ADB 財務概要 2014 - Asian Development Bank

2014
ADB 財務概要
ASIAN DEVELOPMENT BANK
ADB
財務概要
2014
© 2014 アジア開発銀行
無断転載禁ず。2014年発行。
印刷:フィリピン
出版物番号 ARM146726-3
本書において表明される見解は著者の見解であり、アジア開発銀行 (ADB)
もしくはその総務会または総務会に代表される各国政府の見解や政策を必ず
しも反映するものではない。
本書では、用いられるデータの正確性の確保に全力を尽くしている。ADB
の出版物におけるデータは、出版時期の違い、データの情報源や解釈など
により差異が生じることもある。データの使用において生じる結果につい
て、ADBは一切責任を負わない。
本書において特定の領域または地域に何らかの呼称をつけ、もしくは言及
し、または「国」という言葉を使うことがあっても、ADBはそれをもって領
域または地域の法的その他の地位について何らかの判断を下すことを意図し
ていない。
情報の印刷または複製は、個人的および非商業目的においてのみ、かつADB
への適切な言及を行う場合にのみ奨励される。利用者がADBの明示的な書面
による同意を得ずに、本書を再販売・再頒布し、または商業目的で二次的著
作物を作成することは禁じられる。
注:
本書で「$」または「ドル」と言う場合には米ドルを指す。
写真の出所はすべてADBフォト・ライブラリー。
6 ADB Avenue, Mandaluyong City
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目次
略語・頭字語
iv
ADB財務概要2014
1
アジア・太平洋地域におけるADB
2
ADBの業務
4
2013年の業務成果と主な出来事
6
信用の基盤
7
借入業務
17
金融商品 21
特別基金
28
ADB加盟国
29
主要連絡先
30
ADBオンライン
33
iii
略語・頭字語
ADB 財務概要 2014
ADB
CSF
DMC
ECP
LBL
LCL
LIBOR
MFF
OCR
OECD
PCG
RBL
TFP
US
VaR
iv
アジア開発銀行
景気循環相殺支援ファシリティ
開発途上加盟国
ユーロ・コマーシャル・ペーパー
LIBORベースの融資
現地通貨建て融資
ロンドン銀行間取引金利
マルチトランシェ融資ファシリティ
通常資本財源
経済協力開発機構
部分信用保証
結果連動型融資
貿易金融プログラム
米国
バリューアットリスク
ADB財務概要2014
アジア開発銀行 (ADB) は、健全な資本基盤に基づ
く国際開発金融機関です。ADBは、全ての人々に恩
恵が行き渡る (インクルーシブな) 成長、環境に
調和した持続可能な成長、および地域統合を通じ
て、アジア・太平洋地域の貧困を削減することを
目標としています。
ADBは、その出資者である加盟国が署名した「アジア開発銀行設立
協定」 (以下「ADB設立協定」) によって、1966年に設立されまし
た。2013年末現在、加盟国は67カ国・地域で、うち48カ国・地域は
アジア・太平洋地域の国です。また、23カ国が経済協力開発機構
(OECD) に加盟しています。
ADBの本部はフィリピンのマニラにあります。この他にも、北
米 (ワシントンDC) 、欧州 (フランクフルト) および日本 (東京)
の代表事務所など、域内外に事務所が設置されています。
2013年末現在の職員数は2,969名で、その出身国は全加盟国・地域67
のうち61にのぼります。
1
アジア・太平洋地域にお
けるADB
ADBのビジョンは「貧困のないアジア・太平洋地
域」です。
ADBの使命は、開発途上加盟国が貧困を削減し、人
々の生活を向上できるように支援することです。
ADBは、全ての人々に恩恵が行き渡る (インクルーシブな) 経済成
長、環境に調和した持続可能な成長、および地域統合という3つの戦
略的課題に支援を集中することにより、ビジョンの実現に向けた実
質的な貢献を目指しています。
ADBは2008年に採択した長期戦略の枠組み「ストラテジー2020」の下
で、2020年までの業務の指針となる自らの役割と戦略的方向を定義
し、開発途上加盟国に対するより適切で実効性のある支援を進めて
います。
2
表1:ADBの概要
数字は各年の年末時点のもの、または年間合計額 (単位:百万ドル)
2013
2012
2011
2010
OCR融資承認額a
ソブリン
8,761
8,277
8,642
8,197
ノンソブリン
1,425
1,007
1,250
815
5,178
6,212
5,621
5,272
807
553
715
673
849
670
614
952
OCR融資実行額
ソブリン
ノンソブリン
グラントa
–
200
–
–
保証a
サプライチェーン・ファイナンス
35
403
267
390
出資a
142
131
214
235
技術協力a
156
151
146
173
6,648
8,272
7,694
5,311
163,840
163,512
163,336
163,843
応募済資本
162,809
163,129
162,487
143,950
年間借入総額
12,725
15,067
14,446
14,940
借入残高b
61,615
64,762
58,257
51,822
469
465
587
548
営業利益
アジア・太平洋地域におけるADB
協調融資
授権資本
- = 該当データなし、OCR = 通常資本財源。
a
中止された融資、グラント、出資、保証および技術協力を除く。
b
2012年以降の金額には未収の利息および手数料が含まれる。
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
出所:アジア開発銀行年次報告2013。
3
ADBの業務
ADBは、使命達成のため、様々な活動やイニシアテ
ィブを通じて、開発途上加盟国の経済成長と社会
開発を推進しています。
ADBは、開発途上加盟国内の融資プロジェクトおよびプログラムに対
して融資を行うとともに、技術協力、グラント (無償援助) 、保証
および出資の各業務を行っています。
また、ADBは政策対話や助言を行うほか、公的資金、民間資金および
輸出信用機関との協調融資を通じて資金を動員し、援助による開発
効果の最大化を図っています。業務の財源は通常資本財源 (OCR) と
特別基金です。
OCRと特別基金は、ADB設立協定により、常に分離して管理および運
営することが義務づけられています。
通常資本財源
ADBのOCR業務は多岐にわたり、農業・天然資源、教育、エネルギ
ー、金融、保健・社会保障、産業・貿易、公共政策、運輸・情報通
信技術、マルチセクター、ならびに上水道・都市インフラの各セク
ターにわかれます。OCR融資は基本的に、比較的高い水準の経済開発
を達成した開発途上加盟国が対象です。
ADBが設立以来2013年末までに承認したOCR融資の累計額 (中止分お
よび減額分を除く) は1,554億9,100万ドルにのぼります。2013年末
現在、OCR融資の残高、発行済み融資の未実行額および未発効融資の
合計は851億8,500万ドルとなっています。このうち92.7%は公共セ
クター (加盟国政府および政府の保証を受けた政府機関その他の公
的機関) に対するソブリン融資です。約7.3%は民間セクターの企
業、金融機関および政府保証のつかない特定の公共セクターの団体
に対するノンソブリン融資です。
4
OCRの財源 OCRの財源には、払込資本、利益剰余金 (準備金) およ
び借入金が含まれます。ADBはOCR融資業務の財源を調達するため、
各国の資本市場および国際資本市場から借入を行っています。
ADBの債務証券は、主要な国際信用格付け機関から最高の投資格付け
を得ています。
表2:投資格付け
機関
格付け
ムーディーズ・インベスターズ・サービス
Aaa
スタンダード・アンド・プアーズ
AAA
フィッチ
AAA
ADBの業務
5
2013年の業務成果と
主な出来事
(カッコ内は2012年実績)
ADBは設立以来、良好な財務実績を毎年達成し続けており、融資のデ
フォルト率はきわめて低い水準にとどまっています。2013年の営業
利益は4億6,900万ドルでした (2012年は4億6,500万ドル)。
融資 (OCR) 2013年のOCRからの融資承認総額は101億8,600万ドル
(2012年は92億8,400万ドル) で、うち14億2,500万ドル (2012年は10
億700万ドル) がノンソブリン案件でした。
出資 (OCR) 出資の承認総額は1億4,200万ドル (2012年は1億3,100万
ドル) でした。
借入 ADBは、中長期資金として119億7,500万ドル (2012年は132
億1,700万ドル)、短期資金として25億1,800万ドル (2012年は56億
8,400万ドル) を調達しました。
6
信用の基盤
ADBの資本基盤は、債券投資家の皆様に最高水準の
安全性を提供します。
加盟国政府の支払保証を得ている堅実なバランスシート
応募済資本は、払込資本と請求払い資本から成っています。
払込資本は、ADBの融資を含むOCR業務に利用可能な資本金の自己資
本部分を構成します。これは利益剰余金によって補完され、借入金
により補強されます。
請求払い資本は、ADBの借入先の大規模な債務不履行という不測の事
態が発生した場合に、ADBの債権者 (主にADB債券を保有する投資家
とADB保証の所有者) 保護を目的として利用することができます。し
かし、過去にADBが請求払い資本の実行を請求した例はありません。
ADBの出資国は、アジア・太平洋地域の48カ国・地域、および、域外
の19カ国です。各出資国は、ADBの全ての決定権限を有する総務会に
代表者 (総務) を派遣しています。2013年末現在、出資比率で見た
ADBの5大出資国は日本 (全体の15.7%)、米国 (15.6%)、中国 (6.5%)
、インド (6.4%) およびオーストラリア (5.8%) です。OECD加盟国
が全体に占める割合は応募済資本の64.6%、議決権の58.5%です。
7
表3:資本構成
各年末時点 (単位:百万ドル)
2013
2012
2011
2010
応募済資本
162,809
163,129
162,487
143,950
請求払い資本
154,640
154,951
154,336
136,535
払込資本
8,169
8,178
8,151
7,415
うち差引き調整分
2,284
2,959
3,493
3,500
差引き後払込資本
5,885
5,219
4,658
3,915
利益剰余金
11,253
11,201
11,876
11,964
計
17,138
16,420
16,534
15,879
借入残高
(スワップ後)
61,634
60,517
54,350
48,121
総資本
78,772
76,937
70,884
64,000
出所:アジア開発銀行年次報告2013。
表4:出資比率
ADB 財務概要 2014
2013年末時点
OECD加盟国
%
%
日本
15.7
中国
6.5
米国
15.6
インド
6.4
オーストラリア
5.8
インドネシア
5.2
カナダ
5.3
マレーシア
2.7
韓国
5.1
フィリピン
2.4
ドイツ
4.3
パキスタン
2.2
フランス
2.3
タイ
1.4
英国
2.1
台湾
1.1
イタリア
1.8
バングラデシュ
1.0
ニュージーランド
1.5
その他域内国
6.6
オランダ
1.0
その他域外国
4.1
合計
64.6
OECD = 経済協力開発機構。
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
8
開発途上加盟国
35.4
堅実な財務管理
ADBは強力なガバナンスと堅実な財務管理により、金融市場における
借入人として最高水準の信用を得ています。
ADBの強固な財務体質を支えているのは次の2つの基本原則です。
•• 融資限度枠:ADBの融資政策に基づき、融資実行残高、出資承認
額およびADBが請求されうる保証の現在高総額の合計は、毀損し
ていない応募済資本、準備金および剰余金 (特別準備金を除く)
の合計額を超えることはできません。
•• 借入限度枠:ADBの借入政策に基づき、総借入残高は、非借入加
盟国からの請求払い資本、払込資本および準備金 (剰余金を含
む) の合計額を超えることはできません。
ADBは、堅実な財務管理政策によって融資および借入の総額を常にこ
れらの限度枠内に余裕を持って維持しています。2013年末現在、ADB
の融資実行残高、出資承認額およびADBが請求されうる保証の現在
高総額の合計は融資限度枠の31.1%、総借入残高は借入限度枠の
50.0%でした。
信用の基盤
ADBの投資戦略の主目的は、流動性と投資資金の安全性を最適水準に
維持することです。ADBはこの目的を踏まえた上で、投資収益の最大
化に努めています。その結果、ADBの流動資産ポートフォリオは慎重
かつ堅実に運用されています。流動資産の投資は、政府その他の公
的機関の債券、格付けの高い銀行や金融機関の定期預金その他の無
条件の債券、および限定的な規模において、格付けがA-以上の社債
の形で保有されています。
流動資産は24種類の通貨で運用され、目的別のポートフォリオに分
けて管理されています。運転資本ポートフォリオ (業務用現金ポー
トフォリオおよび現金クッション・ポートフォリオ) は、ADBが必要
とする短期的キャッシュ・フローに利用され、借入金を融資実行ま
で保有しておくことを目的としています。裁量的流動資産の資金は
借入により調達されます。その目的は、キャッシュ・フローのニー
ズが生じる前に借入を行い、多額の借入の集中から生じる借り換え
リスクを回避し、資本市場におけるプレゼンスを平準化することに
より、ADBの資金調達プログラムを柔軟に実施できるようにすること
です。株式で調達される中核流動資産は、ADBが通常条件およびスト
レス下において18カ月分の現金を継続的に供給できるよう、最低限
の正味現金必要額を確保できる ようにするものです。中核流動資産
9
ポートフォリオは、流動性の緩衝装置という主目的達成のために運
用されます。同資金は主に株式で調達され、2013年末現在、同ポー
トフォリオにおける主な通貨の平均運用期間は2.1年でした。
表5:流動資産ポートフォリオの年末時点の残高と収益率
年末時点の残高a
(単位:百万ドル)
中核流動資産
ADB 財務概要 2014
2013
2012
2013
2012
15,890
15,012
1.9
2.3
0.2
2.1
222
212
0.1
0.1
0.1
0.1
現金クッション・ポートフ
ォリオ
2,778
1,412
0.4
0.5
0.4
0.5
裁量的流動資産
5,981
7,091
0.3b
0.4b
0.3b
0.4b
2.7
2.7
0.7
1.4
合計
b
2012
公正価値
業務用現金ポートフォリオ
その他
a
2013
収益率 (年率・%)
償却原価
543
603
25,414
24,330
販売契約の下で購入した証券、買い戻し契約の下で移転された証券および未決済の取引を含む。流動資産管理
再
の継続的実施により、ポートフォリオの構成は年ごとに変動することがある。
資金調達コストに上乗せされるスプレッド。
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
償却原価収益率は収支一覧表に記載される投資収入および実現損益に基づく。公正価値収益率には、その他の
包括的損益の一部として報告される未実現損益が含まれ、市場環境に応じて変動する。
包括的リスク管理
ADBはその業務において、財務リスク、業務リスク、その他の組織に
関わるリスク等、様々なリスクに直面します。ADBのリスク管理体制
は、ガバナンス、政策およびプロセスという3つの要素を中心に構成
されています。ガバナンスを担う最高機関は理事会で、ADBのリスク
選好度を決定するリスク関連政策の検討と承認を行います。ADBは独
立したリスク管理部を設置しており、様々な管理委員会がADB全体に
関わるリスク対策の監督や、理事会と総裁に付託される関連案件の
承認を担当しています。ADBのリスク管理体制にはリスク委員会が含
まれ、同委員会はADBのリスクについて高レベルの監督を行い、リス
ク政策や対策を総裁に勧告します。
ADBは、業務ポートフォリオの既存案件の信用度をモニターし、新規
ノンソブリン案件についてはリスク評価を行い、必要な場合は問題
案件の解決に責任を持って取り組みます。ADBはまた、カウンターパ
ーティの信用度、金利リスクや為替リスクといった、資産運用業務
における市場リスクや財務リスクについてもモニタリングを行って
います。さらに、組織全体のオペレーショナル・リスク管理フレー
10
ムワークを開発しています。ポートフォリオ全体について、ADBは各
種の限度額や集中度をモニターし、貸倒引当金を積み立て、一括準
備金を含む貸倒引当金の必要額を計算し、適正資本量を評価してい
ます。
ADBは使命を果たす上で、信用リスク、市場リスク、流動性リスクお
よびオペレーショナル・リスクを負うことになります。このセクシ
ョンでは、これらのリスクに加えて、ADBの適正資本量 (予期せぬ損
失に対する最終的な防衛手段) と資産・負債管理を取り上げます。
信用リスク-ソブリン
ソブリン信用リスクとは、中央政府の保証を有するいわゆるソブリ
ンの借入人または保証人が融資または保証にかかる債務を履行でき
なくなるリスクを指します。ADBは貸倒引当金および保守的な適正資
本量の確保を通じてソブリン信用リスクを管理しています。ADBはこ
れまでOCRを財源とするソブリン業務において元本の貸し倒れを経験
したことはありません。返済の遅延があった場合でも、借入国は一
般的に債務の履行を再開しており、ADBがOCR財源からのソブリン融
資を償却せざるを得なくなったことは、これまで1度もありません。
信用の基盤
ADBでは、特定案件に問題があると判断した場合、利益を財源として
準備金を積み立てています。また、融資業務において予想される平
均的な損失を相殺する貸倒引当金を、バランスシートの自己資本の
部に積み立てています。準備金は予想される将来の返済能力に基づ
いて、貸倒引当金はソブリン借入人の国際開発金融機関に対するデ
フォルトの経験に基づいて設定されます。準備金と貸倒引当金の合
計額は、ADBのソブリン業務において予想される損失額の推定値に相
当します。
信用リスク・株価リスク-ノンソブリン
ノンソブリン信用リスクとは、中央政府による保証がない案件にお
いて、借入人が融資または保証にかかる債務を履行できなくなるリ
スクを指します。ADBが活動している地域には経済状況が不安定なと
ころもあるため、ADBのノンソブリン信用リスクは比較的大きいと考
えられています。また、ADBの融資はエネルギーおよび金融セクター
に集中しています。ADBは様々な政策型措置を通じて、これらのリス
クを管理しています。
投資委員会とリスク委員会がノンソブリン・ポートフォリオのリス
ク管理を監督します。投資委員会はすべての新規ノンソブリン案件
について信用価値や金利その他の諸条件を審査します。リスク委員
会は全体的なポートフォリオ・リスクと信用価値が悪化した個別案
件をモニターするほか、ポートフォリオのリスク管理政策の変更と
毀損案件に引き当てる準備金を承認します。
11
ADBはノンソブリン信用リスクを管理するため、すべての新規案件に
ついて、コンセプト審査承認の段階および融資承認前に審査を行い
ます。承認後は、あらゆるリスク資産を少なくとも年に1度評価し、
デフォルトの可能性が高い案件または過去にデフォルトがあった案
件については、より頻繁にリスク評価を行います。各評価におい
て、ADBはリスク特性に変化があったかどうかを調べ、必要なリスク
軽減措置を取り、リスク格付けを再確認または変更し、出資の場合
は持ち株の公正価額を見直します。これには、問題が一時的なもの
かどうかの判断も含まれます。必要があれば、ADBは準備金積み立て
政策に基づいて、個別準備金を手当てします。
ADB 財務概要 2014
ADBは、融資または保証について既知の損失または予想される損失
を相殺する個別準備金を認識し、投資適格以下の実行済み融資に存
在すると考えられる不特定の損失については一括準備金を認識しま
す。さらに、投資適格の融資および投資適格以下の融資の未実行分
について融資期間中に予想される平均的な損失を相殺するため、貸
倒引当金を、バランスシートの自己資本の部に設定しています。個
別準備金は予想される将来の返済能力に基づいて設定され、一括準
備金と貸倒引当金は、ADBのポートフォリオに対応したムーディー
ズ・インベスターズ・サービスによる過去のデフォルトのデータに
基づいて設定されます。ADBは毎年、この外部データがADBの実際の
損失に近似しているかどうかを確認し、その結果予想値を修正する
ことがあります。個別準備金、一括準備金と貸倒引当金の合計額
は、ADBのノンソブリン業務において予想される損失額の推定値に相
当します。
ADBはノンソブリン・ポートフォリオにおける集中リスクを管理する
ため、国、産業セクター、企業グループ、債務者、商品および取引
件数のそれぞれについて限度枠を定めています。
信用リスク-流動資産ポートフォリオ
発行体デフォルト・リスクとカウンターパーティ・リスクは流動資
産ポートフォリオに影響する信用リスクです。発行体デフォルト・
リスクとは、債券の発行体が利子または元本の支払義務を履行でき
なくなるリスクで、カウンターパーティ・リスクとは、カウンター
パーティ (取引の相手先) がADBに対する契約上の義務を履行できな
くなるリスクです。
ADBでは発行体デフォルト・リスクとカウンターパーティ・リスクを
防ぐするため、2社以上の評判の良い外部格付け機関から格付けを受
けた機関投資家に取引先を限定しています。さらに、流動資産ポー
トフォリオは一般的に、短期金融市場商品や国債などの安全性 の高
い資産に投資されています。加えて、ADBは企業投資、預託関係およ
びその他の投資商品についてエクスポージャ制限を設けています。
12
デリバティブ取引から生じるカウンターパーティの信用リスクを軽
減するため、ADBはカウンターパーティについて適格基準を定めてい
ます。一般的に、ADBがスワップ取引を行うカウンターパーティは、
カウンターパーティ信用格付けの最低基準を満たし、国際スワップ
デリバティブ協会マスター契約書または同等の契約書および信用補
完付属書に署名していなければなりません。信用補完付属書に基づ
き、デリバティブ・ポジションは毎日値洗いされ、その結果判明す
るリスク資産は一般的に現金または米国国債によって担保されま
す。また、ADBはスワップの各カウンターパーティについてエクスポ
ージャ制限枠を設けており、この制限枠に照らして現在のエクスポ
ージャと潜在的エクスポージャをモニターしています。ADBは必要に
応じて日毎の有担保コールを活用し、カウンターパーティによる担
保義務の履行を確保しています。
市場リスク
市場リスクとは、市場価格の変動により金融商品に関連して損失が
生じるリスクです。ADBが直面する市場リスクには、株価リスク (前
記「信用リスク・株価リスク-ノンソブリン」を参照) 、金利リス
クおよび為替リスクの3種類があります。
信用の基盤
市場リスク-金利
業務ポートフォリオにおける金利リスクは、借入人の利払いをADB
の借入経費とマッチさせることによってヘッジされています。従っ
て、借入人が金利変動リスクを負担またはヘッジする一方、ADBの利
ざやは概ね一定となっています。
ADBにおいては、金利リスクは主に流動資産ポートフォリオを通じて
発生します。ADBは様々な計量手法を用いて流動資産ポートフォリオ
の金利リスクをモニター・管理しています。ADBはすべてのポジショ
ンを値洗いし、金利リスク指標をモニターし、ストレス試験および
シナリオ分析を実施しています。
ADBはデュレーションおよび金利バリューアットリスク (VaR) を用
いて流動資産ポートフォリオにおける金利リスクを計測していま
す。デュレーションとは、金利が1%変化した際にポートフォリオの
価値が何パーセント変化するかを推定するものです。金利VaRは、一
定期間における金利変動によって、特定の信頼水準で発生する可能
性のある損失額を統計的に計算するものです。ADBは信頼水準を95%
、期間を1年としているので、金利の変動によって20年に1度予想さ
れる最低損失額を計算していることになります。ADBはデュレーショ
ンとVaRを用いて流動資産ポートフォリオにおける金利リスクを計測
しており、金利リスクに対するエクスポージャが最も大きい中核流
動資産ポートフォリオの主要通貨には特に注意を払っています。
13
市場リスク-為替
ADBは業務における為替リスクの最小化に努めています。業務ポート
フォリオと流動資産ポートフォリオの双方において、ADBは資産の通
貨と負債・資本の通貨をマッチさせるよう義務づけられています。
借入金または投資資金を他の通貨に転換できるのは、通貨スワップ
または先物為替契約によってその取引が完全にヘッジされている場
合に限られます。しかし、ADBは複数の通貨で業務を行っているた
め、米ドル建てで報告する決算においては通貨換算調整に起因する
変動リスクが存在します。
ADB 財務概要 2014
流動性リスク
流動性リスクは、ADBが財務上および業務上の債務を履行するための
資金を調達できない場合に発生します。ADBは、資本市場での資金調
達が一時的にできなくなった場合に流動性が不足する事態を防ぐた
め、中核流動資産を維持しています。流動性政策の最も重要な目的
は、ADBが通常条件およびストレス下のいずれの状況においても、費
用効率の最も高い資金調達を行い、流動資産を最適な形で管理し、
その開発使命を達成できるようにすることです。理事会は2011年に
流動性政策の改定を承認しました。新政策では、安全のための流動
資産の最低水準が3年間の純現金必要額の45%に変更されました。こ
れは、資本市場での資金調達が一時的にできなくなってもADBが業務
を継続するために最低限必要な流動資産の金額を示します。最低水
準の流動資産を維持すれば、ADBは通常条件およびストレス下におい
て18カ月間、借入を行うことなく純現金必要額を賄うことができる
ようになっています。流動資産の水準と必要現金額は継続的にモニ
ターされ、四半期毎に理事会に報告されます。新政策によって、裁
量的流動資産ポートフォリオにおいて、借入資金によるサブ・ポー
トフォリオを維持することが可能になりました。このサブ・ポート
フォリオは、純現金必要額および安全のための流動資産最低額の計
算から除外されます。
オペレーショナル・リスク
ADBはオペレーショナル・リスクを、内部プロセス、人員および各種
システムの不備もしくは欠陥、または外部事象によって損失が生じ
る業務上のリスクと定義しています。ADBは、リスク委員会が支持し
2012年に総裁の承認を得た枠組みに基づいてオペレーショナル・リ
スクを管理しています。この枠組みを通じて、ADBはリスクの特定、
評価および管理に重点を置くアプローチを採用し、潜在的な悪影響
を軽減しています。
ADBにおけるオペレーショナル・リスク管理のアプローチの主要項目
としては、(i)主な業務分野におけるオペレーショナル・リスク自己
評価の導入、(ii)主要リスク指標を用いたオペレーショナル・リス
クのモニタリングおよびリスク事象情報の収集、および(iii)各手法
の適用に関するスタッフへの説明を含むリスク意識の向上が挙げら
14
れます。ADBはオペレーショナル・リスク管理の手法およびツールの
各部署への導入を継続的に行っています。
ADBは他の組織と同じく様々なオペレーショナル・リスクに晒されて
いますが、内部統制と、特に懸念される分野のモニタリングを通じ
てこれを低減しています。ADBは保険等のリスク移転手段を活用し
て、頻度は少ないが影響の深刻なオペレーショナル・リスクの軽減
を図っています。また、ADBは事業継続性の管理を強化し、(i)事業
継続性管理システムの合理化、(ii)災害復旧のための情報技術の強
化、(iii)復旧サイトの強化、および(iv)事業継続性計画テストの強
化を実施しました。
適正資本量
ADBが抱える最大のリスクは、融資ポートフォリオに多大なデフォル
トが発生するリスクです。信用リスクは予想される損失と予想外の
損失の両面から計測されます。予想される損失に対して、ADBは貸倒
引当金と準備金を積み立てています。予想外の損失については、ADB
は自らが獲得する収入と資本によって対応することになります。金
融機関が信用リスクやその他のリスクから生じる予想外の損失に対
応するための最後の砦が資本なのです。
信用の基盤
ADBは主にストレス試験を用いて、資本が予想外の損失をどれだけ吸
収できるかを評価しています。この枠組みには2つの目的がありま
す。第1の目的は、信用ショックによる収入の損失を吸収するADBの
能力を計測することです。ADBはこのモニタリングを通じて、払込資
本の増額や請求払い資本の払い込みといった出資国の支援に頼らざ
るを得なくなる可能性を低減しています。
この枠組みの第2の目的は、信用ショックが起きた場合でも、引き続
き融資を拡大していくために充分な収入を生み出せるかどうかとい
う、ADBの収入力を評価することです。金融危機が発生した場合、
一部の開発途上加盟国では資本市場からの資金調達が難しくなるた
め、ADBの開発機関としての役割はさらに重要になります。そうした
困難な状況下では、ADBの支援に対する需要が高まる可能性がありま
す。ストレス試験では、ポートフォリオについて数千もの潜在的な
シナリオを設定し、その99%を網羅する大規模な信用ショックを想
定します。そして、モデルを用いて今後10年間の資本貸付率を計算
し、資本への影響を評価します。2013年に行ったストレス試験の結
果、ADBは深刻な信用ショックが発生した場合でも、その損失を吸収
し、開発融資業務を継続していくために充分な資本を有しているこ
とが示されました。
資産・負債管理
ADBは、流動性、投資、自己資本管理および適正資本量を含む資産・
負債管理に関連する全ての財務政策の指針となる資産・負債管理政
策の枠組みを規定しています。ADBの資産・負債管理の目的は、純
15
ADB 財務概要 2014
資産と適正資本量を保全し、ADBのリスク負担能力の着実な強化を促
進し、妥当な水準の財務リスクを取るために財務政策を規定するこ
とにあります。ADBの財務の健全性を保全しつつ、借入人に有利な条
件で融資できるように開発融資の原資をできるだけ低くかつ安定し
たコストで調達することを目指しています。ADBは資産・負債管理を
通じて、純資産を為替リスクから守り、利ざやを金利の変動から守
り、業務に必要な流動性を確保しています。ADBはまた、ソブリン融
資についてはパススルー (費用転嫁) 方式の金利政策を採用してお
り、コストと償還期間に基づいて最もコスト効率のよい借入金をソ
ブリン融資に配分しています。
16
借入業務
国際市場でAAA (トリプルA) 格付けを有するADB
は、国際資本市場を通じて定期的に資金を調達し
ています。
ADBがアジア・太平洋地域の貧困削減という使命を達成するためには
効率的な資金調達が不可欠です。
ADBの年次借入プログラムは、刻々と変化する市場環境において、融
資業務、債務償還および流動性政策の各要件を満たすように注意深
く計画されます。
今後3年間の必要借入額は年間130~150億ドルと予想されています。
目的
ADBによる借入の最も重要な目的は、OCR借入人のために資金をでき
る限り安定した低コストで確保することにあります。この目的を踏
まえた上で、ADBは資金調達先となる市場、金融商品および償還期間
の多様化に努めています。
借入の目的を達成するため、ADBは下記の戦略を追求しています。
•• 流動性の高い債券指標銘柄を発行し、主要通貨の債券市場で強
力なプレゼンスを維持する
•• 様々な通貨市場において公募債および私募債双方の発行を通じ
て資金を調達する
ADBはまた、現地通貨建ての借入や資金取引を通じて開発途上加盟国
の国内資本市場の発展に努めています。
17
表6:借入
各年末時点 (単位:百万ドル)
2013
2012
2011
2010
61,615
64,762
58,257
51,822
公募
10,078
8,959
10,565
10,726
私募
1,897
4,258
3,444
4,214
公募
22
17
16
20
私募
36
60
52
72
5
6
6
6
a
借入残高
(スワップ前)
中長期借入
取引件数
通貨の種類
(スワップ前)
公募
私募
短期借入b
a
ADB 財務概要 2014
b
9
6
7
7
2,518
5,684
621
30
2012年以降の金額には未収の利息および手数料が含まれる。
各年末時点の元本残高は2013年が7億5,000万ドル、2012年は18億4,900万ドル。
表7:新規借入の平均償還期間
18
2013
2012
2011
2010
平均償還期間 (年)
4.6
7.1
6.8
6.1
ファースト・コールまでの平均期間(年)
4.2
4.6
4.6
4.9
資金調達手法
ADBは借入を多様化し投資家基盤を拡大するという政策に従って、幅
広い通貨、金融商品、市場および償還期間による借入を行っていま
す。
2013年末現在、ADBの未償還債券の元本残高は616億1,500万ドルで、
平均償還期間は3年となっています。
2013年、ADBは58件の取引を通じて約119億7,500万ドル相当の中長期
資金を調達しました (2012年は132億1,700万ドル) 。新規の借入は
10の通貨建てで行われました (オーストラリア・ドル、ブラジル・
レアル、日本円、メキシコ・ペソ、ニュージーランド・ドル、英ポ
ンド、シンガポール・ドル、南アフリカ・ランド、トルコ・リラ、
米ドル) 。2013年の全借入のうち、3件・計55億ドルの米ドル建てグ
ローバル・ベンチマーク債を含む22件の公募債を通じた調達分が100
億7,800万ドルで、残る18億9,700万ドルは36件の私募債を通じて調
達されました。借入の平均償還期間 (ファースト・コール日まで)
は4.2年でした (2012年は4.6年) 。スワップにより、108億6,500万
ドル (91%) は米ドル建て、残る11億1,000万ドル (9%) は日本円建
ての債務に変換されました。
借入業務
2013年に発行した私募債のうち、ADBはクリーン・エナジー・ボン
ドの販売を通じて約2億3,400万ドル、ウォーター・ボンドの販売を
通じて1億1,900万ドルを調達しました。これにより、テーマ型債券
の発行累計額は約18億8,100万ドル相当になりました。また、ADBは
2013年、額面金額合計約1億7,300万ドルの債券を買い戻しました。
また、ユーロ・コマーシャル・ペーパー (ECP) プログラムを通じ
て、25億1,800万ドルの短期資金を調達しました (2012年は56億
8,400万ドル) 。2013年に発行したECPのうち、同年末現在の未償還
残高は7億5,000万ドルでした。
デリバティブ
ADBは、主要資本市場での借入を維持しつつ、業務に必要な通貨を低
コストで調達するため、完全にヘッジされた通貨スワップと金利ス
ワップを活用しています。スワップがADBの借入残高 (2013年末現
在) の通貨構成と金利構成に及ぼす影響は、図1・2の通りです。ま
た、資産・負債管理の一環として、負債を融資の金利特性にマッチ
させるためにも金利スワップを活用しています。
19
図1:通貨構成に対する影響
2013年末時点
借入残高の通貨構成
(スワップ後)
借入残高の通貨構成
(スワップ前)
その他通貨a
11.8%
その他通貨b
1.8%
日本円 3.9%
トルコ・リラ
4.1%
日本円
5.3%
英ポンド
4.3%
米ドル
60.6%
オーストラリ
アドル
15.3%
米ドル
92.9%
a
の他通貨には、ブラジル・レアル、カナダ・ドル、中国元、インド・ルピー、マレーシア・リンギット、メキ
そ
シコ・ペソ、ニュージーランド・ドル、ノルウェー・クローネ、シンガポール・ドル、南アフリカ・ランド、ス
イス・フラン、タイ・バーツが含まれる。
b
その他通貨には、中国元、インド・ルピー、スイス・フランが含まれる。
図2:金利構成に対する影響
ADB 財務概要 2014
2013年末時点
借入残高の金利構成
(スワップ前)
借入残高の金利構成
(スワップ後)
固定
7.9%
変動
7.4%
固定
92.6%
変動
92.1%
現地通貨建て借入
ADBは開発途上加盟国の国内資本市場の発展に尽力しています。
ADBは、域内債券市場の発展に貢献し、借入人に適切な現地通貨建
て資金を提供するという目的に向けて努力を続けています。2013
年、ADBはアジア通貨建て債券 (ACN) プログラムの下で、5億シンガ
ポール・ドル (4億200万ドル相当) のシンガポール・ドル建て債券
を発行しました。
20
金融商品
持続可能な経済・社会開発に向けた投融資
OCR融資
現存のOCR融資ポートフォリオには様々なローン商品が含まれます
(表8参照) 。2001年7月1日以降、ADBの新規OCR融資は大半がLIBORベ
ースの融資 (LBL) となっています。LBLの導入に伴い、プール方式
複数通貨建て融資、プール方式単一通貨融資、市場ベース融資など
の他の商品は廃止されました。
LBL商品は、下記の点において借入における柔軟性をもたらします。
•• ベースとなる通貨・金利の選択
•• 様々な返済オプション
•• 当初の融資条件を融資期間中いつでも変更可能
•• キャップまたはカラーを購入する選択肢
LBLはユーロ、日本円または米ドル建て、金利は固定と変動の2種類
が可能です。必要に応じてこれ以外の融資通貨を採用することも可
能です。当初の金利はコスト・ベースの金利 (LIBOR) に貸付スプレ
ッドを加算した変動金利となりますが、借入人は、融資期間中いつ
でも金利を変更することができます。2013年12月、理事会は、2014
年1月1日以降に交渉される全てのソブリン融資の貸付スプレッドを
0.50%とすることを承認しました。
21
表8:商品別OCR融資ポートフォリオ
各年末時点 (単位:百万ドル)
ソブリン
融資商品
ノンソブリン
2013
2012
2013
2012
実行済
44,330
41,283
2,462a
2,237a
未実行
28,617
27,009
2,381a
2,159a
実行済
303
340
18
28
未実行
–
–
–
–
実行済
743
1,301
–
–
未実行
–
–
–
–
実行済
3,453
4,394
–
–
未実行
–
–
–
–
実行済
875
2,375
–
–
未実行
500
500
–
–
実行済
144
148
723a
698a
未実行
–
–
635a
832a
実行済
–
6
–
5
未実行
–
–
–
–
49,849
49,846
3,202
2,968
29,117
27,509
3,017
2,992
LIBORベース融資
市場ベース融資
プール方式SCL-日本円
プール方式SCL-米ドル
ADB 財務概要 2014
景気循環相殺支援ファシリティ
現地通貨建て融資
その他
合計
実行済
b
未実行
- = 該当データなし、LIBOR = ロンドン銀行間取引金利、OCR = 通常資本財源。
a
b
国有企業、政府系機関、地方自治体等の公共団体に対する政府保証のない融資を含む。
未実行残高には、発効済み、および承認済み未発効の融資予定分が含まれる。
注:小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。
理事会は2011年に、対政府向けまたは政府保証のついたLIBORベース
の融資および政府保証のついた現地通貨建て融資のうち、正式な融
資交渉が2012年4月1日以降に終了するものについて、償還期間に応
じた上乗せ金利を導入することを承認しました。上乗せ金利は、平
均償還期間が13~16年の融資については年率0.10%、16~19年の融資
については0.20%となります。ADBはまた、新規のソブリン融資およ
び政府保証付き融資について、平均償還期間を19年までとする制限
22
を導入しました。融資の平均償還期間は、返済にかかる期間の加重
平均に基づいて計算されます。2013年末時点で、償還期間に応じた
上乗せ金利の対象となる融資は74件で、その合計額は117億4,700万
ドルでした (2012年は29件・計45億900万ドル)。
2013年12月、理事会は、ADBに対して延滞のないソブリン融資の借入
人について、2007年1月1日から同年10月1日までに交渉されたプロジ
ェクト融資の約定手数料を年率0.10%引き下げることを決定しまし
た。この約定手数料の免除は、2014年1月1日から同年12月31日まで
の利息期間に適用されます。
ノンソブリン融資に対する貸付スプレッドは、各プロジェクトおよび
借入人の信用リスク等を勘案し、投資委員会が個別に決定します。
常に変化する借入人の金融ニーズに対応するため、ADBは現地通貨建
て融資 (LCL) 商品を提供しています。LCLは民間セクターの借入人
だけでなく、地方政府や公営企業を含む公共セクターの団体も利用
できます。LCLは、開発途上加盟国における通貨ミスマッチを削減す
ることを目的としています。LCLにおいては、借入人は、融資期間
中いつでも金利を固定または変動金利に変更するよう要請できます
が、ADBが国内スワップ市場で適切な取引を行えることが条件となり
ます。
金融商品
ADBは、特定のプログラムまたは投資案件を対象に、一定の期間を通
じ複数のトランシェに分けて融資を実行するマルチトランシェ融資
ファシリティ (MFF) を提供しています。借入人が提出する定期的融
資要請に基づき、各トランシェは融資、保証またはそれらの組み合
わせとすることができます。2013年にOCRを財源として承認された
MFFの総額は15億5,500万ドルでした (2012年は26億1,200万ドル)。
ADBは2009年、アジア・太平洋地域に波及した世界経済危機への対
応として、景気循環相殺支援ファシリティ (CSF) を設立しまし
た。CSFの下で承認される融資は、ADBの平均資金調達コストに上乗
せされる貸付スプレッドが2%、返済期間は5年 (うち3年は据置期間)
とされています。2013年末現在、4件・計8億7,500万ドルのソブリン
融資が未返済となっています。
ノンソブリン開発業務
2013年、ADBは14億ドルのノンソブリン融資、1億4,200万ドル
の出資、3,500万ドルの保証、および2億2,000万ドルのBローン
を承認しました。2013年末現在、ノンソブリン支援の総額 (出
資、融資および保証の実行済み残高および未実行約定額を含む)
はおよそ69億ドルとなっています。
23
ADBの理事会は2013年3月、開発効果の改善を目的とする結果連動型
融資 (RBL) の試験的導入に関する新政策を承認しました。RBLは政
府が作成するセクター・プログラムの設計と実施を支援するもの
で、融資の実行はプログラムの成果の達成に直接リンクされます。
プログラムの実施に際しては、開発途上加盟国のプログラム・シス
テムが活用され、そのシステムは一般に普及しているグッドプラ
クティスの原則に基づいて評価され、 (必要に応じ) 改善されま
す。RBLの融資条件は投資プロジェクトと同じです。RBLの試験的導
入期間は6年です。導入後3年頃を目処に経営陣が中間レビューを行
い、試験導入期間の終了後にはRBLプログラムの独立評価を実施する
予定です。ADBは、政策の発効後最初の3年間については、RBLプログ
ラムの資金を通常資本財源およびアジア開発基金の合計割当額の5%
に制限しています。2013年末までに通常資本財源から1件・1億ドル
のRBL融資が承認され、同年中の融資実行額は2,000万ドルでした。
債務管理商品
ADB 財務概要 2014
ADBは、加盟国および加盟国の100%保証を受けた団体に対し、第三
者への債務に関する債務管理商品を提供しています。
ADBが提供する債務管理商品には、現地通貨スワップを含む通貨スワ
ップと金利スワップがあります。通貨スワップにおいては、加盟国
またはその保証を受けた団体は、外貨建て債務を現地通貨建て債務
に転換できますが、逆に現地通貨建て債務を外貨建て債務に転換す
ることはできません。
出資
ADB設立協定により、毀損していない払込資本、準備金および剰余金
(特別準備金を除く) の合計額の10%を上限として、OCRを財源とす
る出資が認められています。2013年末時点の 出資総額 (実行済みの
出資と承認済みではあるが未実行の出資の双方を含む) は13億7,500
万ドルで、設立協定が定める上限のおよそ81%でした。
2013年には、4件・計1億4,200万ドルの出資が承認されました (2012
年は3件・計1億3,100万ドル) 。同年における出資の実行総額は1億
6,600万ドルとなり、2012年の1億1,200万ドルから48.2%増加しまし
た。また、31の出資案件からの資本分配および持ち株の一部または
全部の売却金として、総額3億2,100万ドルを受け取りました。持ち
株の売却は、投資におけるADBの開発上の役割が果たされた後に、良
好なビジネス慣行に則り、対象企業の安定を損なわないように行わ
れました。
24
保証
国外から開発途上加盟国へ、また開発途上加盟国間での資本の流れ
を促進する触媒的な役割を果たすため、ADBは適格プロジェクトに対
して保証を供与しています。保証により、融資パートナーは自ら容
易には吸収できず、または独自には管理できない特定のリスクをADB
に移転することができます。保証の受益者はインフラ事業、金融機
関、資本市場の投資家および貿易金融業者で、様々な債務形態が対
象になります。金銭的リスクを対象とする包括的な保証と、政治リ
スクを含む限定的な保証があります。
金融商品
保証は、ADBが融資、出資または技術協力を通じてプロジェクトま
たは関連セクターに直接・間接的に関与している場合に供与されま
す。保証の期間はプロジェクトの要件に基づいて決められ、保証さ
れる事象が発生した場合には繰り上げられることもあります。保証
手数料は受入国政府による連帯保証の有無によって異なります。受
入国政府の連帯保証がある場合の保証手数料は、ADBのソブリン融
資のスプレッドと同じ料率になります。連帯保証がない場合は、市
場の料率をもとに決定されます。連帯保証が部分的である (特定の
リスク、金額または期間のみを対象とする) 場合、最終的な手数料
は、それぞれの部分にかかる料率を合わせたものになります。ADB
は、業界の慣行に従い、信用補完商品の処理と実施にかかる事務費
およびその他の手数料を請求し、または支払うことがあります。
保証は様々な形態の債務を対象とすることができます。具体的
には、(i)上位債、劣後債、メザニン債および転換債、(ii)プロ
ジェクト・ファイナンスまたはリミテッド・リコース・ファイ
ナンス、(iii)銀行が調達する補完的自己資本 (“tier 2”資
本) 、(iv)株主向け融資、(v)資本市場で取引される債務、(vi)契約
履行保証、入札保証、前払金保証およびその他の支払保証、(vii)
信用状、約束手形、為替手形またはその他の貿易金融債務、および
(viii) その他の形態の期日指定債務または偶発債務が含まれます。
株式は保証の対象になりません。
政治リスク保証 ADBの政治リスク保証は、明確に特定される政治リ
スクに対する保証を融資パートナーに提供することにより、協調融
資を円滑にすることを目的としています。収用、外貨交換または送
金の制限、政治的暴力、契約違反、および政治的理由によるその他
の事象のリスク、そしてそれらの組み合わせを保証の対象とするこ
とができます。融資パートナーに対する債務返済義務の全部または
一部、そして債務の元本または金利もしくはその両方を対象とする
ことができます。
部分信用保証 ADBの部分信用保証 (PCG) は、保証債務の不履行を
包括的にカバーするもので、債務の元本または金利もしくはその両
方の100%までを対象とすることができます。PCGは特に、金融市場へ
25
のアクセスが限られる開発途上加盟国で行われますが、ADBが融資す
る価値があり財務的に健全と考えるプロジェクトに有用です。PCG
は、内国債の発行や現地金融機関による長期貸付など、現地通貨建
ての債務も対象とすることができます。
2013年、ADBは1件・3,500万ドルの新規保証案件を承認しました
(2012年は2件・計4億300万ドル) 。
貿易金融プログラム
ADB 財務概要 2014
貿易金融プログラム (TFP) には3つの商品があります。(i)信用保証
ファシリティは、ADBが域内外の参加銀行に対し、承認された開発途
上加盟国および特定の開発途上加盟国内の銀行の債務を保証するも
のです。(ii)リボルビング・クレジット・ファシリティは、ADBが開
発途上加盟国の銀行に対し貿易関連融資を提供し、その国の貿易活
動を支援するものです。(iii)リスク参加協定は、ADBが国際銀行と
リスクを分担することで、貿易金融が難しい、または普及していな
い国の貿易を支援・拡大するものです。信用保証ファシリティとリ
スク参加協定は資金調達を伴わないアンファンデッド型の商品です
が、リボルビング・クレジット・ファシリティは資金調達を伴うフ
ァンデッド型の商品です。
2013年末現在、TFPの融資残高はゼロ (2012年は500万ドル) 、保証
残高は5億9,500万ドル (2012年は5億5,400万ドル) となっていま
す。
2013年末現在、TFPのエクスポージャ総額は8億3,600万ドルで、理事
会が承認した限度額である10億ドルの枠内に収まっています。
サプライチェーン・ファイナンス・プログラム
2012年、ADBは計2億ドルのサプライチェーン・ファイナンス・プロ
グラムを承認しました。これは開発途上加盟国内の物資のサプライ
ヤーおよび流通業者を支援するため、パートナー金融機関を通じて
保証と融資 (いずれも政府保証なし) を提供するものです。2013年
末現在の残高はゼロでした。
シンジケーション
シンジケーションにより、ADBは直接融資および融資パートナーに対
する保証に関連するリスクの一部または全部を移転し、そのことに
よって協調融資を動員することができます。従って、ADBはシンジ
ケーションを通じて金融ポートフォリオのリスク特性を引き下げ、
26
分散することが可能になります。シンジケーションは、資金調達を
伴うファンデッド型または資金調達を伴わないアンファンデッド型
とすることができ、業界の慣行に従って、案件単位、ポートフォリ
オ単位またはその他の態様で編成することが可能です。2013年に
は、2件のプロジェクトに計2億2,000万ドルのBローンが提供されま
した (2012年の実績は2件のプロジェクトに対し2億ドル) 。
金融商品
27
特別基金
設立協定により、ADBは特別基金を設立・運営することが認められて
います。特別基金の資金は、技術協力および、通常の融資より償還
期間や据置期間が長く金利が低い融資を行う特別業務に利用するこ
とができます。特別基金を財源とするプロジェクトは、通常資本財
源のプロジェクトと同じ方法で選別・審査・管理されます。
2013年末現在、特別基金には、アジア開発基金、技術協力特別基
金、日本特別基金、アジア開発銀行研究所、パキスタン地震基金、
地域協力・統合基金、気候変動基金、アジア太平洋災害対応基金、
および金融セクター開発パートナーシップ特別基金があります。各
特別基金の財務諸表は米国会計基準に従って作成されていますが、
アジア開発基金の特別目的財務諸表は例外で、アジア開発基金規則
に従って作成されます。
通常資本財源と特別基金に加え、ADBは日本奨学金プログラムや貧困
削減日本基金などの様々な信託基金や、グラント (無償資金) によ
る協調融資活動を管理・運営しています。これらの資金はADBの自己
財源の一部ではありません。
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ADB加盟国
(2013 年末現在)
域内
アフガニスタン
アルメニア
オーストラリア*
アゼルバイジャン
バングラデシュ
ブータン
ブルネイ
カンボジア
中国
クック諸島
フィジー諸島
グルジア
香港 (中国)
インド
インドネシア
日本*
カザフスタン
キリバス
韓国*
キルギス
ラオス
マレーシア
モルジブ
マーシャル諸島
ミクロネシア連邦
モンゴル
ミャンマー
ナウル
ネパール
ニュージーランド*
パキスタン
パラオ
パプアニューギニア
フィリピン
サモア
シンガポール
ソロモン諸島
スリランカ
台湾
タジキスタン
タイ
東ティモール
トンガ
トルクメニスタン
ツバル
ウズベキスタン
バヌアツ
ベトナム
域外
オーストリア*
ベルギー*
カナダ*
デンマーク*
フィンランド*
フランス*
ドイツ*
アイルランド*
イタリア*
ルクセンブルク*
* OECD加盟国。
オランダ*
ノルウェー*
ポルトガル*
スペイン*
スウェーデン*
スイス*
トルコ*
英国*
米国*
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主要連絡先
アジア開発銀行
6 ADB Avenue,Mandaluyong City 1550,Metro Manila,Philippines
電話番号 +63 2 632 4444
E-mail information@adb.org
SWIFTコード:ASDBPHMM
Fax番号 +63 2 636 2444
総裁室
総裁
中尾 武彦
副総裁 (業務1担当)
Wencai Zhang
副総裁 (業務2担当)
Stephen P. Groff
副総裁
(民間セクター・協調融資担当)Lakshmi Venkatachalam
副総裁
(知識管理・持続的開発担当) Bindu N. Lohani
副総裁
(財務・リスク管理担当) Thierry de Longuemar
副総裁
(総務・組織運営担当) Bruce Davis
財務局
柏木 幹夫
財務局長
+63 2 683 1586
mkashiwagi@adb.org
福永 一樹
+63 2 632 4713
kfukunaga@adb.org
財務局副局長
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資金調達課
Maria A. Lomotan
課長
+63 2 632 4478
mlomotan@adb.org
Ana A. Kotamraju
+63 2 632 4737
akotamraju@adb.org
Yue Shen
+63 2 632 5548
yshen@adb.org
Anthony M. Ostrea
+63 2 632 4371
amostrea@adb.org
Anny Chen
+63 2 632 1915
ychen@adb.org
直通FAX番号
+63 2 632 4120
投資課
Michael T. Jordan
課長
+63 2 632 4712
mjordan@adb.org
主要連絡先
ポートフォリオ管理
黒沼 正司
+63 2 632 4788
mkuronuma@adb.org
Ferdinand Pascual
+63 2 632 4776
fpascual@adb.org
Woo Suk Chang
+63 2 632 4678
wschang@adb.org
定量分析・戦略担当
Chun Du
+63 2 632 4524
chundu@adb.org
直通FAX番号
+63 2 632 4707
財務政策・計画課
Tobias C. Hoschka
課長
+63 2 632 4701
thoschka@adb.org
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資産・負債管理
Rajesh Poddar +63 2 632 4714
rpoddar@adb.org
Saadia Hassan +63 2 632 4701
shassan@adb.org
Olimpia Henriques da Silva
+63 2 632 6855
odasilva@adb.org
アジア開発基金担当
Im-em Unkavanich
+63 2 632 4704
iunkavanich@adb.org
Mina Oh +63 2 632 4872
moh@adb.org
クライアント業務担当
ADB 財務概要 2014
Gopal Sharathchandra
クライアント業務ユニット長
+63 2 632 4700
gsharathchandra@adb.org
Deepak Taneja
+63 2 632 1549
dtaneja@adb.org
Asad Alamgir
+63 2 632 4752
asadalamgir@adb.org
Michael L. de los Reyes
+63 2 632 5647
mdelosreyes@adb.org
Lei Wang
+63 2 632 6395
leiwang@adb.org
直通FAX番号
+63 2 632 4120
財務業務課
Sukhumarn Phanachet
課長
+63 2 632 4730
sphanachet@adb.org
銀行業関係担当・SWIFT
センター
Song Mi Hahn
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+63 2 632 1511
smhahn@adb.org
債券・デリバティブ管理および
投資取引決済担当
Changhan Lee
+63 2 632 5395
changhanlee@adb.org
現金管理担当
Nuzhat Khan
+63 2 632 4793
nkhan@adb.org
融資・技術協力・
一般管理費支出担当
Jose Morales
+63 2 632 4277
jmorales@adb.org
システム支援・データ管理担当
Ayite Gaba
+63 2 632 4106
agaba@adb.org
直通FAX番号
+63 2 636 2635
ADBオンライン
一般情報
www.adb.org
財務情報
www.adb.org/site/investors/main
アジア経済モニター www.aric.adb.org
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アジア開発銀行について
経済発展のサクセス・ストーリーが脚光を浴びる一方で、アジア・太平洋
地域には、世界の貧困層の3分の2が、また生活費が1日2ドル未満の人々が
約16億人、そのうち7億3,300万人は1日1.25 ドル未満で暮らしているとさ
れています。マニラに本部を置くアジア開発銀行 (Asian Development
Bank: ADB、加盟国・地域数67、うち域内48) は、アジア・太平洋地域か
ら貧困がなくなる日の実現をめざし、全ての人々に恩恵が行き渡る (イン
クルーシブな) 経済成長、環境に調和した持続可能な成長、および地域統
合の促進を通じて、開発途上加盟国の貧困削減と人々の生活の向上を支援
しています。
ADB が行う支援の具体的手段は、政策対話、融資、出資、保証、グラント
(無償援助)、技術協力などです。
アジア開発銀行
6 ADB Avenue, Mandaluyong City
1550 Metromanila, Philippines
www.adb.org