車体塗装ラインでの多色化対応

333
解 説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 83〔8〕,333 – 336(2010)
車体塗装ラインでの多色化対応
佐 藤 義 博*,†
要 旨
UD トラックスの受注生産比率は近年,お客様基点の生産活動として取り組んできた結果 90 %以上にまで向上した。2002 年度
からはさらなるお客様満足度向上のため,
「NISSAN DIESEL 純正カスタムペイント」としてお客様指定色のキャブ内製塗装を開
始し,好評により拡大基調にある。1 台 1 台のお客様指定色を確実に,適正価格で塗装するための塗装技術について紹介する。
④クリーンな環境での自動塗装により,色ムラやゴミのない塗
1.はじめに
装品質を提供。
大型トラックキャブのほとんどすべてが,『お客様』の指定
⑤メーカー塗装のノウハウを活かし,内側のすみずみまできれ
カラー(以下カスタムカラー)に塗装されている。カラーやツ
いに塗装。
ートンカラーなどの塗り分けデザインは,コーポレートカラー
以上,5 項目を主要なセールスポイントとして開始したが,
や個人ユーザーの好みのものと多種多様であり,『お客様』の
従来経験の少なかった色味およびツートンカラー以上の塗り分
数だけ種類があるといって過言ではない。昨今のトラックのカ
けに関する品質確保が課題となっている。
2.2
ラーリングは運送会社や荷主の CI 戦略の一環を担い,新車時の
美しさは当然として「美しさの長期持続」「車両間の統一性」
登録色
開始以降登録されたカスタムペイントの累計カラー数は 2010
さらには「環境へのやさしさや調和への表現」などが求められ
年 5 月末時点で図-1 に示すように約 2,855 色となっている。1 色
ている。
で塗装される塗色やツートンカラー以上の組み合わせで塗装さ
当社では,それらのニーズに応えるべく 2002 年度より日産デ
れる塗色もあるが,登録色中,約 70 %の約 1,970 色が実際に塗
ィーゼル純正カスタムペイント(以下,カスタムペイント)と
装されている。登録色の中でソリッドカラーが約 68 %,メタリ
称して 1 台からの受注を基本に,工場塗装ラインでのカスタム
ックカラーが約 32 %となっている。また色相別ではブルーおよ
カラーの内製塗装を開始した。以降,とくに品質面で高い評価
びブルー系が図-2 に示すようにメタリックカラーで約 62 %,
を受けており,受注もコンスタントに増加している。以下にト
図-3 に示すようにソリッドカラーで約 58 %とトラックの塗装色
ラックキャブのカスタムペイント実施による塗装ラインでの多
はブルーおよびグリーン系が多いことがわかる。近年では,お
色化対応(ツートンカラー以上の塗り分けデザインを含む)に
ついて紹介する。
2.カスタムペイントの現状
カスタムペイントのセールスポイントおよび現状について紹
介する。
2.1
セールスポイント
① 1 台から,1 色から塗装する。
②一度登録すると専用コードでの管理により,以降は常に同じ
カラー・塗り分けデザインで納車。
図-1
③専用中塗の使用と高耐侯性上塗焼付塗装により,光沢と重厚感
のある塗装品質が得られ,長期間退色(色あせ)や変色がない。
受付日: 2010 年 6 月 14 日 受理日: 2010 年 7 月 5 日
PAINT Process to Meet Various Customized Color Requests
Yoshihiro S ATOU *,†
* UD トラックス株式会社
埼玉県上尾市大字壱丁目 1 番地(〒 362-8523)
† Corresponding Author, E-mail : yoshihiro.satou@udtrucks.co.jp
−9−
累計登録色推移
〔氏名〕 さとう よしひろ
〔現職〕 UD トラックス㈱生産・技術企画部 技
術担当
〔趣味〕 旅行,ゴルフ,スポーツ観戦
〔経歴〕 1975 年福島県立明成高校卒。同年日
産ディーゼル工業㈱入社,塗装担当。
1995 年韓国三星商用車出向。1998 年復
職,現在に至る。2002 年カスタムペイ
ント立ち上げ,以後担当として従事。