医師団:UNSCEAR 報告書はフクシマ大惨事の健康影響を 系統的に

社会的責任を果たすための医師団(PSR/米国 IPPNW)と核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部
医師団:UNSCEAR 報告書はフクシマ大惨事の健康影響を
系統的に過小評価している
今日、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の 19 支部は、原子放射線の影響に関する国連科学委員会( UNSCEAR)のフクシマ報告書の批判
的分析を公表した。フクシマ原子力災害についての広範囲に渡る複雑なデータの評価に尽力された UNSCEAR 委員会のメンバーに感謝の念を
表したい。この報告書は、フクシマ原子力災害が単一の事象ではなくて進行中の大惨事であり、福島県のみならず日本中および海外の人々に
影響を与え、これまでの記録で最大の単独の海洋放射能汚染であることを示している。報告書内の日本国民の 生涯線量の集団線量に基づく
と、フクシマの放射能フォールアウトによって 1,000 件の甲状腺癌の過剰発症および、4,300 件から 16,800 件の癌の過剰発症が起こるだろ
うと予期すべきである。しかし、予測というのは、それが基づく仮定とデータの妥当性に依拠するものである。 UNSCEAR は、大惨事の真の
程度を軽視しようと試みている。この報告書の結論は、下記の理由のために、系統的な過小評価であるとみなされるべきである。
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UNSCEAR のソースターム推定値の妥当性は疑わしい
内部被ばく量の計算に大きな懸念がある
フクシマ作業員らの線量評価は信用できない
UNSCEAR報告書は、フォールアウトの人間以外の生物相への影響を無視している
胎芽の放射線への特別な脆弱性が考慮されていない
非癌疾患と遺伝的影響はUNSCEARに無視されている
核フォールアウトと自然放射線との比較は誤解を招く
UNSCEARのデータ解釈には疑問がある
政府によって取られた防護措置が誤って伝えられている
集団線量推計値からの結論が提示されていない
2013 年 12 月 31 日までに、福島県の 33 人の子供達が甲状腺癌の診断を受け、さらに 41 人の細胞診の結果が癌性病変を疑わせるものであ
る。癌には「原産地表示」というものがないので、この中の1症例でさえも放射線誘発性であるかどうかは判断できないが、これまで見つ
かった症例数は予想以上に多い。日本の癌統計によると、この集団で予想される甲状腺癌の発症率は 1 年で 1 人以下と示唆される。さらに、
現時点では、被ばくした小児集団の約 70%の検査結果しか出ておらず、二次検査が必要な何百人もの子どもたちがまだ検査を受けていないた
め、甲状腺癌の人数は今後増加すると見込まれる。原子力災害の影響が適切にモニタリングされ、放射能フォールアウトで被ばくした人たち
が最善の医療を受けれるようにするためには、被ばく集団の一般健康診断および他の疾患(甲状腺癌以外の癌や非癌疾患)の調査が必要であ
る。
日本政府は、安定ヨウ素剤配布を拒否し、被ばく許容量を年間 20 ミリシーベルトに引き上げ、実質、多くの子どもたちが放射能汚染区域に居
住し続けることを強制し、子どもたちを守る事を怠った。学校関係者は、学校の敷地から 1 メートルも離れていない所にある放射能ホットス
ポットを無視し、給食に福島産の米を再導入している。日本政府は避難区域の住民の帰還を促し、汚染地域に戻る住民たちに賠償金の提供す
らしているが、除染作業は期待されたような結果をもたらしていない。このようなことは、UNSCEAR 報告書内で全く言及されていない。
フォールアウトによる放射線被ばくが「一般大衆とほとんどの作業員の間での将来のどの健康影響の原因となるとも考えにくい」と述べて、
フクシマ原子力災害の何万もの家族への悲惨な影響を単なる統計学的問題に矮小化してしまうのは不適切であり、多数の個々の苦しみの体験
談を無視することになる。
最後に強調されるべきことは、フクシマ事故が最悪のシナリオではなかったということである。もしも風が違う方向へ吹いていれば、東日本
の都市部の何百万人もの住民らが核フォールアウトの影響を受けたかもしれないが、幸いにも、フォールアウトは代わりに太平洋に降雨とし
て落ちた。これは、将来の原子力安全ガイドラインおよび公共政策提言を検討するにあたって重要な要因である。最終的に問題となるのは、
独立した科学研究の、政治的および原子力産業の利益の影響に屈しないという信念だけでなく、健康と幸せを保てるような生活水準に対する
すべての人間の普遍的権利でもある。これこそが、フクシマ原子力災害による健康影響の評価においての指針となるべきである。
この UNSCEAR 報告書の批判的分析は、2014 年 6 月 6 日に核戦争廃止国際医師会議の 19 支部により公表され、次のリンクからアクセス可
能である。 http://www.fukushima-disaster.de/information-in-english/maximum-credible-accident.html
連絡先: アルフレッド・マイヤー、米国 PSR(社会的責任を果たすための医師団) alfred.c.meyer@gmail.com
アレックス・ローゼン、ドイツ IPPNW(核戦争防止国際医師会議) rosen@ippnw.de
平沼 百合、米国 PSR yurihrnm@gmail.com(日本語)