ー ド で 成長 す る よ うに な っ た 。
B R I C s 経 済 研究 所で は 、 06年 11月 に ポ スト B R I C s の 有 力 候 補 と し て「 V I S TA」 ( ベ ト
ナ ム 、 イ ン ド ネ シア 、 南 ア フ リカ 、 ト ル コ、ア ル ゼ ン チ ン の 5カ 国 ) を 提唱 し た が 、 今回新 た に 「 イ
ス ラ ム 金 融 」 の 有力 グ ル ー プ とし て 、 「 MED U S A 」 ( メ デュ ー サ ) とい う コ ン セ プトを 提 唱 し た
い。
「 M E D U S A 」は 、 マ レ ー シ ア ( M ) 、エジ プ ト ( E ) 、 U A E (ア ラ ブ首 長 国 連 邦) の ド バ イ
首 長 国 ( D U ) 、サ ウ ジ ア ラ ビア ( S A )の4 カ 国 の 英 語 の 頭文 字 を つ なげ た も の で 、ギリ シ ャ 神 話
に 出 て く る 不 思 議な 魔 力を 持つ 怪 物 の 名 前から と っ て い る 。
こ れ ら 4カ 国 は ①新 た に 台 頭し て き た 「 イスラ ム 金 融 」 が 深 く 浸 透し て い るだ け で な く、 ② フ ァ ン
ダ メ ン タ ル ズ ( 経済 の 基 礎 的 諸条 件) が 強固、 ③ 政 情 ・ 治 安 が比 較 的 安 定し て い る と いった 条 件 も 兼
ね 備 え て お り 、 今後 の 高 い 経 済成 長 ・ 金 融マー ケ ッ ト の 拡 大 が期 待 さ れ る。 以 下 で は 、各国 経 済の 動
向 を 紹 介 し て い く。
( 世 界 最 大 の イ ス ラ ム 金融 国 マ レ ー シ ア)
ま ず 、 「 M E D U S A 」の 「 M 」 の マ レ ー シ ア 経 済 は 、 2006年 の 実 質 経 済 成 長 率 が 前 年 比 + 5.9%
と な る な ど 好 調 に推 移 し て いる 。
イ ス ラ ム 教 徒 (ス ン ニ ー 派 )の 人 口 が 多いマ レ ー シ ア で は 、政 府 が 「 イス ラ ム 金 融 」を振 興 し て お
り 、 世 界 最 大 の イス ラ ム 金 融 市場 と な っ ている 。 近 年 で は 、 サウ ジ ア ラ ビアや U A E (アラ ブ 首 長 国
連 邦 ) な ど 原 油 高で 潤 う 中 東の オ イ ル マ ネーが同 国 に 大 量 に 流 入 す る よ うに な っ て き た。
多 様 な 「 イ ス ラ ム金 融 」 の な か で も 、 特 に注目さ れ て い る の が、 「 ス ク ー ク( イ ス ラ ム債 ) 」 と 呼
ば れ る 金 融 商 品 であ る 。 ス ク ーク は 、 イ スラム 法 に 基 づ い て 発行 す る 債 券。 イ ス ラ ム 法では 、 原 則 と
し て 利 子 の 受 け 取り が 禁 止 さ れて い る の で、ス ク ー ク を 購 入 した 投 資 家 は、 利 子 で は なく運 用 益 と い
う か た ち で 、 投 資収 益 を 得 る独 特 の 仕 組 みとな っ て い る 。 世 界の ス ク ー ク発 行 高 は 2000 年 代 に 入 っ
て か ら 急 拡 大 し てい る 。 I IF M の 資 料 による と 、 ス ク ー ク 発行 高は 2003 年 時 点 で は3 億 3600 万 ド
ル に す ぎ な か っ たが、 2006 年 に は 205 億 7600 万 ド ル に 達 し た(図 表 1 ) 。
マ レ ー シ ア 政 府 は多 額 の ス ク ー ク を 発 行 してお り 、 現 在 、 世 界 全 体 の ス ク ーク 発 行 額 の約6 割 が マ
レ ー シ ア 一 国 で占め ら れ て いる ( 図 表 2 )。ス ク ー ク の 購 入 者は 湾 岸 諸 国の 投 資 家 が 圧倒的 に 多 い 。
ま た 、 イ ス ラ ム金 融 の 振 興 を図 る マ レ ーシア で は 、 イ ス ラ ム金 融 を 専 門に 行 う 「 イ スラム 銀 行 」 の
数 が 急 増 し て い る 。 マ レ ー シ ア 中 央 銀 行 の 資 料 に よ る と 、 イ ス ラ ム 金 融 機 関 の 数 は 、 02 年 末 の 2 行
か ら 06 に は 10 行 へ と 増 加 し た 。 ま た イ ス ラム銀 行 の 支 店 数 は、 02 年 末 の 128 店 か ら 06 年 末 に は
1167 店 へ と 9.1 倍 に 膨 ら ん で い る ( 図 表 3 )。 さ ら に A T M店舗 数 は 02 年 末 の 185 店 か ら 06 年 末
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に は 329 店 へ と 拡 大 し た 。
2008 年 1 月 に は 、 マ レ ー シ ア 国 内 で 最 大 の 銀 行 、 「メ イ バ ン ク 」 が イ ス ラ ム 金 融 に 特 化 し た 「 メ
イ バ ン ク ・ イ ス ラミ ッ ク 」 を 新た に設 立 した。 同 社 の 資 産 規 模 は 約 7590 億 円 に 上 り 、アジ ア 太 平 洋
地 域 で は 最 大 の イス ラ ム 銀 行と な る 。
図表1
世 界 の ス ク ー ク発 行 高 の 推 移
100万ドル
25000
20000
15000
10000
5000
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
(出 所) II F M資 料よ り作 成
図表2
グ ロ ー バ ル ・ スク ー ク の 発 行 高の 内 訳 ( 2006 年 )
カタール
クウェート 2%
2%
バ ーレーン
2%
サウジアラビア
5%
パキスタン
1%
その他
2%
UAE
23%
マレーシア
63%
(出 所) II F M資 料よ り作 成
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図表3
マ レ ー シ ア の イス ラ ム 銀 行 支 店数
店
1200
1000
800
600
400
200
0
2002
2003
2004
2005
2006
(出 所) マレ ー シ ア 中 央 銀行 資 料 よ り 作 成 、 各 年 と も 年末 時点 の 数 字 。
( マ レ ー シ ア で 拡 大 す るイ ス ラ ム 保 険 「タ カフ ル 」 )
マレーシアは、イスラム保険の「タカフル」の振興を図っている。通常の保険事業はイスラム法
に 抵 触 す る 部 分 が多 い た め 、 「タ カ フ ル 」は協 同 組 合 の ひ と つ と い う 位 置づ け に な る 。「タ カ フ ル 」
は 貯 蓄 と し て の 意味 合 い が 強 く、 高 額 の 保険料 を 期 待 す る こ と は で き な い。 マ レ ー シ アでは 、 1984年
に 「タ カ フ ル 法 」( Takaful Act) が 制 定 さ れ 、 1985年 か ら 「 タ カ フ ル 」 事 業が 本 格 的 に 展 開 さ れ る よ
うになった。
現 在 は 、 「 マ レ ーシ ア ・ タ カ フル 」 を は じめと し て 、 政 府 か ら認 可 を う けた 8 社 が 「 タカフ ル 」 の 事
業 を 行 っ て い る(図 表 4 ) 。 保険 業 界 全 体の資 産 残 高 に 占 め る「 タ カ フ ル」 の シ ェ ア は年々 上 昇 し て
お り 、 2006年 末 の 段 階で は 6.1% と な っ た( 図 表 5 ) 。
マレーシアの「タカフル」を、「ファミリータカフル」(生命保険に相当)と「ジェネラルタカフ
ル 」 ( 損 害 保 険 に相 当 ) に 分 けて み る と 、「フ ァ ミ リ ー タ カ フ ル 」 の 資 産残 高 は 、 2000年 時 点 の 15.4
億 リ ン ギか ら 、 2005年 に は 49.2億 リ ン ギ へ と拡 大 し た 。
一 方 、 「ジ ェ ネ ラル タ カ フ ル 」の 資 産 残 高は、 2000年 時 点 の 3.3億 リ ン ギ か ら 2005年 に は 8.3億 リ ン ギ
へ と 拡 大し た 。
宗 教 や 民 族 に関 係な く 加 入 す る こ と が で きるマ レ ー シ ア の 「 タ カ フ ル 」 は 、こ れ ま で 各種の 保 険 に
加 入 し て い な か った 人 た ち を中 心 に し て 、今後も 市 場 が 拡 大 し て い く こ とが 見 込 ま れ る。
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図表4
マ レ ー シ ア の タカ フ ル事 業 者 ( 07年7 月 時 点)
1
CIMB Aviva Takaful Berhad
2
Hong Leong Tokio Marine Takaful Berhad
3
HSBC Amanah Takaful (Malaysia) Berhad
4
MAA Takaful Berhad
5
Prudential BSN Takaful Berhad
6
Syarikat Takaful Malaysia Berhad
7
Takaful Ikhlas Sdn Berhad
8
Takaful Nasional Sdn Berhad
( 出 所 ) マ レ ー シ ア中 央 銀 行
図表5
マ レ ー シ ア の タカ フ ル資 産 残 高
%
6.5
100万リンギ
8000
6.0
7000
保険業界に占める割合(左)
6000
5.5
5000
5.0
4000
4.5
3000
4.0
2000
資産残高(右)
3.5
1000
3.0
0
00
01
02
03
04
( 出 所 ) マ レ ー シ ア中 央 銀 行
5
05
06
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(上昇する通貨リンギ)
マ レ ー シ ア は 、 97 年 に 発 生 し た ア ジ ア 通 貨 危 機 の 影 響 で 、 タ イ や イ ン ド ネ シ ア な ど 他 の A S E A
N 諸 国 と 同 様 、 自国 通 貨 リ ン ギが 米 ド ル に対し て 暴 落 す る と い う 事 態 に 見舞 わ れ た 。 当初、 マ レ ー シ
ア 中 央 銀 行 は 、 海外 勢 に よ る 投機 的 な リ ンギ売 り に 対 抗 す る た め 、 金 利 の引 き 上 げ を 実施し た 。 し か
し 、 金 利 を 引 き 上げ て も リ ン ギの 下 落 圧 力が弱 ま る 気 配 は な く、 急 激 な 金融 引 き 締 め によっ て か え っ
て 景 気 が 悪 化 す るよ う に な っ てし ま っ た 。これ 以 上 の 利 上 げ の実 施 は 困 難と 判 断 し た 中央銀 行 は 、 対
ド ル で 為 替 レ ー ト を 安 定 化 さ せ る こ と を目 的 と し て 、 98 年 9 月 2 日 か ら 通 貨 リ ン ギを 米 ド ル に 固 定
す る 固 定 相 場 制 を採 用 す る よう に な っ た(1リ ン ギ = 3.8 米 ド ル に 固 定 ) 。
し か し 、 2005 年 7 月 に は 固 定 相 場 制 を 廃 止 す る こ と を 決 定 、 為 替 制 度 を 管 理 変 動 相 場 制 に 変 更 し
た。
変 動 相 場 制 に 変 更し た 理 由 は 、 そ れ ま で リンギ が 割 安 な 水 準 に 置 か れ た こ とで 輸 出 の 競争力 が 増 し
て 貿 易 黒 字 が 定 着。 外 貨 準 備 も潤 沢 と な り、通 貨 リ ン ギ に 上 昇圧 力 が 強 まっ て い た こ とがあ る 。 マ レ
ー シ ア が 固 定 相 場制 廃 止 の タ イミ ン グ を うかが っ て い た と こ ろに 、 中 国 が通 貨 人 民 元 を対ド ル で 切 り
上 げ る と 発 表 し たた め 、 こ れを 好 機 と と らえて 、 リ ン ギ の 固 定相 場 廃 止に踏 み 切 っ た のだ。
管 理 変 動 相 場 制に 移 行 し て 以来 、 割 安 となっ て い た 通 貨 リ ンギ は 米 ド ルに 対 し て 大 幅に上 昇 し て い
る ( 図 表 6 ) 。 固定 相 場 制 廃止 後 、 2007 年 12 月 ま で の 期 間 に 通貨 リ ン ギ は、 米 ド ル に 対して 12.3%
も上昇した。
輸 出 企 業 の 間 で はリ ン ギ の 上 昇 が 輸 出 競 争力の 低 下 を 招 く と の 懸 念 も 広 が って い る が 、マレ ー シ ア
中 央 銀 行 は 、 通 貨リ ン ギ の 緩や か な 上 昇 を容認 す る 姿 勢 を と っ て い る 。
図表6
通 貨 リ ン ギ の 対ド ル為 替 レ ー ト
リンギ/ドル
4.5
4.0
3.5
リンギ安
3.0
リンギ高
2.5
2.0
95
96
97
98
99
00
01
(出 所 ) マ レ ー シア 中央 銀 行 資 料よ り作 成
6
02
03
04
05
06
07
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( 民 族 間 の 対 立 が マ レ ーシ ア の リ ス ク )
マ レ ー シ ア は、 総人 口 2664 万 人 の う ち マ レ ー 系 が 約 66% 、 中 国 系が 約 26% 、 イ ン ド 系が 約 8 % と
い う 他 民 族 国 家とな っ て い る。
か つ て は 、 土 着民 で あ っ た マレ ー 系 と 華僑な ど の 中 国 系 と の間 に 大 き な経 済 格 差 が 存在し た 。 華 僑
が 裕 福 な 一 方 で 、多 く の マ レ ー人 が 貧 し い生活 を 余 儀 な く さ れ て い た の だ。 経 済 格 差 の問題 は 、 民 族
間 の 対 立 へ と 発 展 す る よ う に な り 、 1969 年 に は 、 中 国 系 と マ レ ー 系 の 間 で 大 規 模 な 人 種 抗 争 が 発 生 、
196 人 も の 死 者 が 出 る と い う 事 態 に な っ た 。
1971 年 、 マ レ ー シ ア の ラ ザ ク 首 相 ( 当 時 ) は 、 マ レ ー 系 と 他 民 族 と の 経 済 格 差 を 是 正 し 、 民 族 間
の 緊 張 を 和 ら げ るた め 、 世 界 でも 類 を み ない独 特 の 政 策 、 「 ブミ プ ト ラ (土 地 の 子 ) 政策」 を 導 入 す
る こ と を 決め た 。
「 ブ ミ プ ト ラ 政策 」 は 、 大 学入 学 や 就 職、株 式 所 有 、 不 動 産 所 有 な ど 社会 生 活 の あ らゆる 面 に お い
て 、 マ レ ー 系 を 優遇 す る と い うシ ス テ ム である 。 マ レ ー 人 に 対す る 優 遇 措置 を 他 の 民 族が問 題 に す る
こ と も 憲 法 で 禁 止し た 。 先 の マハ テ ィ ー ル政権 は 、 こ の 「 ブ ミプ ト ラ 政 策」 を 強 力 に 推し進 め て い っ
た 。 「 ブ ミ プ ト ラ政 策 」 の 過 程で 、 行 政 関係は マ レ ー 系 、 一 般的 な ビ ジ ネス は 中 国 系 、医者 や 弁 護 士
な ど の サ ー ビ ス 関係 は イ ン ド系 と い う よ うに、 民 族 ご と の 職 業 分 化 も 進 んだ 。
「 ブ ミ プ ト ラ 政策 」 は 、 マ レー 人 の 地 位向上 を 実 現 す る こ と に 成 功 し たと い え る が 、副次 的 に 様 々
な 問 題 点 も 噴 出 する よ う に なっ た 。
最 大 の 問 題 は 、 政府 の マ レ ー 系 優 遇 政 策 によっ て 、 か つ て の マ レ ー 人 が 持 って い た 勤 勉さが 失 わ れ 、
マ レ ー シ ア の 国 際競 争 力 の 低 下を 招 い た という こ と だ 。 「 政 府の 優 遇 策 があ る か ら 、 一生懸 命 頑 張 ら
な く て も 大 丈 夫 」そ の よ う な 意識 が 、 マ レー人 の な か で 醸 成 され て い っ たと み ら れ る 。現在 の マ レ ー
人 は 、 ホ ワ イ ト カラ ー の 職 種を 好 み 、 ブ ルーカ ラ ー の 職 種 を敬 遠 す る 傾 向が あ る と も 言われ る 。
マ ハ テ ィ ー ル 元 首 相 は 、 2002 年 に 開 催 さ れ た 「 統 一 マ レ ー 国 民 組 織 ( U M N O ) 」 の 年 次 総 会 に
お い て 辞 意 を 表 明し た が 、 そ の際 、 「 マ レー人 は 、 長 年 特 権 を与 え ら れ てい た に も か かわら ず 、 十 分
な 成 果 を 上 げ る こと が で き な かっ た 」 と 暗に「 ブ ミ プ ト ラ 政 策」 の 失 敗 を認 め る よ う な発言 を し て い
る。
ま た 、 中 国 系 やイ ン ド 系 な ど非 マ レ ー 人の不 満 も く す ぶ っ て お り 、 マ レー シ ア 国 内 の治安 が 不 安 定
化 す る と い っ た 問題 も 出 て きて い る 。
最近では、マレー系や中国系に比べて貧しい人が多いと言われるインド系住民が「ブミプトラ政
策 」 へ の 反 感 を強め て い る 。 2007 年 11 月 に は 、 地 位 の 向 上 を求 め る イ ンド系 住 民 の 大規模 な デ モ 隊
( 約 1 万 人 ) が マレ ー シ ア の警 察 隊 と 衝 突する 事 件 が 発 生 し た。
マ レ ー シ ア の アブ ド ラ 政 権 は、 こ う し たデモ が 民 族 的 な 対 立に 発 展 し ない よ う 、 イ ンド系 住 民 に 対
す る 取 り 締 ま り を強 化 し て いる 。
イ ン ド 政 府 は 、イ ン ド 系 住 民に 対 す る マレー シ ア 政 府 の 弾 圧に 対 し て 懸念 を 表 明 し ており 、 「 ブ ミ
プ ト ラ 政 策 」 は イン ド と マ レー シ ア の 外 交関係に も 微 妙 な 影 を 落 と す よ うに な っ て き た。
( 規 制 緩 和で 外 資 を 積 極的 に 誘 致 す るエジ プト )
「 M E D U S A 」の 「 E 」 の エ ジ プ ト は 、アフ リ カ 大 陸 で は最 大 の イ ス ラム 金 融 国 家 だ。
エ ジ プ ト で は 90年 代 に マ ク ロ 経 済 が 軌 道 に乗り 、 95年 か ら 99年 ま で 年 平 均 5 % を 超 え る高成 長 を 続
7
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け た が 、 パ レ ス チナ 情 勢が 悪 化 し た こ と などか ら 2000年 代 に 入 っ て 景 気 が 低 迷、 雇 用 情勢の 悪 化 に よ
り 失 業 率 は 10% ま で 上 昇し た。
し か し 、 近 年 で は 再 び 成 長が 加 速 し 始 め て お り 、 2006年 の 実 質 G D P は 前 年 比 + 6.8% の 高 い 伸 び
と な っ た 。 マ ク ロ経 済 の 好 調 を反 映 し て カイロ ・ ア レ ク サ ン ド リ ア 証 券 取引 所 の 株 価 指数( C A S E
30) も 上 昇 傾 向 が 鮮 明 と な っ てい る 。 2007年 、 2008年 は 経 済 成 長 率 が さ ら に加 速 す る と見込 ま れ て い
る。
エ ジ プ ト 経 済 が 高成 長 路 線 に 復 帰 し た 要 因とし て 、 ① 観 光 収 入 ・ ス エ ズ 運 河か ら の 収 入・海 外 か ら
の 送 金 が 増 え て いる こ と ② 原 油や 天 然 ガ スの輸 出 が 拡 大 し て い る こ と 、 そし て ③ 政 府 が経済 改 革 の 推
進 に よ っ て 海 外 から の 直 接 投資 が 大 幅 に増えて い る こ と の 3 点 が 挙 げ ら れる 。
観 光 収 入 ・ ス エ ズ運 河 か ら の 収 入 ・ 海 外 からの 送 金 は 、 エ ジ プ ト に と っ て 最大 の 外 貨 獲得手 段 で あ
る 。 エ ジ プ ト は 製造 業 の 国 際 競争 力 が 弱 いこと も あ っ て 、 貿 易収 支 は 慢 性的 な 赤 字 と なって い る が、
こ れ ら の 収 入 に よっ て 貿 易 赤 字が 相 殺 さ れてい る。 た だ 、 こ れ ま で は 観 光収 入 が 不 安 定で、 90年 代 に
は ム バ ラ ク 大 統 領を 批 判 す る イス ラ ム 過 激派組 織 が 、 外 国 人 観 光 客 を 殺 害す る な ど 大 規模な テ ロ 活 動
を 展 開 し た た め 、観 光 産 業 が 大き な 打 撃 を受け た 。 し か し そ の後 、 治 安 部隊 が 取 り 締 まりを 徹 底 す る
よ う に な っ た こ とか ら 過 激 派 組織 は 次 第 に弱体 化 、 99年 3 月 に は テ ロ 活 動の 停 止を 宣 言した 。 治 安 が
改 善 し 、 外 国 人 観光 客 の 安 全 が確 保 さ れ るよう に な っ た こ と を受 け て 近 年は 欧 州 ・ 中 東地域 を 中 心 に
エ ジ プ ト へ の 観 光者 数 が 大 幅に 増 加 し て いる( 図 表 7 ) 。
ス エ ズ 運 河 か ら の収 入 も 、 エ ジ プ ト と 中 国との 貿 易 関 係 が 強 ま っ て い る こ とな ど か ら 、最近 は 急 増
し て い る ( 図 表 8) 。
図表7
エ ジ プ ト へ の 観光 客 数
図表8
千人
100万ドル
10000
4000
9000
3500
ス エ ズ 運 河か ら の収 入
会計年度(7月∼6月)
8000
3000
7000
会計年度(7月∼6月)
2500
6000
5000
2000
4000
1500
3000
1000
2000
500
1000
0
0
89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
(出 所) エジ プ ト 中 央銀 行資 料 よ り 作 成
ま た 、 最 近 の 原 油の 国 際 価 格 の 高 騰 を 受 けて産 油 国 で あ る エ ジ プ ト は 原 油 の輸 出 を 大 幅に増 や し て
い る 。 同 時 に 世 界規 模 で 需 要 の高 ま っ て いる液 化 天 然ガ ス ( L N G ) の 輸出 も 開 始 、 ヨル ダ ン 南 部 の
ア カ バ 発 電 所 に パイ プ ラ イ ン を敷 設 し た 。将来 的 に は 、 パ イ プ ラ イ ン を シリ ア や レ バ ノンに ま で 拡 張
す る 予 定 だ 。 政 府は 原 油 や 液 化天 然 ガ ス の輸出 促 進 を 図 る こ と で 、 慢 性 的な 貿 易 赤 字 を解消 し よ う と
している。
そして、エジプトの高成長の最大の要因は、経済改革による外国資本の導入だ。エジプト政府は
8
(無断転用禁止)
2004年 9 月 に 輸 入 関 税 の 大 幅 引き 下 げ を 実施。 こ れ に よ っ て 関税 率 は 平 均 15% か ら 9 %まで 引 き 下 げ
ら れ た 。 と く に 自 動 車 関 連 の 関 税 率 の 引 き 下 げ 幅 が 大 き く 、 排 気 量 が 1600c c の 乗 用 車 で は 従 来 の
104% か ら 40% ま で 関 税 率 が 引 き 下 げ ら れ た 。 部 品 や 原 材 料 の 関 税 率 も 大 幅 に 引 き 下 げ ら れ た の で 、
こ れ が 海 外 か ら 部品 ・ 原 材 料 を調 達 す る 外国企 業 の 進 出 増 加 につ な が っ てい る 。 ま た 、政府 は 、 法 人
税 を こ れ ま で の最大 42% か ら 20% に 引 き 下 げた ほ か 、 法 人 に 対す る 売 上 税の 一 部 免 除 も認め た 。
外 国 企 業 に 対 す る優 遇 策 が 功 を 奏 し て 、 エジプ トへ の 直 接 投 資 額 は 急 増 し てい る 。 2005年 度 の 対 内
直 接 投 資 額 は 61.1億 ド ル と 04年 度 の 実 績 ( 39億 ド ル ) に 比 べ て 1.6倍 の 大 幅 増 加 と な っ た ( 図 表 9 ) 。
エ ジ プ ト 政 府 は 外国 企 業 の 導 入 に よ っ て 国営企 業を 民 営 化 し 、 製 造 業 な ど の国 際 競 争 力を強 化し て
いく方針だ。
エ ジ プ ト は 、 観 光収 入 や ス エ ズ 運 河 か ら の収入 に 頼 る だ け で は な く 、 製 造 業を 育 成 し 、より バ ラ ン
ス の と れ た 産 業 構造 に シ フ トす る こ と で 持続的な 高 成 長 が 視 野 に 入 っ て くる だ ろ う 。
な お 、 エ ジ プ ト では 、 金 融 機 関 に 「 イ ス ラム銀 行 」 と い う 特 別 な 区 分 を 設 けて い な い が、「 フ ァ イ
サ ル ・ イ ス ラ ミ ッ ク バ ン ク ・ オ ブ ・ エ ジ プ ト 」 ( 1979年 5 月 7 日 設 立 、 総 資 産 額 は 約 20億 ド ル ) や
「 エ ジ プ シ ャ ン ・サ ウ ジ ・フ ァ イ ナ ン ス ・バン ク 」 ( 1988年 6 月 21日 設 立 、 エ ジ プ ト国 内に 11の 支 店
を 持 つ ) 、 「 ザ ・ユ ナ イ テ ッ ド・ バ ン ク 」( 2006年 6 月 に 既 存 の 3 行 が 合 併し て 誕生 ) な どが イ ス ラ
ム 金 融 を 手 が け てい る。
現 在 、 エ ジ プ ト では 「 タ カ フ ル 」 と 呼 ば れるイ ス ラ ム 保 険 を 振 興 し よ う と いう 機 運 が 高まっ て お り 、
日 本 の 保 険 会 社 がエ ジ プ ト に「 タ カ フ ル」を設 立 す る 動 き も 出 て き て い る。
図表9
エ ジ プ ト へ の 直接 投 資 流 入 額
100万ドル
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
(出 所) エジ プ ト 中 央銀 行資 料 よ り 作 成 、 各 年 と も エ ジプ ト会 計 年 度 (7 月か ら翌 年 6月 まで )の 数 字 。
9
(無断転用禁止)
( 原 油 依 存 体 質 か ら の 脱却 に 成 功 し た ドバ イ)
「 M E D U S A」 の 「 D U 」の ド バ イ はどう か 。 独 立 し て か ら こ れ ま での間 、 U A Eはオ イ ル マ ネ
ー の 恩 恵 を 受 け て急 成 長 し てき た 。 2006 年 の 実 質 経 済 成 長 率 は前 年 比 9.7% 増 だ 。 原 油の 輸出 で 外 貨
を 稼 ぎ 出 し て い るた め 、 経 常収 支 の 黒 字 額はG D P 比 で 16.3% に 及 ぶ 。 原 油の 埋 蔵 量 は 2006 年 末 時
点 で 130 億 ト ン に 達 し 、 世 界第 5 位 。 また 、 2006 年 の 原 油 の 生 産 量は 1 億 3830 万 ト ン で 世界 第 9 位
と な っ て い る。
U A E は オ イ ル マネ ー を 利 用 し て イ ン フ ラ整備 や 他 産 業 の 育 成 を 積 極 的 に 進め る よ う になっ て い る 。
U A E の な か で も、 特に 注 目 さ れ る の が ドバイ で あ る。 ド バ イ は 7 首 長 国の な か で も っとも 早 い ス ピ
ー ド で 変 貌 し 、 世界 中 の ヒ ト ・モ ノ ・ カ ネが流 入 す る よ う に な っ た 。 日 本の 企 業 も 、 家電メ ー カ ー の
ソ ニ ー を は じ め 200 社 以 上 が 楽 園 都 市 ド バイに 進 出 し て い る 。
か つ て は 、 ド バ イの 経 済 活 動 全 体 の 半 分 近くを 石 油 収 入 が 占 め て い た の が 、現 在 は 石 油以外 の 産 業
が 経 済 全 体の 97% を 占 め 、 石 油 依存 体 質 か らの 脱 却 に 成 功 し た。 ド バ イ の人 口 は 現 在 、 140 万 人 程 度
で 、 そ の う ち 、 U A E の 人 が 占 め る 割 合 は 20% に す ぎ な い 。 イ ン ド や パ キ ス タ ン 、 イ ラ ン な ど か ら
や っ て く る 外 国 人労 働 者 が 経 済活 動 を 担 ってい る。 ド バ イ は 宗 教 に 対 し て寛 容 で あ る ため、 宗 派 の 異
な る イ ス ラ ム 教 徒で あ っ て も、 関 係 な く 働くこ と が で き る 。
ド バ イ で は 金 融 セク タ ー の 発 展 も 著 し い 。かつ て 中 東の 金 融 の 中 心 は バ ー レー ン で あ った が 、 い ま
で は ド バ イ が バ ーレ ー ン に 変 わる 新 し い 金融セ ン タ ー と な り つ つ あ る 。 ドバ イ 政 府 も 、金融 業 の 育 成
に 力 を 入 れ て お り、 2015 年 ま で に 金 融 を ド バ イ 経 済 の 中 心に する 方 針 を 打ち 出 し て い る。 2007 年 8
月 に は 、 ド バ イ 証券 取 引 所 とド バ イ 国 際 金融取 引 所 の 持 ち 株 会社 と し て ドバ イ 取 引 所 が発足 し た 。
と こ ろ で 、 イ スラ ム 金 融 債 (ス ク ー ク )は満 期 ま で 保 有さ れ る ケ ー ス が多 い が 、 な かには 、 市 場 で
売買されているものもある。スクークの流通市場で最大となっているのがUAE(アラブ首長国連
邦 ) だ ( 図 表 10) 。 2006 年 の 年 間 取 引 高 は 242.4 億 ド ル に 達 し 、 全 世 界 の ス ク ー ク 取引高 ( 336.0
億 ド ル) の 72.1% を 占 め た 。
図 表 10
ス ク ー ク の取 引高 ( 2006年 )
100万 ド ル
25000
20000
15000
10000
5000
ク ウ ェー ト
中国
10
バー レー ン
(出 所 ) I I F M資 料よ り 作 成
ブ ルネ イ
日本
カ ター ル
イ ンド ネ シ ア
ア
サウ ジ アラ ビ
マ レー シ ア
UAE
0
(無断転用禁止)
( 世 界 最 大 の 原 油 生 産 国サ ウ ジ ア ラ ビ ア)
「 M E D U S A 」 の 「 S A 」 の サ ウ ジ ア ラ ビ ア は 世 界 最 大 の 産 油 国 と な っ て い る 。 2006 年 の 原 油
生 産 量 は5 億 1460 万 ト ン で 、 世 界 全 体 の 原 油生 産 の 実 に 13.1% を 占 め た 。 原 油 の 埋 蔵 量 も世 界 第 1
位 を 誇 り 、 2006 年 末 ま で に 発 見 さ れ た埋 蔵 量は 363 億 ト ン に も 達 す る( 世 界 シェ ア は 22% ) ( 図 表
11) 。 そ の ほ か 、 天 然 ガ ス も豊 富 に 産 出 する。
サ ウ ジ ア ラ ビ ア では 、 原 油 の 国 際 価 格 の 高騰に よ っ て 原 油 の 輸 出 金 額 が 大 幅に 増 加 し ており 経 済 は
好調だ。
原 油 関 連 産 業 の 収益 増 で 税 収 が 伸 び て い るため ( サ ウ ジ ア ラ ビ ア の 実 質 G DP の 3 割 が原油 関 連 産
業 に よ っ て 稼 ぎ 出さ れ る ) 、 これ ま で赤 字基調 に あ っ た 政 府 の 財 政 収 支 も 2004 年 以 降 は 大 幅 に 改 善
し て お り 、 2006 年 は 過 去 最 高 の 黒 字 額と な った 。
政 府 は 、 巨 額 の 財政 黒 字 の 一 部を 、 公 務 員の給 与 引 き 上 げ ( 2005 年 に 15% の 引 き 上 げ) や 国 内 ガ
ソ リ ン 価 格の 値 下げ ( 2006 年 5 月か ら 30% の 値 下 げ ) と い っ た か た ち で国 民 に 還 元 してお り 、 購 買
力 の 改 善 し た 国 民は 、 中 産 階級 を 中 心 に 高額消 費 を 増 や し て い る 。
富 裕 層 の 一 部 は 海外 旅 行 を 楽 し む よ う に なって お り 、 イ ン ド な ど 周 辺 の ア ジア 諸 国 を 積極的 に 訪 問
し て い る 。 た だ 、人 口 が 急 増 する な か 、 人口の 過 半 を 占 め る 若年 労 働 力 が、 労 働 市 場 に続々 と 参 入 し
て き て い る た め 、景 気 が 拡 大す る な か に あって も職 に つ け な い 人 は ま だ まだ た く さ ん いる。
サ ウ ジ ア ラ ビ ア は原 油 輸 出 に よ っ て 稼 ぎ 出した 巨 額 の オ イ ル マ ネ ー を 利 用 して 、 観 光 産業や 金 融 産
業 な ど 原 油 以 外 の産 業の 育 成を 図 っ て い る。
外 資 を 呼 び 込 む ため の 、 イ ン フ ラ 投 資 も 活発に 行 っ て お り 、 た と え ば 、 ペ ルシ ャ 湾 と 紅海を 結 ぶ 総
延 長 約 1000 キ ロ メ ー ト ル の 鉄 道 を 建設 す る 予定 だ 。 サ ウ ジ ア ラビ ア は 2005 年 末 に W T O (世 界 貿 易
機 関 ) へ の 加 盟 を実 現 、 外 資 に対 す る 規 制緩和 策 を 相 次 い で 打ち 出 し て おり 、 外 国 企 業にと っ て は 、
サ ー ビ ス 業 を 中 心に サ ウ ジ アラ ビ ア に 進 出しや す い 状 況 が 整 いつ つ あ る 。
外 資 導 入 を テ コ に、 原 油セ ク タ ー 以 外 の 民間 産 業 が 台 頭 し て く れ ば 、 サ ウ ジア ラ ビ アは原 油 の 国 際
価 格 の 動 向 に 左 右さ れ る こ とな く 、 持 続 的な高 成 長を 達 成 す る こ と が 可 能に な る だ ろ う。
世 界 最 大 の 産 油 国で 、 湾 岸 協 力 会 議 ( G CC) の 加 盟 国 で も あ る 。 サ ウ ジ アラ ビ ア は 原油輸 出 に よ
っ て 稼 ぎ 出 し た 巨額 の オ イ ル マネ ー を 利 用して 、 観 光 産 業 や 金融 産 業 な ど原 油 以 外 の 産業の 育 成 を 図
っ て い る 。 外 資 を呼 び 込 む た めの 、 イ ン フラ投 資 も 活 発 に 行 って お り 、 たと え ば 、 ペ ルシャ 湾 と 紅 海
を 結 ぶ 総 延 長 約 1000キ ロ メ ー ト ル の 鉄 道 を建設 す る予 定 だ 。 サ ウ ジ ア ラ ビア は 05年 末 に WT O (世 界
貿 易 機 関 )へ の 加盟 を 実 現 、 外資 に 対 す る規制 緩 和 策 を 相 次い で 打 ち 出 して お り 、 外 国企業 に と っ て
は 、 サ ー ビ ス 業 を中 心 に サ ウジ ア ラ ビ アに進出 し や す い 状 況 が 整 い つ つ ある 。
11
(無断転用禁止)
図 表 11
原 油 埋 蔵 量 の 世界ラ ン キ ン グ ( 2006年 )
10億トン
40
35
30
25
20
15
10
5
メキ シ コ
カター ル
中国
カ ナダ
米国
ナ イ ジ ェリ ア
リビ ア
カ ザ フ スタ ン
ロシ ア
ヴ ェネ ズ エラ
UAE
ク ウ ェー ト
イラク
イラ ン
サ ウ ジ アラ ビ ア
0
(出 所) 英国 B P社 資料
( ド バ イ と サ ウ ジ ア ラ ビアの リ ス ク は イン フレ )
U A E ( ア ラ ブ首 長 国 連 邦 ) と サ ウ ジ アラビ アの リ ス ク は 、 イ ン フ レ の 問題 で あ る 。 現在 、 両 国
と も 自 国 通 貨 を 米国 の ド ル に 連動 さ せ る為替制 度 を 採 用 し て い る が 、 サ ブプ ラ イ ム問 題の影 響 で ド ル
の 価 値 が 他 通 貨 に対 し て 下 落 する な か で 、UA E と サ ウ ジ ア ラ ビ ア の 通 貨価 値 も 下 落 するよ う に な っ
てきた。
そ の 結 果 、 ユ ー ロな ど ド ル 以 外 の 通 貨 建 てでモ ノを 輸 入 す る 際 の 輸 入 物 価 が上 昇 し て 国内 で 高 イ ン
フ レ が 発 生し て いる 。
( 「 M E D U S A 」 で はサ ブ プ ラ イ ム ・シ ョッ ク後 も 株 価 が 上 昇 を 続け る )
「 M E D U S A 」を 構 成す る 4 カ 国 は い ずれも イ ス ラ ム教 の 国 家 で あ る た め、 中 国 の 「一人 っ子 政
策 」 の よ う な 産 児制 限 策 を と って お ら ず 、ハイ ・ ス ピ ー ド で 人口 が 増 加 して い る 。 2001年 か ら 2006年
に か け て の 人 口 増 加 率 は 、 マ レ ー シ ア が 年 率 + 1.9 % 、 エ ジ プ ト が 年 率 + 1.8% 、 U A E が 年 率 +
4.4% 、 サ ウ ジ ア ラ ビ アが 年 率 + 2.5% だ 。 国際 連 合 の予 測 ( 06年 の 中 位 推計) で は 、 今後も 人 口 の 大
幅 な 増 加 が 見 込 ま れ て お り ( 図 表 12を 参 照 ) 、 「 M E D U S A 」 全 体 の 人 口 規 模 は 、 2006 年 の 1 億
2870万 人 か ら 2050年 に は 2 億 1440万 人 へ と 、 1.7倍 に 拡 大 す る こ と に な る 。 「 M E D U S A 」 で は 、
中 長 期 の 経 済 成 長に 必 要 な 労働 力 人 口 の 増加が 期 待で き る と いう わ け だ 。
ま た 「 M E D U SA 」の 4 カ 国 は 、 「 イ スラム金 融 」 と い う 独 自 の 金 融 シ ステ ムで 相 互に つ な が っ
て お り 、 巨 額 の オイ ル マ ネ ー を背 景に マ ネーの 移 動 を伴 い な が ら 相 互 補 完的 に 発 展 し ていく こ と が 予
12
(無断転用禁止)
想される。
サ ブ プ ラ イ ム ロ ーン 問 題 の 深 刻 化 に よ っ て米国 を 中 心 と し た 先 進 諸 国 で は 、先 行 き 経 済の減 速 懸 念
が 強 ま っ て い る が、 米 国 の サ ブプ ラ イ ム 問題の 影 響 を 受 け づ ら い と い う 点で も 、 「 M EDU S A 」 は
有 望 な 投 資 先 グ ルー プ と 言 える だ ろ う 。
実 際 、 「 M E D US A 」 各 国の 株 価 の 推 移を示 し た 図 表 13( 2007年 末 ま で の数 字 ) に よ ると 、 米 国
で サ ブ プ ラ イ ム 問題 が 深 刻 化 した 2007年 後 半 以 降 、 「 M E D U S A 」各 国の 株 価 が む しろ上 昇 傾 向 を
強 め て い る こ と が分 か る 。 2007年 の 年 初 か ら 2007年 末 ま で の 株 価 の 上 昇 倍 率を み ると 、 マ レー シ ア の
ク ア ラ ル ン プ ー ル総 合 株 価 指 数が 1.3倍 、 エ ジ プ ト の ヘ ル メ ス 株価 指 数 が 1.5倍 、 ド バ イ の総合 株 価 指
数 が 1.4倍 、 サ ウ ジ ア ラ ビ ア の タ ダ ウル 全 株 指数 が 1.4倍 と な っ た 。
以上
図 表 12
「 M E D U S A」 ( メ デ ュ ー サ) の 人 口 規 模の 推 移
(マレーシア)
( エ ジ プ ト)
千人
45000
千人
140000
40000
120000
35000
国際連合の予測(中位推計)
国際連合の予測(中位推計)
100000
30000
25000
80000
20000
60000
15000
10000
40000
5000
20000
0
90
95
00
05
10
15
20
25
30
35
40
45
0
50
90
95
00
( ア ラ ブ首 長 国 連 邦 )
10
15
20
25
30
35
40
45
50
40
45
50
(サウジアラビア)
千人
9000
千人
50000
8000
45000
7000
05
40000
国際連合の予測(中位推計)
国際連合の予測(中位推計)
35000
6000
30000
5000
25000
4000
20000
3000
15000
2000
10000
1000
5000
0
90
95
00
05
10
15
20
25
30
35
40
45
0
50
90
(出 所 ) 国 際 連 合資 料よ り 作 成
13
95
00
05
10
15
20
25
30
35
(無断転用禁止)
図 表 13
「 M E D U S A」の 株 価 の 推 移
(マレーシア)
(エジプト)
ポイント
ポイント
1500
100000
1400
90000
80000
1300
70000
1200
60000
1100
50000
1000
40000
900
30000
800
20000
10000
700
0
600
04
05
06
04
07
05
(ドバイ)
06
07
( サ ウ ジ ア ラ ビ ア)
ポイント
ポイント
9600
20600
8600
18600
16600
7600
14600
6600
12600
5600
10600
4600
8600
3600
6600
2600
4600
1600
2600
600
600
04
05
06
07
04
05
06
07
( 注 ) マ レ ー シ ア の 株 価 は 、 ク ア ラ ル ン プ ー ル証 券 取 引 所 の 総 合 株 価 指 数 。 エ ジ プ ト の 株 価 は 、 カ イ ロ ・ ア レ ク サ
ンドリア証券取引所のヘルメス株価指 数。ドバイの株価は、ドバイ金融市場の総合株価指数。サウジア ラビア の株
価は サ ウ ジ ア ラ ビア 証券 取 引 所 のタ ダウ ル全 株 指数 。
14